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特開2024-75405スイベルジョイント、及び消火用放水銃
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075405
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】スイベルジョイント、及び消火用放水銃
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/08 20060101AFI20240527BHJP
   A62C 35/68 20060101ALI20240527BHJP
   A62C 31/02 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F16L27/08 Z
A62C35/68
A62C31/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186837
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】金川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大室 健
(72)【発明者】
【氏名】廖 赤虹
【テーマコード(参考)】
2E189
3H104
【Fターム(参考)】
2E189DB07
3H104JA04
3H104JB02
3H104LE02
3H104LE06
3H104LF03
3H104LF05
(57)【要約】
【課題】流体圧力がある時にも回転抵抗の増加が抑制されスムーズに回転するスイベルジョイント、及び当該スイベルジョイントを備えた消火用放水銃を提供する。
【解決手段】スイベルジョイント1,100は、内部に流路を有する筒状の外輪体10,110と、内部に流路を有し外輪体10,110に回転自在に嵌合した筒状の内輪体20,120と、外輪体10,110と内輪体20,120との嵌合部分に位置し周方向に複数の玉31,131同士が接触可能に配置されてなる列を有した回転軸受部30,130を備え、回転軸受部30,130は、組立時に玉131を挿入するためのネジ穴150が流体圧により玉131に力が掛かる方向に対して垂直に形成された深溝玉軸受、又はネジ穴が形成されておらず列が複数設けられたアンギュラ玉軸受を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路を有する筒状の外輪体と、
内部に流路を有し前記外輪体に回転自在に嵌合した筒状の内輪体と、
前記外輪体と前記内輪体との嵌合部分に位置し周方向に複数の玉同士が接触可能に配置されてなる列を有した回転軸受部を備え、
前記回転軸受部は、組立時に前記玉を挿入するためのネジ穴が流体圧により前記玉に力が掛かる方向に対して垂直に形成された深溝玉軸受、又は前記ネジ穴が形成されておらず前記列が複数設けられたアンギュラ玉軸受を有することを特徴とするスイベルジョイント。
【請求項2】
前記深溝玉軸受は、前記列が単数であることを特徴とする請求項1に記載のスイベルジョイント。
【請求項3】
前記アンギュラ玉軸受は、前記列同士の組み合わせが正面組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のスイベルジョイント。
【請求項4】
前記アンギュラ玉軸受は、接触角が70度以上90度以下であることを特徴とする請求項1に記載のスイベルジョイント。
【請求項5】
前記アンギュラ玉軸受は、前記内輪体における軌道面と、前記外輪体における軌道面が、それぞれ前記玉の1/8周以上3/8周以下の長さを有することを特徴とする請求項1に記載のスイベルジョイント。
【請求項6】
前記回転軸受部が二つの前記列からなる前記アンギュラ玉軸受を有する場合において、前記外輪体は軸方向に二分割可能であり、前記外輪体の第一分割体と前記内輪体とで囲まれた空間に前記アンギュラ玉軸受の一方の前記列が配置され、前記外輪体の第二分割体と前記内輪体とで囲まれた空間に前記アンギュラ玉軸受の他方の前記列が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスイベルジョイント。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のスイベルジョイントを備え、前記スイベルジョイントにより筒先の方向が可変に構成されていることを特徴とする消火用放水銃。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の途中に設けるスイベルジョイント、及び当該スイベルジョイントを備えた消火用放水銃に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力のある流体や大気圧以下の流体が通る配管において、その配管を回転させる機械部品としての継手をスイベルジョイント又は単にスイベルと呼ぶ。
スイベルジョイントには、規格品の玉軸受により荷重を支持するタイプもあるが、このタイプは外輪と内輪を受ける部材がそれぞれ必要になるため、スイベルジョイントが半径方向に大型化する。
スイベルジョイントの小型化のために、スイベルジョイント自身に深溝玉軸受のような軌道面(転動面)を加工することが多く行われている。この構造のスイベルジョイントは、組立時に玉を入れるために、外側部材(外輪体)の軌道面に回転軸に対して垂直な穴が加工されている。この穴にはネジ加工がされており、玉を組み入れた後に、止めネジで蓋をするようになっている。
【0003】
ここで、特許文献1には、固定フランジ円筒と、フランジ円筒と相対して軸線方向に結合される外側フランジ円筒と、外側フランジ円筒の軸心の周りに回転可能な内側円筒とからなる回転管継手において、相対的に回転可能な固定フランジ円筒のフランジ側端面の内側と内側円筒の端面の間に環状の第1次密封体を設け、又相対的に回転可能な外側フランジ円筒の内周面と内側円筒の外周面の間に環状の第2次密封体を設け、さらに互に固定される両フランジ円筒の接合面の間で、しかも第1次密封体の外周部に隣接して密封体保持環が固定手段により係止され、然してその弛緩時には固定手段の周りに回転可能である回転管継手が開示されている。特許文献1の第1図には、球(16)を挿入するためのネジ穴(17)が回転軸に対して垂直に設けられている様子が描かれている。
また、特許文献2には、ソケット部材と、ソケット部材の挿入通路内に挿入されたプラグ部材と、ソケット部材の内周面とプラグ部材の外周面との間で周方向に並べて配置された複数のボールと、流体通路を外部に対して密封するOリングとを備え、ソケット部材の内周面には、内側後方に面する環状の第1保持面と内側前方に面する環状の第2保持面とが形成され、プラグ部材の外周面には、外側後方に面する環状の第3保持面と外側前方に面する環状の第4保持面とが形成され、複数のボールのそれぞれは、第1乃至第4保持面によって支持されて保持されているスイベルジョイントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭51-019715号公報
【特許文献2】特開2018-021585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内部を通る流体に圧力があるとき、スイベルジョイントにはアキシャル(アキシアル)方向の力が加わるが、引用文献1記載の回転管継手のように、玉(球)を保持する保持器を有さず、また玉を挿入するためのネジ穴がスイベルジョイントの回転軸に対して垂直に設けられている構成だと、流体圧によってネジ穴に一部の玉が嵌まり、回転抵抗が急増してしまう場合がある。
一方、引用文献2記載のスイベルジョイントでは、玉(ボール)が揺動する方向にはネジ穴等の段差が形成されていないため、このような問題は生じにくいと考えられる。しかし、引用文献2記載のスイベルジョイントは深溝玉軸受方式ではなく、またボールは一列だけであるため、流体圧力等によっては回転がスムーズでなくなる可能性がある。
また、市販品のなかには、深溝玉軸受方式であって、玉を挿入するためのネジ穴が回転軸に対して垂直に設けられ、そのネジ穴に螺入する止めネジの先端が軌道面と同形状に加工されているスイベルジョイントや、流路の前後方向に軸を通すことによりアキシャル方向の力を受けるようにしたスイベルジョイントがあり、これらは玉がネジ穴の段差に引っ掛かることは殆どないと考えられる。しかし、前者については、止めネジに複雑な加工が必要、止めネジの位置が重要であるため組立及び分解が困難、また玉を1個ずつ出し入れする必要があるため組立及び分解の手間が大きい等といった課題があり、後者については、流路中に軸を通すため流路抵抗が増加する、また玉を1個ずつ出し入れする必要があるため組立及び分解の手間が大きい等といった課題がある。
そこで本発明は、流体圧力がある時にも回転抵抗の増加が抑制されスムーズに回転するスイベルジョイント、及び当該スイベルジョイントを備えた消火用放水銃を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明のスイベルジョイント1,100は、内部に流路を有する筒状の外輪体10,110と、内部に流路を有し外輪体10,110に回転自在に嵌合した筒状の内輪体20,120と、外輪体10,110と内輪体20,120との嵌合部分に位置し周方向に複数の玉31,131同士が接触可能に配置されてなる列を有した回転軸受部30,130を備え、回転軸受部30,130は、組立時に玉131を挿入するためのネジ穴150が流体圧により玉131に力が掛かる方向に対して垂直に形成された深溝玉軸受、又はネジ穴が形成されておらず列が複数設けられたアンギュラ玉軸受を有することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のスイベルジョイント100において、深溝玉軸受は、列が単数であることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載のスイベルジョイント1において、アンギュラ玉軸受は、列同士の組み合わせが正面組み合わせであることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載のスイベルジョイント1において、アンギュラ玉軸受は、接触角αが70度以上90度以下であることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1に記載のスイベルジョイント1において、アンギュラ玉軸受は、内輪体20における軌道面と、外輪体10における軌道面が、それぞれ玉31の1/8周以上3/8周以下の長さを有することを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1に記載のスイベルジョイント1において、回転軸受部30が二つの列からなるアンギュラ玉軸受を有する場合において、外輪体10は回転軸β方向に二分割可能であり、外輪体10の第一分割体10aと内輪体20とで囲まれた空間にアンギュラ玉軸受の一方の列が配置され、外輪体10の第二分割体10bと内輪体20とで囲まれた空間にアンギュラ玉軸受の他方の列が配置されていることを特徴とする。
請求項7記載の本発明の消火用放水銃2は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のスイベルジョイント1,100を備え、スイベルジョイント1,100により筒先70の方向が可変に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流体圧力がある時にも回転抵抗の増加が抑制されスムーズに回転するスイベルジョイント、及び当該スイベルジョイントを備えた消火用放水銃を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一の実施例によるスイベルジョイントの構成を示す図
図2】本発明の第二の実施例によるスイベルジョイントの構成を示す図
図3】本発明の消火用放水銃の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態によるスイベルジョイントは、内部に流路を有する筒状の外輪体と、内部に流路を有し外輪体に回転自在に嵌合した筒状の内輪体と、外輪体と内輪体との嵌合部分に位置し周方向に複数の玉同士が接触可能に配置されてなる列を有した回転軸受部を備え、回転軸受部は、組立時に玉を挿入するためのネジ穴が流体圧により玉に力が掛かる方向に対して垂直に形成された深溝玉軸受、又はネジ穴が形成されておらず列が複数設けられたアンギュラ玉軸受を有するものである。
本実施の形態によれば、流体圧力があるときにも回転抵抗の増加を抑制しスイベルジョイントをスムーズに回転させることができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態によるスイベルジョイントにおいて、深溝玉軸受の列を単数としたものである。
本実施の形態によれば、スイベルジョイントの小型化を図ることができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態によるスイベルジョイントにおいて、アンギュラ玉軸受の列同士の組み合わせを正面組み合わせとしたものである。
本実施の形態によれば、ラジアル荷重と両方向のアキシャル荷重の比較的大きな負荷にも対応することができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態によるスイベルジョイントにおいて、アンギュラ玉軸受の接触角を70度以上90度以下としたものである。
本実施の形態によれば、アキシャル荷重の負荷能力を顕著に高めることができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1の実施の形態によるスイベルジョイントにおいて、アンギュラ玉軸受は、内輪体における軌道面と、外輪体における軌道面が、それぞれ玉の1/8周以上3/8周以下の長さを有するものである。
本実施の形態によれば、アキシャル荷重の負荷能力に加えて、ラジアル荷重の負荷能力も顕著に高めることができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1の実施の形態によるスイベルジョイントにおいて、回転軸受部が二つの列からなるアンギュラ玉軸受を有する場合において、外輪体は軸方向に二分割可能であり、外輪体の第一分割体と内輪体とで囲まれた空間にアンギュラ玉軸受の一方の列が配置され、外輪体の第二分割体と内輪体とで囲まれた空間にアンギュラ玉軸受の他方の列が配置されているものである。
本実施の形態によれば、流体圧力があるときにも回転抵抗の増加が抑制されスムーズに回転するスイベルジョイントを、複雑な加工を要せず、かつ組立及び分解が容易なものとすることができる。また、構造が複雑でないため小型化も可能である。
【0015】
本発明の第7の実施の形態による消火用放水銃は、第1から第6のいずれか一つの実施の形態によるスイベルジョイントを備え、スイベルジョイントにより筒先の方向が可変に構成されているものである。
本実施の形態によれば、流体圧力があるときにも回転抵抗の増加を抑制しスムーズに消火用放水銃の筒先方向を変更することができる。
【実施例0016】
以下、本発明の一実施例によるスイベルジョイント、及び消火用放水銃について説明する。
図1は第一の実施例によるスイベルジョイントの構成を示す図であり、図1(a)は縦断面図、図1(b)はA-A断面図である。
スイベルジョイント1は、気体又は液体が流れる配管等を向きが変更可能に接続する継手であって、内部に流路を有する筒状の外輪体10と、内部に流路を有し外輪体10内に差し込まれ外輪体10と回転自在に嵌合した筒状の内輪体20と、外輪体10と内輪体20との嵌合部分に位置し周方向に複数の鋼製の玉(転動体)31同士が接触可能に配置されてなる列を有した回転軸受部30と、シール材としてのOリング40とバックアップリング41,42を備え、回転軸β回りに回転する。
本実施例の回転軸受部30は、正面組合せのアンギュラ玉軸受方式であり、複数の玉31が環状に配列された列として、一方の列30aと他方の列30bを有する。二列とも玉31同士の間隔を保持する保持器は有さず、22個の玉31が周方向に稠密に配置されている。
【0017】
内輪体20の一方の端部20a及び他方の端部20bは開口している。流体は、一方の端部20a側から入り他方の端部20b側から出る向きに流すことも、その逆向きに流すことも可能である。内輪体20は、外輪体10に内嵌した状態において、一方の端部20aが外輪体10内に位置し、他方の端部20bが外輪体10の外に位置する。
内輪体20のうち外輪体10へ差し込む部分には、外径を他の部分よりも大きくした突出部21が周方向に亘って設けられている。突出部21の軸方向長さは、玉31の直径の約2倍となっている。突出部21における両側の立ち上がり部分である一方の立上部21aと他方の立上部21bには、玉31の形状に沿った曲面が玉31の1/4周程度の長さで形成されている。一方の立上部21aにおける曲面は一方の列30aの玉31が転がる軌道面となり、他方の立上部21bにおける曲面は他方の列30bの玉31が転がる軌道面となる。
突出部21の突出量は、玉31の直径よりも小さく、玉31の半径よりは僅かに大きい程度である。このため、一方の列30a及び他方の列30bの外径は、突出部21における内輪体20の外径よりも大きく、一方の立上部21a及び他方の立上部21bに配置された玉31の略半分は突出部21からはみ出た状態となる。
【0018】
外輪体10は、軸方向に二分割されており、第一分割体10aと、第一分割体10aよりも軸方向長さが短い第二分割体10bとからなる。第一分割体10aと第二分割体10bとの接続部分は、固定ボルト13及びワッシャ14を複数組用いて固定されている。
第一分割体10aには、内輪体20の突出部21の一方の立上部21aの軌道面に対向する位置に、玉31の1/4周程度の長さで玉31の形状に沿った曲面が周方向に亘って形成されており、この曲面は一方の列30aの玉31が転がる軌道面となる。また、第一分割体10aのうち第二分割体10bとの接続部分には、固定ボルト13の軸が螺入されるボルト穴が軸方向に形成されている。
第二分割体10bには、内輪体20の突出部21の他方の立上部21bの軌道面に対向する位置に、玉31の1/4周程度の長さで玉31の形状に沿った曲面が周方向に亘って形成されており、この曲面は他方の列30bの玉31が転がる軌道面となる。また、第二分割体10bのうち第一分割体10aとの接続部分には、固定ボルト13の軸が挿通されるボルト穴が軸方向に形成されている。
【0019】
スイベルジョイント1の組立においては、まず、第一分割体10aの軌道面に一方の列30aの玉31を配置する。次に、内輪体20を挿入して一方の立上部21aの軌道面に一方の列30aの玉31が接した状態とする。次に、内輪体20の他方の立上部21bの軌道面に他方の列30bの玉31を配置する。次に、第二分割体10bを第一分割体10aに接続することにより、第二分割体10bの軌道面に他方の列30bの玉31が接した状態とする。最後に、固定ボルト13を締めて第一分割体10aと第二分割体10bとの接続を固定する。これにより、第一分割体10aと内輪体20とで囲まれた空間にアンギュラ玉軸受の一方の列が配置され、第二分割体10bと内輪体20とで囲まれた空間にアンギュラ玉軸受の他方の列が配置された状態となる。
このように本実施例のスイベルジョイント1は、複雑な加工を要せず、組立及び分解が容易である。また、構造が複雑ではなく小型化も可能である。
なお、バックアップリング41,42は、内輪体20の外周二箇所に嵌められている。第一のバックアップリング41は、第一分割体10aに対応する位置において、一方の列30aよりも一方の端部20a側に設けられている。第二のバックアップリング42は、第二分割体10bに対応する位置において他方の列30bよりも他方の端部20b側に設けられている。また、Oリング40は、一方の列30aと第一のバックアップリング41との間において内輪体20に嵌められている。
【0020】
スイベルジョイント1の内側は流体が通過する。この流体に圧力(水圧)があるとき、図1に縦縞矢印で示すように、スイベルジョイント1にはアキシャル方向の力が加わる。なお、流体が一方の端部20a側から入り他方の端部20b側から出る向きに流れる場合も、その逆向きに流れる場合も、アキシャル方向の力は両向きに生じる。
このアキシャル方向の力により、玉31が図1に示す白矢印の方向に揺動するが、スイベルジョイント1には、組立時に玉31を挿入するためのネジ穴が設けられていないため、上述したような、圧力を有する流体が配管内を流れるときに玉31が流体圧によってネジ穴(段差)に嵌まり回転が阻害されてしまうという不具合が生じない。よって、スイベルジョイント1は、流体圧力があるときにも回転抵抗の増加が抑制されスムーズに回転することができる。また、流路には部材が配置されていないので、流路抵抗の増加はない。
【0021】
また、本実施例では列同士の組み合わせ(アンギュラ玉軸受の種類)を正面組合としている。これにより、回転軸受部30において、ラジアル荷重(ラジアル力)と両方向のアキシャル荷重(アキシャル力)の比較的大きな負荷にも対応することができる。
一方の列30a及び他方の列30bにおける玉31の接触角αは、0度から90度の範囲で設定可能であるが、70度から90度とすることが好ましい。接触角αを70度から90度としたアンギュラ玉軸受とすることで、アキシャル荷重(スラスト荷重)の負荷能力を顕著に高めることができる。なお、接触角αとは、玉31と内輪体20側の軌道面との接触点と、玉31と外輪体10側の軌道面との接触点とを結ぶ直線が、ラジアル方向に対して持つ角度である。
また、外輪体10側の軌道面としての曲面も内輪体20側の軌道面としての曲面も、玉31の1/8周以上3/8周以下の長さとすることが好ましく、1/4周以上3/8周以下の長さとすることがより好ましい。本実施形態では、当該曲面の長さを玉31の1/4周よりも僅かに大きくすることで、玉31の1/2以上の部分が曲面で囲繞された状態となるようにしている。これにより、アキシャル荷重の負荷能力に加えて、ラジアル荷重の負荷能力も顕著に高めることができる。
【0022】
図2は第二の実施例によるスイベルジョイントの構成を示す図であり、図2(a)は縦断面図、図2(b)は玉の配列を示す図である。
スイベルジョイント100は、気体又は液体が流れる配管等を向きが変更可能に接続する継手であって、内部に流路を有する筒状の外輪体110と、内部に流路を有し外輪体110内に差し込まれ外輪体110と回転自在に嵌合した筒状の内輪体120と、外輪体110と内輪体120との嵌合部分に位置し周方向に複数の鋼製の玉(転動体)131同士が接触可能に配置されてなる列を有した回転軸受部130と、シール材としてのOリング140と、組立時に玉131を挿入するためのネジ穴150と、ネジ穴150に螺入する止めネジ160を備える。
本実施例の回転軸受部130は、深溝玉軸受方式であり、複数の玉131が環状に配列された列を一つ有する。玉131同士の間隔を保持する保持器は有さず、22個の玉131が周方向に稠密に配置されている。
【0023】
内輪体120の一方の端部120a及び他方の端部120bは開口している。流体は、一方の端部120a側から入り他方の端部120b側から出る向きに流すことも、その逆向きに流すことも可能である。内輪体120は、外輪体110に内嵌した状態において、一方の端部120aが外輪体110内に位置し、他方の端部120bが外輪体110の外に位置する。
内輪体120のうち外輪体110へ差し込む部分には、玉131が入る大きさで断面V字状の内溝121が周方向に亘って形成されており、この内溝121は玉131の転がる軌道面となる。内溝121の深さは、玉131の直径よりも浅く、玉131の半径よりは僅かに深い程度である。このため、内溝121に配置された玉131の略半分は内溝121からはみ出た状態となる。
なお、Oリング140は、一方の端部120aと内溝121との間において内輪体120に嵌められている。
【0024】
外輪体110には、ネジ穴150が内輪体120の内溝121に繋がるように回転軸βに対して斜めに形成されている。ネジ穴150には止めネジ160と螺合する部分にネジ溝が形成されており、組立又は分解時には止めネジ160を外してネジ穴150を介し玉131を出し入れする。
また、外輪体110には、内輪体120の内溝121に対向する位置に内溝121と同じ大きさで断面V字状の外溝111が周方向に亘って形成されており、この外溝111は玉131の転がる軌道面となる。外溝111の深さは、玉131の直径よりも浅く、玉131の半径よりは僅かに深い程度である。このため、外溝111に配置された玉131の略半分は外溝111からはみ出た状態となる。
【0025】
第一の実施例と同様に、スイベルジョイント100の内側は流体が通過し、流体に圧力(水圧)があるときは、図2に縦縞矢印で示すように、スイベルジョイント100にはアキシャル方向の力が加わる。
このアキシャル方向の力により玉131が図2に示す白矢印の方向に揺動するが、本実施例のスイベルジョイント100は、玉131の挿入及び取り出しに用いるネジ穴150が、スイベルジョイント100の回転軸βに対して垂直ではなく斜めに、玉131に力が掛かる方向に対して略垂直に設けられているため、外輪体110側に押された玉131はネジ穴150ではない部分に接触する。これにより、上述したような、圧力を有する流体が配管内を流れるときに玉131が流体圧によってネジ穴150(段差)に嵌まり回転が阻害されてしまうという不具合が生じない。
また、ネジ穴150以外の構成は基本的に従来の深溝玉軸受方式と同様であるため、部品の入手が容易でコスト性にも優れる。さらに、複数の玉131からなる列を単数とすることで、スイベルジョイント100の小型化を図ることができる。なお、曲げモーメントに対する負荷能力を高めたい場合は、列を複数設けてもよい。
【0026】
第一の実施例及び第二の実施例のスイベルジョイント1,100、並びに比較例として既存のスイベルジョイントについて、所定圧力で水を流した際の回転トルクを計測した。下表1はその測定結果であり、スイベルジョイントの回転トルクと圧力の関係を示している。なお、比較例のスイベルジョイントの回転軸受部は、二列からなる深溝玉軸受の構造であり、各列には玉を挿入するためのネジ穴が回転軸に対して垂直に設けられているものである。
【表1】
表1において、「-」の箇所は未測定を示す。
表1に示すように、第一の実施例及び第二の実施例では、流体の圧力がかかっている場合においても回転抵抗が急増することなくスムーズに回転可能であることが分かる。一方、比較例では、圧力1.0MPaにおいて、かじったような手ごたえがあり、回転トルク23Nm以上でも回転しなかった(表中の「※」)。
【0027】
図3は消火用放水銃の構成例を示す図である。
消火活動等に用いる消火用放水銃2は、銃身60を左右に動かす旋回用のスイベルジョイント1,100と、銃身60を上下に動かす俯仰用のスイベルジョイント1,100が設けられており、旋回と俯仰(起伏)の2自由度を有する。
スイベルジョイント1,100は、水圧式の駆動装置により回転させることができる。なお、スイベルジョイント1,100は、油圧シリンダー又は電動駆動装置により回転させることも可能である。
このように、第一の実施例によるスイベルジョイント1、又は第二の実施例によるスイベルジョイント100を備え、これらスイベルジョイント1,100により筒先(ノズル)70の方向を可変に構成することで、流体圧力があるときにも回転抵抗の増加が抑制されスムーズに筒先70の方向を変更することができる。
【符号の説明】
【0028】
1,100 スイベルジョイント
10,110 外輪体
10a 第一分割体
10b 第二分割体
20,120 内輪体
30,130 回転軸受部
31,131 玉
70 筒先
150 ネジ穴
α 接触角
β 回転軸
図1
図2
図3