(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075403
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】積層体及びレーザーラベル
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20240527BHJP
B41M 5/26 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B32B27/20
B41M5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186831
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雄介
(72)【発明者】
【氏名】塩見 恭子
【テーマコード(参考)】
2H111
4F100
【Fターム(参考)】
2H111HA14
2H111HA23
2H111HA32
4F100AA20B
4F100AA21A
4F100AA21B
4F100AC05A
4F100AD11B
4F100AH07A
4F100AJ02A
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK24B
4F100AK42C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA13A
4F100CA13B
4F100DE02A
4F100DE04A
4F100DG10D
4F100EH46
4F100EJ42
4F100EJ55C
4F100GB90
4F100JL13A
4F100JL14D
4F100JN01C
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】文字視認性と光源の色透過性の両方に優れる積層体及びレーザーラベルの提供。
【解決手段】第一結着樹脂、鱗片状粒子、及び、トリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子を含む第一樹脂組成物からなる第一の樹脂層と、第二結着樹脂を含む第二樹脂組成物からなる第二の樹脂層と、をこの順で積層する積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一結着樹脂、鱗片状粒子、及び、トリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子を含む第一樹脂組成物からなる第一の樹脂層と、
第二結着樹脂を含む第二樹脂組成物からなる第二の樹脂層と、
をこの順で積層する積層体。
【請求項2】
前記鱗片状粒子の含有量は、前記第一結着樹脂100質量部に対して3質量部以上20質量部以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記鱗片状粒子は、酸化チタン被覆マイカを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記球状粒子は、ベンゾグアナミンビーズ及びメラミンビーズの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記球状粒子の含有量は、前記第一結着樹脂に対して100質量部に対して3質量部以上20質量部以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記第一の樹脂層は、顔料を更に含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記顔料は、酸化チタンを含む、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記酸化チタンの含有量は、前記第一結着樹脂100質量部に対して3質量部以上15質量部以下である、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記第二の樹脂層は、顔料を更に含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
前記顔料は、カーボンブラックを含む、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記第二の樹脂層は、厚みが0.5μm以上30μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
前記第一の樹脂層は、粘着層である、請求項1に記載の積層体。
【請求項13】
前記第一の樹脂層と前記第二の樹脂層との間に、第三結着樹脂を含む第三樹脂組成物からなる透明樹脂層をさらに含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項14】
第二結着樹脂は、アクリル樹脂を主成分として含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項15】
レーザーラベル用である、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項16】
請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の積層体を含む、レーザーラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びレーザーラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーラベリング技術は、2層以上の樹脂層が積層した積層体の表層を、レーザー照射によりエッチングして下層を露出させることで、文字、バーコード、記号等を印字する技術である。
例えば、特許文献1では、レーザー光照射により除かれ得る着色樹脂層、該着色樹脂層に積層され、着色樹脂層と視認可能な色差を有する着色破壊層、該着色破壊層に積層された接着剤層からなるレーザーラベルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザーラベルは、例えば、産業用機器やパソコン等のインジケーターランプの表面に貼り、前記インジケーターランプの光を、レーザー印字した領域から透過させることで機器電源のオンオフの判別等を容易にする用途でも使用される。従来のレーザーラベルでは、下層の色合いが透けないことが重視されているため、光を遮光する材質を含む層を有する積層体とされている。そのため、遮光する材質を使用するため、印字された文字の判別はしやすい(以下、この現象を文字視認性とも称す。)。しかし、従来のレーザーラベルでは、インジケーターランプ等の光源の色が、レーザー印字した領域から透過しづらいため、光源の色の判別がしづらい(以下、この現象を光源の色透過性とも称す。)。そして、光源の色透過性を改善するために、光源の色を透過する材質を含む積層体等とすると、印字された文字の判別がしにくくなる。つまり、従来の積層体では、レーザーラベルに適用した際に、文字視認性と光源の色透過性とがトレードオフの関係にあった。
本開示では、上記事情を鑑み、文字視認性と光源の色透過性の両方に優れる積層体及びレーザーラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、以下の態様を包含する。
<1> 第一結着樹脂、鱗片状粒子、及び、トリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子を含む第一樹脂組成物からなる第一の樹脂層と、
第二結着樹脂を含む第二樹脂組成物からなる第二の樹脂層と、
をこの順で積層する積層体。
<2> 前記鱗片状粒子の含有量は、前記第一結着樹脂100質量部に対して3質量部以上20質量部以下である、前記<1>に記載の積層体。
<3> 前記鱗片状粒子は、酸化チタン被覆マイカを含む、前記<1>又は<2>に記載の積層体。
<4> 前記球状粒子は、ベンゾグアナミンビーズ及びメラミンビーズの少なくとも一方を含む、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の積層体。
<5> 前記球状粒子の含有量は、前記第一結着樹脂に対して100質量部に対して3質量部以上20質量部以下である、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の積層体。
<6> 前記第一の樹脂層は、顔料を更に含む、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の積層体。
<7> 前記顔料は、酸化チタンを含む、前記<6>に記載の積層体。
<8> 前記酸化チタンの含有量は、前記第一結着樹脂100質量部に対して3質量部以上15質量部以下である、前記<7>に記載の積層体。
<9> 前記第二の樹脂層は、顔料を更に含む、前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の積層体。
<10> 前記顔料は、カーボンブラックを含む、前記<9>に記載の積層体。
<11> 前記第二の樹脂層は、厚みが0.5μm以上30μm以下である、前記<1>~<10>のいずれか1つに記載の積層体。
<12> 前記第一の樹脂層は、粘着層である、前記<1>~<11>のいずれか1つに記載の積層体。
<13> 前記第一の樹脂層と前記第二の樹脂層との間に、第三結着樹脂を含む第三樹脂組成物からなる透明樹脂層をさらに含む、前記<1>~<12>のいずれか1つに記載の積層体。
<14> 第二結着樹脂は、アクリル樹脂を主成分として含む、前記<1>~<13>のいずれか1つに記載の積層体。
<15> レーザーラベル用である、前記<1>~<14>のいずれか1つに記載の積層体。
<16> 前記<1>~<14>のいずれか1つに記載の積層体を含む、レーザーラベル。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、文字視認性と光源の色透過性の両方に優れる積層体及びレーザーラベルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示に係る積層体の層構成の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、組成物中の各成分の量は、特に断らない限り、各成分に複数の種類の物質が含まれる場合に複数の種類の物質を合計した量で表す。
本開示において(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの一方または両方を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの一方または両方を意味する。
本開示において、「印字」とは、文字、記号及び符号の記録だけでなく、塗りつぶしも含む概念であり、レーザー照射によりエッチングされた領域全てを指す。
【0009】
-積層体-
本開示に係る積層体は、第一結着樹脂、鱗片状粒子、及び、トリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子を含む第一樹脂組成物からなる第一の樹脂層と、第二結着樹脂を含む第二樹脂組成物からなる第二の樹脂層と、をこの順で積層する積層体である。
【0010】
本開示に係る積層体は、上記構成を有することにより、文字視認性と光源の色透過性の両方に優れる。この作用機序は必ずしも明らかではないが以下のように推察される。
【0011】
本開示に係る積層体に、第二の樹脂層側(つまり表層側)からレーザー照射すると、第二の樹脂層がエッチングされ、第一の樹脂層が露出する(透明樹脂層を有する場合は透明樹脂層が露出する)。
露出した(又は透明樹脂層を介して見られる)第一の樹脂層には、鱗片状粒子と球状粒子が含まれる。
第一の樹脂層において鱗片状粒子は、その構造的特徴から、文字を視認するときの光が入射する面(つまりレーザー照射によりエッチングされる面)に対して水平状に並びやすい。水平に並んだ鱗片状粒子に入射した光が反射されるときには、いずれも鏡面反射する傾向にある。そのため、入射した光が、エッチングされていない第二の樹脂層の層壁などに吸収されることが抑制され、光を拡散しつつも明るさを保ちやすくなることから、文字視認性に優れる。また、水平に並んだ鱗片状粒子に下部から照射された(又は入射した)光は、散乱しづらく透過しやすいため、光源の色透過性にも優れる。
さらに、トリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子は、その構造的特徴から、光を入射すると、一部の光は球状粒子の表面で光散乱し、大部分の光は屈折しながら球状粒子の内部を透過する。そのため、レーザー照射によりエッチングされる面の対面側から光を入射したときも、光源の色が不要に遮光されずに、光がエッチングされた面に均一に広がる。よって、光源の色透過性にも優れる。
【0012】
さらに、本開示に係る積層体は、下地隠蔽性、第一の樹脂層側(つまりレーザー照射でエッチングする面の対面側)から光を照射したときの光透過性及び光源視認性にも優れる。これは、上述の通り、第一の樹脂層における鱗片状粒子及び球状粒子が、光を不要に遮光せず、光散乱又は鏡面反射するためであると考えられる。
【0013】
以下、本開示に係る積層体について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本開示に係る積層体の層構成の一例を示す模式断面図である。
積層体100は、第一の樹脂層11の上に、透明樹脂層12が設けられ、その上に第二の樹脂層13をなす層C、層B、及び層Aが順次形成された構造を有する。
【0014】
図1では、第二の樹脂層13は層C、層B、及び層Aの三層構成であるが、第二の樹脂層13は一層であってもよい。層C、層B、及び層Aは、いずれも第二結着樹脂を含む。
図1では、第一の樹脂層11は一層構成であるが、二層以上設けられていてもよい。第一の樹脂層11が二層以上設けられる場合、その二層以上の層全てが、第一結着樹脂、鱗片状粒子、及び、トリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子を含む第一樹脂組成物からなる。
図示はしないが、第一の樹脂層11の下、つまり、透明樹脂層12に接触する面の対面に、基材層をさらに含んでいてもよい。
【0015】
以下、本開示に係る積層体の各層について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0016】
<第一の樹脂層>
第一の樹脂層は、第一結着樹脂、鱗片状粒子及びトリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子を含む第一樹脂組成物からなる。第一の樹脂層は、単層であっても、複数の層であってもよい。
【0017】
〔第一樹脂組成物〕
第一樹脂組成物は、第一結着樹脂、鱗片状粒子、及び、トリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子を含む。第一樹脂組成物は、第一結着樹脂、鱗片状粒子及びトリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子以外のその他の材料(以下、単に「その他の材料」とも称す。)を含んでいてもよい。
【0018】
(第一結着樹脂)
第一結着樹脂は、特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET樹脂」とも称す。)、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂(ロジンエステル樹脂を含む。)等が挙げられる。
上記の中でも、ラベルとしての取り扱い性の点からは、第一結着樹脂はポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂及びエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましく、アクリル樹脂及びエステル樹脂(より好ましくはロジンエステル樹脂)の少なくとも一方を含むことがより好ましい。
【0019】
(鱗片状粒子)
鱗片状粒子は、例えば、一方(例えば短軸)方向の平均長さを1としたときの他方(例えば長軸)方向の平均長さの比率(以下「アスペクト比」ともいう)が5以上である粒子のことをいう。
【0020】
鱗片状粒子は、光輝性材料(つまり入射した光を鏡面反射する材料)であれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム単体、黄銅、青銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛等の金属粒子;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化スズ及びタルク等の金属酸化物で被覆されたマイカ(雲母);未被覆のマイカ(雲母);硫酸バリウム、層状ケイ酸塩、層状アルミニウムのケイ酸塩等の被覆薄片状無機結晶基質;単結晶板状酸化チタン;ガラス薄片;シリカ薄片;オキシ塩化ビスマス;などが挙げられる。
マイカ(雲母)は、天然雲母(例えば白雲母、金雲母等)、合成雲母(例えばフッ素金雲母、カリウム四ケイ素雲母、ナトリウム四ケイ素雲母等)のいずれであってもよい。鱗片状粒子は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
上記の中でも、鱗片状粒子は、酸化チタン被覆マイカを含むことが好ましい。
鱗片状粒子が酸化チタン被覆マイカを含むと、第一の樹脂層において鱗片状粒子が入射光を不要に遮光せず、より好適に鏡面反射することから、光源の色透過性と文字視認性により優れる。
【0022】
鱗片状粒子の平均一次粒子径は、第一の樹脂層における配向性をより好適にする観点から、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上80μm以下であることがより好ましく、10μm以上60μm以下であることがさらに好ましい。
【0023】
鱗片状粒子の平均一次粒子径は、後述する球状粒子の平均一次粒子径と同様の手法によって測定された値である。
【0024】
鱗片状粒子の含有量は、第一結着樹脂100質量部に対して、3質量部以上20質量部以下であることが好ましく、4質量部以上18質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましい。
【0025】
(トリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子)
トリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子(以下、単に「球状粒子」ともいう)とは、トリアジン環を有する化合物を含有し、かつ、一方(例えば短軸)方向の平均長さを1としたときの他方(例えば長軸)方向の平均長さの比率(以下「アスペクト比」ともいう)が5未満である粒子が挙げられる。つまり、球状粒子には、真球の他に楕円球も含まれる。
球状粒子は、少なくともトリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子であれば特に制限されない。トリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子を含むと、屈折率が好適に調整され、球状粒子に光が入射したときの散乱性に優れ、文字視認性に優れる。球状粒子は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
トリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子としては、例えば、トリアジン環を有する化合物の球状粒子、トリアジン環を有する化合物と粒子とからなる複合球状粒子などが挙げられる。
トリアジン環を有する化合物の球状粒子としては、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドの共重合体、ベンゾグアナミンとメラミンとホルムアルデヒドの共重合体、メラミンとホルムアルデヒドの共重合体、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、メラミン樹脂等の樹脂の球状粒子が挙げられる。
トリアジン環を有する化合物と粒子とからなる複合球状粒子としては、例えば、前記樹脂と、無機粒子(例:シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム)、又は、有機粒子(例:ベンゾグアナミンビーズ、メラミンビーズ等)との複合球状粒子が挙げられる。
【0027】
球状粒子は、屈折率をより好適に調整して光が入射したときの散乱性により優れた球状粒子とする観点から、ベンゾグアナミンビーズ及びメラミンビーズの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0028】
球状粒子の平均一次粒子径は、光散乱性を好適に調整する観点から、0.1μm以上10.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以上8.0μm以下であることがより好ましく、0.8μm以上6.0μm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
球状粒子の含有量は、第一結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上25質量部以下であることが好ましく、3質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、4質量部以上19質量部以下であることがさらに好ましい。
球状粒子の含有量が上限値以下であると、過度な光散乱による光の遮蔽が抑制され、光源の色透過性及び光透過性により優れる。
球状粒子の含有量が下限値以上であると、光散乱が適度に起こるため、文字視認性と光源視認性により優れる。
【0030】
鱗片状粒子と球状粒子の総量は、特に制限されないが、第一結着樹脂100質量部に対して、5質量部以上40質量部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
鱗片状粒子と球状粒子の総量が下限値以上であると、光源の色の透過と光の反射とのバランスがより好適な範囲となり文字視認性と光源の色透過性の両方により優れる。
鱗片状粒子と球状粒子の総量が上限値以下であると、第一樹脂層の硬度が高くなり脆くなることが抑制される。
【0031】
鱗片状粒子と球状粒子の質量比(鱗片状粒子/球状粒子)は、特に制限されないが、光反射性と光散乱性を互いに好適に調整する観点からは、0.1以上5.0以下であることが好ましく、0.2以上4.0以下であることがより好ましく、0.3以上3.0以下であることがさらに好ましい。
【0032】
(その他の材料)
第一樹脂組成物は、第一結着樹脂、鱗片状粒子及びトリアジン環を有する化合物を含有する球状粒子以外のその他の材料を含んでいてもよい。その他の材料としては、例えば、顔料、架橋剤、溶剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、マット剤、改質剤等が挙げられる。
【0033】
(顔料)
第一の樹脂層は、顔料を更に含むことが好ましい。
第一の樹脂層が顔料を含むと光反射性と光散乱性をより好適に調整できるため、文字視認性と光源の色透過性により優れる。また、下地隠蔽性にも優れる。
顔料は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
顔料としては、特に制限されないが、レーザー照射によって除去可能かつ長期間使用可能な耐候性、耐久性のある顔料であることが好ましい。
顔料としては、The Society of Dyers and Colourists社出版による、Colour Index 3rd Edition(1971)及びSupplements(1975)に掲載される顔料も挙げられる。
【0034】
顔料の色調は、特に制限されず、黄色、橙色、赤色、紫色、青色、緑色、茶色、黒色及び白色等のいずれの色調でもよい。
顔料は、レーザーが照射された領域が発色する材料であるレーザー発色材料であってもよい。レーザー発色材料としては、遷移金属系の化合物、例えば、酸化ビスマス等のビスマス含有化合物、酸化モリブデン等のモリブデン含有化合物、酸化鉄等の鉄含有化合物などが挙げられる。
【0035】
顔料は、例えば、白色顔料を含むことが好ましく、酸化チタンを含むことがより好ましい。顔料として白色顔料(より好ましくは酸化チタン)を更に含むと、光反射性と光散乱性をより好適に調整できるため、文字視認性と光源の色透過性により優れる。また、光源視認性及び下地隠蔽性にも優れる。
【0036】
酸化チタンの含有量は、第一結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上25質量部以下であることが好ましく、2質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましい。
酸化チタンの含有量が上限値以下であると、酸化チタンにより遮光されることが抑制され、光源の色透過性と光透過性により優れる。酸化チタンの含有量が下限値以上であると、レーザー照射でエッチングされた領域とその他の領域とで濃淡にコントラストがつくため、文字視認性により優れる。
【0037】
酸化チタンの含有量は、顔料の総量100質量部に対して、90質量部以上であることが好ましく、95質量部以上であることがより好ましく、98質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。
【0038】
顔料の含有量は、第一結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上25質量部以下であることが好ましく、2質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましい。
顔料の含有量が上限値以下であると、顔料により遮光されることが抑制され、光源の色透過性と光透過性により優れる。顔料の含有量が下限値以上であると、レーザー照射でエッチングされた領域とその他の領域とで濃淡にコントラストがつくため、文字視認性により優れる。
【0039】
(架橋剤)
架橋剤は、特に限定されないが、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等が挙げられ、イソシアネート系架橋剤が好ましく、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物の多量体であることがより好ましい。1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びこれらの水添物、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、並びにイソホロンジイソシアネートが挙げられる。上記の中でも、黄変が抑制される観点からHMDIが好ましい。架橋剤は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
(溶剤)
溶剤としては、シクロヘキサノン、イソホロン、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル系溶剤、
ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ミネラルスピリット、ケロシン等の脂肪族炭化水素系溶剤、トルエン、キシレン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、及びクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤が挙げられる。溶剤は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
(レベリング剤)
レベリング剤としては、フッ素系レベリング剤、ケイ素系レベリング剤、アクリル系レベリング剤等が挙げられる。樹脂組成物がレベリング剤を含む場合、レベリング剤が樹脂組成物の乾燥時に塗膜表面に配向し、塗膜の表面張力を均一化することで、浮きまだらやハジキなどの外観不良が防止されるとともに、基材層(例えばフィルム)との濡れが改善される。レベリング剤として具体的には、例えば、「ポリフロー」(共栄社化学(株)製のアクリル系レベリング剤)、「ディスパロン」(楠本化成(株))、「BYK」(ビックケミー・ジャパン)等が挙げられる。レベリング剤は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
(消泡剤)
消泡剤としては、公知のものを適宜使用することができる。消泡剤としては、例えば、「DOWSIL」(ダウ・東レ(株)、シリコーン系消泡剤)、「信越シリコーン(商標)」(信越化学工業(株))、TSF451シリーズおよびTFH450シリーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)等が挙げられる。消泡剤は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
(紫外線吸収剤、光安定剤)
紫外線吸収剤及び光安定剤としては、それぞれ公知のものを適宜使用することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、「Tinuvin400」(BASF社)等が挙げられる。光安定剤としては、例えば、「Tinuvin770」(BASF社)等が挙げられる。紫外線吸収剤、及び光安定剤は、それぞれ1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
(マット剤)
マット剤としては、公知のものを適宜使用することができる。マット剤としては、例えば、多孔性シリカである「サイリシア380(登録商標)」(体積平均粒径9μm程度、富士シリシア社製)等が挙げられる。マット剤は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
(改質剤)
改質剤としては、公知のものを適宜使用することができる。改質剤としては、例えば、ポリカプロラクトンポリオールである「プラクセルシリーズ」(ダイセル工業(株)製)等が挙げられる。改質剤は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
第一の樹脂層は粘着層であってもよい。
第一の樹脂層が粘着層であると、レーザーラベルのコストを低く抑えることができる。
第一の樹脂層を粘着層とする場合、第一結着樹脂としては、エステル樹脂(より好ましくはロジンエステル樹脂)、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
【0047】
第一の樹脂層は、厚みが0.5μm以上30μm以下であることが好ましく、5μm以上28μm以下であることがより好ましく、10μm以上25μm以下であることがさらに好ましい。なお、第一の樹脂層が複数の層で構成される場合、第一の樹脂層の厚みとは、それらの厚みの総和を指す。
第一の樹脂層の厚みが上記範囲内であると、鱗片状粒子と球状粒子による光散乱性と光反射性がより担保され、文字視認性と光透過性により優れる。また、第一の樹脂層が粘着層である場合に、粘着性が担保されやすい。
【0048】
<第二の樹脂層>
第二の樹脂層は、第二結着樹脂を含む第二樹脂組成物からなる。第二の樹脂層は、単層であっても、複数の層であってもよい。
【0049】
〔第二樹脂組成物〕
第二樹脂組成物は、第二結着樹脂を含む。第二樹脂組成物は、第二結着樹脂以外のその他の材料(以下、単に「その他の材料」とも称す。)を含んでいてもよい。
【0050】
(第二結着樹脂)
第二結着樹脂は、特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET樹脂」とも称す。)、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂(ロジンエステル樹脂を含む。)等が挙げられる。
上記の中でも、ラベルとしての取り扱い性の点からは、第二結着樹脂はポリカーボネート樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂及びエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましく、アクリル樹脂を含むことがより好ましい。
【0051】
第二結着樹脂はアクリル樹脂を主成分として含むことが好ましい。第二結着樹脂がアクリル樹脂を主成分として含むと、第一の樹脂層と第二の樹脂層との接合性により優れる。
「アクリル樹脂を主成分として含む」とは、第二結着樹脂を占める樹脂成分のうち、アクリル樹脂の割合が最も多いことをいう。
【0052】
(その他の材料)
第二樹脂組成物は、第二結着樹脂以外のその他の材料を含んでいてもよい。その他の材料としては、例えば、顔料、架橋剤、溶剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、マット剤、改質剤等が挙げられる。これらの詳細は、先述の第一樹脂組成物で説明したものと同様である。
【0053】
第二の樹脂層は顔料を更に含むことが好ましい。
第二の樹脂層が顔料を含むと、第一の樹脂層との色調のコントラスト等が好適に調整されやすく、文字視認性により優れる。
【0054】
第二の樹脂層における顔料としては、第一の樹脂層における顔料の例示で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0055】
顔料は黒色顔料を含むことが好ましく、カーボンブラックを含むことがより好ましい。
第二の樹脂層が黒色顔料を含むと、第一の樹脂層との色調のコントラスト等が好適に調整されやすく、文字視認性により優れる。
【0056】
第二の樹脂層が二層以上の層で構成される場合、例えば、色の濃淡コントラストを調整し文字視認性により優れたものとする観点から、最表面(つまりレーザー照射でエッチングされる側の最表面)の層を、黒色顔料を含む層とし、前記最表面の層の下層を、白色顔料を含む層としていてもよい。
【0057】
第二の樹脂層が二層以上の層で構成される場合、例えば、色の濃淡コントラストを調整し文字視認性により優れたものとする観点から、濃淡差の大きい顔料(例えば白色顔料である酸化チタンと黒色顔料であるカーボンブラックの組み合わせ)を2種以上含む層としてもよい。
【0058】
顔料の含有量は、第二結着樹脂100質量部に対して28質量部以上48質量部以下であることが好ましく、31質量部以上45質量部以下であることがより好ましく、34質量部以上41質量部以下であることがさらに好ましい。なお、第二の樹脂層が2層以上ある場合、顔料の含有量とは、第二の樹脂層全体における第二結着樹脂の総量に対する、顔料の総量を表す。顔料の含有量が28質量部以上であると、レーザー照射でエッチングされた領域とその他の領域とで濃淡にコントラストがつくため、文字視認性により優れる。
【0059】
第二の樹脂層は、厚みが0.5μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上25μm以下であることがより好ましく、2μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。なお、第二の樹脂層が複数の層で構成される場合、第二の樹脂層の厚みとは、それらの厚みの総和を指す。
第二の樹脂層の厚みが上記範囲内であると、レーザーを第二の樹脂層側から(つまり表層側から)照射してエッチングしたときに、第一の樹脂層までエッチングされることが抑制される。そのため、第一の樹脂層における文字視認性が低下することが抑制される。
【0060】
<透明樹脂層>
本開示に係る積層体は、第一の樹脂層と第二の樹脂層との間に、第三結着樹脂を含む第三樹脂組成物からなる透明樹脂層をさらに含むことが好ましい。透明樹脂層は、単層であっても、複数の層であってもよい。
透明樹脂層を含むと、レーザーを第二の樹脂層側から(つまり表層側から)照射してエッチングしたときに、第一の樹脂層までエッチングされることが抑制される。そのため、第一の樹脂層における文字視認性が低下することが抑制される。
【0061】
「透明樹脂層」とは、波長400nm~700nmの可視光の透過率が90%以上である樹脂層を指す。透明樹脂層の前記可視光の透過率は、95%以上であることが好ましい。
透明樹脂層の透過率は、HITACHI株式会社製の分光光度計UH4150を用いて測定することができる。
【0062】
〔第三樹脂組成物〕
第三樹脂組成物は、第三結着樹脂を含む。
第三結着樹脂は、層を透明樹脂層とすることができる樹脂であれば特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0063】
第三樹脂組成物は、層が透明樹脂層となる範囲内(つまり、透明樹脂層の透過率が上記範囲を満たす範囲内)で、第三結着樹脂以外のその他の材料をさらに含んでいてもよい。その他の材料としては、第一樹脂組成物で挙げたその他の材料と同様の物が挙げられる。
【0064】
透明樹脂層は厚みが1μm以上80μm以下であることが好ましく、10μm以上70μm以下であることがより好ましく、20μm以上60μm以下であることがさらに好ましい。なお、透明樹脂層が複数の層で構成される場合、透明樹脂層の厚みとは、それらの厚みの総和を指す。
透明樹脂層の厚みが上記範囲内であると、レーザーを第二の樹脂層側から(つまり表層側から)照射してエッチングしたときに、第一の樹脂層までエッチングされることが抑制される。そのため、第一の樹脂層における文字視認性が低下することが抑制される。
【0065】
<用途>
本開示に係る積層体は、文字視認性と光源の色透過性の両方に優れている。また、下地隠蔽性、光源視認性、光透過性にも優れている。このため、例えば、精密機器のインジゲーター部位に貼り付けるためのレーザーラベル、ステッカー等としての使用に適しており、レーザーラベルとしての使用が好ましい。
【0066】
<積層体の製造方法>
本開示に係る積層体は、上述した樹脂組成物を、基材層又は必要に応じて設けられる印刷層の上に、順次塗工し、硬化させることで形成される。樹脂組成物の塗工方法は特に制限されず、スクリーン印刷、グラビア印刷、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、ラミネート法、スプレー塗装、静電塗装、浸漬塗装、及び、これらを組み合わせた方法が挙げられる。樹脂組成物を硬化させる方法は特に制限されず、熱風乾燥、オーブン、ホットプレート等を使用して行うことができる。
【0067】
-レーザーラベル-
本開示に係るレーザーラベルは、本開示に係る積層体を含むレーザーラベルである。レーザーラベルとは、レーザー照射により画像の記録が可能であって、被着体に対して貼り付けることができる表示材料のことを指す。
本開示によれば、文字視認性と光源の色透過性の両方に優れるレーザーラベルが得られる。
【0068】
レーザーラベルは、本開示に係る積層体における、第二の樹脂層側(つまり表層側)からレーザー照射して印字される。
積層体に照射するレーザーの強度は、積層体における第二の樹脂層の厚みに応じて適宜設計できる。
【実施例0069】
以下、実施例により本開示を具体的に示すが、本開示はこれら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0070】
<第二の樹脂層形成用インキの作製>
・インキA1
第二結着樹脂であるアクリル樹脂ニカライトH4007K4(日本カーバイド工業(株)製)100.0質量部、ポリカプロラクトンポリオール プラクセルL320AL(ダイセル工業(株)製)52.0質量部、架橋剤タケネートD268(三井化学(株)製)31.5質量部、酸化チタン顔料NBK-967ホワイト(日弘ビックス(株)製)280.0質量部を混合し、固形分が30質量%になるように酢酸エチルで希釈し、第二樹脂組成物である第二の樹脂層形成用インキA1を得た。
【0071】
・インキA2
酢酸エチルにシリカであるサイリシア445(富士シリシア化学(株)製)16.7質量部、第二結着樹脂であるアクリル樹脂ニカライトH4007K4(日本カーバイド工業(株)製)100.0質量部、ポリカプロラクトンポリオール プラクセルL320AL(5ダイセル工業(株)製)22.3質量部、架橋剤タケネートD140N(三井化学(株)製)9.6質量部、タケネートD268(三井化学(株)製) 7.7質量部、カーボンブラック顔料NBK-968ブラック(日弘ビックス(株)製)77.7質量部、酸化チタン顔料NBK-967ホワイト(日弘ビックス(株)製)51.5質量部を混合し、固形分が30質量%になるように酢酸エチルで希釈し、第二樹脂組成物である第二の樹脂層形成用インキA2を得た。
【0072】
・インキB
酢酸エチルにポリフローNo.85HF(共栄社化学(株)製)3.6質量部、OH基含有シリコーンBYK-370(ビッグケミージャパン(株)製)14.0質量部、サイリシア445(富士シリシア化学(株)製)20質量部を添加し、第二結着樹脂であるアクリル樹脂ニカライトH4007K4(日本カーバイド工業(株)製)100.0質量部、ポリカプロラクトンポリオール プラクセル305(ダイセル工業(株)製)13.2質量部、架橋剤タケネートD-140N-60(三井化学(株)製)40.0質量部、架橋剤コロネートHK(東レ(株)製)11.2質量部、酸化チタン顔料NBK-967ホワイト(日弘ビックス(株)製)66.8質量部を混合し、固形分が52.9質量%になるように酢酸エチルで希釈し、第二樹脂組成物である第二の樹脂層形成用インキBを得た。
【0073】
<第一の樹脂層形成用塗工液1の作製>
酢酸エチルに、第一結着樹脂であるペンセルD-125(荒川化学工業(株)製、ロジンエステル樹脂)8.3質量部を溶解させた。
続いて、表1に示す量(質量部)の鱗片状粒子であるイリオジン103WNT(メルク社製、酸化チタンコートマイカ)、球状粒子であるエポスターMS(登録商標)((株)日本触媒製、ベンゾグアナミン(トリアジン環を有する化合物)とホルムアルデヒドの共重合体ビーズ、平均一次粒子径2μm)、第一結着樹脂であるニッセツSY-2523(アクリル系粘着剤、分子量Mw:60万)100質量部を、この順で混合し、攪拌した後、架橋剤であるCK-101(日本カーバイド工業製、イソシアネート架橋剤)3.36質量部を混合、攪拌し、固形分を30質量%に調整し、第一樹脂組成物である第一の樹脂層形成用塗工液1を得た。
【0074】
<第一の樹脂層形成用塗工液2~6及びc1~c5の作製>
鱗片状粒子、球状粒子、第一結着樹脂及び白色顔料の量及び種類を、表1に示す仕様とした以外は、第一の樹脂層用形成用塗工液1と同様の仕様として、第一の樹脂層形成用塗工液2~6及びc1~c5をそれぞれ得た。
なお、第一の樹脂層形成用塗工液6の場合、エポスターMS(登録商標)の代わりに下記の球状粒子を用いた。また、第一の樹脂層形成用塗工液c4の場合、本開示の球状粒子の代わりに下記のアクリルビーズを用いた。
表1中の各成分の欄の数値の単位は「質量部」である。
【0075】
・球状粒子であるメラミンビーズ:日産化学(株)製、オプトビーズ2000M;トリアジン環を有する化合物とシリカからなる複合球状粒子、平均一次粒子径2μm
・アクリルビーズ:トリアジン環を有しないアクリル樹脂粒子、アートパールJ-4P、根上工業(株)製
【0076】
<実施例1~実施例6、比較例1~比較例5>
透明樹脂層として、ユニチカ(株)製PET樹脂フィルムS-50(厚さ50μm)を準備し、両面にコロナ処理を施した。
そして、上記PET樹脂フィルムの一方の面に、インキA1を乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗工し、100℃で1分乾燥させた。
続いて、インキA1の塗膜の上にインキA2を乾燥後の膜厚が2μmになるように塗工し、100℃で1分乾燥させた。
続いて、40℃で3日養生し、インキA2の塗膜の上にインキBを乾燥後の膜厚が15μmとなるように塗工し、150℃1分乾燥した後、60℃で3日養生した。このようにして、上記PET樹脂フィルムの上に、インキA1/インキA2/インキBのこの順で三層構成される第二の樹脂層を形成した。
次に、基材層である剥離紙に、表1に示す種類の第一の樹脂層形成用塗工液を、乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗工し、100℃1分で乾燥させて剥離紙/第一の樹脂層の積層体を作製した。そして、この積層体を、上記PET樹脂フィルムにおける、第二の樹脂層が設けられている面とは反対側の面にラミネートすることで、第一の樹脂層を形成した。これにより、剥離紙/第一の樹脂層/PET樹脂フィルム/第二の樹脂層の積層構造を有するレーザーラベルを得た。なお、第一の樹脂層は粘着層である。
【0077】
<評価>
・レーザー印字
各例のレーザーラベルに対して、第二の樹脂層側の面から、FAYbレーザーマーカーLP-Z 130(パナソニック(株)製)にて、線幅0.01mm、レーザーパワー50.0%、3000mm/秒、印字パルス周期50.0μsの条件で文字「NIPPON CARBIDE INDUSTRY」を印字した(印字1)。また、3cm×3cmの正方形サイズの領域を全面レーザー照射して、正方形状の印字を行った(印字2)。
レーザー印字後の各例のレーザーラベルについて、下記の評価方法で文字視認性、光源視認性、下地隠蔽性、光透過性、光源の色透過性を評価した。各結果を表1に示す。
なお、下記評価方法では、基材層である剥離紙を剥離して評価しているが、基材層の厚みや種類によっては、基材層を剥離せずに光を照射して透過させることが可能であり、本開示の評価方法はこれに限定されない。
【0078】
〔文字視認性〕
各例の印字済みレーザーラベルについて、基材層(剥離紙)を剥離して、第二の樹脂層側(つまりレーザー照射した側)から見たときの、印字1「NIPPON CARBIDE INDUSTRY」の文字の読みやすさを、以下の基準で目視評価した。
-評価基準-
A:文字がはっきり読み取れる。
B:文字が読み取りやすい。
C:文字が読み取れる。
D:文字が読み取りにくい。
【0079】
〔光源視認性〕
各例の印字済みレーザーラベルについて、基材層(剥離紙)を剥離して、第一の樹脂層と接する基材層(剥離紙)側から光照射し、印字2「3cm×3cmのサイズを全面塗りつぶした印字」を、光源の形が視認できるかどうかを、以下の基準で評価した。
-評価基準-
A:光源の形が分からない。
B:光源の形が少し見える。
C:光源の形がはっきり見える。
【0080】
〔下地隠蔽性〕
各例の印字済みレーザーラベルを、基材層(剥離紙)を剥離して、表面が木目状である机の上に置き、第二の樹脂層側(つまりレーザー照射した側)から見たときに、印字2「3cm×3cmのサイズを全面塗りつぶした印字」の領域について、下地の木目調が視認できるかどうかを、下記の基準で評価した。
-評価基準-
A:下地が全く分からない。
B:下地がほとんどわからない。
C:下地が少しみえる。
D:下地がかなり見える。
【0081】
〔光透過性〕
各例の印字済みレーザーラベルについて、基材層(剥離紙)を剥離して、第一の樹脂層側から光照射し、印字2「3cm×3cmのサイズを全面塗りつぶした印字」の領域が、照射した光を透過するかを下記の基準で評価した。
-評価基準-
A:光が透過する。
B:光が透過しない。
【0082】
〔光源の色透過性〕
各例の印字済みレーザーラベルについて、基材層(剥離紙)を剥離して、第一の樹脂層側から青色の光を照射し、印字2「3cm×3cmのサイズを全面塗りつぶした印字」の領域にて、照射した光源の色が確認できるかを下記の基準で評価した。
-評価基準-
A:光源の色がそのまま見える。
B:光源の色がほぼそのまま見える。
C:光の色が少し白っぽく見える。
D:光がかなり白っぽく見える。
E:光が透過しない。
【0083】
【0084】
表1に示すように、実施例の積層体は、比較例の積層体に比べて、レーザーラベルに用いた際に、文字視認性に優れていた。また、実施例の積層体は、比較例の積層体に比べて、光源の色透過性に優れるので、光源の色が白色以外である場合にも、通過した後の光は、光源と同じ色であった。また、実施例の積層体は、光透過性、下地隠蔽性、光源視認性にも優れていた。