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特開2024-75432測定用治具及び測定用治具を用いたスプラインの径方向寸法の測定方法
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  • 特開-測定用治具及び測定用治具を用いたスプラインの径方向寸法の測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075432
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】測定用治具及び測定用治具を用いたスプラインの径方向寸法の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/08 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
G01B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186932
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕一
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA31
2F062CC27
2F062GG29
(57)【要約】
【課題】スプラインの径方向寸法の測定作業を簡便にする。
【解決手段】シャフトの外周に形成されたスプラインの径方向寸法を測定する際に用いられる測定用治具であって、前記測定用治具は、前記シャフトに外挿される筒状に形成されており、前記測定用治具は、前記シャフトの軸線方向から見て、180°位相をずらして設けられた一対の平坦面を有し、前記一対の平坦面は、前記軸線の径方向から見て前記軸線に直交すると共に、前記軸線方向の位置を揃えて設けられており、前記一対の平坦面は、前記軸線周りの周方向に位置をずらすと共に、前記軸線方向に位置をずらして、複数組設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの外周に形成されたスプラインの径方向寸法を測定する際に用いられる測定用治具であって、
前記測定用治具は、前記シャフトに外挿される筒状に形成されており、
前記測定用治具は、前記シャフトの軸線方向から見て、180°位相をずらして設けられた一対の平坦面を有し、
前記一対の平坦面は、前記軸線の径方向から見て前記軸線に直交すると共に、前記軸線方向の位置を揃えて設けられており、
前記一対の平坦面は、前記軸線周りの周方向に位置をずらすと共に、前記軸線方向に位置をずらして、複数組設けられている、測定用治具。
【請求項2】
請求項1において、
前記測定用治具は、
前記シャフトに外挿されて位置決めされる基部と、
前記基部から前記軸線方向に延びると共に、前記径方向から見て前記スプラインにオーバーラップする延出部と、を有しており、
前記延出部は、前記複数組の前記一対の平坦面のうちの一方の平坦面が形成される第1延出部と、他方の平坦面が形成される第2延出部と、を有しており、
前記軸線方向から見て、前記第1延出部と前記第2延出部は、180°位相をずらして設けられており、
前記複数組の一対の平坦面のうちの1組は、前記基部に形成されている、測定用治具。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1延出部と前記第2延出部では、前記一対の平坦面が、前記周方向に位置をずらして複数設けられており、前記周方向における他方側に位置する平坦面から前記周方向における一方側に離れた平坦面に向かうにつれて、前記基部からの離間距離が大きい、測定用治具。
【請求項4】
請求項2において、
前記延出部は、前記複数組の前記一対の平坦面のうちの一方の平坦面が形成される第3延出部と、他方の平坦面が形成される第4延出部と、さらに有しており、
前記軸線方向から見て、前記第3延出部と前記第4延出部は、180°位相をずらして設けられていると共に、前記第1延出部と前記第2延出部から90°位相をずらして設けられている、測定用治具。
【請求項5】
請求項4において、
前記第3延出部と前記第4延出部では、前記一対の平坦面が、前記周方向に位置をずらして複数設けられており、前記周方向における他方側に位置する平坦面から前記周方向における一方側に離れた平坦面に向かうにつれて、前記基部からの離間距離が大きい、測定用治具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1に記載の測定用治具を用いた前記スプラインの径方向寸法の測定方法であって、
前記測定用治具を前記シャフトに外挿する装着工程と、
前記測定用治具を前記軸線回りに回転して、前記一対の平坦面を、測定対象のスプラインの外径側に配置する位置決め工程と、
前記スプラインの外径側に配置された前記一対の平坦面に一対の測定子を載置して、前記スプラインの径方向寸法を測定する測定工程と、を有する、測定用治具を用いたスプラインの径方向寸法の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定用治具及び測定用治具を用いたスプラインの径方向寸法の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シャフトの外周に形成されたスプラインの位相を測定する測定用治具を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-028947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャフトの外周に形成されたスプラインは、位相の測定の他に、径方向の寸法も測定される。スプラインの径方向の寸法測定は、シャフトの軸線方向における複数の位置で行われる。
ここで、軸線方向におけるスプラインの測定位置は予め定められている。作業者は、測定器の測定子を各測定位置に正確に配置する必要がある。
この場合において、各測定位置に対応した複数の測定用治具を用いることが考えられる。しかしながら、複数の測定用治具を用いて測定を行うことは、手間がかかる。
そこで、スプラインの径方向寸法の測定作業を簡便にすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様における測定用治具は、
シャフトの外周に形成されたスプラインの径方向寸法を測定する際に用いられる測定用治具であって、
前記測定用治具は、前記シャフトに外挿される筒状に形成されており、
前記測定用治具は、前記軸線方向から見て、180°位相をずらして設けられた一対の平坦面を有し、
前記一対の平坦面は、前記軸線の径方向から見て前記軸線に直交すると共に、前記軸線方向の位置を揃えて設けられており、
前記一対の平坦面は、前記軸線周りの周方向に位置をずらすと共に、前記軸線方向に位置をずらして、複数組設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、スプラインの径方向寸法の測定作業を簡便にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、測定用治具の使用状態を説明する図である。
図2図2は、測定用治具の斜視図である。
図3図3は、測定用治具の平面図である。
図4図4は、測定用治具の展開図である。
図5図5は、マイクロメータを説明する図である。
図6図6は、シャフトの測定箇所を説明する図である。
図7図7は、測定用治具のシャフトへの装着を説明する図である。
図8図8は、測定用治具の周方向の位置決めを説明する図である。
図9図9は、スプラインの径方向寸法の測定を説明する図である。
図10図10は、測定用治具の周方向の位置決めを説明する図である。
図11図11は、スプラインの径方向寸法の測定を説明する図である。
図12図12は、測定用治具の周方向の位置決めを説明する図である。
図13図13は、スプラインの径方向寸法の測定を説明する図である。
図14図14は、比較例に係る測定用治具を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0009】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0010】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、測定用治具1の使用状態を説明する図である。図1では、測定用治具1がシャフト2に外挿された状態を示している。図1では、測定用治具1の外周にクロスハッチングを付してある。
図2は、測定用治具1の斜視図である。
図3は、測定用治具1の平面図である。図3では、軸線X方向で位置が異なる各平坦面を区別し易くするために、延出壁の先端面にクロスハッチングを付し、段差面にハッチングを付している。また、シャフト2の小径軸部21を仮想線で示している。
図4は、外周側から見た測定用治具1の展開図である。図4は、図3における符号A1を起点として符号A2~A4を経由して、反時計回り方向の全周に亘って測定用治具1を展開した図を示している。
【0012】
図1に示すように、測定対象物であるシャフト2は、大径軸部20と、当該大径軸部20より小径の小径軸部21とを有する。小径軸部21は、シャフト2の軸線X方向における先端2a側に設けられている。小径軸部21の外周面21aには、スプライン5が形成されている。
本実施形態に係る測定用治具1は筒状を成しており、軸線X方向からシャフト2の小径軸部21に外挿して使用される。
【0013】
図2に示すように、測定用治具1は、円筒状の基部10と、当該基部10から延出する延出部11と、を有する。延出部11は、基部10の中心線C方向における一端面10aから、中心線Cに沿う方向に延びている。
【0014】
延出部11は、同一の形状を有する4つの延出壁12(第1延出部)、延出壁13(第3延出部)、延出壁14(第2延出部)、及び延出壁15(第4延出部)から構成されている。これら4つの延出壁12、13、14、15は、中心線C周りの周方向に順番に並んでいる。
【0015】
図3に示すように、延出壁12、13、14、15は、中心線C周りの周方向に90°位相をずらして等間隔に配置されている。延出壁12から180°位相をずらした位置には、延出壁14が設けられている。延出壁13から180°位相をずらした位置には、延出壁15が設けられている。なお、図3では、測定用治具1の径方向の厚みを誇張している。
【0016】
延出壁12、13、14、15は、中心線C周りの周方向に沿う弧状を成している。中心線C周りの周方向において、延出壁12、13、14、15のそれぞれの間には、基部10の一端面10aが露出している。
【0017】
延出壁12、13、14、15の内径は、基部10の内径D1と同一である。基部10の内径D1は、シャフト2の小径軸部21(図中仮想線参照)の外径D2よりも僅かに大径である(D1>D2)。測定用治具1は、シャフト2に対して相対回転可能である。
【0018】
図4に示すように、中心線C方向における基部10の一端面10aと他端面10bは、中心線Cに直交する平坦面である。延出壁12、13、14、15は、それぞれ基部10の一端面10aから中心線C方向に延びている。延出壁12、13、14、15は、周方向で間隔W3を空けて等間隔に設けられている。以下の説明では、延出壁12を例に挙げて延出壁の各部の構成を説明する。
【0019】
図4に示すように、中心線C方向における延出壁12の先端面12aは、中心線Cに直交する平坦面である。周方向における延出壁12の一方の側面121と他方の側面122は、中心線Cに平行な面である。
【0020】
延出壁12には、中心線C方向における先端面12a側と基部10側の一部をそれぞれ切欠いて形成した切欠部125、126が設けられている。
切欠部125は、延出壁12の先端面12aと他方の側面122とに跨って設けられている。切欠部126は、延出壁12の一方の側面121と基部10の一端面10aとに跨って設けられている。
【0021】
延出壁12における切欠部125が設けられた領域には、中心線Cに沿う面12cと、中心線Cに直交する段差面12bが形成されている。周方向における先端面12aの幅W1と段差面12bの幅W2は、延出壁12、13の間隔W3と略等しい幅に設定されている。これらの幅W1、W2、W3は、後記するマイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32の直径2r(図5参照)よりも大きい。
【0022】
中心線C方向における基部10の他端面10bと延出壁12の段差面12bとの距離はL2に設定されている。この距離L2は、基部10の他端面10bと延出壁12の先端面12aとの距離L1よりも短く、基部10の他端面10bと一端面10aとの距離L3よりも長い(L3<L2<L1)。
【0023】
従って、延出壁12では、段差面12bが先端面12aよりも中心線C方向において基部10側に位置している。延出壁12では、先端面12aと基部10の一端面10aとの離間距離(L1-L3)の方が、段差面12bと基部10の一端面10aとの離間距離(L2-L3)よりも大きくなっている。
【0024】
このように、測定用治具1では、延出壁12の先端面12a、段差面12b、及び基部10の一端面10aが中心線C方向に位置をずらして設けられていると共に、周方向に位置をずらして設けられている。
【0025】
また、図4に示すように、切欠部126は、延出壁12の一方の側面121から幅W4だけ他方の側面122側に窪んでいる。幅W4は、先端面12aの幅W1よりも小さい幅に形成されている(W4<W1)。
【0026】
図4に示すように、延出壁13、14、15は、延出壁12と同一の構成を有している。延出壁13、14、15は、それぞれ先端面12aと中心線C方向の位置が揃った先端面13a、14a、15aと、段差面12bと中心線C方向の位置が揃った段差面13b、14b、15bを有する。
【0027】
また、延出壁13、14、15には、それぞれ切欠部126に相当する切欠部136、146、156が設けられている。これら切欠部126、136、146、156は、マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32が延出壁12、13、14、15に干渉することを避けるために設けられている。
【0028】
図3のクロスハッチング領域に示すように、延出壁12の先端面12aから180°位相をずらした位置には、延出壁14の先端面14aが位置している。これら先端面12a、14aは、一対の平坦面を構成する。
【0029】
また、図3のハッチング領域に示すように、延出壁12の段差面12bから180°位相をずらした位置には、延出壁14の段差面14bが位置している。これら段差面12b、14bは、一対の平坦面を構成する。
【0030】
さらに、図3に示すように、周方向における延出壁12、13の間に露出する基部10の一端面10aから180°位相をずらした位置には、延出壁14、15の間に露出する基部10の一端面10aが位置している。これら一端面10a、10aは、一対の平坦面を構成する。
【0031】
また、図3に示すように、延出壁13の先端面13aと延出壁15の先端面15aが一対の平坦面を構成する。延出壁13の段差面13bと延出壁15の段差面15bが一対の平坦面を構成する。また、周方向における延出壁13、14の間、延出壁15、12の間にそれぞれ露出する基部10の一端面10a、10aもまた、一対の平坦面を構成する。すなわち、本実施形態に係る測定用治具1は、一対の平坦面を六組備えている。
【0032】
図4に示すように、六組の一対の平坦面には、マイクロメータ3の測定子であるアンビル31とスピンドル32がそれぞれ載置されるようになっている(図4の仮想線参照)。以下の説明では、六組の一対の平坦面うちの以下の三組にアンビル31とスピンドル32を載置した場合を例示する。
・延出壁12の先端面12aと、延出壁14の先端面14a
・延出壁12の段差面12bと、延出壁14の段差面14b
・段差面12bに隣接する一端面10aと、段差面14bに隣接する一端面10a
【0033】
(マイクロメータ3)
図5は、マイクロメータ3を説明する図である。図5は、作業者がマイクロメータ3を把持した状態において、マイクロメータ3を鉛直線方向上側から見た図を示している。図5では、図中下側が作業者から見た手前側を示し、図中上側が作業者から見た奥側を示している。
【0034】
図5に示すように、マイクロメータ3は、略U字形状を成すフレーム部30を有する。フレーム部30の一端部301には、固定側の測定子であるアンビル31が設けられている。フレーム部30の他端部302には、可動側の測定子であるスピンドル32と、当該スピンドル32を進退移動させる操作部33とが支持されている。
【0035】
アンビル31とスピンドル32は、それぞれフレーム部30の一端部301と他端部302から、直線Lx方向で互いに近づく向きに延びている。直線Lxは、測定時における作業者の左右方向に沿う直線である。
【0036】
アンビル31は、直線Lx方向に沿う向きに設けられた基部310を有する。
基部310は、半径rの円柱状を成している。基部310は、フレーム部30の一端部301に片持ち支持されている。直線Lx方向における基部310の先端部311は、基部310から離れるにつれて小径となる先細り形状を成している。先端部311の最も小径となる部分には、ボール312が設けられている。
【0037】
スピンドル32は、直線Lx方向に沿う向きに設けられた基部320を有する。
基部320は、半径rの円柱状を成しており、アンビル31の基部310と同心に設けられている。基部320は、図示しないねじ機構及びラチェット機構を介して、操作部33に接続されている。直線Lx方向における基部320の先端部321は、基部320から離れるにつれて小径となる先細り形状を成している。先端部321の最も小径となる部分には、ボール322が設けられている。
【0038】
操作部33は、フレーム部30の他端部302を挟んでスピンドル32と反対側に設けられている。操作部33は、直線Lx回りに回転可能に設けられている。操作部33が直線Lx回りに回転すると、スピンドル32は直線Lx方向に進退移動する。
【0039】
具体的には、ねじを締める方向(図5における矢印a)に操作部33を回転させると、スピンドル32はアンビル31に近づく方向(図5における矢印c)に変位する。一方、ねじを緩める方向(図5における矢印b)に操作部33を回転させると、スピンドル32はアンビル31から離れる方向(図5における矢印d)に変位する。
【0040】
ここで、ボール312、322は同一の直径Qを有する。ボール312、322の直径Qは、当該ボール312、322の外周がスプライン5の谷部52、52に基準円Im(図8参照)上で当接する直径に設定されている。
本実施形態のマイクロメータ3は、ボール312、322をスプライン5の谷部52、52に係合させた際のスプライン5の径方向寸法を測定する。具体的には、図5に示すように、直線Lx方向におけるボール312、322の基部310、320側の外周同士の距離であるオーバーボール径OBDを測定する。
【0041】
以下、測定用治具1を用いたスプライン5のオーバーボール径OBDの測定方法を説明する。
図6は、シャフト2におけるスプライン5のオーバーボール径OBDの測定箇所を説明する図である。図6は、シャフト2を軸線X方向に沿って切断した断面の模式図である。
図7は、測定用治具1のシャフト2への装着工程を説明する図である。
図8は、測定用治具1の周方向の位置決めを説明する図である。図8は、第1測定箇所P1を測定する際の測定用治具1の配置を示している。
図9は、図8のA-A断面の模式図である。
図10は、測定用治具1の周方向の位置決めを説明する図である。図10は、第2測定箇所P2を測定する際の測定用治具1の配置を示している。
図11は、図10のA-A断面の模式図である。
図12は、測定用治具1の周方向の位置決めを説明する図である。図12は、第3測定箇所P3を測定する際の測定用治具1の配置を示している。
図13は、図12のA-A断面の模式図である。
【0042】
図8に示すように、本実施形態に係るスプライン5は、偶数歯(山部51と谷部52が12個ずつ)である。そのため、軸線X周りの周方向において180°位相をずらした位置には、一対の山部51、51、または一対の谷部52、52が位置している。
【0043】
図6に示すように、本実施形態では、マイクロメータ3のボール312、322を一対の谷部52、52にそれぞれ軸線Xの径方向から係合させて、スプライン5のオーバーボール径OBDを測定する。本実施形態では、スプライン5のオーバーボール径OBDの測定は、以下の3箇所の測定を行う場合を例示する。
(i)軸線X方向におけるシャフト2の先端2a側の第1測定箇所P1
(ii)軸線X方向におけるスプライン5の略中間の第2測定箇所P2
(iii)軸線X方向における大径軸部20側の第3測定箇所P3
【0044】
図6に示すように、第1測定箇所P1、第2測定箇所P2及び第3測定箇所P3は、シャフト2の段差面22を基準として予め設定されている。段差面22から第1測定箇所P1、第2測定箇所P2及び第3測定箇所P3までの距離はそれぞれLP1、LP2、LP3である(LP1>LP2>LP3)。
【0045】
(シャフト2のセット)
図7に示すように、スプライン5の測定は、シャフト2の軸線Xを鉛直線方向に沿わせた状態で行われる。シャフト2は、小径軸部21を大径軸部20の上側に向けた状態で、図示しない測定台にセットされる。
【0046】
図8に示すように、作業者は、軸線X方向から見て、180°位相がずれた一対の谷部52、52が、直線Lx上に位置するように、シャフト2を軸線X回りに回転させる(図8の白抜き矢印)。
【0047】
(装着工程)
次に、図7に示すように、作業者は、測定用治具1を基部10側からシャフト2の小径軸部21に外挿し(図中矢印方向)、他端面10bをシャフト2の段差面22に軸線X方向から当接させる(装着工程)。これにより、測定用治具1の中心線C(図2参照)が軸線Xと同心に配置される。また、軸線Xの径方向から見て、延出部11は、スプライン5にオーバーラップする。これにより、延出壁12の先端面12a、段差面12bと基部10の一端面10aが、スプライン5が形成された領域に重なる位置に配置される。
【0048】
(位置決め工程)
図8に示すように、作業者は、測定用治具1を軸線X回りに回転させて、延出壁12、14の先端面12a、14aを、直線Lxと重なる位置に配置する(図中黒矢印)。これにより、延出壁12、14の先端面12a、14aが、直線Lx方向で一対の谷部52、52とそれぞれオーバーラップする位置に配置される。なお、延出壁12、14の先端面12a、14aに代えて延出壁13、15の先端面13a、15aを直線Lxと重なる位置に配置してもよい。
【0049】
(測定工程)
図8に示すように、作業者は、マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32を延出壁12、14の先端面12a、14a上に配置する。これにより、アンビル31とスピンドル32は、直線Lx方向で一対の谷部52、52に対向配置される(図中仮想線参照)。
【0050】
図9に示すように、測定時には、マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32は、軸線X方向(鉛直線方向上側)から延出壁12、14の先端面12a、14aに当接する。
【0051】
ここで、測定用治具1では、軸線X方向における基部10の他端面10bから一対の平坦面までの距離が、マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32の半径rを考慮したものとなっている。
具体的には、図9に示すように、軸線X方向における基部10の他端面10bから延出壁12、14の先端面12a、14a(一対の平坦面)までの距離L1は、アンビル31とスピンドル32の半径r分だけ距離LP1よりも短い長さに設定されている(LP1=L1+r)。これにより、延出壁12、14の先端面12a、14aにアンビル31とスピンドル32が当接した際に、ボール312、322の中心が第1測定箇所P1に位置するようになっている。
【0052】
次に、作業者は、アンビル31のボール312を一方の谷部52に係合させつつ、ねじを締める方向に操作部33を回転させて(図5における矢印a)、スピンドル32のボール322を他方の谷部52に係合させる(図9における矢印c方向)。
そして、作業者は、操作部33の回転が空転に切り替わった際のオーバーボール径OBDを測定する。これにより、第1測定箇所P1でのスプライン5のオーバーボール径OBDが測定される。
【0053】
(位置決め工程)
次に、作業者は、ねじを緩める方向に操作部33を回転させて(図5における矢印b)、スピンドル32のボール322を他方の谷部52から僅かに離間させる(図9における矢印d方向)。これにより、ボール312、322は、谷部52、52内でそれぞれ遊嵌した状態となっている。
【0054】
図10に示すように、作業者は、測定用治具1を時計回り方向に回転させて、延出壁12、14の先端面12a、14aを直線Lxに対して角度θ1だけ傾斜した位置に配置する。具体的には、延出壁12、14の段差面12b、14bが、直線Lxと重なる位置まで、測定用治具1を回転させる(図中黒矢印)。これにより、延出壁12、14の段差面12b、14bが、直線Lx方向において一対の谷部52、52とそれぞれオーバーラップする位置に配置される。
【0055】
(測定工程)
図11に示すように、作業者は、マイクロメータ3を鉛直線方向下側に移動させて、アンビル31とスピンドル32を、延出壁12、14の段差面12b、14bに当接させる(図中白抜き矢印)。
【0056】
軸線X方向における基部10の他端面10bから延出壁12、14の段差面12b、14bまでの距離L2は、アンビル31とスピンドル32の半径r分だけ距離LP2よりも短い長さに設定されている(LP2=L2+r)。これにより、延出壁12、14の段差面12b、14bにアンビル31とスピンドル32が当接した際に、ボール312、322の中心が第2測定箇所P2に位置するようになっている。
【0057】
次に、作業者は、アンビル31のボール312を一方の谷部52に係合させつつ、ねじを締める方向に操作部33を回転させて(図5における矢印a)、スピンドル32のボール322を他方の谷部52に係合させる(図9における矢印c方向)。
そして、作業者は、操作部33の回転が空転に切り替わった際のオーバーボール径OBDを測定する。これにより、第2測定箇所P2でのスプライン5のオーバーボール径OBDが測定される。
【0058】
(位置決め工程)
次に、作業者は、ねじを緩める方向に操作部33を回転させて(図5における矢印b)、スピンドル32のボール322を他方の谷部52から僅かに離間させる(図11における矢印d方向)。これにより、ボール312、322は、谷部52、52内でそれぞれ遊嵌した状態となっている。
【0059】
図12に示すように、作業者は、測定用治具1を時計回り方向に回転させて、延出壁12、14の先端面12a、14aを直線Lxに対して角度θ2だけ傾斜した位置に配置する。具体的には、基部10の一端面10a、10aが、直線Lxと重なる位置まで、測定用治具1を回転させる(図中黒矢印)。これにより、基部10の一端面10a、10aが、直線Lx方向において一対の谷部52、52とそれぞれオーバーラップする位置に配置される。
【0060】
(測定工程)
図13に示すように、作業者は、マイクロメータ3を鉛直線方向下側に移動させて、のアンビル31とスピンドル32を、基部10の一端面10a、10aに当接させる。
【0061】
軸線X方向における基部10の他端面10bから基部10の一端面10aまでの距離L3は、アンビル31とスピンドル32の半径r分だけ距離LP3よりも短い長さに設定されている(LP3=L3+r)。これにより、基部10の一端面10a、10aにアンビル31とスピンドル32が当接した際に、ボール312、322の中心が第3測定箇所P3に位置するようになっている。
【0062】
次に、作業者は、アンビル31のボール312を一方の谷部52に係合させつつ、ねじを締める方向に操作部33を回転させて(図5における矢印a)、スピンドル32のボール322を他方の谷部52に係合させる(図13における矢印c方向)。
そして、作業者は、操作部33の回転が空転に切り替わった際のオーバーボール径OBDを測定する。これにより、第3測定箇所P3でのスプライン5のオーバーボール径OBDが測定される。
【0063】
ここで、スプライン5のオーバーボール径OBDの測定は、測定した一対の谷部52、52に加えて、当該一対の谷部52、52から90°位相がずれた位置にある一対の谷部52’、52’(図12参照)についても行われることがある。一対の谷部52’、52’は、軸線X方向から見て、前後方向に沿う直線Ly方向の一方側と他方側に配置されている。
【0064】
一対の谷部52’、52’を測定する場合、作業者は、測定用治具1ごと軸線X回りにシャフト2を90°回転させて、一対の谷部52’、52’を直線Lx上に配置する。
詳細な説明は省略するが、前記した一対の谷部52、52の測定と同様にして、直線Lx上に配置された一対の谷部52’、52’についても、位置決め工程と測定工程を交互に繰り返すことで、第1測定箇所P1~第3測定箇所P3での測定が行われる。
【0065】
このように本実施形態では、作業者は、測定用治具1を軸線X回りに回転させて、一対の平坦面(先端面12a、14aと、段差面12b、14bと、一端面10a、10a)を周方向に順番に変位させるだけで、マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32が載置される一対の平坦面を切り替えることができる。そして、作業者は、マイクロメータ3を鉛直線方向下側に順番に移動させるだけでよい。これにより、第1測定箇所P1~第3測定箇所P3での測定を容易に行うことができるようになっている。
【0066】
(比較例)
図14は、比較例を説明する図である。
比較例では、第1測定箇所P1~第3測定箇所P3(図6参照)での測定を行うために、高さの異なる3つの測定用治具100A、100B、100Cを用いる。
【0067】
図14に示すように、測定用治具100A、100B、100Cは、それぞれ中心線C1、C2、C3を囲む筒状を成している。
中心線C1方向における測定用治具100Aの一端面101と他端面102は、中心線C1に直交する平坦面である。中心線C1方向における一端面101と他端面102との距離L100は、本実施形態に係る基部10の他端面10bから延出壁12の先端面12aまでの距離L1(図4参照)と等しい(L100=L1)。
【0068】
中心線C2方向における測定用治具100Bの一端面103と他端面104は、中心線C2に直交する平坦面である。中心線C2方向における一端面103と他端面104との距離L200は、本実施形態に係る基部10の他端面10bから延出壁12の段差面12bまでの距離L2(図4参照)と等しい(L200=L2)。
【0069】
中心線C3方向における測定用治具100Cの一端面105と他端面106は、中心線C3に直交する平坦面である。中心線C3方向における一端面105と他端面106との距離L300は、本実施形態に係る基部10の他端面10bから一端面10aまでの距離L3(図4参照)と等しい(L300=L3)。
【0070】
これら測定用治具100A~100Cを用いたスプライン5のオーバーボール径OBDの測定は、以下の手順で行われる。
(a)測定用治具100Aをシャフト2の小径軸部21に外挿し、他端面102をシャフト2の段差面22に当接させる(図14の仮想線参照)。
(b)マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32を測定用治具100Aの一端面101に当接させる。
(c)マイクロメータ3を操作して、スプライン5のオーバーボール径OBDを測定する。
(d)マイクロメータ3を持ち上げてスプライン5から離間させる。
(e)測定用治具100Aを小径軸部21から取り外す。
(f)以下、測定用治具100B、100Cのそれぞれにおいて、上記(a)~(e)を繰り返す。
【0071】
比較例では、作業者は、第1測定箇所P1~第3測定箇所P3を測定する際に、測定用治具100A~100Cを交換する必要がある。また、測定用治具100A~100Cを交換するために、マイクロメータ3を持ち上げてスプライン5から離間させる必要がある。この場合、マイクロメータ3のボール312、322がスプライン5の谷部52、52から一旦離れることになる。
【0072】
ここで、測定精度の観点から、第1測定箇所P1~第3測定箇所P3の測定は、共通の谷部52、52で行うことが好ましい。そのため、作業者は、測定用治具100A~100Cの交換の前後で、測定対象の谷部52の位置を把握しておく必要があり、負担が大きい。スプライン5の歯数が多くなるほど、測定対象の谷部52の位置を把握しておくことは難しくなる。
【0073】
これに対して、本実施形態に係る測定用治具1は、1つの部材で第1測定箇所P1~第3測定箇所P3に対応する一対の平坦面(一対の先端面12a、14a、一対の段差面12b、14b及び一対の一端面10a、10a)を有している。これにより、複数の測定用治具を準備、交換する手間とコストを低減している。
【0074】
また、測定用治具1を軸線X回りに回転させるだけで、マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32が載置される一対の平坦面が切り替わる。これにより、作業者は、マイクロメータ3のボール312、322を谷部52、52内に遊嵌させたまま、マイクロメータ3を第1測定箇所P1~第3測定箇所P3へと鉛直線方向下側に順番に移動させることができる。従って、作業者は、測定対象の谷部52の位置を把握しておく必要はない。マイクロメータ3を持ち上げる動作も不要になる。従って、作業者の作業負担を減らすことができる。
【0075】
本実施形態では、測定用治具1が4つの延出壁12~15を備えているものを例示したが、この態様に限定されない。測定用治具1は2つの延出壁12、14のみ、または延出壁13、15のみを備えているものであってもよい。または、測定用治具1は6つ以上の偶数個の延出壁を備えていてもよい。
【0076】
本実施形態のように4つの延出壁12~15を備えている場合、延出壁12、14、または延出壁13、15のうち、谷部52、52の近くに位置しているものを用いることができる。そのため、2つの延出壁12、14のみを備えるものと比較して、位置決め工程において測定用治具1の操作量を少なくできる。これにより、速やかに測定工程に移行できる。
【0077】
以下に、本発明のある態様における測定用治具1の例を列挙する。
(1)測定用治具1は、シャフト2の外周に形成されたスプライン5のオーバーボール径OBD(径方向寸法)を測定する際に用いられる。
測定用治具1は、シャフト2に、当該シャフト2の軸線X方向から外挿される筒状を成している。
測定用治具1は、軸線X方向から見て、180°位相をずらして設けられた一対の平坦面である先端面12a、14aを有する。
測定用治具1は、軸線X方向から見て、180°位相をずらして設けられた一対の平坦面である段差面12b、14bを有する。
測定用治具1は、軸線X方向から見て、180°位相をずらして設けられた一対の平坦面である一端面10a、10aを有する。
先端面12a、14aは、軸線Xの径方向から見て軸線Xに直交すると共に、軸線X方向の位置を揃えて設けられている。
段差面12b、14bは、軸線Xの径方向から見て軸線Xに直交すると共に、軸線X方向の位置を揃えて設けられている。
一端面10a、10aは、軸線Xの径方向から見て軸線Xに直交すると共に、軸線X方向の位置を揃えて設けられている。
複数組の一対の平坦面である先端面12a、14aと、段差面12b、14bと、一端面10a、10aとは、軸線X周りの周方向に位置をずらすと共に、軸線X方向に位置をずらして設けられている。
【0078】
このように構成すると、軸線X方向の異なる位置に設定されたスプライン5の測定箇所に対して、測定用治具1を軸線X回りに回転させて、一対の平坦面を周方向に変位させるだけで、各測定箇所での測定を行える。よって、スプライン5の測定作業を簡便にすることができる。
具体的には、測定用治具1では、一対の平坦面である先端面12a、14aと、段差面12b、14bと、一端面10a、10aが、それぞれ第1測定箇所P1~第3測定箇所P3に対応している。よって、これら一対の平坦面上にマイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32を載置するだけで、マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32を第1測定箇所P1~第3測定箇所P3に適切に配置できる。
また、測定用治具1を回転させるだけで、マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32が載置される一対の平坦面が切り替わる。この際、マイクロメータ3は軸線X方向に移動させるだけでよい。そのため、図14で示す比較例のように、複数の測定用治具100A~100Cを交換する際に、その都度マイクロメータ3をスプライン5から遠ざける必要はない。よって、測定用治具1を用いることで、作業者は、第1測定箇所P1~第3測定箇所P3での測定を容易に行うことができる。
【0079】
(2)測定用治具1は、
シャフト2に外挿されて位置決めされる基部10と、
基部10から軸線X方向に延びると共に、軸線Xの径方向から見てスプライン5にオーバーラップする延出部11と、を有する。
延出部11は、複数組の一対の平坦面のうちの一方の平坦面である先端面12a、段差面12bが形成される延出壁12(第1延出部)と、他方の平坦面である先端面14a、段差面14bが形成される延出壁14(第2延出部)と、を有する。
延出壁12と、延出壁14は、180°位相をずらして設けられている。
複数組の一対の平坦面のうちの1組である一端面10a、10aは、基部10に形成されている。
【0080】
このように構成すると、基部10をシャフト2に外挿して位置決めするだけで、先端面12a、14aと、段差面12b、14bと、一端面10a、10aを、それぞれスプライン5の第1測定箇所P1、第2測定箇所P2、第3測定箇所P3に対応した軸方向位置に配置できる。
【0081】
(3)延出壁12では、先端面12aと段差面12bが軸線X周りの周方向に位置をずらして設けられている。
延出壁14では、先端面14aと段差面14bが軸線X周りの周方向に位置をずらして設けられている。
軸線X回りの周方向における他方側に位置する段差面12b、14bから、一方側に離れた先端面12a、14aに向かうにつれて、基部10の一端面10aからの離間距離が大きい。
【0082】
このように構成すると、作業者は、先端面12a、14aと、段差面12b、14bと、一端面10a、10aに、マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32を順番に載置する際に、マイクロメータ3を鉛直線方向上側から下側に一方向に移動させるだけでよい。作業者がマイクロメータ3を持ち上げる動作が不要になるため、測定時の作業負担を減らすことができる。
【0083】
(4)延出部11は、複数組の一対の平坦面のうちの一方の平坦面である先端面13a、段差面13bが形成される延出壁13(第3延出部)と、他方の平坦面である先端面15a、段差面15bが形成される延出壁15(第4延出部)と、さらに有している。
軸線X方向から見て、延出壁13と延出壁15は、180°位相をずらして設けられていると共に、延出壁12と延出壁14から90°位相をずらして設けられている。
先端面13a、15aは、先端面12a、14aと、軸線X方向の位置を揃えて設けられている。
段差面13b、15bは、段差面12b、14bと、軸線X方向の位置を揃えて設けられている。
【0084】
このように構成すると、4つの延出壁12、13、14、15のうち、直線Lx上にある谷部52、52の近くに位置している2つの延出壁(延出壁12、14または延出壁13、15)を利用することができる。そのため、2つの延出壁12、14のみを備えるものと比較して、軸線X回りに回転させる際の測定用治具1の操作量を少なくできる。これにより、速やかに測定工程に移行できる。
【0085】
(5)延出壁13では、先端面13aと段差面13bが軸線X周りの周方向に位置をずらして設けられている。
延出壁15では、先端面15aと段差面15bが軸線X周りの周方向に位置をずらして設けられている。
軸線X周りの周方向における他方側に位置する段差面13b、15bから、一方側に離れた先端面13a、15aに向かうにつれて、基部10の一端面10aからの離間距離が大きい。
【0086】
このように構成すると、作業者は、先端面13a、15aと、段差面13b、15bと、一端面10a、10aに、マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32を順番に載置する際に、マイクロメータ3を鉛直線方向上側から下側に一方向に移動させるだけでよい。作業者がマイクロメータ3を持ち上げる動作が不要になるため、測定時の作業負担を減らすことができる。
【0087】
また、本発明は、測定用治具1を用いたスプラインの径方向寸法の測定方法としても特定できる。
具体的には、
(6)測定用治具1を用いたスプライン5のオーバーボール径OBD(径方向寸法)の測定方法であって、
測定用治具1をシャフト2に外挿する装着工程と、
測定用治具1を軸線X回りに回転して、一対の平坦面である先端面12a、14a、段差面12b、14b、または一端面10a、10aを、測定対象のスプライン5の谷部52、52の外径側に配置する位置決め工程と、
スプライン5の谷部52、52の外径側に位置決めされた先端面12a、14a、段差面12b、14b、または一端面10a、10aに、マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32(一対の測定子)を載置して、スプライン5のオーバーボール径OBDを測定する測定工程と、を有する。
【0088】
このように構成すると、一対の平坦面を周方向に変位させるだけで、マイクロメータ3のアンビル31とスピンドル32を載置する一対の平坦面が切り替わる。そのため、複数の測定用治具を準備して都度交換することなく、第1測定箇所P1~第3測定箇所P3での測定を容易に行える。
【0089】
本実施形態では、延出壁12は、軸線X方向における先端面12aと一端面10aの間に一つの段差面12bを有している場合を例示した(図4参照)。しかしながら、この態様に限定されない。延出壁12は、軸線X方向における先端面12aと一端面10aの間に複数の段差面を有していてもよい。軸線X方向における測定箇所の数に応じて、適宜変更可能である。複数の段差面は、周方向の一方の側面121から他方の側面122に向かうにつれて、軸線X方向で先端面12aから一端面10aに近づく階段状に形成してもよい。延出壁13~15も同様である。
【0090】
また、本実施形態では、スプライン5が偶数歯(12歯)であるものを例示した(図8参照)。しかしながら、スプライン5は奇数歯であってもよい。図示は省略するが、奇数歯の場合、軸線X周りの周方向において180°位相をずらした位置には、山部51と谷部52が位置する。そのため、直線Lx方向における一方側に谷部52を配置すると、他方側には山部51が配置される。
この場合、測定用治具1を回転させて、一対の平坦面を直線Lx方向で谷部52と山部51にオーバーラップする位置に配置すればよい。次に、マイクロメータ3のアンビル31を谷部52に係合させると共に、スピンドル32を山部51の頂点に当接させてオーバーボール径OBDを測定すればよい。
このように、本実施形態に係る測定用治具1は、スプライン5の歯数に関係なく、オーバーボール径OBDの測定に用いることができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 :測定用治具
2 :シャフト
3 :マイクロメータ
5 :スプライン
10 :基部
11 :延出部
12 :延出壁(第1延出部)
13 :延出壁(第3延出部)
14 :延出壁(第2延出部)
15 :延出壁(第4延出部)
31 :アンビル(測定子)
32 :スピンドル(測定子)
52 :谷部
10a :一端面(一対の平坦面)
12a、14a :先端面(一対の平坦面)
13a、15a :先端面(一対の平坦面)
12b、14b :段差面(一対の平坦面)
13b、15b :段差面(一対の平坦面)
Lx :直線
OBD :オーバーボール径
P1 :第1測定箇所
P2 :第2測定箇所
P3 :第3測定箇所
X :軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14