(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075442
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】味噌の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 11/50 20210101AFI20240527BHJP
【FI】
A23L11/50 105
A23L11/50 104
A23L11/50 107
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186952
(22)【出願日】2022-11-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】399074868
【氏名又は名称】成龍酒造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100223608
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 敬子
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】首藤 洋
(57)【要約】
【課題】熟成期間を短縮しても旨味を維持しつつ味噌の劣化を抑制できる味噌の製造方法を提供する。
【解決手段】大豆前処理工程と仕込み工程と熟成工程とを含む味噌の製法であって、仕込み工程で、蒸煮大豆と麹と塩と酒粕とを混合して得られる味噌種を仕込み、仕込んだ味噌種を熟成工程で熟成し、仕込み工程では、麹が大豆100質量部に対して150質量部以上230質量部以下、酒粕が大豆100質量部に対して150質量部以上230質量部以下、塩が大豆100質量部に対して、30質量部以上45質量部以下、となるように調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆前処理工程と、仕込み工程と、熟成工程と、を含む味噌の製法であって、
前記大豆前処理工程は、大豆を水に浸漬して吸水させる浸漬工程と、該浸漬工程後の吸水大豆を蒸煮する蒸煮工程と、を含み、
前記仕込み工程では、前記蒸煮大豆と麹と塩と酒粕とを混合して得られる味噌種を仕込み、
前記仕込み工程で仕込んだ味噌種を前記熟成工程で熟成し、
前記仕込み工程において、
前記麹が、前記水に浸漬する前の大豆100質量部に対して、150質量部以上230質量部以下、
前記酒粕が、前記水に浸漬する前の大豆100質量部に対して、150質量部以上230質量部以下、
前記塩が、前記水に浸漬する前の大豆100質量部に対して、30質量部以上45質量部以下、となるように調整する
ことを特徴とする味噌の製造方法。
【請求項2】
前記熟成工程において、熟成温度が25℃~35℃である
ことを特徴とする請求項1記載の味噌の製造方法。
【請求項3】
前記熟成工程において、熟成期間が4ヶ月以上12ヶ月以下である
ことを特徴とする請求項1または2記載の味噌の製造方法。
【請求項4】
製造される味噌の塩分濃度が、10質量%以下である
ことを特徴とする請求項1または2記載の味噌の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味噌の製造方法に関する。さらに詳しくは酒粕を使用した味噌の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
味噌の一般的な製造方法は、蒸煮して得られる蒸煮大豆と米や麦などの穀類を蒸して得られる蒸煮穀類に麹菌を含む種麹を接種し製麹して得られる米麹と食塩水との混合物を1年程度熟成することにより製造される。仕込み初期には塩辛く感じられるが、熟成により豆タンパク質の分解により生成する酸味成分や旨味成分が上昇に伴い舌に感じる塩辛味が減少する塩なれという現象が生じて風味のある味噌が得られる。
【0003】
味噌の熟成には、塩なれに1年程度を要することから、塩なれ期間を短縮させるための味噌の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
特許文献1、2には、味噌種を作製する際に酒粕を混合し、添加食塩量を少なくすることにより発酵の促進と塩なれ期間を短した味噌の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭51-54994号公報
【特許文献2】特開昭60-34150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の技術では、熟成期間が短いので一般的な熟成期間を設けた味噌と比べて旨味が十分でない。また、添加食塩量が少ないので一般的な熟成期間を設けた味噌と比べて保存性に劣るという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、熟成期間を短縮しても旨味を維持しつつ味噌の劣化を抑制できる味噌の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべき鋭意検討を重ねた結果、蒸煮大豆、酒粕、塩の混合割合を調整することにより、本発明の完成に至った。
【0008】
第1発明の味噌の製造方法は、大豆前処理工程と、仕込み工程と、熟成工程と、を含む味噌の製法であって、前記大豆前処理工程は、大豆を水に浸漬して吸水させる浸漬工程と、該浸漬工程後の吸水大豆を蒸煮する蒸煮工程と、を含み、前記仕込み工程では、前記蒸煮大豆と麹と塩と酒粕とを混合して得られる味噌種を仕込み、前記仕込み工程で仕込んだ味噌種を前記熟成工程で熟成し、前記仕込み工程において、前記麹が、前記水に浸漬する前の大豆100質量部に対して、150質量部以上230質量部以下、前記酒粕が、前記水に浸漬する前の大豆100質量部に対して、150質量部以上230質量部以下、前記塩が、前記水に浸漬する前の大豆100質量部に対して、30質量部以上45質量部以下、となるように調整することを特徴とする。
第2発明の味噌の製造方法は、第1発明において、前記熟成工程において、熟成温度が25℃~35℃であることを特徴とする。
第3発明の味噌の製造方法は、第1発明または第2発明において、前記熟成工程において、熟成期間が4ヶ月以上12ヶ月以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の味噌の製造方法によれば、蒸煮大豆、酒粕、塩の混合割合を調整することにより、旨味が増加する味噌を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の味噌の製造方法の概略フロー図ある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の味噌の製造方法は、蒸煮大豆、酒粕、塩の混合割合を所定の範囲内となるように調整することにより、旨味が増加する味噌を製造できるようにしたことに特徴を有している。
【0012】
以下、本実施形態の味噌の製造方法を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の味噌の製造方法(以下、本製法という)は、大豆を前処理する大豆前処理工程と、仕込み工程と、熟成工程と、を含んでいる。
【0013】
本製法の大豆前処理工程は、原料の大豆を味噌種に用いるのに使用できるように前処理する工程である。この大豆前処理工程は、原料となる大豆に水を吸水させた吸水大豆を得る浸漬工程と、浸漬工程後の吸水大豆を蒸煮して蒸煮大豆を得る蒸煮工程と、を含む。
【0014】
浸漬工程は、乾燥状態の大豆に水を吸水させた吸水大豆を得る工程であり、吸水大豆を得ることができればとくに限定されない。例えば、乾燥状態の大豆を水に一昼夜程度浸漬させれば吸水大豆を得ることができる。
蒸煮工程は、吸水大豆を蒸煮して蒸煮大豆を得る工程であり、蒸煮大豆を得ることができれば、とくに限定されない。
なお、本明細書において、蒸煮とは、吸水大豆を加熱して蒸煮大豆を得ることができる方法を意味しており、例えば、蒸煮大豆を得る方法としては、蒸気で蒸す方法や、湯で煮る方法などを挙げることができる。また、吸水大豆から蒸煮大豆を得るための蒸煮時間もとくに限定されず、大豆の大きさや種類等によって適宜調整することができる。例えば、湯で煮る場合には、1時間~5時間とすることができるが、圧力釜などを用いればかかる時間を短縮することができる。
【0015】
蒸煮工程により得られた蒸煮大豆は、大豆の形状を維持した状態のまま次工程の仕込み工程に供給してもよいし、仕込み工程に供給する前に摩砕機や臼と杵などで細かいミンチ状にしたものを供給してもよい。
【0016】
本製法の仕込み工程は、蒸煮工程で得られた蒸煮大豆と、麹と、酒粕と、塩とを混合して味噌種を作成し、この味噌種を桶等に仕込む工程である。なお、蒸煮大豆は、人が手で触れる温度まで放熱した状態のものを使用するのが望ましい。
仕込み工程では、まず、蒸煮大豆と麹と酒粕と塩を撹拌しながら混合することにより味噌種を作る。このとき水分が少ない場合には、水や蒸煮大豆を作る際に生じる煮汁を適宜添加して、味噌種を成形し易い固さになるように調整する。ついで、作成した味噌種を桶等に空気ができ得る限りに入らないように詰める。なお、桶等に味噌種を詰めた状態のものを以下、仕込み味噌という。
【0017】
以下、仕込み工程における味噌種の作成方法について具体的に説明する。
【0018】
仕込み工程で使用される麹は、一般的な味噌の製造において使用される麹(例えば、米麹、麦麹、豆麹)であれば、とくに限定されない。
例えば、精米された米(例えば精米歩合50%~80%)を洗浄した後、水に浸漬させる。そして、浸漬後の米を蒸した後、32~35℃程度まで冷まし、麹菌(例えば、ニホンコウジカビ)を接種し、麹菌の育ち易い温度や湿度に保たれた製麹室で所定時間培養することにより米を原料とする米麹が得られる。なお、米の代わりに麦を使用する場合は、上記の米を麦に変更すれば同様に麦を原料とする麦麹が得られる。
【0019】
仕込み工程で使用される塩は、一般的な味噌の製造において使用される塩であれば、とくに限定されない。
【0020】
仕込み工程で使用される酒粕は、日本酒を製造する際に得られる酒粕であれば、とくに限定されない。
酒粕には、酒造に必要な酵母等が含まれており、本製法ではかかる微生物の働きを利用する。このため、使用する酒粕は、含まれている微生物の活性が高い状態のものが好ましく、例えば、圧搾してからあまり期間がたっていない酒粕が好ましい。言い換えれば、仕込み工程は、新鮮な酒粕が得られる冬場に行うのが好ましい。つまり、寒仕込みが好ましい。また、酒粕は、圧搾した後の脱水状態のものや、ペースト状のもの、乾燥した状態のものであってもよい。ただし、乾燥状態の酒粕は、酒粕中の微生物が失活しない程度の温度で乾燥されたものを使用するのが望ましい。
【0021】
仕込み工程における各材料の混合割合は、以下の範囲内になるように調整する。
なお、基準は、水に浸漬させる前の乾燥した状態の大豆を100質量部とする。
【0022】
麹は、上記大豆100質量部に対して、150質量部以上230質量部以下となるように調整する。この値は、好ましくは170質量部以上220質量部以下であり、より好ましくは180質量部以上200質量部以下である。
酒粕は、上記大豆100質量部に対して、150質量部以上230質量部以下となるように調整する。この値は、好ましくは170質量部以上220質量部以下であり、より好ましくは180質量部以上200質量部以下である。
塩は、上記大豆100質量部に対して、30質量部以上45質量部以下となるように調整する。この値は、好ましくは35質量部以上45質量部以下であり、より好ましくは35質量部以上40質量部以下である。
【0023】
なお、本製法では、得られる味噌の塩分濃度(質量%)が10質量%以下となるように調整する。この値は、好ましくは9質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下であり、さらにより好ましくは6質量%以下である。
【0024】
本製法の熟成工程は、仕込み工程で仕込んだ仕込み味噌を所定期間、微生物を利用して仕込み味噌を発酵させる工程である。
この熟成工程における熟成期間は、3ヶ月よりも長くなるように調整する。この熟成期間は、好ましくは4ヶ月以上であり、より好ましくは6ヶ月以上であり、さらに好ましくは8ヶ月以上である。一方、熟成期間が1年よりも長すぎると、味噌の品質に影響を及ぼす可能性がある。
したがって、熟成工程における熟成期間は、例えば、3ヶ月よりも長く12ヶ月以下が好ましく、より好ましくは4ヶ月以上12ヶ月以下であり、さらに好ましくは6ヶ月以上12ヶ月以下であり、さらにより好ましくは8ヶ月以上12ヶ月以下である。なお、熟成期間の上限としては12ヶ月以下であればとくに限定されないが、12ヶ月近くになると風味等が低下する傾向にある。このため、風味等の観点においては、熟成期間の上限は11ヶ月程度が好ましく、より好ましくは10ヶ月以下である。
【0025】
なお、熟成工程では、仕込み味噌の温度を調整してもよい。温度調整をすることにより、仕込み味噌中の微生物の活性をコントロールすることにより味噌の旨味成分や風味を調整することが可能となる。例えば、仕込み味噌の温度を25℃~35℃にすることにより微生物の活性を向上させたり、20℃以下にして微生物の活性を低下させたりすることができる。
【0026】
以上のごとく、本製法を用いれば、一般的な味噌よりも旨味成分を格段に向上させた味噌を製造することができる。しかも、熟成期間を一般的な味噌よりも短く(例えば、3~4ヶ月程度)しても十分な旨味を発揮する味噌が得られる。
【0027】
また、本製法で得られる味噌は、一般的な味噌よりも塩分濃度(例えば、塩を上記大豆100質量部に対して50質量%~60質量%混合する場合の塩分濃度は10質量%~15質量%程度になる)よりも低くすることができる。例えば、本製法で得られる味噌の食塩濃度は、10質量%以下となるように調整されている。このため、減塩味噌としても用いることができる。しかも、本製法では、得られる味噌の塩分濃度が一般的な味噌よりも低くしているにもかかわらず、一般的な味噌と同程度の熟成期間(例えば、10ヶ月~12ヶ月)を経ても品質の劣化が生じない味噌を製造することができる。つまり、本製法を用いれば、保存性や取扱性に優れた減塩味噌を製造することができる。
【0028】
とくに、仕込み工程を上述した寒仕込みに行えば、新鮮な酒粕を使用することができるので、味噌に対して酒粕の旨味成分を付与することができる。しかも、新鮮な酒粕にはアルコール成分が残存するので、味噌の保存性を向上させることができるという利点も得られる。
【0029】
ここで、一般的な減塩味噌の製造方法では、塩分濃度を低くしているので、長期間の熟成を行えば品質が劣化してしまう。しかも得られる味噌の保存期間も一般的な味噌と比べて短いことが知られている。
しかしながら、本製法を用いれば、長期間の熟成及び保存性を有する減塩の味噌を製造することができる。しかも本製法で得られる味噌は、短期熟成においても優れた旨味を発揮させることができる。
つまり、従来の製法で塩なれが短期熟成で生じる製法では長期熟成や保存性が低下するのが通説であるのに対して、本製法では、味噌種を作成する際の材料の混合割合を上記のごとく従来製法では行われていない特殊な混合割合にすることにより、短期熟成で塩なれを適切に発現させ、かつ長期熟成及び保存性に優れた味噌を製造することができるようになる。
言い換えれば、従来の製法ではトレードオフの関係にある味噌を、本製法を用いれば製造することができる。具体的には、従来の短期熟成で塩なれを発現させる製法では、熟成を短期間で行うことができる一方、得られる味噌の保存性が低下する。その逆に長期熟成で塩なれを発現させる製法では、保存性に優れた味噌がえら得る一方、短期熟成では所望の味噌を得ることができないとされている。しかしながら、上述したように本製法を用いれば、従来トレードオフの関係にある味噌を適切に製造することができる。しかも優れた旨味を有する味噌を製造することができるようになる。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例を示してより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
【0031】
実験では、乾燥状態の大豆(1.3kg)、米麹(2.5kg、大豆100質量部に対して192質量部)、酒粕(2.5kg、大豆100質量部に対して192質量部)、塩(0.5kg、大豆100質量部に対して38質量部)を使用した。また、実験を行った季節は、微生物の活性が強い新粕が入手できる冬場に行った(寒仕込み)。
なお、米麹には、愛媛県産の松山三井を60%精米したものを用いた。
【0032】
乾燥状態の大豆は、一昼夜水に浸漬して吸水大豆を得た。この吸水大豆を取り出し水切りをした後、柔らかくなるまで煮て蒸煮大豆を得た。煮終わった大豆を取り出してミンサーを用いてすりつぶしてミンチ状にした。
ミンチ状にした大豆と、酒粕(新粕)、米麹(ニホンコウジカビ(アスペルギルス オリゼー))、塩を撹拌しながら混合して味噌種を作成した。なお、味噌種を作成する際に固いと感じた場合には大豆を煮た際に生じる煮汁を適宜添加して固さを調整した。
ついで、桶(約30L容量のプラスチック製の樽)に味噌種を詰める。このとき空気を抜くように叩きつけながら仕込んだ。仕込み終わった桶の表面をビニールシートで覆い、室温25℃~35℃の熟成室に静置して熟成させた。3~4ヶ月毎に味噌の味を確認した。
【0033】
熟成中の味噌を仕込みが終わった日から定期的(3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月)にサンプリングして3名のパネルにより官能評価を行った。結果を表1に示す。
3ヶ月のサンプリングの際に測定した塩分濃度は、約5質量%であった。
【0034】
比較例として、以下の配合の味噌を作成した。
乾燥した大豆(1kg)、米麹(2kg、大豆100質量部に対して200質量部)、塩(0.3kg、大豆100質量部に対して30質量部)を使用した。酒粕を混合する以外は実験と同様に味噌種を作り仕込んだ。
3ヶ月のサンプリングの際に測定した塩分濃度は、約7質量%であった。
【0035】
【表1】
旨味が特に良い場合を◎、良い場合を○、普通の場合を△、劣る場合を×とした。
【0036】
表1の官能評価試験の結果ら明らかなように、本製法の味噌は、熟成開始から3ヶ月を過ぎたころから比較例の味噌と比べて旨味がでてくることが確認できた。つまり、早期に塩なれが起きていることが確認できた。その後、熟成期間が長くなるにつれて旨味が向上し、6ヶ月と9ヶ月の熟成期間において優れた旨味を発揮することが確認できた。
【0037】
しかも、本製法の味噌は、12ヶ月の熟成期間を経ても旨味が大きく低下しないことがないことが確認できた。一方、比較例の味噌は、熟成期間を12ヶ月にすると旨味が急激に低下していた。これは、比較例の製法の味噌は、塩分濃度が一般的な味噌の塩分濃度(例えば、約15質量%)と比べて低いため保存性が低下したものと推測された。これに対して、本製法の味噌は、塩分濃度が一般的な味噌と比べて低く、しかも比較例よりもさらに低い値であったにもかかわらず、優れた保存性を発揮させることができた。この結果から、本製法を用いれば、味噌の塩分濃度を低くしているにもかかわらず、保存性が向上することができることが確認できた。つまり、本製法を用いれば、保存性に優れた減塩味噌を製造することができた。
【0038】
以上の実験結果から、本製法を用いれば、短期熟成を行っても優れた旨味を発揮する味噌を製造することができる。しかも、本製法を用いれば、塩分濃度が低い減塩味噌であるにもかかわらず保存性が極めて高い味噌を製造できる。