(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075496
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジン及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
F02D 41/04 20060101AFI20240527BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F02D41/04
F02D43/00 301C
F02D43/00 301E
F02D43/00 301K
F02D43/00 301H
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187777
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】202211464325.6
(32)【優先日】2022-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519274219
【氏名又は名称】太原理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】朱建 軍
(72)【発明者】
【氏名】李志 ▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】劉向 陽
【テーマコード(参考)】
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G301HA23
3G301JA02
3G301LA01
3G301LB01
3G301LC01
3G301MA11
3G301NE01
3G301NE06
3G301PA17Z
3G301PC05Z
3G301PD02Z
3G384AA15
3G384BA02
3G384BA05
3G384BA09
3G384DA02
3G384DA04
3G384FA04Z
3G384FA37Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジン構造及びその制御戦略を提供する。
【解決手段】温度制御可能なグロープラグを使用してさまざまなエンジン動作状況下でメタノール燃焼の温度需要を満たし、インジェクターはメタノールをエンジンの燃焼室の内部に直接吹き付け、燃焼室の内部にある温度制御可能なグロープラグによりメタノールの混合ガスを安定して確実に着火するように促進し、グロープラグの温度とシリンダー内のメタノール混合ガスの空気過剰係数を制御することにより、エンジンの異なる動作状況下での着火燃焼に最適な効果を達成させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールエンジンウォータージャケット(11)、メタノールエンジンシリンダー本体(12)、メタノールエンジンクランクケース(13)及びオイルバン(14)で構成されたエンジンシェルを含み、エンジンシェルの上部にメタノールエンジンシリンダーヘッド(5)が設置され、前記エンジンシェル内にメタノールエンジンクランクシャフト(1)及びメタノールエンジンコネクティングロッド(2)が設置され、メタノールエンジンコネクティングロッド(2)は、メタノールエンジンクランクシャフト(1)を駆動し、メタノールエンジンコネクティングロッド(2)の上端には、メタノールエンジンピストン(3)が接続され、メタノールエンジンシリンダーヘッド(5)とメタノールエンジンピストン(3)との間にシリンダーを形成し、前記メタノールエンジンシリンダーヘッド(5)にメタノールエンジン排気マニホールド(4)、メタノールインジェクター(6)、温度制御可能なグロープラグ(7)及びメタノールエンジンインテークマニホールド(8)が設置され、メタノールインジェクター(6)及び温度制御可能なグロープラグ(7)はすべて、シリンダー内に伸び、メタノールエンジンインテークマニホールド(8)の吸気入口にあるスロットル(9)、スロットル(9)が外気に連通するパイプラインに空気流量計(16)が設置され、前記メタノールインジェクター(6)、温度制御可能なグロープラグ(7)及びスロットル(9)は、メタノールエンジン電子制御ユニットECUによって制御され、電子制御ユニットECUは、メタノールエンジンの現在の負荷状態に応じて、温度調整とスロットル開度の変化を実行し、前記負荷状態は、現時点でエンジンの回転速度と有効電力に基づいてエンジンの平均有効圧力を計算して判断指標とすることを特徴とする温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジン。
【請求項2】
前記温度制御可能なグロープラグ(7)に温度制御可能なグロープラグの表面温度を測定し且つ電子制御ユニットECUに温度情報をフィードバックするために使用されるグロープラグ温度センサーが設置されることを特徴とする請求項1に記載の温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジン。
【請求項3】
前記スロットル(9)内にスロットル開度を監視して電子制御ユニットECUに位置情報をフィードバックするために使用されるスロットル位置センサーが設置されることを特徴とする請求項2に記載の温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジン。
【請求項4】
S1:エンジンが起動する、及びアイドル状態に入る場合、電子制御ユニットECUがスロットル(9)の開度を4°~8°の範囲に保持させるように制御し、この時、吸気量は小さく、空気過剰係数は0.8~1.0の範囲で制御され、温度制御可能なグロープラグ(7)の温度は、1200℃~1300℃の範囲に保持され、
S2:エンジンが安定的に加速する場合、電子制御ユニットECUは、リアルタイムで変化する燃料消費量に基づいて、スロットル(9)の開度を調整し、空気流量計(16)は、電子制御ユニットECUに空気流量の変化をフィードバックしてスロットル(9)の開度をさらに修正し、燃料消費量が増加すると同時に、スロットル開度も増加し、それにより空気過剰係数を1.4~1.8の範囲内に制御し、グロープラグの温度は1250℃~1300℃の範囲に保持され、
S3:エンジンが急加速する場合、電子制御ユニットECUは、スロットル(9)を全開にするように制御し、瞬間的な吸気量がメタノールの安定した燃焼に合っていることを保証し、グロープラグの温度は1275℃~1300℃の範囲に保持され、
S4:エンジンが安定的に減速する場合、電子制御ユニットECUが燃料供給を減らし、スロットル(9)の開度を調整し、空気流量計(16)は、電子制御ユニットECUにリアルタイム空気流量の変化をフィードバックしてスロットル(9)の開度をさらに修正し、燃料消費量が減少すると同時に、スロットル開度も減少し、それにより空気過剰係数を1.2~1.4の範囲内に制御し、グロープラグの温度は950℃~1050℃の範囲に保持され、
S5:エンジンが緊急ブレーキをかける場合、ECUは燃料供給を遮断し、この時、スロットル(9)の開度は2°~5°に調整され、グロープラグは700℃~750℃に保持される
ことを特徴とする請求項3に記載の温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジンの制御方法。
【請求項5】
前記空気過剰係数の計算プロセスは、電子制御ユニットECUがスロットル位置センサー及び空気流量センサーによって取得された情報に応じてこの時の吸気量Lを得て、次に総燃料消費量Qからこの時の理論空燃比l0及び実際空燃比L=1.29×L/Qを計算し、空気過剰係数が実際空燃比と理論空燃比の比率であり、λ=l/l0であることを特徴とする請求項4に記載の温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジンの制御方法。
【請求項6】
前記S3において、エンジンの加速プロセスが終了した後、次の安定した動作状況に入り、電子制御ユニットECUは、安定した動作状況の設定範囲に応じて、スロットル開度及びグロープラグの温度を制御し、
S31:平均有効圧力が0.2mpa~0.4mpaの場合、エンジンは小さな負荷状況であり、この時に電子制御ユニットECUは、スロットル(9)の開度を制御し、空気過剰係数λを範囲1.5≦λ≦1.8内に保持させ、電子制御ユニットECUは、グロープラグ温度センサー信号に応じてこの時の温度制御可能なグロープラグ(7)の温度を得て、温度制御可能なグロープラグ(7)の温度を制御してそれを1150℃~1200℃の範囲内に達させ、
S32:平均有効圧力が0.4mpa~0.7mpaの場合、エンジンは中型負荷状況であり、この時に電子制御ユニットECUは、スロットル(9)の開度を制御し、空気過剰係数λを範囲1.4≦λ≦1.7に保持させ、電子制御ユニットECUは、グロープラグ温度センサー信号に応じてこの時の温度制御可能なグロープラグ(7)の温度を得て、温度制御可能なグロープラグ(7)の温度を制御してそれを1050℃~1150℃に達させ、
S33:平均有効圧力が0.7mpa以上の場合、エンジンは大きな負荷状況であり、この時に電子制御ユニットECUは、スロットル(9)の開度を制御し、空気過剰係数λを範囲1.2≦λ≦1.4にさせ、電子制御ユニットECUは、グロープラグ温度センサー信号に応じてこの時の温度制御可能なグロープラグ(7)の温度を得て、温度制御可能なグロープラグ(7)の温度を制御してそれを1000℃~1050℃に達させる
ことを特徴とする請求項5に記載の温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジンの制御方法。
【請求項7】
平均有効圧力の式は
【数1】
であり、式中、P
meは平均有効圧力、τはストローク数、P
eは有効電力、V
sは単一シリンダー作業量、iはシリンダー数、nは回転速度であることを特徴とする請求項6に記載の温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両エンジン制御技術分野に属し、具体的には温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジン及びその制御方法である。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化は、これまでのところ、地球と人間にとって最も深刻な脅威要因であり、各業種はすべて、徐々に化石燃料の使用および依存を減らす。新しいタイプのクリーン燃料として、メタノールはガソリンとディーゼルを置き換えることができ、新エネルギーの重要な部分である。エンジン燃料用メタノールは、代替燃料として使用すると、元のエンジンの変化が少なくなり、元のエンジンの電力パフォーマンスを満たすことに基づいて、その経済性能を向上させ、炭素排出量を削減できる。
【0003】
圧縮点火エンジンは、低い燃料消費量、高い信頼性、良い高特性、低回転速度、および大きなトルク等の利点があり、メタノールの低熱値、高気化潜熱及び高自然発火温度の特性により、メタノールを圧縮点火しにくく、圧縮点火メタノールエンジンは、燃焼不安定性の問題を解決する必要がある。
【0004】
現在、メタノールエンジンを安定して圧縮点火させるための対策は、吸気加熱、ディーゼル点火、グロープラグ助燃などを含む。そのうち、グロープラグ助燃方法は、冷間始動性能を改善し、メタノールエンジンの点火しにくいという問題を解決することができるが、グロープラグには、短い寿命、高エネルギー消費、能耗高、動作状況で温度を変えることができないという問題があり、グロープラグ補助圧縮点火という燃焼モードを最適化するためには、さらなる措置を講じる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題を解決するために、温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジン及びその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の技術的解決手段を採用する。温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジンは、メタノールエンジンウォータージャケット、メタノールエンジンシリンダー本体、メタノールエンジンクランクケース及びオイルバンで構成されたエンジンシェルを含み、エンジンシェルの上部にメタノールエンジンシリンダーヘッドが設置され、前記エンジンシェル内にメタノールエンジンクランクシャフト及びメタノールエンジンコネクティングロッドが設置され、メタノールエンジンコネクティングロッドは、メタノールエンジンクランクシャフトを駆動し、メタノールエンジンコネクティングロッドの上端には、メタノールエンジンピストンが接続され、メタノールエンジンシリンダーヘッドとメタノールエンジンピストンとの間にシリンダーを形成し、前記メタノールエンジンシリンダーヘッドにメタノールエンジン排気マニホールド、メタノールインジェクター、温度制御可能なグロープラグ及びメタノールエンジンインテークマニホールドが設置され、メタノールインジェクター及び温度制御可能なグロープラグはすべて、シリンダー内に伸び、メタノールエンジンインテークマニホールドの吸気入口にあるスロットル、スロットルが外気に連通するパイプラインに空気流量計が設置され、前記メタノールインジェクター、温度制御可能なグロープラグ及びスロットルは、メタノールエンジン電子制御ユニットECUによって制御され、電子制御ユニットECUは、メタノールエンジンの現在の負荷状態に応じて、温度調整とスロットル開度の変化を実行し、前記負荷状態は、現時点でエンジンの回転速度と有効電力に基づいてエンジンの平均有効圧力を計算して判断指標とする。
【0007】
前記温度制御可能なグロープラグに温度制御可能なグロープラグの表面温度を測定し且つ電子制御ユニットECUに温度情報をフィードバックするために使用されるグロープラグ温度センサーが設置される。
【0008】
前記スロットル内にスロットル開度を監視して電子制御ユニットECUに位置情報をフィードバックするために使用されるスロットル位置センサーが設置される。
【0009】
温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジンの制御方法は以下のとおりである。
S1:エンジンが起動する、及びアイドル状態に入る場合、電子制御ユニットECUがスロットルの開度を4°~8°の範囲に保持させるように制御し、この時、吸気量は小さく、空気過剰係数は0.8~1.0の範囲で制御され、温度制御可能なグロープラグの温度は、1200℃~1300℃の範囲に保持される。
【0010】
S2:エンジンが安定的に加速する場合、電子制御ユニットECUは、リアルタイムで変化する燃料消費量に基づいて、スロットル9の開度を調整し、空気流量計16は、電子制御ユニットECUに空気流量の変化をフィードバックしてスロットル9の開度をさらに修正し、燃料消費量が増加すると同時に、スロットル開度も増加し、それにより空気過剰係数を1.4~1.8の範囲内に制御し、グロープラグの温度は1250℃~1300℃の範囲に保持される。
【0011】
エンジンの加速中の速度の増加とスロットルの開度の増加により、エンジンによって吸入された空気流速と流量が増加する。各サイクルの同じ吸気バルブ開放時間内に吸気量が増加し、空気流速が増加して、シリンダー軸線に垂直に流れる、組織的空気旋回流と吸気タンブル流をより速く形成し、圧縮の終わりに乱流強度を上げ、メタノール混合ガスの形成を加速して、火炎前面をしわにし、火炎前面の面積を増やし、燃えたガスと未燃ガスの間の熱伝達を加速し、燃焼速度を上げ、爆燃を抑制し、サイクルの変化を減らし、希薄燃焼能力を向上させ、メタノールエンジンの性能を向上させる。
【0012】
S3:エンジンが急加速する場合、電子制御ユニットECUは、スロットルを全開にするように制御し、瞬間的な吸気量がメタノールの安定した燃焼に合っていることを保証し、グロープラグの温度は1275℃~1300℃の範囲に保持される。
【0013】
S4:エンジンが安定的に減速する場合、電子制御ユニットECUが燃料供給を減らし、スロットル9の開度を調整し、空気流量計16は、電子制御ユニットECUにリアルタイム空気流量の変化をフィードバックしてスロットル9の開度をさらに修正し、燃料消費量が減少すると同時に、スロットル開度も減少し、それにより空気過剰係数を1.2~1.4の範囲内に制御し、グロープラグの温度は950℃~1050℃の範囲に保持される。
【0014】
S5:エンジンが緊急ブレーキをかける場合、ECUは燃料供給を遮断し、この時、スロットルの開度は2°~5°に調整され、グロープラグは700℃~750℃に保持される。
【0015】
空気過剰係数の計算プロセスは、電子制御ユニットECUがスロットル位置センサー及び空気流量センサーによって取得された情報に応じてこの時の吸気量L(m3/h)を得て、総燃料消費量Q(kg/h)からこの時の実際空燃比L=1.29×L/Qを計算し、メタノール理論空燃比L0は6.5である場合、理論吸気量はL0=l0×Q/1.29であり、空気過剰係数が実際空燃比lと理論空燃比l0の比、λ=l/l0、同時にλは、実際吸気量と理論吸気量の比でもあり、λ=L/L0である。
【0016】
前記S3において、エンジンの加速プロセスが終了した後、次の安定した動作状況に入り、電子制御ユニットECUは、安定した動作状況の設定範囲に応じて、スロットル開度及びグロープラグの温度を制御し、
S31:平均有効圧力が0.2mpa~0.4mpaの場合、エンジンは小さな負荷状況であり、この時に電子制御ユニットECUは、スロットルの開度を制御し、空気過剰係数λを範囲1.5≦λ≦1.8内に保持させ、電子制御ユニットECUは、グロープラグ温度センサー信号に応じてこの時の温度制御可能なグロープラグの温度を得て、温度制御可能なグロープラグの温度を制御してそれを1150℃~1200℃の範囲内に達させる。
【0017】
S32:平均有効圧力が0.4mpa~0.7mpaの場合、エンジンは中型負荷状況であり、この時に電子制御ユニットECUは、スロットルの開度を制御し、空気過剰係数λを範囲1.4≦λ≦1.7に保持させる。電子制御ユニットECUは、グロープラグ温度センサー信号に応じてこの時の温度制御可能なグロープラグの温度を得て、温度制御可能なグロープラグの温度を制御してそれを1050℃~1150℃に達させる。
【0018】
S33:平均有効圧力が0.7mpa以上の場合、エンジンは大きな負荷状況であり、この時に電子制御ユニットECUは、スロットルの開度を制御し、空気過剰係数λを範囲1.2≦λ≦1.4にさせ、電子制御ユニットECUは、グロープラグ温度センサー信号に応じてこの時の温度制御可能なグロープラグの温度を得て、温度制御可能なグロープラグの温度を制御してそれを1000℃~1050℃に達させる。
【0019】
平均有効圧力の式は
【0020】
【0021】
であり、式中、Pmeは平均有効圧力、τはストローク数、Peは有効電力、VSは単一シリンダー作業量、iはシリンダー数、nは回転速度である。
【発明の効果】
【0022】
従来技術と比較して、本発明には次の有益な効果がある。
1.温度制御可能なグロープラグは、実際の動作状況のニーズに応じて適切なグロープラグ温度を選択でき、小さな負荷の場合、高グロープラグ温度を選択し、大きな負荷の場合、グロープラグの温度を下げて、メタノールの混合ガスの十分な燃焼に基づいてグロープラグのエネルギー消費量を最大限に減少し、グロープラグの寿命を延ばすことを満たす。
【0023】
2.合理的な空気過剰係数は、対応するグロープラグの温度と一致し、小さな負荷の場合、グロープラグの温度が高く及び空気過剰係数により、燃焼がより十分になり、熱効率を改善し、中型および大きな負荷の場合、適切に増加する混合ガス濃度は、メタノール混合ガスの着火性能を最適化でき、より容易に圧縮点火させ、サイクル変動率を低減し、燃料消費量を減らし、未燃メタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸などの有害物質の排出を減らす。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジンの概略図である。
【
図2】本発明の温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジンのグロープラグ及びインジェクターの配置概略図である。
【
図3】小さな負荷動作状況下でスロットルの開度を伴うシリンダー内の圧力変化の曲線である。
【
図4】小さな負荷動作状況下でスロットルの開度を伴う放熱率変化の曲線である。
【
図5】小さな負荷動作状況下でスロットルの開度を伴うサイクル変動率変化の曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施例の目的、技術的解決手段、および利点をより明確にするために、以下は、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明し、明らかに、説明する実施例は本発明の実施例の一部であり、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、創造的な労働をしないという前提の下で、当業者によって得られた他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に属している。
【0026】
図1、
図2に示すように、温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジンは、メタノールエンジンウォータージャケット11、メタノールエンジンシリンダー本体12、メタノールエンジンクランクケース13及びオイルバン14で構成されたエンジンシェルを含み、エンジンシェルの上部にメタノールエンジンシリンダーヘッド5が設置され、前記エンジンシェル内にメタノールエンジンクランクシャフト1及びメタノールエンジンコネクティングロッド2が設置され、メタノールエンジンコネクティングロッド2は、メタノールエンジンクランクシャフト1を駆動し、メタノールエンジンコネクティングロッド2の上端には、メタノールエンジンピストン3が接続され、メタノールエンジンシリンダーヘッド5とメタノールエンジンピストン3との間にシリンダーを形成し、前記メタノールエンジンシリンダーヘッド5にメタノールエンジン排気マニホールド4、メタノールインジェクター6、温度制御可能なグロープラグ7及びメタノールエンジンインテークマニホールド8が設置され、メタノールインジェクター6及び温度制御可能なグロープラグ7はすべて、シリンダー内に伸び、メタノールエンジンインテークマニホールド8の吸気入口にあるスロットル9、スロットル9が外気に連通するパイプラインに空気流量計16が設置され、前記メタノールインジェクター6、温度制御可能なグロープラグ7及びスロットル9は、メタノールエンジン電子制御ユニットECUによって制御され、電子制御ユニットECUは、メタノールエンジンの現在の負荷状態に応じて、温度調整とスロットル開度の変化を実行し、前記負荷状態は、現時点でエンジンの回転速度と有効電力に基づいてエンジンの平均有効圧力を計算して判断指標とする。
【0027】
温度制御可能なグロープラグ7に温度制御可能なグロープラグの表面温度を測定し且つ電子制御ユニットECUに温度情報をフィードバックするために使用されるグロープラグ温度センサーが設置される。スロットル9内にスロットル開度を監視して電子制御ユニットECUに位置情報をフィードバックするために使用されるスロットル位置センサーが設置される。前記メタノールインジェクターの燃料噴射量は、ECUによって制御インジェクターの電源時間を制御して得られ、ECUは、電源時間に基づいて実際の燃料噴射量を計算でき、インジェクターあたりの燃料噴射の総量は、総燃料消費量である。
【0028】
グロープラグ補助圧縮点火メタノールエンジンの制御戦略は、スロットルの開度を制御することにより吸気量を変更させ、グロープラグの温度を制御して、メタノール混合ガスの燃焼を最適に達成させる。混合ガスが濃すぎると、メタノールの燃焼が不完全になり、カーボンスモーク、Co、NOxなどの有害物質の排出が増加する。混合ガスが薄すぎると、燃料の燃焼速度が低下し、この部分の混合ガスの燃焼によって放出される熱には機械仕事に変えるのが相対的に少なく、出力トルクは減少する。適切な混合ガス濃度の選択により、エンジンの性能が大幅に向上し、グロープラグ温度の選択により、メタノール混合ガスの着火性能を最適にしながらグロープラグのエネルギー消費量を減らすことができる。
【0029】
平均有効圧力の式は
【0030】
【0031】
であり、式中、Pmeは平均有効圧力、τはストローク数、Peは有効電力、Vsは単一シリンダー作業量、iはシリンダー数、nは回転速度である。この時でのエンジンの速度と有効電力に基づいて、エンジンの平均有効圧力を計算でき、平均有効圧力は、エンジンの負荷状態を判断するために重要な指標として使用できる。
【0032】
温度制御可能なグロープラグの補助する圧縮点火メタノールエンジンの制御方法は以下のとおりである。
S1:エンジンが起動する、及びアイドル状態に入る場合、電子制御ユニットECUがスロットル9の開度を4°~8°の範囲に保持させるように制御し、この時、吸気量は少なく、空気過剰係数は0.8~1.0の範囲で制御され、温度制御可能なグロープラグ7の温度は、1200℃~1300℃の範囲に保持される。温度制御可能なグロープラグ7の温度は、1200℃~1300℃の範囲に保持されると、注入されたメタノールがすぐに圧縮点火され、エンジンがすぐに起動できるように保証する。
【0033】
S2:エンジンが安定的に加速する場合、電子制御ユニットECUは、リアルタイムで変化する燃料消費量及び実際の空気流量に基づいて、スロットルの開度を調整することにより空気過剰係数を1.4~1.8の範囲内に制御する。ECUは、最初に、燃料消費量と空気流量計から電子制御ユニットECUへフィードバックされた実際の空気流量に基づいて、リアルタイムに変化する空気過剰係数λを計算する。λ≦1.4の場合、ECUは、モーターを駆動してスロットルの開度を増やし、λ≧1.8の場合、スロットルの開度を減らし、これにより、スロットルの開度が継続的に修正され、燃料消費量を増加させながら適切なスロットルの開度を増加させ、且つグロープラグの温度を1250℃~1300℃の範囲に保持させる。
【0034】
エンジンの加速中の速度の増加とスロットルの開度の増加により、エンジンによって吸入された空気流速と流量が増加する。各サイクルの同じ吸気バルブ開放時間内に吸気量が増加し、空気流速が増加して、シリンダー軸線に垂直に流れる、組織的空気旋回流と吸気タンブル流をより速く形成し、圧縮の終わりに乱流強度を上げ、メタノール混合ガスの形成を加速して、火炎前面をしわにし、火炎前面の面積を増やし、燃えたガスと未燃ガスの間の熱伝達を加速し、燃焼速度を上げ、爆燃を抑制し、サイクルの変化を減らし、希薄燃焼能力を向上させ、メタノールエンジンの性能を向上させる。
【0035】
S3:エンジンが急加速する場合、電子制御ユニットECUは、スロットル9を全開にするように制御し、瞬間的な吸気量がメタノールの安定した燃焼に合っていることを保証し、グロープラグの温度は1275℃~1300℃の範囲に保持される。エンジンの加速プロセスが終了した後、次の安定した動作状況に入り、電子制御ユニットECUは、安定した動作状況の設定範囲に応じて、スロットル開度及びグロープラグの温度を制御する。
【0036】
S31:平均有効圧力が0.2mpa~0.4mpaの場合、エンジンは小さな負荷状況であり、この時に電子制御ユニットECUは、スロットル9の開度を制御し、空気過剰係数λを範囲1.5≦λ≦1.8内に保持させ、電子制御ユニットECUは、グロープラグ温度センサー信号に応じてこの時の温度制御可能なグロープラグ7の温度を得て、温度制御可能なグロープラグ7の温度を制御してそれを1150℃~1200℃の範囲内に達させる。小さな負荷動作状況下でメタノール混合ガスの燃焼を最適な効果に達成させ、この時、エンジンの出力電力が増加し、現在の範囲内で平均有効圧力が増加する。
【0037】
S32:平均有効圧力が0.4mpa~0.7mpaの場合、エンジンは中型負荷状況であり、この時に電子制御ユニットECUは、スロットル9の開度を制御し、空気過剰係数λの範囲を1.4≦λ≦1.7にさせ、電子制御ユニットECUは、グロープラグ温度センサー信号に応じてこの時の温度制御可能なグロープラグ7の温度を得て、温度制御可能なグロープラグ7の温度を制御してそれを1050℃~1150℃に達させる。中型負荷状況下でメタノール混合ガスの燃焼を最適な効果に達成させ、この時、エンジンの出力電力が増加し、現在の範囲内で平均有効圧力が増加する。
【0038】
S33:平均有効圧力が0.7mpa以上の場合、エンジンは大きな負荷状況であり、この時に電子制御ユニットECUは、スロットル9の開度を制御し、空気過剰係数λを範囲1.2≦λ≦1.4にさせ、電子制御ユニットECUは、グロープラグ温度センサー信号に応じてこの時の温度制御可能なグロープラグ7の温度を得て、温度制御可能なグロープラグ7の温度を制御してそれを1000℃~1050℃に達させる。大きな負荷動作状況下でメタノール混合ガスの燃焼を最適な効果に達成させ、この時、エンジンの出力電力が増加し、現在の範囲内で平均有効圧力が増加する。
【0039】
S4:エンジンが安定的に減速する場合、電子制御ユニットECUが燃料供給を減らし、スロットルの開度を調整し、それにより空気過剰係数を1.2~1.4の範囲内に制御する。ECUは、最初に、燃料消費量と空気流量計から電子制御ユニットECUへフィードバックされた実際の空気流量に基づいて、リアルタイムに変化する空気過剰係数λを計算する。λ≦1.2の場合、ECUは、モーターを駆動してスロットルの開度を増やし、λ≧1.4の場合、スロットルの開度を減らし、これにより、スロットルの開度が継続的に修正され、燃料消費量を減少させると同時に、適切なスロットルの開度を減らし、且つグロープラグの温度を950℃~1050℃の範囲に保持させる。
【0040】
S5:エンジンが緊急ブレーキをかける場合、ECUは燃料供給を遮断し、この時、スロットル9の開度は2°~5°に調整され、グロープラグは700℃~750℃に保持される。
【0041】
上記の制御プロセスのさまざまなパラメーターは、従来の選択でなく、実験後の最適な選択である。実験中、同じ動作状況下でスロットル開度又はグロープラグの温度を変更するだけであり、且つ動力計、燃料消費計、燃焼分析計、排出計を使用して、出力トルク、有効出力電力、燃料消費量、シリンダー内の圧力、サイクル変動率及び排出量などのデータを得る。実験データに応じて、最適なスロットル開度及び対応する動作状況下での空気過剰係数範囲と最適なグロープラグ温度範囲を選択する。以下、小さな負荷動作状況を例とする。
【0042】
図3は、エンジン1200r/min小さな負荷動作状況で、6%~18%スロットル開度の場合のシリンダー内の圧力曲線であり、図から、スロットル開度が増加すると、シリンダー内の圧力曲線全体が上昇傾向を示し、最高圧力が徐々に上昇するが、スロットル開度が18%の場合、クランク角が10.4°で、CAシリンダー内の最高圧力は60.42barであり、開度が16%の場合、クランク角が9.5°で、CA最高シリンダー圧は62.02barであり、シリンダー内の最高圧力は、3%低下することがわかる。このことからスロットル開度が増加し続けると、シリンダーの圧力が減少し続けることがわかるため、最適なスロットル開度は16%以内に制御される。開度が16%の場合、燃料消費量は2.73kg/hで、空気流量は25.18m
3/h、対応して計算して得られた空気過剰係数はλ=1.8305である。
【0043】
図4は、エンジン1200r/min小さな負荷動作状況で、6%~18%スロットル開度の場合の放熱率曲線であり、図から、スロットル開度が増加すると、放熱率曲線全体が上昇傾向を示し、且つ開度が12%の場合、クランク角が6°、CA放熱率ピーク値が最高46.88に達し、開度が16%及び18%の場合に放熱率が低下する。12%~16%の開度範囲に放熱率が高く、16%より大きいと、放熱率が低下しすぎ、スロットル開度は12%~16%の範囲に制御する必要がある。開度が12%の場合、燃料消費量は2.58kg/hで、空気流量は19.28m
3/hであり、この場合、対応する空気過剰係数は1.4831≦λ≦1.8305である。
【0044】
図5は、エンジン1200r/min小さな負荷動作状況で、6%~18%スロットル開度の場合のサイクル変動率曲線であり、図から、スロットル開度が増加すると、サイクル変動率が徐々に高くなることがわかり、サイクル変動率が大きいことにより、異常な燃焼や失火するサイクル数が徐々に増えており、炭化水素等の不完全燃焼生成物が増加し、動的経済性は減少する。同時に、不安定な燃焼プロセスにより、振動ノイズも増加し、部品の寿命が減少する。したがって、スロットル開度は増加し続けることができず、範囲内に制御することは最適な解であることが証明されている。
【0045】
以上の実験データから現在の小さな負荷動作状況下でスロットル開度12%~16%内のエンジン動作状態が最も良いことが分かり、このスロットル開度範囲での空気流量及び燃料消費量は実験によって測定され、この時の最適な空気過剰係数範囲は約1.5~1.8であることを計算できる。また、実験からエンジンは、異なる速度の小さな負荷動作状況で最適な空気過剰係数範囲も1.5~1.8であることを証明する。
【0046】
具体的には、上記各パラメーターの選択はすべて以上のステップと類似し、実験テーブルで空気過剰係数及びグロープラグの温度の最適な範囲を測定し、ECUに書き込む。実車では、ECUによってスロットル開度及びグロープラグの温度を制御して異なる動作状況条件に応じて空気過剰係数及びグロープラグの温度を最適な範囲に安定させる。
【0047】
具体的には、空気過剰係数の範囲を制御することは、ECUが前記スロットルの位置センサー情報、空気流量センサー情報からこの時の吸気量L(m3/h)を得て、次に前記総燃料消費量Q(kg/h)からこの時の理論空燃比l及び実際の空気燃料比l0を計算し、空気過剰係数が実際の空気燃料比と理論空燃比の比の値であり、メタノールの理論空燃比が6.5であり、実際の空気燃料比l=1.29×L/Q、空気過剰係数λ=l/l0である。吸気量及び総燃料消費量を制御して空気過剰係数を制御する目的を達成することである。
【0048】
具体的には、温度制御可能なグロープラグ材料はセラミック、入力電圧範囲は20V~28V、制御可能な温度範囲は750℃~1300℃である。ECUにタイムリーに温度をフィードバックでき、コントローラーにより、温度は常に範囲内に保持され、メタノール混合ガスは、シリンダー内での着火燃焼が安定し、メタノール混合ガスの着火燃焼安定性は、エンジンの経済性及び動力性を改善する。
【0049】
本明細書に添付された図面に描かれた構造、比率、サイズ等は、当業者の理解・読解のために明細書に開示されている内容と一致させるためにのみ使用されており、本発明によって実装できる限られた条件を制限するためには使用されていないため、技術的に重要ではなく、いかなる構造の変更、比例関係の変更、またはサイズの調整は、本発明によって達成できる効果および目的に影響を与えることなく、依然として本発明に開示される技術的内容の範囲内に含まれるべきである。同時に、本明細書で引用されている「上」、「下」、「左」、「右」、「中央」及び「1つ」などの用語は、本発明の実施可能範囲を制限するのではなく、簡単な説明のためだけのものであり、技術的内容に実質的な変更を加えることなく、それらの相対的な関係の変更または調整も、本発明の実施可能範囲と見なされるべきである。
【0050】
最後に、上記の各実施例は、本発明の制限ではなく、本発明の技術的解決策を説明するためにのみ使用されることを説明する必要があり、前述の各実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、当業者は、前述の各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、又はその中の部分又は全ての技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱しないことを理解する必要がある。
【符号の説明】
【0051】
1 メタノールエンジンクランクシャフト
2 メタノールエンジンコネクティングロッド
3 メタノールエンジンピストン
4 メタノールエンジン排気マニホールド
5 メタノールエンジンシリンダーヘッド
6 メタノールインジェクター
7 温度制御可能なグロープラグ
8 メタノールエンジンインテークマニホールド
9 電子制御スロットル
10 電子制御ユニット
11 メタノールエンジンウォータージャケット
12 メタノールエンジンシリンダー本体
13 メタノールエンジンクランクケース
14 オイルバン
15 出力フランジ
16 空気流量計