(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075470
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】十二指腸開窓型ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/90 20130101AFI20240527BHJP
A61F 2/04 20130101ALI20240527BHJP
【FI】
A61F2/90
A61F2/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098831
(22)【出願日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202211467982.6
(32)【優先日】2022-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523229827
【氏名又は名称】台州恩澤医療中心(集団)
【氏名又は名称原語表記】Taizhou Enze Medical Center (Group)
【住所又は居所原語表記】No. 150, Ximen Street, Gucheng Street, Linhai City, Taizhou City, Zhejiang Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】葉 麗萍
(72)【発明者】
【氏名】周 申康
(72)【発明者】
【氏名】毛 ▲きん▼礼
(72)【発明者】
【氏名】韋 建宇
(72)【発明者】
【氏名】李 少偉
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA14
4C267AA44
4C267AA45
4C267AA47
4C267AA50
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB26
4C267CC23
4C267GG24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は介入医療装置の技術分野に属し、十二指腸開窓型ステントを提供する。
【解決手段】十二指腸開窓型ステントは網状側壁で囲まれ、両端が開口し、内部が中空のステント本体100を備え、ステント本体は、近位支持部11と、遠位支持部12と、及び近位支持部と遠位支持部との間に連結する開口部13とを含み、近位支持部は同一軸に順次に接続する前段部11a、中段部11b、及び後段部11cに分割され、前段部は傘口が中段部に面した傘状であり、中段部は直径が開口部の直径より小さい円筒状であり、後段部は球状又は半球状であり、後段部の最大直径は開口部の直径より大きく、且つ上記傘状の最大直径より小さい。ステント本体の表面には覆膜200を有し、開口部の側壁の一部領域には液状物質を収容して、ステント本体の内部の中空領域を通して近位支持部のポートへ流入させる非腹膜窓が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網状側壁で囲まれ、両端が開口し、内部が中空のステント本体(100)を備える十二指腸開窓型ステントであって、
前記ステント本体(100)は近位支持部(11)と、遠位支持部(12)と、及び前記近位支持部(11)と前記遠位支持部(12)との間に連結される開口部(13)と、を含み、
前記ステント本体(100)の表面には覆膜(200)を有し、且つ前記開口部(13)の側壁の一部領域には非腹膜窓(14)が設置され、当該非腹膜窓(14)は液状物質を収容して、前記ステント本体(100)の内部の中空領域を通過して前記近位支持部(11)のポートへ流されることができる。
【請求項2】
前記ステント本体(100)はその使用状態において、
前記非腹膜窓(14)は十二指腸乳頭の外側に位置し、前記非腹膜窓(14)の開口端が十二指腸乳頭の周囲の十二指腸壁と当接する、
請求項1に記載の十二指腸開窓型ステント。
【請求項3】
前記覆膜(200)は前記ステント本体(100)の両端の外側へ延伸してスカート部(300)を形成する、
請求項1に記載の十二指腸開窓型ステント。
【請求項4】
前記近位支持部(11)は同一軸に順次接続された前段部、中段部、及び後段部に分割され、
前記前段部は傘状であり、当該傘状の傘口が前記中段部に面し、
前記中段部は円筒状であり、当該円筒状の直径は前記開口部(13)の直径より小さく、
前記後段部は球状又は半球状であり、当該後段部の最大直径は前記開口部(13)の直径より大きく、且つ前記傘状の最大直径を超えない、
請求項1に記載の十二指腸開窓型ステント。
【請求項5】
前記ステント本体(100)はその使用状態において、
前記近位支持部(11)の前段部は胃の内部に位置し、当該胃の内部の内壁と当接し、
前記近位支持部(11)の中段部は幽門に位置し、
前記近位支持部(11)の後段部は十二指腸球部に位置し、当該十二指腸球部の十二指腸壁と当接する、
請求項4に記載の十二指腸開窓型ステント。
【請求項6】
前記遠位支持部(12)は球状又は半球状であり、当該遠位支持部(12)の最大直径は前記開口部(13)の直径より大きく、且つ前記近位支持部(11)の後段部の最大直径を超えない、
請求項1に記載の十二指腸開窓型ステント。
【請求項7】
前記ステント本体(100)の軸方向の全長は140~142mmである、
請求項1に記載の十二指腸開窓型ステント。
【請求項8】
前記近位支持部(11)の軸方向の長さは30~32mmであり、
前記遠位支持部(12)の軸方向の長さは16~18mmであり、且つ最小直径は24mmであり、最大直径は30mmである、
請求項7に記載の十二指腸開窓型ステント。
【請求項9】
前記近位支持部(11)の前段部の軸方向の長さは9~9.5mmであり、且つ最小直径は14mmであり、最大直径は40mmである、
請求項8に記載の十二指腸開窓型ステント。
【請求項10】
前記近位支持部(11)の後段部の軸方向の長さは11~13mmであり、且つ最大直径は36mmである、
請求項8に記載の十二指腸開窓型ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は介入医療装置の技術分野に属し、特に十二指腸開窓型ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自己拡張型金属ステントは、主に食道、十二指腸、結腸、胆道などの消化管塞ぐ疾患の治療に広く使用されており、ステントグラフトと非覆膜ステントとの二種類が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのうち、非覆膜ステントは、消化管の粘膜過形成によってステントの変位を効果的に回避できるが、同時に、ステントの取り出しが困難で、組織や臓器が損傷しやすいなどの問題にも直面している。
【0004】
また、ステントグラフトは取り出しが容易であるという利点はあるが、位置決め効果が比較的に低く、消化管内に留置した後は位置ずれが起こりやすい。また、ステントグラフトの内部が完全に塞いでいるため、一定程度の、瘻孔が破裂するリスクが存在する。例えば、十二指腸ステントグラフトで腸瘻を塞ぐ例を挙げると、ステントグラフトは瘻孔を塞ぐと同時に十二指腸乳頭も塞がれてしまい、乳頭開口部が長期間圧迫されて、胆汁や膵臓の排出に影響を及ぼし、それに、排出可能な胆汁や膵臓の一部は、ステントグラフトの外側に位置する胆汁や膵臓であり、ステントグラフトの外側でステントの表面に沿って瘻孔内に流入し、その結果、瘻孔の塞ぐ(封止)効果が弱くなったり、瘻孔の封止が失敗したりする可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を鑑み、本発明の目的は、上記背景技術の課題を解決するための十二指腸開窓型ステントを提供する。
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を提供する。
十二指腸開窓型ステントは、網状側壁で囲まれ、且つ内部が中空で両端が開口されるステント本体を備え、前記ステント本体は、近位支持部と、遠位支持部と、及び前記近位支持部と前記遠位支持部との間に連結する開口部とを備え、
前記近位支持部は順に同軸上に接続する前段部、中段部及び後段部に分割され、
前記前段部は開口が前記中段部に面した傘状であり、
前記中段部は円筒形であり、その円筒形の直径は開口部の直径よりも小さく、
前記後段部は球状または半球状であり、後段部の最大直径は開口部の直径よりも大きく、且つ前記傘状の最大直径を超えない。
【0007】
好ましくは、前記ステント本体の表面には覆膜が設けられ、且つ前記開口部の側壁の一部領域には非腹膜窓(覆膜がない窓)が設けられ、当該非腹膜窓は液状物質を収容可能で且つ通過させ、前記ステント本体の内部の中空領域を通して前記近位支持部のポートへ流させることができる。
【0008】
具体的に使用する場合、前記近位支持部の前段部は胃の内壁に接して胃の内部に位置し、前記近位支持部の中段部は幽門に位置し、前記近位支持部の後段部は十二指腸球部の十二指腸壁に接して十二指腸球部に位置し、前記非腹膜窓は十二指腸乳頭の外側に位置し、非腹膜窓の開口端は十二指腸乳頭周囲の十二指腸壁に当接する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は従来技術と比較して、以下の作用効果を有する。
【0010】
(1)ステント本体の近位支持部を順に同軸上に接続されている前段部、中段部及び後段部に分割され、そのうち、前段部は傘状で使用時に安定して胃に当接し、後段部は球状又は半球状で使用時に十二指腸球部に安定して当接し、これにより、ステント本体の全体を幽門にしっかりとはめるように保証し、ステントの位置ズレを防止し、ステントによる組織や臓器へのダメージを軽減することができる。
【0011】
(2)十二指腸乳頭の外側に開口部を設け、開口部に非腹膜窓を設置し、且つ使用時に非腹膜窓の開口端は十二指腸乳頭の周囲の十二指腸壁と当接し、これにより、乳頭から排出された胆汁や膵臓はステント内部に直接流入することができ、さらに、ステント及び近位支持部のポートを通って胃に戻ることを保証することで、胆汁や膵臓が瘻孔内に残ることを防止し、瘻孔の効果的な封止を実現する一方、他方では胆汁や膵臓の回流により胃の消化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の十二指腸開窓型ステントの斜視図である。
【
図3】本発明の十二指腸開窓型ステントの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例の図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決策を明確かつ完全に説明するが、説明される実施例は、本発明の実施形態の全部ではなく、一部にすぎない。本発明の実施例に基づいて、創造的な努力をすることなく当業者によって得られる他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に属する。また、以下の説明において、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者に本願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するためのものではない。
【0014】
図1に示すように、本実施例の十二指腸開窓型ステントは、網状側壁で囲まれて形成されるステント本体100を備え、前記ステント本体100の両端が開口し且つその内部は中空である。
【0015】
本実施例において、ステント本体100の網状側壁を形成する線材としては、Ni-Ti合金(ニチノール)であることが好ましい。ステント本体100の線材の厚さ又は直径としては、0.18mm~0.30mmであることが好ましい。しかし、本発明の線材及びその厚さ又は直径は、これに限られるものではなく、必要に応じて、材質及びサイズ範囲を選択変更することができる。例えば、線材として、ステンレス鋼、チタン合金等に代表される公知の金属又は金属合金などの、形状記憶合金を含む当技術分野で知られた任意の材料から構成することができる。また、本発明のステント本体100は、線材は網状の壁を形成し、柔らかい縫合線で網状の壁を連結した構造であってもよい。柔らかい縫合線の材質としては、例えば、シリコーン樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0016】
ステント本体100の表面には覆膜200(フィルムなどでコーディングされていること)を有し、覆膜200はステント本体100の両端の外側に延伸してスカート部300を形成し、且つステント本体100は近位支持部11と、遠位支持部12と、及び近位支持部11と遠位支持部12との間に連結する開口部13と、を含む。
【0017】
そのうち、
ステント本体100の軸方向全長は140~142mm、好ましくは141mmである。
近位支持部11は好ましく32mmであり、且つ近位支持部11は前段部11a、中段部11b及び後段部11cに分割され、前段部11a、中段部11b及び後段部11cは順に同軸上に接続されている。前段部11aは傘状であり、当該傘状の軸長は9.5mm、最小径は14mm、最大径は40mmである。当該傘状の傘口は中段部11bに面する。中段部11bは円筒状であり、且つ中段部11bの一端は前段部11aに接続し、中段部11bの直径は14mmであることが好ましい。後段部11cは球状又は半球状であり、軸方向の長さは12mm、最大直径は36mmである。
【0018】
遠位支持部12は球状又は半球状であり、遠位支持部12の的軸方向長さは17mmであり、最小直径は24mmであり、最大直径は30mmである。
【0019】
開口部13は円筒状であり、開口部13の一端は遠位支持部12に接続し、開口部13の直径は24mmであることが好ましい。また、
図2に示すように、開口部13の側壁の一部領域には非腹膜窓14(フィルムなどでコーディングされていないこと)が設けられ、非腹膜窓14は液状物質を収容且つ通過させることが可能であり、当該液状物質がステント本体100の内部の中空領域を通して近位支持部のポートに流れるようにすることができる。好ましくは、当該非腹膜窓14のサイズは8mmx45mm(当該非腹膜窓14の開口端は
図2において矢印で示される4つ稜線である)である。
【0020】
非腹膜窓14は、フィルムなどでコーディングされていない部分であり、複数の非腹膜窓穴から形成される。当該非腹膜窓穴の上においてはステント本体100の線材が設けられていない。また、柔らかい縫合線を使用している場合は、当該非腹膜窓穴の上においてはステント本体100の線材及び柔らかい縫合線の何れもが設けられていない。
【0021】
具体的に使用する場合、
A)結腸鏡の外側に、十二指腸開窓型ステントを装着し、3本の30mmスネアを使用して、それぞれ近位支持部11、遠位支持部12、及び開口部13の収縮を制御する。
B)内視鏡は、十二指腸開窓型ステント及び3本のスネアとともに消化管に入り、次のことを保証する。
近位支持部11の前段部11aは胃の内部に位置し、胃の内部の内壁に当接する。
近位支持部11の中段部11bは幽門内に位置する。
近位支持部11の後段部11cは十二指腸球内部に位置し、十二指腸球部の十二指腸壁に当接する。
非腹膜窓14は十二指腸乳頭の外側に位置し、非腹膜窓14の開口端は十二指腸乳頭の周囲の十二指腸壁に当接する。
C)3つのスネアを順番に緩めて、十二指腸開窓型ステントを解放する。
D)異物鉗子を使用して十二指腸開窓型ステントの位置を微調整する。
E)内視鏡を後退させて、十二指腸開窓型ステントによる瘻孔の封止を完了する。
【0022】
要約すると、近位支持部11において分割して配置された前段部11a、中段部11b及び後段部11cにより、十二指腸開窓型ステントの全体を幽門にしっかりとはめることで、ステントの位置ずれを防止することができる。非腹膜窓14は十二指腸乳頭から排出された胆汁や膵臓をステント内部に直接流入させ、さらにステント本体100の内部の中空領域及び近位支持部11のポートを通して胃に戻すことができ、瘻孔の効果的な封止を実現することができると共に、さらに胆汁や膵臓の回流により胃の消化を促進することができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態を図示し説明してきたが、当業者であれば、本発明の原理および精神から逸脱することなく、これらの実施形態に対してさまざまな変更、修正、および置換を行うことができることを理解することができる。本発明の要旨は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される。
【符号の説明】
【0024】
100 ステント本体
200 覆膜
300 弾性ロープ
11 近位支持部
12 遠位支持部
13 開口部
14 非腹膜窓