(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075406
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】酸化ジルコニウムナノ粒子含有組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20240527BHJP
C08F 20/26 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C08F20/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186838
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】木村 純也
(72)【発明者】
【氏名】新井 茉莉絵
(72)【発明者】
【氏名】金谷 亜希
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓馬
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011PA07
4J011PB15
4J011PB22
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA21
4J011SA02
4J011SA14
4J011SA16
4J011SA20
4J011TA06
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J011WA06
4J100AG75P
4J100BA08P
4J100CA01
4J100CA21
4J100DA61
4J100FA03
4J100FA18
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA33
(57)【要約】
【課題】酸化ジルコニウムナノ粒子の分散性が向上した酸化ジルコニウム粒子含有組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、酸化ジルコニウムナノ粒子と、下記式(1)で表される架橋性化合物を含むことを特徴とする組成物である。
式(1)中、Zはn価の連結基を表し、nは2以上の整数を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ジルコニウムナノ粒子と、下記式(1)で表される架橋性化合物を含むことを特徴とする組成物。
【化1】
式(1)中、Zはn価の連結基を表し、nは2以上の整数を表す。
【請求項2】
前記式(1)におけるZはエーテル結合を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(1)におけるZは、多価アルコールの水酸基から水素原子を除いた残基である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及びその硬化物に関し、より詳細には酸化ジルコニウムナノ粒子含有組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の機能性微粒子を含む樹脂組成物、硬化性組成物等の微粒子含有組成物は、微粒子の機能に応じて、光学材料、電子部品材料、磁気記録材料、触媒材料、紫外線吸収材料、歯科材料など様々な材料の高機能化や高性能化に寄与できる。中でも、高い屈折率を示す酸化ジルコニウム粒子は非常に注目されており、酸化ジルコニウムの機能を十分に発揮させるためには、酸化ジルコニウム含有組成物中で酸化ジルコニウムが良好に分散していることが重要である。例えば特許文献1では、モノマーとしてベンジルアクリレートを用い、ベンジルアクリレートに酸化ジルコニウムを分散させ、分散液の硬化膜を得て、硬化膜の屈折率を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、更なる高性能化の要求に応えるため、酸化ジルコニウムナノ粒子がモノマー等を含む組成物中で、より高度に分散できることが望ましい。そこで、本発明は、酸化ジルコニウムナノ粒子の分散性が向上した酸化ジルコニウム粒子含有組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成した本発明は以下の通りである。
[1]酸化ジルコニウムナノ粒子と、下記式(1)で表される架橋性化合物を含むことを特徴とする組成物。
【化1】
式(1)中、Zはn価の連結基を表し、nは2以上の整数を表す。
[2]前記式(1)におけるZはエーテル結合を有する[1]に記載の組成物。
[3]前記式(1)におけるZは、多価アルコールの水酸基から水素原子を除いた残基である[1]または[2]に記載の組成物。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0006】
特定の架橋性化合物と酸化ジルコニウムナノ粒子を含む本発明の組成物は、粘度を低いものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.架橋性化合物
本発明における架橋性化合物は、下記式(1)で表される化合物であり、すなわちα-アリルオキシメチルアクリロイル基(以下、AMA基と呼ぶ)を同一分子内に2個以上有する化合物である。
【0008】
【0009】
上記式(1)中、Zはn価の連結基を表し、nは2以上の整数を表す。上記式(1)中、nは、2以上であれば特に制限されないが、合成の容易さや保存安定性の点で、2~100であることが好ましく、より好ましくは2~50である。該架橋性化合物が、反応性希釈剤のような低粘度を要する用途に用いられる場合には、更に好ましくは2~10、最も好ましくは2~6である。
【0010】
上記式(1)中、Zは、AMA基のカルボニル基と共有結合を2個以上形成できる連結基、すなわち共有結合性の2価以上の連結基であれば特に限定されず、ただ1つの原子を介して結合する2価以上の連結基でもよく、2つ以上の原子を介して結合する2価以上の連結基でもよいが、合成の容易さ、化学的安定性の点で、2つ以上の原子を介して結合する2価以上の連結基であることが好ましい。
【0011】
上記Zが、ただ1つの原子を介して結合する2価以上の連結基である場合、Zとしては、特に限定されないが、酸素原子、硫黄原子などの周期表16族の原子;窒素原子、リン原子などの周期表15族の原子;炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子などの周期表14族の原子;を含む連結基などが挙げられ、具体的には、例えば、下記の構造式群(3)に示すような構造が挙げられる。
【0012】
【0013】
式中、RとR’は、水素原子又は有機基を表し、RとR’は同一でも異なっていてもよい。有機基は、上記原子に結合し得る1価の有機基であればよく、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基である。
【0014】
上記Zが、2つ以上の原子を介して結合する2価以上の連結基である場合、Zとしては、低分子構造でもよく高分子構造でもよい。低分子構造や後述する低分子骨格との用語は、一般に単量体単位による繰り返し単位を有さない構造や骨格を意味し、その逆に高分子構造や後述する高分子骨格との用語は、一般に単量体単位による繰り返し単位を有する構造や骨格を意味する。高分子化合物とは、一般的な技術用語としては分子量1000以上の化合物、重合体を意味するが、「低分子」、「高分子」との用語は、本発明においてはそのような分子量によって区別され、限定されるものではない。
【0015】
上記Zは、少なくとも骨格部分Qを含み、更にAMA基とQとを結合する2価の連結基X、2つ以上の骨格部分Qを結合する2価以上の連結基Y、骨格部分Qに直接結合する1価の置換基Wを含む場合もある。n価の連結基Zにおいて、骨格部分Qの中のn個の水素原子はAMA基又はXに置換され、残りの水素原子はY及び/又はWに置換される場合もある。
【0016】
AMA基を2個有する架橋性化合物を例にとると、本発明の架橋性化合物は、例えば、下記構造式群(4)のように表すことができる。なお、簡便のため、式中、AMA基はAで表しており、また、構造例は一部の例であり、これらに限定されるものではない。
【0017】
【0018】
式中、Qn、Xn、Yn、Wn(nは、1以上の整数を表す。)は、Q、X、Y、Wがそれぞれn個ある場合のn個目のQ、X、Y、Wであることを表し、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0019】
更に、AMA基を2個有する架橋性化合物において、Qがシクロヘキサン骨格、Xが酸素原子、Yがウレタン結合、Wがフッ素原子であるような場合を例にとると、下記構造式群(5)に示すような化合物が具体的に挙げられる。なお、構造式群(5)に示した化合物は、そのような化合物群の一部の例であり、全ての例を示したものではない。構造式群(5)に示されるように、シクロヘキサン骨格の水素原子のうち、2個がAMA基又はXに置換され、残りの水素原子は、Y及び/又はWに置換される場合もある。
【0020】
【0021】
上述のように、Zは、骨格部分Qからなり、更にAMA基と結合する2価の連結基X、2つ以上の骨格部分Qを結合する2価以上の連結基Y、骨格部分Qに直接結合する1価の置換基Wを含む場合もある。Zが2つ以上の骨格部分Qからなる場合は、連結基Yを介さず、Qどうしが直接結合していてもよい。ZはQのみからなっていてもよい、すなわちAMA基が直接Qに結合していてもよいが、合成の容易さ、原料の入手性、化学的安定性などから、Zは少なくともQとXとからなること、すなわちAMA基はXを介してQに結合していることが好ましく、更にAMA基のカルボニル基とXとはヘテロ原子で結合していることが好ましい。すなわち、Zはヘテロ原子を介してAMA基と結合するn価の連結基であることが好ましく、ヘテロ原子は酸素原子であることが好ましい。つまり、AMA基と結合するZの末端の少なくとも1つが-O-であることが好ましく、全ての末端が-O-であることがより好ましい。Y及びWは、合成方法や用途における必要性能などに合わせて適宜選択すればよい。また、Zは、それぞれ2種以上のQ、X、Y、Wから構成されていてもよい。
【0022】
以下にQ、X、Y、Wの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。下記Qにおいては、その構造を化合物として例示しているが、これらがZの構成要素となっているときは、Qの構造を化合物として示した形態における2個以上の水素原子がQに結合する原子又は原子団(すなわち、AMA基や、Q、X、Y、W)によって置換された形態となっている。なお、Q、X、Y、WはZの構成要素となるものであるが、Q、X、Y、Wをそれぞれ構成し得る化合物からZが構成されるということに限られるものではない。ZをQ、X、Y、Wそれぞれに構造的に分解したとしたときに、それらの構造やそれらの構造を化合物として示した形態を下記に例示するものである。
【0023】
上記骨格部分Qは、骨格を形成する原子が2個以上であり、その骨格にAMA基及び/又はXが結合し得るものであればよい。Qの構造を化合物として示せば、骨格を形成する原子が2個以上であり、その骨格を形成する原子に水素原子(すなわち、AMA基及び/又はXと置換され得る水素原子)が2個以上結合している化合物として示され、当該水素原子がAMA基及び/又はXと置換された形態においてZの骨格部分となり得るものであれば特に限定されるものではない。例えば、骨格部分Qの構造を化合物として示せば下記のようになる。
【0024】
エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、2,2-ジメチルプロパン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサンなどの飽和炭化水素構造;
エチレン、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセンなどの炭化水素系モノエン構造;
アレン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、ノナジエン、デカジエン、ウンデカジエン、ドデカジエン、トリデカジエン、テトラデカジエン、ペンタデカジエン、ヘキサデカジエン、ヘプタデカジエン、オクタデカジエン、ノナデカジエン、エイコサジエンなどの炭化水素系ジエン構造;
ヘプタデカトリエン、ヘプタデカテトラエン、オクタデカトリエン、オクタデカテトラエンなどの炭化水素系ポリエン構造;
アセチレン、メチルアセチレン、ヘキサジインなどのアセチレン系構造;
シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ノルボルナン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、シクロデカン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、下記化学式群(6)に示される各種化合物などの脂環式構造;
【0025】
【0026】
ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン、ピレン、ペリレン、ビフェニル、下記化学式群(7)に示される各種化合物などの芳香族炭化水素構造;
【0027】
【0028】
エチレンオキシド、エチレンイミン、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロフラン、ジヒドロピラン、ピラン、ジオキサン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、γ-ラクトン、δ-ラクトン、ε-カプロラクトン、γ-ラクタム、δ-ラクラム、ε-カプロラクタム、オキサゾリン、無水コハク酸、無水マレイン酸、コハクイミド、マレイミド、無水グルタル酸、グルタルイミド、下記化学式群(8)に示される各種化合物などの複素環式構造(特に非芳香族系複素環式構造);
【0029】
【0030】
ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ベンゾフラン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、キノキサリン、アクリジン、ピリミジン、トリアジン、カルバゾール、フェノチアジン、キナクリドン、キサンテン、シアヌル酸、無水フタル酸、フタルイミド、下記化学式群(9)に示される各種化合物などの複素芳香族構造;などの低分子骨格が挙げられる。
【0031】
【0032】
また、エチレン、プロピレン、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、などの非環式エチレン性化合物の(共)重合により得られる下記式(10)で示されるポリエチレン骨格;
【0033】
【0034】
ノルボルネンなどのシクロアルケン類、無水マレイン酸などの不飽和酸無水物、フェニルマレイミドなどマレイミド類に代表される不飽和環状化合物の(共)重合により得られる下記構造式群(11)に示される各種主鎖環構造骨格;
【0035】
【0036】
上記非環式エチレン性化合物と不飽和環状化合物の共重合で得られるポリエチレン-主鎖環構造共重合骨格;ジオールの脱水縮合(共)重合やエチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキシド類の開環(共)重合などにより得られる、主鎖にエーテル結合を有するポリエーテル骨格;ジカルボン酸とジオールとの脱水縮合(共)重合や環状ラクトンの開環(共)重合などで得られる、主鎖にエステル結合を有するポリエステル骨格;ジカルボン酸とジアミンとの脱水縮合(共)重合や環状ラクタムの開環(共)重合などで得られる、主鎖にアミド結合を有するポリアミド骨格;ジアルキルジアルコキシシランの脱アルコール縮合(共)重合や環状シロキサンの開環(共)重合などで得られる、主鎖にシロキサン結合を有するポリシロキサン骨格;ジイソシアネートとジオールとの反応などで得られる、主鎖にウレタン構造を有するポリウレタン骨格;などの高分子骨格なども挙げられる。
【0037】
上記骨格部分Qとしては、架橋性化合物が用いられる用途などに応じて適宜設定することができるが、反応性希釈剤のような低粘度が必要な用途においては低分子骨格が好ましく、塗料やレジスト材料におけるバインダー樹脂のような塗膜形成性が必要な用途においては高分子骨格が好ましく、用途に応じて使い分ければよい。低分子骨格の中では、原料の入手性、化学的安定性などから、飽和炭化水素構造、脂環式構造、及び、芳香族炭化水素構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造であることが好ましい。高分子骨格の中では、合成のし易さ、化学的安定性などから、ポリエチレン骨格、ポリエチレン-主鎖環構造共重合骨格、及び、ポリエーテル骨格からなる群より選択される少なくとも1種の骨格であることが好ましい。
【0038】
上記Xは、2価の連結基であれば特に限定されないが、例えば、下記構造式群(12)に示される結合が挙げられる(一例として、A-X-Qとして表し、Xの原子又は原子団を示せば下記のようになる)。
【0039】
【0040】
式中、RとR’は、同一若しくは異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアリール基を表す。これらの中では、合成の容易さ、化学的安定性などから、Xは酸素原子含有基、硫黄原子含有基、1置換窒素原子(すなわち、-NR-)含有基、又は、2置換炭素原子(すなわち、-CRR’-)含有基が好ましく、酸素原子含有基、又は、1置換窒素原子含有基がより好ましい。すなわち、-X-が、エーテル結合、エステル結合、又は、アミド結合となることがより好ましい。なお、XがZ中に2個以上存在する場合は、1種であっても2種以上であってもよい。
【0041】
上記Yは、2価以上の連結基であれば特に限定されないが、例えば、下記構造式群(13)に示される結合が挙げられる。
【0042】
【0043】
式中、RとR’は、同一若しくは異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアリール基を表す。これらの中では、合成の容易さ、化学的安定性などから、エーテル結合、チオエーテル結合、2~4価の炭素原子による結合、ケトン性の結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、又は、ケイ酸エステル結合が好ましく、特にエーテル結合、2~4価の炭素原子による結合、エステル結合、アミド結合、又は、ウレタン結合がより好ましい。なお、YがZ中に2個以上存在する場合は、1種であっても2種以上であってもよい。
【0044】
上記Wとしては、骨格部分Qに結合し得る1価の置換基であればよく、特に限定されるものではない。
上記Wを例示すれば、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などの周期表17族の原子;
メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-アミル、s-アミル、t-アミル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、s-オクチル、t-オクチル、2-エチルヘキシル、カプリル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、ヘプタデシル、ステアリル、ノナデシル、エイコシル、セリル、メリシルなどの飽和炭化水素基;
ビニル、アリル、メタリル、クロチル、プロパギルなどの不飽和炭化水素基;
シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4-t-ブチルシクロヘキシル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、ジシクロペンタジエニルなどの脂環式炭化水素基;
フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、4-t-ブチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどの芳香族炭化水素基;
ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基などのアルコキシ基;
アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアミノ基;
(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、チオアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、イソシアナト基、チオシアナト基、アミノ基の4級アンモニウム塩基、カルボキシル基或いはその塩、スルホン酸基或いはその塩、スルフィン酸基或いはその塩、リン酸基或いはその塩などが挙げられる。これらは、用途に応じて使い分ければよい。
【0045】
上記Zは、以下の(i)又は(ii)の構成であることが好ましく、(i)の構成がより好ましい。なお、以下の(i)及び(ii)では、Qは、上述した通り、Qの構造を化合物として示した形態における水素原子が、Qに結合するX、Y、Wによって置換された形態となっている。
(i)Zが、直鎖状に連なるn個(nは2以上)のQと、両末端のQとAMA基とを結合する2個のXと、隣接するQ同士を結合する(n-1)個のYから構成され、Qが飽和炭化水素構造であり、X及びYがエーテル結合である構成
(ii)Zが、直鎖状に連なるm個(mは1以上)のQと、QとAMA基を結合するp個(pは2以上)のXと、mが2以上である場合には隣接するQ同士を結合する(m-1)個のYから構成され、Qが飽和炭化水素構造であり、X及びYがエーテル結合である構成
【0046】
前記(i)の態様において、(i-1)Qが炭素数2~6の飽和炭化水素であること、(i-2)nが2以上10以下(好ましくは2以上6以下)であること、(i-3)YがQにおける2級炭素の水素原子を置換して結合していること、の少なくともいずれかを満たすことがより好ましく、これらの任意の2つの要件を同時に満たすことが更に好ましく、これら3つの要件を全て満たすことが最も好ましい。
【0047】
前記(ii)の態様において、(ii-1)Qが炭素数4~10の飽和炭化水素(好ましくは炭素数4~10の分岐鎖状飽和炭化水素)であること、(ii-2)mが1~3(好ましくは1)であること、(iii)pが3以上(好ましくは3以上5以下、より好ましくは3)であること、の少なくともいずれかを満たすことがより好ましく、これらの任意の2つの要件を同時に満たすことが更に好ましく、これら3つの要件を全て満たすことが最も好ましい。
【0048】
また、X及びYの少なくとの1種がエーテル結合であること、すなわちZがエーテル結合を有していることが好ましく、Zが多価アルコールの水酸基から水素原子を除いた残基であることがより好ましい。前記多価アルコールとしては、
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ピナコールなどのグリコール;
グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、2,3,4-ヘキサントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、トリメチロールプロパン、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)などの3価アルコール;
エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタンなどの4価アルコール;
アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリンなどの5価アルコール;
ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロースなどの6価アルコール;
などが挙げられる。
【0049】
上記架橋性化合物を製造する方法は、特開2011-74068号公報の[0057]~[0084]の記載を参照できる。
【0050】
2.酸化ジルコニウムナノ粒子
酸化ジルコニウムナノ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下であり、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上である。酸化ジルコニウムナノ粒子の平均一次粒子径が前記範囲にあると、酸化ジルコニウムナノ粒子含有組成物の透明性を高めやすくなる。前記平均一次粒子径は、酸化ジルコニウムナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)等で拡大観察し、無作為に100個の粒子を選択してその長軸方向の長さを測定し、その算術平均を求めることで決定できる。
【0051】
なお、酸化ジルコニウムナノ粒子が後述する被覆剤で被覆されている場合には、被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子が、前記した平均一次粒子径を満足していることが好ましい。
【0052】
酸化ジルコニウムナノ粒子の結晶構造は、X線回折法により特定することができ、立方晶、正方晶、単斜晶等であることが好ましく、複数の結晶構造が存在していてもよい。なお、X線回折測定では酸化ジルコニウムナノ粒子の立方晶と正方晶を区別することが難しく、立方晶が存在する場合でもその割合は正方晶の割合としてカウントされる。屈折率を
向上する観点から、結晶構造全体の50%以上が正方晶及び/又は立方晶であることが好ましい。また、単斜晶に対する正方晶及び立方晶の合計の割合((正方晶+立方晶)/単斜晶)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上であり、また3以下であってもよいし、2以下であってもよい。
【0053】
酸化ジルコニウムナノ粒子の結晶子径は、好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、さらに好ましくは10nm以下であり、通常1nm以上である。結晶子径が小さいほど、酸化ジルコニウムナノ粒子を含む組成物の光透過率を向上できる。前記結晶子径はX線回折法により特定することができる。
【0054】
酸化ジルコニウムナノ粒子は、ジルコニウムの水酸化物、塩化物、オキシ塩化物、酢酸塩、オキシ酢酸物、オキシ硝酸物、硫酸塩、炭酸塩、アルコキシド等の酸化ジルコニウム前駆体を水熱合成することで得ることができる。
【0055】
3.被覆剤
本発明における酸化ジルコニウムナノ粒子は、被覆剤により被覆されていることが好ましく、該被覆剤が2級カルボン酸を含むことがより好ましい。2級カルボン酸で被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子と、前記架橋性化合物は親和性が良好であり、酸化ジルコニウムナノ粒子が高濃度であっても良好に分散させることができ、低粘度を実現できる他、好ましくは高い透明性を実現でき、更に屈折率も良好にできる。また、酸化ジルコニウムナノ粒子を高濃度にできることで、酸化ジルコニウムナノ粒子を含むモノマーの硬化物を高屈折率にすることができる。
【0056】
被覆剤の量は、被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子100質量%に対して、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、一層好ましくは10質量%以上であり、また25質量%以下であってもよいし、20質量%以下であってもよい。
【0057】
3-1.2級カルボン酸
2級カルボン酸とは、カルボキシル基(-COOH基)に結合した炭素が2級炭素であるカルボン酸を意味する。
【0058】
2級カルボン酸はモノカルボン酸であることが好ましく、2級カルボン酸の炭素数は4以上であり、5以上が好ましく、より好ましくは6以上であり、更に好ましくは7以上であり、また30以下であってもよく、20以下であってもよく、16以下であってもよい。2級カルボン酸としては、イソ酪酸、2-メチル酪酸、2-エチル酪酸、2-エチルヘキサン酸、2-メチル吉草酸、2-メチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、2-プロピル酪酸、2-ヘキシル吉草酸、2-ヘキシルデカン酸、2-ヘプチルウンデカン酸、2-メチルヘキサデカン酸などが挙げられ、2-エチルヘキサン酸、2-メチル吉草酸、2-メチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、2-プロピル酪酸、2-ヘキシル吉草酸又は2-ヘキシルデカン酸であることが好ましく、2-エチルヘキサン酸又は2-ヘキシルデカン酸であることがより好ましく、2-エチルヘキサン酸が最も好ましい。
【0059】
被覆された酸化ジルコニウム粒子100質量%に対する2級カルボン酸量は、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは0.8質量%以上であり、更に好ましくは2質量%以上であり、また8質量%以下が好ましく、より好ましくは6質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以下である。
【0060】
また、被覆剤100質量%中の2級カルボン酸の割合は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上であり、また100質量%であってもよいが、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。
【0061】
3-2.2級カルボン酸以外のカルボン酸
被覆剤は、2級カルボン酸以外のカルボン酸化合物を含んでいてもよい。前記カルボン酸化合物とは、1以上のカルボキシル基(-COOH基)を含む化合物を意味し、1分子内に1つのカルボキシル基を有する化合物であってもよいし、2以上のカルボキシル基を有する化合物であってもよい。
【0062】
2級カルボン酸以外のカルボン酸化合物としては、
酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの直鎖状飽和脂肪族モノカルボン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などの直鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸を含む直鎖状飽和脂肪族カルボン酸;
イソ吉草酸、3,3-ジメチル酪酸、3,3-ジエチル酪酸、3-メチル吉草酸、イソノナン酸、4-メチル吉草酸、4-メチルオクタン酸などの1級カルボン酸である分枝鎖状飽和脂肪族カルボン酸;
ピバリン酸、2,2-ジメチル酪酸、2,2-ジメチル吉草酸、2,2-ジエチル酪酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、ネオデカン酸などの3級カルボン酸である分枝鎖状飽和脂肪族カルボン酸;
ナフテン酸などの脂環式炭化水素基含有モノカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式炭化水素基含有ジカルボン酸を含む脂環式炭化水素基含有カルボン酸;
アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの直鎖状不飽和脂肪族カルボン酸;
メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、3-エトキシプロピオン酸、2-メトキシエトキシ酢酸、2-メトキシエトキシエトキシ酢酸などのエーテル結合含有カルボン酸;
乳酸、ヒドロキシステアリン酸、グリコール酸、DL-乳酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、ジメチロールプロピオン酸、ヒドロキシピバル酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、DL-2-ヒドロキシ酪酸、DL-3-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、β-ヒドロキシイソ吉草酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、(o-,m-,p-)ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシ基含有モノカルボン酸や、りんご酸、クエン酸等のヒドロキシ基含有多価カルボン酸を含むヒドロキシ基含有カルボン酸;
ピルビン酸、レブリン酸、2-オキソ吉草酸、β-メチルレブリン酸、α-メチルレブリン酸などのカルボニル基含有カルボン酸;
安息香酸などの芳香族モノカルボン酸や、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸などの芳香族多価カルボン酸を含む芳香族カルボン酸;
2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸、2-メタクリロイロキシエチルフタル酸などの(メタ)アクリロイル基含有カルボン酸;
フェニルチオ酢酸などのスルフィド結合含有カルボン酸;
グリシン、アラニン、2-メチルアラニン、システイン、セリン、トレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リシンなどのアミノ基含有モノカルボン酸や、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ基含有ジカルボン酸を含むアミノ基含有カルボン酸;
シアノ酢酸などのシアノ基含有カルボン酸;
プロリンなどのカルボキシル基で置換された複素環式化合物;などが挙げられる。
【0063】
中でも、(メタ)アクリロイル基含有カルボン酸が好ましい。
【0064】
2級カルボン酸量に対する2級カルボン酸以外のカルボン酸化合物量は、モル比で1.0以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましく、また5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。
【0065】
3-3.その他
被覆剤は、2級カルボン酸、2級カルボン酸以外のカルボン酸化合物の他、リン酸エステル、シランカップリング剤、界面活性剤、チタンカップリング剤などを含んでいてもよい。
【0066】
リン酸エステルとしては、市販のリン酸エステルを適宜用いることができ、例えばDISPERBYK-110、111、180(ビックケミー・ジャパン社製)、プライサーフA208B、A208F、A208N(第一工業製薬製)などが挙げられる。
【0067】
シランカップリング剤としては、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0068】
界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤等のイオン性界面活性剤、あるいは非イオン系界面活性剤が挙げられる。
【0069】
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ドデシル)ベンゼンスルホニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ-トリ(ジオクチル)ホスフェイトチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ-トリネオドデカノイルチタネート等が挙げられる。
【0070】
2級カルボン酸を含む被覆剤で被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子は、例えば2級カルボン酸とジルコニウムの塩を水熱合成することによって2級カルボン酸で被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子を得て、必要に応じて2級カルボン酸で被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子を有機溶媒に分散させた分散液を用意し、該分散液に他の被覆剤を添加して混合することで得ることができる。
【0071】
4.組成物
本発明の組成物は、上述の通り、酸化ジルコニウムナノ粒子と架橋性化合物を含む。本発明の組成物は、粘度が低いものであり、特に、本発明以外の酸化ジルコニウムナノ粒子含有組成物と屈折率を同等にしたときの粘度を低くすることができる。
【0072】
組成物中の固形成分100質量%に対する酸化ジルコニウムナノ粒子の含有量は、55質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、更に好ましくは65質量%以上であり、一層好ましくは70質量%以上であり、上限は特に限定されないが、90質量%以下であってもよいし、85質量%以下であってもよいし、80質量%以下であってもよい。なお、固形成分とは、溶媒を除く成分を意味し、反応性化合物は前記溶媒には含まれない。また、酸化ジルコニウムナノ粒子が被覆剤で被覆されている場合には、被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子の含有量が前記範囲となることが好ましい。
【0073】
組成物中の固形成分100質量%に対する前記架橋性化合物の含有量は、3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
【0074】
組成物の屈折率、全光線透過率、HAZEは、それぞれ後述する実施例の方法に従って測定することができ、その値は以下の通りである。
組成物の屈折率は、1.570以上が好ましく、1.580以上がより好ましく、また上限は特に限定されないが、例えば1.710以下であってもよい。
組成物の全光線透過率は、85%以上が好ましく、86%以上がより好ましく、87%以上が更に好ましく、また上限は特に限定されないが、例えば92%以下であってもよい。
組成物のHAZEは、3.0%以下が好ましく、2.8%以下がより好ましく、2.7%以下が更に好ましく、また下限は特に限定されないが、例えば0.8%以上であってもよい。
【0075】
また、本発明の組成物は、上記架橋性化合物以外の他の重合性単量体、溶媒、ポリマー(樹脂)、又はその他添加剤を含んでいてもよい。
【0076】
4-1.他の重合性単量体
他の重合性単量体としては、重合性二重結合を1つ有する単官能単量体又は重合性二重結合を2以上有する架橋性単量体が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
単官能単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに代表される(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、4-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基含有単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体等が挙げられる。
【0078】
また、単官能単量体としては、1分子中に芳香族環を2以上含み、且つ重合性二重結合を1つ有する化合物も挙げられる。前記芳香族環は、芳香族炭化水素環であっても芳香族複素環であってもよく、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭化水素環であることが好ましい。このような化合物として具体的には、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化クミルフェノール(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、ナフチルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N-ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0079】
架橋性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレートに代表される架橋性(メタ)アクリル酸エステル;ジビニルベンゼン等の多官能スチレン系単量体;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリルエステル系単量体;2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート;ウレタンアクリレートオリゴマー(例えば、紫光(登録商標)シリーズ(日本合成化学工業(株)製)、CNシリーズ(サートマー社製)、ユニディック(登録商標)シリーズ(DIC(株)製)、KAYARAD(登録商標) UX シリーズ(日本化薬(株)製)等);等が挙げられる。
【0080】
本発明の組成物が、前記架橋性化合物以外の他の重合性単量体を含む場合、前記架橋性化合物は反応性希釈剤として用いることができ、このような場合、組成物中の固形成分100質量%に対する前記架橋性化合物の量は、3質量%以上、10質量%以下(好ましくは8質量%以下)とすることができる。
【0081】
4-2.溶媒
溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの変性エーテル類(特に、エーテル変性及び/又はエステル変性アルキレングリコール類);ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ミネラルスピリットなどの炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類;水;鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油などの油類を挙げることができる。これらは1種でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。取扱性の面から、常圧(1013hPa)での沸点が40℃以上、250℃以下程度の溶媒が好適である。
【0082】
4-3.ポリマー(樹脂)
ポリマー(樹脂)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば6-ナイロン、66-ナイロン、12-ナイロンなどのポリアミド類;ポリイミド類;ポリウレタン類;ポリエチレン、ポロプロピレンなどのポリオレフィン類;PET、PBT、PENなどのポリエステル類;ポリ塩化ビニル類;ポリ塩化ビニリデン類;ポリ酢酸ビニル類;ポリスチレン類;(メタ)アクリル樹脂系ポリマー;ABS樹脂;フッ素樹脂;フェノール・ホルマリン樹脂;クレゾール・ホルマリン樹脂などのフェノール樹脂;エポキシ樹脂;尿素樹脂;メラミン樹脂;グアナミン樹脂などのアミノ樹脂;ポリビニルブチラール系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂;エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体系樹脂などの軟質樹脂や硬質樹脂;等が挙げられる。
【0083】
4-4.その他添加剤
その他添加剤としては、ラジカル重合開始剤、界面活性剤、硬化剤、硬化促進剤、着色剤、内部離型剤、カップリング剤、反応性希釈剤、可塑剤、安定化剤、難燃助剤、架橋剤、低収縮剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、揺変剤、増粘剤等が挙げられる。
【0084】
上記ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル開始剤と、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する光ラジカル開始剤とがあり、通常ラジカル開始剤として用いられるものを1種又は2種以上使用できる。
【0085】
上記熱ラジカル開始剤としては、有機過酸化物系開始剤やアゾ系開始剤が好適であり、また、光ラジカル開始剤としては、アルキルフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロメチル化トリアジン系化合物、ハロメチル化オキサジアゾール系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシムエステル系化合物、チタノセン系化合物、安息香酸エステル系化合物、アクリジン系化合物が好適であり、いずれも特開2011-74068号公報に開示される重合開始剤を参照できる。
【0086】
本発明の組成物100質量%中、酸化ジルコニウム粒子、前記架橋性化合物、上記した他の重合性単量体、及び溶媒以外の成分の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは0~3質量%である。
【0087】
5.硬化物
本発明には、酸化ジルコニウムナノ粒子及び前記架橋性化合物を含む組成物の硬化物も含まれる。前記硬化物からなる物品は光学用途に好適に用いられる。本発明の組成物は硬化性が良好、すなわち小さい照射エネルギーで硬化でき、また得られる硬化物は熱安定性にも優れている。硬化物の形状は特に限定されず、厚みは特に限定されないが、板状、シート状、フィルム状、繊維状などが挙げられる。特に硬化物の形状が板状、シート状、またフィルム状である場合の厚み、また繊維状である場合の直径は0.01μm~5mmであることが好ましく、より好ましくは0.1μm~500μm、より好ましくは0.1μm~100μmである。
【0088】
本発明の組成物を厚さ0.05μm~0.3μm程度に塗工した際、9000mJ/cm2以下の紫外線照射量で該組成物を硬化可能である。前記紫外線照射量はより好ましくは8000mJ/cm2以下であり、さらに好ましくは7500mJ/cm2以下であり、下限は特に限定されないが、例えば5000mJ/cm2程度である。
【0089】
硬化物の耐熱性を、後記する実施例に示した要領で測定した際の、重量減少率が5%となる温度は、例えば334℃以上であり、より好ましくは335℃以上であり、上限は特に限定されないが、例えば340℃である。
【0090】
前記硬化物の屈折率は、例えば1.590以上とすることができ、より好ましくは1.600以上であり、更に好ましくは1.610以上であり、上限は特に限定されないが、例えば1.650である。前記した屈折率の値は、前記硬化物の厚みまたは繊維直径が0.1μm~1μmの場合の値であることが好ましい。
【0091】
本発明の組成物は、酸化ジルコニウムナノ粒子が良好な分散性を有することから、例えば、レジスト用途、光学用途、塗布用途、接着用途が挙げられ、光学レンズ、光学フィルム用粘着剤、光学フィルム用接着剤、ナノインプリント用樹脂組成物、マイクロレンズアレイ、透明電極に使用する反射防止層、反射防止フィルムや反射防止剤、光学レンズの表面コート、有機EL光取り出し層、各種ハードコート材、TFT用平坦化膜、カラーフィルター用オーバーコート、反射防止フィルム等の各種保護膜および、光学フィルター、タッチセンサー用絶縁膜、TFT用絶縁膜、カラーフィルター用フォトスペーサー、タッチパネル用保護膜等の光学材料に好適に用いられる。特に本発明の被覆型金属酸化物ナノ粒子は、顕著な分散性に加え、高屈折率、高硬度、高安定性を有するため、光学レンズ、光学レンズの表面コート、各種ハードコート材、タッチセンサー用絶縁膜、TFT用絶縁膜、タッチパネル用保護膜に使用することが好ましい。
【実施例0092】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0093】
実施例及び比較例は、以下の方法により測定した。
【0094】
(1)結晶構造の解析
酸化ジルコニウムナノ粒子の結晶構造は、X線回折装置(リガク社製、RINT-TTRIII)を用いて解析した。測定条件は以下の通りである。
X線源:CuKα(0.154nm)
X線出力設定:50kV、300mA
サンプリング幅:0.0200°
スキャンスピード:10.0000°/min
測定範囲:10~75°
測定温度:25℃
【0095】
(2)正方晶、単斜晶の割合の定量
X線回折装置(リガク社製、RINT-TTRIII)を用いて算出される値を元に、計算ソフト(リガク社製、PDXL)を用いて参照強度比法(RIP法)により、正方晶及び単斜晶の割合を定量した(ピークの帰属も計算ソフトの指定に従った)。なお、本測定では正方晶と立方晶を区別することが難しく、立方晶が存在する場合でも、その割合は正方晶の割合としてカウントされる。
【0096】
(3)X線回折解析による結晶子径算出
酸化ジルコニウムナノ粒子の結晶子径は、X線回折装置(リガク社製、RINT-TTRIII)によって解析及び算出される30°のピークの半値幅を元に、計算ソフト(リガク社製、PDXL)を用いて算出した。
【0097】
(4)電子顕微鏡による平均一次粒子径の測定
被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子(以下、被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子と呼ぶ)の平均一次粒子径は、超高分解能電界放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S-4800)で観察することによって測定した。倍率15万倍で被覆型酸化ジルコニウム粒子を観察し、任意の100個の粒子について、各粒子の長軸方向の長さを測定し、その平均値を平均一次粒子径とした。
【0098】
(5)有機分量の測定
TG-DTA(熱重量-示唆熱分析)装置により、空気雰囲気下、室温から800℃まで10℃/分で被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子を昇温し、該粒子の重量(質量)減少率を測定した。この重量(質量)減少率を被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子の有機分量とした。
【0099】
(6)モノマー分散液の粘度評価
酸化ジルコニウムナノ粒子のモノマー分散液の粘度は、粘度計(東機産業社製 TVE-22L形粘度計)を用いて測定した。
設定温度:20℃
サンプル量:0.2mL
プレヒートタイム:1分
測定時間:1分
コーン・ロータ:3°×R9.7
【0100】
(7)モノマー分散液の屈折率測定
被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子のモノマー分散液の屈折率は、ATAGO社製多波長アッベ屈折計DR-M4型(測定温度20℃、干渉フィルター波長589(D)nm)を使用して測定した。
【0101】
(8)全光線透過率の測定
被覆型酸化ジルコニウム粒子モノマー分散液の全光線透過率は、濁度計(日本電色工業社製 NDH7000)を用いて測定した。測定試料調製について、大型スライドグラス(松浪硝子工業株式会社製、品番:S9112)の両端に厚さ100μmのスペーサーを置き、中央に当該分散液を0.5g計量した。さらにその上に大型スライドグラスを気泡が入らないように重ねたものを試料とした。
【0102】
(9)HAZEの測定
被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子のモノマー分散液のHAZEは、濁度計(日本電色工業社製 NDH7000)を用いて測定した。測定試料調製について、大型スライドグラス(松浪硝子工業株式会社製、品番:S9112)の両端に厚さ100μmのスペーサーを置き、中央に当該分散液を0.5g計量した。さらにその上に大型スライドグラスを気泡が入らないように重ねたものを試料とした。
【0103】
(10)硬化性評価
被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子含有組成物を大型スライドグラス(松浪硝子工業株式会社製、品番:S9112)上に、アプリケーター#01で塗工し、高圧水銀ランプで700mJ/cm2の紫外線を照射した。照射回数を増やし、塗工膜に指紋がつかなくなった時点を硬化したと判断し、硬化するまでの照射回数を確認した。
【0104】
(11)硬化膜の外観評価
被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子含有組成物を大型スライドグラス(松浪硝子工業株式会社製、品番:S9112)上に、アプリケーター#01で塗工し、高圧水銀ランプで700mJ/cm2の紫外線を複数回照射することにより硬化させ、硬化膜を得た(乾燥膜厚:0.1μm)。硬化膜を目視で外観(色、ひび割れ)を確認した。
【0105】
(12)硬化物の耐熱性評価
被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子含有組成物を熱分析用深皿アルミパンに20mg仕込み、高圧水銀ランプで15000mJ/cm2の紫外線を照射し試料を調製した。TG-DTA(熱重量-示唆熱分析)装置により、空気雰囲気下、室温から800℃まで10℃/分で試料を昇温し、重量(質量)減少率が5%となる温度を確認し耐熱性を評価した。
【0106】
(13)硬化薄膜の膜厚評価
被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子含有組成物を光学ガラス基板(5cm×5cm)に0.1g計量し、スピンコーター(3000rpm、30秒)で塗工した。80℃で1分乾燥し、高圧水銀ランプで2000mJ/cm2の紫外線を照射し硬化膜を調製した。薄膜測定装置(FILMETRICS社製)を用いて膜厚を測定した。
【0107】
(14)硬化薄膜の屈折率評価
被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子含有組成物を光学ガラス基板(5cm×5cm)に0.1g計量し、スピンコーター(3000rpm、30秒)で塗工した。80℃で1分乾燥し、高圧水銀ランプで2000mJ/cm2の紫外線を照射し硬化膜を調製した。薄膜測定装置(FILMETRICS社製)を用いて屈折率を測定した。
【0108】
[製造例1:2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートで被覆された被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO2粒子1)の製造]
2-エチルヘキサン酸ジルコニウムミネラルスピリット溶液(782g、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム含有率44質量%、第一希元素化学工業社製)に純水(268g)を混合した。得られた混合液を、攪拌機付きオートクレーブ内に仕込み、該オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、混合液を180℃まで加熱し、該温度で16時間保持(オートクレーブ内圧力は0.94MPa)して反応させ、酸化ジルコニウムナノ粒子を生成した。続いて、反応後の混合液を取り出し、底部に溜まった沈殿物を濾別してアセトンで洗浄した後に、乾燥した。乾燥後の前記沈殿物(100g)をトルエン(800mL)に分散させたところ、白濁溶液となった。次に、精製工程として、定量濾紙(アドバンテック東洋社製、No.5C)にて再度濾過し、沈殿物中の粗大粒子などを除去した。さらに、濾液を減圧濃縮してトルエンを除去することで白色の酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO2粒子1)を回収した。
【0109】
得られた被覆型ZrO2粒子1の結晶構造を上記「(1)結晶構造の解析」及び「(2)正方晶、単斜晶の割合の定量」に従って確認したところ、正方晶と単斜晶に帰属される回折線が検出され、回折線の強度から、正方晶と単斜晶の割合は54/46で、上記「(3)X線回折解析による結晶子径算出」で算出される結晶子径は5nmであった。また、上記「(4)電子顕微鏡による平均一次粒子径の測定」により測定して得られた被覆型ZrO2粒子1の平均粒子径(数平均一次粒子径)は、12nmであった。更に、得られた被覆型ZrO2粒子1を、赤外吸収スペクトルによって分析したところ、C-H由来の吸収と、COOH由来の吸収が確認できた。当該吸収は、被覆型酸化ジルコニウム粒子に被覆されている2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートに起因するものと考えられる。
【0110】
上記した「(5)有機分量の測定」に従って測定した被覆型ZrO2粒子1の有機分量は、12質量%だった。従って、被覆型ZrO2粒子1を被覆する2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートは、被覆型ZrO2粒子1全体の12質量%であることが分かった。
【0111】
[製造例2:2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2-アクリロイルオキシエチルサクシネートで被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO2粒子2)の製造]
上記製造例1で得られた被覆型ZrO2粒子1(10g)と2-アクリロイルオキシエチルサクシネート(1.5g)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(12g、以下「PGMEA」と称する)中で均一分散するまで撹拌混合した。次いで、n-ヘキサン(36g)を添加することで分散粒子を凝集させて溶液を白濁させ、白濁液から凝集粒子を濾紙により分離した。その後、分離した凝集粒子をn-ヘキサン(36g)中に添加、10分撹拌後、凝集粒子を濾紙により分離し、得られた粒子を室温で真空乾燥することで、2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2-アクリロイルオキシエチルサクシネートで表面処理された酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO2粒子2)を調製した。
【0112】
得られた被覆型ZrO2粒子2を重クロロホルムに分散させて測定資料とし、1H-NMRによる分析を行なった。その結果、2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2-アクリロイルオキシエチルサクシネートの存在モル比率が24:76であることがわかった。
【0113】
上記「(5)有機分量の測定」に従って測定した被覆型ZrO2粒子2の有機分量は、18質量%だった。従って、被覆型酸化ジルコニウム粒子を被覆する2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレート、及び2-アクリロイルオキシエチルサクシネートは、被覆型ZrO2粒子全体の18質量%であることが分かった。
【0114】
[製造例3:酸化ジルコニウム粒子モノマー分散液の調製]
製造例2で得られた被覆型ZrO2粒子2(20g)、m-フェノキシベンジルアクリレート(以後、PBZA)(5.0g)を配合し、均一撹拌することで、被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子含有率80%のPBZA分散液1を得た。なお、当該PBZA分散液1の粘度は、20℃において18840mPa・sである。
【0115】
実施例1
製造例3で得られた被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子分散液1(2.0g)、下記式で示されるトリプロピレングリコール-ビス(2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル)(日本触媒社製、以後、TPG-AOMAとする)(0.11g)を配合し、均一撹拌することで、被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子含有率76%のPBZAおよびTPG-AOMA分散液を得た。
【0116】
【0117】
比較例1
製造例3で得られた酸化ジルコニウム粒子分散液1(2.0g)、ライトアクリレート4EG-A(共栄化学社製)(0.11g)を配合し、均一撹拌することで、被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子含有率76%のPBZAおよびライトアクリレート4EG-A分散液を得た。
【0118】
実施例1および比較例1で得られた酸化ジルコニウム粒子モノマー分散液について、(6)モノマー分散液の粘度評価および(7)モノマー分散液の屈折率測定を行った結果を表1に示す。
【0119】
【0120】
分散液の粘度は、分散液に含まれるモノマーの分子量に影響を受けるため、比較例1では、AOMA-TPGと同等の分子量を有するモノマーを用いている。また実施例1と比較例1では屈折率が同等となるように分散液の組成を調整している。表1によれば、分散液の屈折率を同じにしたとき、分子量が同等の他のモノマーよりも、本発明における架橋性化合物を用いた時の方が、粘度が低減しており、反応性希釈剤として有用な効果を示している。
【0121】
実施例1で用いたAOMA-TPGの20℃における粘度は19.8mPa・sであり、また比較例1で用いたライトアクリレート4EG-Aの20℃における粘度は11.0mPa・sであり、モノマー単独ではAOMA-TPGの方が、粘度が高い。しかし、上記表1から分かる通り、粘度の高いAOMA-TPGを用いた実施例1の分散液の方が、粘度が低くなっており、本発明特有の効果が得られている。
【0122】
実施例2
製造例2で得られた被覆型ZrO2粒子2(3.0g)、TPG-AOMA(2.0g)を配合し、均一撹拌することで、被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子含有率60%のTPG-AOMA分散液を得た。
【0123】
比較例2
製造例2で得られた被覆型ZrO2粒子2(3.0g)、トリプロピレングリコールジアクリレート(以後、TPGDAとする)(2.0g)を配合し、均一撹拌することで、被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子含有率60%のTPGDA分散液を得た。
【0124】
実施例2および比較例2で得られた酸化ジルコニウム粒子モノマー分散液について、(6)モノマー分散液の粘度評価、(7)モノマー分散液の屈折率測定、(8)全光線透過率の測定、(9)HAZEの測定を行った結果を表2に示す。
【0125】
【0126】
分散液に含まれる分散媒(モノマー)の骨格が類似している実施例2及び比較例2で、分散液の屈折率を対比すると、実施例2の方が高い屈折率を示している。
【0127】
実施例3
実施例2で得られた分散液について、茶色褐色ガラス瓶に当該溶液3.0gにIrgacure184(光ラジカル重合開始剤、BASF社製)0.036gを仕込み、均一になるまで撹拌を行い、酸化ジルコニウム粒子含有組成物を得た。
【0128】
比較例3
比較例2で得られた分散液について、茶色褐色ガラス瓶に当該溶液3.0gにIrgacure184(光ラジカル重合開始剤、BASF社製)0.036gを仕込み、均一になるまで撹拌を行い、酸化ジルコニウム粒子含有組成物を得た。
【0129】
実施例3および比較例3で得られた酸化ジルコニウム粒子含有組成物について、(10)硬化性評価、(11)硬化膜の外観評価および(12)硬化物の耐熱性評価に従って評価した結果を表3に示す。
【0130】
【0131】
表3によれば、実施例3は比較例3に比べて、硬化物の熱安定性に優れているとともに、小さいエネルギー(UV照射回数が少ない)で硬化させることができることが分かる。
【0132】
実施例4
実施例2で得られた分散液について、茶色褐色ガラス瓶に当該溶液1.0g、Irgacure184(光ラジカル重合開始剤、BASF社製)0.040g、分散媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(以後、PGMとする)(5.89g)を仕込み、均一撹拌することで酸化ジルコニウム粒子含有組成物を得た。
【0133】
比較例4
比較例2で得られた分散液について、茶色褐色ガラス瓶に当該溶液1.0g、Irgacure184(光ラジカル重合開始剤、BASF社製)0.040g、分散媒としてPGM(5.78g)を仕込み、均一撹拌することで酸化ジルコニウム粒子含有組成物を得た。
【0134】
実施例4および比較例4で得られた酸化ジルコニウム粒子含有組成物について、(13)硬化膜の膜厚評価、(14)硬化膜の屈折率評価に従って評価した結果を表4に示す。
【0135】
【0136】
表4によれば、実施例4は比較例4に比べて高い屈折率を示していることが分かる。