(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075505
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】作業用梯子の吊下設置構造物
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
E02D29/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196328
(22)【出願日】2023-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2022186235
(32)【優先日】2022-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】509292412
【氏名又は名称】特殊梯子製作所有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】寺本 隆
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸成
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147BA07
2D147BA08
(57)【要約】
【課題】 マンホールの上面付近の地面で容易に組み立てることができ、作業用梯子をマンホールの上面から容易にアクセスできる状態に吊下設置する。
【解決手段】 作業用梯子の吊下設置構造物100は、マンホールの上面周囲付近に立設するフレーム体110と、フレーム体110同士を横方向に連結する連結部120とマンホール200の穴の上方付近を横切るように渡して掛ける桿体130および第2の桿体140を備え、作業用梯子160を桿体130から吊下部材164を介してマンホール200の穴に向けて下方に吊下する。安全装置150を第2の桿体140から作業員の装着具に取り付ける。桿体130が、マンホール200の上方を横切るように渡して掛け止めする長さを備えた棒状部131と落下防止体132を備え、第2の桿体140も第2の棒状部141と第2の落下防止体142を備えた構成が好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール内部で作業を行う作業員が昇降する作業用梯子を作業可能に現場で設置、撤去可能な作業用梯子の設置構造物であって、
前記作業用梯子と、
少なくとも脚部を備え、前記マンホールの上面周囲付近に立設するフレーム体と、
前記フレーム体同士を横方向に連結する連結部と、
前記フレーム体に取り付け、前記マンホールの穴の上方付近を横切るように渡して掛ける桿体を備え、
前記作業用梯子が前記桿体に吊下する吊下部材を備え、
前記桿体から前記吊下部材を介して前記マンホールの穴に向けて下方に前記作業用梯子を吊下することを特徴とする作業用梯子の吊下設置構造物。
【請求項2】
前記桿体が、前記マンホールの上方を横切るように渡して掛け止めする長さを備えた棒状部と落下防止体を備え、
前記落下防止体が、前記マンホールの径よりも大きい径の円板状部材を含む構造物、または、前記棒状部との組み合わせにおいていずれの辺もマンホールの径よりも長い十字状構造物を形成する補助棒材とを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の作業用梯子の吊下設置構造物。
【請求項3】
前記フレーム体に直接取り付けるまたは前記フレーム体に取り付けた支柱部材を介して取り付ける、前記マンホールの穴の上方を横切るように渡して掛ける第2の桿体と、
前記第2の桿体と前記作業員の装着具とを連結する安全装置を備え、
前記作業員の体躯が前記装着具と前記安全装置を介して、前記第2の桿体により支持された状態で作業が可能であることを特徴とする請求項1に記載の作業用梯子の吊下設置構造物。
【請求項4】
前記第2の桿体が、前記マンホールの上方を横切るように渡して掛け止めする長さを備えた第2の棒状部と第2の落下防止体を備え、
前記第2の落下防止体が、前記マンホールの径よりも大きい径の第2の円板状部材を含む構造物、または、前記第2の棒状部との組み合わせにおいていずれの辺もマンホールの径よりも長い十字状構造物を形成する第2の補助棒材とを含むものであることを特徴とする請求項3に記載の作業用梯子の吊下設置構造物。
【請求項5】
前記連結部を介して前記フレーム体同士が角度を付けて連結され、前記フレーム体を前記マンホールの上面周囲を囲繞したり仕切ったりする防護柵として設置せしめた請求項1から4のいずれかに記載の作業用梯子の吊下設置構造物。
【請求項6】
前記フレーム体から延設または前記フレーム体に対して連結可能な所定長の係止体を複数個備え、
前記係止体の一端において、前記マンホールの穴のエッジに引っ掛けることができる掛け形状が設けられており、
前記マンホールの穴の周囲に設置する際に前記係止体を複数方向から前記マンホールの穴のエッジに引っ掛けて設置することを特徴とする請求項5に記載の作業用梯子の吊下設置構造物。
【請求項7】
直接連結されず離隔している前記フレーム体同士の間、または、前記作業員が出入りする出入口として離隔している両端の前記フレーム体同士の間に設置し、前記離隔の間隔が所定長確保されて縮径しないように維持する縮径防止体を備えたことを特徴とする請求項6に記載の作業用梯子の吊下設置構造物。
【請求項8】
前記作業用梯子が、所定の間隔を隔てて互いに平行に配置された一対の筒状支柱体と前記筒状支柱体の間に設けられた横桟を備えた梯子基本部材を基本単位とし、前記梯子基本部材同士が前記筒状支柱体の筒軸線方向に入れ子状態で摺動可能に順次接続したものであり、前記梯子基本部材が摺動収納された短縮収納状態と、前記梯子基本部材が摺動伸長した伸長使用状態を持つ伸縮式の作業用梯子であることを特徴とする請求項1または2に記載の作業用梯子の吊下設置構造物。
【請求項9】
前記作業用梯子の最下段の横桟に、ワイヤー状の伸縮操作体が設けられており、前記伸縮操作体を引き揚げることにより、前記マンホールの上面周囲から、前記伸長使用状態にある前記伸縮式の前記作業用梯子を前記短縮収納状態にして収縮させて撤去可能としたことを特徴とする請求項8に記載の作業用梯子の吊下設置構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路や建築物に設けられたマンホールなどの作業に使用する作業用梯子の吊下設置構造物に関する。より詳しくは、マンホール上面周囲の現場に持ち込んで設置し、マンホール内部へ昇降するための作業用梯子を構築し、マンホール内部での作業を行い、作業後にはマンホール上面周囲の現場から撤去可能な作業用梯子の設置構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や建物に設けられているマンホールは、電力線、通信ケーブル、ガス、上水道、下水道など様々な目的で設けられており、必要に応じて作業員がマンホール内部に昇降して作業を行う。マンホールの深さも様々であるが、一般には作業用梯子が必要である。
【0003】
古いタイプである第1のタイプの作業用梯子としては、マンホール自体の壁面に直接打設されているタイプの固定型の金属製の梯子が知られている。なお、日本全国にはこの古いタイプのマンホールが数多く現存しており、その割合も高く、ある意味でまだ主流のタイプと言える。
図12は、従来技術における、マンホールの壁面にコンクリートに打設された横桟(踏桟)が固設された作業用梯子を示す図である。従来では、
図12に示すようなマンホールの壁面に打設された固定梯子を用いて昇降していた。この例では固定梯子の支柱がいわゆるH鋼の形をしており、昇降時の安全確保のため、その支柱に対して安全装置を取り付けながら昇降するための安全装置を設ける工夫が知られていた(特許文献1:特開2009-209672号)。
【0004】
第2のタイプの作業用梯子は、マンホールを形成する入口部分を形成する金属孔構造の一部に吊下フレームを形成し、吊下タイプの作業用梯子を当該吊下フレームから吊下させるものである。
図13は、第2のタイプの作業用梯子を示す図であり、マンホールの上面を形成する金属孔に吊下フレームを設け、その吊下フレームから吊下タイプの作業用梯子を吊下させる様子を示す図である(特許文献2:特開2020-012293号)。
この特許文献2では、
図12(a)に示すように、マンホール内に管などが通っていて吊下梯子を吊下するスペースが制限され、金属孔の吊下フレームにおいて吊下させる幅が十分に確保できない場合でも、
図12(b)に示すように、吊下可能とする部材を供給してマンホール内の管を避けて作業用梯子を吊下できるものを提案している。
【0005】
第3のタイプの作業用梯子は、固設の固定梯子から可動梯子を上方へ引き出すことができる作業用梯子である。
図14は、第3のタイプの作業用梯子を示す図であり、マンホール内の壁面に固設された固定梯子から可動梯子を上方へ引き出すことができる構造となっている作業用梯子を示す図である(特許文献3:特開2011-256532号)。
図14に示すように、固設の固定梯子から可動梯子が連設されており、この特許文献3の技術は、特許文献1に示した固設の作業用梯子に対する改良と言える。第1のタイプの固設の作業用梯子を用いる場合、マンホール上面周囲の地面から最上段の横桟(踏桟)まで少し距離があり、危険である。そこで、特許文献3に示す第3のタイプの作業用梯子は、固設の固定梯子から上方へ引き出すことができる可動梯子を連接した構造であれば、可動梯子を上方に引き出すことによりマンホールの上面周囲からさらに上方に梯子を突設することができ、作業員はマンホールへ降りる前に地上でしっかりと可動梯子を把持した状態で可動梯子から固定梯子まで移動でき、そのままマンホールへの下降を行うことができる。
特許文献3には、可動梯子に対する安全装置の工夫も開示されている。可動梯子上端に安全装置を取り付ける掛止フレームが設けられており、掛止フレームに安全装置を取り付けて作業員のベルトなどに取り付けることにより安全が確保できるものとなっている。
【0006】
第4のタイプの作業用梯子は、第3のタイプの作業用梯子をさらに改良したものであり、固定梯子に連接されている可動梯子が屈曲可能な構造となっている作業用梯子である(特許文献4:特開2013-249626号)。
図15は、第4のタイプの作業用梯子を示す図であり、固定梯子に連接されている可動梯子の上部が屈曲可能な構造となっており、可動梯子が屈曲状態でマンホール内に収まる長さとなっている。
図15(a)に示すように、マンホールの蓋を開けるとその上面に可動梯子の屈曲部分が位置している。この可動梯子の屈曲部分はマンホールの上面に位置しており、マンホールの上面付近の地上から当該屈曲部分は簡単にアクセスできるため、
図15(b)に示すように、当該屈曲部分を立設する操作を安全にできる。
【0007】
【特許文献1】特開2009-209672号公報
【特許文献2】特開2020-012293号公報
【特許文献3】特開2011-256532号公報
【特許文献4】特開2013-249626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来技術における作業用梯子には、課題があった。
第1のタイプのマンホール自体の壁面に直接打設されているタイプの固定型の金属製の梯子は、既に述べたように、マンホール上面周囲の地面から最上段の横桟(踏桟)まで少し距離があり、この距離を超えて足を延ばしてアクセスするのは危険である。最上段の横桟(踏桟)の状態も良く確認できず、一気に足を降ろして踏むのは危険である。踏み外すこともあり得るし、最上端の横桟(踏桟)が汚れており滑ってしまうこともあり得る。
【0009】
第2のタイプの作業用梯子は、マンホール入口部分の金属孔構造の一部の吊下フレームから吊下させる作業用梯子は、第1のタイプの作業用梯子よりも作業員がマンホールの上面付近の地面からアクセスしやすいが、下記の問題がある。
第1の問題は、マンホール入口部分の金属孔構造に吊下フレームを後付けで構築できない点である。マンホール入口部分の金属孔構造に吊下フレームを設けることができるのはマンホールを構築する際であり、マンホールの壁面などにコンクリートを打設する際に合わせて吊下フレームを持った金属孔構造をコンクリートで打設する必要がある。既に上記したように、日本全国に現存するマンホールは、マンホール入口部分の金属孔構造は単なる円形のフレームとなっているものがほとんどである。つまり、第2のタイプの作業用梯子は、新しく増設するマンホールの工事や、既存マンホールの作り替え工事などにおいて採用することができても、日本全国に現存する既存のマンホールには適用できない技術である。
第2の問題は、マンホール入口部分の金属孔構造に吊下フレームを設けてしまうと、マンホール入口部分の孔の有効面積を大きく確保することができず、逆に、マンホール入口部分の孔の有効面積を大きくすると、吊下フレームを金属孔の壁面に沿わせて設けることとなり、曲線状となってしまい、吊下フレームとしての壁面からの離隔幅や長さを十分には確保できず、吊下タイプの作業用梯子としては小型のものしか適用できなくなってしまう。
【0010】
第3のタイプの作業用梯子は、マンホール内の壁面に固設された固定梯子から可動梯子を上方へ引き出すことができる構造となっている作業用梯子は、第1のタイプの作業用梯子も作業員がマンホールの上面付近の地面からアクセスしやすいが、下記の問題がある。
第1の問題は、マンホールに既設の固定梯子に対して可動梯子を後付けで構築しにくい点である。つまり、固定梯子側にも可動梯子を突設できる構造を備えている必要があるが、既に上記したように、日本全国に現存するマンホールは、マンホール壁面に固設された固定梯子が設けられているものが多数現存しており、この第3のタイプの作業用梯子は、新しく増設するマンホールの工事や、既存マンホールの作り替え工事などにおいて採用することができても、日本全国に現存する既存のマンホールには適用できない技術である。
第2の問題は、マンホールに既設の固定梯子から可動梯子を引き上げるためには、結局、少なくとも固定梯子の最上段の横桟(踏桟)の深さまでアクセスしないと可動梯子を引き上げることができないという問題である。おそらく作業員がマンホールの上面付近の地面から腕をマンホール内に伸ばして可動梯子を掴んで引き上げるものと考えられる。このような作業自体も危険である。可動梯子の一部に工具により引っ掛けるような部位があり、作業員がマンホールの上面付近の地面から当該工具を使って引っ掛けて可動梯子を引き上げることも可能であるが、作業が難しいと考えられる。
【0011】
第4のタイプの作業用梯子は、第3のタイプの固定梯子に連接されている可動梯子がさらに屈曲可能な構造となっている作業用梯子であり、第3のタイプの作業用梯子よりも作業員がマンホールの上面付近の地面からアクセスしやすく作業が簡単になっているが、下記の問題がある。
その問題は、第3のタイプの作業用梯子で説明した第1の問題と同様であり、マンホールに既設の固定梯子に対して上記したような可動梯子を後付けで構築しにくい点である。つまり、固定梯子側にも可動梯子を突設できる構造を備えている必要があるが、既に上記したように、日本全国に現存するマンホールは、マンホール壁面に固設された固定梯子が設けられているものが多数現存しており、この第4のタイプの作業用梯子は、新しく増設するマンホールの工事や、既存マンホールの作り替え工事などにおいて採用することができても、日本全国に現存する既存のマンホールには適用できない技術である。
【0012】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、日本全国に現存する既存のマンホールに対して工事など不要で適用ができる作業用梯子を吊下設置ができる作業用梯子の吊下設置構造物を提供することを目的とする。
特に、作業員が現場となるマンホールの上面付近の地面で容易に組み立てることができ、作業用梯子がマンホールの上面から容易にアクセスできる状態に設置できる作業用梯子の吊下設置構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の作業用梯子の吊下設置構造物は、マンホール内部で作業を行う作業員が昇降する作業用梯子を作業可能に現場で設置、撤去可能な作業用梯子の設置構造物であって、作業用梯子と、少なくとも脚部を備え、前記マンホールの上面周囲付近に立設するフレーム体と、前記フレーム体同士を横方向に連結する連結部と、前記フレーム体に取り付け、前記マンホールの穴の上方付近を横切るように渡して掛ける桿体を備え、前記作業用梯子が前記桿体に吊下する吊下部材を備え、前記桿体から前記吊下部材を介して前記マンホールの穴に向けて下方に前記作業用梯子を吊下することを特徴とする作業用梯子の吊下設置構造物である。
なお、ここで桿体とは、いわゆる竿状の構造物を意味しており、マンホールの穴を挟んで対向する位置に立設されているフレーム体に取り付けるものである。桿体はマンホールの穴面の上方を横切るように渡し掛けることができる構造物である。フレーム体への取り付け箇所は限定されないが、安定した箇所が好ましい。例えば、フレーム体のうちフレーム枠などが好ましい。
【0014】
上記構成により、本発明の作業用梯子の吊下設置構造物は、作業現場となる道路や建築物の床面にあるマンホールに持ち込んで簡単に構築することができ、作業用梯子の設置の間、作業員は常にマンホールの上面付近の地面にいることができ、作業時の安全性が保たれる。
本発明の作業用梯子の吊下設置構造物が適用可能なマンホールは、日本中に現存する既設のマンホールにそのまま適用することができ、事前のマンホールの工事や改変などは不要である。
【0015】
桿体についてさらに落下防止の工夫がある。
桿体を少なくとも2つの部材の組み合わせた構造物とする。
第1の部材は、マンホールの上方を横切るように渡して掛け止めする長さを備えた棒状構造物である。
第2の部材は、落下防止体である。この落下防止体としては、マンホールの径よりも大きい径の円板状部材を含む構造物や、いずれの辺もマンホールの径よりも長い十字状構造物を含むものである。
このように桿体が落下防止体を備えることにより、仮に想定外の事態が発生して作業用梯子の設置構造物のフレーム体やフレーム体に取り付けた支柱部材が倒れて、いわゆる足場が崩れたために作業用梯子ごと作業員が落下してしまうおそれがある事態が起こっても、落下防止体が確実にマンホールの入口に引っ掛かってそれ以上の落下を防止することができる。つまり、マンホールの径よりも大きい径の円板状部材を含む構造物や、いずれの辺もマンホールの径よりも長い十字状構造物は、マンホールの入口を通過できないため、かならず落下防止体がマンホールの入口に引っ掛かってそれ以上の落下を防止することができるという技術的効果が得られる。
【0016】
次に、作業者の安全のため、作業者の装着具に取り付ける安全装置を支持する第2の桿体を設ける工夫がある。
第2の桿体は、前記フレーム体に直接取り付ける、または前記フレーム体に取り付けた支柱部材を介して取り付ける、前記マンホールの穴の上方を横切るように渡して掛ける構造物である。
安全装置をこの第2の桿体と作業員の装着具とを連結するように取り付ける。
安全装置を取り付けることにより作業員の体躯が装着具と安全装置を介して、第2の桿体により支持された状態で作業が可能となり、安全が担保される。
【0017】
この第2の桿体についてもさらに落下防止の工夫がある。
この第2の桿体が、マンホールの上方を横切るように渡して掛け止めする長さを備えた第2の棒状部と第2の落下防止体を備えた構造を備えたものとする。ここで、第2の落下防止体が、マンホールの径よりも大きい径の第2の円板状部材を含む構造物、または、第2の棒状部との組み合わせにおいていずれの辺もマンホールの径よりも長い十字状構造物を形成する第2の補助棒材を含むものである。
このように、第2の桿体も第2の落下防止体を備えることにより、仮に想定外の事態が発生して作業用梯子の設置構造物のフレーム体やフレーム体に取り付けた支柱部材が倒れて、いわゆる足場が崩れたために作業用梯子ごと作業員が落下してしまうおそれがある事態が起こっても、落下防止体が確実にマンホールの入口に引っ掛かってそれ以上の落下を防止することができる。つまり、マンホールの径よりも大きい径の円板状部材を含む構造物や、いずれの辺もマンホールの径よりも長い十字状構造物は、マンホールの入口を通過できないため、かならず落下防止体がマンホールの入口に引っ掛かってそれ以上の落下を防止することができるという技術的効果が得られる。
このように、桿体が落下防止体を備え、第2の桿体も第2の落下防止体を備えておけば、緊急事態が発生してもすべての部材や作業員がマンホール内に大きな落差で落下することなく衝撃は小さいものに抑えることができる。
【0018】
作業現場で動的に立設するフレーム体についても組み立て方に工夫がある。
連結部を介してフレーム体同士が角度を付けて連結する際に、フレーム体をマンホールの上面周囲を囲繞したり仕切ったりするように組み立てれば、マンホール作業中の防護柵として設置せしめることができる。
なお、少人数で作業する中、本発明の作業用梯子の吊下設置構造物が防護柵として機能するためには、マンホール近辺に作業員が居なくても設置状態が安定していることが好ましい。マンホールの穴付近から不意に動いたりずれたりしないことが確保される構造が必要である。そこで、複数方向からマンホールの穴のエッジに引っ掛けて設置する治具として、フレーム体から延設または前記フレーム体に対して連結可能な所定長の係止体を複数個備えた構成とする。この係止体の一端は、マンホールの穴のエッジに引っ掛けることができる掛け形状が設けられており、マンホールの穴の周囲に設置する際に係止体を複数方向からマンホールの穴のエッジに引っ掛けて設置する。係止体の構成としては基端がフレーム体の一部に取り付けられており、先端がマンホールのエッジに引っ掛けることができる鍵形状が付いたものであればよい。先端がマンホールのエッジに引っ掛けることができるものであればどのような構造でも良い。
係止体を設けることにより、吊下設置構造物全体が外周方向へ移動したりずれたりすることがなくなる効果が得られる。
【0019】
さらに、吊下設置構造物全体が内周方向へ移動したりずれたりする、つまり、縮径してフレーム体が移動してしまうことも防止する必要がある。そこで、直接連結されず離隔しているフレーム体同士の間、または、作業員が出入りする出入口として離隔している両端のフレーム体同士の間に設置し、離隔の間隔が所定長確保されて縮径しないように維持する縮径防止体を備えた構成とすることも好ましい。
縮径防止体の構成としては一端をフレーム体の一部に取り付けでき、他端を対向するフレーム体の一部に取り付けできるものであればよい。簡単な構造の部材では、両端部にフレーム体の一部を挟み込んで把持する把持機構が付いた棒状体で良い。縮径を防止できるものであればどのような構造でも良い。
縮径防止体を取り付ける箇所は、離隔しているフレーム体同士の間に取り付けることが効果的である。例えば、防護柵が周回状のものであれば対向し合っているフレーム体同士の間に取り付ける。また、例えば、防護柵に出入口がある場合は、作業員が防護柵の中に入ったあとに出入口を形成しているフレーム体同士の間に取り付ければ良い。縮径防止体を取り付ける高さは特に限定されないが、いわば突っ張り棒のように働くので、地面に平行に水平方向に渡すことが効果的である。
【0020】
さらに、例えば、フレーム体に対して、工事中や接近防止を通行者に知らせるサインとなるいわゆるトラ柄のトラ柵のボードを組み付けておけば、そのままでいわゆる防護柵(ガードフェンス)となる。
さらに、フレーム体の脚部の外周地面に接地して設けるスロープ体を備えておけば、マンホールの上面周囲からの異物の落下を防止する防止フェンスとなる。
【0021】
ここで、吊下させる作業用梯子としては、作業現場への持ち込み、マンホール内への展開などの作業性を考慮して、いわゆる伸縮式梯子とすることが好ましい。
伸縮式梯子とは、所定の間隔を隔てて互いに平行に配置された一対の筒状支柱体と筒状支柱体の間に設けられた横桟を備えた梯子基本部材を基本単位とし、梯子基本部材同士が筒状支柱体の筒軸線方向に入れ子状態で摺動可能に順次接続したものであり、梯子基本部材が摺動収納された短縮収納状態と、梯子基本部材が摺動伸長した伸長使用状態を持つ梯子である。
このように伸縮式梯子を用いれば、運搬時は梯子の長さが短く運搬に至便であり、また、マンホール内への梯子の展開時は、作業現場で簡単に梯子の長さを長くすることができ、マンホール内への降下に用いることができる。
なお、作業用梯子の最下段の横桟にワイヤー状の伸縮操作体が設けられており、ワイヤー状の伸縮操作体を引き揚げることにより、マンホールの上面周囲から作業員が伸長使用状態にある伸縮式の作業用梯子を短縮収納状態にして収縮させることができる構造であることが好ましい。
マンホール内での作業が終了した後は簡単に短縮状態とすることができ、撤去が簡単であり、作業効率も高くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の作業用梯子の吊下設置構造物によれば、作業現場となる道路や建築物の床面にあるマンホールに持ち込んで簡単に構築することができ、作業用梯子の設置の間、作業員は常にマンホールの上面付近の地面にいることができ、作業時の安全性が保たれる。
また、本発明の作業用梯子の吊下設置構造物によれば、適用可能なマンホールは、日本中に現存する既設のマンホールにそのまま適用することができ、事前のマンホールの工事や改変などは不要である。
また、本発明の作業用梯子の吊下設置構造物において、桿体が落下防止体を備えることにより、仮に想定外の事態が発生して作業用梯子の設置構造物のフレーム体やフレーム体に取り付けた支柱部材が倒れて、いわゆる足場が崩れたために作業用梯子ごと作業員が落下してしまう事態が起こっても、落下防止体が確実にマンホールの入口に引っ掛かってそれ以上の落下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例1にかかる作業用梯子の吊下設置構造物100の構成例を模式的に示す図である。
【
図2】連結部120を介して左右のフレーム体110の連結角度を調整した構成例を示す図である。
【
図3】フレーム体110に係止体170、縮径防止体180を取り付けた様子を示す図である。
【
図5】第2の桿体140を取り出して示した図である。
【
図6】伸縮式梯子である作業用梯子160の構造例を示す図である。
【
図7】伸縮式の作業用梯子160を伸長させる様子を示した図である。
【
図8】伸縮式の作業用梯子160を収縮させる様子を示した図である。
【
図9】本発明の作業用梯子の吊下設置構造物100の利用手順を示す図(その1)である。
【
図10】本発明の作業用梯子の吊下設置構造物100の利用手順を示す図(その2)である。
【
図11】本発明の作業用梯子の吊下設置構造物100の利用手順を示す図(その3)である。
【
図12】従来技術における、マンホールの壁面にコンクリートに打設された横桟(踏桟)が固設された作業用梯子を示す図である。
【
図13】特開2020-012293号(特許文献2)に開示された従来技術における第2のタイプの作業用梯子を示す図である。
【
図14】特開2011-256532号公報(特許文献3)に開示された従来技術における第3のタイプの作業用梯子を示す図である。
【
図15】特開2013-249626号公報(特許文献4)に開示された従来技術における第4のタイプの作業用梯子を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の作業用梯子の吊下設置構造物の実施例を説明する。
本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な形状、デザイン、個数、角度などには限定されないことは言うまでもない。
【実施例0025】
図1は、実施例1にかかる作業用梯子の吊下設置構造物100の構成例を模式的に示す図である。
図1(a)は作業用梯子の吊下設置構造物100の斜視図を示しており、
図1(b)は正面図(作業者が昇降する面)を示している。
なお、
図1(a)は、作業用梯子160の桿体130への吊下前の状態を示した斜視図となっている。
また、
図1(b)は、作業用梯子160の桿体130への吊下後の状態を示した断面図であり、作業用梯子160が桿体130に吊下されている様子が良く分かるように、桿体130の高さのやや上付近の高さで切った断面図となっている。
なお、
図1(a)および
図1(b)において、後述する落下防止体132および第2の落下防止体142については、部材の関係が分かりにくくなるため、敢えて図示していない。落下防止体132については
図4を用いて後述する。第2の落下防止体142については
図5を用いて後述する。
【0026】
本発明の作業用梯子の吊下設置構造物100は、フレーム体110、連結部120、桿体130、第2の桿体140、安全装置150、作業用梯子160を備えた構成となっている。なお、
図1にはマンホール200も併せて図示されている。
以下、各構成要素について説明する。
【0027】
フレーム体110は、マンホール200の上面周囲付近に立設する構造物である。この例では、複数の脚部111とフレーム部112を備え、地面に立設することにより自立できる構造となっている。この例では、脚部111を2つ備えて自立できる構成例である。なお、作業用梯子の吊下設置構造物100を構成するフレーム体110は、基本的には脚部111を備えて自立できるものとするが、複数あるフレーム体110のうち、一部のフレーム体110は脚部111がなく、左右から支持されて空中に携挙されているものが含まれていても良い。
フレーム部112は上端フレームと下部フレームを備えたものとなっているが限定はされない。フレーム部112はフレーム状のものでも良いが板状のものでも良い。
【0028】
連結部120は、フレーム体110同士を横方向に連結する部材である。
図1の構成例では、フレーム部112の上端フレーム同士を横に連結する連結部材121を備えたものとなっている。
この連結部材121は、それぞれの両端部において、フレーム部112と接続することができる構造となっており、かつ、連結角度が調整自在になっている。そのため、連結部120を介して、左右のフレーム体110の連結角度を自在に調整できるものとなっている。
【0029】
フレーム体110の数と連結部120の数は限定されない。この
図1の構成例ではフレーム体110が6つありそれらの間に連結部120が5つあり、フレーム体110と連結部120が上から見て正面方向において5辺が欠けた16角形をなすように組み上げられている。欠損している角は作業員が出入りする出入口となる。なお、出入口にはチェーンを設けても良い。6つのフレーム体110と5つの連結体120でマンホール200を囲繞するように組み上げることによりマンホール200の防護柵としても機能し得る。
なお、各図において、フレーム体110には網目が大きな同じハッチングが施されており、フレーム体120には網目がより細かい同じハッチングが施されて分かりやすいように図示している。
【0030】
図2は、連結部120を介して、左右のフレーム体110の連結角度を調整した構成例である。多様な構成が可能であり、
図2に示したものは一例に過ぎない。
図2(a)は、
図1(a)に示した6つのフレーム体110で形成した構成に、さらにフレーム体110を2つ加えて8つのフレーム体110とし、それらの間に連結部120が7つあり、フレーム体110と連結部120が上から見て正面方向において5辺が欠けた20角形をなすように組み上げた例となっている。
図1と同様、欠損している辺は作業員が出入りする出入口となる。なお、出入口にはチェーンを設けても良い。8つのフレーム体110と7つの連結体120でマンホール200を囲繞するように組み上げることによりマンホール200の防護柵としても機能し得る。
なお、
図2(a)において、後述する落下防止体132および第2の落下防止体142については、部材の関係が分かりにくくなるため、敢えて図示していない。落下防止体132については
図4を用いて後述する。第2の落下防止体142については
図5を用いて後述する。
【0031】
図2(b)は、14つのフレーム体110、14つの連結体120で組み上げた例となっている。矩形のように形成されており、矩形の辺のうち正面と背面の一部が欠損した構成となっている。つまり、作業員が出入りする出入口を2箇所設けている。なお、出入口にはチェーンを設けても良い。14つのフレーム体110と14つの連結体120で形成した矩形によりマンホール200を囲繞するように組み上げることにより、マンホール200の防護柵としても機能し得る。
なお、
図2(b)においても、後述する落下防止体132および第2の落下防止体142については、部材の関係が分かりにくくなるため、敢えて図示していない。落下防止体132については
図4を用いて後述する。第2の落下防止体142については
図5を用いて後述する。
【0032】
作業現場で動的に立設するフレーム体についても組み立て方に工夫がある。
連結部を介してフレーム体同士が角度を付けて連結する際に、フレーム体をマンホールの上面周囲を囲繞したり仕切ったりするように組み立てれば、マンホール作業中の防護柵として設置せしめることができる。
【0033】
なお、少人数で作業する中、本発明の作業用梯子の吊下設置構造物が防護柵として機能するためには、マンホール近辺に監視役の作業員が居なくても設置状態が安定していることが好ましい。もっとも監視員役の作業員が居ても、マンホールの穴付近から不意に動いたりずれたりしないことが確保される構造が良い。
そこで、横ずれ防止のための工夫として係止体170があり、縮径防止のために縮径防止体180を設けることができる。
係止体170は、フレーム体110から延設またはフレーム体に対して連結可能な部材である。係止体170の一端において、マンホール200の穴のエッジに引っ掛けることができる掛け形状が設けられている。この係止体170を設けることにより、吊下設置構造物である防護柵全体が横ずれすることを制限、つまり、外周方向への移動が制限できる。この係止体170を円形のマンホール200の穴のエッジの周囲にバランスよく複数個設置することにより、吊下設置構造物である防護柵がいずれの方向にもずれないように簡単に固定することができる。
【0034】
図3は、フレーム体110に係止体170、縮径防止体180を取り付けた様子を示す図である。
図3に示すように、マンホール200の穴の周囲に係止体170を複数個設け、それぞれ複数方向からマンホール200の穴のエッジに引っ掛けて設置すれば良い。
図3の例では4個設置している。上から見た
図3(b)に示すように、円周を4分割するような正確な配置である必要はないが、左右のバランスが良い方が全体として安定しやすいと想定される。
図3(c)に示すように、係止体170はフレーム体110の一端が脚部に取り付けられており、先端が係止体170の端部がマンホール200の穴のエッジに引っ掛けられており、外周方向(
図3(c)では左方向)にフレーム体110が移動しないように制限されている。係止体170がマンホールの円周上にバランスよく複数個配置されることにより、いずれの方向にもずれないよう移動が防護柵の制限が制限される。
なお、係止体170の形状としては、先端がマンホールのエッジに引っ掛けることができるものであればどのような構造でも良い。
【0035】
次に、係止体170だけでは、防護柵が内周側へ縮径してしまう移動を制限することができない。そこで、縮径防止のための縮径防止体180を設ける工夫がある。
縮径防止体180は、離れているフレーム体同士の間(つまり、連結部120により直接連結されていないフレーム体同士の間)、または、作業員が出入りする出入口(フレーム体110を設けずに開口とした両端のフレーム体同士の間)の距離間隔が、所定長確保されて縮径しないように維持する部材である。
いわば突っ張り棒のようなもので、一定間隔が保たれるように維持する部材である。かならずしも棒状である必要はないが、もっともシンプルな形状は棒状の部材である。
係止体を設けることにより、吊下設置構造物全体が外周方向へ移動したりずれたりすることがなくなる効果が得られる。
【0036】
縮径防止体180の構成としては一端を対象のフレーム体の一部に取り付けでき、他端も対象のフレーム体の一部に取り付けできるものであればよい。簡単な構造の部材では、両端部にフレーム体の一部を挟み込んで把持する把持機構181が付いた棒状体で良い。縮径を防止できるものであればどのような構造でも良い。
【0037】
図3に示した縮径防止体180の構成例は、両端部にフレーム体の一部を挟み込んで把持する把持機構181がそれぞれ付いた棒状体の例となっている。
図3(B)に示す例では、フレーム体110の間は開口箇所であり、その開口箇所の両側にあるフレーム体110の支柱を挟持するように把持機構181を取り付けることにより、開口の距離が縮まず、その結果、防護柵全体としての縮径しないようになる。
このように、係止体170と縮径防止体180が連動することにより、吊下設置構造物である防護柵がいずれの方向にも横ずれもせず、かつ、縮径することもなく、防護柵としての設置状態が安定する。
【0038】
図3に示した縮径防止体180の構成例は、両端部にフレーム体の一部を挟み込んで把持する把持機構181がそれぞれ付いた棒状体の例となっている。
図3(B)に示す例では、フレーム体110の間は開口箇所であり、その開口箇所の両側にあるフレーム体110の支柱を挟持するように把持機構181を取り付けることにより、開口の距離が縮まず、その結果、防護柵全体としての縮径しないようになる。
図3に示す例は、防護柵の出入口に取り付ける例であるが、作業員が防護柵の中に入ったあとに出入口を形成しているフレーム体同士の間に取り付ければ良い。
また、
図3に示す例のほか、縮径防止体180を取り付ける箇所としては、離隔しているフレーム体110同士の間に取り付けることが効果的である。例えば、防護柵が周回状のものであれば対向し合っているフレーム体110同士の間に取り付けることが効果的である。
縮径防止体を取り付ける高さは特に限定されないが、いわば突っ張り棒のように働くので、地面に平行に水平方向に渡すことが効果的である。
このように、係止体170と縮径防止体180が連動することにより、吊下設置構造物である防護柵がいずれの方向にも横ずれもせず、かつ、縮径することもなく、防護柵としての設置状態が安定する。
【0039】
図1に戻って説明を続ける。
桿体130は、フレーム体110に取り付ける桿状の部材であり、マンホール200の穴の上方を横切るように渡して掛けられる構造物である。
なお、この
図1の例では、桿体130が棒状部131と落下防止体132を備えた構成となっている。
棒状部131は、マンホール200の上方を横切るように渡して掛け止めする長さを備えている。つまり、棒状部131は、
図1や
図2示したようにマンホール200の入口を挟んで対向するフレーム体110間をまたぐように渡し掛けるのに十分な長さとなっている。この棒状部131を備えることにより、マンホール200の上方に作業用梯子160を吊下支持できる構造を提供することができる。
落下防止体132は、仮に想定外の事態が発生して作業用梯子の設置構造物100のフレーム体110やフレーム体に取り付けた支柱部材113が倒れて、いわゆる足場が崩れたために作業用梯子ごと作業員が落下してしまう事態が起こっても、落下を確実に防止するための部材である。
ここで、落下防止体132は、マンホール200の入口の径よりも大きい径の円板状部材を含む構造物、または、いずれの辺もマンホールの径よりも長い十字状構造物を含むものである。
【0040】
図4は、桿体130を取り出して示した図である。
図4(a)は、落下防止体132が円板状部材132-1を含む構造物である場合を示している。円板状部材132-1がマンホール200の上面を邪魔しないように、桿体130の棒状部131の面のうちマンホール200から遠い面に対して取り付けており、さらに地面に垂直に近い角度を付けて搭載されている。
円板状部材132-1の径rは、マンホールの径Rよりも大きいものとなっている。
図4(a)に示すように、円板状部材132-1の径rがマンホールの径Rよりも大きいものであれば、どのような姿勢や角度で落下しても円板状部材132-1の径rがマンホールの入口の径Rを通過することはできず、落下防止体132が確実にマンホール200の入口に引っ掛かってそれ以上の落下を防止することができる。
図4(a)の右側の図では、水平にあった棒状体131が垂直近くの角度となり落下した場合を示しているが、棒状体131が通過し得る姿勢で落下しても、落下防止体132-1は必ずマンホール200の縁に衝突して引っ掛かるので通過することはない。
【0041】
図4(b)は、落下防止体132が十字状構造物を形成する補助棒材132-2を含む構造物である場合を示している。補助棒材132-2がマンホール200の上面を邪魔しないように、桿体130の棒状部131の面のうちマンホール200から遠い面に対して取り付けており、さらに地面に垂直に近い角度を付けて搭載されている。
補助棒材132-2は棒状部131の長さ方向に対して垂直方向、つまり、棒状部131と補助棒材132-2が十字状構造物を形成するように取り付けられており、かつ、いずれの辺もマンホールの径よりも長い長さとなっている。このような長さの十字状構造物であれば、やはり、どのような姿勢や角度で落下しても棒状部131と補助棒材132-2で形成される十字状構造物がマンホール200の入口を通過することはできず、落下防止体132が確実にマンホール200の入口に引っ掛かってそれ以上の落下を防止することができる。
【0042】
次に、第2の桿体140を説明する。
第2の桿体140は、フレーム体110に直接取り付けるか、またはフレーム体110に取り付けた支柱部材113を介して取り付ける、桿状をした部材であり、マンホール200の穴の上方を横切るように渡して掛けられる構造物である。
なお、この
図1の例では、フレーム体110に取り付けた支柱部材113を介して取り付けた例となっている。
【0043】
第2の桿体140は、第2の棒状部141と第2の落下防止体142を備えた構成となっている。
第2の棒状部141は、マンホール200の上方を横切るように渡して掛け止めする長さを備えている。つまり、第2の棒状部141は、
図1や
図2示したようにマンホール200の入口を挟んで対向するフレーム体110間をまたぐように渡し掛けるのに十分な長さとなっている。この第2の棒状部141を備えることにより、マンホール200の上方に安全装置150を吊下支持できる構造を提供することができる。
【0044】
第2の落下防止体142は、仮に想定外の事態が発生して作業用梯子の設置構造物100のフレーム体110やフレーム体に取り付けた支柱部材113が倒れて、いわゆる足場が崩れたために作業用梯子ごと作業員が落下してしまうおそれがある事態が起こっても、安全装置150を介して、作業員の落下を確実に防止するための部材である。
第2の落下防止体142は、マンホール200の入口の径Rよりも大きい径r2の円板状部材を含む構造物、または、いずれの辺もマンホールの径よりも長い十字状構造物を含むものである。
【0045】
図5は、第2の桿体140を取り出して示した図である。
図5(a)は、第2の落下防止体142が第2の円板状部材142-1を含む構造物である場合を示している。第2の円板状部材142-1がマンホール200の上面を邪魔しないように、第2の桿体140の第2の棒状部141の面のうちマンホール200から遠い面に対して取り付けており、さらに地面に垂直に近い角度を付けて搭載されている。
第2の円板状部材142-1の径rは、マンホールの径Rよりも大きいものとなっている。
図5(a)に示すように、第2の円板状部材142-1の径rがマンホールの径Rよりも大きいものであれば、どのような姿勢や角度で落下しても第2の円板状部材142-1の径rがマンホールの入口の径Rを通過することはできず、第2の落下防止体142が確実にマンホール200の入口に引っ掛かって作業員がそれ以上に落下することを防止できる。
【0046】
図5(b)は、第2の落下防止体142が十字状構造物を形成する第2の補助棒材142-2を含む構造物である場合を示している。第2の補助棒材142-2がマンホール200の上面を邪魔しないように、第2の桿体140の第2の棒状部141の面のうちマンホール200から遠い面に対して取り付けており、さらに地面に垂直に近い角度を付けて搭載されている。
第2の補助棒材142-2は第2の棒状部141の長さ方向に対して垂直方向、つまり、第2の棒状部141と第2の補助棒材142-2が十字状構造物を形成するように取り付けられており、かつ、いずれの辺もマンホールの径よりも長い長さとなっている。このような長さの十字状構造物であれば、やはり、どのような姿勢や角度で落下しても第2の棒状部141と第2の補助棒材142-2で形成される十字状構造物がマンホール200の入口を通過することはできず、第2の落下防止体142が確実にマンホール200の入口に引っ掛かってそれ以上の落下を防止することができる。
【0047】
次に、安全装置150は、第2の桿体140と作業員が装着する装着具の間を連結する装置である。
安全装置150を用いることにより、安全装置150を介して、装着具を装着した作業員の体躯が第2の桿体140により支持された状態で作業が可能である。
安全装置150は、繰り出し巻き取り可能なワイヤーなどを備え、確実に作業員の体躯を支持するものであれば、どのような構造でも良く特に限定されず、一般市場で入手可能なものでも良い。一般には、例えば、安全装置150のワイヤーとして急なワイヤー繰り出しがあった場合にはストッパーが働いてワイヤーの繰り出しが停止する構造を備えている。安全装置150がマンホール200の入口よりも高い位置に維持されており、ワイヤーの繰り出しが停止すれば、作業員はいわゆる宙づりの状態になるが、落下することはなく落下事故を防止することができる。
【0048】
次に、作業用梯子160を説明する。
作業用梯子160は、作業員が昇降する構造的強度が十分あり、マンホールの内部に展開できるものであれば特に限定されない。伸縮式梯子でもよく、伸縮できない梯子でも良い。なお、伸縮できない梯子であると、作業開始時に作業用梯子をマンホールの中に挿入する際も扱いにくく、作業終了時に作業用梯子をマンホールの中から撤去する際も扱いにくい。この構成例では、作業用梯子160は伸縮式梯子とする。
【0049】
伸縮式梯子である作業用梯子160の構造例としては、
図6に示すものがある。
図6に示すように、作業用梯子160は梯子基本部材161を基本単位とし、複数の梯子基本部材161が伸縮可能に入れ子状態で摺動可能に順次接続された構造となっている。
梯子基本部材161は、所定の間隔を隔てて互いに平行に配置された一対の筒状支柱体162と、筒状支柱体162の間に設けられた横桟163を備えたものとなっている。この梯子基本部材161が基本単位となり、梯子基本部材161同士が筒状支柱体162の筒軸線方向に入れ子状態で摺動可能に順次接続した構造となっている。
【0050】
筒状支柱体162は、
図6に示すように、所定の間隔を隔てて互いに平行に配置された一対の支柱体である。素材は、アルミニウムなどの軽金属で構造的強度が強い素材で形成することが好ましい。
各々の梯子基本部材161にはある程度の剛性・強度が必要である。梯子基本部材161は作業個所において吊下梯子として作業者の昇降を支える機械的強度が必要となるからである。また、作業員が多少の重量の荷物も担った状態で昇降することもあり得るため、その荷重にも耐える必要がある。
梯子基本部材161ごとの筒状支柱体162の長さは特に限定されないが、人間が一段ずつ昇降する際の歩幅に適切な長さであれば良い。
なお、この構成例では、最上段の梯子基本部材161の筒状支柱体162には、フックである吊下部材164が設けられている。またこの構成例では、最上段の梯子基本部材161の筒状支柱体162の高さは吊下部材164の位置よりも上方に向けて把持部165が延設されている。
【0051】
横桟163は、筒状支柱体162の間に設けられた横架された部材であり、作業者が昇降時に足を載せ置く部分である。横桟163は作業用梯子160の梯子1段分となっている。この例では、梯子基本部材161の筒状支柱体162の上端付近同士を横桟163が結ぶ形で設けられた例となっている。
横桟163の素材は、アルミニウムなどの軽金属で構造的強度が強い素材で形成することが好ましい。横桟163にはある程度の剛性・強度が必要である。作業者の昇降を支える機械的強度が必要となるからである。また、作業員が多少の重量の荷物も担った状態で昇降することもあり得るため、その荷重にも耐える必要がある。
横桟163の横方向の長さは特に限定されないが、作業員が1人ずつ昇降することを前提としたものであれば、少なくとも人間の腰幅程度の長さがあることが好ましい。
【0052】
図7は、伸縮式の作業用梯子160を伸長する様子を示した図である。
梯子基本部材161の構造は、
図7に示すように、最上段の梯子基本部材161から最下段の梯子基本部材161にかけてそれらの筒状支柱体162の筒部の径の大きさが下に行くほど順次大きくなるように設けられており、それらが入れ子式になっており筒状支柱体162の筒軸線方向に摺動可能に順次接続されたものとなっている。つまり、当段の梯子基本部材161の筒状支柱体162に対してその直下にある下段の梯子基本部材161の筒状支柱体162は筒部の大きさが一回り大きいものとなっており、入れ子式になっている。
当段の梯子基本部材161の筒状支柱体162の筒部は、下段の梯子基本部材161の筒状支柱体162の筒部に対して摺動して出し入れできるようになっており、下方に引き出すことにより伸長状態となり、上方に押し込むことにより短縮状態となる。各段の梯子基本部材161がすべて短縮状態となった場合、作業用梯子160全体が短縮収納状態となり、各段の梯子基本部材161がすべて伸長状態となった場合、作業用梯子160全体も伸長状態となる。
なお、この例では、最下段の横桟163は固定横桟となっており、筒状支柱体162に対して固定されている構造例となっている。
図6に示すように、把持部165は、吊下部材164の高さより高い位置まで上方に延設された構成とし、当該延設箇所に作業員が把持できる構成となっている。把持部165が延設されておれば、作業者が把持部165を把持しつつ降下を開始することができ、安全性が向上し、作業効率も向上するというメリットがある。
【0053】
梯子基本部材161が摺動収納された短縮収納状態と、梯子基本部材161が摺動伸長した伸長使用状態を持つ。
図7(a)は、作業現場における作業用梯子160の展開前の状態を示す図である。作業用梯子160が作業現場に持ち込まれ、作業員が、フレーム体110、連結部120を組み上げて桿体130を掛け渡した状態において、吊下部材164を桿体130に掛けて、作業用梯子160全体が展開前の短縮収納状態にて吊下されている様子を示す図となっている。各々の梯子基本部材161同士が摺動収納されている。
【0054】
図7(b)は、作業現場における作業用梯子160の展開途中の状態を示す図である。各々の梯子基本部材161が摺動伸長され、作業用梯子160が伸長使用状態になってゆく途中段階を示す図となっている。
作業開始時に作業現場に持ち込んだ
図7(a)に示した短縮収納状態になっている作業用梯子160をマンホール上面に設置した作業用梯子の吊下設置構造物100の桿体130に作業用梯子160のフックである吊下部材164を掛け止め、梯子基本部材161同士を摺動可能として、短縮収納状態を解く。その結果、各々の梯子基本部材161が下方に摺動して、最上段の梯子基本部材161から次々と係止されてゆく。
【0055】
なお、各々の梯子基本部材161において、梯子基本部材161同士の摺動を可能としたり摺動できないようにしたり制御するロック機構(詳細は図示せず)とロック解除機構(詳細は図示せず)を備えている構成も好ましい。
【0056】
ここでは、ロック機構は、各段の梯子基本部材161同士の連結部において、伸長使用状態となったことを契機として梯子基本部材161同士の摺動を一時的にロックするロック機構である。例えば、筒状支柱体162の側面にて押さえられて付勢されているバネが付いているピンが横桟163内に仕込まれており、筒状支柱体162には孔が穿たれており、梯子基本部材161の摺動で筒状支柱体162が下方に移動し、横桟163のピンが筒状支柱体162の孔と対向する位置に来れば、付勢されたバネが開放され、ピンが突出して孔に嵌合してロックが掛かる。
【0057】
図7の構成例では、その際に付勢されたバネが開放されたことを切っ掛けとして横桟162の下面にレバーが突出する仕掛けとなっており、後述するように、回収時に梯子基本部材161が摺動して下段から順に上昇してゆく中、下段の梯子基本部材161の横桟163が上段の横桟163の下面に突出しているこのレバーを押し上げることにより、ピンがバネの付勢に打ち勝って内部に縮退して孔から外れ、ロックが解除される仕組みとなっている。詳しい図示はしないが、同様の構造例は本件出願人の過去の出願である特開2019-035289に詳しい。
【0058】
この構成例では、作業用梯子160は、撤去作業を簡単にするため、伸縮操作体166を備えた構成となっている。
作業用梯子160の最下段の横桟163に、紐またはワイヤー状の伸縮操作体166が設けられており、ワイヤー状の伸縮操作体166を引き揚げることにより、伸長使用状態にある伸縮式の作業用梯子160を短縮収納状態にして収縮させることができる構造となっている。
伸縮操作体166は、紐またはワイヤー状のもので良いが、例えば、丈夫な鋼鉄製のワイヤーが好ましい。引き上げる十分な強度が確保されてものであれば、紐体であっても良い。
伸縮操作体166を介した作業用梯子160の引き上げは、作業員の人手で行っても良いが、図示しないウィンチなどの機械的駆動装置で昇降しても良い。
このように伸縮操作体166を介して最下段の梯子基本部材を昇降させ、作業用梯子160の伸長、短縮を操作することができる。
図7(c)は、作業用梯子160の展開が完了した状態を示す図である。各々の梯子基本部材161が摺動伸長され、作業用梯子160が伸長使用状態になっている。
【0059】
図8は、伸縮式の作業用梯子160を収縮させる様子を示した図である。
図8(a)は、収縮開始前の状態である。伸縮操作体166を介して最下段の梯子基本部材を昇降させる。
図8(b)は、作業現場における作業用梯子160の回収途中の状態を示す図である。各々の梯子基本部材161が摺動され、作業用梯子160が収縮状態になってゆく途中段階を示す図となっている。
図8(c)は、
図8(b)に引き続き、各々の梯子基本部材161が摺動され、作業用梯子160が収縮状態になってゆく途中段階を示す図となっている。
図8(d)は、作業用梯子160の収縮が完了した状態を示す図である。各々の梯子基本部材161が摺動され、作業用梯子160が収縮状態になっている。
【0060】
次に、本発明の作業用梯子の吊下設置構造物100の利用手順について
図9から
図11を参照しつつ説明する。
(手順1)
図9の上側左図から右図に示すように、作業員等は、本発明の作業用梯子160の吊下設置構造物100を運搬して作業現場に持ち込み、フレーム体110を連結部120により連結して組み上げて、マンホール200の入口を囲繞する。
この例では、フレーム体110を連結部120で連結し、
図1や
図2(a)に示した形に組み上げるものとする。
【0061】
(手順2)
次に、
図9の下図に示すように、作業員は、桿体130をフレーム体110に取り付け、マンホール200の出入口の上方付近を横切るように渡して掛ける。
【0062】
(手順3)
次に、
図10の左図に示すように、作業員は、第2の桿体140をフレーム体110に取り付け、マンホール200の穴の上方付近を横切るように渡して掛ける。この例では、第2の桿体140は、フレーム体110に取り付けた支柱部材113を取り付け、その支柱部材113を介して取り付ける例となっている。
【0063】
(手順4)
次に、
図10の右図に示すように、安全装置150を第2の桿体140に取り付け、作業員の装着具に安全装置150を取り付ける。
なお、この手順4は、手順5と入れ替わっても良い。手順5の作業用梯子160の展開作業時において作業員に安全装置150が取り付けられていた方が、安全性が高いと考えられるので、ここでは、手順4,手順5の順とする。
【0064】
(手順5)
次に、
図11(a)および
図11(b)に示すように、作業用梯子160の吊下部材164を桿体130に取り付ける。
なお、
図11(a)は、桿体130の高さのやや上付近の高さで切った断面図として示している。
図11(b)は、マンホール200内部付近を示した様子の図であり、マンホール200内に吊下された状態でまだ摺動伸長していない短縮状態の作業用梯子160が垂直に吊下されている状態を示した図となっている。なお、フレーム体110や連結部120は図示を省略し、桿体130も一部のみを示している。マンホールの壁面には細かいピッチのハッチングを付しており、桿体130には大きなピッチのハッチングを付している。
図11(c)は
図11(b)の状態からの展開の様子を示した図である。
図11(c)に示すように、作業員は慎重に作業用梯子160を展開し、伸長使用状態にする。作業員は、吊下部材164を介して吊下している作業用梯子160の伸縮操作体166であるワイヤーを緩めてゆく。作業用梯子160がマンホール内に展開される。
なお、この手順5は、手順4と入れ替わっても良い。
【0065】
以上の手順1から手順5の手順により、作業用梯子160がマンホール内に展開でき、作業員がマンホール内へ降下してゆく準備が整ったこととなる。
作業員は把持部165を把持して降下を始め、横桟163を慎重に一段ずつ降下してゆく。
【0066】
作業員等は、マンホールなどの作業個所で作業用梯子160の使用が終了すれば、作業者全員が作業用梯子160を上って吊下箇所に移動した後、本発明の作業用梯子160を回収するべく、回収作業を始める。
伸長使用状態にある作業用梯子160を短縮収納状態にする手順は、
図11から
図9まで逆にたどって行けば良い。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。従って本発明の技術的範囲は添付された特許請求の範囲の記載によってのみ限定されるものである。