(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075468
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】楽器用ナット
(51)【国際特許分類】
G10D 13/10 20200101AFI20240527BHJP
G10G 5/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G10D13/10 140
G10G5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093042
(22)【出願日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2022186189
(32)【優先日】2022-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大夢
(72)【発明者】
【氏名】内田 悠希
【テーマコード(参考)】
5D182
【Fターム(参考)】
5D182BB11
(57)【要約】
【課題】操作子によってクランプジョーを閉位置に保持する機構を有しながら、不意にスタンドから外れてしまうことを抑制できる楽器用ナットを提供する。
【解決手段】楽器用ナット1は、スタンド2を通す開口部25を有し、開口部にスタンドを通した状態において開位置と閉位置P21との間で開口部の大きさを変えるクランプジョー20と、閉位置において、クランプジョーに直接力を加えて、クランプジョーをスタンドに締め付ける弾性部材30と、押込み部43及び先端部42を有する操作子40と、内部にクランプジョー、弾性部材及び操作子を有するハウジング10と、を備える。閉位置においては、先端部が、クランプジョー及びハウジングに接触してクランプジョーが開くのを妨げる。開位置においては、先端部が弾性部材を押してクランプジョーに加えられた力を解放し、押込み部がクランプジョーを押し広げる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンドを通す開口部を有し、前記開口部に前記スタンドを通した状態において開位置と閉位置との間で前記開口部の大きさを変えるクランプジョーと、
前記閉位置において、前記クランプジョーに直接力を加えて、前記クランプジョーを前記スタンドに締め付ける弾性部材と、
押込み部及び先端部を有する操作子と、
内部に前記クランプジョー、前記弾性部材及び前記操作子を有するハウジングと、を備え、
前記閉位置においては、前記先端部が、前記クランプジョー及び前記ハウジングに接触して前記クランプジョーが開くのを妨げ、
前記開位置においては、前記先端部が前記弾性部材を押して前記クランプジョーに加えられた前記力を解放し、前記押込み部が前記クランプジョーを押し広げる楽器用ナット。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記クランプジョーの回転軸に取り付けられた捩りばねである請求項1に記載の楽器用ナット。
【請求項3】
前記クランプジョーは、2つの部品からなり、
前記2つの部品は、前記クランプジョーの回転軸に取り付けられる請求項1又は請求項2に記載の楽器用ナット。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記閉位置において前記クランプジョーに直接力を加えることで、楽器用ナットが前記スタンドに対して回転することを妨げる請求項1又は請求項2に記載の楽器用ナット。
【請求項5】
前記開口部に前記スタンドが通っていないことで前記閉位置よりも前記開口部の大きさが小さくなるレスト位置では、前記クランプジョーが前記操作子から離れている請求項1又は請求項2に記載の楽器用ナット。
【請求項6】
前記操作子は、前記クランプジョーの前記閉位置から前記開位置への移動を規制する第一位置と、前記クランプジョーを前記開位置に保持させる第二位置との間で移動可能とされ、
前記ハウジングに対して、前記操作子を前記第二位置側から前記第一位置まで弾性的に押す弾性押し構造、をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の楽器用ナット。
【請求項7】
前記弾性押し構造は、前記操作子と、前記ハウジングの内面に設けられた凸部と、を有し、
前記操作子の前記先端部は、前記押込み部に対して弾性的に撓み変形可能とされ、
前記凸部は、前記第一位置に配置された前記操作子の前記先端部に対して、前記操作子が前記第一位置から前記第二位置に向かう方向に位置することで、前記操作子が前記第一位置から前記第二位置に向けて移動するにしたがって前記先端部を押して弾性的に撓み変形させ、
前記先端部が撓み変形した弾性力によって前記操作子が前記第二位置側から前記第一位置まで弾性的に押される請求項6に記載の楽器用ナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器用ナットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、楽器をスタンドに簡単に取り付けるためのクイックリリースクランプ(楽器用ナット)が開示されている。クイックリリースクランプは、スタンドを通す開口部と、開口部にスタンドを通した状態で閉位置と開位置との間で開口部の大きさを変えるクランプジョーと、クランプジョーの位置を変えるための操作子と、これら開口部、クランプジョー及び操作子を内部に配置したハウジングと、操作子とハウジングとの間に設けられた弾性部材と、を有する。
【0003】
このクイックリリースクランプにおいては、操作子が弾性部材の力によって押されて所定位置に保持されることで、操作子がクランプジョーを閉位置に保持する。また、操作子が弾性部材の力に抗うように操作されることで、クランプジョーを閉位置から開位置に移動させる。クランプジョーが閉位置に保持されることで、クイックリリースクランプがスタンドに取り付けられる。また、クランプジョーが開位置に移動することで、スタンドに対するクイックリリースクランプの取付状態が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のクイックリリースクランプにおいて、クランプジョーは、操作子によって閉位置に保持されるだけであり、閉位置においてスタンドに押し付けられない。このため、クイックリリースクランプがスタンドに対して動いてスタンドから外れる可能性がある。例えば、クランプジョーが操作子によって閉位置に保持された状態で、クランプジョーの雌ねじとスタンドの雄ねじとがかみ合っていても、クイックリリースクランプがスタンドに対して回転して外れてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、操作子によってクランプジョーを閉位置に保持する機構を有しながら、不意にスタンドから外れてしまうことを抑制できる楽器用ナットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、スタンドを通す開口部を有し、前記開口部に前記スタンドを通した状態において開位置と閉位置との間で前記開口部の大きさを変えるクランプジョーと、前記閉位置において、前記クランプジョーに直接力を加えて、前記クランプジョーを前記スタンドに締め付ける弾性部材と、押込み部及び先端部を有する操作子と、内部に前記クランプジョー、前記弾性部材及び前記操作子を有するハウジングと、を備え、前記閉位置においては、前記先端部が、前記クランプジョー及び前記ハウジングに接触して前記クランプジョーが開くのを妨げ、前記開位置においては、前記先端部が前記弾性部材を押して前記クランプジョーに加えられた前記力を解放し、前記押込み部が前記クランプジョーを押し広げる楽器用ナット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作子によってクランプジョーを閉位置に保持する機構を有しながら、不意にスタンドから外れてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る楽器用ナットを示す外観図である。
【
図2】
図1の楽器用ナットの使用例を示す斜視図である。
【
図4】
図1の楽器用ナットにおいて、クランプジョーが閉位置に配置された状態を示す平面図である。
【
図5】
図1の楽器用ナットにおいて、クランプジョーが開位置に配置された状態を示す平面図である。
【
図6】
図1の楽器用ナットにおいて、クランプジョーがレスト位置に配置された状態を示す平面図である。
【
図7】本発明の第二実施形態に係る楽器用ナットの分解斜視図である。
【
図8】
図7の楽器用ナットにおいて、クランプジョーが閉位置に配置された状態を示す平面図である。
【
図9】
図7の楽器用ナットにおいて、クランプジョーが開位置に配置された状態を示す平面図である。
【
図10】本発明の第三実施形態に係る楽器用ナットであって、クランプジョーが閉位置に配置された状態を示す平面図である。
【
図11】
図9の楽器用ナットにおいて、クランプジョーが開位置に配置された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
以下、
図1~
図6を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、楽器用ナット1は、雌ねじ29を有する。楽器用ナット1は、例えば
図2に示すように、スタンド2に取り付けられることで、楽器の一例であるシンバル3をスタンド2に保持する。具体的には、楽器用ナット1をスタンド2の先端部4に挿通させ、当該楽器用ナット1の雌ねじ29(
図1参照)をスタンド2の先端部4に形成された雄ねじ(不図示)に噛み合わせる。これにより、楽器用ナット1がスタンド2に取り付けられ、当該楽器用ナット1によってシンバル3をスタンド2に保持することができる。
【0011】
図1,
図3~
図6に示すように、楽器用ナット1は、ハウジング10と、クランプジョー20と、弾性部材30と、操作子40と、を備える。
【0012】
ハウジング10は、内部にクランプジョー20、弾性部材30及び操作子40を有する。ハウジング10は、ハウジング本体11と、蓋12と、を有する。
ハウジング本体11は、一方向(
図1、
図3~
図6においてZ軸正方向)に開口する箱状に形成されている。これにより、ハウジング本体11は、クランプジョー20、弾性部材30及び操作子40を収容可能な空間を有する。
図3~
図6に示すように、ハウジング本体11は、一方向を板厚方向とする底板部111と、底板部111の周縁において一方向に延びる側壁部112と、を有する。底板部111及び側壁部112によって囲まれた空間に、クランプジョー20、弾性部材30及び操作子40が収容される。
【0013】
底板部111は、スタンド2の先端部4(
図2参照)をハウジング10に挿通させるための貫通孔113を有する。底板部111には、ハウジング本体11の内側に向けて一方向に突出する回転軸114が設けられている。回転軸114は、後述するクランプジョー20の第一部品210及び第二部品220を回転可能に支持する。
側壁部112の周方向の一部には、切欠が形成されている。側壁部112の切欠は、ハウジング10に収容された操作子40の一部を外側に臨ませるためのハウジング10の開口13を構成する。ハウジング10の開口13は、一方向に直交する第一直交方向(
図1、
図3~
図6においてY軸方向)に向いている。
【0014】
側壁部112の内面は、操作子40を支持する2つの支持面115を含む。2つの支持面115は、それぞれ第一直交方向に延びている。2つの支持面115は、一方向及び第一直交方向の両方に直交する第二直交方向(
図1、
図3~
図6においてX軸方向)に対向する。
底板部111から延びる側壁部112の先端部には、爪部116が設けられている。爪部116は、後述する蓋12をハウジング本体11に係止する係止部として機能する。
【0015】
図1,
図3に示すように、ハウジング10の蓋12は、ハウジング本体11の一方向側の開口を覆う。蓋12は、スタンド2の先端部4をハウジング10に挿通させるための貫通孔123を有する。また、蓋12は、ハウジング本体11の回転軸114が挿入される挿入孔124を有する。図示例の挿入孔124は、蓋12を貫通しているが、例えば貫通しない有底の孔であってもよい。さらに、蓋12は、ハウジング本体11の爪部116を係止する被係止部126を有する。被係止部126にハウジング本体11の爪部116を係止することで、蓋12がハウジング本体11に保持される。
【0016】
図4~
図6に示すように、クランプジョー20は、スタンド2の先端部4を通すための開口部25を有する。クランプジョー20は、開口部25にスタンド2を通した状態において閉位置P21と開位置P22との間で開口部25の大きさを変える。
図4に示すように、閉位置P21は、開口部25に通されたスタンド2の先端部4がクランプジョー20に接触する程度に開口部25が小さいクランプジョー20の位置である。
図5に示すように、開位置P22は、クランプジョー20に触れることなく、スタンド2の先端部4を開口部25に通すことができる程度に開口部25が大きいクランプジョー20の位置である。
図6に示すように、クランプジョー20は、開口部25にスタンド2が通っていない状態で閉位置P21よりも開口部25の大きさが小さくなるレスト位置P23に位置することもできる。
【0017】
図3~
図6に示すように、本実施形態のクランプジョー20は、2つの部品210,220(第一部品210、第二部品220)を有する。2つの部品210,220は、それぞれハウジング10に設けられたクランプジョー20の回転軸114に取り付けられる。2つの部品210,220が回転軸114に取り付けられることで、2つの部品210,220はそれぞれ回転軸114を中心に回転することができる。
具体的に、2つの部品210,220の第一端部211,221は、回転軸114が挿通される挿通孔213,223を有する。2つの部品210,220の第一端部211,221は、回転軸114の軸方向に並ぶように配置される。2つの部品210,220の第二端部212,222は、それぞれ回転軸114から離れて位置し、回転軸114の周方向に並ぶように配置される。
【0018】
図4~
図6に示すように、2つの部品210,220の第二端部212,222は、クランプジョー20の開口部25を構成している。2つの部品210,220の第二端部212,222は、それぞれ開口部25の内周面を構成する弧状の形成面214,224を有する。形成面214,224には、楽器用ナット1の雌ねじ29が形成されている。
2つの部品210,220がハウジング10の内部に配置された状態で、2つの部品210,220の第二端部212,222は、ハウジング10の2つの支持面115の間において、概ね第二直交方向に並ぶ。また、各部品210,220の第一端部211,221から第二端部212,222に向かう方向が、概ねハウジング10の開口13側(
図4~
図6においてY軸正方向)に向いている。
【0019】
本実施形態のクランプジョー20では、2つの部品210,220の第二端部212,222が互いに離れるように2つの部品210,220が動くことが、クランプジョー20が開くことを意味する、具体的には、クランプジョー20がレスト位置P23から閉位置P21に移動すること、また、閉位置P21から開位置P22に移動することを意味する。また、2つの部品210,220の第二端部212,222が互いに近づくように2つの部品210,220が動くことが、クランプジョー20が閉じることを意味する、具体的には、クランプジョー20が開位置P22から閉位置P21に移動すること、また、閉位置P21からレスト位置P23に移動することを意味する。
閉位置P21及び開位置P22においては、2つの部品210,220の第二端部212,222が互いに間隔をあけて位置する。レスト位置P23においては、2つの部品210,220の第二端部212,222が互いに接触する。
【0020】
弾性部材30は、閉位置P21において、クランプジョー20に直接力を加えて、クランプジョー20をスタンド2に締め付ける。弾性部材30は、クランプジョー20の2つの部品210,220の第二端部212,222が互いに近づくように、すなわち、開口部25の大きさが小さくなるように、2つの部品210,220の第二端部212,222にそれぞれ力を加える。
【0021】
図3に示すように、本実施形態の弾性部材30は、回転軸114に取り付けられた捩りばねである。捩りばねは、回転軸114の軸方向においてクランプジョー20の2つの部品210,220の第一端部211,221の間に位置するように、回転軸114に取り付けられる。
【0022】
図4及び
図6に示すように、閉位置P21及びレスト位置P23において、捩りばねである弾性部材30の長手方向の第一端部301は、クランプジョー20の第一部品210の第二端部212に力を加え、第一部品210の第二端部212を第二部品220の第二端部222に向けて押す。また、弾性部材30の長手方向の第二端部302は、クランプジョー20の第二部品220の第二端部222に力を加え、第二部品220の第二端部222を第一部品210の第二端部212に向けて押す。
弾性部材30の第一端部301及び第二端部302の先端部は、第二直交方向においてクランプジョー20(特に2つの部品210,220の第二端部212,222)の外側に張り出している。
【0023】
図4~
図6に示すように、操作子40は、楽器用ナット1の利用者が操作することで、クランプジョー20の位置を変える。具体的に、操作子40は、利用者の操作によって、クランプジョー20の位置をレスト位置P23や閉位置P21から開位置P22に変える。
操作子40は、利用者が操作できるように、操作子40の一部がハウジング10の開口13から外側に臨むように配置されている。また、操作子40は、開口13からハウジング10の外側に抜け落ちない範囲で、ハウジング10に対して第一直交方向に移動可能に設けられている。操作子40は、クランプジョー20の閉位置P21から開位置P22への移動を規制する第一位置P41(
図4,6参照)と、クランプジョー20を開位置P22に保持させる第二位置P42(
図5参照)と、の間で第一直交方向に移動可能である。操作子40の第二位置P42は、第一直交方向において、第一位置P41よりもハウジング10の内側に変位した位置である。
【0024】
図3~
図6に示すように、操作子40は、基端部41と、先端部42と、押込み部43と、を有する。操作子40の基端部41は、ハウジング10の開口13から外側に臨むように配置される。
操作子40の先端部42は、基端部41に一体に形成されている。先端部42は、第一直交方向において、基端部41に対してハウジング10の開口13からハウジング10の内側に向けて延びている。先端部42は、第二直交方向において、クランプジョー20の2つの部品210,220の第二端部212,222が間に位置するように、2つ配置される。各先端部42は、第二直交方向において、クランプジョー20の部品210,220の第二端部212,222とハウジング10の支持面115との間に位置する。
【0025】
図4,
図6に示すように、各先端部42は、操作子40が第一位置P41に配置された状態において、クランプジョー20の部品210,220の第二端部212,222が閉位置P21から開位置P22(
図5参照)に動くことを規制する。各先端部42は、クランプジョー20の部品210,220の第二端部212,222が閉位置P21とレスト位置P23との間で移動することを規制しない。
具体的に、各先端部42は、操作子40が第一位置P41に配置された状態で、閉位置P21に配置されたクランプジョー20の部品210,220の第二端部212,222とハウジング10の支持面115との間に挟まれる。これにより、クランプジョー20の部品210,220の第二端部212,222が閉位置P21から開位置P22に動くことが、先端部42によって規制される。すなわち、
図4に示す閉位置P21において、各先端部42は、クランプジョー20及びハウジング10に接触してクランプジョー20が開くのを妨げる。
【0026】
図5に示すように、各先端部42は、操作子40が第二位置P42に配置された状態において、クランプジョー20の部品210,220の第二端部212,222の閉位置P21(
図4参照)から開位置P22への移動を許容する。また、操作子40が第二位置P42に配置された状態では、2つの先端部42が、それぞれ弾性部材30の第一端部301、第二端部302を押して、クランプジョー20の各部品210,220の第二端部212,222に加えられた弾性部材30の力を解放する。すなわち、クランプジョー20を閉じる弾性部材30の力が解除される。
【0027】
図4~
図6に示すように、操作子40の押込み部43は、先端部42と同様に、基端部41に一体に形成されている。押込み部43は、第一直交方向において、基端部41に対してハウジング10の開口13からハウジング10の内側に向けて突出している。押込み部43は、第二直交方向において、概ねクランプジョー20の2つの部品210,220の第二端部212,222の間に位置する。第二直交方向において、押込み部43の寸法は、閉位置P21における2つの部品210,220の第二端部212,222の間隔よりも大きい。
【0028】
押込み部43は、操作子40が第一位置P41に配置された状態において、クランプジョー20(特に2つの部品210,220の第二端部212,222)から離れて位置する。
押込み部43は、操作子40が第一位置P41から第二位置P42に移動することで、クランプジョー20の2つの部品210,220の第二端部212,222の間に入り込み、2つの部品210,220の第二端部212,222の間隔が広がるように、クランプジョー20を押し広げて、クランプジョー20を開位置P22に位置させる。このため、
図5に示す開位置P22においては、押込み部43がクランプジョー20を押し広げる。
【0029】
図6に示すように、操作子40が第一位置P41に配置され、かつ、開口部25にスタンド2が通っていない状態においては、クランプジョー20が弾性部材30によってレスト位置P23に配置される。具体的には、クランプジョー20の2つの部品210,220の第二端部212,222が互いに近づくように弾性部材30がこれら2つの部品210,220の第二端部212,222を押すことで、クランプジョー20がレスト位置P23に配置される。当該レスト位置P23では、クランプジョー20が操作子40から離れている。
【0030】
図3に示すように、楽器用ナット1は、操作子40がハウジング10の外側に抜け落ちないように、操作子40の移動を規制する規制構造60をさらに有する。当該規制構造60は、ハウジング10に形成された段差面61と、操作子40に設けられて段差面61に係止する係止部62と、を有する。
ハウジング10の段差面61は、第一直交方向において操作子40が第一位置P41から第二位置P42に向かう方向(Y軸負方向)に向いている。本実施形態において、段差面61は、ハウジング10の開口13をなす底板部111の縁から一方向(Z軸正方向)に突出する段差部63によって構成されている。操作子40の係止部62は、段差面61に対してY軸負方向側に位置する。
【0031】
操作子40の係止部62は、例えば操作子40が第一位置P41に配置された状態で、ハウジング10の段差面61に接触して係止する。この状態においては、操作子40をハウジング10の外側に向けて移動させることができない。すなわち、操作子40がハウジング10の外側に抜け落ちることを防ぐことができる。
なお、操作子40の係止部62は、例えば操作子40を第一位置P41よりもハウジング10の外側(Y軸正方向側)に移動させた位置においてハウジング10の段差面61に係止されてもよい。
【0032】
次に、本実施形態の楽器用ナット1を使用方法の一例について説明する。
楽器用ナット1を使用していない状態、すなわち
図6に示すように、楽器用ナット1の開口部25にスタンド2の先端部4が通っていない状態では、クランプジョー20がレスト位置P23に配置される。この状態において、開口部25の大きさは、スタンド2の先端部4が通らない程度に小さい。
【0033】
楽器用ナット1をスタンド2の先端部4に取り付ける際には、はじめに
図5に示すように、操作子40を第一位置P41から第二位置P42に移動させる。当該移動は、楽器用ナット1の利用者が、操作子40の基端部41をハウジング10の内側に押し込むことで行われる。これにより、操作子40の先端部42は、クランプジョー20のレスト位置P23や閉位置P21から開位置P22への移動を許容する。また、操作子40の先端部42は、弾性部材30の第一端部301、第二端部302を押して、クランプジョー20に加えられた弾性部材30の力を解放する。さらに、操作子40の押込み部43がクランプジョー20を押し広げて、クランプジョー20をレスト位置P23から開位置P22に移動させる。操作子40が第二位置P42に配置された状態では、押込み部43によってクランプジョー20が開位置P22に保持される。
この状態において、楽器用ナット1の開口部25にスタンド2の先端部4を通す。
【0034】
楽器用ナット1の開口部25にスタンド2の先端部4を通した後には、
図4に示すように、操作子40を第二位置P42から第一位置P41に移動させる。この移動に際しては、楽器用ナット1の利用者が操作子40の基端部41から手を離して、操作子40のハウジング10の内側への押し込みを解除するだけでよい。利用者による操作子40の押し込みを解除することで、操作子40は弾性部材30によって第一位置P41に移動する。
操作子40が第一位置P41に配置された状態では、クランプジョー20が操作子40の先端部42によって閉位置P21に保持される。また、弾性部材30がクランプジョー20に直接力を加えて、クランプジョー20をスタンド2に締め付ける。すなわち、クランプジョー20の形成面214,224が弾性部材30によってスタンド2の先端部4に押し付けられる。また、クランプジョー20の雌ねじ29がスタンド2の先端部4の雄ねじに噛み合う。
以上により、スタンド2に対する楽器用ナット1の取付が完了する。
【0035】
楽器用ナット1をスタンド2の先端部4から取り外す際には、上記した楽器用ナット1をスタンド2に取り付ける工程を逆順で実施すればよい。
楽器用ナット1は、スタンド2に対して回転させる必要が無いため、スタンド2に対して短い時間で簡単に着脱することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の楽器用ナット1は、操作子40の先端部42によってクランプジョー20を閉位置P21に保持する機構を有する。また、閉位置P21において弾性部材30がクランプジョー20に直接力を加えて、クランプジョー20をスタンド2に締め付ける。このため、クランプジョー20とスタンド2との間に働く摩擦力が大きくなる。その結果として、楽器用ナット1、スタンド2に対して直接的あるいは間接的に衝撃が加わっても、楽器用ナット1が不意にスタンド2から外れることを抑制できる。
【0037】
本実施形態では、クランプジョー20の雌ねじ29がスタンド2の雄ねじに噛み合っているが、上記したようにクランプジョー20とスタンド2との間に働く摩擦力が大きいことで、楽器用ナット1がスタンド2に対して回転することを妨げる。すなわち、楽器用ナット1がスタンド2に対して回転して外れてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態の楽器用ナット1では、弾性部材30が回転軸114に取り付けられた捩りばねである。弾性部材30が回転軸114に取り付けられることで、弾性部材30が回転軸114と別個の位置に取り付けられる場合と比較して、楽器用ナット1をよりコンパクトに構成することができる。
【0039】
また、本実施形態の楽器用ナット1では、クランプジョー20が2つの部品210,220からなる。これら2つの部品210,220は、それぞれ回転軸114に取り付けられている。このため、クランプジョー20を構成する2つの部品210,220が互いに独立して回転軸114を中心に回転することができる。これにより、クランプジョー20が1つの部品で構成される場合と比較して、クランプジョー20の劣化を抑制することができる。
【0040】
<第二実施形態>
次に、
図7~
図9を参照して本発明の第二実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0041】
図7~
図9に示すように、第二実施形態の楽器用ナット1Dは、第一実施形態と同様に、ハウジング10Dと、クランプジョー20と、弾性部材30と、操作子40Dと、を備える。さらに、第二実施形態の楽器用ナット1Dは、弾性押し構造50Dを備える。
【0042】
第二実施形態のハウジング10Dは、保持壁117Dをさらに有する。保持壁117Dは、後述する弾性押し部材51Dの第一端部を保持する。保持壁117Dは、第一直交方向において、ハウジング10Dの貫通孔113,123と開口13との間に位置する。第二実施形態において、保持壁117Dは、ハウジング本体11Dに形成され、底板部111から一方向(Z軸正方向)に突出している。なお、保持壁117Dは、例えば蓋12に形成されてもよい。保持壁117Dは、第二直交方向において、概ねクランプジョー20の2つの部品210,220の第二端部212,222の間に位置する。
【0043】
第二実施形態のハウジング10Dでは、蓋12に爪部126Dが設けられ、ハウジング本体11Dの側壁部112に当該爪部126Dを係止する被係止部116Dが形成されている。蓋12の爪部126Dをハウジング本体11Dの被係止部116Dに係止することで、蓋12がハウジング本体11Dに保持される。
【0044】
第二実施形態の操作子40Dにおいて、基端部41は後述する弾性押し部材51Dの第二端部を保持する保持部411Dを有する。操作子40Dの保持部411Dは、基端部41のうち、第一直交方向において前述した保持壁117Dと対向する位置に設けられている。本実施形態において、保持部411Dは、弾性押し部材51Dの第二端部を収容する凹部となっている。保持部411Dは、ハウジング10Dの保持壁117Dと同様に、第二直交方向において、概ねクランプジョー20の2つの部品210,220の第二端部212,222の間に位置する。
【0045】
第二実施形態の操作子40Dにおいて、押込み部43は、後述する弾性押し部材51Dと干渉しないように、第二直交方向において前述した保持部411Dの両側に位置する。これら2つの押込み部43は、第一直交方向において、それぞれクランプジョー20の2つの部品210,220の第二端部212,222に対向するように位置する。2つの押込み部43は、操作子40Dが第一位置P41から第二位置P42に移動することで、2つの部品210,220の第二端部212,222の間隔が広がるように、各部品210,220の第二端部212,222を押す。すなわち、2つの押込み部43は、第一実施形態と同様に、クランプジョー20を押し広げて開位置P22に位置させる。
【0046】
第二実施形態の操作子40Dにおいて、基端部41と各先端部42との間には窪み44Dが形成されている。当該窪み44Dには、操作子40Dが第一位置P41から第二位置P42に移動することに伴ってクランプジョー20が開位置P22に移動した際に、クランプジョー20の部品210,220の第二端部212,222が挿入される(特に
図9参照)。
【0047】
弾性押し構造50Dは、ハウジング10Dに対して、操作子40Dを第二位置P42側から第一位置P41まで弾性的に押す。本実施形態の弾性押し構造50Dは、第一直交方向に並ぶハウジング10Dの保持壁117Dと操作子40Dの保持部411Dとの間に挟まれるように配置される弾性押し部材51Dである。弾性押し部材51Dは、少なくとも操作子40Dが第一位置P41よりも第二位置P42側に位置している状態で、操作子40Dを押す弾性力が発生するように設けられればよい。
本実施形態の弾性押し部材51Dは、コイルばねである。コイルばねは、その軸方向が第一直交方向に向くように配置される。コイルばねの第一端部がハウジング10Dの保持壁117Dに保持され、コイルばねの第二端部が操作子40Dの保持部411Dに保持される。
【0048】
第二実施形態の楽器用ナット1Dは、第一実施形態と同様の規制構造60Dを有する。規制構造60Dは、第一実施形態と同様に、ハウジング10Dの段差面61Dと、操作子40Dの係止部62Dと、を有する。
ただし、第二実施形態の規制構造60Dにおいて、ハウジング10Dの段差面61Dは、ハウジング本体11Dの側壁部112に形成され、第二直交方向における操作子40Dの両側に位置する。具体的に、各段差面61Dは、第一直交方向においてハウジング10Dの内側に位置する支持面115の端部に連ねて形成されている。
一方、操作子40Dの係止部62Dは、2つの先端部42に設けられている。各係止部62Dは、ハウジング10Dの支持面115よりも第一直交方向におけるハウジング10Dの内側で、第二直交方向における操作子40Dの外側に張り出している。これにより、係止部62Dは、第一直交方向においてハウジング10Dの段差面61Dに対向する。
【0049】
図8に示すように、操作子40Dが第一位置P41に配置された状態では、操作子40Dの各係止部62Dがハウジング10Dの各段差面61Dに接触して係止する。この状態において、操作子40Dをハウジング10Dの外側に向けて移動させることはできない。すなわち、操作子40Dがハウジング10Dの外側に抜け落ちることを防ぐことができる。
なお、操作子40Dの係止部62Dは、例えば操作子40Dを第一位置P41よりもハウジング10Dの外側(Y軸正方向側)に移動させた位置においてハウジング10Dの段差面61Dに係止されてもよい。
【0050】
第二実施形態の楽器用ナット1Dによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態の楽器用ナット1Dは、操作子40Dを第二位置P42側から第一位置P41まで弾性的に押す弾性押し構造50Dをさらに備える。これにより、楽器用ナット1Dの利用者は操作子40Dを第二位置P42に移動させた後に操作子40Dから手を離すだけで、弾性押し構造50Dの弾性力によって操作子40Dを第一位置P41に復帰させることができる。すなわち、クランプジョー20を簡単かつ確実に開位置P22から閉位置P21(あるいはレスト位置P23)に戻すことができる。
【0051】
また、第二実施形態の楽器用ナット1Dでは、弾性押し構造50Dが操作子40Dを第二位置P42側から第一位置P41まで弾性的に押すことで、操作子40Dがハウジング10Dに対して不意に第一位置P41から第二位置P42に向けて動くことを抑制又は防止できる。これにより、操作子40Dがハウジング10Dに対して不意に動くことに起因して、楽器用ナット1Dから不要な音(例えば操作子40Dがハウジング10Dやクランプジョー20、弾性部材30などに当たる音)が発生することを効果的に抑制することができる。
【0052】
<第三実施形態>
次に、
図10,
図11を参照して本発明の第三実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0053】
図10,
図11に示すように、第三実施形態の楽器用ナット1Fは、ハウジング10Fと、クランプジョー20と、弾性部材30と、操作子40Fと、弾性押し構造50Fと、規制構造60Dと、を備える。
【0054】
第三実施形態のハウジング10Fは、保持壁117D(
図7~
図9参照)を有さないことを除いて、第二実施形態のハウジング10Dと概ね同様に構成されている。また、第三実施形態のハウジング10Fにおいて、蓋12(
図3,7等参照)はハウジング本体11Fに対してねじ止めによって取り付けられる。このため、ハウジング本体11Fには、第一実施形態のような爪部116(
図3参照)、第二実施形態のような被係止部116D(
図7参照)が設けられていない。
【0055】
第三実施形態の操作子40Fは、保持部411D(
図8、
図9参照)を有さないこと、及び、押込み部43の数が1つであることを除いて、第二実施形態の操作子40Dと概ね同様に構成されている。
【0056】
弾性押し構造50Fは、第二実施形態の弾性押し構造50Dと同様に、ハウジング10Fに対して、操作子40Fを第二位置P42側から第一位置P41まで弾性的に押す。ただし、第三実施形態の弾性押し構造50Fは、操作子40Fと、ハウジング10Fの内面に設けられた凸部52Fと、を有する。
【0057】
弾性押し構造50Fを構成する第三実施形態の操作子40Fでは、先端部42が押込み部43(基端部41)に対して弾性的に撓み変形可能とされている。
図10、
図11に示す操作子40Fでは、2つの先端部42がそれぞれ押込み部43に対して第二直交方向に動くように弾性的に撓み変形する。
【0058】
凸部52Fは、ハウジング10Fに一体に形成されている。凸部52Fは、第一位置P41に配置された操作子40Fの先端部42に対して、操作子40Fが第一位置P41から第二位置P42に向かう方向(Y軸負方向)に位置する。これにより、凸部52Fは、操作子40Fが第一位置P41から第二位置P42に向けて移動するしたがって先端部42を押して弾性的に撓み変形させる。そして、弾性押し構造50Fでは、先端部42が撓み変形した弾性力によって、操作子40Fが第二位置P42側から第一位置P41まで弾性的に押される。
【0059】
凸部52Fは、操作子40Fが第一位置P41から第二位置P42に向かう方向に対して傾斜する傾斜面53Fを有する。傾斜面53Fは、第一直交方向において第一位置P41に配置された先端部42に対向する。これにより、操作子40Fが第一位置P41から第二位置P42に向けて移動するにしたがって、先端部42が凸部52Fの傾斜面53Fに押されて徐々に弾性的に撓み変形する。
【0060】
また、第三実施形態の楽器用ナット1Fでは、操作子40Fが第一位置P41に位置した状態において、先端部42が凸部52Fの傾斜面53Fに接触する。これにより、傾斜面53Fによって操作子40Fを第一位置P41に保持することができる。
なお、操作子40Fが第一位置P41に位置した状態では、例えば先端部42が傾斜面53Fに接触することで弾性的に撓み変形していてもよい。この場合には、先端部42が撓み変形した弾性力によって、操作子40Fをより確実に第一位置P41に保持することができる。
【0061】
具体的に、凸部52Fは、操作子40Fの2つの先端部42にそれぞれ対応するように、第二直交方向における操作子40Fの両側に位置する。各凸部52Fは、ハウジング本体11Fの側壁部112の内面のうち、第一直交方向において、段差面61Dに対して支持面115の反対側に隣り合わせて位置する。すなわち、凸部52Fは、段差面61Dよりも第一直交方向におけるハウジング10Fの内側に位置する。また、操作子40Fが第一位置P41に配置された状態では、第一直交方向において、各先端部42に設けられた係止部62Dが凸部52Fに対向する。これにより、操作子40Fを第一位置P41から第二位置P42に向けて移動させた際には、操作子40Fの2つの先端部42の係止部62Dが、それぞれ凸部52Fに押されて、第二直交方向において互いに近づくように押込み部43に対して弾性的に撓み変形する。
【0062】
図11に示すように、第三実施形態の楽器用ナット1Fでは、操作子40Fが第二位置P42に到達した状態において、操作子40Fの先端部42(係止部62D)が凸部52Fによって押されて弾性的に撓み変形している。しかし、この状態において、凸部52Fは先端部42に対して操作子40Fが第一位置P41から第二位置P42に向かう方向に位置しない。また、この状態では、操作子40Fの先端部42が凸部52Fの傾斜面53Fに接触しない。このため、先端部42が撓み変形した弾性力によって、操作子40Fが第二位置P42から第一位置P41に向けて弾性的に押されることはない。
【0063】
ただし、第三実施形態の楽器用ナット1Fでは、第一、第二実施形態と同様に、操作子40Fが第二位置P42に配置された状態で、操作子40Fの先端部42が弾性部材30の第一端部301、第二端部302を押し、弾性部材30が弾性変形している。このため、弾性部材30の弾性力によって操作子40Fが第二位置P42から第一位置P41に向けて押される。したがって、弾性部材30の弾性力によって、第二位置P42から、先端部42が撓み変形した弾性力によって操作子40Fが第一位置P41に向けて弾性的に押される位置まで、操作子40Fを押すことができる。
【0064】
第三実施形態の楽器用ナット1Fによれば、第二実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、第三実施形態の楽器用ナット1Fは、操作子40Fを第二位置P42側から第一位置P41まで弾性的に押す弾性押し構造50Fを備える。これにより、楽器用ナット1Fの利用者は操作子40Fを第二位置P42に移動させた後に操作子40Fから手を離すだけで、弾性押し構造50Fの弾性力によって操作子40Fを第一位置P41に復帰させることができる。すなわち、クランプジョー20を簡単かつ確実に開位置P22から閉位置P21(あるいはレスト位置P23)に戻すことができる。また、操作子40Fがハウジング10Fに対して不意に第一位置P41から第二位置P42に向けて動くことを抑制又は防止できる。
【0065】
また、第三実施形態の楽器用ナット1Fでは、弾性押し構造50Fが、操作子40F及びハウジング10Fに設けられた凸部52Fによって構成されている。すなわち、楽器用ナット1Fの部品点数を増やすことなく、操作子40Fを第一位置P41に復帰させる構造を実現することができる。したがって、操作子40Fを第一位置P41に復帰させる構造を備えた楽器用ナット1Fの組立性を向上できるとともに、当該楽器用ナット1Fの製造コストを低く抑えることもできる。
【0066】
また、第三実施形態の楽器用ナット1Fでは、操作子40Fの先端部42が凸部52Fに接触する。これにより、操作子40Fを第一位置P41に保持することができる。したがって、操作子40Fが不意に第一位置P41から第二位置P42に向けて移動することをさらに抑制できる。
【0067】
また、第三実施形態の楽器用ナット1Fでは、操作子40Fが第一位置P41に位置した状態において、先端部42が凸部52Fの傾斜面53Fに接触することで先端部42を弾性的に撓み変形させることもできる。これにより、先端部42が撓み変形した弾性力によって、操作子40Fをより確実に第一位置P41に保持することができる。したがって、操作子40Fが不意に第一位置P41から第二位置P42に向けて移動することをより効果的に抑制することができる。
【0068】
第三実施形態において、凸部52Fは、例えば操作子40Fが第二位置P42に位置した状態であっても、操作子40Fの先端部42に対して操作子40Fが第一位置P41から第二位置P42に向かう方向(Y軸負方向)に位置してもよい。この場合には、操作子40Fが第二位置P42に位置していても、凸部52Fによって押された先端部42が撓み変形した弾性力によって、操作子40Fを第二位置P42から第一位置P41に向けて弾性的に押すことができる。
【0069】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0070】
本発明において、クランプジョー20を構成する第一部品210と第二部品220とは、例えば一体に形成されてもよい、すなわちクランプジョー20は1つの部品で構成されてもよい。この場合には、第一部品210、第二部品220が互いに近づいたり離れたりするように、クランプジョー20が撓み変形可能に形成されればよい。
【0071】
本発明の楽器用ナットにおいて、蓋12をハウジング本体に取り付ける構造は、第一、第二実施形態のような爪部及び被係止部、第三実施形態のようなねじ止めに限らず、任意で会ってよい。
【符号の説明】
【0072】
1,1D,1F…楽器用ナット、2…スタンド、10,10D,10F…ハウジング、20…クランプジョー、30…弾性部材、40,40D,40F…操作子、42…操作子40,40D,40Fの先端部、43…操作子40,40D,40Fの押込み部、50D,50F…弾性押し構造、52F…凸部、114…回転軸、P21…閉位置、P22…開位置、P23…レスト位置、P41…第一位置、P42…第二位置