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特開2024-75497紫外線照射体、紫外線照射装置、及び配管内の殺菌及び/又は静菌方法
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  • 特開-紫外線照射体、紫外線照射装置、及び配管内の殺菌及び/又は静菌方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075497
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】紫外線照射体、紫外線照射装置、及び配管内の殺菌及び/又は静菌方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20240527BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194374
(22)【出願日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2022186754
(32)【優先日】2022-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100177714
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昌平
(72)【発明者】
【氏名】篠田 晃
(72)【発明者】
【氏名】松尾 義久
(72)【発明者】
【氏名】岡田 秀希
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK25
4C058KK26
4C058KK46
4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180HH11
4C180HH19
4C180MM10
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、気体又は液体が流れる配管の内壁、特に曲部を有する配管であっても、簡便かつ効率的に紫外線によって配管内壁を殺菌及び/又は静菌可能な紫外線照射体又はその方法を提供することにある。
【解決手段】球状の光源支持体に複数の紫外線照射光源が配置されており、配置対象の配管内に挿入されて前記配管の内壁、又は前記配管内の気体若しくは液体に対して紫外線を照射する紫外線照射体を作製する。また、配管内に上記紫外線照射体又は上記紫外線照射体が屈曲性を有する連結体によって複数連結した紫外線照射装置を配置して、前記配管の内壁、又は前記配管内の気体若しくは液体に対して紫外線を照射して、前記配管内を殺菌及び/又は静菌する。
【選択図】図1



【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状の光源支持体に複数の紫外線照射光源が配置されており、
配置対象の配管内に挿入されて、前記配管の内壁、又は前記配管内の気体若しくは液体に対して紫外線を照射する紫外線照射体。
【請求項2】
前記紫外線照射光源が、波長250~390nmにピークを有する紫外線LEDであることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線照射体。
【請求項3】
前記光源支持体が、その光源支持体の外表面を覆うカバーの中に収容されていることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線照射体。
【請求項4】
前記カバーが、線材で構成された球体であり、前記光源支持体が少なくとも1つの支持体保持具を介して前記カバー内に収容されていることを特徴とする、請求項3に記載の紫外線照射体。
【請求項5】
前記光源支持体の全部又は一部が、紫外線を反射する材質からなることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線照射体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の紫外線照射体が屈曲性を有する連結体によって複数連結した紫外線照射装置。
【請求項7】
配管内に請求項1~5のいずれかに記載の紫外線照射体又は請求項6に記載の紫外線照射装置を配置して、前記配管の内壁、又は前記配管内の気体若しくは液体に対して紫外線を照射することを特徴とする、前記配管内の殺菌及び/又は静菌方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射体、紫外線照射装置、及び配管内の殺菌及び/又は静菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配管内を流れる、あるいは配管内にとどまる気体や液体に含有されたカビ、細菌又はウイルスは、配管の内壁や配管出口等に付着若しくは増殖してしまう。衛生的な観点からこのカビ、細菌又はウイルスを除去する必要があるが、その手法としては、一般的には物理的な手法、化学的手法又は光学的手法が広く使われている。具体的には、ヘラやスクライバーあるいは流水による物理的な手法や、洗剤若しくは薬品などによる化学的手法や、紫外線照射などによる光学的手法が用いられている。
【0003】
上記物理的な手法では、配管の内壁や配管出口等に対して力を加えることにより、それらが損傷してしまう。また、上記化学的手法では、洗剤や薬品による配管の内壁や配管出口等の変質若しくは劣化が懸念されるとともに洗剤・薬品の残留も問題になっていた。さらに、光学的手法では、たとえば紫外線を用いる場合に、殺菌したい配管、特に曲部を有する配管内に紫外線照射装置を設置することは容易ではなかった。
【0004】
また、従来は、配管の入口又は出口で殺菌処理を行うことのみに着目されている技術が多かった。しかしながら、配管の内壁自体にカビ、細菌又はウイルスが付着していた場合には、たとえ入口又は出口のみで殺菌や除去したとしても、その効果は不十分であった。
【0005】
配管の殺菌技術に関しては、たとえば、紫外線を照射して殺菌を行う加圧流体殺菌装置であって、加圧して吸気などのガスの体積を小さくすることにより短時間で効率よく殺菌する装置(特許文献1参照)や、殺菌箱内を昇降するように紫外線灯を設置し、被処理物の端部等の必要な個所をむらなく効率的に照射する殺菌装置(特許文献2参照)や、建物の吸気配管途中に設けられ、空気を導入する殺菌ボックスと紫外線殺菌ランプを備えた、吸気配管用空気殺菌装置(特許文献3参照)や、紫外線照射時間を長くするために、複数枚の平板からなる導風板を備えた紫外線照射空気殺菌装置(特許文献4参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-064111号公報
【特許文献2】特開平7-284520号公報
【特許文献3】実登3119993号公報
【特許文献4】特開2016-032620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、気体又は液体が流れる配管の内壁、特に曲部を有する配管であっても、簡便かつ効率的に紫外線によって配管内を殺菌若しくは静菌可能な紫外線照射体又はその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、紫外線の照射が配管内に広く照射されるように、複数の紫外線照射光源を球状の光源支持体に配置することを見出した。さらにその光源支持体を、屈曲性を有する連結体で複数連結することで、曲部を有する配管であっても配管内を殺菌若しくは静菌可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]球状の光源支持体に複数の紫外線照射光源が配置されており、
配置対象の配管内に挿入されて、前記配管の内壁、又は前記配管内の気体若しくは液体に対して紫外線を照射する紫外線照射体。
[2]前記紫外線照射光源が、波長250~390nmにピークを有する紫外線LEDであることを特徴とする、上記[1]に記載の紫外線照射体。
[3]前記光源支持体が、その光源支持体の外表面を覆うカバーの中に収容されていることを特徴とする、上記[1]に記載の紫外線照射体。
[4]前記カバーが、線材で構成された球体であり、前記光源支持体が少なくとも1つの支持体保持具を介して前記カバー内に収容されていることを特徴とする、上記[3]に記載の紫外線照射体。
[5]前記光源支持体の全部又は一部が、紫外線を反射する材質からなることを特徴とする、上記[1]に記載の紫外線照射体。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載の紫外線照射体が屈曲性を有する連結体によって複数連結した紫外線照射装置。
[7]配管内に上記[1]~[5]のいずれかに記載の紫外線照射体又は上記[6]に記載の紫外線照射装置を配置して、前記配管の内壁、又は前記配管内の気体若しくは液体に対して紫外線を照射することを特徴とする、前記配管内の殺菌及び/又は静菌方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の紫外線照射体により、配管の内壁、又は前記配管内の気体若しくは液体を殺菌及び/又は静菌することが可能となる。また、本発明の紫外線照射装置は、曲部を有する配管の殺菌及び/又は静菌も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の紫外線照射体の一態様を表す概念図である。
図2】本発明の紫外線照射体において、配線が光源支持体の貫通孔を介して光源支持体内に接続している態様を表す概念図である。
図3】本発明の紫外線照射体において、光源支持体が紫外線透過性のプラスチックで構成された球体のカバーに収容されている態様を表す概念図である。
図4】本発明の紫外線照射体において、光源支持体が線材で構成されたカバーに収容されている態様を表す概念図である。
図5】本発明の紫外線照射体において、スペーサーを4つ備えた態様を表す概念図である。
図6】本発明の紫外線照射装置の第1の態様を表す概念図である。
図7】本発明の紫外線照射装置の第2の態様を表す概念図である。
図8】紫外線照射装置を配管内に配置する方法の一態様を表す概念図である。
図9】「静菌作用の評価」において用いた、寒天片を貼付けたカプセルであって、各寒天片に番号をつけた図である。
図10】「静菌作用の評価」において用いた、カプセル内に紫外線照射体を設置した状態の写真である。
図11】「静菌作用の評価」において、72時間培養後のカプセルの内側及び寒天片の写真である。
図12】「殺菌作用の評価」において「全方位照射型LED-UVボール」又は「局所照射型LED-片面スティック」を用いて照射するイメージを示す図である。
図13】「殺菌作用の評価」において、カプセルの内側のそれぞれの位置の寒天片における青カビの生存率を算出したグラフである。
図14】「配管内での紫外線照射」において用いた、紫外線照射体を5つ連結した紫外線照射装置の写真である。
図15】「配管内での紫外線照射」において、紫外線を5分間照射後の紫外線感光紙の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の紫外線照射体は、球状の光源支持体に複数の紫外線照射光源が配置されており、配置対象の配管内に挿入されて、前記配管の内壁、又は前記配管内の気体若しくは液体に対して紫外線を照射する紫外線照射体であればよく、以下、「本件紫外線照射体」ともいう。また、本発明の紫外線照射装置は、本件紫外線照射体が屈曲性を有する連結体によって複数連結した紫外線照射装置であればよく、以下、「本件紫外線照射装置」ともいう。さらに、本発明の配管内の殺菌及び/又は静菌方法は、配管内に本件紫外線照射体又は本件紫外線照射装置を配置して、前記配管の内壁、又は前記配管内の気体若しくは液体に対して紫外線を照射することを特徴とする、前記配管内の殺菌及び/又は静菌方法であればよく、以下、「本件配管内の殺菌方法」ともいう。なお、本明細書において、「殺菌」とは、微生物が死滅することを意味するが、かかる「殺菌」には、ウイルスの不活化も包含する。また、「静菌」とは、微生物の増殖を抑制することを意味する。
【0013】
(紫外線照射体)
本明細書における紫外線照射光源としては、紫外線LED、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノン水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプを挙げることができる。ここで、上記紫外線としては、波長が180~400nm、好ましくは250~390nmにピークを有する紫外線を挙げることができる。なお、上記紫外線照射光源と共に、赤外線照射光源や可視光照射光源を備えてもよい。赤外線照射光源としては、たとえば800~1100nmにピークを有する赤外線照射光源を挙げることができ、可視光照射光源としては、たとえば390~700nmにピークを有する可視光照射光源を挙げることができる。上記紫外線は肉眼で見えない若しくは見えづらいため、上記可視光照射光源をさらに備えることで、肉眼で紫外線照射の状況や通電状況も把握することが可能となる。
【0014】
本明細書における球状の光源支持体には、複数の紫外線照射光源が配置されている。光源支持体に対する紫外線照射光源の配置は特に制限されず、光源支持体の表面に紫外線照射光源が設置されていても、光源支持体に紫外線照射光源が埋設されていても、光源支持体の内側に紫外線照射光源が設けられていてもよい。また、紫外線照射光源の光源支持体への固定方法は特に限定されず、光源支持体の表面にソケット等を用いて着脱自在に設置されていてもよく、接着剤などで接着、若しくは嵌合部により嵌合されてもよく、コード若しくはひもなどで固定されていてもよい。さらに、防水ソケット等の防水機能を有する器具で紫外線照射光源を光源支持体に固定してもよい。なお、上記球状とは、真球であっても楕円球状であってもよく、またこれらに類似した形状であってもよい。
【0015】
上記光源支持体の材質としては、前記紫外線照射光源を支持できる限り特に制限されず、プラスチック、ガラス、金属、ゴム等を挙げることができる。また、上記光源支持体の全部又は一部の材質として、配管内に設置した場合に、配管内での紫外線の照射効率をより高める観点から、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、ステンレス、鉄等の紫外線を反射する材質を用いてもよい。さらに、上記光源支持体において、上記紫外線を反射する材質で表面をコーティングすることもできる。ただし、光源支持体の内側に紫外線照射光源を設ける場合は、上記光源支持体の材質は紫外線透過性の材質である。
【0016】
上記光源支持体の大きさとしては、配置対象の配管の大きさにより適宜調整可能であるが、直径若しくは長径が1~30cm、2~20cm、3~10cmを挙げることができる。
【0017】
前記紫外線照射光源は、前記光源支持体から3次元的に概ね全方向に紫外線を照射可能となるように前記光源支持体に配置されていればよく、紫外線照射光源の数としては特に制限されないが、2~100個、好ましくは4~80個、より好ましくは6~65個を挙げることができる。また、それぞれの紫外線照射光源は同一であっても異なる波長を照射するものであってもよい。さらに、それぞれの紫外線照射光源はそれぞれの間隔が均等に配置されていることが好ましい。このように紫外線照射光源を光源支持体に設けることによって、光源支持体自体が配管内で回転してあらゆる方向を向いても紫外線放射を配管内に概ね全方向に照射することができる。その結果、配置対象の配管内に挿入した場合に、その配管の内壁、又は前記配管内の気体若しくは液体に対して紫外線を照射して、配管内を均一に殺菌及び/又は静菌することが可能となる。なお、上記「概ね全方向」とは、厳密な意味での全方向ではなく、3次元的に概ねすべての方向という意味である。
【0018】
上記光源支持体は、その光源支持体の外表面を覆うカバーの中に収容されていてもよい。上記カバーとしては、紫外線透過性のプラスチック等の材質で形成された球体や、線材で構成された球体を挙げることができる。さらに、上記カバーを用いる場合には、前記光源支持体が少なくとも1つの支持体保持具、好ましくは2つの支持体保持具を介して上記カバー内に収容されていることが好ましい。具体的には、カバーの極位置等の所定の位置からカバーの内側に向けた棒状の支持体保持具を備え、その支持体保持具によって上記光源支持体が上記カバー内で宙づり状に配置される。上記支持体保持具はプラスチック、金属などの収縮しない材質であっても、収縮性又は弾力性を有する材質であってもよい。また、上記支持体保持具に中空を備え、その中空を介してカバーの外から光源支持体に配線を通してもよい。このように上記光源支持体をカバー内に宙づり状に配置することによって、紫外線照射光源が配管と接して損傷することを防ぐと共に、配管の内壁の汚れが紫外線照射光源に付着して紫外線照射量が低減するのを抑制することが可能となるほか、上記紫外線照射光源がより配管の中央付近に配置されることによる配管内への均一な紫外線照射を実現できる。
【0019】
上記カバーとして、紫外線透過性のプラスチック等の材質で形成された球体を用いる場合においては、外部電源からの配線を通すための貫通孔を備えることが好ましい。上記貫通孔は、上記カバーを構成する球体の表面の一箇所、若しくは上記球体の中心を通る直線と球体の表面との交点2箇所とすることが好ましい。上記交点の2箇所とし、上記配線が上記光源支持体の中心を通るようにした場合に、支持体保持具を備えなくても上記カバーの中央に上記光源支持体を配置することが可能となる。
【0020】
上記光源支持体は、配管の内壁との空間を支えるスペーサーを設けてもよい。このスペーサーを設けることによって光源支持体を配管の中心付近に配置することができるほか、紫外線照射光源が直接配管の内壁に触れること、及びそれによる紫外線照射光源の汚損を回避することが可能となる。
【0021】
スペーサーの数としては特に制限されないが、2つ以上であることが好ましく、3つ、4つ、5つ、6つを挙げることができ、互いに同一平面上に配置されることが好ましい。また、それぞれのスペーサーは、光源支持体の表面に設置され、その長手方向の軸が光源支持体の中心に向かうように配置されることが好ましい。スペーサーの材質としては特に制限されず、プラスチック、ガラス、金属、ゴム、エラストマー、シリコン等を挙げることができる。また、紫外線透過性の材質であってもよい。
【0022】
上記スペーサーの長さは、光源支持体と配管の内壁との距離に応じて適宜調節できるが、柔軟性をもつ材質からなる場合は、光源支持体と配管の内壁との距離より長くてもよい。また、配管のサイズに応じて配管に設置する前に適正な長さとなるようにスペーサーを切断して用いてもよい。一方、上記スペーサーが柔軟性を有さない材質からなる場合は、光源支持体と配管の内壁との距離と同じか、短いことが好ましい。また、スペーサーそれぞれの長さは互いに同じでも異なっていてもよい。
【0023】
上記スペーサーは中空形態であってもよい。この場合、光源支持体の表面の紫外線照射光源の上にかぶせるように設置してもよく、中空形態であることにより、スペーサーの中を通して配管の内壁付近にも紫外線照射光源からの紫外線を照射することが可能となる。
【0024】
後述する本件紫外線照射装置として上記光源支持体を用いる場合には、上記光源支持体に突起部を備えることが好ましい。この突起部としては、たとえば中心に穴を有する突起やフック形状の突起とすることができ、複数の光源支持体をその突起部に備える穴やフック形状を利用して連結体で係合することが可能となる。
【0025】
また、上記紫外線照射光源への電気の供給は、外部電源からの配線を上記光源支持体内に引き込み、上記光源支持体内でその配線から電気を供給する方法や、上記光源支持体内に電池を内蔵して電気を供給する方法を挙げることができる。なお、外部電源からの配線を上記光源支持体内に引き込む場合には、上記光源支持体に上記配線を通すための貫通孔を備えることが好ましい。さらに、一部の光源支持体内で電気の供給が何らかの理由により切れた場合でも他の光源支持体内での電気の供給が維持されるように、それぞれの紫外線照射光源への電気の供給は並列に接続することが好ましい。
【0026】
(紫外線照射装置)
本件紫外線照射装置は、上記本件光源支持体が屈曲性を有する連結体によって複数連結したものであり、配管内に配置した場合に、より効率的に配管の内壁、又は前記配管内の気体若しくは液体を殺菌及び/又は静菌可能となる。上記複数連結としては、2個以上が連結していることを意味し、下限としては例えば3個以上、5個以上、10個以上、20個以上でもよく、上限としては例えば1000個以下、500個以下、100個以下であってもよい。本件光源支持体が複数連結することにより、配管内の紫外線照射量や配管内での紫外線照射領域が増加し、より殺菌及び/又は静菌の効果を高めることができる。さらに、上記本件光源支持体を連結することで、配管内における配管内の流体、具体的には気体や液体の滞留時間を長くすることができる。
【0027】
上記屈曲性を有する連結体は、本件光源支持体同士を連結すると共に、屈曲性を有することで曲部を有する配管内に本件紫外線照射装置を配置する際に、配管に沿って本件紫外線照射装置を構成する複数の本件光源支持体が配置される。上記屈曲性を有する連結体としては、チェーン状、ロープ状、チューブ状、蛇腹状、線状若しくは棒状等の屈曲性を有する連結体を挙げることができる。この連結体の材質としては、ステンレス、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、エラストマー、シリコンを挙げることができる。
【0028】
本件紫外線照射装置に用いる本件光源支持体には、上述した突起部を備えててもよく、この突起部に連結体を係合することで、複数の本件光源支持体が連結体を介して連結することができる。なお、複数の本件光源支持体は、上記連結体だけでなく、上記電源からの配線によって連結されてもよい。ただし、本件光源支持体同士を連結する機能を果たす部位の上記連結体の長さは、上記配線の長さよりも短い方が好ましく、この場合は、本件紫外線照射装置の一端を引っ張った際に配線に負荷がなく、すなわち配線に張力が加わることなくそれぞれの本件光源支持体をつらなって移動させることが可能となる。
【0029】
さらに、上記屈曲性を有する連結体は、蛇腹の筒状連結管であってもよい。連結体を筒状連結管とすることで、その筒状連結管の中に配線を通すことができる。この筒状連結管により、光源支持体同士を一定の距離を保持した状態で連結することや、いずれかの光源支持体を押したり引くことで連結した光学支持体全体を動かすことが可能となる。さらに、この筒状連結管により配線が保護されることから、配線の切断を防止することが可能となる。
【0030】
上記本件光源支持体が屈曲性を有する連結体によって複数連結していることから、湾曲した配管内にも本件紫外線照射装置を配置することが可能となる。さらには、配管内への本件紫外線照射装置の出し入れが容易となり、本件紫外線照射装置のメンテナンス時に作業効率が向上する。
【0031】
(配管内の殺菌及び/又は静菌方法)
本件配管内の殺菌及び/又は静菌方法において、紫外線の照射時間は、連続的に照射しても、所定の間隔で照射してもよく、配管の紫外線による劣化を防ぐ観点からは所定の間隔で照射することが好ましい。所定の間隔としては、殺菌を目的とする場合、静菌を目的とする場合等の目的に応じて適宜調整できるが、たとえば24時間中に8時間のみや、30分間中に1分のみを挙げることができる。
【0032】
配管内に本件紫外線照射体又は本件紫外線照射装置を配置する方法としては、たとえば本件紫外線照射体(ただし、本件紫外線照射装置を配置する場合には連続する複数の本件紫外線照射体の一端、一部又はすべての紫外線照射体)にワイヤー状の配管ガイドを連結し、その配管ガイドを配管内に入れることで本件紫外線照射体も配管内に配置する方法を挙げることができる。配管が曲部を有する場合には、上記配管ガイドとして屈曲性を有する材質を用いることが好ましい。また、他の方法1として、本件紫外線照射体に磁石又は磁石につく金属を備えて配管の入口又は配管内に置き、配管の出口から本件紫外線照射体と磁力によって結合する物質を備えた磁気ガイドを挿入して、上記磁気ガイドと本件紫外線照射体を連結し、出口側から上記磁気ガイドを引くことで本件紫外線照射体を所望の配管内に誘導して配置する方法を挙げることができる。なお、他の方法2として、上記磁力を利用する方法の代わりに、フックなどの係合構造を利用してもよい。さらに、他の方法3として、本件紫外線照射体に自走機能を備え、遠隔によりその自走機能を制御して本件紫外線照射体を配管内の所定の位置に配置してもよい。
【実施例0033】
以下、図面を参照にし、本件紫外線照射体又は本件紫外線照射装置を説明する。
図1は、本件紫外線照射体1の一態様を表す概念図である。球体の光源支持体11の表面に所定の間隔で紫外線LED12が配置されている。光源支持体11には、貫通孔13があり、その貫通孔13を介して外部電源からの配線14が光源支持体11内へ入り、紫外線LED12と光源支持体11の中で接続されて紫外線LED12に電気を供給している。
【0034】
図2は、紫外線照射体1の別の態様を表す概念図であって、配線14が光源支持体11の表面の貫通孔13a、13bを介して光源支持体11内に接続している。配線14は、光源支持体11の中で各紫外線LED12と並列に接続されて紫外線LED12に電気を供給している。
【0035】
図3は、紫外線照射体1において、光源支持体11が紫外線透過性のプラスチックで構成された球体のカバー21に収容されている態様を表す概念図である。光源支持体11が支持体保持具22を介してカバー21内に収容されており、紫外線LED12がカバー21の内側に収まるようになっている。また、光源支持体11がカバー21の中央に配置されるようになっている。配線14は光源支持体11の表面にある配線接続部23を介して接続されており、支持体保持具22に備えた中空を介して光源支持体11内で紫外線LED12と接続している。
【0036】
図4は、紫外線照射体1において、光源支持体11が線材で構成されたカバー21に収容されている態様を表す概念図である。光源支持体11が支持体保持具22を介して、線材で構成されたカバー21内に収容されており、紫外線LED12がカバー21の内側に収まるようになっている。また、光源支持体11がカバー21の中央に配置されるようになっている。配線14が支持体保持具22の中空を介して光源支持体11内に接続している。
【0037】
図5は、紫外線照射体1において、光源支持体11に中空で円柱形態のスペーサー27が4つほど同一平面上に備えられている態様を表す概念図である。スペーサー27により、配管の内壁と紫外線照射体1との距離を一定以上に保つようになっている。
【0038】
図6は、紫外線照射装置2の第1の態様を表す概念図であり、光源支持体11が屈曲性を有する連結体24を介して4つ連結している態様である。連結体24は金属性の環状鎖を用いており、光源支持体11の表面にある突起部25の穴26を介して光源支持体11と連結体24が係合している。さらに、外部電源に接続した配線14が並列に各光源支持体11へ接続されている。連結体24の長さは、光源支持体同士を接続する長さの配線14よりも短くなっている。
【0039】
図7は、紫外線照射装置2の第2の態様を表す概念図であり、中に配線14を通した屈曲性を有し蛇腹の筒状連結管28を介して光源支持体11が連結している態様である。筒状連結管28により光源支持体11が一定の距離を保っている。また、4つのスペーサー27により光源支持体11が配管31の中心部に配置されている。
【0040】
図8は、紫外線照射装置2を配管31内に配置する方法の一態様を表す概念図である。紫外線照射体1にワイヤー状の配管ガイド32を連結し、その配管ガイド32を配管31内に入れて配管31の先から引き込むことで紫外線照射装置2も配管31内に配置させることができる。
【0041】
[静菌作用の評価]
270nmの紫外線及び390nmの紫外線を照射可能な紫外線LEDを球状(直径8.5cmの真球)の光源支持体の表面に均等に53個設置した紫外線照射体を作製した。次に、カビが付着した配管のモデルとして、青カビとしてPenicillium roquefortiを付着した濾紙片(直径5mm円)を載せた寒天片(2cm×2cm)を34個ほど貼付けたカプセル(直径14cm:寒天片を右半球(R)及び左半球(L)にそれぞれ17個貼付け)を準備し、前記カプセル内の中心に上記紫外線照射体が配置されるようにして、72時間24℃の冷暗所で青カビを培養した。上記カプセルの右半球(R)及び左半球(L)において、各寒天片に番号をつけたものを図9に、実際に実験に用いた、前記カプセル内に紫外線照射体を設置した状態の写真を図10に示す。図10において、配線14が配線接続部23に接続されており、光源支持体11は支持体保持具22を介してカバー21内に収容されている。
【0042】
72時間の培養中、LED照射は16時間おきに8時間照射した(8時間×3回)。コントロールとして、紫外線照射なし以外は上記と同じとした。なお、390nmの紫外線を照射可能な紫外線LEDは、肉眼で視認可能とするために設けた。72時間カビを培養後のカプセル(右半球)の内側及び寒天片の写真を図11に示す。
【0043】
図11より、紫外線を照射した場合には寒天片にカビの増殖が観察されなかった。一方、コントロールでは寒天片にカビの増殖が観察された。したがって、上記紫外線照射体を用いた270nmの紫外線照射により、カビの増殖を抑制できること、すなわちカビの静菌効果があることが確認された。
【0044】
[殺菌作用の評価]
上記静菌作用の評価で作製した紫外線照射体(以下、「全方位照射型LED-UVボール」ともいう)は、360度(全方位)紫外線を照射することが可能である。そこで、配管内に上記全方位照射型LED-UVボールを用いた場合と、配管内の一箇所に照射角が30~45度のLEDを設置して、所定の領域だけにLED照射した場合とで配管内の殺菌効果を比較するモデルとして以下の配管を模した殺菌作用評価用の実験を行った。
【0045】
全方位照射型LED-UVボールを用いたモデルとしては、上記静菌作用の評価と同様に、内側に青カビとしてPenicillium roquefortiを付着した濾紙片を載せた寒天片を34個ほど貼付けたカプセルを準備し、前記カプセル内の中心に上記紫外線照射体が配置されるようにして、72時間24℃の冷暗所で培養した。一方、所定の領域だけにLED照射した場合のモデルとしては、上記静菌作用の評価に用いた、内側に青カビとしてPenicillium roquefortiを付着した濾紙片を載せた寒天片を34個ほど貼付けたカプセルの内側の極位置に1箇所ほど270nmの紫外線及び390nmの紫外線を照射可能な紫外線LED(以下、「局所照射型LED-片面スティック」ともいう)を設けて、72時間24℃の冷暗所で培養した。それぞれの照射のイメージを図12に、カプセルの内側のそれぞれの位置の寒天片における青カビの生存率Indexを算出したグラフを図13に示す。なお、図13における縦軸の生存率Indexは下記の式で計算した。
生存率Index(%) = 照射後の単位面積あたりのカビの占有面積/照射前の単位面積あたりのカビの占有面積 × 100
また、図13中、横軸のL1~17、R1~17は、それぞれ図9に示すカプセル内の位置の寒天片を示す。
【0046】
その結果、図13で示すように、対照である局所照射型LED-片面スティックでは殺菌作用が限定的であり、照射方向以外のカビは殺菌されなかった。一方、全方位照射型LED-UVボールを用いた場合には、全方向に対して殺菌作用が確認され、局所照射型LED-片面スティックに対する優位性が確認された。
【0047】
[配管内での紫外線照射]
配管内に紫外線照射装置を設置して紫外線を照射し、紫外線照射量を確認した。直径10cmの塩ビ管の内壁に紫外線感光紙であるUVスケール(浅沼商会社)を貼付け、その塩ビ管内に図14に示す紫外線照射装置2を入れた後、電圧5vで5分間照射した。紫外線照射装置2は、270nmの紫外線及び390nmの紫外線を照射可能な紫外線LEDを球状(直径4cmの真球)の光源支持体の表面に10個設置した紫外線照射体を5つ連結して作製した。LEDは着脱自在なソケットを介して光源支持体11に固定されている。また光源支持体11には4つのスペーサー27が備えられており、スペーサー27によって紫外線照射装置2が塩ビ管の中央に配置されるようになっている。5分間照射後の紫外線感光紙UVスケールを図15に示す。
【0048】
UVスケールに付属の標準色見本との比較や発色標準チャートにより、照射後のUVスケールの発色濃度は0.25~0.75であり、積算光量は10~400(mJ/cm)であった。たとえば青カビの殺菌線量は13mJ/cmであることから、青カビの場合は上記積算光量を基に照射時間を算出して殺菌することが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1 紫外線照射体
2 紫外線照射装置
11 光源支持体
12 紫外線LED
13 貫通孔
14 配線
21 カバー
22 支持体保持具
23 配線接続部
24 連結体
25 突起部
26 穴
27 スペーサー
28 筒状連結管
31 配管
32 配線ガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15