(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075395
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】乗客コンベアのチェーン案内装置および手摺ベルト駆動装置
(51)【国際特許分類】
B66B 23/20 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
B66B23/20
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186814
(22)【出願日】2022-11-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】砂田 哲哉
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321CA43
3F321CA47
(57)【要約】
【課題】手摺チェーンがボスの側に外れることを防止することができる乗客コンベアのチェーン案内装置を提供する。
【解決手段】実施の形態による乗客コンベアのチェーン案内装置は、ブラケットと、アイドラーと、押さえ板と、を備えている。アイドラーは、アイドラースプロケットと、アイドラースプロケットからブラケットに向かって突出するボスと、を含んでいる。押さえ板は、アイドラーの回転中心に対してボスよりも半径方向外側に配置されるとともに、ブラケットからアイドラースプロケットに向かって延びている。押さえ板は、アイドラースプロケットに最も近い近接部分を含んでいる。回転中心軸線に沿う方向におけるアイドラースプロケットと押さえ板の近接部分との間の隙間寸法は、手摺チェーンの幅寸法よりも小さい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺ベルトを駆動する無端状の手摺チェーンの循環移動を案内する乗客コンベアのチェーン案内装置であって、
ブラケットと、
前記ブラケットに回転可能に支持されたアイドラーと、
前記ブラケットに支持された押さえ板と、
を備え、
前記アイドラーは、前記手摺チェーンが巻き掛けられるアイドラースプロケットと、前記アイドラースプロケットの回転中心軸線に沿って前記アイドラースプロケットから前記ブラケットに向かって突出するボスと、を含み、
前記押さえ板は、前記アイドラーの回転中心に対して前記ボスよりも半径方向外側に配置されるとともに、前記ブラケットから前記アイドラースプロケットに向かって延び、
前記押さえ板は、前記アイドラースプロケットに最も近い近接部分を含み、
前記回転中心軸線に沿う方向における前記アイドラースプロケットと前記押さえ板の前記近接部分との間の隙間寸法は、前記手摺チェーンの幅寸法よりも小さい、
乗客コンベアのチェーン案内装置。
【請求項2】
前記回転中心軸線に沿って見たときに、前記ボスと前記押さえ板との間の最小隙間寸法は、前記手摺チェーンの高さ寸法よりも小さい、
請求項1に記載の乗客コンベアのチェーン案内装置。
【請求項3】
手摺ベルトを駆動する無端状の手摺チェーンの循環移動を案内する乗客コンベアのチェーン案内装置であって、
ブラケットと、
前記ブラケットに回転可能に支持されたアイドラーと、
前記ブラケットに支持された押さえ板と、
を備え、
前記アイドラーは、前記手摺チェーンが巻き掛けられるアイドラースプロケットと、前記アイドラースプロケットの回転中心軸線に沿って前記アイドラースプロケットから前記ブラケットに向かって突出するボスと、を含み、
前記押さえ板は、前記アイドラーの回転中心に対して前記ボスよりも半径方向外側に配置されるとともに、前記ブラケットから前記アイドラースプロケットに向かって延び、
前記回転中心軸線に沿って見たときに、前記ボスと前記押さえ板との間の最小隙間寸法は、前記手摺チェーンの高さ寸法よりも小さい、
乗客コンベアのチェーン案内装置。
【請求項4】
前記押さえ板の法線方向は、前記アイドラーの半径方向に沿っている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の乗客コンベアのチェーン案内装置。
【請求項5】
前記ブラケットは、所定の方向に延びる長孔を含み、
前記手摺チェーンの張力を調整可能に構成された、
請求項1~3のいずれか一項に記載の乗客コンベアのチェーン案内装置。
【請求項6】
前記ブラケットと前記押さえ板は、単一部品で形成されている、請求項1~3のいずれ一項に記載の乗客コンベアのチェーン案内装置。
【請求項7】
手摺ベルトを駆動する乗客コンベアの手摺ベルト駆動装置であって、
無端状の手摺チェーンと、
前記手摺チェーンを循環移動させる手摺駆動スプロケットと、
前記手摺チェーンの循環移動により回転して前記手摺ベルトを駆動する駆動ローラと、
前記手摺チェーンの循環移動を案内する、請求項1~3のいずれか一項に記載の乗客コンベアのチェーン案内装置と、を備えた、乗客コンベアの手摺ベルト駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施の形態は、乗客コンベアのチェーン案内装置および手摺ベルト駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアの手摺ベルトを駆動する手摺ベルト駆動装置が知られている。手摺ベルト駆動装置は、無端状の手摺チェーンと、駆動スプロケットと、駆動ローラと、を備えている。手摺チェーンは、駆動スプロケットと駆動ローラに巻き掛けられている。駆動スプロケットには、駆動装置から駆動力が伝達され、駆動スプロケットの回転によって手摺チェーンが循環移動する。そして、駆動ローラが回転駆動され、手摺ベルトが踏段とともに循環移動する。
【0003】
手摺チェーンの循環移動は、アイドラーによって案内される。アイドラーは、手摺チェーンが巻き掛けられたアイドラースプロケットと、アイドラースプロケットから一方の側に突出するボスと、を含んでいる。手摺チェーンがアイドラースプロケットからボスの側に外れた場合、手摺チェーンは、ボスに巻き掛けられた状態で循環移動を継続し得る。この場合、手摺チェーンが損傷する可能性が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-23802号公報
【特許文献2】特開平10-315151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施の形態は、手摺チェーンがボスの側に外れることを防止することができる乗客コンベアのチェーン案内装置および手摺ベルト駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態による乗客コンベアのチェーン案内装置は、手摺ベルトを駆動する無端状の手摺チェーンの循環移動を案内する装置である。乗客コンベアのチェーン案内装置は、ブラケットと、ブラケットに回転可能に支持されたアイドラーと、ブラケットに支持された押さえ板と、を備えている。アイドラーは、手摺チェーンが巻き掛けられるアイドラースプロケットと、アイドラースプロケットの回転中心軸線に沿ってアイドラースプロケットからブラケットに向かって突出するボスと、を含んでいる。押さえ板は、アイドラーの回転中心に対してボスよりも半径方向外側に配置されるとともに、ブラケットからアイドラースプロケットに向かって延びている。押さえ板は、アイドラースプロケットに最も近い近接部分を含んでいる。回転中心軸線に沿う方向におけるアイドラースプロケットと押さえ板の近接部分との間の隙間寸法は、手摺チェーンの幅寸法よりも小さい。
【0007】
実施の形態による乗客コンベアのチェーン案内装置は、手摺ベルトを駆動する無端状の手摺チェーンの循環移動を案内する装置である。乗客コンベアのチェーン案内装置は、ブラケットと、ブラケットに回転可能に支持されたアイドラーと、ブラケットに支持された押さえ板と、を備えている。アイドラーは、手摺チェーンが巻き掛けられるアイドラースプロケットと、アイドラースプロケットの回転中心軸線に沿ってアイドラースプロケットからブラケットに向かって突出するボスと、を含んでいる。押さえ板は、アイドラーの回転中心に対してボスよりも半径方向外側に配置されるとともに、ブラケットからアイドラースプロケットに向かって延びている。回転中心軸線に沿って見たときに、ボスと押さえ板との間の最小隙間寸法は、手摺チェーンの高さ寸法よりも小さい。
【0008】
実施の形態による乗客コンベアの手摺ベルト駆動装置は、手摺ベルトを駆動する装置である。乗客コンベアの手摺ベルト駆動装置は、無端状の手摺チェーンと、手摺チェーンを循環移動させる手摺駆動スプロケットと、手摺チェーンの循環移動により回転して手摺ベルトを駆動する駆動ローラと、手摺チェーンの循環移動を案内する上述の乗客コンベアのチェーン案内装置と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施の形態による手摺ベルト駆動装置を備えた乗客コンベアの全体概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の手摺ベルト駆動装置を示す拡大図である。
【
図3】
図3は、
図2の第1チェーン案内装置を示す上面図である。
【
図4】
図4は、
図4の第1チェーン案内装置を示す正面図である。
【
図5】
図5は、
図2の手摺チェーンを示す部分拡大上面図である。
【
図6】
図6は、
図2の手摺チェーンを示す部分拡大正面図である。
【
図7】
図7は、
図2の第2チェーン案内装置を示す正面図である。
【
図8】
図8は、
図5の第2チェーン案内装置を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本実施の形態による乗客コンベアのチェーン案内装置および手摺ベルト駆動装置について説明する。
【0011】
まず、
図1を参照して、本実施の形態による乗客コンベア1について説明する。ここでは、乗客コンベア1として、エスカレータを例にとって説明するが、本実施の形態による乗客コンベア1は、動く歩道であってもよい。
【0012】
図1に示すように、乗客コンベア1は、複数の踏段2と、一対の欄干3と、一対のスカートガード4と、一対の手摺ベルト5と、駆動装置6と、一対の手摺ベルト駆動装置20と、を備えている。
【0013】
踏段2は、無端状の踏段チェーン7によって連結されている。踏段2は、図示しない案内レールによって案内されながら2つの乗降口8の間で循環移動する。乗り口は、上階側の乗降口8であってもよく、下階側の乗降口8であってもよい。降り口は、乗り口とは反対側の乗降口8となる。本実施の形態においては、踏段2の移動方向は、下階側の乗降口8から上階側の乗降口8に向かう方向であって、下階から上階に乗客を搬送する例について説明する。しかしながら、踏段2の移動方向は、上階側の乗降口8から下階側の乗降口8に向かう方向であって、上階から下階に乗客を搬送してもよい。
【0014】
欄干3は、踏段2の左右両側に立設されている。欄干3は、踏段2の移動方向に沿うように、一方の乗降口8から他方の乗降口8に延びている。
【0015】
スカートガード4は、各欄干3の下部に設けられており、欄干3に沿うように延びている。一対のスカートガード4の間で、踏段2が移動する。
【0016】
手摺ベルト5は、欄干3の上部に設けられた手摺レール9に沿って移動する。上階の乗降口8に達した手摺ベルト5は、スカートガード4内に進入して、スカートガード4の内部を下階の乗降口8に向かって移動する。下階の乗降口8に達した手摺ベルト5は、スカートガード4から外に送り出され、上述した手摺レール9に沿って、再び上階の乗降口8に向かって移動する。このようにして、手摺ベルト5は循環移動する。手摺ベルト5の循環移動は、踏段2の循環移動と同期している。
【0017】
駆動装置6は、踏段2を循環移動させる。駆動装置6は、電動機6aおよび図示しない減速機を含んでいてもよい。
【0018】
踏段2を循環移動させる構成についてより具体的に説明する。踏段チェーン7は、建物の床下に設置されたトラス10の内部に配置されている。トラス10の上階側には、上機械室11が設けられ、上機械室11に、駆動装置6とともに、駆動装置6によって駆動される駆動スプロケット12が収容されている。トラス10の下階側には、下機械室13が設けられ、下機械室13に従動スプロケット14が収容されている。駆動スプロケット12と従動スプロケット14に、踏段チェーン7が巻き掛けられている。駆動装置6が駆動されると、上階側の駆動スプロケット12が回転し、踏段チェーン7が循環移動する。このようにして、踏段2は、上階側の乗降口8と下階側の乗降口8との間を循環移動し、乗客を搬送する。
【0019】
次に、
図2を参照して、本実施の形態による手摺ベルト駆動装置20について説明する。手摺ベルト駆動装置20は、対応する手摺ベルト5を駆動する装置である。
【0020】
手摺ベルト駆動装置20は、無端状の手摺チェーン21と、手摺駆動スプロケット22と、複数の駆動ローラ23と、複数の加圧ローラ24と、2つのチェーン案内装置30、40と、を備えている。手摺ベルト駆動装置20は、対応するスカートガード4の内部に配置されている。
【0021】
手摺駆動スプロケット22は、上述した駆動装置6の駆動スプロケット12から駆動力を受けて回転する。手摺駆動スプロケット22に、手摺チェーン21が巻き掛けられている。手摺駆動スプロケット22が回転すると、手摺チェーン21は、上述した踏段チェーン7と同期して循環移動する。
【0022】
駆動ローラ23は、駆動ローラスプロケット23aを含んでおり、この駆動ローラスプロケット23aに、手摺チェーン21が巻き掛けられている。手摺チェーン21が循環移動すると、駆動ローラ23が、手摺ベルトに当接しながら回転し、手摺ベルト5を循環移動させる。
図2に示す例では、4つの駆動ローラ23によって手摺ベルト5が循環移動する例について説明しているが、駆動ローラ23の個数は任意である。4つの駆動ローラ23は、手摺ベルト5の移動方向に沿って並んでいる。中央に位置する2つの駆動ローラ23の間に、固定スプロケット25が配置されている。
【0023】
加圧ローラ24は、駆動ローラ23に対向している。加圧ローラ24と駆動ローラ23との間に、手摺ベルト5が介在されている。加圧ローラ24は、手摺ベルト5を駆動ローラ23に押圧させるように構成されている。例えば、加圧ローラ24は、バネ26の付勢力によって、駆動ローラ23に向かって押圧されていてもよい。このことにより、駆動ローラ23と手摺ベルト5との間の摩擦力が高められ、この摩擦力によって、回転する駆動ローラ23が手摺ベルト5を移動させる。
【0024】
次に、
図3~
図8を参照して、本実施の形態によるチェーン案内装置30、40について説明する。チェーン案内装置30、40は、手摺ベルト5を駆動する手摺チェーン21の循環移動を案内する装置である。2つのチェーン案内装置30、40は、第1チェーン案内装置30と、第2チェーン案内装置40と、を含んでいる。第1チェーン案内装置30は、手摺チェーン21の張力を調整する機能を有している。第2チェーン案内装置40は、手摺チェーン21の張力を調整する機能を有していない。第1チェーン案内装置30が、第2チェーン案内装置40よりも駆動ローラ23に近い位置に位置している。
【0025】
第1チェーン案内装置30は、
図3および
図4に示すように、第1ブラケット31と、第1アイドラー32と、第1押さえ板33と、を備えている。
【0026】
第1ブラケット31は、一対の第1ベース部31aと、第1支持部31bと、を含んでいてもよい。第1ベース部31aは、建物に固定された第1固定部材15に取り付けられる部分である。第1固定部材15には、ボルト17が挿入される長孔31cが設けられている。長孔31cは、横方向に延びるように細長状に形成されている。この長孔31cの横方向寸法の範囲で、第1ブラケット31の位置を横方向に調整することができる。このことにより、第1ブラケット31は、手摺チェーン21に付加する張力を調整可能に構成されている。
図4に示すように、一方の第1ベース部31aに2つの長孔31cが形成され、他方の第1ベース部31aに1つの長孔31cが形成されていてもよい。各第1ベース部31aに形成される長孔31cの個数は任意である。
【0027】
図4に示すように、第1支持部31bは、第1アイドラー32が支持される部分である。第1支持部31bは、上方から見たときにU字状に形成されており、第1支持部31bによって画定される空間に第1アイドラー32が収容される。第1支持部31bは、一対の第1ベース部31aの間に配置されている。第1支持部31bには、第1アイドラー32の後述する第1回転シャフト32cが挿入される第1貫通孔31dが設けられている。
【0028】
2つの第1ベース部31aと第1支持部31bは、単一部品で形成されていてもよい。例えば、2つの第1ベース部31aと第1支持部31bは、折り曲げ加工で一体に形成されていてもよい。
【0029】
第1アイドラー32は、第1ブラケット31に回転可能に支持されている。第1アイドラー32は、手摺チェーン21が巻き掛けられる第1アイドラースプロケット32aと、第1ボス32bと、第1回転シャフト32cと、を含んでいる。第1ボス32bは、第1アイドラースプロケット32aの回転中心軸線32xに沿って第1アイドラースプロケット32aから第1ブラケット31の第1支持部31bに向かって突出している。第1回転シャフト32cは、第1ボス32bから第1ブラケット31の第1支持部31bに向かって突出しており、第1貫通孔31dに挿入されている。第1アイドラースプロケット32a、第1ボス32bおよび第1回転シャフト32cは、同芯に形成されており、一体に回転可能になっている。第1アイドラースプロケット32aの第1ボス32bとは反対側には、第1アイドラースプロケット32aから突出する部分は形成されていなくてもよい。
【0030】
第1押さえ板33は、第1ブラケット31に支持されている。
図4に示すように、第1押さえ板33は、第1アイドラー32の回転中心32oに対して第1ボス32bよりも半径方向外側に配置されている。第1押さえ板33は、第1ボス32bに対して斜め上方に配置されていてもよい。第1押さえ板33は、水平面に沿った板状に形成されていてもよい。
図3に示すように、第1押さえ板33は、第1ブラケット31から第1アイドラースプロケット32aに向かって延びている。より具体的には、第1押さえ板33は、第1支持部31bに接続されており、第1支持部31bの角部に配置されている。
【0031】
第1押さえ板33は、第1ブラケット31と別部品として形成されて、第1ブラケット31に接合されていてもよい。例えば、第1押さえ板33は、第1ブラケット31に溶接または接着などで接合されていてもよい。しかしながら、第1ブラケット31と第1押さえ板33は、単一部品で形成されていてもよい。例えば、第1ブラケット31と第1押さえ板33は、折り曲げ加工で一体に形成されていてもよい。この場合、第1押さえ板33を容易に形成することができる。
【0032】
第1押さえ板33は、第1アイドラースプロケット32aに最も近い第1近接部分33aを含んでいる。第1押さえ板33と第1アイドラースプロケット32aとの間の隙間は、第1近接部分33aと第1アイドラースプロケット32aとの間において最小になっている。第1近接部分33aは、第1押さえ板33のうち第1アイドラースプロケット32aに三次元距離が最も小さい部分である。
【0033】
図3に示すように、回転中心軸線32xに沿う方向において、第1アイドラースプロケット32aと第1押さえ板33の第1近接部分33aとの間の隙間寸法B1は、手摺チェーン21の幅寸法D(
図5参照)よりも小さくてもよい。
【0034】
手摺チェーン21の幅寸法Dは、
図5に示すように定義される。すなわち、手摺チェーン21は、ピン21aで結合された一対のプレート21bで構成されている。一対のプレート21bの間には、ローラ21cが介在されており、各スプロケットに対してスムーズに係合および離脱できるように構成されている。互いに対向する一対のプレート21bのうちの一方のプレート21bの外面と他方のプレート21bの外面との距離が、幅寸法Dとして定義される。手摺チェーン21は、幅寸法が大きい一対のプレート21bと、幅寸法が小さい一対のプレート21bとが交互に連結されるように構成されているが、幅寸法が大きい一対のプレート21bによって、幅寸法Dが定義される。
【0035】
図4に示すように、回転中心軸線32xに沿って見たときに、第1ボス32bと第1押さえ板33との間の最小隙間寸法A1は、手摺チェーン21の高さ寸法H(
図6参照)よりも小さくてもよい。最小隙間寸法A1は、回転中心軸線32xに沿って見たときに、第1ボス32bと第1押さえ板33との間の最小距離であってもよい。最小隙間寸法A1は、回転中心32oに対する半径方向に沿う寸法であってもよい。
【0036】
手摺チェーン21の高さ寸法Hは、
図6に示すように定義される。すなわち、手摺チェーン21は、高さ寸法が大きいプレート21bと、高さ寸法が小さいプレート21bとが交互に連結されるように構成されているが、高さ寸法が大きいプレート21bによって、高さ寸法Hが定義される。
【0037】
第2チェーン案内装置40は、
図7および
図8に示すように、第2ブラケット41と、第2アイドラー42と、第2押さえ板43と、を備えている。
【0038】
第2ブラケット41は、第2ベース部41aと、第2支持部41bと、を含んでいてもよい。第2ベース部41aは、建物に固定された第2固定部材16に取り付けられる部分である。第2固定部材16には、ボルト18が挿入される円孔41cが設けられている。円孔41cの平面形状は、円形状になっている。第2支持部41bは、第2アイドラー42が支持される部分である。第2ブラケット41は、上方から見たときに、L字状に形成されており、第2ブラケット41によって画定される空間に、第2アイドラー42が収容される。第2支持部41bには、第2アイドラー42の後述する第2回転シャフト42cが挿入される第2貫通孔41dが設けられている。
【0039】
第2ベース部41aと第2支持部41bは、単一部品で形成されていてもよい。例えば、第2ベース部41aと第2支持部41bは、折り曲げ加工で一体に形成されていてもよい。
【0040】
図8に示すように、第2アイドラー42は、第2ブラケット41に回転可能に支持されている。第2アイドラー42は、手摺チェーン21が巻き掛けられる第2アイドラースプロケット42aと、第2ボス42bと、第2回転シャフト42cと、を含んでいる。第2ボス42bは、第2アイドラースプロケット42aの回転中心軸線42xに沿って第2アイドラースプロケット42aから第2ブラケット41の第2支持部41bに向かって突出している。第2回転シャフト42cは、第2ボス42bから第2ブラケット41の第2支持部41bに向かって突出しており、第2貫通孔41dに挿入されている。第2アイドラースプロケット42a、第2ボス42bおよび第2回転シャフト42cは、同芯に形成されており、一体に回転可能になっている。第2アイドラースプロケット42aの第2ボス42bとは反対側には、第2アイドラースプロケット42aから突出する部分は形成されていなくてもよい。
【0041】
図7に示すように、第2押さえ板43は、第2アイドラー42の回転中心42oに対して第2ボス42bよりも半径方向外側に配置されている。第2押さえ板43の法線方向が、第2アイドラー42の半径方向に沿っていてもよい。法線方向とは、第2押さえ板43の主面に垂直な方向であって、
図7に示す上下方向に相当する。第2押さえ板43は、第2ボス42bに対して下方に配置されていてもよい。第2押さえ板43は、水平面に沿った板状に形成されていてもよい。
図8に示すように、第2押さえ板43は、第2ブラケット41から第2アイドラースプロケット42aに向かって延びている。より具体的には、第2押さえ板43は、第2ベース部41aおよび第2支持部41bに接続されている。
【0042】
第2押さえ板43は、第2ブラケット41と別部品として形成されて、第2ブラケット41に接合されていてもよい。例えば、第2押さえ板43は、第2ブラケット41に溶接または接着などで接合されていてもよい。しかしながら、第2ブラケット41と第2押さえ板43は、単一部品で形成されていてもよい。例えば、第2ブラケット41と第2押さえ板43は、折り曲げ加工で一体に形成されていてもよい。この場合、第2押さえ板43を容易に形成することができる。
【0043】
第2押さえ板43は、第2アイドラースプロケット42aに最も近い第2近接部分43aを含んでいる。第2押さえ板43と第2アイドラースプロケット42aとの間の隙間は、第2近接部分43aと第2アイドラースプロケット42aとの間において最小になっている。第2近接部分43aは、第2押さえ板43のうち第2アイドラースプロケット42aに三次元距離が最も小さい部分である。
【0044】
図8に示すように、回転中心軸線42xに沿う方向において、第2アイドラースプロケット42aと第2押さえ板43の第2近接部分43aとの間の隙間寸法B2は、上述した手摺チェーン21の幅寸法D(
図5参照)よりも小さくてもよい。
【0045】
図7に示すように、回転中心軸線42xに沿って見たときに、第2ボス42bと第2押さえ板43との間の最小隙間寸法A2は、上述した手摺チェーン21の高さ寸法H(
図6参照)よりも小さくてもよい。最小隙間寸法A2は、回転中心軸線42xに沿って見たときに、第2ボス42bと第2押さえ板43との間の最小距離であってもよい。最小隙間寸法A2は、回転中心42oに対する半径方向に沿う寸法であってもよい。
【0046】
次に、本実施の形態による手摺ベルト駆動装置20によって手摺ベルト5が循環移動している場合について説明する。
【0047】
この場合、
図1に示す駆動装置6が駆動スプロケット12を回転駆動し、手摺ベルト駆動装置20の手摺駆動スプロケット22が回転駆動される。手摺駆動スプロケット22の回転によって手摺チェーン21が循環移動し、駆動ローラ23が回転駆動される。このことにより、駆動ローラ23と加圧ローラ24との間に介在されている手摺ベルト5が循環移動する。
【0048】
手摺チェーン21は、第1チェーン案内装置30の第1アイドラースプロケット32aに巻き掛けられており、手摺チェーン21の循環移動が案内されている。第1固定部材15に対する第1チェーン案内装置30の第1ブラケット31の横方向位置を調整することによって、手摺チェーン21の張力が調整されている。このことにより、手摺チェーン21のスムーズな循環移動を可能にしている。第1アイドラースプロケット32aに巻き掛けられた手摺チェーン21の近傍に、第1ブラケット31に支持された第1押さえ板33が配置されている。
【0049】
上述したように、回転中心軸線32xに沿う方向において、第1アイドラースプロケット32aと第1押さえ板33の第1近接部分33aとの間の隙間寸法B1は、手摺チェーン21の幅寸法Dよりも小さい。このことにより、第1ボス32bと第1押さえ板33との間の隙間を、手摺チェーン21が通過することを防止できる。このため、手摺チェーン21が、第1アイドラースプロケット32aから第1ボス32bの側に外れることを防止できる。一方、回転中心軸線32xに沿って見たときに、第1ボス32bと第1押さえ板33との間の最小隙間寸法A1は、手摺チェーン21の高さ寸法Hよりも小さい。このことにより、第1ボス32bと第1押さえ板33との間の隙間を、手摺チェーン21が通過することを防止できる。このため、手摺チェーン21が、第1アイドラースプロケット32aから第1ボス32bの側に外れることが防止できる。
【0050】
ここで、第1押さえ板33が第1ブラケット31に設けられていない場合について説明する。手摺チェーン21が、第1アイドラースプロケット32aから第1ボス32bの側に外れた場合、手摺チェーン21は、第1ボス32bに巻き掛けられた状態で循環移動を継続し得る。この場合、手摺チェーン21が損傷する可能性が考えられる。
【0051】
これに対して本実施の形態においては、上述したように、第1押さえ板33によって、手摺チェーン21が、第1アイドラースプロケット32aから第1ボス32bの側に外れることを防止できる。このことにより、手摺チェーン21が第1アイドラースプロケット32aから外れた状態で循環移動を継続することを防止できる。このため、手摺チェーン21の損傷を防止できる。なお、手摺チェーン21が、第1アイドラースプロケット32aから第1ボス32bとは反対側に外れた場合には、手摺チェーン21の張力が大きく低下する。このため、手摺チェーン21の循環移動の継続は困難になり、手摺チェーン21の循環移動は停止する。
【0052】
手摺チェーン21は、第2チェーン案内装置40の第2アイドラースプロケット42aに巻き掛けられており、手摺チェーン21の循環移動が案内されている。第2アイドラースプロケット42aに巻き掛けられた手摺チェーン21の近傍に、第2ブラケット41に支持された第2押さえ板43が配置されている。
【0053】
上述したように、回転中心軸線42xに沿う方向において、第2アイドラースプロケット42aと第2押さえ板43の第2近接部分43aとの間の隙間寸法B2は、上述した手摺チェーン21の幅寸法Dよりも小さい。このことにより、第2アイドラースプロケット42aと第2押さえ板43との間の隙間を、手摺チェーン21が通過することを防止できる。このため、手摺チェーン21が、第2アイドラースプロケット42aから第2ボス42bの側に外れることを防止できる。一方、回転中心軸線42xに沿って見たときに、第2ボス42bと第2押さえ板43との間の最小隙間寸法A2は、手摺チェーン21の高さ寸法Hよりも小さい。このことにより、第2ボス42bと第2押さえ板43との間の隙間を、手摺チェーン21が通過することが困難になっている。このため、手摺チェーン21が、第2アイドラースプロケット42aから第2ボス42bの側に外れることが防止できる。
【0054】
ここで、第2押さえ板43が第2ブラケット41に設けられていない場合について説明する。手摺チェーン21が、第2アイドラースプロケット42aから第2ボス42bの側に外れた場合、手摺チェーン21は、第2ボス42bに巻き掛けられた状態で循環移動を継続し得る。この場合、手摺チェーン21が損傷する可能性が考えられる。
【0055】
これに対して本実施の形態においては、上述したように、第2押さえ板43によって、手摺チェーン21が、第2アイドラースプロケット42aから第2ボス42bの側に外れることを防止できる。このことにより、手摺チェーン21が第2アイドラースプロケット42aから外れた状態で循環移動を継続することを防止できる。このため、手摺チェーン21の損傷を防止できる。なお、手摺チェーン21が、第2アイドラースプロケット42aから第2ボス42bとは反対側に外れた場合には、手摺チェーン21の張力が大きく低下する。このため、手摺チェーン21の循環移動の継続は困難になり、手摺チェーン21の循環移動は停止する。
【0056】
このように本実施の形態によれば、回転中心軸線32xに沿う方向において、第1アイドラースプロケット32aと第1押さえ板33の第1近接部分33aとの間の隙間寸法B1は、手摺チェーン21の幅寸法Dよりも小さい。このことにより、手摺チェーン21が第1アイドラースプロケット32aから外れた状態で循環移動を継続することを防止できる。このため、手摺チェーン21の損傷を防止でき、信頼性を向上させることができる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、回転中心軸線32xに沿って見たときに、第1ボス32bと第1押さえ板33との間の最小隙間寸法A1は、手摺チェーン21の高さ寸法Hよりも小さい。このことにより、手摺チェーン21が第1アイドラースプロケット32aから外れた状態で循環移動を継続することを防止できる。このため、手摺チェーン21の損傷を防止でき、信頼性を向上させることができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、回転中心軸線42xに沿う方向において、第2アイドラースプロケット42aと第2押さえ板43の第2近接部分43aとの間の隙間寸法B2は、上述した手摺チェーン21の幅寸法Dよりも小さい。このことにより、手摺チェーン21が第2アイドラースプロケット42aから外れた状態で循環移動を継続することを防止できる。このため、手摺チェーン21の損傷を防止でき、信頼性を向上させることができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、回転中心軸線42xに沿って見たときに、第2ボス42bと第2押さえ板43との間の最小隙間寸法A2は、手摺チェーン21の高さ寸法Hよりも小さい。このことにより、手摺チェーン21が第2アイドラースプロケット42aから外れた状態で循環移動を継続することを防止できる。このため、手摺チェーン21の損傷を防止でき、信頼性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、第2チェーン案内装置40の第2押さえ板43の法線方向が、第2アイドラー42の半径方向に沿っている。このことにより、第2押さえ板43が、第2ボス42bを半径方向外側から覆う領域を大きくすることができる。このため、手摺チェーン21が第2アイドラースプロケット42aから第2ボス42bの側に外れることを効果的に防止できる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、第1チェーン案内装置30の第1ブラケット31は、横方向に延びる長孔31cを含んでいる。このことにより、第1チェーン案内装置30の横方向位置を調整することができ、手摺チェーン21に負荷される張力を調整することができる。
【0062】
以上述べた実施の形態によれば、手摺チェーン21の損傷を防止でき、信頼性を向上させることができる。
【0063】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1:乗客コンベア、5:手摺ベルト、20:手摺ベルト駆動装置、21:手摺チェーン、22:手摺駆動スプロケット、30:第1チェーン案内装置、31:第1ブラケット、31c:長孔、32:第1アイドラー、32a:第1アイドラースプロケット、32b:第1ボス、32o:回転中心、32x:回転中心軸線、33:第1押さえ板、33a:第1近接部分、40:第2チェーン案内装置、41:第2ブラケット、42:第2アイドラー、42a:第2アイドラースプロケット、42b:第2ボス、42o:回転中心、42x:回転中心軸線、43:第2押さえ板、43a:第2近接部分