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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075464
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066029
(22)【出願日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0157400
(32)【優先日】2022-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、セウン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ドン チャン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヨン ファ
(72)【発明者】
【氏名】パク、サン ジン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ジン ボク
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】積層型電子部品に関する。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体の外側に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも1つ以上は、内側のコア領域及び上記コア領域の少なくとも一部をカバーするシェル領域を含むコア-シェル構造を含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち90%以上は、平均大きさ170.0nm~190.0nmを満たし、上記誘電体結晶粒の大きさの最大偏差は、上記誘電体結晶粒の平均大きさに対して±60.0nmを満たすことができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体の外側に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、前記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも1つ以上は、内側のコア領域及び前記コア領域の少なくとも一部をカバーするシェル領域を含むコア-シェル構造を含み、
前記複数の誘電体結晶粒のうち90%以上は、平均大きさ170.0nm~190.0nmを満たし、前記誘電体結晶粒の大きさの最大偏差は、前記誘電体結晶粒の平均大きさに対して±60.0nmを満たす、積層型電子部品。
【請求項2】
前記誘電体結晶粒の平均大きさに対する前記誘電体結晶粒の大きさの標準偏差値の割合である変動係数(CV)は、30%未満を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記コア領域は希土類元素を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記コア領域のうち、前記コア領域の中心点から外側方向に1/2地点までの領域を第1コア領域、前記第1コア領域の外側部から前記コア領域の外側部までの領域を第2コア領域と定義するとき、
前記第1コア領域は希土類元素を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第1コア領域に含まれる前記希土類元素の平均含有量は、0.00at%超え0.20at%未満である、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記コア領域の中心点から前記第1コア領域の1/2地点までの領域に含まれる前記希土類元素の平均含有量は、0.00at%超え0.05at%以下である、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記コア領域の中心点での前記希土類元素の平均含有量は、0.00at%超え0.05at%以下である、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記シェル領域は、前記希土類元素を含むことができ、
前記コア領域は、前記希土類元素の平均含有量が0.00at%超え0.20at%未満を満たす第1コア領域、及び前記第1コア領域の少なくとも一部をカバーする第2コア領域を含み、
前記第2コア領域に含まれる希土類元素の平均含有量は、前記第1コア領域に含まれる希土類元素の平均含有量よりも高く、前記シェル領域に含まれる希土類元素の平均含有量よりも低い、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記誘電体層は、母材主成分及び希土類元素を含む副成分を含み、
前記希土類元素の平均含有量は、前記コア領域よりも前記シェル領域でさらに高い、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記希土類元素は、La、Y、Ac、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuの中から選択される1つ以上を含む、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記外部電極は、前記本体上に配置され、第1導電性金属とガラスを含む第1電極層、及び前記第1電極層上に配置され、第2導電性金属と樹脂を含む第2電極層を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記外部電極は、前記電極層上に配置されるめっき層をさらに含む、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記めっき層は、前記電極層上に配置され、第1めっき金属を含む第1めっき層、及び前記第1めっき層上に配置され、第2めっき金属を含む第2めっき層を含む、請求項12に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記誘電体層の平均厚さは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記内部電極の平均厚さは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着されて電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながら高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。コンピュータ、モバイル機器など、各種の電子機器が小型化、高出力化するにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化に対する要求が増大している。
【0004】
一方、積層セラミックキャパシタの信頼性を向上させる方法の一つは、均一な大きさの誘電体結晶粒を形成することである。但し、均一な大きさの誘電体結晶粒を実現するためには、誘電体粉末及び添加剤粒子の均一な分散が必要であり、そのために有機物溶媒において有機物分散剤を使用するか、誘電体粉末に添加剤をコーティングするなど様々な方法が試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2014-0049704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、誘電体粒子に添加剤を元素又はイオン形態で吸着させ、焼成後の均一な大きさの誘電体結晶粒を形成することである。
【0007】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、イオン状態の添加剤を投入することにより、誘電体粒子全体に副成分を均一に固溶及び拡散させ、電気的特性のばらつきを減らすことである。
【0008】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、均一な大きさの全体結晶粒を形成することにより、積層型電子部品の信頼性を向上させることである。
【0009】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、コア-シェル構造を有する微細な大きさの結晶粒において、コア内部へ副成分を拡散させて電気的特性を向上させることである。
【0010】
但し、本発明が解決しようとするいくつかの課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体の外側に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも1つ以上は、内側のコア領域及び上記コア領域の少なくとも一部をカバーするシェル領域を含むコア-シェル構造を含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち90%以上は、平均大きさ170.0nm~190.0nmを満たし、上記誘電体結晶粒の大きさの最大偏差は、上記誘電体結晶粒の平均大きさに対して±60.0nmを満たすことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のいくつかの効果の一つは、イオン状態の添加剤を投入することにより、誘電体粒子全般に副成分を均一に固溶及び拡散させ、電気的特性のばらつきを減らすことである。
【0013】
本発明のいくつかの効果の一つは、均一な大きさの誘電体結晶粒を形成することにより、積層型電子部品の信頼性を向上させることである。
【0014】
本発明のいくつかの効果の一つは、コア-シェル構造の誘電体結晶粒中、コア内部へ副成分を拡散させることにより、電気的特性を向上させることである。
【0015】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
図2図1の内部電極の積層構造を示した分離斜視図を概略的に示したものである。
図3図1のI-I'線に沿った断面図である。
図4】(a)~(c)は比較例及び実施例の誘電体粉末を概略的に示したものである。
図5図3のP領域を概略的に示したものである。
図6】(a)~(c)は誘電体結晶粒を含む比較例及び実施例の誘電体層をSEMにてスキャンした画像イメージである。
図7】(a)~(c)は比較例及び実施例の誘電体結晶粒をTEMにてスキャンした画像イメージである。
図8】(a)~(c)は図6(a)~(c)の誘電体結晶粒に含まれるDyをTEM-EDSにてマッピング(mapping)した画像イメージである。
図9】比較例及び実施例の複数個のチップ(chip)についてMTTF評価を行ったとき、故障時間による個数を累積して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0018】
そして、図面において、本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省略し、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したため、本発明は、必ずしも図示によって限定されるものではない。また、同一思想の範囲内で機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を付与して説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0020】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、図2は、図1の内部電極の積層構造を示した分離斜視図を概略的に示したものであり、図3は、図1のI-I'線に沿った断面図であり、図4は、比較例及び実施例の誘電体粉末を概略的に示したものであり、図5は、図3のP領域を概略的に示したものである。
【0021】
以下、図1図5を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は誘電体組成物を用いる様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0022】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体と、上記本体110の外側に配置され、上記内部電極121、122と連結される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層111は複数の誘電体結晶粒20を含み、上記複数の誘電体結晶粒20のうち少なくとも1つ以上は、内側のコア領域21及び上記コア領域21の少なくとも一部をカバーするシェル領域22を含むコア-シェル構造を含み、上記複数の誘電体結晶粒20のうち90%以上は、平均大きさ170.0nm~190.0nmを満たし、上記誘電体結晶粒20の大きさの最大偏差は、上記誘電体結晶粒20の平均大きさに対して±60.0nmを満たすことができる。
【0023】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0024】
より具体的に、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで対向するように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する容量形成部を含むことができる。
【0025】
本体110の具体的な形状は特に制限されないが、図示されているように、本体110は六面体形状やこれと類似の形状からなっていてもよい。焼成過程で本体110に含まれるセラミック粉末の収縮により、本体110は、完全な直線を有する六面体形状ではないものの、実質的に六面体形状を有することができる。
【0026】
本体110は、第1方向に対向する第1及び第2面1、2、第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面3、4、第1~第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0027】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認することが困難である程度に一体化されることができる。
【0028】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り制限されない。一般的に、ペロブスカイト(ABO)系材料を使用することができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCa)TiO(0<x<1)、Ba(Ti1-yCa)O(0<y<1)、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O(0<x<1、0<y<1)、又はBa(Ti1-yZr)O(0<y<1)などが挙げられる。
【0029】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されてもよい。
【0030】
誘電体層111の厚さは特に限定する必要はない。
【0031】
必要な誘電特性のために、数μm厚の誘電体層111を製造することができるが、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成すべく、誘電体層の厚さは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0032】
ここで、誘電体層111の厚さは、第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の厚さを意味することができる。
【0033】
一方、誘電体層111の厚さは、誘電体層111の第1方向の大きさを意味することができる。また、誘電体層111の厚さは、誘電体層111の平均厚さを意味することができ、誘電体層111の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0034】
誘電体層111の第1方向の平均大きさは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)にてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、1つの誘電体層111を第2方向に等間隔である30箇所で第1方向の大きさを測定した平均値であることができる。上記等間隔である30箇所は、容量形成部で指定することができる。また、このような第1方向の大きさの測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の第1方向の平均大きさをさらに一般化することができる。
【0035】
一方、積層型電子部品の一種である積層セラミックキャパシタは、様々な作動環境で駆動されることができるが、このような環境中においては、積層型電子部品に悪影響を及ぼして予想寿命時間が短くなったり、目標とする電気的特性が乏しくなったりするなどの信頼性が低下する場合がある。このような理由で、積層型電子部品の高信頼性を達成することは重要な課題の一つとして取り扱われているが、信頼性を向上させる方法の一つとして、均一な大きさの誘電体結晶粒を形成する方法がある。但し、均一な大きさの誘電体結晶粒を実現するためには、誘電体粉末及び添加剤粒子の均一な分散が必要であり、そのために、有機物溶媒において有機物分散剤を使用するか、誘電体粉末に添加剤を投入するなど様々な方法が試みられている。
【0036】
このとき、添加剤の種類及び含有量を制御して信頼性を向上させる方法には、添加剤を酸化物形態で添加する固相先分散又は固相先拡散などの様々な方法があるが、既存の固相先分散又は固相先拡散などの方法では、分散性に劣るか、均一なコーティング層を形成するのに制約があり、均一な大きさの誘電体粉末及び誘電体結晶粒を製造することにある程度限界があり、製造工程の側面や経済的な側面で改善が必要な部分が存在する。
【0037】
そこで、本発明では、最終焼結後の誘電体結晶粒の平均大きさ及び大きさのばらつきが改善されるように、誘電体粒子表面を水系においてイオン状態で液状化された添加剤元素物質でコーティングすることにより、前述の問題点を解決できる様々な利点が存在する。イオン状態の添加剤元素物質は、一般的な酸化剤形態よりも大きさが小さいことから、誘電体粒子の表面コーティングカバレッジ割合が高く、コーティング層の厚さも薄い方である。また、焼結過程で誘電体粒子間のネッキング(necking)現象を抑制し、最終焼結後の粒子の平均大きさを均一に制御することができる。このような結果は、全般的な信頼性特性及びばらつき改善に寄与できるという効果がある。
【0038】
一方、イオン状態で液状化された添加剤元素物質をコーティングする際に、有機物溶媒を用いるか、2種以上の溶媒を混合して使用する場合は、イオン状態が不安定になる可能性があり、更なる水洗工程を経なければならないなど経済的に不利であるという問題点がある。一方、イオン添加剤元素物質を単一水系溶媒で適用する場合は、添加剤の分散性に優れ、大量生産が容易であり、また、イオン添加剤を安定して誘電体粒子に吸着させることができるため、結晶粒の成長抑制を効果的に制御できるという利点がある。
【0039】
図4は、焼成前の誘電体粒子11に添加剤12、12'を投入した状態を概略的に示したものである。より具体的に、図4(a)は固相先分散状態を示したものであり、図4(b)は固相先拡散状態を示したものであり、図4(c)は液相先拡散状態を示したものである。
【0040】
本発明において、誘電体粒子11は、前述の誘電容量に寄与できる誘電体物質の焼成前の粒子又は粉末状態を意味することができ、添加剤12、12'は、誘電体物質の様々な特性を制御できる焼成前の物質を意味することができ、誘電体組成物10は、誘電体粒子11に添加剤12、12'がコーティング又は吸着された焼成前の状態を意味することができる。
【0041】
図4(a)のような固相先分散の場合、有機物を含む溶媒中に添加剤を酸化物形態で投入するため、添加剤成分の均一な分散状態を実現し難く、これを撹拌しても、添加剤酸化物12'と誘電体粒子11との結合力が弱く、吸着が十分に起こらないか、吸着されても結合が容易に解除される状態である可能性がある。このため、添加剤酸化物12'が誘電体粒子11の粒成長を十分に制御することができず、均一な大きさの誘電体結晶粒を得るように制御し難いことから、結晶粒の大きさのばらつきが大きい可能性がある。
【0042】
図4(b)のような固相先拡散の場合、有機物を含む溶媒中に添加剤12'を酸化物形態で投入した後、誘電体粒子11に吸着及び固溶し、誘電体粒子11が粒成長した物質である誘電体組成物を製造することができる。固相先分散に比べて添加剤12'の吸着及び固溶が容易であるものの、添加剤12'が酸化物形態で吸着されるため、比較的大きさが大きい添加剤12'により、誘電体粒子11をカバーする割合が低い可能性があり、同様に均一な大きさの誘電体結晶粒を得るように制御し難いことから、結晶粒の大きさのばらつきが比較的大きい可能性がある。
【0043】
本発明の一実施形態を製造するための図4(c)のような液相先拡散の場合、単一水系溶媒において添加剤12をイオン状態で微粒化して誘電体粒子11の表面に均一に吸着することができる。イオン状態で微粒化された添加剤12により、既存の添加剤の酸化物12'に比べて添加剤物質の分散性を極大化することができ、イオン状態で微粒化された添加剤イオン12が誘電体粒子11表面に均一にコーティングされ、焼結過程で誘電体粒子11間の接触を最小化することができ、これにより、結晶粒の粒成長を制御できる環境を造れるようになり、大きさのばらつき及び信頼性特性の改善に寄与することができる。また、水系の単一溶媒において適用できる方式を用いることができるため、大量生産に向けた工程への適用に適しており、経済的にも利点がある。
【0044】
以下では、添加剤12を液相先拡散方法で誘電体粒子11の表面にコーティングした誘電体組成物10を焼成して現れる誘電体結晶粒20を含む、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0045】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100において、上記誘電体層111は、複数の誘電体結晶粒20を含み、上記複数の誘電体結晶粒20のうち少なくとも1つ以上は、内側のコア領域21及び上記コア領域21の少なくとも一部をカバーするシェル領域22を含むコア-シェル構造を含み、上記複数の誘電体結晶粒20のうち90%以上は、平均大きさ170.0nm~190.0nmを満たし、上記誘電体結晶粒20の大きさの最大偏差は、上記誘電体結晶粒20の平均大きさに対して±60.0nmを満たすことができる。
【0046】
本発明の一実施形態において、誘電体層111は、母材主成分及び希土類元素を含む副成分を含むことができる。
【0047】
ここで、母材主成分は、誘電容量を形成するための原料となる誘電体物質を意味することができ、主成分は、他の成分に比べて相対的に多くの重量割合を占める成分を意味することができ、全組成物又は全誘電体層の重量を基準として、50重量%以上の成分を意味することができる。原料となり得る誘電体物質は、前述したところと同一であるため、省略する。
【0048】
副成分とは、他の成分に比べて相対的に少ない重量割合を占める成分を意味することができ、全組成物又は全誘電体層の重量を基準として、50重量%未満の成分を意味することができる。
【0049】
このとき、副成分は、La、Y、Ac、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuの中から選択される1つ以上を含む希土類元素を含むことができるが、特にこれに制限されるものではない。
【0050】
希土類元素の平均含有量は、コア領域21よりもシェル領域22で更に高くてもよい。
【0051】
コア領域21とシェル領域22とを区分する基準は、次のとおりである。誘電体結晶粒20の中心点を通る直線に対してラインプロファイル(Line-profile)を行ったとき、希土類元素の含有量が誘電体結晶粒20内部の任意の地点で急激に変化することがあるが、急激な変化が発生する領域の中心を基準として、希土類元素の含有量が少ない領域をコア領域21と定義し、希土類元素の含有量が多い領域をシェル領域22と定義することができる。
【0052】
図5を参照すると、誘電体層111は複数の誘電体結晶粒20を含むことができ、複数の誘電体結晶粒20のうち少なくとも1つ以上は、内側のコア領域21及びコア領域21の少なくとも一部をカバーするシェル領域22を含むコア-シェル構造を有することができる。
【0053】
本発明において、誘電体結晶粒の大きさは、誘電体結晶粒の中心点を通る最小直径と最大直径の平均大きさを意味することができ、誘電体結晶粒20の平均大きさは、誘電体層111内に存在する誘電体結晶粒の大きさを平均した値であることができる。
【0054】
本発明の一実施形態において、複数の誘電体結晶粒20のうち90%以上は、平均大きさ170.0nm以上190.0nm以下を満たし、誘電体結晶粒20の大きさの最大偏差は、誘電体結晶粒20の平均大きさに対して±60.0nmを満たすことができる。
【0055】
誘電体結晶粒20の平均大きさは、誘電体層111内で測定可能な複数の誘電体結晶粒20の平均大きさを意味することができ、最大偏差は、測定可能な誘電体結晶粒20の大きさのうち最大大きさ及び最小大きさの範囲を意味することができ、本発明の一実施形態では、誘電体結晶粒20の平均大きさを基準として、±60.0nmの範囲内を満たすことを意味することができる。
【0056】
本発明の一実施形態において、誘電体結晶粒20の平均大きさに対する誘電体結晶粒20の大きさの標準偏差値の割合である変動係数(CV:Coefficient of Variation)は、30%未満を満たすことができる。
【0057】
変動係数CVとは、平均に対する標準偏差を意味するものであって、誘電体結晶粒20の大きさの変動係数は、誘電体結晶粒20の平均大きさに対する誘電体結晶粒20の大きさの標準偏差値の割合を意味することができ、変動係数CVの値が低いほど、誘電体結晶粒20が均一な大きさを有することを意味することができ、大きさのばらつきが小さいことを意味することができる。
【0058】
言い換えると、誘電体結晶粒20の大きさの変動係数CVが30%未満を満たすというのは、誘電体結晶粒20の大きさのばらつきが小さいことを意味することができ、平均大きさを基準として、大きさに大差がないことを意味することができる。
【0059】
変動係数CVの下限値は特に制限されないが、絶対的に同一の大きさを形成することは困難であるため、好ましくは0.01%以上を満たすことができる。
【0060】
誘電体結晶粒20が均一な大きさを有することにより、積層型電子部品100の特性のばらつき改善及び信頼性向上に寄与することができる。
【0061】
前述のように、添加剤、例えば希土類元素を固相方式で投入した場合、希土類元素の均一分散に限界があり、部位別の希土類元素の含有量に差が生じる可能性があり、これにより、特性のばらつきが大きくなって実現しようとする特性を制御し難くなるなどの問題点が生じる恐れがある。このように、微細な大きさの誘電体結晶粒においては、コア-シェルの構造を均一に形成することが、電気的特性、誘電特性、信頼性を向上させるための重要な解決課題となっている。
【0062】
本発明の一実施形態において、コア領域21は希土類元素を含むことができる。
【0063】
より具体的に、コア-シェル構造を含む誘電体結晶粒20を概略的に示した図5を参照して説明すると、コア領域21中、コア領域21の中心点から外側方向に1/2地点までの領域を第1コア領域21a、第1コア領域21aの外側部からコア領域21の外側部までの領域を第2コア領域21bと定義するとき、第1コア領域21aは希土類元素を含むことができる。
【0064】
ここで、コア領域21の中心点は、誘電体結晶粒20の中心点と一致することができ、コア領域21の中心点から外側方向とは、コア領域21の中心点からシェル領域22又は誘電体結晶粒界が存在する方向を意味することができる。1/2地点は、コア領域21の中心点からコア領域21とシェル領域22が接する境界点までを直線で引いたとき、1/2に該当する地点を意味することができる。コア領域21の外側部は、コア領域21とシェル領域22が接する境界線、境界面を意味することができ、境界は、前述のようにラインプロファイル(Line-profile)を行ったとき、希土類元素の含有量が急激に変化する領域の中心を意味することができる。コア領域21の外側部は、第2コア領域21bの外側部と同一であってもよい。
【0065】
このとき、第1コア領域21aに含まれる希土類元素の平均含有量は、0.00at%超え0.20at%未満を満たすことができ、微細含有量さえ含めば十分であるものの、好ましくは0.01at%以上を満たすことができる。
【0066】
より具体的に、コア領域21の中心点から第1コア領域21aの1/2地点までの領域に含まれる希土類元素の平均含有量は、0.00at%超え0.05at%以下を満たすことができ、コア領域21の中心点での希土類元素の含有量は、0.00at%超え0.05at%以下を満たすことができる。
【0067】
これを満たすことにより、コア領域21の内部へ希土類元素が拡散されており、液相先拡散の方式で誘電体粉末10が形成されたことを類推することができ、電気的特性が向上するにつれて、シェル領域22bの大きさが小さい誘電体結晶粒20を形成することができる。
【0068】
第2コア領域21bに含まれる希土類元素の平均含有量は、第1コア領域21aに含まれる希土類元素の平均含有量よりは高く、シェル領域22bに含まれる希土類元素の平均含有量よりは低くてもよい。
【0069】
また、希土類元素の一部がコア領域21の内部へ拡散されるにつれて、微細な大きさの誘電体結晶粒20において、相対的にコア領域21の大きさが大きい誘電体結晶粒20を形成することができ、これにより、電気的特性及び誘電特性が向上することができる。また、誘電体結晶粒20の大きさのばらつきが均一になるにつれて、信頼性が向上するという効果がある。
【0070】
本発明の一実施形態において、コア領域21のうち、希土類元素の平均含有量が0.00at%超え0.20at%未満を満たす領域を第1領域21aと定義するとき、第2コア領域(21b)は、第1コア領域の少なくとも一部をカバーする領域を意味することができる。このとき、第2コア領域21bに含まれる希土類元素の平均含有量は、第1コア領域21aに含まれる希土類元素の平均含有量よりも高く、シェル領域22に含まれる希土類元素の平均含有量よりも低くてもよい。
【0071】
コア領域21の希土類元素を測定する方法は特に制限されない。例えば、ラインプロファイル(Line-profile)を測定することで、希土類元素の含有量を測定することができ、希土類元素の含有量が極めて少ない第1コア領域21aは、ラインプロファイル(Line-profile)による測定が不可能である場合、一地点(point)をEDS分析することにより、微細な含有量の希土類元素の含有量を測定することができる。
【0072】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に積層することができる。
【0073】
内部電極121、122は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出されることができる。
【0074】
より具体的に、第1内部電極121は、第4面4と離隔し第3面3を介して露出されることができ、第2内部電極122は、第3面3と離隔し第4面4を介して露出されることができる。
【0075】
本体110の第3面3には、第1外部電極131が配置されて、第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には、第2外部電極132が配置されて、第2内部電極122と連結されることができる。
【0076】
すなわち、第1内部電極121は、第2外部電極132とは連結されずに第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は、第1外部電極131とは連結されずに第2外部電極132と連結されることができる。このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0077】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0078】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。
【0079】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
一方、内部電極121、122の厚さは特に限定する必要はない。
【0081】
必要な電気的特性のために、数μm厚の内部電極121、122を製造することができるが、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成すべく、内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0082】
ここで、内部電極121、122の厚さは、内部電極121、122の第1方向の大きさを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さは、内部電極121、122の平均厚さを意味することができ、内部電極121、122の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0083】
内部電極121、122の第1方向の平均大きさは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)にてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、1つの内部電極121、122を第2方向に等間隔である30箇所で第1方向の大きさを測定した平均値であることができる。上記等間隔である30箇所は容量形成部で指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の第1方向の平均大きさをさらに一般化することができる。
【0084】
一方、本体110は、容量形成部の第1方向の両端面(end-surface)上に配置されるカバー部112、113を含むことができる。
【0085】
より具体的に、容量形成部の第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び容量形成部の第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0086】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部の上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0087】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0088】
一方、カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。
【0089】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さは100μm以下であることができ、好ましくは30μm以下であることができ、超小型製品においては、より好ましくは20μm以下であることができる。
【0090】
ここで、カバー部112、113の厚さは、カバー部112、113の第1方向の大きさを意味することができる。また、カバー部112、113の厚さは、カバー部112、113の平均厚さを意味することができ、カバー部112、113の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0091】
カバー部112、113の第1方向の平均大きさは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)にてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、1つのカバー部を第2方向に等間隔である30箇所で第1方向の大きさを測定した平均値であることができる。上記等間隔である30箇所は上部カバー部112で指定することができる。
【0092】
一方、本体110は、容量形成部の第3方向の両端面(end-surface)上に配置されるサイドマージン部を含むことができる。
【0093】
より具体的に、サイドマージン部は、容量形成部の第5面5上に配置される第1サイドマージン部及び容量形成部の第6面6上に配置される第2サイドマージン部を含むことができる。すなわち、サイドマージン部は、容量形成部の第3方向の両端面上に配置されることができる。
【0094】
サイドマージン部は、図示されているように、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を基準として、第1及び第2内部電極121、122の第3方向の両端面と本体110の境界面の間の領域を意味することができる。
【0095】
サイドマージン部は、セラミックグリーンシート上にサイドマージン部が形成されるところを除いて、導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成し、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5及び第6面5、6に露出されるように切断した後、単一誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部の第3方向の両端面上に第3方向に積層して形成することもできる。
【0096】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0097】
一方、サイドマージン部の幅は特に限定する必要はない。
【0098】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、サイドマージン部の幅は100μm以下であることができ、好ましくは30μm以下であることができ、超小型製品においては、より好ましくは20μm以下であることができる。
【0099】
ここで、サイドマージン部の幅は、サイドマージン部の第3方向の大きさを意味することができる。また、サイドマージン部の幅は、サイドマージン部114、115の平均幅を意味することができ、サイドマージン部の第3方向の平均大きさを意味することができる。
【0100】
サイドマージン部の第3方向の平均大きさは、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)にてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、1つのサイドマージン部を第1方向に等間隔である30箇所で第3方向の大きさを測定した平均値であることができる。上記等間隔である30箇所は第1サイドマージン部で指定することができる。
【0101】
本発明の一実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他目的に応じて変更されてもよい。
【0102】
外部電極131、132は、本体110上に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。
【0103】
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結される第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は、本体の第3面3に配置され、第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は、本体の第4面4に配置され、第2内部電極122と連結されることができる。
【0104】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用しても形成することができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質を決定することができ、さらに多層構造を有することができる。
【0105】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a、131b、132b、及び電極層131a、132a、131b、132b上に配置されるめっき層131c、132cを含むことができるが、特にこれに制限されるものではない。
【0106】
電極層131a、132a、131b、132bについて、より具体的な例を挙げると、電極層は、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0107】
また、電極層は、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であってもよい。
【0108】
さらに、電極層は、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0109】
電極層に含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができ、例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金からなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、特にこれに制限されるものではない。
【0110】
本発明の一実施形態において、電極層131a、132a、131b、132bは、第1電極層131a、132a及び第2電極層131b、132bを含む2層の構造を有することができる。
【0111】
第1電極層131a、132aは、本体110上に配置され、第1導電性金属及びガラスを含むことができ、第2電極層131b、132bは、第1電極層131a、132a上に配置され、第2導電性金属及び樹脂を含むことができる。
【0112】
第1電極層131a、132aは、ガラスを含むことで本体110との接合性を向上させる役割を果たし、第2電極層131b、132bは、樹脂を含むことで曲げ強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0113】
一方、第1導電性金属と第2導電性金属は、前述の導電性金属を含んでもよいが、同一の物質を含んでもよく、異なる物質を含んでもよい。
【0114】
より具体的に、第1電極層131a、132aに使用される第1導電性金属は、静電容量を形成するために、上記内部電極121、122と電気的に連結されることができる材質であれば特に制限されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金からなる群から選択される1つ以上を含むことができる。第1電極層131a、132aは、導電性金属粉末にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することで形成することができる。
【0115】
第2電極層131b、132bに含まれる第2導電性金属は、第1電極層131a、132aと電気的に連結されるようにする役割を果たすことができる。
【0116】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、電極層131a、132aと電気的に連結されることができる材質であれば特に制限されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金からなる群から選択される1つ以上を含むことができる。
【0117】
第2電極層131b、132bに含まれる第2導電性金属は、球形粒子及びフレーク状粒子のうち1つ以上を含むことができる。すなわち、導電性金属はフレーク状粒子のみからなるか、球形粒子のみからなっていてもよく、フレーク状粒子と球形粒子とが混合された形態であってもよい。ここで、球形粒子は、完全な球形ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さの割合(長軸/短軸)が1.45以下である形態を含むことができる。フレーク状粒子は、平たくて細長い形態を有する粒子を意味し、特に制限されるものではないが、例えば、長軸と短軸の長さの割合(長軸/短軸)が1.95以上であることができる。上記球形粒子及びフレーク状粒子の長軸と短軸の長さは、セラミック電子部品の第3方向の中央部で切断した第1及び第2方向の断面(cross-section)を走査電子顕微鏡(SEM)にてスキャンして得られたイメージから測定することができる。
【0118】
第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性確保及び衝撃吸収の役割を果たす。第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性及び衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを製造できるものであれば特に制限されず、例えば、エポキシ系樹脂を含むことができる。
【0119】
また、第2電極層131b、132bは、複数の金属粒子、金属間化合物、及び樹脂を含むことができる。金属間化合物を含むことにより、第1電極層131a、132aとの電気的連結性をより向上させることができる。上記金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割を果たし、複数の金属粒子を囲んで互いに連結する役割を果たすことができる。
【0120】
このとき、上記金属間化合物は、樹脂の硬化温度よりも低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、上記金属間化合物が樹脂の硬化温度よりも低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度よりも低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融し、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を囲むようになる。このとき、金属間化合物は、好ましくは300℃以下の低融点金属を含むことができる。
【0121】
例えば、213~220℃の融点を有するSnを含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融し、溶融したSnがAg、Ni又はCuのような高融点の金属粒子を毛細管現象により濡らし、Ag、Ni又はCu金属粒子の一部と反応して、AgSn、NiSn、CuSn、CuSnなどの金属間化合物を形成するようになる。反応にかかわらなかったAg、Ni又はCuは金属粒子形態で残る。
【0122】
従って、上記複数の金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち1つ以上を含み、上記金属間化合物は、AgSn、NiSn、CuSn及びCuSnのうち1つ以上を含むことができる。
【0123】
めっき層131c、132cは実装特性を向上させる役割を果たす。
【0124】
めっき層の金属種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含む単一層のめっき層であってもよく、複数の層から形成されてもよい。
【0125】
このとき、めっき層は、電極層上に配置され、第1めっき金属を含む第1めっき層131c、132c、及び上記第1めっき層131c、132c上に配置され、第2めっき金属を含む第2めっき層を含むことができる。
【0126】
ここで、第1めっき金属と第2めっき金属は、前述のめっき層の金属種類であることができるが、同一の物質を含んでもよく、異なる物質を含んでもよい。
【0127】
めっき層についてより具体的な例を挙げると、めっき層は、Niめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a、131b、132b上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよい。また、めっき層131c、132cは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0128】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。従って、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0129】
以下、実験例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これは本発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0130】
(実験例)
以下の比較例及び実施例は、互いに異なる方式で添加剤元素を誘電体粒子にドーピングして誘電体組成物を形成したものであり、互いに異なる方式で製造した誘電体組成物を焼成して誘電体結晶粒を含む誘電体層を実現したものである。
【0131】
比較例1は、固相先分散方式によって、チタン酸バリウム(BaTiO)にジスプロシウム(Dy)をドーピングして誘電体組成物を調製し、これを焼成してサンプルチップ(chip)を製造した。
【0132】
比較例2は、固相先拡散方式によって、チタン酸バリウム(BaTiO)にDyをドーピングしたものであり、それ以外は比較例1と同一である。
【0133】
実施例は、液相先拡散方式によって、チタン酸バリウム(BaTiO)にDyをドーピングしたものであり、それ以外は比較例1と同一である。
【0134】
以下の表1は、比較例及び実施例の電気的特性、Dc-bias特性、及び信頼性を評価したデータである。
【0135】
電気的特性は、誘電容量であるCp及び損失係数であるDF(Dissipation Factor)について測定し、Dc-bias特性は、電圧条件14VでのCp及びDCを測定した。
【0136】
信頼性はMTTF(Mean Time To Failure)で評価しており、各比較例及び実施例において、40個のサンプルチップ(chip)の信頼性評価を行ったとき、各サンプル別に故障が発生した時間の平均時間を意味する。
【0137】
このとき、B0.1は、全サンプルチップ中0.1%のサンプルの故障が発生する時間を意味し、B0.43は、全サンプルチップ中0.4329%のサンプルの故障が発生する時間を意味し、形状母数とは、サンプル故障時間のばらつきを意味し、形状母数値が高いほど初期故障発生頻度が減り、時間が経過するにつれて故障発生頻度が多くなることを意味する。
【0138】
【表1】
【0139】
上記表1を参照すると、比較例及び実施例において、電気的特性及びDc-bias特性では大きな差が生じなかったが、信頼性は実施例がさらに優れていることを確認することができる。
【0140】
これは、誘電体組成物の均一な粒成長により、誘電体結晶粒の大きさが均一になるにつれて信頼性が向上したものと予測される。
【0141】
図9は、比較例1、比較例2及び実施例のMTTF評価を行ったとき、サンプルチップ(chip)の故障時間を累積して示したグラフである。
【0142】
これを参照すると、B0.1及びB0.43の値は、比較例2が最も小さく、実施例が最も大きいことから、全サンプルチップの0.1%が故障するまで実施例が一番長くかかったことに鑑みると、実施例の信頼性が優れることを確認することができる。
【0143】
形状母数値は、比較例2が最も小さく、実施例が最も大きいことから、故障した時間の分布は比較例2が最も広く、実施例が最も狭いことが分かる。すなわち、実施例の故障時間の分布が最も狭いため、信頼性の予測が容易であるという利点がある。
【0144】
より具体的に、図面を参照して説明すると、図6図8は、SEM及びSEM-EDS分析装置を用いて、比較例及び実施例の誘電体結晶粒の大きさ、大きさの分布、及びDyをマッピング(mapping)した画像イメージである。
【0145】
より具体的に、図6図8のそれぞれの(a)は、比較例1に関するものであり、それぞれの(b)は、比較例2に関するものであり、それぞれの(c)は、実施例に関するものである。
【0146】
より具体的に、図6を参照すると、比較例1の誘電体結晶粒の平均大きさは237.7nmであり、最大偏差は±79.5nmと測定され、比較例2の誘電体結晶粒の平均大きさは230.0nmであり、最大偏差は±72.0nmと測定され、実施例の誘電体結晶粒の平均大きさは182.7nmであり、最大偏差は±53.1nmと測定された。このことから、液相先拡散により誘電体結晶粒を形成する場合、誘電体結晶粒の平均大きさが小さいながらも、均一な大きさで製造できることを確認することができる。
【0147】
図7及び図8は、同一の領域の誘電体結晶粒及びそのDyマッピング分析(mapping分析)を行ったTEM及びTEM-EDSマッピング画像イメージである。比較例1である図8(a)及び比較例2である図8(b)と比べて、実施例である図8(c)をみると、コア領域が相対的に小さいことを確認することができる。
【0148】
また、本開示で使用された「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味しておらず、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現することを排除しない。例えば、特定の一実施形態で説明された事項が他の一実施形態で説明されていなくても、他の一実施形態でその事項と反対になるか又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連した説明として理解されることができる。
【0149】
本開示で使用された用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであって、本開示を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈からして明らかに異なる意味でない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0150】
10 誘電体組成物
11 誘電体粒子
12 添加剤イオン
12' 添加剤酸化物
20 誘電体結晶粒
21 コア領域
21a 第1コア
21b 第2コア
22 シェル領域
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a、132a、131b、132b 電極層
131c、132c めっき層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9