(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075451
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ポリウレタン系樹脂
(51)【国際特許分類】
C08G 18/40 20060101AFI20240527BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240527BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240527BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240527BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20240527BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240527BHJP
B60C 7/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C08G18/40 018
C08G18/42 069
C08G18/48 054
C08G18/76 057
C08G18/66 007
C08G18/10
B60C7/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202620
(22)【出願日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2022186853
(32)【優先日】2022-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 武
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 慎之介
【テーマコード(参考)】
3D131
4J034
【Fターム(参考)】
3D131AA30
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4J034QB03
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4J034QD03
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】柔軟性および耐疲労性に優れ、低温領域で硬くなりにくい樹脂を提供する。
【解決手段】本開示のポリウレタン系樹脂は、芳香族ジイソシアネートおよびジオール化合物を構成単位とするウレタンプレポリマーに由来する構成単位、および、硬化剤に由来する構造部を含み、前記ウレタンプレポリマーのk値は5.00未満であり、前記ジオール化合物は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリカプロラクトンジオールを含むか、および/または、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびカプロラクトンジオールの共重合体を含み、前記ウレタンプレポリマー中のポリカプロラクトン単位に対するポリテトラメチレンエーテルグリコール単位のモル比[ポリテトラメチレンエーテルグリコール/ポリカプロラクトン]は3/7以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジイソシアネートおよびジオール化合物を構成単位とするウレタンプレポリマーに由来する構成単位、および、硬化剤に由来する構造部を含み、
前記ウレタンプレポリマーのk値は5.00未満であり、
前記ジオール化合物は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリカプロラクトンジオールを含むか、および/または、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびカプロラクトンジオールの共重合体を含み、
前記ウレタンプレポリマー中のポリカプロラクトン単位に対するポリテトラメチレンエーテルグリコール単位のモル比[ポリテトラメチレンエーテルグリコール/ポリカプロラクトン]は3/7以上である、ポリウレタン系樹脂。
【請求項2】
前記芳香族ジイソシアネートはジフェニルメタンジイソシアネートを含む請求項1に記載のポリウレタン系樹脂。
【請求項3】
前記ジオール化合物の数平均分子量は4000以下である請求項1または2に記載のポリウレタン系樹脂。
【請求項4】
前記ポリカプロラクトンジオールはジエチレングリコールを開始剤とするポリカプロラクトンジオールを含む請求項1または2に記載のポリウレタン系樹脂。
【請求項5】
前記硬化剤は1,4-ブタンジオールを含む請求項1または2に記載のポリウレタン系樹脂。
【請求項6】
ヒドロキシ基に対するイソシアネート基のモル比[NCO/OH]は0.90~1.10である請求項1または2に記載のポリウレタン系樹脂。
【請求項7】
非空気式タイヤのスポーク用に用いられる請求項1または2に記載のポリウレタン系樹脂。
【請求項8】
請求項1または2に記載のポリウレタン系樹脂を含む、非空気式タイヤのスポーク。
【請求項9】
外側の強化された環状バンドと、ハブと、前記環状バンドの半径方向内側および前記ハブの間に延びる請求項8に記載のスポークとを備える、非空気式タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はポリウレタン系樹脂に関する。より詳細には、本開示は、非空気式タイヤのスポークに好ましく使用されるポリウレタン系樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
空気タイヤは荷重を支持する能力、地面との衝撃を吸収する能力、そして力(加速、停止、方向転換)を伝達する能力を有し、それによって多くの車両、特に自転車、オートバイ、自動車、トラックで好んで採用されている。
【0003】
近年、空気タイヤの代替物として非空気式タイヤが用いられる場合がある。非空気式タイヤは、従来の空気圧によって支えられているのではなく、構造によって支えられている。
【0004】
非空気式タイヤに用いられるスポークとしては、例えば、特許文献1~3に開示のものが知られており、エーテル系のポリウレタン材料が主に使用されている。特許文献1のスポークは、特定の構造を有することにより、スポークの歪みが低下しやすく疲労しにくく、亀裂の発生と伝播を低減させることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-260514号公報
【特許文献2】特表2015-518448号公報
【特許文献3】特表2017-501922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、非空気式タイヤの軽量化を目的として、スポークの薄肉化が求められる場合がある。しかしながら、従来のスポークを薄肉化すると、屈曲しやすくなる。このため、より柔軟な樹脂が求められている。
【0007】
また、非空気式タイヤを備える車両で長距離を移動したり、高速運転を行ったりする場合、タイヤの回転数が増加するため、非空気式タイヤおよびそれを構成する部材を構成する樹脂には、より耐疲労性の高いことが求められる。
【0008】
柔軟性および耐疲労性を高くする方法としては、ソフトセグメントが長いエーテル系のポリウレタン系樹脂を用いることが考えられる。しかしながら、ソフトセグメントを長くすると、低温領域において樹脂の結晶化が起こり樹脂が硬くなり、また耐疲労性も低下するという問題がある。
【0009】
従って、本開示の目的は、柔軟性および耐疲労性に優れ、低温領域で硬くなりにくい樹脂を提供することにある。また、本開示の目的は、耐屈曲性および耐疲労性に優れるスポーク、および、当該スポークを備える非空気式タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のポリウレタン系樹脂によれば、柔軟性および耐疲労性に優れ、低温領域で硬くなりにくい樹脂が得られることを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものに関する。
【0011】
すなわち、本開示は、芳香族ジイソシアネートおよびジオール化合物を構成単位とするウレタンプレポリマーに由来する構成単位、および、硬化剤に由来する構造部を含み、
上記ウレタンプレポリマーのk値は5.00未満であり、
上記ジオール化合物は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリカプロラクトンジオールを含むか、および/または、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびカプロラクトンジオールの共重合体を含み、
上記ウレタンプレポリマー中のポリカプロラクトン単位に対するポリテトラメチレンエーテルグリコール単位のモル比[ポリテトラメチレンエーテルグリコール/ポリカプロラクトン]は3/7以上である、ポリウレタン系樹脂を提供する。
【0012】
上記芳香族ジイソシアネートはジフェニルメタンジイソシアネートを含むことが好ましい。
【0013】
上記ジオール化合物の数平均分子量は4000以下であることが好ましい。
【0014】
上記ポリカプロラクトンジオールはジエチレングリコールを開始剤とするポリカプロラクトンジオールを含むことが好ましい。
【0015】
上記硬化剤は1,4-ブタンジオールを含むことが好ましい。
【0016】
ヒドロキシ基に対するイソシアネート基のモル比[NCO/OH]は0.90~1.10であることが好ましい。
【0017】
上記ポリウレタン系樹脂は非空気式タイヤのスポーク用に用いられることが好ましい
【0018】
また、本開示は、上記ポリウレタン系樹脂を含む、非空気式タイヤのスポークを提供する。
【0019】
また、本開示は、外側の強化された環状バンドと、ハブと、上記環状バンドの半径方向内側および上記ハブの間に延びる上記スポークとを備える、非空気式タイヤを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本開示のポリウレタン系樹脂は、柔軟性および耐疲労性に優れ、低温領域で硬くなりにくい。このため、上記ポリウレタン系樹脂を用いて、耐屈曲性および耐疲労性に優れるスポークを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示のポリウレタン系樹脂を用いたスポークを備える非空気式タイヤの一実施形態を示す概略図である。
【
図2】実施例3および比較例4のDMAチャートを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[ポリウレタン系樹脂]
本開示のポリウレタン系樹脂は、芳香族ジイソシアネートおよびジオール化合物を構成単位とするウレタンプレポリマーに由来する構成単位、および、硬化剤に由来する構造部を少なくとも含む。すなわち、上記ポリウレタン系樹脂は、芳香族ジイソシアネートおよびジオール化合物を構成単位とするウレタンプレポリマーと硬化剤と、必要に応じてその他の成分とを反応させて得られる樹脂である。
【0023】
(ウレタンプレポリマー)
上記ウレタンプレポリマーは、芳香族ジイソシアネートを含むイソシアネートと、ジオール化合物を含むポリオールと、必要に応じてその他の成分とを反応させて得られるプレポリマーである。
【0024】
上記ウレタンプレポリマーのk値(すなわち、ウレタンプレポリマーを構成するポリオールに対するポリイソシアネートのモル比[ポリイソシアネート/ポリオール])は、5.00未満であり、好ましくは4.80以下、より好ましくは4.50以下、さらに好ましくは4.30以下である。k値が5.00未満であることにより、高い柔軟性および耐疲労性を有するポリウレタン系樹脂が得られる。永久歪みが小さく、樹脂の温度安定性に優れる。上記k値は、本発明の硬化を損なわない範囲内であれば良く、例えば3.50以上であり、4.00以上であってもよい。
【0025】
上記芳香族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4'-ジイソシアナト-3,3'-ジメチルビフェニル(トリジンジイソシアネート(TODI))、4,4'-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート(PPDI)などが挙げられる。中でも、TDI、MDI、TODI、NDI、PPDIが好ましく、より好ましくはMDIである。MDIとしては、2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。上記芳香族ジイソシアネートは、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0026】
上記ウレタンプレポリマーは、ジイソシアネート構成単位として、上記芳香族ジイソシアネート以外のその他のジイソシアネートを含んでいてもよい。上記その他のジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。上記その他のジイソシアネートは、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0027】
上記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート、1,8-オクタメチレンジイソシアネート、1,9-ノナメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0028】
上記脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0029】
上記ウレタンプレポリマーを構成するイソシアネート中の芳香族ジイソシアネート(特にMDI)の割合は、上記イソシアネートの総量100モル%に対して、60モル%以上が好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。
【0030】
上記ジオール化合物は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリカプロラクトンジオールを含むか、および/または、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびカプロラクトンジオールの共重合体を含む。すなわち、上記ジオール化合物は、一実施形態において、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリカプロラクトンジオールを含む。また、上記ジオール化合物は、他の実施形態において、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびカプロラクトンジオールの共重合体を含む。上記ジオール化合物は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンジオール、並びに、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびカプロラクトンジオールの共重合体の全てを含んでいてもよい。上記ジオール化合物は、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0031】
上記ジオール化合物として上記共重合体を用いた場合、上記ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリカプロラクトンジオールを混合した場合に比べて、上記ウレタンプレポリマーおよび後述の硬化剤を含む組成物において低粘度であり作業性に優れ、また継時での増粘が抑制され保存安定性に優れる。また、上記ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリカプロラクトンジオールは非相溶である場合があり、この場合プレポリマーにおいてブロック配列がロットごとに異なり、ポリウレタン系樹脂の物性がばらつき、安定した製造が困難となる。これに対し、上記共重合体を用いた場合は相溶性を考慮する必要はなく、ウレタンプレポリマーの透明性に優れ、ジオール化合物のロット間バラツキが起こりにくいため、製造安定性に優れる。
【0032】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールの数平均分子量は、4000以下が好ましく、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2500以下である。上記数平均分子量が4000以下であると、ポリウレタン系樹脂は低温領域でより硬くなりにくい。上記数平均分子量は、500以上が好ましく、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは1500以上である。上記数平均分子量が500以上であると、ポリウレタン系樹脂の柔軟性がより向上する。
【0033】
上記ポリカプロラクトンジオールは、2以上のヒドロキシ基を有する化合物を開始剤として、ε-カプロラクトンを開環重合することにより得られる。すなわち、上記ポリカプロラクトンジオールは、開始剤と、当該開始剤の2以上のヒドロキシ基に(ポリ)カプロラクトンが結合した構造を有する。
【0034】
上記開始剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の繰り返し単位が4以下のジオールが好ましく、より好ましくはジエチレングリコールである。
【0035】
上記ポリカプロラクトンジオールの数平均分子量は、4000以下が好ましく、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2500以下である。上記数平均分子量が4000以下であると、ポリウレタン系樹脂は低温領域でより硬くなりにくい。上記数平均分子量は、500以上が好ましく、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは1500以上である。上記数平均分子量が500以上であると、ポリウレタン系樹脂の柔軟性がより向上する。
【0036】
上記ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびカプロラクトンジオールの共重合体としては、公知乃至慣用のものが用いられ、中でも、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを開始剤とするポリカプロラクトンジオールが好ましい。当該ポリカプロラクトンジオールは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを開始剤として、ε-カプロラクトンを開環重合することにより得られる。
【0037】
上記共重合体の数平均分子量は、4000以下が好ましく、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2500以下である。上記数平均分子量が4000以下であると、ポリウレタン系樹脂は低温領域でより硬くなりにくい。上記数平均分子量は、500以上が好ましく、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは1500以上である。上記数平均分子量が500以上であると、ポリウレタン系樹脂の柔軟性がより向上する。
【0038】
上記ジオール化合物の数平均分子量は、4000以下が好ましく、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2500以下である。上記数平均分子量が4000以下であると、ポリウレタン系樹脂は低温領域でより硬くなりにくい。上記数平均分子量は、500以上が好ましく、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは1500以上である。上記数平均分子量が500以上であると、ポリウレタン系樹脂の柔軟性がより向上する。なお、上記ジオール化合物の数平均分子量は、上記プレポリマーを構成する複数のジオール化合物の加重平均として算出される値である。
【0039】
上記ウレタンプレポリマーは、ジオール構成単位として、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンジオール、および上記共重合体以外のその他のジオール化合物を含んでいてもよい。上記その他のジオール化合物は、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0040】
上記ウレタンプレポリマーを構成するポリオール中のジオール化合物(特にポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンジオール、および上記共重合体からなる群より選択される一種以上)の割合は、上記ポリオールの総量100モル%に対して、60モル%以上が好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。
【0041】
上記ウレタンプレポリマー中のポリカプロラクトン単位に対するポリテトラメチレンエーテルグリコール単位のモル比[ポリテトラメチレンエーテルグリコール/ポリカプロラクトン]は3/7以上であり、好ましくは5/5以上、より好ましくは6/4以上である。上記モル比が3/7以上であることにより、ポリウレタン系樹脂の柔軟性および耐疲労性が共に優れる。上記モル比は、9/1以下が好ましい。
【0042】
上記ウレタンプレポリマーの残存イソシアネート基の割合(残NCO)は、上記ウレタンプレポリマーを形成するための全イソシアネートにおけるイソシアネート基の総量(100モル%)に対して、5.0~13.0モル%が好ましく、より好ましくは7.0~11.0モル%である。上記残NCOが上記範囲内であると、硬化剤による硬化反応が適度に進行する。
【0043】
上記ウレタンプレポリマーは、上記芳香族ジイソシアネートを含むイソシアネートと、上記ジオール化合物を含むポリオールと、必要に応じてその他の成分とを反応させて得られる。上記反応は、公知乃至慣用の方法により行うことができる。
【0044】
(硬化剤)
上記硬化剤としては、ポリウレタン系樹脂の鎖延長剤として用いられる公知乃至慣用の鎖延長剤を使用することができる。上記硬化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0045】
上記硬化剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のジオール;ヘキサメチレンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-メチレンビス-2-クロロアニリン等のジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、ジオールが好ましく、より好ましくはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールであり、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。
【0046】
上記硬化剤中の1,4-ブタンジオールの割合は、上記硬化剤の総量100モル%に対して、60モル%以上が好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。
【0047】
上記硬化剤(特に、1,4-ブタンジオール)の含有量は、上記ウレタンプレポリマーの総量100質量部に対して、6~10質量部が好ましく、より好ましくは8~9質量部である。上記含有量が上記範囲内であると、ポリウレタン系樹脂の柔軟性がより優れる。
【0048】
(ポリウレタン系樹脂)
上記ポリウレタン系樹脂中の、ヒドロキシ基に対するイソシアネート基のモル比[NCO/OH]は、0.90~1.10であることが好ましく、より好ましくは0.95~1.05である。上記モル比が上記範囲内であると、柔軟かつ高耐疲労性のポリウレタン系樹脂が得られやすい。なお、上記ヒドロキシ基には、上記ジオール化合物が有するヒドロキシ基および上記硬化剤が有し得るヒドロキシ基が含まれる。
【0049】
上記ポリウレタン系樹脂は、JIS K7161に準拠した、温度23℃、10%伸長状態で測定される引張弾性率が、45%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下である。上記引張弾性率が45%以下であると、ポリウレタン系樹脂の柔軟性がより優れる。上記引張弾性率は、適度な強度を有する観点から、20%以上が好ましく、より好ましくは25%以上である。
【0050】
上記ポリウレタン系樹脂は、温度23℃における貯蔵弾性率(「E’(23℃)」と称する場合がある)が、70~130MPaであることが好ましく、より好ましくは80~120MPa、さらに好ましくは90~110MPaである。上記E’(23℃)が70MPa以上であると、硬度が高くなりやすく、車体を支持する機能がより充分となる。上記E’(23℃)が130MPa以下であると、柔軟性がより高くなり、より変形しにくい。
【0051】
上記ポリウレタン系樹脂は、温度100℃における貯蔵弾性率(「E’(100℃)」と称する場合がある)が、40~90MPaであることが好ましく、より好ましくは50~80MPaである。タイヤが蓄熱した際にかかる最大温度が100℃付近となる。上記E’(100℃)が上記範囲内であると、室温における貯蔵弾性率との変化率が低く、熱安定性に優れる。
【0052】
上記E’(23℃)に対する上記E’(100℃)の低下率(「E’低下率」と称する場合がある)は、45%未満であることが好ましく、より好ましくは43%以下、さらに好ましくは40%以下である。上記E’低下率が45%未満であると、弾性変化の温度安定性がより優れ、上記ポリウレタン系樹脂を非空気式タイヤの構成材料として使用した場合、車両の乗り心地が良くなる。上記E’低下率は、下記式により算出される値である。
E’低下率={E’(23℃)-E’(100℃)}/E’(23℃)×100
【0053】
上記ポリウレタン系樹脂の23℃におけるtanδは、0.080以下が好ましく、より好ましくは0.070以下、さらに好ましくは0.064以下である。上記tanδが低いと、外部からエネルギーを受けた際の発熱が少ないため、耐疲労性に優れる傾向がある。また、上記tanδは、例えば0.040以上である。上記tanδは、公知乃至慣用の粘弾性測定装置を用いて測定することができる。
【0054】
上記ポリウレタン系樹脂は、粘弾性測定により得られるDMAチャートにおいて、-40℃~40℃(好ましくは-60℃~40℃)の間にショルダーピークが確認されないことが好ましい。この場合、上記ポリウレタン系樹脂は低温領域で硬くなりにくい。
【0055】
上記ポリウレタン系樹脂は、JIS K7312に準拠した、温度23℃、10%伸長状態で測定される引張永久歪は、15%以下が好ましく、より好ましくは14%以下、さらに好ましくは12%以下である。上記引張永久歪が低いほど停車時の車体荷重による耐久性や、走行時の屈曲による耐疲労性に優れる傾向がある。
【0056】
上記ポリウレタン系樹脂は、JIS K7312に準拠した、デマチャ屈曲疲労試験を用いて、き裂成長試験の方法であらかじめき裂を試験片に入れ、き裂が成長し破断するまでの屈曲回数が、12万回以上であることが好ましく、より好ましくは15万回以上、さらに好ましくは18万回以上、特に好ましくは20万回以上である。上記屈曲回数が高いほど耐疲労性に優れる。
【0057】
上記ポリウレタン系樹脂は、上述の各成分以外の成分(ポリイソシアネート、ポリオール、および硬化剤以外の成分)に由来する構成単位を実質的に含まないことが好ましい。なお、本明細書において、実質的に含まないとは、原料に含まれる不純物を除き積極的に添加しないことを意味し、例えば1質量%以下であってもよい。
【0058】
上記ポリウレタン系樹脂は、上記ウレタンプレポリマーおよび上記硬化剤を含む組成物を用い、公知乃至慣用の成形方法により製造することができる。例えば、押出成形、射出成形、熱プレス成形等の一般的な熱可塑性樹脂用成形機にて成形加工できる。
【0059】
上記組成物の60℃における粘度は、4000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは3000mPa・s以下、さらに好ましくは2000mPa・s以下である。上記粘度が低いと、組成物の取り扱い性により優れ、また成形加工時の粘度が低く、得られるポリウレタン系樹脂中の配列を維持することが可能であり、安定した品質を達成できる。上記粘度は例えば500mPa・s以上であり、1000mPa・s以上であってもよい。
【0060】
上記組成物のトルク100%に達するまでの粘度上昇の時間は、150秒以上が好ましく、より好ましくは200秒以上、さらに好ましくは300秒以上である。
【0061】
上記ポリウレタン系樹脂は、添加剤(離型剤、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、UV安定剤、熱安定剤、架橋剤、発泡剤、整泡剤、ウレタン化触媒、フィラー等)を配合して、ポリウレタン樹脂組成物としてもよい。上記添加剤は、上記ウレタンプレポリマーおよび上記硬化剤の反応前に原料成分とともに配合してよいし、反応して得られたポリウレタン系樹脂について溶融混練によって配合してもよい。
【0062】
[成形体]
上記ポリウレタン系樹脂は、例えば、反応前の液状成形用材料を賦形してから反応固化させて成形する方法、反応後に加熱により軟化、溶融させて成形する方法、あるいは、反応後に溶解させた溶液を用いて成形する方法により、成形体とすることができる。
【0063】
成形方法の具体例としては、特に限定されないが、例えば、塗布、注型成形、真空成形、押出成形、カレンダー成形、ブロー成形、インフレーション成形、回転成形、スラッシュ成形、発泡成形、圧縮成形、スタンピング成形、キャスティング、ディッピング等の公知乃至慣用の成形方法が挙げられる。
【0064】
上記成形体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、フィルム、シート、ホース、チューブ、パッキング材、防振材、接合材、塗膜、コーティング材、繊維、発泡体、合成皮革、弾性体などが挙げられる。上記成形体は、例えば、衣料・非衣料用品、包装材料、家庭・雑貨用品、家具部品、機械部品、電気・電子部品、自動車その他乗り物の部品、工業製品の部材、土木・建築材料、農業用品、漁業用品、園芸用品、衛生用品、医療・介護用品、スポーツ・レジャー用品等の広範な用途において好ましく用いることができる。
【0065】
上記成形体としては、中でも、非空気式タイヤのスポーク用に用いられることが好ましい。すなわち、上記ポリウレタン系樹脂は、柔軟性および耐疲労性に優れ、低温領域で硬くなりにくいため、非空気式タイヤのスポーク用に用いられることが好ましい。この場合、上記非空気式タイヤのスポークは、上記ポリウレタン系樹脂を少なくとも含む。
【0066】
[非空気式タイヤ]
上記非空気式タイヤとしては、例えば、外側の強化された環状バンドと、ハブと、上記環状バンドの半径方向内側および上記ハブの間に延びるスポークとを備える、非空気式タイヤが挙げられる。上記スポークは上記ポリウレタン系樹脂から形成される。
【0067】
上記非空気式タイヤの一実施形態を
図1に示す。
図1に示す非空気式タイヤ1は、環の外側が強化された環状バンド2と、ハブ3と、環状バンド2の半径方向内側(すなわち環状バンド2の中心側)およびハブ3の間に延びるスポーク4とを備える。環状バンド2の外側はトレッド5により強化されている。ハブ3は環状であり、図示しないホイールにセットされる。スポーク4は、ハブ3と環状バンド2とを繋ぐように、環状バンド2の中心から放射状に複数備えられている。スポーク4は本開示のポリウレタン系樹脂より形成されている。
【0068】
本開示のポリウレタン系樹脂は、柔軟性および耐疲労性に優れ、低温領域で硬くなりにくい。このため、上記ポリウレタン系樹脂を用いて、耐屈曲性および耐疲労性に優れるスポークを製造することができる。また、非空気式タイヤの回転時は、100℃付近まで蓄熱する場合がある。このため、非空気式タイヤの蓄熱性や弾性率の温度変化は耐疲労性だけでなく乗り心地にも影響する。上記ポリウレタン系樹脂は、歪みが低くtanδが低い場合、弾性変化の温度安定性を向上させることができる。このため、上記ポリウレタン系樹脂を上記スポークに用いた場合、車両の乗り心地も優れ得る。
【0069】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本開示に係る各発明は、実施形態や以下の実施例によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0070】
以下、実施例に基づいて本開示の一実施形態をより詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0071】
実施例1
(プレポリマーの調製)
フラスコ内に、ポリオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)(商品名「PTMG2000」、理論分子量2000、三菱ケミカル株式会社製)、ポリカプロラクトンジオール(PCL)(商品名「PLACCEL 220UA」、分子量2000、開始剤:ジエチレングリコール、株式会社ダイセル製)を、モル比[PTMG/PCL]が4/6となるように加えた。そして、上記フラスコ内に、k値が4.25となるようにジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(商品名「ミリオネート MT」、東ソー株式会社製)を加え、80℃で、残NCO%が9.0%となるまで反応を行い、プレポリマーを得た。
【0072】
(ポリウレタン試験片の作製)
カップ容器内に、上記で得られたプレポリマーおよび鎖延長剤としての1,4-ブタンジオール(1,4-BG)(三菱ケミカル株式会社製)をモル比[NCO/OH]=1.03となるように仕込み、自公転式撹拌装置(製品名「あわとり練太郎 AR-250」、株式会社シンキー製)を用いて均一に混合し脱泡して、成形用液状材料を得た。得られた成形用液状材料を金型に注型し、金型ごとオーブンにて120℃で16時間加熱して硬化させ、さらに23℃、50%RHの恒温恒湿環境下で48時間養生することによって、ポリウレタン試験片(矩形状、縦13mm、横20mm、厚さ2mm)を作製した。
【0073】
実施例2~3
[PTMG/PCL]が表1に示す値となるようにPTMGおよびPCLの添加量を変更したこと以外は実施例1と同様にしてプレポリマーおよびポリウレタン試験片を作製した。
【0074】
実施例4
ポリオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)およびポリカプロラクトンの共重合体(商品名「PLACCEL T2205T」、分子量2000、株式会社ダイセル製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、プレポリマーおよびポリウレタン試験片を作製した。
【0075】
比較例1
プレポリマーとして、PTMG-MDIプレポリマー(商品名「VIBRATHANE B836」、ランクセス社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリウレタン試験片を作製した。
【0076】
比較例2
ポリオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)(商品名「PTMG2000」、理論分子量2000、三菱ケミカル株式会社製)を用い、k値および残NCO%を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、プレポリマーおよびポリウレタン試験片を作製した。
【0077】
比較例3
k値および残NCO%を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、プレポリマーおよびポリウレタン試験片を作製した。
【0078】
比較例4
ポリオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)(商品名「PTMG2000」、理論分子量2000、三菱ケミカル株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、プレポリマーおよびポリウレタン試験片を作製した。
【0079】
実施例5
[PTMG/PCL]が表1に示す値となるようにPTMGおよびPCLの添加量を変更したこと以外は実施例1と同様にしてプレポリマーおよびポリウレタン試験片を作製した。
【0080】
<評価>
実施例および比較例で作製した成形用液状材料、プレポリマー、およびポリウレタン試験片について、以下の評価を行った。結果を表2に示した。
【0081】
(1)引張弾性率
JIS K7161に従って、温度23℃、10%伸長状態で測定した。
【0082】
(2)貯蔵弾性率
粘弾性測定装置(商品名「DMA7100」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、試験片40mm×10mm×(t)2mmをチャック間20mm、温度-100~200℃、昇温速度2℃/min、周波数10Hz、初期歪み、動歪み0.05、引張りモード状態で測定し、各温度でのE’、tanδを読み取り、E’低下率は計算より算出した。
E’低下率={E’(23℃)-E’(100℃)}/E’(23℃)×100
【0083】
(3)coldhardening
上記貯蔵弾性率の測定により得られたDMAチャートにおいて、-60℃~40℃の間にショルダーピークが確認されたものを「coldhardeningあり」と評価し、ショルダーピークが確認されなかったものを「coldhardeningなし」と評価した。実施例3および比較例4のDMAチャートを
図2に示す。なお、実施例1,2,4は、実施例3よりも[PTMG/PCL]が小さいため、ショルダーピークはより確認されにくくなる。
【0084】
(4)引張永久歪
JIS K7312に沿って、温度23℃、10%伸長状態で測定した。
【0085】
(5)耐疲労性
JIS K7312に沿って、デマチャ屈曲疲労試験を用いて、き裂成長試験の方法であらかじめき裂を試験片に入れ、計20万回屈曲を行い、き裂が成長し破断するまでの回数を1万回ごとに確認し算出し、屈曲回数を記録した。
【0086】
(6)粘度
成形用液状材料について、E型粘度計(商品名「VISCOMETER TV-22」、東機産業株式会社製)を用いて、60℃、10rpmで測定した。
【0087】
(7)ポットライフ
成形用液状材料について、E型粘度計(商品名「VISCOMETER TV-22」、東機産業株式会社製)を用いて、60℃、10rpmで撹拌を継続し、トルクが100%になるまでの時間を測定してポットライフとした。
【0088】
(8)プレポリマー外観
プレポリマーの白濁具合を目視にて評価した。
【0089】
【0090】
【0091】
表2に示す通り、実施例のポリウレタン試験片は、引張弾性率が低く、柔軟性に優れていると判断された。また、coldhardeningはなく、低温領域で硬くなりにくいと判断された。また、屈曲回数は12万回以上であり、耐疲労性にも優れると判断された。いずれの実施例においても、公知のプレポリマーを用いた比較例1に対して、引張弾性率が低く柔軟性に優れる、屈曲回数が多く耐疲労性に優れるといった効果が確認された。そして、ポリオールとしてポリカプロラクトンジオールを使用しなかった場合(比較例2,4)、k値が5.00以上である場合(比較例3)、および[PTMG/PCL]が3/7未満である場合(比較例5)、いずれも屈曲回数が少なく、耐疲労性に劣ると判断された。
【0092】
また、ポリオールとしてPTMGおよびポリカプロラクトンの共重合体を使用した実施例4は、他の実施例に対して、粘度が低く、ポットライフが長く、プレポリマーの透明性が高かった。
【0093】
以下、本開示に係る発明のバリエーションを記載する。
[付記1]芳香族ジイソシアネートおよびジオール化合物を構成単位とするウレタンプレポリマーに由来する構成単位、および、硬化剤に由来する構造部を含み、
前記ウレタンプレポリマーのk値は5.00未満であり、
前記ジオール化合物は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリカプロラクトンジオールを含むか、および/または、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびカプロラクトンジオールの共重合体を含み、
前記ウレタンプレポリマー中のポリカプロラクトン単位に対するポリテトラメチレンエーテルグリコール単位のモル比[ポリテトラメチレンエーテルグリコール/ポリカプロラクトン]は3/7以上である、ポリウレタン系樹脂。
[付記2]前記芳香族ジイソシアネートはジフェニルメタンジイソシアネートを含む付記1に記載のポリウレタン系樹脂。
[付記3]前記ジオール化合物の数平均分子量は4000以下である付記1または2に記載のポリウレタン系樹脂。
[付記4]前記ポリカプロラクトンジオールはジエチレングリコールを開始剤とするポリカプロラクトンジオールを含む付記1~3のいずれか1つに記載のポリウレタン系樹脂。
[付記5]前記硬化剤は1,4-ブタンジオールを含む付記1~4のいずれか1つに記載のポリウレタン系樹脂。
[付記6]ヒドロキシ基に対するイソシアネート基のモル比[NCO/OH]は0.90~1.10である付記1~5のいずれか1つに記載のポリウレタン系樹脂。
[付記7]非空気式タイヤのスポーク用に用いられる付記1~6のいずれか1つに記載のポリウレタン系樹脂。
[付記8]付記1~6のいずれか1つに記載のポリウレタン系樹脂を含む、非空気式タイヤのスポーク。
[付記9]外側の強化された環状バンドと、ハブと、前記環状バンドの半径方向内側および前記ハブの間に延びる付記8に記載のスポークとを備える、非空気式タイヤ。