(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075437
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】車両用ポップアップフード装置
(51)【国際特許分類】
B62D 25/10 20060101AFI20240527BHJP
B60R 21/38 20110101ALI20240527BHJP
【FI】
B62D25/10 E
B60R21/38 323
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186942
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】592015271
【氏名又は名称】テクノエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】田口 輝貴
【テーマコード(参考)】
3D004
【Fターム(参考)】
3D004AA04
3D004BA02
3D004CA15
3D004CA41
(57)【要約】
【課題】ポップアップしたフロントフードを、車室内からの操作によって元の格納位置に戻すことが可能な車両用ポップアップフード装置を提供する。
【解決手段】移動制限解除操作部材26により、第1ストッパ部材72をフードロック装置14に係合する係合位置からフードロック装置14に係合しない非係合位置へ移動させる操作力が第1ストッパ部材72に伝達されると、それまでフードロック装置14の車両下方側への移動を制限していた第1ストッパ部材72が前記非係合位置へ移動させられる。これにより、フードロック装置14の車両下方側への移動が許容されるので、フードロック装置14がフロントフード12及びフードロック装置14の自重により下降して、フロントフード12が車両下降側へ移動してフロントフード12が閉じられる。したがって、ポップアップしたフロントフード12を、車室内からの操作によって元の格納位置に戻すことが可能となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントフードの車両下方側に配置され、作動することによって前記フロントフードを閉止位置から車両上方側へ移動させるフロントフード持上装置と、
前記フロントフードの車両下方側に配置されると共に前記フロントフードに取付けられたフードストライカが係止され、前記フロントフードと共に車両上方側へ移動可能とされたフードロック装置と、
前記フードロック装置を車両上方側へ移動可能に支持するベース部材と、
前記フードロック装置が車両上方側へ移動された際に前記フードロック装置の車両下方側部位に係合する係合位置と前記フードロック装置の車両下方側部位に係合しない非係合位置との間で移動可能に設けられ、前記係合位置では前記フードロック装置の車両下方側への移動を制限する第1ストッパ部材と、を備える車両用ポップアップフード装置であって、
前記第1ストッパ部材を前記係合位置から前記非係合位置へ移動させる操作力を前記第1ストッパ部材に伝達する移動制限解除操作部材を、含む
ことを特徴とする車両用ポップアップフード装置。
【請求項2】
前記非係合位置から前記係合位置へ向かう付勢力を前記第1ストッパ部材に常時付与する付勢装置を含み、
前記移動制限解除操作部材は、前記付勢装置の付勢力に抗して前記操作力を前記第1ストッパ部材に伝達する
ことを特徴とする請求項1の車両用ポップアップフード装置。
【請求項3】
前記第1ストッパ部材は、前記フードロック装置の車両下方側に配置され、前記フードロック装置が車両上方側へ移動された際に前記フードロック装置の車両下方側かつ前記フードストライカが係止されている部分に対して車幅方向一方側の部位に係合することにより前記フードロック装置の車両下方側への移動を制限するものである
ことを特徴とする請求項1の車両用ポップアップフード装置。
【請求項4】
前記第1ストッパ部材は、前記ベース部材に設けられた一対の案内装置によって前端部および後端部が水平方向に案内され、前記付勢装置により前記前端部方向に付勢された長手状の棒状部材を備え、前記係合位置では前記前端部が前記フードロック装置の車両下方側部位に係合する
ことを特徴とする請求項2の車両用ポップアップフード装置。
【請求項5】
前記ベース部材には、前記フードロック装置の下端部に固定された固定ピンを掛け止める係止位置と前記固定ピンを掛け止めない非係止位置とに回動可能な固定フックが、備えられ、
前記固定フックは、前記移動制限解除操作部材が前記係合位置から前記非係合位置へ移動させるに同期して、前記係止位置から前記非係止位置へ回動操作される
ことを特徴とする請求項1の車両用ポップアップフード装置。
【請求項6】
前記フードロック装置に対して車幅方向他方側に配置され、前記第1ストッパ部材に係合した前記フードロック装置が当接することで前記フードロック装置の車幅方向他方側への移動を制限する第2ストッパ部材を、さらに含む
ことを特徴とする請求項3の車両用ポップアップフード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントフードの前端部を車両上方側にポップアップさせる車両用ポップアップフード装置に関し、特に、一端浮き上がったフロントフードを元の格納位置へ復帰させる機構を備える車両用ポップアップフード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行者の頭部等の障害を軽減するために、歩行者との衝突時に車両のフロントフードを浮き上がらせる(ポップアップさせる)車両用ポップアップフード装置が提案されている。たとえば特許文献1に記載された車両用ポップアップフード装置がそれである。
【0003】
このような車両用ポップアップフード装置は、フロントフードの車両下方側に配置され、作動することによって前記フロントフードを閉止位置から車両上方側へ移動させるフロントフード持上装置と、(b)前記フロントフードの車両下方側に配置されると共に前記フロントフードに取付けられたフードストライカが係止され、前記フロントフードと共に車両上方側へ移動可能とされたフードロック装置と、(c)前記フードロック装置を車両上方側へ移動可能に支持するベース部材と、(d)前記フードロック装置が車両上方側へ移動された際に前記フードロック装置の車両下方側部位に係合する係合位置と前記フードロック装置の車両下方側部位に係合しない非係合位置との間で移動可能に設けられ、前記係合位置では前記フードロック装置の車両下方側への移動を制限する第1ストッパ部材と、を備えている。
【0004】
フロントフード持上装置が作動する前の状態では、フロントフードに取り付けられたフードストライカがフードロック装置に係止されていて、フロントフードが閉止された格納位置に保持される。フロントフード持上装置が作動すると、フードロック装置がフロントフードと共にベース部材に対して車両上方側へ移動し、フロントフードがポンプアップさせられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載の従来の車両用ポップアップフード装置では、動物やガイドポスト等の歩行者以外の物にとの間の軽い衝突時にも作動することがあるが、その場合、フロントフードがポンプアップしたままで走行すると、視界が狭くなり、風圧によるフロントフードのばたつきも発生して、走行の安全性確保に支障が発生する。また、フロントフードを元の格納位置に戻すには、車両の室外において危険を伴う作業を強いられるという問題があった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、ポップアップしたフロントフードを、車室内からの操作によって元の格納位置に戻すことが可能な車両用ポップアップフード装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨とするところは、(a)フロントフードの車両下方側に配置され、作動することによって前記フロントフードを閉止位置から車両上方側へ移動させるフロントフード持上装置と、(b)前記フロントフードの車両下方側に配置されると共に前記フロントフードに取付けられたフードストライカが係止され、前記フロントフードと共に車両上方側へ移動可能とされたフードロック装置と、(c)前記フードロック装置を車両上方側へ移動可能に支持するベース部材と、(d)前記フードロック装置が車両上方側へ移動された際に前記フードロック装置の車両下方側部位に係合する係合位置と前記フードロック装置の車両下方側部位に係合しない非係合位置との間で移動可能に設けられ、前記係合位置では前記フードロック装置の車両下方側への移動を制限する第1ストッパ部材と、を備える車両用ポップアップフード装置であって、(e)前記第1ストッパ部材を前記係合位置から前記非係合位置へ移動させる操作力を前記第1ストッパ部材に伝達する移動制限解除操作部材を、含むことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用フードロック装置によれば、移動制限解除操作部材により、前記第1ストッパ部材を前記係合位置から前記非係合位置へ移動させる操作力が前記第1ストッパ部材に伝達されると、それまで前記フードロック装置の車両下方側への移動を制限していた第1ストッパ部材が前記非係合位置へ移動させられる。これにより、前記フードロック装置の車両下方側への移動が許容されるので、前記フードロック装置が前記フロントフード及び前記フードロック装置の自重により下降して、フロントフードが車両下降側へ移動してフロントフードが閉じられる。したがって、ポップアップしたフロントフードを、車室内からの操作によって元の格納位置に戻すことが可能となる。
【0010】
ここで、好適には、前記非係合位置から前記係合位置へ向かう付勢力を前記第1ストッパ部材に常時付与する付勢装置を含み、前記移動制限解除操作部材は、前記付勢装置の付勢力に抗して前記操作力を前記第1ストッパ部材に伝達する。これにより、前記第1ストッパ部材は、前記非係合位置から前記係合位置へ自動的に復帰でき、復帰操作を必要としない利点がある。
【0011】
また、好適には、前記第1ストッパ部材は、前記フードロック装置の車両下方側に配置され、前記フードロック装置が車両上方側へ移動された際に前記フードロック装置の車両下方側かつ前記フードストライカが係止されている部分に対して車幅方向一方側の部位に係合することにより前記フードロック装置の車両下方側への移動を制限するものである。これにより、前記フードロック装置が車両上方側へ移動された際に、前記第1ストッパ部材は、前記フードロック装置の車両下方側かつ前記フードストライカが係止されている部分に対して車幅方向一方側の部位に係合するので、前記フードロック装置が車両上方側へ移動した位置で保持される。
【0012】
また、好適には、前記第1ストッパ部材は、前記ベース部材に設けられた一対の案内装置によって前端部および後端部が水平方向に案内され、前記付勢装置により前記前端部方向に付勢された長手状の棒状部材を備え、前記前端部が前記フードロック装置の車両下方側部位に係合する。これにより、棒状部材はその前端部および後端部において一対の案内装置によって案内されていて、2箇所で支持された状態となっているので、仮に高速走行や悪路走行等において生じる振動や衝撃荷重が加えられても、前記フードロック装置の車両下方側への移動が安定的に制限される。
【0013】
また、好適には、前記ベース部材には、前記フードロック装置の下端部に固定された固定ピンを掛け止める係止位置と前記固定ピンを掛け止めない非係止位置とに回動可能な固定フックが、備えられ、前記固定フックは、前記移動制限解除操作部材が前記係合位置から前記非係合位置へ移動させるに同期して、前記係止位置から前記非係止位置へ回動操作される。これにより、フードロック装置が前記固定フックに当たることがなく、フロントフード及びフードロック装置の自重により容易に下降させられる。
【0014】
また、好適には、前記フードロック装置に対して車幅方向他方側に配置され、前記第1ストッパ部材に係合した前記フードロック装置が当接することで前記フードロック装置の車幅方向他方側への移動を制限する第2ストッパ部材を、さらに含む。これにより、フードロック装置が第2ストッパ部材に当接するとにより、フードロック装置の車幅方向他方側への移動が規制されるので、フードロック装置の車両下方への移動、及びフードロック装置の車幅方向他方側への傾きが抑制され、フロントフードの揺動すなわち振動が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の車両用ポップアップフード装置を模式的に示した正面図である。
【
図2】
図1に示された車両用ポップアップフード装置の正面側斜視図であり、
図1のアクチュエータが作動する前の状態を示している。
【
図3】
図2のフードロック装置の裏面側斜視図である。
【
図4】
図1に示された車両用ポップアップフード装置の正面側斜視図であり、
図1のアクチュエータが作動した後の状態を示している。
【
図5】
図4のフードロック装置の裏面側斜視図である。
【
図6】
図2-
図5に示す車両用ポップアップフード装置の構成部品を示す分解図である。
【
図7】
図2-
図5に示す車両用ポップアップフード装置の第1ストッパ部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
【実施例0017】
本発明の一実施例の車両用ポップアップフード装置10を、
図1~
図7を用いて説明する。なお、各図において、車両の上方向をz軸、車両の前後方向をxf軸およびxr、車両の左右方向(車幅方向)の左側及び右側方向をyl軸およびyr軸を用いて示している。また、以下において、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示している。
【0018】
図1に示されるように、車両用ポップアップフード装置10は、フロントフード12を閉止位置(実線で示された元の格納位置)から持ち上げ位置(一点鎖線で示されたポップアップ位置)に至るまで保持するフードロック装置14を、備えている。車両用ポップアップフード装置10は、作動することによってフロントフード12を閉止位置から持ち上げ位置に移動させるフロントフード持ち上げ装置としての左右一対のアクチュエータ16を備えている。また、
図2-
図5に示されるように、車両用ポップアップフード装置10は、フードロック装置14を支持するベース部材18と、フードロック装置14を閉止位置(
図2、
図3で示された状態)に固定する固定装置20と、アクチュエータ16の作動に連動して固定装置20によるフードロック装置14の固定を解除する固定解除装置22(
図1参照)と、を備えている。また、車両用ポップアップフード装置10は、左右一対のアクチュエータ16の作動完了後のフードロック装置14の車両下方側への移動を制限する第1ストッパ部材72を含む制限装置24と、移動制限解除操作の操作力を第1ストッパ部材72に伝達して第1ストッパ部材72によるフードロック装置14の車両下方側への移動制限を解除し、フードロック装置14の下降を許容する移動制限解除操作部材26(
図4参照)と、を備えている。以下、それらの構成について説明した後、作動を説明する。
【0019】
(フロントフード12の構成)
図1に示されるように、フロントフード12は、車両前後方向及び車幅方向に延在すると共に車両平面視で略矩形状に形成されており、このフロントフード12は、図示しないパワーユニットが収容されたパワーユニットルームを開閉可能に車両上方側から覆っている。また、フロントフード12の後端部は左右それぞれに配置された図示しない一対のフードヒンジによって回動可能に支持されている。また、フロントフード12の前端部における車幅方向の中間部には、フードストライカ28が固定されている。このフードストライカ28が車体の前端部における車幅方向の中間部に配置されたフードロック装置14に掛け止められることによって、フロントフード12が閉止位置すなわち通常の格納位置に保持されるようになっている。
【0020】
フードストライカ28は、車両側面視で車両上方側が開放された略U字状を成す丸棒状鋼材から構成るに形成されており、また、フードストライカ28の下端部は、フロントフード12が閉止された状態において車両前後方向に延びる係止部28Aとされている。
【0021】
(フードロック装置14の構成)
図2、
図3に示すように、フードロック装置14は、車両正面視において略縦長の矩形状を成している。フードロック装置14の上部の車幅方向の中央部には、フードストライカ28が係止される係止凹部30が形成されている。この係止凹部30は、車両上方側が開放されていて、車両正面視において略U字状に形成されている。
【0022】
フードロック装置14の下端部における車幅方向の中央部には、後述する固定装置20の固定フック62が係合する固定ピン32が接合されている。また、フードロック装置14には、一対のガイドピン34(
図4、
図5参照)がそれぞれ挿通される一対のガイドピン挿通孔36が形成されている。このガイドピン挿通孔36は、上下方向を長手方向とする長孔状に形成されていると共に車幅方向に間隔をあけて配置されている。そして、ガイドピン34が、ガイドピン挿通孔36及び後述するベース部材18に形成されたガイドピン挿通孔48(
図4、
図5参照)に挿通されることによって、フードロック装置14がベース部材18に上下方向に移動可能に支持されている。
【0023】
また、フードロック装置14は、フードストライカ28を係止凹部30の深さ方向の端部に保持するラッチ38を備えている。さらに、フードロック装置14には、フロントフード12に設けられたフードストライカ28の係止部28Aに係合されることによってフロントフード12が不用意に開放されることを抑制するオグジリアリレバー40がピン42まわりに回動可能に取付けられている。また、フードロック装置14は、図示しないケーブルを介して操作力が入力されることで傾動される第1レバー44を備えている。そして、第1レバー42が傾動されることで、第1レバー44とラッチ38との係合が外れて、ラッチ38によるフードストライカ28の保持が解除されるようになっている。
【0024】
また、フードロック装置14の車幅方向外側(左側)の部分には、車幅方向を厚み方向として上下方向に延在するストッパ部材係合リブ46が形成されている。このストッパ部材係合リブ46の左側の面は、後述する第1ストッパ部材72の前端が当接することによって第1ストッパ部材72の前進を規制する前進規制面46aとされている。また、ストッパ部材係合リブ46の下端は、第1ストッパ部材72に当接する車両下方側部位14aとされている。
【0025】
(ベース部材18の構成)
ベース部材18は、鋼板材にプレス加工等が施されることによって形成されている。ベース部材18は、車両前後方向を板厚方向として車幅方向に延在する矩形板状に形成されている。また、
図4、
図5に示されるように、ベース部材18には、一対のガイドピン34がそれぞれ挿通される一対のガイドピン挿通孔48が形成されている。このガイドピン挿通孔48は、フードロック装置14に形成されたガイドピン挿通孔36と同様に上下方向を長手方向とする長孔状に形成されている。
【0026】
また、ベース部材18には、図示しない固定螺子が挿通される複数の取付孔50が貫通して形成されている。それら複数の取付孔50に挿通された固定螺子が、車両の前方側の端部に設けられたラジエータサポートに形成された図示しない螺子孔に螺入されることによって、ベース部材18が、左右一対のアクチュエータ16の車幅方向の中央部に配置された状態でラジエータサポートに固定されている。
【0027】
図4、
図5に示されるように、ベース部材18には、ベース部材18に対して上昇したフードロック装置14の右側にフードロック装置14と近接して配置される第2ストッパ部材としてのベース爪52が形成されている。このベース爪52は、車両正面視で左側に向かうにつれて下方側に傾斜されている。
【0028】
(アクチュエータ16の構成)
図1に示されるように、アクチュエータ16は、フードロック装置14の車幅方向右側及び左側にそれぞれ設けられており、このアクチュエータ16は、有底円筒状に形成されたシリンダ部54と、板状に形成されたブラケット56に固定されていると共にシリンダ部54に挿入されるパイプ部58と、を備えている。
【0029】
パイプ部58には、図示しないマイクロガスジェネレータが固定されている。そして、マイクロガスジェネレータに発生したガスがシリンダ部54内に供給されることでシリンダ部54内の圧力が上昇して、シリンダ部54がパイプ部58に対して上方側へ移動するようになっている。
【0030】
アクチュエータ16のブラケット56には固定螺子60が挿通されており、この固定螺子60が図示しないラジエータサポートに形成された螺子孔に螺入されることによって、アクチュエータ16がラジエータサポートに固定されるようになっている。なお、アクチュエータ16が固定される部位は上記に限定されず、例えば、車体の他の部位に固定されていてもよい。
【0031】
また、フロントフード12が閉止位置に位置している状態では、フロントフード12とアクチュエータ16のシリンダ部54とは離間している。アクチュエータ16が作動し、シリンダ部54が上昇してシリンダ部54の上端部がフロントフード12に当接し、更にシリンダ部54が上昇すると、フロントフード12が閉止位置から持ち上げ位置(
図1の一点鎖線に示すポップアップ位置)へ移動させられる。
【0032】
(固定装置20の構成)
図4に示されるように、固定装置20は、フードロック装置14の下端部の車幅方向の中央部に固定された固定ピン32と、ベース部材18に回動可能に支持された固定フック62と、固定フック62を一方側に回動させる方向へ付勢するトーションスプリング64と、を有して構成されている。
【0033】
固定フック62は、車両前後方向に所定の厚みを有するブロック状に形成されており、この固定フック62の長手方向の中間部は、ベース部材18に支持ピン68を介して回動可能に支持されている。また、固定フック62の長手方向一方側の端部は、L字状に形成された係合部62aとされている。そして、係合部62aが固定ピン32に係合した状態(
図2に示された状態)では、フードロック装置14が閉止位置に固定されている。これに対して、固定フック62が回動されて係合部62aと固定ピン32とが係合していない状態では、フードロック装置14が車両上方側へ向けて移動することが可能となっている。なお、トーションスプリング64は、固定フック62を車両正面視で反時計回り方向に回転付勢している。また、固定フック62の長手方向他方側の端部は、後述する固定解除装置22の一部を構成する第1固定フック操作ケーブル66の一端が係止されるケーブル係止部62bとされている。
【0034】
(固定解除装置22の構成)
図1に示されるように、固定解除装置22は、第1固定フック操作ケーブル66と、アクチュエータ16の作動に連動して作動すると共に固定フック操作ケーブル86の他端が連結されたリンク機構70と、を有して構成されている。そして、アクチュエータ16の作動に伴ってリンク機構70が作動されて、第1固定フック操作ケーブル66が引かれることにより、固定フック62が固定ピン32と係合する係合位置から
図4の破線に示す非係合位置まで支持ピン66回りに回動されて、フードロック装置14のベース部材18に対する固定が解除されるようになっている。
【0035】
(制限装置24の構成)
図2、
図4に示されるように、制限装置24は、フードロック装置14が車両上方側へ移動された際にフードロック装置14の車両下方側部位に係合する係合位置とフードロック装置14の車両下方側部位に係合しない非係合位置との間で移動可能に設けられ、係合位置ではフードロック装置14の車両下方側への移動を制限する第1ストッパ部材72と、第1ストッパ部材72を係合位置へ向かって常時付勢する付勢装置としてのコイルスプリング74と、を、含む。
【0036】
第1ストッパ部材72は、
図7に示すように、長手棒状の本体部72aと、本体部72aの前端部72bおよび後端部72cをそれぞれ水平方向に案内する一対の第1案内装置76および第2案内装置78とを備え、コイルスプリング74により前端部72b側に常時付勢されている。第1ストッパ部材72は、本体部72aの前端部72bが車両の右方向へ突き出されてフードロック装置14の車両下方側部位14aに係合する。
【0037】
図2乃至
図5に示されるように、第1案内装置76は、ベース部材18に貫通して形成された水平方向に長手状の案内孔76aと、長手棒状の本体部72aの前端部72bから上方向へ突出し且つベース部材18側へ曲げられて案内孔76a内へ入れられガイドアーム部72dとから構成されている。また、第2案内装置78は、ベース部材18の左側の一部が直角に曲げ起こされ、本体部72aの後端部72cが差し通された矩形の案内孔78aが貫通して形成された案内ブラケット78bとから、構成されている。
【0038】
制限装置24の第1ストッパ部材72によってフードロック装置14の車両下方側への移動が制限された状態では、フードロック装置14が、第1ストッパ部材72の前端部72bを支点として右側に傾こうとするが、この傾きは、フードロック装置14がベース部材18に形成されたベース爪52に当接することによって制限されるようになっている。
【0039】
第1ストッパ部材72において、長手棒状の本体部72aには、その前端部72bのガイドアーム部72dが上方へ突き出す位置から下方へ向かって係止アーム部72eが突設されている。案内ブラケット78bには、アウターケーブル係止凹部78cが形成されている。
【0040】
ベース部材18には、固定フック62の回動中心を中心とする円弧状の貫通孔18aが形成されており、インナーケーブル係止部80が、固定フック62の係合部62aから貫通孔18aを通してベース部材18の裏面に突設されている。また、ベース部材18において、案内ブラケット78bの突出し方向とは反対向きに突き出すアウターケーブル係止ブラケット82が固定されている。アウターケーブル係止ブラケット82には、アウターケーブル係止凹部82aが形成されている。
【0041】
(移動制限解除操作部材26の構成)
移動制限解除操作部材26は、移動制限解除操作の操作力を第1ストッパ部材72に伝達して第1ストッパ部材72によるフードロック装置14の車両下方側への移動制限を解除する第1ストッパ部材操作ケーブル84と、移動制限解除操作の操作力を固定フック62に伝達して固定フック62による固定ピン32との干渉を回避して、フロントフード12及びフードロック装置14の自重によるフードロック装置14の下降を許容する第2固定フック操作ケーブル86とを、備えている。
【0042】
第1ストッパ部材操作ケーブル84は、案内ブラケット78bのアウターケーブル係止凹部78cに一端が係止されたアウターケーブル84aと、アウターケーブル84a内を縦通し、第1ストッパ部材72の長手棒状の本体部72aから下方へ向かって突き出す係止アーム部72eに一端が係止されたインナーケーブル84bをから構成されている。アウターケーブル84aおよびインナーケーブル84bの他端は、車室内に設けられた図示しないフロントフード閉じ操作装置にそれぞれ接続され、フロントフード閉じ操作装置から伝達される操作力によって第1ストッパ部材72がコイルスプリング74の付勢力に抗して移動させられるようになっている。
【0043】
第2固定フック操作ケーブル86は、アウターケーブル係止ブラケット82のアウターケーブル係止凹部82aに一端が係止されたアウターケーブル86aと、アウターケーブル86a内を縦通し、固定フック62のインナーケーブル係止部80に一端が係止されたインナーケーブル86bをから構成されている。アウターケーブル86aおよびインナーケーブル86bの他端は、車室内に設けられた図示しない前記フロントフード閉じ操作装置に接続され、フロントフード閉じ操作装置から伝達される操作力によって固定フック62が固定ピン32と係合する係合位置から固定ピン32と係合しない非係合位置(
図4の破線に示す位置)に位置させられる。すなわち、フードロック装置14と共に下降する固定ピン32と干渉しないように
図4、
図5の破線に示す位置へ移動させられるようになっている。
【0044】
以上のように構成された車両用ポップアップフード装置10において、固定フック62が固定ピン32から掛け外されたことによりフードロック装置14が上昇させられてフロントフード12がポプアップとされた状態へは、動物やガイドポスト等の歩行者以外の物にとの間の軽い衝突時においも作動させられることがある。この場合、フロントフードがポンプアップしたままで走行すると、視界が狭くなり、風圧によるフロントフードのばたつきも発生して、走行の安全性確保に支障が発生する。また、フロントフードを元の格納位置に戻すには、車両の室外において危険を伴う作業を強いられるという問題があった。
【0045】
このような場合には、車室内に設けられた図示しないフロントフード閉じ操作装置が操作されると、そのフロントフード閉じ操作装置から伝達される操作力によって、第1ストッパ部材72がコイルスプリング74の付勢力に抗して移動させられるとともに、固定フック62が固定ピン32の移動軌跡から外されて固定ピン32との干渉が回避される。これにより、フードロック装置14はフロントフード12及びフードロック装置14の自重により下降させられて、フロントフード12が元の閉位置へ移動させられる。
【0046】
本実施例の車両用フードロック装置10によれば、移動制限解除操作部材26により、第1ストッパ部材72をフードロック装置14に係合する係合位置からフードロック装置14に係合しない非係合位置へ移動させる操作力が第1ストッパ部材72に伝達されると、それまでフードロック装置14の車両下方側への移動を制限していた第1ストッパ部材72が前記非係合位置へ移動させられる。これにより、フードロック装置14の車両下方側への移動が許容されるので、フードロック装置14がフロントフード12及びフードロック装置14の自重により下降して、フロントフード12が車両下降側へ移動してフロントフード12が閉じられる。したがって、ポップアップしたフロントフード12を、車室内からの操作によって元の格納位置に戻すことが可能となる。
【0047】
また、本実施例の車両用フードロック装置10によれば、非係合位置から係合位置へ向かう付勢力を第1ストッパ部材72に常時付与するコイルスプリング(付勢装置)74を含み、移動制限解除操作部材26は、コイルスプリング74の付勢力に抗して前記操作力を第1ストッパ部材72に伝達する。これにより、第1ストッパ部材72は、前記非係合位置から前記係合位置へ自動的に復帰でき、復帰操作を必要としない利点がある。
【0048】
また、本実施例の車両用フードロック装置10によれば、第1ストッパ部材72は、フードロック装置14の車両下方側に配置され、フードロック装置14が車両上方側へ移動した際にフードロック装置14の車両下方側かつフードストライカ28が係止されている部分に対して車幅方向一方側の部位に係合することによりフードロック装置14の車両下方側への移動を制限するものである。これにより、フードロック装置14が車両上方側へ移動された際に、第1ストッパ部材72は、フードロック装置14の車両下方側かつフードストライカ28が係止されている部分に対して車幅方向一方側の部位に係合するので、フードロック装置14が車両上方側へ移動した位置で保持される。
【0049】
また、本実施例の車両用フードロック装置10によれば、第1ストッパ部材72は、ベース部材18に設けられた一対の第1案内装置76、第2案内装置78によって前端部および後端部が水平方向に案内され、コイルスプリング(付勢装置)74により前端部方向に付勢された長手状の棒状部材72aを備え、前端部が72bがフードロック装置14の車両下方側部位に係合する。これにより、棒状部材72aはその前端部72bおよび後端部72cにおいて一対の案内装置76、第2案内装置78によって案内されていて、2箇所で支持された状態となっているので、仮に走行等において生じる振動や衝撃荷重が加えられても、フードロック装置14の車両下方側への移動が安定的に制限される。
【0050】
また、本実施例の車両用フードロック装置10によれば、ベース部材18には、フードロック装置14の下端部に固定された固定ピン32を掛け止める係止位置と固定ピン32を掛け止めない非係止位置とに回動可能な固定フック62が、備えられ、固定フック62は、移動制限解除操作部材26が記係合位置から非係合位置へ移動させるに同期して、前記係止位置から前記非係止位置へ回動操作される。これにより、フードロック装置14が固定フック62に当たることがなく、フロントフード12及びフードロック装置14の自重により容易に下降させられる。
【0051】
また、本実施例の車両用フードロック装置10によれば、フードロック装置14に対して車幅方向他方側に配置され、第1ストッパ部材72に係合したフードロック装置14が当接することでフードロック装置14の車幅方向他方側への移動を制限するベース爪(第2ストッパ部材)52を、さらに含む。これにより、フードロック装置14がベース爪52に当接することにより、フードロック装置14の車幅方向他方側への移動が規制されるので、フードロック装置14の車両下方への移動、及びフードロック装置14の車幅方向他方側への傾きが抑制され、フロントフード12の揺動すなわち振動が抑制される。
【0052】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0053】
たとえば、前述の実施例では、移動制限解除操作部材26の操作によって、第1ストッパ部材操作ケーブル84を介して第1ストッパ部材72のフードロック装置14に対する係合が解かれ、同時に、第2固定フック操作ケーブル86を介して固定フック62が固定ピン32と干渉可能な合位置から固定ピン32と干渉非係合位置へ操作されていた。しかし、第2ストッパ部材操作ケーブル86を介して固定フック62が固定ピン32と干渉可能な合位置から固定ピン32と干渉非係合位置へ操作されなくても差し支えない。フードロック装置14の固定ピン32が固定フック62に当たる位置までフロントフード12及びフードロック装置14の自重で下降させられるだけでも、一応の効果が得られる。
【0054】
また、前述の実施例において、移動制限解除操作部材26は、第1ストッパ部材操作ケーブル84を介して操作力を第1ストッパ部材72へ伝達し、固定フック操作ケーブル86を介して操作力を固定フック62へ伝達するものであったが、ソレノイドに接続された電線を介して操作力を伝達するものであってもよい。
【0055】
以上、本発明の一実施例について説明したが、それらはあくまでの本発明の一実施例であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。