(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075401
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】粒子の水分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/18 20060101AFI20240527BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240527BHJP
C08F 20/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C08F2/18
C08F2/44 B
C08F20/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186828
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】大島 純治
(72)【発明者】
【氏名】福原 和城
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011JA13
4J011JB08
4J011JB26
4J011PA27
4J011PA43
4J011PB24
4J011PC02
4J011PC07
(57)【要約】
【課題】メジアン径が0.8μm以上、5.0μm以下の粒子の水分散液の製造方法でありながら、工程(2)における重合安定性に優れ、粒子の取扱い性に優れ、粒子が樹脂に添加されても、凝集が抑制され、樹脂成形体の物性を十分に発揮できる粒子の水分散液の製造方法を提供すること。
【解決手段】粒子の水分散液の製造方法は、工程(1)と、工程(2)と、を備える。工程(1)では、ビニルモノマー成分と、重合開始剤とを含む疎水性溶液を、界面活性剤と、水とを含む液に水分散させて、メジアン径が0.8μm以上、5.0μm以下である疎水性液滴を含む水分散液を調製する。工程(2)では、水分散液を加熱して、ビニルモノマー成分を重合させて、メジアン径が0.8μm以上、5.0μm以下である粒子を形成する。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤を含まず、HLBが15.0以上であるノニオン性界面活性剤を含む。液および水分散液のそれぞれは、ポリビニルアルコールを含まない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルモノマー成分と、重合開始剤とを含む疎水性溶液を、界面活性剤と、水とを含む液に水分散させて、メジアン径が0.8μm以上、5.0μm以下である疎水性液滴を含む水分散液を調製する工程(1)と、
前記水分散液を加熱して、前記ビニルモノマー成分を重合させて、メジアン径が0.8μm以上、5.0μm以下である粒子を形成する工程(2)と、を備え、
前記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤を含まず、HLBが15.0以上であるノニオン性界面活性剤を含み、
前記液および水分散液のそれぞれは、ポリビニルアルコールを含まない、粒子の水分散液の製造方法。
【請求項2】
前記疎水性溶液は、疎水性の機能成分をさらに含み、
前記機能成分は、前記粒子において、分散されている、請求項1に記載の粒子の水分散液の製造方法。
【請求項3】
前記機能成分は、有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を含む、請求項2に記載の粒子の水分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の水分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニルモノマー成分を含む疎水性溶液を水分散させて、疎水性液滴を含む水分散液を調製する工程(1)と、ビニルモノマー成分を重合させて、粒子を形成する工程(2)と、を備える粒子の水分散液の製造方法が知られている(例えば、下記特許文献1,2参照)。工程(1)における水分散液は、疎水性液滴を含む。疎水性液滴は、ビニルモノマー成分と、重合開始剤と、界面活性剤と、を含む。工程(2)では、水分散液が加熱される。
【0003】
特許文献1には、界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤と、アニオン性界面活性剤と、を含み、製造される粒子の平均粒子径が0.2μm、および、0.5μmである実施例が記載されている。
【0004】
特許文献2には、界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤を含み、疎水性溶液は、界面活性剤に加えて、ポリビニルアルコールを分散剤として含んでおり、得られる粒子のメジアン径が2.6μmから28.6μmの実施例が記載されている。
【0005】
粒子の水分散液は、乾燥されて、粒子が得られる。粒子は、樹脂に添加される。粒子および樹脂は、混練されて樹脂成形体に成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64-4237号公報
【特許文献2】WO2022/054893号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
用途によって、メジアン径が0.8μm以上、5.0μm以下の粒子を製造したい場合がある。しかし、特許文献1に記載の製造方法で、上記したメジアン径を有する粒子を製造しようとすると、工程(2)における重合安定性が低いという不具合がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の製造方法により粒子は、粒子のメジアン径が小さくなると、互いに凝集し易く、取扱い性が低いという不具合がある。上記した粒子は、樹脂に添加されて、それらに混練されても、凝集が解消されにくく、そのため、樹脂成形体の物性が不十分になるという不具合がある。
【0009】
本発明は、メジアン径が0.8μm以上、5.0μm以下の粒子の水分散液の製造方法でありながら、工程(2)における重合安定性に優れ、粒子の取扱い性に優れ、粒子が樹脂に添加されても、凝集が抑制され、樹脂成形体の物性を十分に発揮できる粒子の水分散液の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、ビニルモノマー成分と、重合開始剤とを含む疎水性溶液を、界面活性剤と、水とを含む液に水分散させて、メジアン径が0.8μm以上、5.0μm以下である疎水性液滴を含む水分散液を調製する工程(1)と、前記水分散液を加熱して、前記ビニルモノマー成分を重合させて、メジアン径が0.8μm以上、5.0μm以下である粒子を形成する工程(2)と、を備え、前記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤を含まず、ノニオン性界面活性剤を含み、前記液および水分散液のそれぞれは、ポリビニルアルコールを含まない、粒子の水分散液の製造方法を含む。
【0011】
本発明[2]は、前記疎水性溶液は、疎水性の機能成分をさらに含み、前記機能成分は、前記粒子において、分散されている、[1]に記載の粒子の水分散液の製造方法を含む。
【0012】
本発明[3]は、前記機能成分は、有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を含む、[2]に記載の粒子の水分散液の製造方法を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粒子の水分散液の製造方法は、メジアン径が0.8μm以上、5.0μm以下の粒子の水分散液の製造方法でありながら、工程(2)における重合安定性に優れる。
【0014】
また、本発明の粒子の水分散液の製造方法により製造される粒子は、取扱い性に優れる。
【0015】
さらに、上記した粒子は、樹脂に添加されても、凝集が抑制され、樹脂成形体の物性を十分に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例3の樹脂混練用添加剤が添加されたポリエチレン混練ストランドの断面SEM画像の画像処理図である。
【
図2】
図2は、比較例7の樹脂混練用添加剤が添加されたポリエチレン混練ストランドの断面SEM画像の画像処理図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1. 水分散液の製造方法
本発明の粒子の水分散液の製造方法は、工程(1)と、工程(2)と、を備える。
【0018】
1.1 工程(1)
工程(1)では、疎水性溶液を、液に水分散させる。
【0019】
1.1.1 疎水性溶液
疎水性溶液は、ビニルモノマー成分と、重合開始剤とを含む。疎水性溶液は、疎水性の機能成分をさらに含む。好ましくは、疎水性溶液は、ビニルモノマー成分と、重合開始剤と、疎水性の機能成分とからなる。
【0020】
1.1.1.1 ビニルモノマー成分
ビニルモノマー成分は、例えば、単官能ビニルモノマー、および、多官能ビニルモノマーからなる群から選択されるすくなくも1つを含有する。ビニルモノマー成分は、好ましくは、単官能ビニルモノマーと、多官能ビニルモノマーとを含有する。
【0021】
単官能ビニルモノマーは、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に1つのみ含有する。単官能ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族ビニルモノマー、ニトリルモノマー、ビニルエステルモノマー、マレイン酸エステルモノマー、および、ハロゲン化ビニルが挙げられる。単官能ビニルモノマーは、単独または併用できる。単官能ビニルモノマーとして、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、および、芳香族ビニルモノマーが挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、メタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルである。以下、「(メタ)」の定義および使用は、上記と同じである。(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、直鎖状、分岐状または環状の炭素数1~20のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは、炭素数1~6のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0023】
具体的には、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸iso-ノニル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、および、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、および、(メタ)アクリル酸iso-ブチルが挙げられ、より好ましくは、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、および、メタクリル酸iso-ブチル(iBMA)が挙げられる。
【0024】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、および、α-メチルスチレンが挙げられる。芳香族ビニルモノマーとして、好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0025】
ニトリルモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、および、メタクリロニトリルが挙げられる。
【0026】
ビニルエステルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、および、プロピオン酸ビニルが挙げられる。マレイン酸エステルモノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、および、マレイン酸ジブチルが挙げられる。ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、および、フッ化ビニルが挙げられる。
【0027】
多官能ビニルモノマーは、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に2つ以上含有する。好ましくは、多官能ビニルモノマーは、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に2つ含有する。多官能ビニルモノマーは、架橋性ビニルモノマーと称呼することができる。多官能ビニルモノマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ジビニルモノマー、および、アリルモノマーが挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。
【0028】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジ(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリレートを3つ以上有するポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、および、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)が挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリレートを3つ以上有するポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、および、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
ジビニルモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン(DVB)が挙げられる。
【0032】
アリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、および、トリアリル(イソ)シアヌレートが挙げられる。
【0033】
多官能ビニルモノマーとして、好ましくは、均一な架橋性の観点から、ポリ(メタ)アクリレート、および、ジビニルモノマーが挙げられる。
【0034】
疎水性溶液(ビニルモノマー成分、重合開始剤および機能成分の総量)におけるビニルモノマー成分の配合割合は、例えば、25質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
【0035】
ビニルモノマー成分における単官能ビニルモノマーの百分率は、例えば、60質量%以上、好ましくは、80質量%以上であり、また、99質量%以下、好ましくは、97質量%以下である。ビニルモノマー成分における多官能ビニルモノマーの百分率は、上記した単官能ビニルモノマーの百分率の残部である。
【0036】
1.1.1.2 重合開始剤
重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤が挙げられる。また、重合開始剤として、例えば、油溶性ラジカル重合開始剤が挙げられる。油溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば、油溶性有機過酸化物、および、油溶性アゾ化合物が挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。重合開始剤として、好ましくは、油溶性有機過酸化物、より好ましくは、ジラウロイルパーオキシドが挙げられる。
【0037】
ビニルモノマー成分100質量部に対する重合開始剤の配合割合は、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0038】
ビニルモノマー成分および重合開始剤は、上記した配合割合で配合され混合されて、疎水性溶液が調製される。
【0039】
1.1.1.3 機能成分
機能成分としては、例えば、有機紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、抗生物活性化合物、難燃剤、硬化剤、色素、香料、および、酵素が挙げられる。機能成分としては、好ましくは、有機紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、および、抗生物活性化合物が挙げられ、より好ましくは、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤が挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。
【0040】
機能成分は、疎水性である。具体的には、機能成分は、水と混合されたときに、水に対して相分離する。
【0041】
25℃における機能成分の性状としては、例えば、固形状、および、液状が挙げられる。25℃における機能成分の性状は、好ましくは、固形状である。
【0042】
有機紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、および、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。
【0043】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクチロキシベンゾフェノン(Chimassorb81、BASF製)、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-オクチロキシベンゾフェノン、および、2,2’-ジヒドロキシ-4-ブチルオキシベンゾフェノンが挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、好ましくは、汎用性が高い観点から、Chimassorb81が挙げられる。
【0044】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチルー1-フェニルエチル)フェノール、C7-C9-アルキル-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオンエーテル、および、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0045】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキサロイルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオイキシ)エトキシ]フェノール、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチロキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(Tinuvin 460、BASF社製)、および、2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジン(Tinuvin477、BASF社製)が挙げられる。
【0046】
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、4-オクチルフェニルサリシレート、ビスフェノールA-ジサリシレート、4-t-ブチルフェニルサリシレート、および、フェニルサリシレートが挙げられる。
【0047】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、および、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートが挙げられる。
【0048】
有機紫外線吸収剤として、好ましくは、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0049】
ラジカル捕捉剤としては、例えば、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤(HALS)(Hindered amine light stabilizers)、および、ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤が挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。
【0050】
ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤としては、例えば、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよびβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ [5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールとのエステル(アデカスタブLA-63P、ADEKA社製)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)(Tinuvin292、BASF社製)、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)(JF-90、城北化学工業社製)、(テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート(アデカスタブLA-52、ADEKA社製)、および、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート(アデカスタブLA-57、ADEKA社製)が挙げられる。ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤として、好ましくは、汎用性が高い観点から、アデカスタブLA-63Pが挙げられる。
【0051】
ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤としては、例えば、2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェノール(別名:ジブチルヒドロキシトルエン、以下、BHTと略する場合がある。)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](Irganox1010、BASF社製)、および、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナートが挙げられる。
【0052】
抗生物活性化合物としては、例えば、微生物防除剤、および、殺虫剤が挙げられる。微生物防除剤は、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防藻剤、および、防かび剤からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防藻剤、防かび剤および殺虫剤は、明確に区別されなくてもよい。つまり、複数の効果をあわせ持つ化合物(例えば、防腐性および防かび性を有する防腐防かび剤等)も微生物防除剤に含まれる。殺虫剤は、防蟻剤を含む。微生物防除剤としては、例えば、有機ヨード系化合物、トリアゾール系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、ジチオール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、パラオキシ安息香酸エステル、ベンズイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、および、ピリチオン系化合物が挙げられる。殺虫剤としては、例えば、ピレスロイド系化合物、ネオニコチノイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、および、オキサジアジン系化合物が挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。
【0053】
抗生物活性化合物として、好ましくは、殺虫剤が挙げられ、より好ましくは、ピレスロイド系化合物が挙げられ、さらに好ましくは、例えば、エトフェンプロックス(2-(4-エトキシフェニル)-2-メチルプロピル-3-フェノキシベンジル-エーテル)が挙げられる。
【0054】
疎水性溶液(ビニルモノマー成分、重合開始剤および機能成分の総量)における機能成分の配合割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、75質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。ビニルモノマー成分100質量部に対する機能成分の配合割合は、例えば、10質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、75質量部以上であり、例えば、1000質量部以下、好ましくは、200質量部以下、より好ましくは、150質量部以下である。
【0055】
機能成分は、ビニルモノマー成分および重合開始剤とともに、上記した配合割合で配合されて、混合され、疎水性溶液が調製される。
【0056】
1.1.2 液
工程(1)では、疎水性溶液を、液に水分散させる。
【0057】
液は、界面活性剤と、水とを含む。好ましくは、液は、界面活性剤と、水とからなる。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤を含まない。
【0058】
界面活性剤がアニオン性界面活性剤を含めば、工程(2)における重合中にゲル化を引き起こす。アニオン性界面活性剤は、液中で、アニオンとなる親水基を有する。
【0059】
界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤を含む。ノニオン性界面活性剤のHLBは、15.0以上である。
【0060】
ノニオン性界面活性剤のHLBが15.0未満であれば、工程(2)における重合安定性が低下する。
【0061】
ノニオン性界面活性剤のHLBは、好ましくは、16.0以上、より好ましくは、17.0以上である。ノニオン性界面活性剤のHLBは、例えば、20.0以下、好ましくは、19.0以下である。本発明におけるノニオン性界面活性剤のHLBは、例えば、下記式(1)で示されるグリフィンの式によって計算される。
【0062】
HLB=20×(親水部の式量の総和/分子量) (1)
【0063】
HLBは、カタログ値が採用されてもよい。
【0064】
ノニオン性界面活性剤は、液中で、イオン化しない親水基を有する。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンブロックコポリマー、および、ポリオキシアルキレンアリールエーテルが挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。
【0065】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0066】
ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、および、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルが挙げられる。
【0067】
ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、および、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(例えば、エマルゲンA-500(花王ケミカル社製))が挙げられる。
【0068】
ポリオキシアルキレンブロックコポリマーとしては、例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーが挙げられる。
【0069】
ポリオキシアルキレンアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアリールエーテルが挙げられる。
【0070】
ノニオン性界面活性剤として、好ましくは、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテルが挙げられる。
【0071】
水100質量部に対する界面活性剤の配合割合は、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0072】
界面活性剤および水は、上記した配合割合で配合されて、混合され、液が調製される。液は、界面活性剤含有液として調製される。
【0073】
上記した液は、ポリビニルアルコールを含まない。液がポリビニルアルコールを含むと、製造される粒子は、粒子の表面に吸着やグラフトされて残存するポリビニルアルコールによって、互いに凝集し易く、取扱い性が低い。そのため、粒子は、樹脂に添加されて、それらに混練されても、凝集が解消されにくく、そのため、樹脂成形体の物性が不十分になる。
【0074】
ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルの加水分解物である。ポリビニルアルコールは、分散剤の一例である。ポリビニルアルコールは、PVAと称呼される。
【0075】
1.1.3 分散液
工程(1)では、水分散液を調製する。水分散液を調製するには、疎水性溶液を液(界面活性剤含有液)に水分散させる。疎水性溶液の水分散では、分散機が用いられる。分散機としては、例えば、ホモミキサー(ホモミクサー)、超音波ホモジナイザー、加圧式ホモジナイザー、マイルダー、および、多孔膜圧入分散機が挙げられる。分散機としては、好ましくは、ホモミキサーが挙げられる。水分散の条件は、次に説明する疎水性液滴の所望のメジアン径となるように設定される。
【0076】
これによって、疎水性液滴を含む水分散液が調製される。
【0077】
ビニルモノマー成分および機能成分の総量100質量部に対する界面活性剤の配合割合は、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、7質量部以下である。
【0078】
水分散液は、上記したポリビニルアルコールを含まない。
【0079】
疎水性液滴のメジアン径は、0.8μm以上、5.0μm以下である。
【0080】
疎水性液滴のメジアン径は、好ましくは、1.0μm以上、好ましくは、1.5μm以上、より好ましくは、2.0μm以上である。疎水性液滴のメジアンが上記した下限以上であれば、ノニオン性界面活性剤単独での安定化効果が発揮できる。
【0081】
疎水性液滴のメジアン径は、好ましくは、4.0μm以下、より好ましくは、3.0μm以下である。疎水性液滴のメジアン径が上記した上限以下であれば、ノニオン性界面活性剤単独での安定化効果が発揮できる。
【0082】
疎水性液滴のメジアン径は、例えば、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置または光学顕微鏡を用いて求められる。
【0083】
1.2 工程(2)
工程(2)では、水分散液を加熱して、ビニルモノマー成分を重合させる。好ましくは、水分散液を攪拌しながら加熱する。
【0084】
攪拌は、例えば、攪拌羽根を有する攪拌機によって実施される。攪拌羽根の先端の周速は、例えば、10m/分以上、好ましくは、20m/分以上であり、また、400m/分以下、好ましくは200m/分以下である。
【0085】
加熱温度は、例えば、30℃以上、好ましくは、40℃以上であり、また、例えば、100℃以下である。加熱時間は、例えば、3時間以上、好ましくは、5時間以上であり、また、例えば、48時間以下、好ましくは、12時間以下である。さらに、水分散液を所定温度に加熱後、その温度を所定時間維持し、その後、加熱および温度維持を繰り返すことにより、段階的に加熱することもできる。
【0086】
上記した加熱によって、ビニルモノマー成分の重合が進行する。上記したビニルモノマー成分の重合によって、粒子が生成され、かかる粒子が水に分散された水分散液が生成される。機能成分は、粒子において、分散されている。詳しくは、機能成分は、粒子マトリクス内において分散している。
【0087】
粒子のメジアン径は、0.8μm以上、5.0μm以下である。粒子のメジアン径は、例えば、上記した疎水性液滴のメジアン径と同一である。つまり、工程(2)において、疎水性液滴のメジアン径が、そのまま、粒子のメジアン径となる。
【0088】
粒子のメジアン径は、好ましくは、1.0μm以上、好ましくは、1.5μm以上、より好ましくは、2.0μm以上である。粒子のメジアンが上記した下限以上であれば、重合安定性を確保できる。
【0089】
粒子のメジアン径は、好ましくは、4.0μm以下、より好ましくは、3.0μm以下である。粒子のメジアン径が上記した上限以下であれば、重合中のゲル化を防ぐことができる。
【0090】
粒子のメジアン径は、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置を用いて求められる。粒子のメジアン径を、光学顕微鏡を用いて測定ですることもできる。
【0091】
1.3 用途
粒子の水分散液は、乾燥される。これにより、粒子が得られる。一方、粒子の水分散液をそのまま用いることもできる。
【0092】
粒子の用途は、限定されない。粒子は、例えば、樹脂混練用添加剤、塗膜添加剤、接着剤添加剤、インキ添加剤、充填剤添加剤(シーリング剤添加剤、コーキング剤添加剤を含む)、樹脂エマルション添加剤、および、コーティング添加剤として用いられる。粒子は、好ましくは、樹脂混練用添加剤として用いられる。
【0093】
樹脂混練用添加剤は、樹脂に添加されて混練され、樹脂成形体に成形される。
【0094】
樹脂としては、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(エラストマーを含む)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、および、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、高密度ポリエチレン、パラフィン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合樹脂が挙げられる。
【0095】
樹脂成形体における樹脂混練用添加剤の配合割合は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。樹脂100質量部に対する機能成分の配合割合は、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0096】
2. 作用効果
本発明の粒子の水分散液の製造方法では、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤を含まず、ノニオン性界面活性剤を含み、液(界面活性剤含有液)および水分散液のそれぞれは、ポリビニルアルコールを含まないので、メジアン径が0.8μm以上、5.0μm以下の粒子の水分散液の製造方法でありながら、工程(2)における重合安定性に優れる。
【0097】
また、液(界面活性剤含有液)および水分散液のそれぞれは、ポリビニルアルコールを含まないことから、粒子のメジアン径が小さくても、粒子の表面に残存するポリビニルアルコールによる凝集力に起因する粒子同士の凝集を抑制できる。そのため、粒子の凝集を解く(解砕)する工程を不要とすることができる。そのため、粒子の水分散液の製造方法により製造される粒子は、取扱い性に優れる。
【0098】
さらに、上記した粒子は、樹脂に添加されても、凝集が抑制され、樹脂成形体の物性を十分に発揮できる。物性は、機械強度を含む。
【0099】
機能成分として有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を含む粒子が、樹脂混練用添加剤として樹脂に混練された樹脂成形体が成形された場合には、紫外線による樹脂成形体の劣化を抑制できる。
【0100】
3. 変形例
疎水性溶液は、疎水性の機能成分を含まなくてもよい。この変形例では、粒子は、機能成分を含まない。
【0101】
液(界面活性剤含有液)は、PVA以外の分散剤を含んでもよい。
【0102】
本発明の作用効果を阻害しない程度で、液(界面活性剤含有液)および水分散液のそれぞれにおいて、微量のPVAの混入が許容される。液(界面活性剤含有液)において許容されるPVAの混入量は、ビニルモノマー成分および機能成分の総量100質量部に対して、0.005質量部以下、さらには、0.001質量部以下である。
【0103】
本発明の作用効果を阻害しない程度で、界面活性剤において、微量のアニオン性界面活性剤の混入が許容される。界面活性剤において許容されるアニオン性界面活性剤の混入量は、界面活性剤に対して、1質量%以下、さらには、0.1質量%以下である。
【実施例0104】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、%については、特段の記載がない限り、質量%を意味する。
【0105】
各実施例および比較例で用いる成分の詳細を次に記載する。
【0106】
・Chimassorb81:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、25℃で固形状、BASF社製
・アデカスタブLA-63P:ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、25℃で固形状、アデカ社製
・エトフェンプロックス:2-(4-エトキシフェニル)-2-メチルプロピル-3-フェノキシベンジル-エーテル、殺虫剤(防蟻剤)、丸善薬品社製
・MMA:メタクリル酸メチル、単官能性ビニルモノマー、商品名「ライトエステルM」(ライトエステルは登録商標)、共栄社化学社製
・EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、多官能性ビニルモノマー、商品名「ライトエステルEG」(ライトエステルは登録商標)、共栄社化学社製
・EMA:メタクリル酸エチル、単官能性ビニルモノマー、和光一級試薬、富士フイルム和光純薬工業社製
・iBMA:メタクリル酸iso-ブチル、単官能性ビニルモノマー、和光一級試薬、富士フイルム和光純薬工業社製
・スチレン:単官能性ビニルモノマー、和光一級試薬、富士フイルム和光純薬工業社製
・パーロイルL:商品名、ジラウロイルパーオキシド、油溶性有機過酸化物、重合開始剤、日油社製
・エマルゲンA-500:商品名、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ノニオン性界面活性剤、HLB18、花王ケミカル社製
・エマルゲンA-90:商品名、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ノニオン性界面活性剤、HLB14.5、花王ケミカル社製
・ペレックスSSL:商品名、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、アニオン性界面活性剤、花王ケミカル社製
・ポバール22―88:商品名、部分鹸化ポリビニルアルコール、分散剤、クラレ社製
【0107】
実施例1
[工程(1)]
容器に、Chimassorb81 25.00質量部、アデカスタブLA-63P 25.00質量部、MMA47.50質量部、EGDMA2.50質量部およびパーロイルL 0.40質量部を仕込み、室温(25℃)で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0108】
別途、ビーカーに、脱イオン水143.97質量部、エマルゲンA-500 4.00質量部を仕込み、室温で攪拌することにより、均一な界面活性剤含有液を調製した。
【0109】
次いで、疎水性溶液をビーカーの界面活性剤含有液に加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数12000min-1で10分間攪拌することにより、疎水性溶液を界面活性剤含有液中に分散させて、疎水性溶液の水分散液を調製した。
【0110】
水分散液における疎水性液滴のメジアン径は、0.92μmであった。疎水性液滴のメジアン径は、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置LA-960V2を用いて測定した。以下の実施例において、疎水性液滴のメジアン径の測定方法は、特記する以外は、上記と同様である。
【0111】
[工程(2)]
その後、この水分散液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した4口フラスコに移し、窒素気流下、6cm径の攪拌器により、周速18.9m/分で攪拌しながら、4口フラスコをウォーターバスにより昇温して、MMAおよびEGDMAを重合した。重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で4時間、連続して実施した。続いて、ウォーターバスを昇温して、反応液の温度を80±2℃に昇温し、2時間熟成した。その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、機能成分を含有する粒子の水分散液を得た。
【0112】
その後、水分散液を、60メッシュ(開口径0.28mm、線径0.14mm)の網で分級した。網上に残存する固形物は、粒子の凝集物であり、全固形分量における凝集物の割合を算出した。全固形分量における凝集物の割合は、0.58質量%であった。
【0113】
粒子のメジアン径は、0.83μmであった。水分散液における粒子のメジアン径は、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置LA-960V2を用いて測定した。以下の実施例において、粒子のメジアン径の測定方法は、上記と同様である。
【0114】
実施例2から実施例8、および、比較例6から比較例9
実施例1と同様の手順により、粒子の水分散液を製造した。但し、配合処方および分散条件は、表1および表2の記載に従って変更した。
【0115】
比較例1から比較例5
実施例1と同様の手順により、粒子の水分散液の製造を試みた。但し、配合処方および分散条件は、表2の記載に従って変更した。
【0116】
しかしながら、比較例1から比較例5では、重合中にゲルが発生した。そのため、工程(2)の途中で、粒子の水分散液の製造を中止した。
【0117】
比較例8および比較例9では、重合途中で凝集物が発生した。
【0118】
実施例9~12
実施例1と同様の手順により、粒子の水分散液を製造した。但し、脱イオン水を243.97質量部に変更し、また、配合処方は、表3の記載に従った。実施例9および実施例10における疎水性液滴のメジアン径は、光学顕微鏡によりを求めた。
【0119】
(評価)
(粒子の樹脂混練性)
実施例1から実施例8、および、比較例6から比較例9の水分散液を、スプレードライヤー(大川原化工機製L-8i)を用いてスプレードライして、粒子を樹脂混練用添加剤として得た。スプレードライヤーのアトマイザー回転数が24000min-1であり、入り口温度が120℃である。
【0120】
次いで、得られた樹脂混練用添加剤を低密度ポリエチレン樹脂(「ノバテックLD」LF441MD1、MFR:2.0g/10min、密度:0.924g/cm3、日本ポリエチレン社製)とドライブレンドして、樹脂組成物を得た。低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対する機能成分の配合割合を0.5質量部とした。その後、樹脂組成物を、二軸押出機(サーモサイエンティフィック社製プロセス11卓上二軸スクリューエクストルーダー)を用いて160℃で混練して、樹脂ストランドを成形した。
【0121】
このストランドを液体窒素に浸漬し、取り出してハンマーで割った断面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製TM3000)で観察した。
【0122】
実施例1から実施例8は、粒子が凝集せず分散していた。実施例1から実施例8のそれぞれの分散性を「A」と評価した。
【0123】
これに対し、比較例6から比較例9では、粒子が、互いに凝集した。これは、PVAの凝集に由来すると推測される。
【0124】
比較例6および比較例7では、凝集体1つの断面当たりの平均で、粒子が20個以上凝集した凝集体が確認された。比較例6および比較例7のそれぞれの分散性を「C」と評価した。
【0125】
比較例8および比較例9では、凝集体1つの断面当たりの平均で、粒子が10個以上、19個以下凝集した凝集体が確認された。比較例8および比較例9のそれぞれの分散性を「B」と評価した。以上の結果を表1および表2に記載する。
【0126】
実施例3の樹脂混練用添加剤が添加されたポリエチレン混練ストランドの断面SEM画像の画像処理図を
図1に示す。比較例7の樹脂混練用添加剤が添加されたポリエチレン混練ストランドの断面SEM画像の画像処理図を
図2に示す。
【0127】
【0128】
【0129】