(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075520
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】AG10を使用するTTRアミロイドーシスの治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/415 20060101AFI20240527BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240527BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240527BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240527BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240527BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A61K31/415
A61P3/00
A61P9/00
A61P25/00
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024025650
(22)【出願日】2024-02-22
(62)【分割の表示】P 2020550147の分割
【原出願日】2019-03-22
(31)【優先権主張番号】62/647,411
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/765,096
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/731,629
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/758,235
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/810,651
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519297698
【氏名又は名称】エイドス セラピューティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ウマ シンハ
(72)【発明者】
【氏名】サティシュ ラオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC21
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC36
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZC21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象におけるトランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスを治療する方法を提供する。
【解決手段】下記化合物又はその医薬として許容し得る塩の治療的有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含み、ここで該治療的有効量が、総一日量約10mg~2,000mgである、方法である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスを、それを必要とする対象において治療する方法であって、下記式を有する化合物1:
【化1】
又はその医薬として許容し得る塩の治療的有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含み、ここで該治療的有効量が、総一日量約10mg~2,000mgである、方法。
【請求項2】
前記治療的有効量が、総一日量約10mg~50mgである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記治療的有効量が、総一日量約50mg~300mgである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記治療的有効量が、総一日量約50mg~150mgである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記治療的有効量が、総一日量約150mg~800mgである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記治療的有効量が、総一日量約800mg~1,600である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記治療的有効量が、総一日量約800mgである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
治療的有効量が、総一日量約1,600mgである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記化合物1が、HCl塩型である、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記化合物1が、経口投与される、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記化合物1が、1日1回投与される、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記化合物1が、1日2回投与される、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記化合物1が、1日3回投与される、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記化合物1が、1日4回投与される、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスを、それを必要とする対象において治療する方法であって、下記式を有する化合物1:
【化2】
又はその医薬として許容し得る塩の治療的有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含み、ここで化合物1の治療的有効量が、少なくとも5μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する、方法。
【請求項16】
前記化合物1の治療的有効量が、少なくとも6μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記化合物1の治療的有効量が、少なくとも7.5μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記化合物1の治療的有効量が、少なくとも8μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記化合物1の治療的有効量が、5~30μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記化合物1の治療的有効量が、5~25μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する、請求項15記載の方法。
【請求項21】
前記化合物1の治療的有効量が、6~20μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する、請求項15記載の方法。
【請求項22】
前記化合物1の治療的有効量が、7.5~15μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する、請求項15記載の方法。
【請求項23】
前記化合物1の治療的有効量が、7.5~10μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する、請求項15記載の方法。
【請求項24】
前記TTRアミロイドーシスが、家族性アミロイドポリニューロパチー、家族性アミロイド心筋症、老人性全身性アミロイドーシス、中枢性アミロイドーシス、眼アミロイドーシス、脳軟膜アミロイドーシス、眼軟膜アミロイドーシス、硝子体アミロイドーシス、消化管アミロイドーシス、神経原性アミロイドーシス、非-神経原性アミロイドーシス、非-遺伝性アミロイドーシス、反応性/続発性アミロイドーシス、脳アミロイドーシスからなる群から選択される疾患又は病態である、請求項1~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記TTRアミロイドーシスが、脳軟膜アミロイドーシスである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記脳軟膜アミロイドーシスが、18位のアスパラギン酸のグリシンへの変異(D18G)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記脳軟膜アミロイドーシスが、53位のグリシンのアルギニンへの変異(G53R)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記脳軟膜アミロイドーシスが、114位のチロシンのシステインへの変異(Y114C)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記脳軟膜アミロイドーシスが、49位のトレオニンのプロリンへの変異(T49P)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項25記載の方法。
【請求項30】
前記TTRアミロイドーシスが、トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)心筋症又はトランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)ポリニューロパチーである、請求項1~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記TTRアミロイドーシスが、60位のトレオニンのアラニンへの変異(T60A)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記TTRアミロイドーシスが、24位のプロリンのセリンへの変異(P24S)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記TTRアミロイドーシスが、38位のアスパラギン酸のアラニンへの変異(D38A)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項30記載の方法。
【請求項34】
前記TTRアミロイドーシスが、58位のロイシンのヒスチジンへの変異(L58H)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項30記載の方法。
【請求項35】
前記TTRアミロイドーシスが、トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)心筋症である、請求項1~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
前記ATTR心筋症が、野生型ATTR心筋症(ATTRwt-CM)である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記ATTR心筋症が、家族性ATTR心筋症(ATTRm-CM)である、請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記ATTRm-CMが、122位のバリンのイソロイシンへの変異(V122I)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記ATTRm-CMが、49位のトレオニンのプロリンへの変異(T49P)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記TTRアミロイドーシスが、トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)ポリニューロパチーである、請求項1~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
前記ATTRポリニューロパチーが、野生型ATTRポリニューロパチー(ATTRwt-PN)である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記ATTRポリニューロパチーが、家族性ATTRポリニューロパチー(ATTRm-PN)である、請求項40記載の方法。
【請求項43】
前記ATTRm-PNが、30位のバリンのメチオニンへの変異(V30M)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記ATTRm-PNが、64位のフェニルアラニンのロイシンへの変異(F64L)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項42記載の方法。
【請求項45】
前記ATTRm-PNが、114位のチロシンのシステインへの変異(Y114C)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる、請求項42記載の方法。
【請求項46】
ATTR心筋症の対象における化合物1の治療的有効量の投与が、対象のニューヨーク心臓協会(NYHA)機能分類を改善、安定化、又は増悪を遅延する、請求項35~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
化合物1の治療的有効量の投与が、対象のニューヨーク心臓協会(NYHA)機能分類を軽減する、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記NYHA機能分類が、クラスIVからクラスIIIへ、クラスIVからクラスIIへ、又はクラスIVからクラスIへ軽減される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記NYHA機能分類が、クラスIIIからクラスIIへ軽減される、請求項47記載の方法。
【請求項50】
前記NYHA機能分類が、クラスIIIからクラスIへ軽減される、請求項47記載の方法。
【請求項51】
前記NYHA機能分類が、クラスIIからクラスIへ軽減される、請求項47記載の方法。
【請求項52】
ATTR心筋症の対象における化合物1の治療的有効量の投与が、対象のカンサスシティ心筋症質問票(KCCQ)分類の改善、安定化、又は増悪を遅延する、請求項35~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
対象が、対象のカンサスシティ心筋症質問票(KCCQ)分類の少なくとも1レベルの平均改善を有する、請求項52記載の方法。
【請求項54】
ATTR心筋症の対象における化合物1の治療的有効量の投与が、対象のEuroQoL-5ディメンション(EQ-5D-5L)分類を改善、安定化、又は増悪を遅延する、請求項35~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
対象が、EuroQoL-5ディメンション(EQ-5D-5L)効用スコアにおいて少なくとも5ポイントの平均改善を有する、請求項54記載の方法。
【請求項56】
ATTR心筋症の対象における化合物1の治療的有効量の投与が、6分間歩行試験における対象の成績を改善する、請求項35~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
前記対象が、化合物1による治療前に測定したベースライン距離よりも、少なくとも25m更に歩行する、請求項56記載の方法。
【請求項58】
ATTR心筋症の対象における化合物1の治療的有効量の投与が、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の血中血清レベルを減少する、請求項35~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
前記対象のBNPの血中血清レベルが、化合物1による治療前の該対象におけるBNPのベースラインレベルと比べ、少なくとも10%減少する、請求項58記載の方法。
【請求項60】
ATTR心筋症の対象における化合物1の治療的有効量の投与が、N-末端プロ-脳性ナトリウム利尿ペプチド(N-末端プロ-BNP)の血中血清レベルを減少する、請求項35~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
前記対象のN-末端プロ-BNPの血中血清レベルが、化合物1による治療前の該対象におけるN-末端プロ-BNPのベースラインレベルと比べ、少なくとも10%減少する、請求項60記載の方法。
【請求項62】
ATTR心筋症の対象における化合物1の治療的有効量の投与が、治療を受けていない対象と比べ、心臓血管に関連した入院の頻度を減少する、請求項35~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
ATTR心筋症の対象における化合物1の治療的有効量の投与が、治療を受けていない対象と比べ、死亡率を低下する、請求項35~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
ATTRポリニューロパチーの対象における化合物1の治療的有効量の投与が、該対象における神経障害スコア(NIS)を改善する、請求項40~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
前記NISスコアが、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも10%だけ低下される、請求項64記載の方法。
【請求項66】
ATTRポリニューロパチーの対象における化合物1の治療的有効量の投与が、該対象における補正神経障害スコア+7(mNIS+7)を改善する、請求項40~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
前記mNIS+7スコアが、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも10%だけ低下される、請求項66記載の方法。
【請求項68】
ATTRポリニューロパチーの対象における化合物1の治療的有効量の投与が、対象のノーフォークQOL糖尿病性ニューロパチー(QOL-DN)質問票スコアを改善する、請求項40~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
前記ノーフォークQOL-DNスコアが、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも10%だけ改善される、請求項68記載の方法。
【請求項70】
ATTRポリニューロパチーの対象における化合物1の治療的有効量の投与が、対象の複合自律神経症状スコア(COMPASS-31)のスコアを改善する、請求項40~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項71】
前記COMPASS-31スコアが、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも0.5ポイント改善される、請求項70記載の方法。
【請求項72】
ATTRポリニューロパチーの対象における化合物1の治療的有効量の投与が、対象の修正BMI(mBMI)を改善する、請求項40~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項73】
ATTRポリニューロパチーの対象における化合物1の治療的有効量の投与が、対象の10メートル歩行試験速度を改善する、請求項40~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項74】
前記化合物1が、慢性的に投与される、請求項1~73のいずれか一項記載の方法。
【請求項75】
前記化合物1が、28日間投与される、請求項1~73のいずれか一項記載の方法。
【請求項76】
前記化合物1が、56日間投与される、請求項1~73のいずれか一項記載の方法。
【請求項77】
前記化合物1が、84日間投与される、請求項1~73のいずれか一項記載の方法。
【請求項78】
前記化合物1が、18ヶ月間投与される、請求項1~73のいずれか一項記載の方法。
【請求項79】
前記化合物1が、30ヶ月間投与される、請求項1~73のいずれか一項記載の方法。
【請求項80】
前記対象が、利尿治療薬剤を受け取っている、請求項1~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項81】
前記利尿治療薬剤が、フロセミド又はトラセミドである、請求項81記載の方法。
【請求項82】
下記式を有する化合物1:
【化3】
又はその医薬として許容し得る塩を、約10~1,000mg含有する、単回単位用量(single unit dosage)。
【請求項83】
前記単回単位剤形(single unit dosage form)が、化合物1約200mgを含有する、請求項82記載の単回単位剤形。
【請求項84】
前記単回単位剤形が、化合物1約400mgを含有する、請求項82記載の単回単位剤形。
【請求項85】
前記単回単位剤形が、錠剤である、請求項82~84のいずれか一項記載の単回単位用量。
【請求項86】
前記単回単位剤形が、カプセル剤である、請求項82~84のいずれか一項記載の単回単位用量。
【請求項87】
前記化合物1が、HCl塩型である、請求項82~86のいずれか一項記載の単回単位用量。
【請求項88】
請求項82~87のいずれか一項記載の1又は複数の単位用量を含む、キット。
【請求項89】
化合物1の投与に関する指示を記したラベルを更に含む、請求項88記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2018年3月23日に出願された米国特許仮出願第62/647,411号;2018年8月17日に出願された第62/765,096号;2018年9月14日に出願された第62/731,629号;2018年11月9日に出願された第62/758,235号;及び、2019年2月26日に出願された第62/810,651号の、優先権の恩恵を主張するものであり、これらの各開示はそれらの全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【0002】
連邦の支援の研究開発の下で行われた発明に対する権利の陳述
該当なし。
【0003】
コンパクトディスク上に提出される「配列表」、表、又はコンピュータプログラムリストの付属物の言及
本出願はこれにより、本出願と共にコンピュータ可読型で提出される配列表を、その全体で、参照により組み込んでいる。この出願されたファイル名は以下である:「Sequence Listing - 051418-505」。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
タンパク質のミスフォールディング又はシグナル伝達経路の過剰活性化のいずれかを介した、異常なタンパク質相互作用及び凝集は、数多くのヒト変性疾患の基礎となる原因である。従って、標的化タンパク質タンパク質相互作用(PPI)は、治療上興味深いものである。
【0005】
異常なタンパク質凝集の一つのそのような例は、可溶性タンパク質トランスサイレチン(TTR又はプレアルブミン)である。TTRは、血液及び脳脊髄液中に存在する、55kDaのホモ四量体タンパク質である。そのホモ四量体型から解離した場合、TTR二量体は、アミロイド形成的単量体へミスフォールディングし得る。これは、野生型TTR、並びに100種を超える様々な変異したバリアントにより観察される。研究は、TTRの四量体型の安定化は、アミロイド形成性単量体のミスフォールディング、並びにそれに続くTTRアミロイド形成及び沈着を阻害することを示している。
【0006】
タファミジスと称されるベンゾオキサゾール誘導体である(2-(3,5-ジクロロフェニル)-1,3-ベンゾオキサゾール-6-カルボン酸は、異常なTTR凝集及び原線維形成を阻害することが説明されており、且つ家族性及び野生型TTR患者の心筋症の治療に関する臨床試験が進行している。タファミジスは依然、主要医薬品登録機関であるFDAによる評価段階にある。
【0007】
異常なTTR凝集及び原線維形成を伴う対象の治療の管理及び改善において努力が続けられているにもかかわらず、未だほとんど改善はない。例えば、米国における最大のアミロイド照会センターであるMayo Clinicからの最新のレトロスペクティブな総説は、1965年と2013年の間で、TTRアミロイド心筋症(ATTR-CM)の対象の全体の死亡率において認識できる変化はないことを指摘した(Groganら、J Am Coll Cardiol 2016; 68(10): 1014-20)。
【0008】
従って、異常なTTR凝集及び原線維形成を治療する方法を提供することの必要性が、当該技術分野において存在する。本開示は、これらの必要性に対処し、且つ更に関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0009】
簡単な発明の概要
一部の態様において、トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスを、それを必要とする対象において治療する方法であって、下記式を有する化合物1:
【化1】
又はその医薬として許容し得る塩の治療的有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含み、ここで該治療的有効量が、総一日量約50mg~2,000mgである方法が、本明細書に提供される。
【0010】
一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約800mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約1,600mgである。一部の実施態様において、化合物1のHCl塩型が投与される。
【0011】
一部の実施態様において、化合物1は、1日1回投与される。一部の実施態様において、化合物1は、1日2回投与される。
【0012】
一部の態様において、トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスを、それを必要とする対象において治療する方法であって、下記式を有する化合物1:
【化2】
又はその医薬として許容し得る塩の治療的有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含み、ここで化合物1の治療的有効量が、化合物1の所望のトラフ血中血漿濃度を維持する方法が、本明細書に提供される。
【0013】
追加の態様において、下記式を有する化合物1:
【化3】
又はその医薬として許容し得る塩の約10~1,000mgの単回単位用量(single unit dosage)が、本明細書に提供される。
【0014】
一部の実施態様において、単回単位剤形(single unit dosage form)は、化合物1の200mgを含有する。一部の実施態様において、単回単位剤形は、化合物1の400mgを含有する。一部の実施態様において、単回単位用量は、化合物1のHCl塩を含有する。
【0015】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、AG10・HClの経口投与量50mg、150mg、300mg、及び800mgでの、単回投与漸増コホート1-4の薬物動態(PK)プロファイルを示す。
【0017】
【
図2】
図2は、単回投与漸増コホート3(AG10・HClの経口投与量300mg)における、摂食、対、絶食の対象のPKプロファイルを示す。
【0018】
【
図3】
図3は、12日間にわたる、12時間毎の、AG10・HClの経口投与量100mg、300mg、800mgでの、反復投与漸増コホート1-3のPKプロファイルを示す。
【0019】
【
図4】
図4は、時間の関数としての、標的会合率を表す、単回投与漸増コホート3(AG10・HClの経口300mg)の蛍光プローブ排除(FPE)アッセイの時間経過を示す。このコホートにおいて、6名の対象には、化合物1が投与されるのに対し、2名の対象には、プラセボが投与される。プラセボ群は、対象1及び4である。
【0020】
【
図5】
図5は、時間の関数としての、標的会合率を表す、単回投与漸増コホート4(AG10・HClの経口800mg)のFPEアッセイの時間経過を示す。このコホートにおいて、6名の対象には、化合物1が投与されるのに対し、2名の対象には、プラセボが投与される。プラセボ群は、対象1及び7である。
【0021】
【
図6】
図6は、時間の関数としての、各単回投与漸増コホートに関する、平均標的会合率を示す。
【0022】
【
図7A】
図7Aは、単回投与漸増コホート3(AG10・HClの300mg)に関するウェスタンブロットデータを示す。ゲルの側方の矢印は、分子量及びTTR特異抗体による認識を基にした、TTR四量体の位置を示す。
【
図7B】
図7Bは、単回投与漸増コホート3(AG10・HClの300mg)に関するウェスタンブロットデータを示す。ゲルの側方の矢印は、分子量及びTTR特異抗体による認識を基にした、TTR四量体の位置を示す。
【
図7C】
図7Cは、単回投与漸増コホート3(AG10・HClの300mg)に関するウェスタンブロットデータを示す。ゲルの側方の矢印は、分子量及びTTR特異抗体による認識を基にした、TTR四量体の位置を示す。
【
図7D】
図7Dは、単回投与漸増コホート3(AG10・HClの300mg)に関するウェスタンブロットデータを示す。ゲルの側方の矢印は、分子量及びTTR特異抗体による認識を基にした、TTR四量体の位置を示す。
【0023】
【
図8】
図8は、単回投与漸増コホート3(AG10・HClの経口300mg)に関するウェスタンブロットデータとFPEデータの間の相関を示している。
【0024】
【
図9】
図9は、12日間を通じた反復投与漸増コホート1(AG10・HClの経口100mg、q12h)に関するFPEアッセイの時間経過を示す。このコホートにおいて、6名の対象には、化合物1が投与されたのに対し、2名の対象には、プラセボが投与された。プラセボ群は、対象1及び8である。
【0025】
【
図10】
図10は、12日間を通じた反復投与漸増コホート2(AG10・HClの経口300mg、q12h)に関する、FPEアッセイの時間経過を示す。このコホートにおいて、6名の対象には、化合物1が投与されたのに対し、2名の対象には、プラセボが投与された。プラセボ群は、対象3及び5である。
【0026】
【
図11】
図11は、12日間を通じた反復投与漸増コホート3(AG10・HClの経口800mg、q12h)に関する、FPEアッセイの時間経過を示す。このコホートにおいて、6名の対象には、化合物1が投与されたのに対し、2名の対象には、プラセボが投与された。プラセボ群は、対象1及び7である。
【0027】
【
図12】
図12は、FPEアッセイを使用する、12日間を通じたコホート3(AG10・HClの経口800mg、q12h)に関する、ピーク、平均、及びトラフの標的会合率を示す。
【0028】
【
図13】
図13は、反復投与漸増コホート3(AG10・HClの経口800mg、q12h)に関するウェスタンブロットデータを示す。ゲルの側方の矢印は、分子量及びTTR特異抗体による認識を基にしたTTR四量体の位置を示す。対象1及び3は、AG10を受け取るのに対し、対象2は、プラセボを受け取った。
【0029】
【
図14】
図14は、単回投与漸増コホート及び反復投与漸増コホートから集約された薬物動態及び薬力学のデータを示し、ここでは予測される投与量-反応性PD作用が存在する。
【0030】
【
図15】
図15は、AG10アナログ1、2、3、及び4の合成を示す。a)5a、i.アセチルアセトン、DBU、ベンゼン、rt、3日間;ii.ヒドラジン水和物、エタノール、90℃、4h;iii.NaOH、MeOH/水、50℃、14h;b)5b、i.アセチルアセトン、DBU、ベンゼン、rt、3日間;ii.ヒドラジン水和物、エタノール、90℃、4h;c)i.NaH、MeI、DMF、rt、12時間;ii.NaOH、MeOH/水、50℃、14h;d)5b、i.3,5-ヘプタンジオン、DBU、ベンゼン、rt、3日間;ii.ヒドラジン水和物、エタノール、90℃、4時間;e)NaOH、MeOH/水、50℃、14時間。
【0031】
【
図16】
図16A-Cは、緩衝液中のTTRに関する安定化剤の結合親和性及び効能を示す。(a)ITCにより評価したTTRの安定化剤との相互作用。熱力学データ(表5に要約);ΔGは青色バーであり、ΔHは緑色バーであり、且つ-TΔSは赤色バーである。(b)プローブ単独(対照DMSO)又はTTR安定化剤(2.5μM;安定化剤のTTRに対する比1:1)の存在下でモニタリングしたFPEプローブによる、緩衝液中のTTR(2.5μM)の修飾により引き起こされた蛍光変化。(c)プローブ単独と比較した、3時間のインキュベーション後に測定したFPEプローブの存在下での、安定化剤による緩衝液中のTTRの占有率の棒グラフ表示。エラーバーは、SDを示す(n=3)。有意差は、一元配置ANOVA、それに続くテューキー多重比較検定により測定した(*p≦0.05;***p≦0.001)。
【0032】
【
図17】
図17A-Dは、ヒト血清中のTTRの占有及び安定化における安定化剤の有効性を示す。(a)以下の指定された投与量で投与された場合の、定常状態でのそれらの推定平均臨床C
maxで試験したAG10(10μM)及び他の安定化剤の存在下での酸媒介された(pH4.0)変性に供されたヒト血清中のTTRの安定化に関する代表的ウェスタンブロット画像:ジフルニサル(250mg、BID、200μM);タファミジス(80mg、qd)、20μM;トルカポン(100mg、tid)、20μM。(b)ウェスタンブロット実験から得られた安定化データの棒グラフ表示。エラーバーは、SDを示す(n=3)。(c)プローブ単独(対照DMSO)、AG10(10μM)、又はTTR安定化剤(それらの推定平均臨床定常状態C
maxにおいて)の存在下でモニタリングしたFPEプローブによるヒト血清中のTTRの修飾により引き起こされた蛍光変化。(d)プローブ単独と比較した、3時間のインキュベーション後に測定したFPEプローブの存在下での、安定化剤による緩衝液中のTTRの占有率の棒グラフ表示。エラーバーは、SDを示す(n=4)。有意差は、一元配置ANOVA、それに続くテューキー多重比較検定により測定した(n.s.、有意ではない;*p≦0.05;**p≦0.01;***p≦0.001)。
【0033】
【
図18】
図18A-Dは、T119M変異及びAG10のTTRへの結合により引き起こされた類似の相互作用を協調する結晶構造を示す。(a)個別に着色した単量体によるリボン表示として示したV122I-TTR(PDB:4HIQ)に結合したAG10の四次構造を示す。結合部位を構成する四量体の2つの単量体について異なる色のリボンを伴う2つの同一T4結合部位の一つの拡大図。AG10のピラゾール環とS117/117’の間の重要な水素結合は、破線により強調している。(b)S117とS117’のヒドロキシル基の間の重要な相互作用を強調する破線をつけた、安定化しているT119M-TTRバリアント(PDB:1FHN)の結晶構造。(c)TTRwt(PDB:3CFM)の結晶構造。(d)熱力学的に安定化したR104H-TTR(PDB:1X7T)の結晶構造。
【0034】
【
図19】
図19A-Eは、AG10のピラゾール環とTTRのS117/S117’の間の水素結合は、TTRへの効果的結合に重要であることを図示している。(a)合成されたAG10アナログ1、2、3、及び4の化学構造及びインシリコドッキング試験。ドッキング実験に使用したTTRに結合したAG10の共結晶。1は、AG10のヨード-アナログである。2は、K15/15’と塩橋を形成することができないAG10のメチル-エステル型である。3は、K15又はK15’のいずれかと唯一の水素結合を潜在的に形成することができるAG10のメチル-ピラゾール型である。4は、S117/S117’との両方の水素結合に影響を及ぼすAG10のジエチル-ピラゾールアナログである。(b)ITCにより評価したTTRのアナログとの相互作用。熱力学データ;ΔGは青色バーであり、ΔHは緑色バーであり、且つ-TΔSは赤色バーである。(c)プローブ単独(対照DMSO)又はTTR安定化剤(2.5μM;安定化剤のTTRに対する比1:1)の存在下でモニタリングしたFPEプローブによる、緩衝液中のTTR(2.5μM)の修飾により引き起こされた蛍光変化。(d)プローブ単独と比較した、3時間のインキュベーション後に測定したFPEプローブの存在下での、安定化剤による緩衝液中のTTRの占有率の棒グラフ表示。エラーバーは、SDを示す(n=3)。(e)アナログ(10μM;安定化剤のTTRに対する比2:1)によるヒト血清中のTTRの安定化に関するウェスタンブロットデータの棒グラフ表示。エラーバーは、SDを示す(n=4)。有意差は、一元配置ANOVA、それに続くテューキー多重比較検定により測定した(n.s.、有意ではない;*p≦0.05;**p≦0.01;***p≦0.001)。
【0035】
【
図20】
図20A-Fは、AG10は、アルブミン又は他の豊富なヒト血清タンパク質を上回るTTR結合に関する高い選択性を有することを図示している。(a)精製したヒト血清アルブミン(600μM)と一緒にインキュベーションしたAG10及びタファミジス(各々30μM)を比較する、ゲル濾過及び透析アッセイ。ゲル-濾過後(すなわち透析時間0時間)にアルブミンに結合したタファミジスの濃度を、100%に規準化した。エラーバーは、SDを示す(n=3)。(b)精製したヒトTTR(5μM)と一緒にインキュベーションしたAG10(10μM)の透析に関する24時間の時間経過。エラーバーは、SDを示す(n=3)。(c)プローブ単独(黒円形)、プローブ+アルブミン(600μM)(黒三角)、プローブ+全て[フィブリノゲン(5μM)、アルブミン(600μM)、IgG(70μM)、トランスフェリン(25μM)](灰三角);プローブ及びAG10(10μM)(赤四角)、又はプローブ及びAG10+アルブミン(緑菱形)、プローブ及びAG10+全て[フィブリノゲン(5μM)、アルブミン(600μM)、IgG(70μM)、トランスフェリン(25μM)](青円形)の存在下で6時間モニタリングしたFPEプローブによる、精製したヒトTTR(5μM)の修飾に起因した蛍光変化。(d)プローブ単独と比較した、3時間のインキュベーション後に測定したFPEプローブ又は他の血清タンパク質の存在下での、AG10による緩衝液中のTTR占有%。(e、f)AG10について説明したものと同じ実験を、タファミジスについて行った。エラーバーは、SDを示す(n=3)。有意差は、一元配置ANOVA、それに続くテューキー多重比較検定により測定した(n.s.、有意ではない;*p≦0.05;**p≦0.01;***p≦0.001)。
【0036】
【
図21】
図21A-Dは、プールしたイヌ血清により行ったFPE及びウェスタンブロットアッセイにおけるAG10及びタファミジスの活性を示す。(a)プローブ単独(対照DMSO、黒円形)、AG10(10μM)又はタファミジス(10μM)の存在下でモニタリングしたFPEプローブによる、市販のビーグル犬血清中のイヌTTRの修飾により引き起こされた蛍光変化。(b)プローブ単独と比較した、3時間のインキュベーション後に測定したFPEプローブの存在下での、AG10及びタファミジスによるイヌ血清中のイヌTTRの占有率。エラーバーは、SDを示す(n=4)。(c)AG10(10μM)及びタファミジス(10μM)の存在下で酸媒介された変性に対するプールされたイヌ血清中のTTRの安定化に関するウェスタンブロット画像。血清試料は、架橋及び免疫ブロッティング前に、酢酸緩衝液(pH4.0)中で、DMSO又は被験化合物と一緒に所望の時間(0及び72時間)インキュベーションした。(d)ウェスタンブロット実験から得られた安定化データの棒グラフ表示。エラーバーは、SDを示す(n=3)。有意差は、一元配置ANOVA、それに続くテューキー多重比較検定により測定した(n.s.、有意ではない;*p≦0.05;**p≦0.01;***p≦0.001)。
【0037】
【
図22】
図22A-Dは、経口投与されたAG10は、イヌにおけるTTRの結合及び安定化に有効であることを示す。(a及びb)投与量漸増のAG10の経口投与(QDで7日間)後の、ビーグル犬におけるTTRの占有。円形(●)は、1日目投薬前を示し、四角形(■)は、7日目投薬前(C
minでのAG10濃度)を示し、且つ三角形(▲)は、7日目投薬後(C
maxでのAG10濃度)を示す。4群の動物に投薬した:(i)0mg/kg(n=12、6雄/6雌);(ii)50mg/kg(n=4、2雄/2雌);(iii)100mg/kg(n=4、2雄/2雌);(iv)200mg/kg(n=12、6雄/6雌)。(b)3時間でのTTR占有を表す棒グラフ。エラーバーは、SDを示す(n=3)。(c及びd)AG10・HClの(c)5mg/kg及び(d)20mg/kgの単回経口投与量を受け取るイヌにおけるAG10の薬物動態-薬力学(PK-PD)分析。様々な時点でイヌから得られた血清試料の濃度[AG10]、対、TTR占有%の散布図(n=4、1つの投薬群につき2雄/2雌)。エラーバーは、SDを示す(n=3)。有意差は、一元配置ANOVA、それに続くテューキー多重比較検定により測定した(n.s.、有意ではない;*p≦0.05;**p≦0.01;***p≦0.001)。
【0038】
【
図23】
図23は、AG10・HClの5mg/kgの経口投薬後の3匹の雄カニクイザル由来の血清中の3時間での、TTR占有%を図示している。データは、3回の繰り返しの平均±SDである。
【0039】
【
図24】
図24は、サルにおける経口投与されたAG10とTTR安定化の間の投与量依存の関係を図示している。
【0040】
【
図25】
図25は、Aviva Systems BiologyのプレアルブミンELISAキット(ヒト)を使用し作製された標準較正曲線を示す。
【0041】
【
図26】
図26は、各MADコホート(投薬された健常志願者の総数=24;プラセボ:実薬=1:3;MAD1コホート=100mg Q12hを12日間;MAD2コホート=300mg Q12hを12日間;MAD3コホート=800mg Q12hを12日間)に関する経時的TTR濃度の相対変化を示す。この変化は、ベースライン値に対して規準化することにより計算した。
【0042】
【
図27】
図27は、全てのプラセボ及びAG10処置したMAD対象におけるベースラインから12日目までの血中血清TTR濃度における平均変化率を図示している。
【0043】
【
図28】
図28は、全てのプラセボ及びAG10・HCl処置したコホート(投薬された健常志願者の総数=24;プラセボ:実薬=1:3;MAD1コホート=100mg Q12hを12日間;MAD2コホート=300mg Q12hを12日間;MAD3コホート=800mg Q12hを12日間)におけるベースライン及び12日目の血中血清TTR濃度をプロットしている。
【0044】
【
図29】
図29は、全てのプラセボ及びAG10処置したコホート(投薬された健常志願者の総数=24;プラセボ:実薬=1:3;MAD1コホート=100mg Q12hを12日間;MAD2コホート=300mg Q12hを12日間;MAD3コホート=800mg Q12hを12日間)におけるベースライン及び12日目の血中血清TTR濃度をプロットしている。
【0045】
【
図30】
図30は、各処置群の対象に関する血清TTRレベルの投与量-反応変化を図示している。データは、ベースラインから28日目までの変化の百分率として報告している。
【0046】
【
図31】
図31は、AG10並びにTTR安定化剤タファミジス及びジフルニサルは全て、TTR血清濃度を増加することを示している。報告されたAG10コホートに関するTTR血清濃度は、処置の28日後である。報告されたタファミジスのTTR血清濃度は、2週目及び6週目の値を基に内挿した28日目である。報告されたジフルニサルのTTR血清濃度は、処置後1年である。
【0047】
【
図32】
図32は、ATTR-CM患者において、AG10処置は、低いTTRレベルを、正常範囲に回復することを示す。血清TTR濃度の低レベル及び正常レベルを示している各処置群(プラセボ、400mg BID、及び800mg BID)におけるATTR-CM患者の百分率が、処置前(左側)及び処置28日後(右側)に報告されている。
【0048】
【
図33】
図33は、第2相試験に参加している各個人のベースライン血清TTR濃度の分布を、プロットしている。
【0049】
【
図34】
図34は、四量体TTRの安定化を評価するためにウェスタンブロットアッセイにより決定されたTTRの安定化率を図示している。提供されたデータは、本試験における全ての個人(左側カラム)、WT-TTRの個人(中央カラム)、及び変異体TTRの個人(右側カラム)に関する。提供されたエラーバーは、平均の標準誤差である。
【0050】
【
図35】
図35は、28日目トラフ(投薬前)及び28日目ピーク(投薬後1時間)での、蛍光プローブアッセイにより決定されたAG10の占有率を図示している。提供されたデータは、本試験の全ての個人(塗りつぶしカラム)、WT-TTRの個人(白色カラム)、及び変異体TTRの個人(市松柄カラム)に関する。
【0051】
【
図36】
図36は、蛍光プローブ結合と血中血漿AG10の濃度の間の関係をプロットしている。蛍光プローブがTTRに結合している場合は、プローブ蛍光が測定され、AG10の占有のために蛍光プローブがTTRに結合することができない場合は、蛍光は測定されない。
【0052】
【
図37】
図37は、指定された時点で蛍光プローブアッセイにおいて測定した相対蛍光単位をプロットしている。投薬前は、トラフレベルであるのに対し、投薬の1時間後(1 hour pose dose)は、ピークレベルである。y-軸は、バックグラウンドについて補正した60分の相対蛍光単位の平均値を表す。データ提示は、400mgのAG10・HCl塩をBIDで受け取る個人に由来する。
【0053】
【
図38】
図38は、指定された時点で蛍光プローブアッセイにおいて測定した相対蛍光単位をプロットしている。y-軸は、バックグラウンドについて補正した60分の相対蛍光単位の平均値を表す。投薬前は、トラフレベルであるのに対し、投薬の1時間後は、ピークレベルである。データ提示は、800mgのAG10・HCl塩をBIDで受け取る個人に由来する。
【0054】
【
図39】
図39は、指定された時点で蛍光プローブアッセイにおいて測定した相対蛍光単位をプロットしている。y-軸は、バックグラウンドについて補正した60分の相対蛍光単位の平均値を表す。投薬前は、トラフレベルであるのに対し、投薬の1時間後は、ピークレベルである。データ提示は、プラセボ処置を受け取る個人に由来する。
【0055】
【
図40】
図40は、14日目トラフ(投薬前)及び14日目ピーク(投薬後0.5時間)での、蛍光プローブアッセイにより決定されたAG10の占有率を図示している。提供されたデータは、V30M変異を有するTTRタンパク質を伴うAG10・HCl処置群の800mg BID投薬群の個人に関する。
【0056】
【
図41】
図41は、四量体TTRの安定化を評価するための、ウェスタンブロットアッセイにより決定されたTTRの安定化率を図示している。提供されたデータは、V30M変異を有するTTRタンパク質を伴うAG10・HCl処置群の800mg BIDの個人に関する。
【0057】
【
図42】
図42A-Dは、母集団PKモデルにおける変量効果(ETA)、対、カテゴリ共変量プロットをプロットしている。パネルA及びBは、クリアランスに対する効果をプロットしているのに対し、パネルC及びDは、容積に対する効果をプロットしている。“DIS”と記されたプロット(パネルA及びC)において、0=健常志願者、1=罹患した対象である。“ConMed1”と記されたプロット(パネルB及びD)において、0=フロセミド又はトラセミド(Torsemide)のいずれかを受け取った対象、1=フロセミド又はトラセミドのいずれも受け取っていない患者である。DIS:0(n=42)=全てAG10-001(SAD及びMAD)からのAG10処置した健常成人志願者。1(n=32)=これらは全て、母集団PK解析に含まれた、AG10-201からの実薬ATTR-CM患者である。400mg BID群16名及び800mg BID群16名。ConMed1:0(n=49)=併用利尿薬:フロセミド又はトラセミドを受け取っていない対象(42名の健常成人志願者、7名のATTR-CM患者)、1(n=25)=フロセミド又はトラセミドのいずれかを受け取っている対象。
【0058】
【
図43】
図43は、MAD 3(試験AG10-001)からの12日目のAG10のトラフレベルの、800mg BIDが投薬されたATTR-CM患者(AG10-201)におけるトラフレベルに対する比較をプロットしている。ボックス及びウィスカプロットは、各群の最高値に対し最も小さく広がるウィスカを持つ結果の25パーセンタイルから75パーセンタイルを示す。直線は中央値を示し、+は平均を示す。両方の試験は、投薬に関して200mg AG10錠剤を使用した。
【0059】
【
図44】
図44は、400mg錠剤で処置した健常対象におけるAG10のトラフレベルの、AG10-201からの400mg BIDが投薬されたATTR-CM患者におけるトラフレベルに対する比較をプロットしている。ボックス及びウィスカプロットは、各群の最高値に対し最も小さく広がるウィスカを持つ結果の25パーセンタイルから75パーセンタイルを示す。直線は中央値を示し、+は平均を示す。健常志願者試験(AG10-003)は、投薬に関して400mg AG10錠剤を使用し、第2相試験AG10-201は、投薬に関して200mg錠剤を使用した。
【0060】
【
図45】
図45は、ATTR-CMの対象における第3相臨床試験に関する治験デザインのまとめを示している。
【0061】
【発明を実施するための形態】
【0062】
発明の詳細な説明
I. 全般
本明細書において対象におけるトランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスの治療方法が、説明されている。これらの方法は、対象の治療において大きい有効性を有し且つ対象において良く忍容される特定の投薬レジメンを含む。
【0063】
II. 定義
本発明の様々な実施態様及び態様が、本明細書において示され且つ説明されているが、そのような実施態様及び態様は、単に例のために提供されることは当業者には明白であろう。数多くの変動、変化、及び置き換えを、本発明から逸脱することなく、当業者にはここで思いつく。本明細書において説明された本発明の実施態様に対する様々な改変が、本発明の実践において利用され得ることは理解されるべきである。
【0064】
本明細書において使用される節見出しは、単にまとめることを目的とし、説明された目的を限定するために構築されるものではない。非限定的に特許、特許出願、記事、書籍、マニュアル、及び論文を含む、本出願に引用された全ての文献、又は文献の一部は、何らかの目的のためにそれらの全体が引用により本明細書中に明確に組み込まれている。
【0065】
別に定義しない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語は、当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Singletonらの「Dictionary of Microbiology and Molecular Biology」第2版、J. Wiley & Sons社(ニューヨーク, NY 1994);Sambrookらの「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」、Cold Springs Harbor Press社(コールドスプリングハーバー、NY 1989)を参照されたい。本明細書に説明されたものと類似又は同等の任意の方法、装置及び材料を、本発明の実践において使用することができる。以下の定義は、本明細書において頻用される特定の用語の理解を促進するために提供され、本開示の範囲を限定する意味はない。
【0066】
「化合物1」は、下記式を有する化学物質3-(3-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)プロポキシ)-4-フルオロ安息香酸(AG10)、
【化4】
(化合物1)
又はそれらの医薬として許容し得る塩を意味する。患者へ投与される化合物1の特定の量を言及する場合、本出願は、投与される化合物1のHCl塩の量を意味する。当業者は、遊離塩基又は異なる塩型の化合物1の同量を投与するために、投与される全体量の微調整が必要であることを認めるであろう。
【0067】
本明細書において使用される用語「ある(a)又は(an)」は、1又は複数を意味する。
【0068】
用語「含んでなる(comprise)」、「含む(include)」、及び「有する(have)」は、本明細書において、包括的無制限の用語として互換的に使用される。例えば、「含んでなっている」、「含んでいる」、及び「有している」の使用は、要素を含んでなるか、有するか又は含まれるかにかかわらず、その動詞を含む条項の対象により包含される要素のみではないことを意味する。
【0069】
本明細書において使用される用語「約」は、当業者が特定された値に合理的に類似していると考える、特定された値を含む値の範囲を意味する。一部の実施態様において、用語「約」は、一般に当該技術分野において許容され得る測定を使用する標準偏差内を意味する。一部の実施態様において、約は、特定された値の±10%に広がる範囲を意味する。一部の実施態様において、約は、特定された値を意味する。
【0070】
本明細書において使用される「治療」又は「治療している」又は「緩和している」又は「改善している」は、本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、治療的恩恵を含むが、これに限定されるものではない、有益な又は所望の結果を得るための方式を指す。治療的恩恵により、治療される基礎となる障害の根絶又は改善を意味する。また、治療的恩恵は、対象が基礎となる障害に依然患わされているとしても、改善が対象において認められるように、基礎となる障害に関連した1又は複数の生理的症状の根絶又は改善により達成される。治療は、組成物の投与により、疾患の臨床症状の進展の遅延を引き起こすこと;疾患を抑制する、すなわち疾患の臨床症状の軽減を引き起こすこと;疾患を阻害する、すなわち症状の最初の出現後に組成物を投与することにより臨床症状の進展を停止すること;及び/又は、疾患を和らげる、すなわちそれらの最初の出現後に組成物を投与することにより臨床症状の退行を引き起こすことを含む。例えば、本明細書記載の特定の方法は、TTR原線維形成の出現又は進行を減少もしくは軽減することにより、トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスを治療するか;又は、TTRアミロイドーシスの症状を減少することにより、TTRアミロイドーシスを治療する。
【0071】
「有効量」又は「医薬的有効量」は、言及された目的を達成する(例えば、投与される目的の効果を達成する、疾患を治療する、酵素活性を減少する、疾患又は病態の1又は複数の症状を軽減する)のに十分な量である。「有効量」の例は、疾患の1又は複数の症状の治療、又は軽減に寄与するのに十分な量であり、これはまた「治療的有効量」とも称される。1又は複数の症状の「軽減」(及びこの語句の文法的同等物)は、症状(複数可)の重症度もしくは頻度の減少、又は症状(複数可)の除去を意味する。有効性はまた、「-倍」の増加又は減少としても表すことができる。例えば、治療的有効量は、対照よりも少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、又はそれ以上の効果を有することができる。
【0072】
「患者」又は「対象」又は「それを必要とする対象」は、本明細書に提供される方法を使用することにより治療され得る疾患又は病態に罹患している又はその傾向がある生体を指す。この用語は、対象は特定の疾患と診断されていることを必ずしも示さないが、典型的には医学的監視下の個人を指す。非限定的例は、ヒト、他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、乳牛、シカ、及び他の非-哺乳動物の動物を含む。一部の実施態様において、患者、対象、又はそれを必要とする対象は、ヒトである。
【0073】
III. 実施態様の詳細な説明
方法
一態様において、トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスを治療する方法が、本明細書に提供される。この方法は、下記式を有する化合物1:
【化5】
又はその医薬として許容し得る塩の治療的有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含み、ここでこの治療的有効量は、総一日量約10mg~2,000mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約10mg~50mg、50mg~300mg、50mg~150mg、150mg~800mg、800mg~1,600mg、又は800mg~2,000mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約10mg~50mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約50mg~300mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、50mg~150mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、150mg~800mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、800mg~1,600mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、800mg~2,000mgである。本開示において、列挙された化合物1の量は、投与される化合物1のHCl塩の量であることが、理解される。当業者は、遊離塩基又は異なる塩型の化合物1の同量を投与するために、投与される全体量の微調節が必要であることを認めるであろう。
【0074】
一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約10mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約25mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約50mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約1000mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約150mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約200mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約300mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約600mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約800mgである。一部の実施態様において、化合物1の総一日量は、約1,6000mgである。
【0075】
化合物1は、1日に1回(SID又はqd)、2回(BID又はq12h)、3回(TID)、又は4回(QID)で投与されることができる。一部の実施態様において、化合物1は、1日1回投与される。一部の実施態様において、化合物1は、1日2回投与される。一部の実施態様において、化合物1は、1日3回投与される。一部の実施態様において、化合物1は、1日4回投与される。
【0076】
一部の実施態様において、化合物1の約50mgが、1日1回投与される。一部の実施態様において、化合物1の約150mgが、1日1回投与される。一部の実施態様において、化合物1の約300mgが、1日1回投与される。一部の実施態様において、化合物1の約800mgが、1日1回投与される。
【0077】
一部の実施態様において、化合物1の約100mgが、1日2回投与される。一部の実施態様において、化合物1の約300mgが、1日2回投与される。一部の実施態様において、化合物1の約400mgが、1日2回投与される。一部の実施態様において、化合物1の約800mgが、1日2回投与される。
【0078】
別の態様において、トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスを治療する方法が、本明細書に提供される。この方法は、下記式を有する化合物1:
【化6】
又はその医薬として許容し得る塩の治療的有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含み、ここで化合物1の治療的有効量は、少なくとも5μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する。一部の実施態様において、化合物1の治療的有効量は、少なくとも6μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する。一部の実施態様において、化合物1の治療的有効量は、少なくとも7.5μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する。一部の実施態様において、化合物1の治療的有効量は、少なくとも8μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する。
【0079】
一部の実施態様において、化合物1の治療的有効量は、5~30μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する。一部の実施態様において、化合物1の治療的有効量は、5~25μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する。一部の実施態様において、化合物1の治療的有効量は、6~20μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する。一部の実施態様において、化合物1の治療的有効量は、7.5~15μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する。一部の実施態様において、化合物1の治療的有効量は、7.5~10μMの化合物1のトラフ血中血漿濃度を維持する。
【0080】
一部の実施態様において、治療的有効量の化合物1を受け取る対象は、ベースラインレベルに比べ、トランスサイレチン(TTR)の血中血清濃度の増加を経験している。一部の実施態様において、治療的有効量の化合物1を受け取る対象は28日間の治療後に、ベースラインレベルと比べ、トランスサイレチン(TTR)の血中血清濃度の少なくとも約10、15、20、25、30%又はそれ以上の増加を経験している。一部の実施態様において、治療的有効量の化合物1を受け取る対象は、28日間の治療後に、ベースラインレベルと比べ、トランスサイレチン(TTR)の血中血清濃度の少なくとも約25%の増加を経験している。一部の実施態様において、治療前の対象は、ベースライン血清(seru)TTR濃度(20mg/dL TTR)を下回るTTR血中血清レベルを有する。一部の実施態様において、有効量の化合物1を28日間受け取っている対象は、血中血清TTRのレベルがベースラインレベルを上回るような、増加した血中血清TTRレベルを経験している。一部の実施態様において、増加したTTRレベルを経験している対象は、トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)心筋症と診断された対象である。
【0081】
トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスに関連した様々な疾患又は障害が存在する。これらは、家族性アミロイドポリニューロパチー、家族性アミロイド心筋症、老人性全身性アミロイドーシス、中枢性アミロイドーシス、眼アミロイドーシス、脳軟膜アミロイドーシス、眼軟膜アミロイドーシス、硝子体アミロイドーシス、消化管アミロイドーシス、神経原性アミロイドーシス、非-神経原性アミロイドーシス、非-遺伝性アミロイドーシス、反応性/続発性アミロイドーシス、脳アミロイドーシスを含むが、これらに限定されるものではない。
【0082】
一部の実施態様において、トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスに関連した疾患又は障害は、脳軟膜アミロイドーシスである。一部の実施態様において、脳軟膜アミロイドーシスの対象は、18位のアスパラギン酸のグリシンへの変異(D18G)を伴うトランスサイレチンタンパク質を有する。一部の実施態様において、脳軟膜アミロイドーシスの対象は、53位のグリシンのアルギニンへの変異(G53R)を伴うトランスサイレチンタンパク質を有する。野生型トランスサイレチン(TTR)タンパク質は、配列番号:1として本明細書に提供される。
【0083】
一部の実施態様において、脳軟膜アミロイドーシスの対象は、114位のチロシンのシステインへの変異(Y114C)を伴うトランスサイレチンタンパク質を有する。114位のチロシンのシステインへの変異(Y114C)を持つ対象は、ATTRm-PN症状、脳軟膜アミロイドーシス症状、又は両方の組合せを示し得る。
【0084】
一部の実施態様において、脳軟膜アミロイドーシスの対象は、49位のトレオニンのプロリンへの変異(T49P)を伴うトランスサイレチンタンパク質を有する。49位のトレオニンのプロリンへの変異(T49P)を持つ対象は、ATTRm-CM症状、脳軟膜アミロイドーシス症状、又は両方の組合せを示し得る。
【0085】
一部の実施態様において、トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシス疾患は、トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)心筋症又はATTRポリニューロパチーである。一部の実施態様において、TTRアミロイドーシスは、60位のトレオニンのアラニンへの変異(T60A)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる。一部の実施態様において、TTRアミロイドーシスは、24位のプロリンのセリンへの変異(P24S)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる。一部の実施態様において、TTRアミロイドーシスは、38位のアスパラギン酸のアラニンへの変異(D38A)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる。一部の実施態様において、TTRアミロイドーシスは、58位のロイシンのヒスチジンへの変異(L58H)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる。これらの変異を伴う患者では、ATTR心筋症とATTRポリニューロパチーの両方の症状の組合せが存在することが多い。野生型トランスサイレチン(TTR)タンパク質は、配列番号:1として本明細書に提供される。
【0086】
一部の実施態様において、トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシス疾患は、トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)心筋症である。一部の実施態様において、トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシス疾患は、トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)ポリニューロパチーである。
【0087】
ATTR心筋症は、野生型ATTR心筋症(ATTRwt-CM)及び遺伝性(家族性)ATTR心筋症(ATTRm-CM)を含む。ATTRm-CMは、TTRタンパク質の変異により引き起こされるのに対し、ATTRwt-CMは、変異により引き起こされない。代わりに、ATTRwt-CMは、一般に経過は加齢に関連している。一部の実施態様において、ATTR心筋症は、ATTRwt-CMである。一部の実施態様において、ATTR心筋症は、ATTRm-CMである。一部の実施態様において、ATTRm-CMの対象は、TTRタンパク質において、122位のバリンのイソロイシンへの変異(V122I)を有する。一部の実施態様において、ATTRm-CMの対象は、49位のトレオニンのプロリンへの変異(T49P)を有する。49位のトレオニンのプロリンへの変異(T49P)を伴う対象は、ATTRm-CM症状、脳軟膜アミロイドーシス症状、又は両方の組合せを示し得る。野生型トランスサイレチン(TTR)タンパク質は、配列番号:1として本明細書に提供される。
【0088】
ATTRポリニューロパチーは、野生型及び遺伝性(家族性)の両方のATTRポリニューロパチーを含む。心筋症について考察したように、ATTRm-PNは、TTRタンパク質の変異により引き起こされるのに対し、ATTRwt-PNは、遺伝的成分を含まない。一部の実施態様において、ATTR-PNは、ATTRwt-PNである。一部の実施態様において、ATTR-PNは、ATTRm-PNである。一部の実施態様において、ATTRm-PNは、30位のバリンのメチオニンへの変異(V30M)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる。一部の実施態様において、ATTRm-PNは、64位のフェニルアラニンのロイシンへの変異(F64L)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる。一部の実施態様において、ATTRm-PNは、114位のチロシンのシステインへの変異(Y114C)を含むTTRタンパク質により特徴付けられる。114位のチロシンのシステインへの変異(Y114C)を伴う対象は、ATTRm-PN症状、脳軟膜アミロイドーシス症状、又は両方の組合せを示し得る。野生型トランスサイレチン(TTR)タンパク質は、配列番号:1として本明細書に提供される。
【0089】
ATTR心筋症(野生型及び家族性の両方)は、罹患した対象において心不全及び死亡を引き起こす、進行が緩徐な疾患である。本開示の方法は、ATTR心筋症の対象において、心筋層のTTR原線維の蓄積を停止又は緩徐化することにより、臨床の改善を提供する。この過程を通じて、現在説明される方法は、ATTR心筋症対象における臨床の改善を提供する。臨床の改善は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)機能分類の改善、カンサスシティ心筋症質問票(KCCQ)反応、EuroQoL-5ディメンション(EQ-5D-5L)の改善、6分間歩行試験の成績における改善、トロポニンT、トロポニンI、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、及びN-末端プロ-BNPなどの心臓の健康に関連したマーカーの改善、心臓血管に関連した入院の頻度の減少、及び/又は死亡率の減少を含むが、これらに限定されるものではない。
【0090】
一部の実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象のニューヨーク心臓協会(NYHA)機能分類を改善するか、安定化するか、又は増悪を遅延する。NYHA機能分類は、心不全症状の重症度を、4つの機能クラスの1つとして等級化する。NYHA機能分類は、治療に対する反応を評価し且つ管理を指導するために使用することができる重症度の標準説明を提供するので、これは、臨床の実践及び研究において広範に使用されている。NYHA機能分類は、症状の重症度及び身体活動の制限を基にしている:
クラスI:身体活動の制限なし。通常の身体活動で、過度の息切れ、疲労、又は心悸亢進を引き起こさない。
クラスII:身体活動のわずかな制限。安静時には快適であるが、通常の身体活動の結果、過度の息切れ、疲労、又は心悸亢進を生じる。
クラスIII:身体活動の顕著な制限。安静時には快適であるが、通常よりも軽い身体活動の結果、過度の息切れ、疲労、又は心悸亢進を生じる。
クラスIV:不快さを伴わずにあらゆる身体活動を実行することが不可能。安静時にも症状が存在し得る。もし何らかの身体活動をすると、不快さが増加する。
【0091】
一部の実施態様において、治療的有効量の化合物1の投与は、対象のニューヨーク心臓協会(NYHA)機能分類を低下する。一部の実施態様において、NYHA機能分類は、クラスIVからクラスIIIへ、クラスIVからクラスIIへ、又はクラスIVからクラスIへ低下される。一部の実施態様において、NYHA機能分類は、クラスIVからクラスIIIへ低下される。一部の実施態様において、NYHA機能分類は、クラスIVからクラスIIへ低下される。一部の実施態様において、NYHA機能分類は、クラスIIIからクラスIIへ低下される。一部の実施態様において、NYHA機能分類は、クラスIIIからクラスIへ低下される。一部の実施態様において、NYHA機能分類は、クラスIIからクラスIへ低下される。
【0092】
一部の実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象のカンサスシティ心筋症質問票(KCCQ)分類を改善するか、安定化するか、又は増悪を遅延する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、カンサスシティ心筋症質問票(KCCQ)において改善されたスコアを提供し(Green CPら、(2000) Journal of the American College of Cardiology 35: 1245-55)、その内容は全ての目的に関して引用により本明細書中に組み込まれている。KCCQは、心臓の健康に関連した具体的質問を含み、且つ疾患-特異的健康-関連した生活の質が検証され、信頼でき且つ感度のよい測定を提供する。
【0093】
KCCQ質問票は、患者の生活の通常の局面を実行することがどのように制限されたか(例えば、重度に制限された、かなり制限された、中程度に制限された、わずかに制限された、又は全く制限されないなど)を評価するよう、対象に依頼する。一部の実施態様において、対象は、化合物1による治療後、質問状の全ての質問について、少なくとも1レベルの平均の改善(例えば、重度に制限されたからかなり制限されたへ、かなり制限されたから中程度に制限されたへ、中程度に制限されたからわずかに制限されたへ)を有する。
【0094】
一部の実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象におけるEuroQoL-5ディメンション(EQ-5D-5L)スコアを改善するか、安定化するか、又は増悪を遅延する。EQ-5D-5Lは、完成するのに約5分を要する、簡潔な、自己記入式の(self-administered)全般的健康状態の手段(instrument)である。この手段は、2つのパートを含む。第一のパートにおいて、回答者は、自身の現時点での健康状態を5ディメンション(移動、身の回りの管理、普段の活動、痛み又は不快感、並びに不安又はふさぎこみ)について等級化するように依頼され、各ディメンションは、5つの機能レベルを有する(1-問題はない、2-少し問題がある、3-中程度の問題がある、4-かなり問題がある、及び5-極めて問題がある)。第二のパートは、「最良の想定し得る健康状態」(スコア100)及び「最悪の想定しうる健康状態」(スコア0)と記された端点を持つ、視覚的アナログ尺度(EQ VAS)上への現時点での健康状態の回答者の自己等級化である。この5ディメンションからのスコアを用いて、単独の指標値を計算することができ、これはまたユーティリティスコアとして知られている。EQ-5D-5L質問票は、パブリックドメインにあり、且つEuroQoLから入手することができる。
【0095】
一部の実施態様において、本明細書記載の治療方法を受け取っている患者は、EuroQoL-5ディメンション(EQ-5D-5L)ユーティリティスコアにおいて、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8(either)、9、又は10ポイントの平均改善を有する。一部の実施態様において、本明細書記載の治療方法を受け取っている患者は、EuroQoL-5ディメンション(EQ-5D-5L)ユーティリティスコアにおいて、少なくとも5ポイントの平均改善を有する。
【0096】
一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、対象の6分間歩行試験の成績を改善する。6分間歩行試験は、対象の機能的能力のレベルを評価するための、6分間の自分のペースでタイミングをとった歩行である。対象は、仕事のレベルが自身の快適なレベルを超える場合、この試験の途中で停止及び休憩することができる。治療前、治療後及び治療中の評価は、評価が比較的容易であり、且つ6分間の期間に対象が歩行した距離の測定からなる。従って一部の実施態様において、対象は、化合物1による治療後の6分間歩行試験においてカバーされる総距離を増大する。一部の実施態様において、対象は、化合物1による治療前に測定されたベースライン距離よりも少なくとも25m余計に歩行した。一部の実施態様において、対象は、化合物1による治療前に測定されたベースライン距離よりも少なくとも30m余計に歩行した。一部の実施態様において、対象は、化合物1による治療前に測定されたベースライン距離よりも少なくとも50m余計に歩行した。一部の実施態様において、対象は、化合物1による治療前に測定されたベースライン距離よりも少なくとも75m余計に歩行した。一部の実施態様において、対象は、化合物1による治療前に測定されたベースライン距離よりも少なくとも100m余計に歩行した。一部の実施態様において、本明細書記載の治療方法を受け取っている対象は、6分間歩行距離において遅れの減少を有した。例えば一部の実施態様において、対象は、治療前とほぼ同じ6分間歩行距離を維持する。一部の実施態様において、対象は、6分間歩行試験において10m少なくカバーする。一部の実施態様において、6分間歩行試験は、治療群を非治療群と比較するために使用される。一部の実施態様において、ベースラインからの群間の平均変化は、少なくとも10mである。一部の実施態様において、ベースラインからの群間の平均変化は、少なくとも20mである。一部の実施態様において、ベースラインからの群間の平均変化は、少なくとも30mである。一部の実施態様において、本明細書に提供される治療方法は、治療を受け取っていない個人と比べ、6分間歩行距離の減少を低下した。
【0097】
トロポニンT、トロポニンI、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、及びN-末端プロ-BNPは、心筋の健康状態が悪い対象の血中血清において上昇したポリペプチドである。一部の実施態様において、トロポニンT、トロポニンI、BNP及び/又はN-末端プロ-BNPのレベルは、化合物1による治療後減少する。一部の実施態様において、トロポニンT、トロポニンI、BNP及び/又はN-末端プロ-BNPのレベルは、化合物1による治療前の該対象のトロポニンT、トロポニンI、BNP及び/又はN-末端プロ-BNPのベースラインレベルと比べ、約10%減少する。一部の実施態様において、トロポニンT、トロポニンI、BNP及び/又はN-末端プロ-BNPのレベルは、化合物1による治療前の該対象のトロポニンT、トロポニンI、BNP及び/又はN-末端プロ-BNPのベースラインレベルと比べ、約15%減少する。
【0098】
先に考察したように、開示された方法の一部の実施態様において提供される臨床の改善は、治療を受け取っていない対象と比較した、治療を受け取っている対象の心臓血管に関連した入院の割合の減少である。一部の実施態様において、患者は、治療を受けていない者と比べ、1年につき心臓血管に関連した入院が平均して少なくとも0.5、1、1.5、2、3、4、5回少ない。
【0099】
本明細書において開示された方法の一部の実施態様において提供される追加の臨床的恩恵は、治療を受け取っていない個人と比べた死亡率の低下である。一部の実施態様において、死亡率は、治療を受け取っていない対象と比べ、約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30%又はそれ以上低下される。
【0100】
ATTRポリニューロパチーは、TTRアミロイド(ATTR)の沈着が、正常な神経機能を損なうか又はそうでなければ傷つける疾患である。ATTRポリニューロパチーは、罹患した対象において悪液質及び死亡を引き起こす進行性疾患である。本開示の方法は、TTR原線維の蓄積を停止又は遅らせることにより、ATTRポリニューロパチーの対象における臨床の改善を提供する。この過程を通じて、ここで説明された方法は、臨床の改善したATTRポリニューロパチー対象を提供する。臨床の改善は、神経障害スコア(NIS)又は補正神経障害スコア+7(mNIS+7)の改善、ノーフォークQOL糖尿病性ニューロパチー(QOL-DN)質問票の改善、複合自律神経症状スコア(COMPASS-31)のスコアの改善、修正ボディマス指数(mBMI)により測定される改善された栄養状態、並びに/又は対象の10m歩行試験における改善を含むが、これらに限定されるものではない。
【0101】
一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、改善された神経障害スコア(NIS)を提供する。NISは、虚弱、感覚及び反射を測定するスコア化システムを指す。NISスコアは、虚弱に関する標準筋肉群(1は25%低下、2は50%低下、3は75%低下、3.25は重力に抗する動きであり、3.5は取り除かれた重力による動きであり、3.75は動きを伴わない筋肉のぴくつきであり、及び4は麻痺である)、筋肉の伸展反射の標準群(0は正常であり、1は減少であり、2は存在しない)、並びに触圧覚、振動、関節の位置及び動き、並びに痛覚(pinprick)(全て、人差し指及び親指で等級化:0は正常であり、1は減少し、2は存在しない)を評価する。評価は、年齢、性別、及び体力について補正される。
【0102】
一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、化合物1を服用していない対象と比べNISスコアの増加率が減少するように、疾患の進行を遅らせる。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、化合物1による治療後のNISスコアの変化が存在しないように、疾患の進行を停止する。
【0103】
一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、化合物1による治療後のNISスコアを減少する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60%だけ、NISスコアを減少する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも5%だけ、NISスコアを減少する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも10%だけ、NISスコアを減少する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも15%だけ、NISスコアを減少する。
【0104】
一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、改善された補正神経障害スコア(mNIS+7)を提供する。mNIS+7は、小径神経線維及び大径神経線維の機能の電気生理学的測定(NCS及びQST)、並びに自律神経機能の測定(体位性血圧)と組み合わせた、神経機能障害(NIS)の臨床試験ベースの評価を指す。mNIS+7スコアは、NIS+7スコアの補正(これはNIS+7種の試験を表す)である。NIS+7は、虚弱及び筋肉の伸展反射を分析する。7種の試験のうち5種は、神経伝導の特質を含む。これらの特質は、腓骨神経複合筋活動電位の振幅、運動神経伝導速度及び運動神経遠位潜時(MNDL)、脛骨MNDL、並びに腓腹知覚神経活動電位の振幅である。これらの値は、年齢、性別、身長及び体重の変動について補正される。7種の試験のうち残りの2種は、振動検出閾値及び深呼吸後の心拍数減少を含む。mNIS+7スコアは、スマート定量的体性感覚試験の使用、新規の自律神経評価、並びに尺骨神経、腓骨神経、及び脛骨神経の振幅の複合筋活動電位の使用、並びに尺骨神経及び腓腹神経の知覚神経活動電位を考慮するようにNIS+7を補正する(Suanprasert, N.ら、Retrospective study of a TTR FAP cohort to modify NIS+7 for therapeutic trials, J. Neurol. Sci., 2014. 344(1-2): 121-128)。mNIS+7試験の更なる詳細は、全ての目的に関して、US2017/0307608において認めることができ、この内容は引用により本明細書中に組み込まれている。
【0105】
一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、mNIS+7スコア増加の割合が、化合物1を服用していない対象と比べ減少するように、疾患の進行を遅らせる。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、化合物1による治療後にmNIS+7スコアの変化が存在しないように、疾患の進行を停止する。
【0106】
一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、化合物1による治療後のmNIS+7スコアを減少する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、mNIS+7スコアを、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60%だけ減少する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、mNIS+7スコアを、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも5%だけ減少する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、mNIS+7スコアを、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも10%だけ減少する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、mNIS+7スコアを、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも15%だけ減少する。
【0107】
一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、ノーフォークQOL糖尿病性ニューロパチー(QOL-DN)質問票における改善されたスコアを提供する。この質問票は、当業者には周知であり、且つ大径線維、小径線維、及び自律神経ニューロパチーに関連した疼痛を捕獲する検証された質問票である。この質問票は、対象により経験された症状に関連した項目及びニューロパチーの対象の日常活動に対する影響に関連する質問を含む。
【0108】
一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、ノーフォークQOL-DNスコアの減少の割合が、化合物1を服用しない対象と比べ、減少されるように、疾患の進行を遅らせる。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、化合物1による治療後に、ノーフォークQOL-DNスコアに変化が存在しないように、疾患の進行を停止する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、化合物1による治療後にノーフォークQOL-DNスコアに変化が存在しないように、疾患の進行を遅らせる。
【0109】
一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、化合物1による治療後のノーフォークQOL-DNスコアを改善する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、ノーフォークQOL-DNを、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60%だけ改善する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、ノーフォークQOL-DNスコアを、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも5%だけ改善する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、ノーフォークQOL-DNスコアを、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも10%だけ改善する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、ノーフォークQOL-DNスコアを、化合物1による治療前に測定されたベースラインレベルと比べ、少なくとも15%だけ改善する。一部の実施態様において、本明細書記載の方法は、対象のノーフォークQOL-DNの、対象のベースラインスコアと比べ、約-1.5、-2.0、-2.5、-3.0、-3.5、-4.0、-4.5、-5.0、-5.5、-6.0、-6.7、-7.0、-7.5、-8.0、-8.5、-9.0、-9.5、又は-10.0の変化を提供する。
【0110】
一部の実施態様において、本明細書に開示された方法は、複合自律神経症状スコア(COMPASS-31)を提供する。複合自律神経症状スコア(COMPASS-31)は、自律神経異常症の症状を評価する患者質問票である。一実施態様において、本発明の方法は、COMPASS-31スコアにおけるベースラインに対する改善を対象に提供する。そのような改善は、対象のCOMPASS-31スコアのポイントの少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、又は少なくとも0.5、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5の増加の形をとることができる。一部の実施態様において、これらの方法は、COMPASS-31スコアにおいて変化が存在しないように、疾患の進行を遅らせる。更に別の実施態様では、本発明の方法は、COMPASS-31スコアが減少する速度を遅らせ、例えばAG10により治療されない対象におけるCOMPASS-31スコアの減少の速度と比べ、AG10により治療された対象におけるCOMPASS-31スコアの減少の速度を遅らせる。
【0111】
一部の実施態様において、本明細書に開示された方法は、個人のBMIにそれらの血清アルブミンレベルを積算することにより決定される、修正ボディマス指数(mBMI)により測定される改善された栄養状態を提供する。mBMIの計算は、総体重に対する浮腫の寄与を考慮している。一実施態様において、本開示の方法は、mBMIにおけるベースラインに対する改善を対象に提供する。そのような改善は、約2、5、7、10、12、15、20、又は約25のmBMIスコアの減少の形をとることができる。他の実施態様において、これらの方法は、増加するmBMI指数スコアを停止し、例えばこれらの方法は、mBMIスコアの0%の増加を生じる。更に別の実施態様では、本発明の方法は、mBMIスコアが増加する速度を遅らせ、例えば、AG10により治療されない対象におけるmBMIスコアの増加の速度と比べ、AG10により治療された対象におけるmBMIスコアの増加の速度を遅らせる。
【0112】
一部の実施態様において、本明細書に開示された方法は、10m歩行試験における改善を提供する。この試験は、10mにわたる個人の歩行速度を測定する。一実施態様において、本開示の方法は、10m歩行試験におけるベースラインからの増加を対象に提供する。一部の実施態様において、10m歩行試験におけるベースラインからの増加は、約0.025、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又は約5.0m/秒である。
【0113】
一部の実施態様において、本明細書において開示された方法は、改善されたDyck/Rankinスコアを提供する。Dyck/Rankinスコアは、当該技術分野において公知であり、且つ患者の症状、神経障害、試験結果を評価し、且つ日常生活の活動を行う患者の能力を検証した後に、医師により割当てられる。末梢ニューロパチーに関連した不能のみが、等級化される。患者が、特定の作業を実行するか又は日常生活を活動するための困難又は不能を有するかどうかを決定する上で、患者の報告を超えるものが判断に使用され;医師は客観的判定基準を使用しなければならない。ステージ(0-8)を、以下に概説している:
0. ニューロパチーなし
・症状なし(NSS<1)、徴候なし(NIS<2ポイント);又は、ニューロパチー異常の試験なし(例えば、7試験<97.5番目)。
1. 最少のニューロパチー(A、B、Cのただ一つが異常である)
a)試験が、唯一の異常である(例えば、7試験>97.5番目);又は
b)ニューロパチー徴候が、唯一の異常である(例えば、NIS>2ポイント);又は
c)ニューロパチー症状が、唯一の異常である(例えば、NSS>1)
2. 最少のニューロパチー:1a+1b
3. 症候性ニューロパチー:1a、1a+1c;1a+1c又は1b+1c。患者は、通常のように日常生活の活動、仕事又は余暇活動を継続することができ、並びに通常通り家庭的及び社会的責任を果たすことができる。
* ニューロパチーの症状:NSS≧1筋肉の虚弱、萎縮又はけいれんの症状;陰性又は陽性、ニューロパチー感覚性症状(N-NNS、P-NSS);或いは、ニューロパチー自律神経症状。
- 日常生活、仕事、余暇並びに社会的及び家庭的活動の通常の活動:ニューロパチー症状にも関わらず、患者は、自分の通常の活動で仕事し、自分の通常の家庭での義務を維持し、且つ余暇活動に参加することができる。一般に、患者は、若干の運動、感覚又は自律神経の症状にもかかわらず続けることができる。患者は、並外れた活動、例えば運動競技、我慢の偉業(feats of endurance)などを行うことができない。
4. 仕事、日常生活の通常の活動、余暇活動、又は家庭的及び社会的義務を妨害及び制限する症候性ニューロパチー(3で規定)であるが、自立機能(independent function)は、他者の介助なしに可能である。このスコアでは、ニューロパチーのために、通常の*仕事、日常又は余暇の活動、家庭的もしくは社会的義務*のはっきりした制限が存在する。
* 運動、感覚もしくは自律神経の症状又は機能障害の程度は、仕事をし、日常生活の通常の活動、余暇活動を行い、又は家庭的及び通常の社会的責任を果たす能力を制限するのに十分な程度である。患者が、日常生活の「通常の」活動、余暇活動を行い、且つ社会的及び家庭的責任を果たすことができる場合を除いて、杖(can)又は矯正装置の使用は、恐らく患者を、この(又はより高い)範疇に配置する(その後、彼等はより低い範疇に入れる)。
5. 日常生活の活動、仕事及び余暇活動を制限する、症候性ニューロパチー(3において規定)。他の介護者の介助*(<2.5時間/日)が必要である。車椅子の使用が日常生活(daily loving)の活動、余暇活動、又は社会的及び家庭的責任に必須である場合、患者は、通常このスコア又はより高いスコア(>5)に入れる。
* 家族の一員又は訪問看護師は、日常生活の活動(入浴、髭剃り、歯磨き、食事など)、鎮痛薬もしくはアヘン剤の毎日の管理を提供するか、或いは患者が自身で適切且つ安全に行うことができない自律神経機能障害の管理により介助することが必要とされる。
6. 5において説明したような≧2.5時間から<8時間/日の介護者の介助を必要とする、症候性ニューロパチー(3において規定)。
7. >8時間/日の、しかしステージ8におけるように連続ではない、介護者の介助を必要とする、症候性ニューロパチー(3において規定)。
8. 集中治療室における不断の看護を必要とする、症候性ニューロパチー(3において規定)。
【0114】
投与の期間は、治療される特定の疾患を含む、数多くの因子により変動するであろう。例えば、特にトランスサイレチン(TTR)アミロイドーシス疾患又は病態において、慢性(すなわち、連続、長期間)投与が必要とされる遺伝的成分が存在する。しかし、一部の実施態様において、対象がTTRアミロイドーシス疾患又は病態に関連した症状を顕在化又は経験している間か、或いは特定のエンドポイントが達成された後(例えば、症状の軽減又は完全な除去)の設定された期間にわたり、化合物1の遺伝的TTRアミロイドーシス疾患を伴う対象への投与は継続する。TTRアミロイドーシス疾患の症状が再発するか又は再顕在化が始まった場合、化合物1の投与が再度開始される。
【0115】
遺伝的に結びつけられないTTRアミロイドーシス疾患を伴う対象に関して、数多くの投与の選択肢が利用可能であり、且つ疾患の重症度及び提示された臨床症状によって決まるであろう。一部の実施態様において、化合物1の長期間投与が必要である。一部の実施態様において、化合物1のより短い期間、又は急性の投与が必要である。一部の実施態様において、対象がTTRアミロイドーシス疾患又は病態に関連した症状を顕在化又は経験している間か、或いは特定のエンドポイントが達成された後(例えば、症状の軽減又は完全な除去)の設定された期間にわたり、化合物1の遺伝的に結びつけられないTTRアミロイドーシス疾患を伴う対象への投与は継続する。TTRアミロイドーシス疾患の症状が再発するか又は再顕在化が始まった場合、化合物1の投与が再度開始される。
【0116】
一部の実施態様において、化合物1は、少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100日間又はそれよりも長く投与される。一部の実施態様において、化合物1は、7、14、21、28、35、42、49、又は56日間投与される。一部の実施態様において、化合物1は、28日間投与される。一部の実施態様において、化合物1は、56日間投与される。一部の実施態様において、化合物1は、84日間投与される。
【0117】
一部の実施態様において、化合物1は、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50ヶ月間投与される。一部の実施態様において、化合物1は、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50ヶ月間投与される。一部の実施態様において、化合物1は、6ヶ月間投与される。一部の実施態様において、化合物1は、12ヶ月間投与される。一部の実施態様において、化合物1は、18ヶ月間投与される。一部の実施態様において、化合物1は、24ヶ月間投与される。一部の実施態様において、化合物1は、30ヶ月間投与される。一部の実施態様において、化合物1は、36ヶ月間投与される。一部の実施態様において、化合物1は、42ヶ月間投与される。
【0118】
有利なことに、利尿薬療法において使用される薬剤は、治療時にAG10の曝露を変更しなかった。従って、利尿薬療法を受け取っている患者は、変更された又は特定された投薬レジメンを伴わずに、AG10を投与されることができる。結果、一部の実施態様において、AG10を受け取っている対象は、追加の利尿薬療法の薬剤も受け取っている。利尿薬療法の薬剤は、エタクリン酸、ブメタニド、フロセミド、及びトラセミドを含むが、これらに限定されるものではない。一部の実施態様において、利尿薬は、フロセミド又はトラセミドからなる群から選択される。
【0119】
医薬組成物
化合物1は、対象への送達に適した様々な組成物に調製することができる。対象への投与に適した組成物は、典型的には化合物1、又はその医薬として許容し得る塩、及び医薬として許容し得る賦形剤を含有する。
【0120】
化合物1の投与のための医薬組成物は、好都合なことに単位剤形で提示されることができ、且つ調剤及び薬物送達の分野において公知の任意の方法により調製されることができる。全ての方法は、この活性成分を、1又は複数の付属成分を含む担体と会合させる工程を含む。概して、この医薬組成物は、活性成分を、液体担体又は細かく分割された固形担体又は両方と均一且つ密接に会合させ、その後必要ならばこの製品を所望の製剤へ成形することにより、調製される。
【0121】
本発明における使用に適した製剤は、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」第21版、Gennaro編集、Lippincott Williams & Wilkins社(2003)において認められ、これは引用により本明細書中に組み込まれている。本明細書記載の医薬組成物は、当業者に公知である様式で、すなわち、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠-製造、粉末化(levigating)、乳化、カプセル封入、取込み(entrapping)又は凍結乾燥のプロセスにより、製造することができる。以下の方法及び賦形剤は、単なる例証であり、いかなる場合にも限定ではない。
【0122】
化合物1は、治療的投与のために、様々な製剤に混入することができる。より特定すると、化合物1は、適切な医薬として許容し得る担体又は希釈剤による製剤化により、一緒に又は個別に、医薬組成物へ製剤化することができ、且つ錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、糖衣錠、ゲル剤、スラリー、軟膏、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤及びエアロゾルなどの、固体、半固体、液体又は気体の形状の調製品へ製剤化することができる。従って、本発明の化合物の投与は、経口、口腔内、非経口、静脈内、皮内(例えば、皮下、筋肉内)、経皮投与などを含む、様々な様式で達成することができる。更に、化合物1は、例えば、デポ剤又は持続放出製剤など、全身様式よりも局所様式で投与することができる。
【0123】
経口使用のための製剤はまた、活性成分が、不活性固形希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンなどと混合された、硬ゼラチンカプセル剤として、又は活性成分が、水又は油性媒体、例えば、ピーナッツ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油などと混合された、軟ゼラチンカプセル剤として、提示されてよい。加えて、乳剤は、油分などの非-水混和性成分により調製し、且つモノ-ジグリセリド、PEGエステルなどの界面活性剤により安定化することができる。
【0124】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤と混合された活性物質を含む。そのような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、トラガカントガム及びアカシアゴムであり;分散剤又は湿潤剤は、天然のホスファチド、例えばレシチン、アルキレンオキシドの脂肪酸との縮合生成物、例えばポリオキシ-エチレンステアレート、又はエチレンオキシドの長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドの脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなど、又はエチレンオキシドの脂肪酸及び無水ヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートであってよい。水性懸濁剤はまた、1又は複数の保存剤、例えばエチル、もしくはn-プロピル、p-ヒドロキシ安息香酸エステルなど、1又は複数の着色剤、1又は複数の香味剤、及びショ糖もしくはサッカリンなどの1又は複数の甘味剤も含んでよい。
【0125】
水の添加による水性懸濁剤の調製に適した分散性散剤及び顆粒剤は、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤及び1又は複数の保存剤と混合した、活性成分を提供する。好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤は、先に既に言及したものにより例証される。追加の賦形剤、例えば甘味料、香味剤及び着色剤も、存在してよい。
【0126】
医薬剤形
本開示は、化合物1の医薬剤形、又はその医薬として許容し得る形状を含む。本明細書記載の剤形は、対象への経口投与に適している。この剤形は、非限定的にカプセル剤又は錠剤を含む、経口投与に適した任意の形状であってよい。
【0127】
一部の実施態様において、本開示は、下記式を有する化合物1:
【化7】
又はその医薬として許容し得る塩を、10~1,000mg含有する、単回単位剤形のカプセル剤又は錠剤の形状を提供する。
【0128】
一部の実施態様において、化合物1の量は、約100~800mgである。一部の実施態様において、化合物1の量は、約150~600mgである。一部の実施態様において、化合物1の量は、約200~400mgである。一部の実施態様において、化合物1の量は、約200mgである。一部の実施態様において、化合物1の量は、約400mgである。一部の実施態様において、単回用量のカプセル剤又は錠剤は、化合物1のHCl塩を含有する。
【0129】
一部の実施態様において、化合物1の単回単位剤形は、錠剤である。
【0130】
一部の実施態様において、化合物1の単回単位剤形は、カプセル剤である。
【0131】
一部の実施態様において、単回単位剤形は、サイズ#0、#1、#2、#3、#4、又は#5のカプセル剤である。一部の実施態様において、単回単位剤形は、サイズ#0のカプセル剤である。一部の実施態様において、単回単位剤形は、サイズ#1のカプセル剤である。一部の実施態様において、単回単位剤形は、サイズ#2のカプセル剤である。一部の実施態様において、単回単位剤形は、サイズ#3のカプセル剤である。一部の実施態様において、単回単位剤形は、サイズ#4のカプセル剤である。一部の実施態様において、単回単位剤形は、サイズ#5のカプセル剤である。
【0132】
キット
本開示はまた、本発明の医薬組成物及び剤形を含むキットも包含している。
【0133】
一部の態様において、本発明は、化合物1又はその医薬として許容し得る塩を含むキットを提供する。本明細書記載のキットの一部は、化合物1を投与する方法を説明するラベルを含む。本明細書記載のキットの一部は、トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスを治療する方法を説明するラベルを含む。一部の実施態様において、本明細書記載のキットは、野生型トランスサイレチンアミロイド心筋症(ATTR-CM、老人性全身性アミロイドーシスとも称される)を治療する方法を説明するラベルを含む。一部の実施態様において、本明細書記載のキットは、家族性アミロイド心筋症(ATTR-mCM)を治療する方法を説明するラベルを含む。一部の実施態様において、本明細書記載のキットは、家族性アミロイドポリニューロパチー(ATTR-PN、FAPとも称す)を治療する方法を説明するラベルを含む。
【0134】
本発明の組成物は、非限定的に米食品医薬品局(FDA)又は他の規制機関により承認されたボトル、ジャー、バイアル、アンプル、チューブ、ブリスターパック、又は他の容器封止システム中に、化合物1を含有する組成物を含み、それらは、化合物1又はその医薬として許容し得る塩を含む1又は複数の単位用量を提供することができる。包装又はディスペンサーもまた、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関により規定された形状で容器に結びつけられた注意書、機関による承認を示す注意書を添付することができる。特定の態様において、キットは、本明細書記載の製剤又は組成物、その製剤又はその製剤を含有する1もしくは複数の単位剤形を含む容器封止システム、及び本明細書記載の使用方法を説明する注意書又は指示書を含むことができる。
【0135】
ブリスターパックなどの包装システムは、医薬包装及び蓋型(type lid)の押出しに適している、熱成形可能な硬質フィルム又はPVCを含む。蓋は、プライマー/アルミニウム/熱融着-コーティングで製造された、フォイルを含むことができるか、或いは紙ベースであってよい。当業者は、化合物1を含むブリスターパックを容易に調製するであろう。本明細書記載のボトルシステムは、様々なサイズで(例えば、75cc、100cc、200ccなど)製造することができ、且つ一般にポリプロピレンで製造され得る子供が開けることができない封止を含む。一部の実施態様において、化合物1の医薬剤形は、子供が開けることができない封止を備えた、75ccボトル内に包装される。当業者は、本明細書記載のボトルシステムを容易に調製することができる。
【0136】
一部の実施態様において、本開示は、1日2回投薬のためのキットを提供する。これらのキットは、各投与に関して化合物1を含む単位投与量を1又は複数提供する。
【0137】
一部の実施態様において、化合物1の総1日投与量は、800mgであり、400mgが初回投薬で投与され、及び400mgが2回目の投薬で投与されることを意味する。一部の実施態様において、200mgの化合物1を含有する単位投与量の2つが、初回投薬で投与され、及び200mgの化合物1を含有する単位投与量の2つが、2回目の投薬で投与される。一部の実施態様において、400mgの化合物1を含有する単位投与量の1つが、初回投薬で投与され、及び400mgの化合物1を含有する単位投与量の1つが、2回目の投薬で投与される。一部の実施態様において、化合物1のHCl塩型が投与される。
【0138】
一部の実施態様において、化合物1の総1日投与量は、1,600mgであり、800mgが初回投薬で投与され、及び800mgが2回目の投薬で投与されることを意味する。一部の実施態様において、200mgの化合物1を含有する単位投与量の4つが、初回投薬で投与され、及び200mgの化合物1を含有する単位投与量の4つが、2回目の投薬で投与される。一部の実施態様において、400mgの化合物1を含有する単位投与量の2つが、初回投薬で投与され、及び400mgの化合物1を含有する単位投与量の2つが、2回目の投薬で投与される。一部の実施態様において、化合物1のHCl塩型が投与される。
【実施例0139】
IV. 実施例
以下の実施例は、請求される本発明を例証するために提供され、これを限定するものではない。
【0140】
材料及び方法
以下の全般的材料及び方法は、指定されるよう、使用されるか、又は下記実施例において使用されてよい。
【0141】
AG10血中血漿濃度の決定
AG10及び内部標準AG10-D6を含有するヒト血漿を、タンパク質沈殿を用いて抽出し、HPLCカラムを装着したSciex API4000 LC-MS-MSにより分析した。AG10生成物イオンのピーク面積は、AG10-D6内部標準の生成物イオンのピーク面積に対して測定した。定量を、抽出日に調製した較正標準から作製した、重み付き1/χ2線形最小二乗回帰分析を用いて行った。
【0142】
蛍光プローブ排除アッセイ(FPE)
四量体TTRのサイロキシン結合ポケット中のAG10の占有を、6時間の反応時間にわたり、血清中の遊離四量体TTR結合部位へ共有的に結合する蛍光プローブ(Probe)の能力により、決定する。
【0143】
各血清試料のアリコートを、96ウェルプレートに配置する。プローブの添加後の蛍光変化(λex=328nm及びλem=384nm)を、RTで6時間にわたり、蛍光可能な(capable)マイクロプレートを用い、15分毎にモニタリングする。
【0144】
四量体TTR安定化の評価のためのウェスタンブロット
AG10によるTTRの四量体の安定化は、ウェスタンブロットゲルの濃度測定により決定される、72時間の酸変性後に残存する四量体TTRタンパク質の量を、四量体TTRタンパク質の最初の量と比較することにより、決定する。
【0145】
0時及び72時の両方の時点ポイントで、対象由来の血中血漿試料を、酸性化緩衝液(酢酸ナトリウム、KCl、EDTA、DTT、pH約4.0)で希釈する。時点0時試料は、グルタルアルデヒドにより直接架橋させ、その後クエンチする。72時試料は、室温で72時間インキュベーションし、その後同じプロトコールにより、架橋させ、クエンチする。全ての試料は次に、SDSゲル装加緩衝液を添加し、ゲル装加前に煮沸することにより、変性させる。各試料は、SDS-PAGEゲルにおいて分離し、抗-TTR抗血清(ポリクローナルウサギ抗-ヒトプレアルブミン、DAKO、カタログ番号A0002)を使用する免疫ブロッティングにより分析する。全てのTTRバンドの濃度は、赤外LICOR造影システム又は蛍光造影システムを用いて定量し、LICOR 925-32232又はInvitrogen 84546を使用し、IgGバンドの規準化を報告する。
【0146】
以下に更に詳細に考察する実験、表、及び図において、採血の名目時間を、全ての薬物動態及び薬力学データについて使用する。
【0147】
実施例1:AG10・HClの調製
【化8】
式IIIaの化合物(100g、495mmol、1.0当量)を、アセトン(1L)中に溶解した。式IIの化合物(49.59g、495mmol、1.0当量)を、先の溶液へ添加し、引き続きK
2CO
3(82.14g、594.38mmol、1.2当量)及びKI(41.11g、247mmol、0.5当量)を、撹拌しながら室温で添加した。この反応混合物を、60±5℃に加熱し、この温度で40時間撹拌した。反応混合物を濾過し、その後減圧下で濃縮し、粘稠なオレンジ色液体として、式IVの化合物(102g)を供した。
【0148】
【化9】
式IVの化合物(100g、632mmol、1.0当量)を、エタノール(1L)中に溶解した。ヒドラジン水和物(87g、1738mmol、2.75当量)及び濃HCl(4.6mL、0.2当量)を、先の溶液へ、室温で添加した。この反応混合物を、75±5℃まで加熱し、この温度で3時間撹拌した。TLC(70%酢酸エチル:n-ヘキサン、ヨウ素で可視化)による反応の完了及び質量分析での生成物ピークの観察後、反応混合物を、減圧下で濃縮し、無色の液体シロップとして式Vの化合物(70g)を供し、これをそのまま次工程で使用した。
【0149】
【化10】
式Vの化合物(35g、227mmol、1.0当量)を、1,2-ジクロロエタン(525mL)中に溶解した。PBr
3(64.67mL、681mmol、3当量)を、室温で30分間かけて少量ずつ添加した。反応混合物を、75±5℃まで加熱し、この温度で3時間撹拌した。TLC(50%酢酸エチル:n-ヘキサン、ヨウ素で可視化)による反応の完了及び質量分析での生成物ピークの観察後、反応混合物を、ジクロロメタン(350mL)により希釈し、飽和NaHCO
3溶液によりpH=7~8となるまでクエンチした。有機層及び水層の両方を分離し、収集した。有機層を、MgSO
4上で乾燥させ、濾過した。濾液を、減圧下で濃縮し、粘稠なオレンジ色液体として式VIaの化合物(38g)を供した。
【0150】
【化11】
4-(3-ブロモプロピル)-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール臭化水素酸塩(VIa)及びDMSOを、容器に投入し、20±10℃で10分間激しく攪拌した。次にこの混合物を、撹拌しながら、55±5℃まで加熱した。この混合物へ、4-フルオロ-3-ヒドロキシ-安息香酸メチルエステル(VIIa)、炭酸カリウム及び無水DMSOを含有する撹拌溶液を移した。臭化アルキルのDMSO溶液を、内部温度55.0±5℃を維持するために、ゆっくり移した。添加は、6時間後に完了し、この混合物を、55.0±5℃で更に1時間、激しく攪拌した。この混合物を、30分間かけて25±5℃まで冷却し、温度を25℃以下に維持しながら、水を添加した。この混合物を、酢酸エチルにより抽出し、戻した水層を、酢酸エチルにより抽出した。プールした酢酸エチル溶液を、ブラインで洗浄した。一緒にした酢酸エチル洗浄液を、最少容積まで、真空下で濃縮し、ヘプタンを添加し、これはVIIIaを沈殿した。この混合物を、75±5℃まで加熱し、1時間撹拌して熟成させた(aged)。この混合物を、2時間かけて、25±5℃まで冷却し、生じた固形物を濾過により収集した。フィルターケーキを、ヘプタン中の酢酸エチル(30%)により洗浄した。単離された固形物を、窒素流れにより乾燥させた。固形物を、容器へ投入し、酢酸エチル及びヘプタンと一緒にした。生じた混合物を、75±5℃まで加熱し、固形物を溶解した。この溶液を、2時間かけて、25±5℃まで冷却し、生じた固形物を濾過により収集した。固形物を、30%酢酸エチル/ヘプタン溶媒混合液により洗浄し、55℃で真空炉において乾燥させ、VIIIaを純度>99.5%で生じた。
【0151】
【化12】
ジャケット付きガラス容器に、式VIIIaの化合物(1.0当量)及びメタノールを投入した。この混合物を、10±5℃まで撹拌しながら冷却し、20分間かけて水酸化ナトリウム水溶液(3当量)を投入した。この混合物を、NLT 2時間かけて、20±5℃で撹拌することにより熟成させ、この時点で反応は完了していた。撹拌を停止し、水を添加した。その後メタノールを、内部温度NMT 35℃で、真空蒸留により除去した。生じる濃縮された透明な水溶液を、10℃まで冷却し、濃HClを、pHが1.4~1.6(pHメーター)を下回るまで添加し、HCl塩を沈殿させた。固形物を、濾過により収集し、0.2N HClで洗浄し、真空下、50℃で乾燥させ、式Iaの化合物を純度NLT 99.5%で生じた。
【0152】
実施例2:第1相臨床試験
試験AG10-001は、単回及び反復投与後のAG10の安全性、忍容性、PK及びPDを評価するために、健常成人志願者において実施された、2パート無作為化二重盲検プラセボ対照単回及び反復投与漸増ファーストインヒューマン試験であった。この試験はまた、AG10のPKに対する食物の作用を評価するためにデザインされた。
【0153】
パートAは、単回投与漸増(SAD)デザインであり、ここでは8名の健常男性及び/又は女性の4コホートを、全体比3:1で、AG10又はマッチするプラセボに無作為化した。
【0154】
パートBは、反復投与漸増(MAD)デザインであり、ここでは8名の健常男性及び/又は女性の3コホートを、12日間の投薬に関して、3:1の比で、AG10又はそのプラセボに無作為化した。合計すると、各8名の健常対象を含む4コホート(合計32名の対象、AG10・HClが投薬される24名及びマッチするプラセボの8名)には、盲検化された試験薬物療法の50mg、150mg、300mg及び800mgの漸増投与量が投薬され、本治験のSAD部分を完了した。これらのSADコホートの1名は、2回の300mg投与量を受け取り、1名は絶食条件下で、他の者は、適切なウォッシュアウト期間後、高脂肪被験食に従った。各8名の健常対象を含む3つのコホート(合計24名の対象、AG10・HClが投薬される18名及びマッチするプラセボの6名)には、12日間にわたり12時間毎に盲検化された試験薬物療法の100mg、300mg又は800mgが投薬され、本治験のMAD部分を完了した。
【0155】
単回投与漸増
50mg AG10・HCl(SADコホート1)、150mg AG10・HCl(SADコホート2)、300mg AG10・HCl(SADコホート3)及び800mg AG10・HCl(SADコホート4)が投薬された健常対象に関して認められたPKプロファイルは、AG10は、1時間以下の平均T
max及びおよそ22~27時間の排泄半減期を伴う、迅速な経口吸収を有することを明らかにしている。表1は、SADコホート1-4に関するPKパラメータの幾何平均を列挙している。更に、
図1に示したように、SADコホート1-4のPKにおいて、中程度の対象間変動が存在し、C
maxに関する%CVは、10.0%~41.9%の範囲であり、並びにAUC
infに関する%CVは、12.5%~40.4%の範囲である。
【表1】
【0156】
加えて、
図2(コホート3を示す)に示したように、SAD試験の食物作用部分は、AG10の薬物動態に対する最少の食物作用を明らかにし、摂食、対、絶食状態において、C
maxのわずかな減少、及びわずかに長いT
maxを伴ったが、AUC
0-24により規定されるような曝露における全般的に有意な変化はなかった。コホート3に関するPKデータを、下記表2に示す。
【表2】
【0157】
反復投与漸増
MADコホート1(100mgのAG10・HClが12時間毎に12日間投薬された健常対象)、コホート2(300mgのAG10・HClが12時間毎に12日間投薬された健常対象)、及びコホート3(800mgのAG10・HClが12時間毎に12日間投薬された健常対象)に関する薬物動態プロットを、
図3に示し、PKパラメータを表3に列挙している。例え各投与量群のC
max値において若干の対象間変動が認められたとしても、AUC
0-12値は、驚くほど類似しており、%CV値は8%~22.2%の範囲であった。12日間にわたる投薬において、有意な蓄積は認められなかった。
【表3】
【0158】
AG10薬力学
AG10の薬力学(PD)特性は、蛍光プローブ排除(FPE)アッセイ又はウェスタンブロットアッセイ(先に記載)を使用し評価し、これらは両方共、TTR標的会合及びTTR安定化の確立されたアッセイである。
【0159】
図4及び
図5に示したように、FPEアッセイからのデータは、300mg及び800mgの単回投与量での標的会合、ピーク濃度でのTTRの完全な安定化、並びに300mgでは29%~62%の及び800mgでは56%~82%の範囲である最大12時間持続された安定化を確認した。
図6は、時間の関数としての各単回投与漸増コホートに関する平均標的会合率を示し;このデータは、漸増投与量は安定化を増大することを明らかにしている。同様に、ウェスタンブロットアッセイ(
図7A及び7B)は、ピーク濃度でのTTRの完全な安定化、並びにAG10・HClの300mgの単回投与量で最大12時間持続された安定化を確認した。SADコホート3に関するFPEアッセイ及びウェスタンブロットアッセイの結果は、R
2係数>0.9で、良く相関している(
図8)。両方の薬理学的活性の測定は、互いに良く相関している。
【0160】
加えて、
図9、
図10及び
図11に示したように、AG10・HClの100mg q12h、及び300mg q12h、及び800mg q12hの連続する12日間の投薬後に、FPEアッセイからのデータは、定常状態で持続された標的会合を確認し、投薬最終日の投薬後12時間時点でのTTRの平均安定化は、100mg q12h投与量の33%から800mg q12h投与量の89%までの範囲であった。
図12は、AG10・HClによる800mg q12h投薬のコホートの12日間にわたるピーク、平均、及びトラフのTTR標的会合率を示している。
【0161】
図13は、800mg AG10・HCl q12hで治療されたコホート3の3名の対象からのTTRウェスタンブロットを示している。対象1及び3には、AG10が投薬され、対象2にはプラセボが投薬された。投薬前12日目の0時間と記されたレーンは、11日間の投薬後(合計22投与量)に対象から収集したAG10のトラフレベルで試料を含んでいる。投薬後12日目と記されたレーンは、AG10の23回目の投与量後のピークレベルで収集された試料を示している。先に説明したよう、72時間にわたる酸性化、それに続く架橋、SDS-PAGE及び免疫ブロッティングを使用し、四量体TTRタンパク質の安定化を検出する。対象2は、この実験プロトコールにより検出される残存するTTR四量体は示さない。対照的に、対象1及び3は、AG10のトラフレベル及びピークレベルの両方での四量体TTRの完全な安定化を示している。
【0162】
図14に示したSADコホート及びMADコホートからの平均PK-PDデータは、AG10が投薬されたヒト対象におけるFPEアッセイにより測定されたAG10の予測可能で投与量-反応性のPD作用を明らかにしている。
【0163】
まとめ
本明細書に提供されるAG10に関するデータは、単回及び反復投与量の両方の後の、ピーク濃度でのTTRの完全な安定化を伴い、最大12時間安定化が続く、標的会合を確認している。
【0164】
実施例3:計画された第2相臨床試験
第2相試験は、安定した心不全療法の背景を持つATTR-CM患者におけるAG10の安全性、忍容性、PK及びPDを評価するための、無作為化多施設二重盲検並行群間プラセボ対照投与量-変動試験として計画される。スクリーニング及び無作為化に、28日間の盲検化されプラセボ対照された治療期間が続く。およそ45名の対象が、第2相試験に登録するよう計画される。この第2相試験の概要を、表4に提供する。
【表4】
【0165】
実施例4:AG10によるトランスサイレチンのエンタルピー-駆動した安定化は、トランスサイレチンアミロイドーシスから保護する天然の一般的(generic)変動を模倣する
下記実施例は、AG10のエンタルピー性結合と、多タンパク質複合体の安定化における増強された効能の間の相関を説明している。
【0166】
材料及び方法
等温滴定熱量測定(ITC)。結合実験は、25℃でMicroCal PEAQ-ITCを使用し行った。リガンド溶液(PBS(pH7.4)、100mM KCl、1mM EDTA、2.5%DMSO中25μM)を調製し、同一緩衝液中2μM TTRを含むITCセルへ滴定した。リガンド(各2.0μL)の19の注入を、TTRがリガンドにより完全に飽和された時点まで、ITCセル(25℃で)へ注入した。熱量データを、プロットし、標準単独部位結合モデルを用いてフィットさせた。対照に関して、本発明者らは、TTRへ緩衝液中の保存(bank)DMSOを滴定することにより引き起こされたエンタルピー変化を試験し、生じた結合エンタルピーは<0.4kcal/molであった。本発明者らはまた、ITCを使用し、ヒト血清アルブミン(HSA)に対しタファミジス及びAG10を滴定した。タファミジスのKd値(2.3μM)は、先に報告された値(Kd=2.5μM;EMA Assesment Report EMA/729083/2011)と類似していた。AG10の結合親和性は、およそ8μMと計算され、これもまた
図20の我々のデータ(ここでAG10は、タファミジスと比べアルブミンへのより低い結合を有する)とフィットする。
【0167】
緩衝液及びヒト又はイヌ血清中のTTR結合に関するFPEアッセイ。緩衝液及び血清中のAG10及び他の安定化剤のTTRへの結合親和性及び選択性を、緩衝液及びヒト血清中でTTRへ結合する蛍光プローブ排除(FPEプローブ)の結合と競合するそれらの能力により決定した。FPEプローブは、それ自身は蛍光でないが、TTRのT4結合部位と結合した時点で、リジン15(K15)を共有的に修飾し、蛍光共役を生じるチオエステルTTRリガンドである。TTRのT4部位に結合するリガンドは、より少ない蛍光により観察されるように、FPEプローブ結合を減少する。FPEアッセイはまた、イヌ血清を使用することにも適用した。緩衝液中のTTRによるFPE。PBS中のTTR(pH7.4、最終濃度:2.5μM)の98μLのアリコートを、被験化合物(2.5μM)の1μL及びFPEプローブ(DMSO中0.18mMストック溶液:最終濃度:1.8μM)の1μLと混合した。蛍光の変化(λex=328nm及びλem=384nm)を、マイクロプレート分光光度リーダー(SpectraMax M5)を用いて、rtで6時間モニタリングした。ヒト及びイヌ血清中のTTRによるFPE。プールしたヒト血清(ヒト男性AB型血漿から調製、Sigma;カタログ番号H4522;TTR濃度5μM)又はイヌ血清(Innovative Research、カタログ番号:IBG-SER;TTR濃度4.6μM)の98μLのアリコートを、被験化合物[全ての化合物は、DMSO中10mMストック溶液として調製し、以下に従いDMSOにより希釈した(血清中の最終濃度:AG10 10μM;ジフルニサル200μM;タファミジス20μM;トルカポン20μM)]の1μL及びFPEプローブ(DMSO中0.36mMストック溶液;最終濃度:3.6μM)の1μLと混合した。イヌ血清(AG10の経口処置後)の場合、FPEプローブの1μL及びDMSOの1μLを、各ウェルに添加し、適切なイヌ血清試料98μLと混合した。蛍光の変化(λex=328nm及びλem=384nm)を、マイクロプレート分光光度リーダー(SpectraMax M5)を用いて、rtで6時間モニタリングした。
【0168】
免疫ブロッティングによる血清中TTRの安定性試験。ウェスタンブロッティングを、先に報告したように行った。全ての化合物は、DMSO中10mMストック溶液として調製し、以下に従いDMSOにより希釈した(血清中の最終濃度:AG10 10μM;ジフルニサル200μM;タファミジス20μM;トルカポン20μM)。各化合物2μLを、ヒト血清(TTR濃度5μM)98μLに添加した。これらの試料を、37℃で2時間インキュベーションし、その後試料10μLを、酸性化緩衝液(pH4.0、100mM酢酸ナトリウム、100mM KCl、1mM EDTA、1mM DTT)により1:10で希釈した。ウェスタンブロットアッセイをまた、先に報告したように、尿素緩衝液(pH7.4)中で行った。試料を、室温で72時間インキュベーションし、グルタルアルデヒド(最終濃度2.5%)により5分間架橋させ、次に0.1M NaOH中の7%水素化ホウ素ナトリウム溶液10μLによりクエンチした。全ての試料は、SDSゲル装加緩衝液100μLの添加及び5分間の煮沸により、変性させた。各試料10μLを、12%SDS-PAGEゲルにおいて分離し、抗-TTR抗血清(DAKO A0002、ヒト血清について1:10,000及びイヌ血清について1:2,000希釈)を使用する免疫ブロッティングにより分析した。TTRバンド(TTR四量体及びRBPに結合した四量体)の一緒にした強度を、Odyssey IR造影システム(LI-COR Bioscience)を使用し定量し、0時(100%安定化と考える)及び72時(10%~35%の範囲の残存TTR)でのDMSO対照のTTR四量体濃度に対するTTR四量体の百分率として報告した。四量体安定化率は、100×[(四量体及び四量体+RBPの濃度、72時)/(DMSOの四量体及び四量体+RBPの濃度、0時)]として計算した。
【0169】
インシリコ構造及びモデリング試験。TTRの結晶構造の分析を、RCSB PDBサイトから得た4種のTTR結晶構造について行った。TTR四量体の生物学的集成は、pdbファイルにおいて与えられたX線結晶学的単位セル情報を用いて構築した。複数のモデルが示唆される場合、最初の選択モデルを使用した。Molden38により構築されたAG10及びその4種の誘導体(1、2、3、及び4)の初期配置(geometry)を使用し、且つ配置の最適化は、ガウス09プログラムパッケージを使用する6-311+G(d)基本セットによる、ハイブリッド濃度関数B3LYPレベルで行った(Wallingford, CT, USA: Gaussian, Inc., 2009)。最適化された配置に関する振動数計算を行い、これらは仮想振動数を有さないことを確認した。ドック6プログラムを、ドッキング実験に使用した。AG10とのV122I変異体TTR複合体(pdb id:4HIQ)の結晶構造を、レセプターとして使用した。四量体TTRは、結晶学的データを用いて構築し、溶媒及び他のヘテロ原子は除去し、且つT4結合部位を含む、一つの大きいドッキンググリッドを選択した。全てのドッキング実験に関して、同じレセプター及びグリッドを使用した。ねじれ角周りの回転を可能にするために、自由リガンドドッキングを実行した。UCSFキメラパッケージを、可視化及び3D構造解析に使用した。
【0170】
AG10及びタファミジスのヒト血清アルブミンへの結合。被験化合物(AG10又はタファミジス;両方共30μM)を、アッセイ緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、100mM KCl、及び1mM EDTA、pH7.6)中のヒト血清アルブミン(HSA;600μM;ヒト血清由来のアルブミン;Sigma Aldrich、カタログ番号:A3782)と共に、37℃で1時間インキュベーションした。アッセイ緩衝液中のHAS及びAG10又はタファミジス混合物の溶液500μLを、重力によるPD Minitrap G25カラム(GE Life Sciences、カタログ番号45-001-529)上のゲル濾過に供し、且つHSAを含有する画分を、NanoDrop(商標)により同定した。HSAの濃度(すなわち0時の濃度)もまた、NanoDrop(商標)を用いて決定した(既知のHAS濃度の較正曲線を基に)。HSA濃度は、タファミジス試料について351μM、及びAG10試料について345μMであった。これらの画分中の被験化合物の濃度(すなわち0時の濃度)は、HPLCを用いて評価した(既知濃度の被験化合物の較正曲線を基に)。次に各HSA/被験化合物試料500μLを、Slide-A-Lyzer透析カセットG2(3.5K MWCO、Thermo Scientific、カタログ番号PI87722)に添加した。この透析カセットを、アッセイ緩衝液100ml中に配置し、室温で撹拌した。24時間後、試料を透析カセットから取りだし、容積を測定した。HAS及び被験化合物の濃度を、先に説明したようにNanoDrop(商標)及びHPLCを使用し決定した。
【0171】
AG10:TTR複合体の透析。AG10(10μM)を、アッセイ緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、100mM KCl、及び1mM EDTA、pH7.6)中で、ヒト野生型TTR(5μM;ヒト血漿から精製;Sigma Aldrich、カタログ番号P1742)と共に、37℃で1時間インキュベーションした。その後各AG10/TTR溶液500μLを、Slide-A-Lyzer透析カセットG2へ添加した。この透析カセットを、アッセイ緩衝液100ml中に配置し、室温で撹拌した。透析緩衝液から試料を、異なる時点で採取した(0、0.5、1、2、6、及び24時間)。24時間後、試料を透析カセットから取りだし、容積を測定し、結果を規準化した。アッセイ緩衝液から得られたTTR及びAG10の濃度を、各々、NanoDrop(商標)及びLCMSを使用し決定した。
【0172】
他の血清タンパク質と比較したAG10及びタファミジスのTTRに対する選択性。FPEアッセイを改変し、精製したヒトTTRwt(5μM)で行った。他の血清タンパク質を、個別に又は組合せて[フィブリノゲン(5μM)、アルブミン(600μM)、IgG(70μM)、トランスフェリン(25μM)]のいずれかで、TTR及びFPEの混合物へ添加し、蛍光を先に説明したように6時間モニタリングした。3時間インキュベーション後に測定した血清タンパク質の存在下でTTRへ結合するFPEプローブの百分率を、TTR占有率の計算に使用した。
【0173】
イヌへのAG10の7日間反復経口投薬。16匹の雄(M)及び16匹の雌(F)のビーグル犬を、4つの処置群に分け、ビヒクル(0mg/kgで6M/6F)又は0.5%メチルセルロース製剤中のAG10(50mg/kgで2M/2F、100mg/kgで2M/2F、及び200mg/kgで6M/6F)を、合計32匹のイヌに強制的に経口投薬した。試験1日目(投薬前D1)、7日目投薬前試験(投薬前D7)、及び7日目投薬後1時間試験(投薬後D7)に、血液(およそ1.5mL)を、頚静脈から血清分離チューブへ収集した。これらの血清試料を、先に説明したFPEアッセイを用い、それらのTTR占有について分析した。
【0174】
TTRへの結合及び安定化に関する曝露-作用(PK-PD)関係を決定するためのイヌへのAG10の単回経口投薬。4匹の雄及び4匹の雌のビーグル犬を、2つの処置群へ分け(n=2/性別/群)、合計8匹のイヌを、TTRへのAG10結合及び安定化について、同時薬物動態(PK)及び薬力学(PD)データを獲得するために評価した。各動物は、0.5%メチルセルロース中の5又は20mg/kgのいずれかの単回投与量で、AG10の単回経口強制投与(PO)を受け取った。血液は、投薬前、並びに投薬後2、4、6、8、12及び24時間に収集し、且つ分析した。これらの血清試料中のAG10の濃度はLCMSにより分析し、及びFPEアッセイによりTTR占有を分析した。
【0175】
統計解析。全ての結果は、平均±SDとして表した。全ての統計解析は、GraphPad PRISMソフトウェアにより行った。有意差は、一元配置ANOVA、それに続くテューキー多重比較検定により測定した(n.s.、有意ではない;*p≦0.05;**p≦0.01;***p≦0.001)。
【0176】
全般的化学。別に注記しない限り、全ての反応は、無水条件下乾燥溶媒を用い、アルゴン大気下で行った。使用した溶媒は、FisherのACS等級であった。試薬は、Aldrich及びFisherから購入し、更に精製することなく使用した。反応は、可視化剤としてUV光を使用し、蛍光インジケーターUV254を備える0.20mm POLYGRAM(登録商標)SILシリカゲルプレート(Art.-Nr. 805 023)上で実行した、薄層クロマトグラフィー(TLC)によりモニタリングした。順相フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Davisil(登録商標)シリカゲル(100~200メッシュ、Fisher)を使用し行った。1H NMR及び13C NMRスペクトルは、Jeol JNM-ECA600スペクトロメーター上で記録し、内部標準として残存する未変性の溶媒を使用し較正した。カップリング定数(J)は、ヘルツで表した。以下の略語を、多重度を説明するために使用した:s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線。高解像質量分析(HRMS)は、JEOL DART AccuTOF(リアルタイム直接分析)により記録した。HPLC分析は、UV範囲200~400nmで操作するダイオードアレイ検出器に接続した、Agilent 1100シリーズHPLCシステム上で行い、且つAgilent Chemstationソフトウェアを用いて定量した。HPLC分析は、ブランク緩衝液、標準及び/又は試料の各々50μlの注入時に、外界温度で、L1パッキング(4.6×250mm、5μm)及びSymmetricTM C4(2.1×150mm、5μm)を備える両方のWaters(商標)XBridge C18カラム上で行い、クロマトグラムを得た。移動相は、0.1%ギ酸を含有するメタノール-水(5:95、v/v)からなる溶媒A、及び0.1%ギ酸を含有するメタノール-水(95:5、v/v)からなる溶媒Bで構成された。HPLCプログラムは、0~20分にわたる0%から100%まで溶媒Bが線形に増加し、その後30分間100%溶媒Bで維持する、勾配分離法であった。
【0177】
重要化合物の純度:HPLC分析を、C18及びC4逆相カラムの両方において行った。全ての重要化合物の純度は、>95%であった。純度分析の説明は、実験セクションに含まれている。重要化合物の詳細なHPLC情報(トレース、保持時間、及び%純度)は、改訂された原稿の補遺情報に含まれる。
【0178】
合成手順。AG10及びタファミジスは、先に報告したように合成した。トルカポン及びジフルニサルは、Fisherから購入した。全てのAG10アナログは、以下に説明したように調製した。
【0179】
3-(3-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)プロポキシ)-4-ヨード安息香酸(1a);ベンゼン(3ml)中の3-(3-ブロモプロポキシ)-4-ヨード安息香酸メチル(5a)(834mg、2.1mmol、1当量)の溶液を、ベンゼン(7ml)中のアセチルアセトン(0.43ml、4.2mmol、2当量)及びDBU(0.627ml、4.2mmol、2当量)の溶液へ滴加した。この反応混合物を、室温で3日間撹拌した。混合物を濾過し、濃縮した。エタノール(5ml)中のこの中間体の溶液へ、ヒドラジン水和物(0.28ml、5.25mmol、2.5当量)を添加し、反応物を還流下で4時間加熱した。この反応物を、濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1~20%MeOH/CH2Cl2)により精製し、化合物1aのメチルエステルを供した;水(2.5ml)中の水酸化ナトリウム(79mg、1.98mmol、2当量)を、メタノール(10ml)中のエステル中間体(412mg、0.99mmol)の溶液に添加し、この反応物を、還流下で4時間(50℃)加熱した。この反応物を濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1~5%MeOH/EtOAc)により精製し、化合物1aを供した(183mg、3工程の収率22%);(HPLCによる純度98.3%):tR(カラム)(C18)=25.72分;tR(C4)=16.06分。1H NMR (CD3OD, 600 MHz) δ 7.86 (d, 1H, J=8.4 Hz), 7.41 (d, 1H, J=1.2 Hz), 7.34 (dd, 1H, J=1.2 Hz及び8.4 Hz), 4.0 (t, 2H, J=6.0 Hz), 2.67 (t, 2H, J=7.2 Hz), 2.13 (s, 6H), 1.97-1.93 (m, 2H)。13C NMR (CD3OD, 600 MHz) δ 168.5, 157.6, 142, 139.2, 133.2, 123.1, 114, 117.8, 91.7, 67.5, 29.6, 18.7, 9.3;(HRMS (DART) m/z:C15H17IN2O3 + H+の計算値401.0362;実測値401.0347(M+H+)。
【0180】
3-(3-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)プロポキシ)-4-フルオロ安息香酸メチル(2);ベンゼン(3ml)中の3-(3-ブロモプロポキシ)-4-フルオロ安息香酸メチル(5b)(780mg、2.69mmol、1当量)の溶液へ、ベンゼン(7ml)中のアセチルアセトン(0.552ml、5.38mmol、2当量)及びDBU(0.804ml、5.38mmol、2当量)の溶液を滴加した。この反応混合物を、室温で3日間撹拌した。この混合物を濾過し、濃縮した。残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1~10%EtOAc/ヘキサン)により精製し、アルキル化された中間体を供し、これを次工程で直接使用した。エタノール(5ml)中のこの中間体の溶液へ、ヒドラジン水和物(0.36ml、6.73mmol、2.5当量)を添加し、この反応物を、4時間還流加熱した。この反応物を濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1~20%MeOH/CH2Cl2)により精製し、化合物2(288mg、収率35%)を供した;(HPLCによる純度96.3%):tR(カラム)(C18)=25.11分;tR(C4)=14.03分。1H NMR (CD3OD, 600 MHz) δ 7.63-7.58 (m, 2H), 7.19-7.15 (m, 1H), 4.00 (t, 2H, J=6.0 Hz), 3.86 (s, 3H), 2.58 (t, 2H, J=7.2 Hz), 2.12 (s, 6H), 1.97-1.92 (m, 2H)。13C NMR (CD3OD, 600 MHz) δ 168.1, 158.4, 156.7, 148.9, 128.5, 124.6, 117.6, 117.0, 115.6, 69.4, 53.3, 31.1, 20.2, 10.9;HRMS(DART) m/z:C16H19FN2O3 + H+の計算値 307.1458;実測値307.1463 (M+H+)。
【0181】
4-フルオロ-3-(3-(1,3,5-トリメチル-1H-ピラゾール-4-イル)プロポキシ)安息香酸(3):DMF(3ml)中の2(21mg、0.07mmol、1当量)の溶液に、水素化ナトリウム(5mg、0.21mmol、3当量)及びヨウ化メチル(17μl、0.28mmol、4当量)を添加した。この反応混合物を、室温で2時間撹拌した。混合物を、ブラインにより抽出し、濾過し、濃縮した。残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、0.5~2%MeOH/EtOAc)により精製し、アルキル化された中間体を供し、これを次工程において直接使用した。水(0.5ml)中の水酸化ナトリウム(5.6mg、0.14mmol、2当量)を、メタノール中のアルキル化された中間体の溶液(2ml)へ添加し、この反応物を、4時間還流加熱した(50℃)。この反応物を濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1~5%MeOH/EtOAc)により精製し、化合物3(11mg、2工程の収率52%)を供した;(HPLCによる純度97.8%):tR(カラム)(C18)=25.25分;tR(C4)=15.71分。1H NMR (CD3OD, 600 MHz) δ 7.58-7.51 (m, 2H), 7.10-7.06 (m, 1H), 3.92 (t, 2H, J=6.0 Hz), 3.56 (s, 3H), 2.49 (t, 2H, J=7.2 Hz), 2.05 (s, 3H), 2.01 (s, 3H), 1.83-1.88 (m, 2H)。13C NMR (CD3OD, 600 MHz) δ 168.1, 154.6, 146.8, 145.3, 137.2, 128.1, 122.8, 115.5, 115.4, 114.8, 67.4, 34.3, 29.4, 18.8, 10.1, 7.9;HRMS (DART) m/z:C16H19FN2O3 + H+の計算値307.1458;実測値307.1449 (M+H+)。
【0182】
3-(3-(3,5-ジエチル-1H-ピラゾール-4-イル)プロポキシ)-4-フルオロ安息香酸(4):水(0.5ml)中の水酸化ナトリウム(3.2mg、0.08mmol、2当量)を、メタノール(2ml)中の6(13mg、0.04mmol、1当量)の溶液へ添加し、この反応物を、4時間還流加熱した(50℃)。この反応物を濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1~5%MeOH/EtOAc)により精製し、化合物4(10mg、収率80%)を供した;(HPLCによる純度96.0%):tR(カラム)(C18)=25.16分;tR(C4)=15.56分。1H NMR (CD3OD, 600 MHz) δ 7.57-7.49 (m, 2H), 7.08-7.04 (m, 1H), 3.94 (t, 2H, J=6.0 Hz), 2.51-2.43 (m, 6H), 1.87-1.82 (m, 2H), 1.06 (t, 6H, J=7.8 Hz)。13C NMR (CD3OD, 600 MHz) δ 169.8, 157.9, 156.3, 149.3, 148.5, 124.6, 117.2, 117.1, 114.1, 69.4, 31.8, 20.1, 19.9, 14.7;HRMS(DART) m/z:C17H21FN2O3 + H+の計算値321.1614;実測値321.1601(M+H+)。
【0183】
3-(3-ブロモプロポキシ)-4-フルオロ安息香酸メチル(5):化合物5を、先に報告したように合成した。DMF(15ml)中の4-フルオロ-3ヒドロキシ安息香酸メチル(1.0g、5.87mmol、1当量)及び1,3-ジブロモプロパン(3.0ml、29.4mmol、5当量)の溶液へ、K2CO3(0.98g、7.1mmol、1.2当量)を添加した。反応混合物を、室温で16時間撹拌した。混合物を、EtOAc(500ml)で希釈し、ブラインで洗浄し(3×200ml)、Na2SO4により乾燥させた。この溶液を濾過し、濃縮した。残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1~10%EtOAc/ヘキサン)により精製し、化合物5(1.3g、収率76%)を供した;1H NMR (CD3OD, 600 MHz) δ 7.67-7.61 (m, 2H), 7.14-7.07 (m, 1H), 4.21 (t, 2H, J=5.89 Hz), 3.89 (s, 3H), 3.62 (t, 2H, J=6.38 Hz), 2.38-2.31 (m, 2H);(ESI+) m/z:C11H12BrFO3 + H+の計算値290.00;実測値290.01(M + H+)。
【0184】
3-(3-(3,5-ジエチル-1H-ピラゾール-4-イル)プロポキシ)-4-フルオロ安息香酸メチル(6):ベンゼン(2ml)中の5b(100mg、0.35mmol、1当量)の溶液を、ベンゼン(5ml)中の3,5-ヘプタンジオン(0.095ml、0.7mmol、2当量)及びDBU(0.104ml、0.7mmol、2当量)の溶液へ滴加した。この反応混合物を、室温で3日間撹拌した。この混合物を濾過し、濃縮した。残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1~10%EtOAc/ヘキサン)により精製し、アルキル化された中間体を供し、これを次工程において直接使用した。ヒドラジン水和物(0.047ml、0.875mmol、2.5当量)を、エタノール(4ml)中のアルキル化された中間体へ添加し、この反応物を、4時間還流加熱した。反応物を濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1~5%MeOH/EtOAc)により精製し、化合物6(75mg、2工程の収率65%)を供した;1H NMR (CD3OD, 600 MHz) δ 7.59-7.54 (m,2H), 7.15-7.11 (m, 1H), 3.98 (t, 2H, J=6.0 Hz), 3.81 (s, 3H), 2.56-2.47 (m, 6H), 1.91-1.86 (m, 2H), 1.13 (t, 6H, J=7.8 Hz)。C NMR (CD3OD, 600 MHz) δ 167.9, 156.6, 156.2, 148.8, 148.7, 124.4, 117.5, 117.3, 116.9, 113.9, 69.5, 53.1, 31.8, 20.1, 14.7;HRMS (DART) m/z:C18H23FN2O3 + H+の計算値335.1771:実測値335.1773(M+H+)。
【0185】
結果
安定化剤とTTRの間の相互作用の結合親和性及び熱力学の決定。本発明者らは、等温滴定熱量測定(ITC)を使用し、結合親和性(Kd)、並びに臨床開発中の全てのTTR安定化剤(すなわち、AG10、タファミジス、ジフルニサル及びトルカポン)並びにAG10アナログ1、2、3、及び4の分子相互作用の基礎となる機序を決定した。報告されたTTRリガンドのほとんどは、TTRの2つの同一T4結合部位に強力な負の協同作用(negative cooperativity)により結合し、その結果、第一のリガンドの結合は、全体の結合エネルギー並びに安定化作用を支配するであろう。ITCサーモグラムにおいて協同作用の若干の差異を認めることができるが、これらの差異は、結合エネルギー並びに安定化作用に対する影響は小さいであろう。従って、表5に報告されたKd値は、独立した単独部位結合モデルにフィットしたデータを基にした。AG10及びタファミジスの緩衝液中のTTRへの結合親和性(各々、Kd=4.8±1.9及び4.4±1.3nM)は、トルカポン(Kd=20.6±3.7nM)よりも4倍、及びジフルニサル(Kd=407±35nM)よりも~100倍高かった。化合物1-4のKd値は、90~1250nMの範囲であり、これらの結果は、表5にまとめている。安定化剤のTTRへの結合に関するKdは、ギブスの結合自由エネルギーの差(ΔG)で表され、ここでΔG=ΔH-TΔSである。各分子の熱力学的シグネチャを分析することにより、本発明者らは、エンタルピー力(ΔH;化学結合の形成又は破壊を表す)及びエントロピー力(ΔS;疎水性相互作用により結合した水分子の放出に支配され且つ好ましいシステム及び振動数の障害の量に関連している)の相対寄与を評価することができる。AG10及びタファミジスの緩衝液中のTTRへの類似の結合親和性(すなわち、類似のΔG値)にもかかわらず、それらのTTRへの結合エネルギー論(energetics)は著しく異なる。AG10の結合(ΔH=-13.60kcal/mol及びTΔS=-2.26kcal/mol)は、エンタルピーにより駆動されるのに対し、タファミジスの結合は、およそ50%はエントロピー性及び50%はエンタルピー性である(ΔH=-5.00kcal/mol及びTΔS=6.39kcal/mol)(
図16a及び表5)。トルカポン(ΔH=-10.1kcal/mol及びTΔS=0.4kcal/mol)及びジフルニサル(ΔH=-8.38kcal/mol及びTΔS=0.34kcal/mol)の結合は、エントロピー性が好ましいが、主にエンタルピー性相互作用により駆動される。TTRに関するAG10の好ましくないエントロピー性結合エネルギー(TΔS=-2.26kcal/mol)は、他のTTR安定化剤と比べ、それのより高い極性及び/又はコンホメーションの柔軟さに起因するであろう。化合物1-4とTTRの間の結合相互作用の熱力学を、以下に考察する。
【表5】
【0186】
エンタルピー力は、緩衝液中のTTR安定化剤の効能及びヒト血清中の有効性を予測する。ジフルニサル及び他の非ステロイド系抗炎症薬(NASAIDs)による最新の研究は、好ましい(すなわちより大きい負の)ΔHを持つリガンドは、ΔHの影響がより低いリガンドと比べ、比例してより大きいTTR選択性を持つことを認めた。この研究は、エンタルピー力とTTR安定化剤の選択性の間の相関について説明しているが、リガンドの結合エンタルピーと、TTRの、又は我々の知識ではいずれか他の多量体タンパク質の安定化に関する効能の間の相関は、まだ報告されていない。緩衝液中のTTRの占有及び安定化における安定化剤の効能を評価するために、本発明者らは、蛍光プローブ排除(FPE)アッセイを使用した。FPEアッセイは、それ自身は蛍光でないが、TTRのT4結合部位と結合した時点で、リジン15(K15)を共有的に修飾し、蛍光共役を生じるチオエステルTTRリガンドである、発蛍光型プローブ(FPEプローブ)を使用する。TTRのT4部位へ結合するリガンドは、より少ない蛍光により認められるように、FPEプローブ結合を減少するであろう。FPEアッセイにおける蛍光の程度と、TTRの安定化の間には、線形相関が報告されている。従って、本発明者らは、最初にFPEアッセイを使用し、緩衝液中のTTRの結合及び安定化に関する安定化剤の効能を測定した(安定化剤のTTR四量体に対する比1:1で試験した;
図16b、c及び表5)。緩衝液中のTTRに関する安定化剤の効能の順番は、AG10>トルカポン>タファミジス>ジフルニサルであった。
【0187】
次に本発明者らは、FPE及びウェスタンブロットアッセイを使用し、ヒト血清中のTTRの占有及び安定化(TTR濃度5μM)における安定化剤(10μM)の有効性(効能及び選択性の両方を表す)を評価した(表5)。ウェスタンブロットアッセイは、安定化剤の存在及び非存在下での、酸処理の72時間後の、インタクトなTTR四量体の量を測定する。ヒト血清中の安定化剤の有効性の順番は、緩衝液中のTTRの効能について我々が観察したものに類似していた(AG10>トルカポン>タファミジス>ジフルニサル;表5)。ジフルニサルの効能及び有効性は、全ての他の安定化剤と比べ、TTRへのその有意に低い結合親和性(Kd=407±35nM)を基に予測されるように最低であった(他の安定化剤よりも20~80倍低い親和性)。驚くべきことに、3種の他の安定化剤のKd値と、緩衝液及びヒト血清の両方の中のTTRの占有及び安定化におけるそれらの効能及び有効性の間に、相関は存在しなかった。例えばトルカポンのTTRへの結合親和性(Kd=20.6±3.7nM)は、タファミジスのTTRへの結合親和性(Kd=4.4±1.3nM)よりもわずかに低いという事実にもかかわらず、トルカポンの効能及び有効性は、タファミジスのそれよりも高かった。興味深いことに、緩衝液及び血清中のTTRに関するこれらの安定化剤の効能及び有効性の両方は、それらの結合エンタルピー(AG10、トルカポン及びタファミジスについて各々、ΔH=-13.6、-10.1、及び-5.0kcal/mol)と、非常に良く相関していた(R2=0.98)。このデータは、AG10及びトルカポンのTTRへのエンタルピー性に駆動された結合(以下で詳細に考察)は、他の安定化剤と比べ、それらのTTRの効率的安定化の主要な駆動者であることを指摘している。
【0188】
次に本発明者らは、ウェスタンブロットアッセイを使用し、AG10(10μM)の有効性を、それらの報告されたヒトにおける平均最大血漿濃度で、他の安定化剤と比較した(C
maxは、80mgタファミジスQDについて20μM;ジフルニサル250mg BIDについて200μM;及び、トルカポン100mg投与量TIDについて20μM)。AG10は10μMで、ヒト血清中のTTRを完全に安定化し(%TTR安定化:95.4±4.8%);他の化合物は、それらの報告された臨床C
maxで、四量体TTRの~50-75%を安定化した(
図17a、b)。AG10(pKa=4.13)及びタファミジス(pKa=3.73)に関するpKa値は、ジフルニサル(pKa=2.94)に関する値よりも高かった。従って安定化剤のカルボン酸基のイオン化率は、pH4で変動し得る。これは、カルボン酸基と、T4結合部位の頂点のリジン15(K15)及びK15’のε-アミノ基の間の静電気的相互作用の強度に影響を及ぼし、このことは安定化剤の効能に影響を及ぼすであろう。この懸念に対処するために、本発明者らは、尿素緩衝液(pH7.4)を使用し、ウェスタンブロットアッセイを行った。尿素緩衝液中のTTR安定化データは、酸性pHでのウェスタンブロットから得られたデータ、及び生理的pHでのFPEアッセイから得られたデータに類似していた。ウェスタンブロットTTR安定化アッセイデータと一致して、FPEアッセイにおける10μM AG10によるT4結合部位占有は、本質的に完全であり(TTR占有率96.6±2.1%)、且つそれらの報告された臨床C
maxでの全ての安定化剤よりも高かった。トルカポン20μMに関する標的占有(TTR占有率86±3.2%)は、タファミジス及びジフルニサルのものよりも高かった(それぞれ、20μM及び200μMでの、TTR占有率~65%)(
図17c、d)。
【0189】
AG10とTTRのS117/S117’の間の結合相互作用は疾患-保護的T119M変異内の分子相互作用を模倣する。本発明者らは、TTRバリアント(T119M及びR104H)を安定化する結晶構造に対し、TTRと安定化剤の報告された共結晶構造を比較することにより、結合エンタルピーとTTR安定化の間の相関を調べた。本発明者らは、これは、TTRの結合及び安定化に重要であるTTRのT4結合部位内のアミノ酸の官能基を、我々が同定することは可能であると仮定した。AG10、タファミジス、ジフルニサルのカルボン酸部分、及びトルカポン上のヒドロキシル基は全て、T4結合部位の頂点でのリジン15(K15)及びK15’のε-アミノ基との静電気的相互作用に参加する。AG10及びトルカポンのTTRへのエンタルピー性に駆動された結合は、両方の分子がT4結合部位内で形成する追加の水素結合により、駆動される。トルカポンのカルボニル基は、TTRwtのT119のヒドロキシル側鎖と1個の水素結合を形成する(距離~2.6Å;水素結合の理想的距離は<3Åである)。トルカポンのカルボニル基と隣接単量体上のT119’のヒドロキシル側鎖の間のより長い距離(距離~7.6Å)は、第二の水素結合の形成が起こらないようにする。興味深いことに、この相互作用は、トルカポンとV122I-TTRの間でより弱く(トルカポンのカルボニル基とV122I-TTRのT119及びT119’のヒドロキシル側鎖の間の距離は、各々~5.5Å及び~9.6Åである)、このことは、トルカポンのV122I-TTRに対する、TTRwtと比べて、より低い結合親和性(Kd=56nM)及び効能を説明することができる。タファミジスの場合、T4ポケットの底には、水素結合は存在せず;代わりに、3,5-ジクロロ環の塩素原子もまた、ハロゲン結合ポケット(HBP)3及び3’へ配置され、そこでこれらは主に疎水性相互作用によりTTRと相互作用する。AG10のカルボン酸部分とK15/K15’の静電気的相互作用に加え、AG10もまた、T4結合部位の内部の低誘電性大型分子内の隣接単量体のヒドロキシル側鎖セリン117(S117)及びS117’との2つの水素結合(距離~2.8Å)を形成する(
図18a)。これらの追加の水素結合は、AG10のTTRへの主要なエンタルピー性結合に関する駆動力に恐らく寄与するであろう。意外なことに、類似の水素結合が、速度論的に安定化しているトランス-サプレッサーT119M-TTRバリアントの内部空洞内で報告されている(
図18b)。
【0190】
T119MバリアントTTR中の単量体A及びBの2つのS117側鎖ヒドロキシル基は、距離2.8Åの直接水素結合を形成し、これはTTRwtにおいては認められない(これら2つのS117残基間の距離は~6.0Å)(
図18c)。これらの独特な水素結合は、TTR四量体内のこれら2つの二量体のより近い接触(~4.8Å)につながり、且つTTR四量体上のT119Mバリアントの抗-アミロイドーシス作用及び疾患-保護的作用におけるこれらの水素結合の潜在的重要性を強調する。安定化するTTRにおけるS117の役割もまた、1つのS117と、単独の水素結合を形成することが可能であるフラボノイドの結合により示唆されている。興味深いことに、四量体TTRの速度論的安定化に関与しない、熱力学的に安定化されたR104Hバリアント中のS117とS117’残基の間の距離は、TTRwtのそれに類似している(平均二量体-二量体距離は、~5.6Åである、
図18c、d)。R104Hバリアント(これはT119Mよりも効力が低いトランス-サプレッサー変異体である)におけるS117及びS117’のヒドロキシル基間の水素結合の欠如は、T119MバリアントにおけるTTR四量体の速度論的安定化の作用を抑制する抗-アミロイド形成性疾患におけるこれらの水素結合の重要性を強調している。TTR四量体中のS117及びS117’と2つの直接水素結合を形成することにより、AG10は、保護的T119Mバリアントにおいて認められるものに類似した静電気橋を形成する。このデータは、T119M-TTR(距離~4.8Å)及びAG10-V122I-TTR(距離~4.66Å)の両方の結晶構造の、TTRwt又はTTRm(距離~5.5Å)と比べ、より近い二量体-二量体接触を強調した、40種の報告された結晶構造の解析により、裏付けられる(補遺表1)。他の公知のTTR安定化剤は、TTRのS117/S117’と相互作用しないことに注目することは、重要である。
【0191】
TTR安定化に重要なAG10の鍵となる官能基の特徴決定。TTR結合及び安定化に対するAG10の各官能基のエンタルピー性寄与を調べるために、本発明者らは、4種のAG10アナログ(化合物1、2、3、及び4;
図15)を合成し、試験し、且つTTRに結合し安定化するそれらの能力を評価した(
図19)。AG10は、TTRへ、好ましくないエントロピー(TΔS=-2.26kcal/mol)で結合する。AG10のフッ素原子は、TTRのHBP1へ配置され、その結果本発明者らは、AG10のTTRへのエントロピー性結合は、AG10のフッ素原子のヨウ素との置き換え(化合物1a)により最適化されるだろうと仮定した。モデリング研究は、1のヨウ素は、TTRのHBP1においてフィットし(ここでT4のヨウ素が結合する)、このことは、HBP1からのより多くの水分子を置き換えることにより、エントロピー性結合を改善することを示唆している(
図19a)。化合物1aは、AG10(Kd=4.8±1.9nM)と比べ、緩衝液中のTTRへの、有意に低い結合親和性(Kd=90±14nM)を示した。ITC分析は、1のTTRとのエントロピー性相互作用は、AG10と比べより好ましい(各々、TΔS=-0.21kcal/mol及び-2.26kcal/mol)が、この結合へのエンタルピー性寄与には著しい低下が存在する(各々、ΔH=-9.82kcal/mol及び-13.6kcal/mol)ことを示した(
図19b)。モデリングにより示唆されるように、結合エンタルピーの減少は、1のカルボン酸部分とK15/K15’の間の塩橋の強度の減少により説明することができる(AG10についての距離~2.8Åと比べ~4.7Å)。化合物1aはまた、AG10と比べ、緩衝液中(58.3±0.98%)及びヒト血清中(75.9±3.1%)のTTRに関する低下した効能を示した(
図19c-e及び表5)。
【0192】
AG10のカルボン酸部分は、AG10の周囲のT4ポケットに近づけ、且つこれを溶媒から部分的に遮蔽するように働く、T4-結合部位の外縁(periphery)で、K15及びK15’のε-アミノ基と2つの塩橋を直接形成する。本発明者らは、AG10のメチル-エステルアナログ(化合物2、
図19a)を合成し、AG10がT4-結合部位の外縁に形成する2つの塩橋を修飾する作用を試験した。化合物2は、AG10(Kd=4.8±1.9nM)と比べ、緩衝液中のTTRへの有意に低い親和性(Kd=258±17nM)を示し、このことは、AG10中の塩橋と比べ、2のエステル基とK15/K15’の間の可能性のある水素結合のより低い強度(ΔH=-6.49kcal/mol)により説明される(
図19b)。化合物2もまた、緩衝液中及びヒト血清中のTTRについて、AG10及び化合物1aと比べ、低下した効能を示した(
図19c-e及び表5)。
【0193】
AG10の3,5-ジメチル-1H-ピラゾール環は、T4-結合部位の内部空洞内の深くに位置し、且つ隣接サブユニットのS117及びS117’と2つの水素結合を形成している。これらの相互作用をブロックすることにより、本発明者らは、各々、ITCびFPEアッセイを使用し、それらのエンタルピー性寄与及を効果的に観察することができる。従って本発明者らは、N-メチルピラゾールを有する化合物3を合成した。N-メチル基は、3のピラゾール環を束縛し、隣接TTRサブユニットの1つとただ1個の水素結合を形成するであろう(
図19a)。本発明者らはまた、AG10のジメチルピラゾールがジエチルピラゾールと置き換えられた化合物4も合成した。モデリング研究は、大部分のジエチル基は、それらの分子がT4-結合部位中の深部に達することを妨害し、これによりそれがS117/S117’と任意の水素結合を潜在的に形成する能力を減少することを示唆した(
図19a)。モデリングにより推定されるように、3(Kd=251±12nM)及び4(Kd=1253±79nM)は両方共、緩衝液中のTTRへの大きく減少された結合親和性を示した。この減少された親和性は、特に化合物4に関する、緩衝液及びヒト血清中のTTRに関する効能の有意な減少に言い換えられた。TTRを安定化する効能の順番は、緩衝液及び血清において類似していた(1>2>3>4;
図19c-e及び表5)。本発明者らが臨床的ATTR安定化剤により認めたように、TTRの占有及び安定化におけるAG10並びに化合物1、2、3及び4の効能は、これらの分子の結合エンタルピーと非常に良く相関(R
2=0.98)していた(各々、ΔH=-13.6、-9.82、-6.49、-4.73、及び-2.1kcal/mol)。興味深いことに、2及び3の結合親和性は類似しているにかかわらず、それらの効能は、著しく異なっていた(表5)。エラー! 参照元が見つかりません。2の3と比べてより高い効能は、その好ましいエンタルピー性結合により説明することができるであろう(各々、ΔH=-6.49kcal/mol及び-4.73kcal/mol)(
図19b)。この知見は、AG10及びタファミジスについて得られたデータ(すなわち、類似したKd値であるが、著しく異なる効能)に類似している(表5)。これらの結果は、ピラゾール環により果たされる重要な役割、並びに保護的T119M-TTR変異における相互作用を模倣し、且つTTR四量体の速度論的安定性を増強する、それが2つのTTR二量体と形成する水素結合の重要性を強調している。
【0194】
AG10のTTRに対する選択性に対するエンタルピーの作用の試験。AG10の他の豊富な血清タンパク質を上回るTTRに関する選択性に対するエンタルピーの役割を試験するために、本発明者らは、FPEアッセイにおける全ヒト血清中のAG10及びタファミジスの濃度-作用関係を試験した。本発明者らは、緩衝液中のTTRへのそれらの結合親和性は非常に類似しているので(各々、Kd=4.8±1.9nM及び4.4±1.3nM)、AG10及びタファミジスを試験したが、TTR結合に関するそれらの熱力学、特にエンタルピー成分は、著しく異なっている。従って血清中で得られたデータは、選択性を大きく反映するであろう。AG10は、漸増濃度-依存型の占有を示し、完全な占有は、AG10濃度≧10μMで達成された。例え化学量論的濃度を下回ったとしても、AG10は、TTRの大部分を占有し安定化することができる(5μMで、FPEによるTTR占有69.2%、ウェスタンブロットによる74.5%の安定化)。対照的に、20μMを上回る濃度では、タファミジスの占有又は活性の安定化のいずれかで、より小さい増分が存在した。AG10の活性が評価される場合、TTR占有(FPEによる)とTTR安定化(ウェスタンブロットによる)の間に、良好な相関(R2=1.0)が認められた。タファミジスに関して、最大10μMの濃度で良好な相関(R2=0.87)が存在したが、より高い濃度では、FPEアッセイにおいてプラトーが存在した。
【0195】
TTRに関するAG10及びタファミジスの選択性を、精製した血清タンパク質の存在又は非存在下で、緩衝液中でこれらのアッセイを繰り返すことにより、更に調べた。AG10又はタファミジス(30μM)は、精製したヒト血清アルブミン(その生理的濃度600μMで)とプレインキュベーションし、その後ゲル濾過、引き続き透析に供した。0時(ゲル濾過直後)で、タファミジスと比べ、より少ないAG10が、アルブミンに結合した(18.3±0.98μM、対、24.1±1.1μM;
図20a)。緩衝液に対する24時間の透析後、HSAに結合したAG10の濃度は、タファミジスのそれよりも低かった(7.8±0.1μM、対、18.8±2.1μM)。これらのデータは、AG10は、タファミジスと比べ、アルブミンに関するより低い結合親和性を有することを示している。並行して、AG10のTTRへの結合も、このゲル濾過/透析アッセイにおいて調べた。AG10(10μM)は、等モル比のTTR(四量体TTRの5μMは、TTR T4結合部位10μMを表す)とプレインキュベーションした。AG10のTTRからの解離は、最初の6時間は緩徐であり(AG10-TTRモル比~1.2:1)、24時間のインキュベーションにわたり1:1モル比を維持した(
図20b)。
【0196】
最後に、ヒト血清中のTTRへの結合に関するAG10及びタファミジスの選択性を、ヒト血清が、緩衝液(PBS緩衝液、pH7.4)中の精製したヒトTTRにより置き換えられた改変FPEアッセイを使用し、評価した。精製したTTR(5μM)に加え、4種の個別の代表的且つ豊富な血漿タンパク質が、緩衝液中のFPEアッセイに添加された。アルブミン、トランスフェリン、フィブリノゲン又は免疫グロブリン(IgG)の添加は、AG10によるTTR占有に影響を及ぼさなかった(これらのタンパク質のいずれかの非存在又は存在下で>97%TTR占有、
図20c、d)。アルブミンは、試験した他の血清タンパク質とは異なり、タファミジスによるTTR占有と干渉した(41.5±0.9%、対、アルブミンの非存在下で68.2±0.1%;
図20e、f)。試験した全ての血漿タンパク質の添加は、同時に、AG10に関する同一の結果を生じた。TTRに関するAG10のより高い選択性は、数多くの特性に寄与することができ、これはエンタルピー性結合、並びにより親油性であるタファミジス(ClogP=4.2)と比べ、AG10のより大きい親水性(ClogP=2.78)を含む。
【0197】
健常ビーグル犬は、TTR安定化剤の有効性の評価に関する好適な実験モデルである。本発明者らは次に、TTRに関するAG10の高い効能及び選択性が、インビボにおいて維持され得るかどうかを調べた。ヒトATTR-CMの病理を忠実に再現するトランスジェニック動物モデルは、未だ入手できない。従って本発明者らは、AG10、対、他のTTR速度論的安定化剤の有効性を試験するために臨床において現在使用される類似したアプローチを採用した。TTRの占有及び安定化におけるTTR安定化剤の活性は、安定化剤の投薬前後に患者から得られた血液試料中でエクスビボにおいて通常評価される。AG10のインビボ活性を調べるために、これと同じアプローチを、健常ビーグル犬において使用した。健常ビーグル犬は、いくつかの理由で実験モデルとして選択した。AG10及び他の安定化剤が結合するTTRのT4結合部位の全てのアミノ酸は、イヌとヒトの間で保存されている。本発明者らはまた、イヌ血清中のTTRの濃度を試験し(~4.6μM)、且つこれが健常ヒトのそれと類似していることを認めた。イヌ試験に関してヒト-ベースの試薬が使用されるアッセイの適性を確認するために、AG10及びタファミジスの活性を、先に説明した実験において使用したものと同じFPE及びウェスタンブロットアッセイを使用し、プールしたイヌ血清において評価した。イヌ血清を用いて繰り返した両方のアッセイにおけるAG10及びタファミジスのインビトロTTR結合及び安定化の濃度-作用関係は、ヒト血清において認められたものに類似していた(
図21)。これらの特徴は、健常イヌを、その後の研究に適したシステムとした。
【0198】
AG10は経口投与後イヌTTRへ強力且つ選択的に結合する。インビボにおける薬物動態-薬力学(PK-PD)関係を調べるために、AG10を、健常ビーグル犬へ、経口強制的に7日間、毎日投与した。合計16匹雄(M)及び16匹雌(F)のビーグル犬を、4つの処置群とした:(i)0mg/kg/日の6M/6F(ビヒクル対照);(ii)50mg/kg/日の2M/2F;(iii)100mg/kg/日の2M/2F;並びに、(iv)200mg/kg/日の6M/6F。試験1日目の投薬前(ベースライン)、試験7日目の投薬前(定常状態でのトラフ濃度、又はC
minを表す)、及び試験7日目の投薬後1時間(定常状態でのピーク濃度、又はC
maxを表す)の時点での血清試料を、収集した。AG10によるTTRの結合占有を、FPEアッセイにより評価した(
図22a、b)。ビヒクル単独で処置したイヌからの全ての試料、及びAG10への曝露前の実薬処置アームから収集したものは、ゼロTTR占有を示した。AG10-処置したイヌ由来の血清は、定常状態トラフでの結合占有において、投与量-比例した反応を示し(7日目投薬前;~81-94%TTR占有)、且つ全てのAG10処置群は、定常状態C
max(7日目投薬後)で、完全な(>97%)TTR占有を示した。TTRに依然効果的に結合し且つ安定化するAG10の最小有効投与量を確定するために、AG10のより低い投与量を、PK-PD(曝露-作用)関係を更に調べるために、引き続き試験した。8匹のイヌを、5又は20mg/kgのいずれかのAG10・HClを単回経口投与量として受け取る、2つの実薬処置群に分けた。これらの結果は、20mg/kg、対、5mg/kgの投与量群において、増強されたTTR占有を示した(
図22c、d)。C
maxでのTTR占有%は、両方の投与量についてC
minよりも、有意に高かった(p≦0.001)。C
minでの5mg/kg投与量と比べ、20mg/kg投与量に関して、有意に高い(p≦0.001)TTR占有が存在した。このデータはまた、AG10の循環血漿濃度は、TTR占有率と良く相関することを示した。
【0199】
まとめると、ビーグル犬は、AG10は、特定の用量レベルで、経口的に利用可能であり、且つ四量体TTRに強力で選択的に結合し且つ安定化する投与量-依存型血漿濃度を達成することを明らかにした。
【0200】
実施例5:静脈内投与又は経口強制によるサルに投与されたAG10・HClの単回投与試験
AG10・HClを、3匹の雄カニクイザルへ、静脈内1mg/kg又は1回の経口で5mg/kgの投与量レベルで、投与した。これら2つの相の間には、2週間のウォッシュアウト期間を置いた。血液試料を、投薬前並びに投薬後のほぼ0.083(IVのみ)、0.25、0.5、1、2、4、8、12、24、48、72及び96時間に収集した。血漿試料を、AG10及びAG10アシルグルクロニドについてアッセイし、且つ血清を、FPEアッセイにおいて試験した。
図23に示したように、FPEアッセイからの結果は、経口投与されたAG10は、サル血清において、TTRへ効果的に結合したことを明らかにしている。
【0201】
FPEアッセイはまた、経口投与されたAG10は、投与量依存型の様式でTTRを安定化したことを明らかにした(
図24)。
【0202】
実施例6:TTR血中血清濃度はAG10投薬された健常個体において増加する
血中血清TTR濃度を測定するために、Aviva Systems BiologyからのプレアルブミンELISAキット(ヒト)、カタログ番号OKIA00081-96W、ロット番号KC0699を、使用した。
【0203】
本試験は、ELISAキット製造業者により提供されたプロトコールに従い実行した。本方法は、製造業者が推奨した較正曲線に3つの標準濃度を追加することにより改変した。供給されたTTR較正物質を、蒸留水1mL中に溶解し、濃度8.85μg/mLを生じた。第一の追加標準は、1000ng/mLであり、これは較正物質178.4μLを1×希釈剤1400μLへ添加することにより調製した。第二の追加標準は、200ng/mLであり、これは較正物質32.4μLを1×希釈剤1400μLへ添加することにより調製した。第三の追加標準は、0.78125ng/mLであり、これは1.5625ng/mL標準の600μLを、1×希釈剤の600μLへ添加することにより調製した。このELISAキットは、捕獲及び検出のために、ヤギポリクローナル抗-TTR抗体を利用した。この抗体は、未変性のヒトTTRタンパク質に対して生じた。プールされたヒト血清は、Innovative Research社から購入した(カタログ番号IPLA-SER、ロット番号24453)。
【0204】
プールしたヒト血清及びMAD血清試料を、水浴中で、37℃で10分間解凍した。全ての試料は、二段階で1:10000に希釈した。最初に、血清5μLを、ELISAキットに提供された1×希釈剤995μLと混合した。第二に、この混合物5μLを、非-結合マイクロプレート中の1×希釈剤245μLへ添加した。各々の最終的に希釈した試料100μLを、このELISAプレートの各ウェルに添加した。全ての標準及び試料を、2つ組で試験した。TTR試験は、この時点から先は、更なる改変をせずに、製造業者のプロトコールに従った。簡単に述べると、標準及び血清試料を、ELISAプレート中で、室温で1時間インキュベーションした。ELISAプレートを、1×洗浄緩衝液で4回洗浄し、次に1×ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートと一緒に、室温で30分間、遮光して、インキュベーションした。次にELISAプレートを、4回洗浄した。TMB基質を添加し、10分間呈色させ、その後停止溶液を添加した。最後に、450nmでの吸光度を、各ウェルについて測定した。
【0205】
吸光度測定値は、2つ組の0ng/mLウェルの450nmでの平均吸光度を得、これを各ウェルの総450nm吸光度から減算することにより参照補正した。
【0206】
標準曲線は、GraphPad PRISMソフトウェアを用い、各ELISAプレートについて作製した。標準のlog(ng/mL)を、X軸上にプロットし、且つ参照補正した450nm吸光度値を、Y軸上にプロットした。このデータは、S字型4パラメータ曲線を用いて、フィットさせた。プールしたヒト血清及びMAD血清試料のlog(ng/mL)を、標準曲線から内挿した。log(ng/mL)値を、血清TTR濃度(mg/L)へ変換し、試料希釈について補正した。供給された較正物質(calibrant)を用いて作製した標準曲線は、再現可能であり(
図25)、このキットは、1:5000から1:20000までの増加する希釈比で、プールしたヒト血清試料をうまく識別した。従って、Aviva ELISAキットを、試験に使用した。
【0207】
MAD試験の3つのコホート(100、300、800mgのAG10・HClが1日2回、12日間連続して投薬された)に加え、プラセボコホートからのヒト健常志願者の試料を、Aviva ELISAキットを用いて試験した。各コホートに関する経時的TTR濃度の相対変化を、ベースライン値に対して規準化することにより計算した(
図26)。
図27は、全てのプラセボ及びAG10処置コホートにおける、ベースラインから12日目までの血中血清TTR濃度の平均変化率を示している。
図28及び
図29は、全てのプラセボ及びAG10処置コホートにおける、ベースライン及び12日目の血中血清TTR濃度をプロットしている(投薬された健常志願者の総数=24;プラセボ:実薬=1:3;MAD1コホート=100mg Q12hを12日間;MAD2コホート=300mg Q12hを12日間;MAD3コホート=800mg Q12hを12日間)。
【0208】
ARUPプレアルブミンアッセイ(免疫比濁アッセイ)
ARUPプレアルブミンアッセイもまた、試験したMADコホートにおけるTTR血中血清濃度を分析するために使用した。ARUPは、Roche Diagnosticsから提供されるプレアルブミン試薬キットを使用し、且つRoche Diagnostics c702モジュール上で試行し、プレアルブミンについて、試料を分析する。最低測定限界は、3mg/dLである。
【0209】
表6は、各コホートについて測定した、ベースライン及び投薬後(24時間後)の血中血清TTR濃度をまとめている。各試験群において、24時間の測定期間にわたり、TTR濃度の測定可能な増加が存在する。
【表6】
【0210】
実施例7:第2相臨床試験結果-ATTR-CMの個人
第2相臨床試験は、本質的に実施例3において説明したように行った。合計49名の患者(patents)が、45名の代わりに含まれ:16名は、400mg BIDを受け取り;16名は、800mg BIDを受け取り;及び、17名は、プラセボを受け取った。
【0211】
本試験に参加した個人のベースライン特徴を、下記表7に示している。
【表7】
【0212】
結果
TTR安定化は、実施例セクションの最初に説明したFPEアッセイ及びウェスタンブロットアッセイを用い、エクスビボにおいて測定した。TTR安定化は、治験参加者において、TTR血清濃度をモニタリングすることにより、インビボにおいて測定した。
【0213】
図30は、各処置群における対象に関する血清TTRレベルの投与量-反応変化を図示している。データは、ベースラインから28日目までの変化の百分率として報告している。400mgのAG10・HClを1日2回受け取る個人は、血清TTRレベルの36%の平均増加を有し、且つ800mgのAG10・HClを1日2回受け取る個人は、血清TTRレベルの50%の平均増加を有した。比較的、プラセボ処置群は、血清TTRレベル7%の平均減少を有した。
【0214】
AG10・HCl投薬群(400mg及び800mg BIDの両方)における血清TTRレベルの増加は、先に試験したTTR安定化剤について先に報告された知見を辿る。
図31は、本試験における各処置群に関する、ベースラインから投薬28日目までの、平均変化率をプロットしている。タファミジス第2相(FDA CDER Advisory Committee Meetingバックグラウンドパッケージ)及びジフルニサル経過観察試験(Hanson, J.L.S.ら、Circ Hert Fail 2018 11:e004000)について報告された血清TTRレベルにおける変化率も、プロットしている。この図において認めることができるように、AG10、タファミジス、及びジフルニサルは全て、血清TTRレベルを増加した。
【0215】
処置前に、400mg BID処置群の対象の40%、及び800mg BID処置群の対象の56%は、正常TTRレベル(TTRの正常レベルは20~40mg/dL(3.6~7.3μM)である)を下回る血清TTRレベルを有した。処置の28日後、各実薬コホートの100%は、正常範囲内の血清TTR濃度を有した(すなわち、全ての処置した患者は、28日間の処置レジメンの終了までに、正常な血清TTRレベルを有した)。比較的、プラセボ個人の18%は、処置前に正常TTRレベルを下回る血清TTRレベルを有した。28日間の処置後、血清TTR濃度の正常レベルを有さないその数は、プラセボ個人の31%まで増加した。
図32参照。本試験の個人に関する血清TTR濃度のベースライン分布を、
図33に示している。
【0216】
エクスビボにおけるウェスタンブロット分析は、AG10・HClの400mg BID及び800mg BIDの各投薬レベルは、TTRを効果的に安定化したことを確認している。
図34を参照し、これは投薬前時点(D1h0)での低レベルの安定化と比べた、14日目及び28日目のトラフ(h0)及びピーク(h1)時点での高レベルのTTR安定化を図示している。提供されたエラーバーは、平均の標準誤差である。
【0217】
このウェスタンブロットの結果を、蛍光プローブアッセイにより更に確認し、これは野生型及び変異体TTRの両方を伴う個人における、28日目トラフ(投薬前)及び28日目ピーク(投薬後1時間)での高レベルのTTR安定化を示している。
図35参照。
【0218】
AG10循環血中血漿濃度と四量体TTRのサイロキシン結合ポケット内のAG10による占有の関係をプロットする場合、著しい標的会合(AG10による占有)は、血中血漿濃度5μM辺りで生じ、且つ完全な標的会合は、約7.5μMで生じることを決定した。
図36参照。
【0219】
図37及び
図38は、蛍光プローブアッセイにおいて、400mg BIDコホート(
図37)及び800mg BIDコホート(
図38)について、1日目投薬前、14日目投薬前(トラフ)、14日目投薬後1時間(ピーク)、28日目投薬前(トラフ)、及び28日目投薬後1時間(ピーク)に測定した相対蛍光単位をプロットしている。両方の図において認めることができるように、蛍光プローブアッセイは、トラフ及びピークの両時点で、400mg BID及び800mg BIDの両コホートにおいて、14日目までに、ほぼ完全な標的会合が存在することを指摘している。比較的、
図39は、プラセボ対照群において先に言及した各時点で測定した相対蛍光単位をプロットしている。このプロットは、プラセボ対照群に関する標的会合の欠如を明らかにしている。
【0220】
まとめると、ここで提示されたデータは、AG10は、症状性ATTR-CM患者において28日間にわたり忍容性が良好であること、AG10は投与量-依存的様式で血清TTR濃度を増加すること、AG10は低TTRレベルを正常レベルまで回復すること、並びにAG10は試験した両方の投薬レベルにわたりTTRを完全に安定化することを指摘していた。
【0221】
試験したコホートにおける野生型及び特定の変異体TTR集団を調べる場合、各実薬投薬群-TTR遺伝子型にかかわらず-は、開始レベルと比べ、投薬終了時に、血中血清TTR濃度の増加を示した。TTR血液血清データを、実施例6において説明したARUPプレアルブミンアッセイを用いて分析し、下記表8に示している。
【表8】
【0222】
V30M TTR変異(家族性ATTRポリニューロパチー(ATTRm-PN)に関連して高度に見られる変異)を持つ個人のデータを詳細に見ると、処置の14日目にほぼ完全な標的会合が、及び28日目にほぼ完全なTTR安定化が、各々、FPEアッセイ及びウェスタンブロットアッセイを使用し、この患者集団について認められた。
図40及び
図41参照。
【0223】
実施例8:通常使用される利尿薬はAG10曝露と干渉しない
心不全の臨床上の痕跡を伴うATTR-CM患者は、体液過剰又は上昇した心内圧の徴候及び症状が現れることが多い。これは、利尿薬による治療を必要とする(Ruberg及びBerk、Circulation 2012 126:1286-300)。フロセミド又はトラセミドなどの利尿薬は、ATTR-CM患者におけるAG10-201第2相試験において使用される最も一般的な薬物療法である。表9参照。
【表9】
【0224】
母集団PK分析に関して、フォーマル3-段階共変量選択法(formal 3-step covariate selection process)を利用し、それらのAG10薬物動態に対する影響を調べた。複数の共変量が、変数増加(forwaed addition)時に有意として確定されるが、分布のセントラル容積上の唯一の疾患状態は、変数減少(backward elimination)時には有意レベルα=0.01で有意ではないことがわかった。従って、最終モデルは、分布のセントラル容積上に疾患状態を維持した。
【0225】
母集団PK分析を、フロセミドのような利尿薬の共投与が、AG10の薬物動態に何らかの影響を及ぼすかどうかを決定するために使用した。AG10が投薬された第2相の32名の対象のうち、25名は、フロセミド又はトラセミドにより治療された。プラセボ対象の17名のうち、14名は、フロセミド又はトラセミドを受け取った。
【0226】
AG10のクリアランスにおける差異は、患者の状態又は利尿薬(フロセミド/トラセミド)を基に、第1相の健常成人志願者と第2相の対象の間で認められなかった(
図42A、B)。
【0227】
先に言及したように、分布のセントラル容積は、ATTR-CMの疾患状態により影響された。下側の容積(
図42C,D)では、以下が観察された:
a)第2相のATTR-CM患者、対、第1相の健常成人志願者
b)フロセミド又はトラセミドを受け取るATTR-CM患者、対、フロセミド又はトラセミドを受け取らない患者。
【0228】
従って、分布容積は、フロセミド/トラセミドの対象において、健常成人志願者と比べて、より低かった。薬物-疾患相互作用(すなわち、分布容積に対する慢性心不全の作用)と薬物-薬物相互作用(分布容積に対する利尿薬の作用)の間に、差異はなかった。分布容積の変動は、主に薬物のピーク血漿濃度に影響を及ぼす。第1相(AG10-001)健常成人志願者試験(MAD3、800mg Q12h)及びATTR-CM患者の第2相(AG10-201)の両方は、AG10の循環トラフ濃度~8μMは、TTRの安定化を基にした適切な目標であることを明らかにした。
図43に示したように、AG10の800mg BIDの投薬は、フロセミド又はトラセミドにより治療される患者及び併用利尿薬を服用していない対象の両方において、好適な濃度に到達する。
【0229】
健常志願者の反復投薬における血漿AG10のC
maxでの平均蓄積比は、1.3~1.6の範囲であった。この蓄積比を使用し、定常状態でのAG10 400mg錠の投薬の薬物動態プロファイルを予測した。
図44は、単回400mgのAG10錠の投与後12時間のAG10の血漿レベルを、蓄積比1.45を仮定し(400mg錠の反復投薬後)、推定されたAG10のトラフ定常状態循環濃度、及び第2相におけるAG10 400mg BIDで投薬されたATTR-CM患者のAG10の実際の循環濃度と比較した。毎日800mg BID投与量(4×200mg AG10錠を1日2回)で得られた結果同様、より高い投与量の強い錠剤(400mg)による推定されたトラフレベルもまた、第2相のより低い400mg BIDの毎日投与群(2×200mgのAG10錠の1日2回)のトラフプロファイルとマッチした。
【0230】
従って、通常使用される利尿薬は、AG10の曝露と干渉しない。
【0231】
実施例9:第3相臨床試験-ATTR-CM
このプロスペクティブ無作為化多施設並行群間試験は、安定した心不全療法の背景で投与される、症候性対象における、プラセボと比較した、AG10の有効性及び安全性を評価する。スクリーニング及び無作為化後に、合計30ヶ月間の盲検化されたプラセボ対照治療された。12ヶ月間の治療(パートA)の終了時に、AG10の有効性を、機能的エンドポイント(6MWT)及び健康状態に関連したQoLエンドポイント(HFに特異的な測定KCCQにより測定)の解析により評価した。30ヶ月間の治療(パートB)の終了時に、AG10の有効性を、全死亡率及びCV-関連の入院の分析により、更に評価した。
【0232】
ATTR-CMの治療に関して適応とされた承認された療法は現時点では存在しない。ATTR-CMの治療に関して、認可されていない(off-label)又は非処方サプリを使用した他の治験的治療又は療法は、許されていない。しかし、他の療法が、本治験の実行時に1又は複数の地域(geography)において、ATTR-CMの治療に関する特定の適応により規制承認が与えられる事象において、被験対象に関するいくつかの可能性のある経路が存在する:
・対象は、何らかの承認され適応とされた製品の利用可能性とは関わりなく、盲検化された試験療法の少なくとも12ヶ月間にわたり、本治験に留まることが奨励される。対象が、任意の時点で本治験を退出することを選択する場合、彼等は、早めに最終来院及び関連する手順を完了することが奨励される。
・既に盲検化された試験療法を少なくとも24ヶ月間完了し、その後承認され適応とされた製品へのアクセスを獲得した任意の被験対象は、本治験に留まり、且つその製品による療法の開始後であっても、盲検化された試験治療を継続することが奨励される。承認され適応とされた製品による療法を開始し且つ本治験に留まる対象は、併用療法の開始前に、試験評価のため予定外の来院をしなければならない。
【0233】
30ヶ月間の盲検化された試験療法及び二重盲検化された治療期間の最終評価を完了した全ての対象は、長期AG10治療のオープンラベル後続試験への参加に適格とされる。
【0234】
適格な対象は、AG10 800mg又はマッチするプラセボのBID経口投与へ、2:1の比で無作為化される。対象は、野生型ATTR-CM(ATTRwt-CM)又は変異体ATTR-CM(ATTRm-CM)を有するかどうかを基に無作為化の時点で層別化され、ATTRm-CMを伴う対象は最低20%であることを目標とする。遺伝子型判定により、TTR状態(野生型又はバリアント)を確認するために、あらゆる努力を払う。例外的状況(対象が遺伝子試験を受けることを拒否する場合)においては、文書による遺伝子型判定を伴わない対象を登録するために、メディカルモニター又は指定者に承認を求めることができる。承認され且つ対象が本試験に登録される場合、TTR状態が不明であるそのような対象は、「野生型TTR」層に層別化する。対象はまた、スクリーニング時の、NT-proBNPレベル(≦3000、対、>3000pg/mL)及びeGFRにより規定された腎機能(≧45、対、<45mL/分/1.73m2)に従っても層別化される。
【0235】
血漿PK及び血清/血漿PDのための試料は、PopPK-PD予備試験において収集する。
【0236】
AE及び併用薬物に関する情報は、本試験を通じて収集される。安全性及び本試験の実施は、独立したデータモニタリング委員会(DMC)によりモニタリングされる。
【0237】
【0238】
本試験のパートAは、12ヶ月間の治療後の6分間歩行試験(6MWT)におけるベースラインからの変化において、AG10群とプラセボ群の間の差異を評価することにより、症候性トランスサイレチンアミロイド心筋症(ATTR-CM)の対象の治療におけるAG10の有効性を決定する。
【0239】
本試験のパートBは、30ヶ月間にわたる全死亡率と心臓血管(CV)に関連した入院の累積頻度を組合せたエンドポイントにおけるAG10群とプラセボ群の間の差異を評価することにより、症候性ATTR-CMの対象の治療におけるAG10の有効性を決定する。
【0240】
対象母集団及び統計
慢性で安定した症候性(NYHAクラスI-III)ATTR-CMを伴う年齢18歳以上及び90歳以下のおよそ510名の男性及び女性が、本試験において2:1の比で無作為化される(340名の対象は実薬治療へ、170名はマッチするプラセボへ)。対象は、無作為化時点で、ATTRm-CM又はATTRwt-CMのいずれであるかに従い、層別化され、ATTRm-CMを伴う対象は最低20%であることを目標とする。遺伝子型判定により、TTR状態(野生型又はバリアント)を確認するために、あらゆる努力を払う。例外的状況(対象が遺伝子試験を受けることを拒否する場合)においては、文書による遺伝子型判定を伴わない対象を登録するために、メディカルモニター又は指定者に承認を求めることができる。承認され且つ対象が本試験に登録される場合、TTR状態が不明であるそのような対象は、「野生型TTR」層に層別化する。対象はまた、スクリーニング時の、NT-proBNPレベル(≦3000、対、>3000pg/mL)及びeGFRにより規定された腎機能(≧45、対、<45mL/分/1.73m2)に従っても層別化される。
【0241】
治療期間
対象は、忍容性が良好でない場合を除き、治験薬(AG10又はプラセボ)により、30ヶ月間治療される。30ヶ月間の治療を完了する適格対象は、治験担当医師の指示で、AG10を受け取るためにOLEを継続する。
【0242】
パートA、パートB及びOLEは、個別に報告する。本治験は、治療後最終来院を完了した全ての対象のデータが最終データベースに含まれ、且つ本治験の最終報告書が感性された後に、完了する。
【0243】
投与される治療
適格性判定に合致する対象は、二重盲検様式で以下の治療アームを受け取るように、2:1の様式(AG10:プラセボ)で無作為化される:
・800mg AG10 BID、経口(2個の400mg AG10錠、BID)
・マッチするプラセボBID、経口(2個のマッチするプラセボ錠、BID)。
【0244】
試験薬物療法の忍容性が良好でないことを指摘する対象のAE報告を基に、治験担当医師が投与量調節が正当化されることを決定するような事象において、盲検化された投与量は、BIDで投与される400mg AG10又はマッチするプラセボへ減少されてよい。これは、試験スタッフが、試験薬物療法の2錠の代わりに、錠剤1錠をBIDで服用するよう対象を指導することにより達成される。あらゆる投与量調節は、データデースに文書化する。
禁忌薬物療法
1.パチシラン、イノテルセン、タファミジス[下記「注記」参照]又はATTR-CM治療に関する他の治験薬の使用は、本試験期間中は禁止される。
2.ジフルニサル、ドキシサイクリン;ATTR-CMの未証明の療法として使用される天然製品又は誘導体(例えば、緑茶抽出物、タウロウルソデオキシコール酸[TUDCA]/ウルソジオール)の使用は、禁止される。
3.カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ベラパミル、ジルチアゼム)又はジギタリスの使用は、禁止される。
【0245】
注記:本試験参加時に、タファミジスが市販可能となり且つ対象がこれにアクセスする場合は、対象は、少なくとも24ヶ月間の盲検化された試験療法が完了したならば、併用薬物療法としてタファミジスによる療法を開始することが許可される。
【0246】
試験手順
評価スケジュール
本試験を通じて実行される手順の説明を、以下に提供する。
スクリーニング(-35日目から-1日目)
【0247】
スクリーニングは、IMPの初回投与量の投与前35日以内に行われる。以下の手順を、スクリーニング時に行う:
・インフォームドコンセントの記入
・対象が適格であることを確認するための、組み入れ/除外基準の検証
・診断確定委員会(DCC)が必要とする原資料の提出は、スクリーニング期間にできるだけ早く完了し、且つ以下のいずれかを含まなければならない:
1. 心内膜心筋生検の報告書;
又は
2. 陽性99mTc-ピロリン酸エステル又は-ビスホスホネート走査の平面画像、
並びに、(血清及び/又は尿の免疫固定電気泳動(IFE)、並びに血清遊離軽鎖(sFLC)分析の両方を基にした)ALアミロイドーシスの診断を除外する、臨床検査の証拠。
【0248】
注記:意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)を併発している対象は、質量分析による心内膜心筋生検による、ATTR-CMの確定診断を必要とする。
・内科的及び外科的病歴の評価
・NYHAクラス評価
・体重及び身長測定を含む理学的検査
・生命徴候評価
・安静時12-誘導ECG
・LV壁(心室中隔又はLV後壁)厚さが、心エコー又はCMRを基にした病歴に記録されていない場合、安静時経胸壁心エコー(ECHO)
・6分間歩行試験(6MWT)、>24時間から≦2週間間をあけた2回の評価
・血液学、血清化学(循環バイオマーカーを含む)のための血液試料収集、尿検査
・血清及び血漿の探索的試験のための血液試料収集
・妊娠可能な女性対象のみ、尿妊娠試験
・薬歴評価。
【0249】
治療日
試験手順は、以下に試験日別に列挙し、理想的には各日について、以下に列挙した順番で行う。
【0250】
1日目及び3ヶ月毎(±7日)
これらの評価は、1日目、及び3、6、9、15、18、21、24、及び27ヶ月目に行う:
・対象が適格であることを確認するための、組み入れ/除外基準の検証(1日目)
・対象の治療アームへの無作為化及び無作為化番号の割付け(1日目)
・NYHAクラス評価
・体重測定を含む理学的検査
・生命徴候評価
・安静時12-誘導ECG
・カンサスシティ心筋症質問票(KCCQ)
・EuroQoL-5ディメンション(EQ-5D-5L)
・6、9、18、24ヶ月目の6分間歩行試験(6MWT)
・血液学、血清化学(循環バイオマーカーを含む)のための血液試料収集、尿検査
・妊娠可能な女性対象のみ、尿妊娠試験
・PopPK-PD予備試験におけるTTR安定化の分析のためのPD血液試料収集(投薬前)
・PopPK-PD予備試験におけるPK血液試料収集(投薬前)
・プレアルブミン血液試料収集(投薬前)
・指定された立会人(すなわち、施設の担当者)によるIMPの配布/収集及び投与
・併用薬物療法使用の評価
・AE/生命状態評価/入院の決定
・IMP服薬順守評価(1日目を除く全ての来院時)。
28日目(±3日)
・NYHAクラス評価
・体重測定を含む理学的検査
・生命徴候評価
・投薬前及び投薬後1時間での安静時12-誘導ECG
・血液学、血清化学(循環バイオマーカーを含む)のための血液試料収集、尿検査
・妊娠可能な女性対象のみ、尿妊娠試験
・PopPK-PD予備試験におけるTTR安定化の分析のためのPD血液試料収集(投薬前及び投薬後1時間)
・PopPK-PD予備試験におけるPK血液試料収集(投薬前及び投薬後1時間)
・プレアルブミン血液試料収集(投薬前)
・指定された立会人(すなわち、施設の担当者)によるIMPの配布/収集及び投与
・併用薬物療法使用の評価
・AE/生命状態評価/入院の決定
・IMP服薬順守評価。
12ヶ月目(±7日)
・NYHAクラス評価
・体重測定を含む理学的検査
・生命徴候評価
・安静時12-誘導ECG
・カンサスシティ心筋症質問票(KCCQ)
・EuroQoL-5ディメンション(EQ-5D-5L)
・6分間歩行試験(6MWT)
・血液学、血清化学(循環バイオマーカーを含む)のための血液試料収集、尿検査
・妊娠可能な女性対象のみ、尿妊娠試験
・PopPK-PD予備試験におけるTTR安定化の分析のためのPD血液試料収集(投薬前)
・PopPK-PD予備試験におけるPK血液試料収集(投薬前)
・プレアルブミン血液試料収集(投薬前)
・指定された立会人(すなわち、施設の担当者)によるIMPの配布/収集及び投与
・併用薬物療法使用の評価
・AE/生命状態評価/入院の決定
・IMP服薬順守評価。
毎月の電話による連絡(±7日)
これらの電話による連絡は、2、4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、22、23、25、26、28、及び29ヶ月目に行う:
・併用薬物療法使用の評価
・AE/生命徴候評価/入院の決定
・IMP服薬順守評価。
【0251】
対象が、試験薬及び試験評価を中断する場合、生命状態に関する毎月の連絡を完了することにより本試験の経過にわたり、或いはコンセントの取り下げまで、対象の経過観察を継続するようにあらゆる努力が払われなければならない。
【0252】
30ヶ月目(±7日)及びオープンラベル後続試験の開始
30ヶ月間の二重盲検治療期間を完了した対象は、OLEにおいて、AG10の受け取りを継続する。
・NYHAクラス評価
・体重測定を含む理学的検査
・生命徴候評価
・安静時12-誘導ECG
・カンサスシティ心筋症質問票(KCCQ)
・EuroQoL-5ディメンション(EQ-5D-5L)
・6分間歩行試験(6MWT)
・血液学、血清化学(循環バイオマーカーを含む)のための血液試料収集、尿検査
・妊娠可能な女性対象のみ、尿妊娠試験
・PopPK-PD予備試験におけるTTR安定化の分析のためのPD血液試料収集(投薬前)
・PopPK-PD予備試験におけるPK血液試料収集(投薬前)
・プレアルブミン血液試料収集(投薬前)
・指定された立会人(すなわち、施設の担当者)によるIMPの配布/収集及び投与
・併用薬物療法使用の評価
・AE/生命状態評価/入院の決定
・IMP服薬順守評価。
オープンラベル後続試験開始後1ヶ月目(±3日)
・NYHAクラス評価
・体重測定を含む理学的検査
・生命徴候評価
・安静時12-誘導ECG
・血液学、血清化学(循環バイオマーカーを含む)のための血液試料収集、尿検査
・妊娠可能な女性対象のみ、尿妊娠試験
・PopPK-PD予備試験におけるTTR安定化の分析のためのPD血液試料収集(投薬前)
・PopPK-PD予備試験におけるPK血液試料収集(投薬前)
・プレアルブミン血液試料収集(投薬前)
・指定された立会人(すなわち、施設の担当者)によるIMPの配布/収集及び投与
・併用薬物療法使用の評価
・AE/生命状態評価/入院の決定
・IMP服薬順守評価。
オープンラベル後続試験開始後3ヶ月毎(±7日)
・NYHAクラス評価
・体重測定を含む理学的検査
・生命徴候評価
・安静時12-誘導ECG
・カンサスシティ心筋症質問票(KCCQ)
・EuroQoL-5ディメンション(EQ-5D-5L)
・6ヶ月毎の6分間歩行試験(6MWT)
・血液学、血清化学(循環バイオマーカーを含む)のための血液試料収集、尿検査
・妊娠可能な女性対象のみ、尿妊娠試験
・PopPK-PD予備試験におけるTTR安定化の分析のためのPD血液試料収集(投薬前)
・PopPK-PD予備試験におけるPK血液試料収集(投薬前)
・プレアルブミン血液試料収集(投薬前)
・指定された立会人(すなわち、施設の担当者)によるIMPの配布/収集及び投与
・併用薬物療法使用の評価
・AE/生命状態評価/入院の決定
・IMP服薬順守評価。
【0253】
薬物濃度測定
PK血液採取スケジュール
参加施設で対象の亜群において、AG10血漿濃度を決定するために、PK試料を以下の時点で収集する:
・試験来院の1日目、及び3ヶ月毎:投薬前
・28日目:投薬前及び投薬後1時間
・OLE開始後1ヶ月目及びOLEの3ヶ月毎:投薬前
・ET。
【0254】
PD血液採取スケジュール
参加施設で対象の亜群において、蛍光プローブ排除(FPE)アッセイ及びウェスタンブロットを含む、TTR安定化の確立されたアッセイにより、AG10のPD特性を、評価する。これらのPDアッセイを行うために、サンプリングを以下の時点で行う:
・試験来院の1日目、及び3ヶ月毎:投薬前
・28日目:投薬前及び投薬後1時間
・OLE開始後1ヶ月目及びOLEの3ヶ月毎:投薬前
・ET。
【0255】
プレアルブミン血液サンプリング手順
プレアルブミン濃度を測定するためのサンプリングは、以下の時点で行う:
・試験来院の1、28日目、及び3ヶ月毎:投薬前
・OLE開始後1ヶ月目及びOLEの3ヶ月毎:投薬前
・ET。
【0256】
6分間歩行試験(6MWT)
無作為化の前に、2回の6MWTを、>24時間から≦2週間、間をあけて、行った。歩行距離は、≧150mでなければならず、且つ歩行した距離は、異なる日の2回の連続試験について15%以内でなければならない。2回の試験の結果が15%以内でない場合は、追加の6MWTを、一方の6MWTの24時間から2週間以内に繰り返すこととする。最後の試みが依然一方の6MWTの15%以内でない場合、対象は、参加不適格である。
【0257】
6MWTは、必要とされる来院時に、KCCQ及びEQ-5D-5Lの完了後に実行される。
【0258】
Borgスケールを伴う6MWTは、米国胸部学会(American Thoracic Society)の指針に従い実行される。6MWTの手順に関する完全な詳細は、試験手順マニュアル(SPM)に提供される。
【0259】
カンサスシティ心筋症質問票(KCCQ)
KCCQは、心不全の対象の健康状態及び健康に関連した生活の質を測定するために開発された、23項目質問票である。項目は、心不全の症状、身体機能及び社会機能への影響、並びに患者の心不全が患者の生活の質(QoL)にどのように影響を及ぼすかを含む。これは、投薬前に対象により完成されることとする。完全な詳細は、試験手順マニュアルに提供される。
【0260】
EuroQoL-5ディメンション(EQ-5D-5L)
EQ-5D-5Lは、完成するのに約5分を要し、且つKCCQの完了後に実行されるべき、簡潔な、自己記入式の全般的健康状態の手段である。この手段は、2つのパートを含む。第一のパートにおいて、回答者は、自身の現在の健康状態を5ディメンション(移動、身の回りの管理、普段の活動、痛み又は不快感、及び不安又はふさぎこみ)で等級化するように依頼され、各ディメンションは、5つの機能レベルを有する(1-問題はない、2-少し問題がある、3-中程度の問題がある、4-かなり問題がある、及び5-極めて問題がある)。第二のパートは、「最良の想定し得る健康状態」(スコア100)及び「最悪の想定しうる健康状態」(スコア0)と記された端点を持つ、視覚的アナログ尺度(EQ VAS)上への現在の健康状態の回答者の自己等級化である。この5ディメンションからのスコアを使用し、単独の指標値を計算することができ、これはまたユーティリティスコアとしても知られている。完全な詳細な記入及びスコア化は、試験手順マニュアルに提供される。
【0261】
臨床検査測定
臨床検査試験のための血液試料及び尿試料を、収集する。スクリーニング時に、治験担当医師は、臨床検査室より提供される参照範囲の外側のあらゆる値の臨床的意味を評価し、臨床上意味があると判断した異常を伴う対象は、本試験から除外する。
以下の臨床検査試験を行う。
【表10】
【0262】
生命徴候
試験施設のスタッフは、投薬前及び投薬後5分間の安静の後、生命徴候を評価する。臨床的に意味があるとみなされる(すなわち、症状に関連し、及び/又は医学的介入を必要とする)あらゆる異常な生命徴候は、AEとして記録する。
【0263】
心電図
標準12-誘導ECGを評価する。ECGは、投薬前に5分間安静にした後、仰臥位で行う。QTcに対するPK-PD関係に関する追加の第1相データが収集され且つ分析されるまで、28日目の投薬後1時間に、ECGを行う。PK-PDデータの結果を基に、28日目の投薬後1時間のECGは、対象の負担(burden)を減らすために、最早必要ではない。全ての治験担当医師は、日常的連絡により、この変化を伝える。
【0264】
治験担当医師又は資格のある治験分担医師は、臨床的意味に関して全てのECG解釈及び測定の間隔期間について検証する。臨床的に意味があると見なされる(すなわち、症状に関連し及び/又は医学的介入を必要とする)あらゆるECG解釈は、AEと報告される。
【0265】
理学的検査
対象は、体重及び身長の測定を含む、完全な理学的検査(PE)を受け、これは医師又は適切に訓練された医療従事者により完了される。臨床的意味があると見なされる(すなわち、症状に関連し及び/又は医学的介入を必要とする)あらゆる異常な理学的検査所見は、AEと記録される。
【0266】
CV-関連の入院の定義
心臓血管に関連の入院とは、少なくとも24時間の滞在(又は、入/退院時刻が入手できない場合は、日付の変化)を生じる医学的療法のために設定する急性看護に対する非予約入院と、或いは退院診断及び介入が、病院滞在の目的が非代償性心不全の管理のための静脈内利尿薬療法のためであることを指摘する場合は、24時間未満の病院滞在と、定義される。治験担当医師は、収集され且つ記録された入院日及び退院日を含む、可能性のある試験エンドポイントを保証し;入院が、CV-関連しているかどうかの、治験担当医師の評価を提供し;並びに、死亡又は入院を生じるような全ての有害事象に関してAE通告書を提出する、責任がある。
【0267】
実施例10:第3相臨床試験-ATTR-PN
このプロスペクティブな無作為化多施設並行群間試験は、ATTR-PNの症候性対象における、プラセボと比較した、AG10の安全性及び有効性を評価する。スクリーニング及び無作為化に、18ヶ月間の二重盲検化プラセボ対照治療期間が続く。
【0268】
適格対象は、経口BID投与されるAG10 800mg又はマッチするプラセボに、1:1比で無作為化する。対象は、カットオフ<30ポイント及び≧30ポイントの、スクリーニング神経障害スコア(NIS)を基に、並びにタファミジス(Vyndaqel(登録商標)、Pfizer)を現在服用しているかしていないか(これが入手できない国又は地域において)どうかに従い、無作為化時に層別化される。
【0269】
AE及び併用薬物療法に関する情報は、本試験を通じて収集される。安全性及び本試験の実施は、独立したデータモニタリング委員会(DMC)によりモニタリングされる。
【0270】
【0271】
対象母集団及び統計
ポジティブ遺伝子型の文書化が、ATTR-PNの確定診断を確認するために、必要である。重要な適格性判定基準は、プラセボ群における進行を示すのに十分に進展される(advanced)が、疾患状態の変化の検出を排除するようには進行されない、疾患を伴う対象集団を確定するために選択された(例えば、PNDスコア≦IIIa及びカルノフスキー全身状態スコア≧60%)。多くのATTR-PN患者は、心臓の関与を有するので、その心筋症の程度に関連した高い死亡率を考えると、NYHAクラスIV症状の対象は排除される。AG10に起因する有効性及び安全性のシグナルをより良く明確化するために、トランスサイレチン生成又は安定性を変更する他の療法の併用は排除される(利用可能ならば、タファミジス20mg/日の例外の可能性あり)。
【0272】
神経障害スコア(NIS)は、筋肉、反射及び感覚のモダリティ並びに特定部位の標準群を使用し、臨床的神経障害のまとめ(虚弱、反射の減少及び感覚消失)の提示を行うことが比較的容易である、神経学的評価である。0~244のスケールで計算し、より高いスコアは、疾患の増悪を示す。NISは、疾患重症度及び予後のその他の測定と相関することが示されており、並びに~30の中央値はATTR-PN患者の大きいコホートにおいて報告されているので、スクリーニング時のNISスコア(<30及び≧30)の統計は、治療アームにまたがるニューロパチーの重症度において、潜在的不均衡を軽減することが含まれる(Adams、2015)。対象はまた、利用可能である一部の国又は地域において、ATTR-PNの治療について適応とされるタファミジス20mg/日を服用するかどうかに従っても、層別化される。
【0273】
治療期間
対象は、18ヶ月間にわたり、試験薬(AG10又はプラセボ)により治療される。
【0274】
いくつかの公開されたコホートにおいて認められた長期間にわたる評価を基に、18ヶ月目のこの対象集団における進行の割合は、mNIS+7で~12.5から17ポイントであることが予想される(Adams、2017、Berk、2013)。mNIS+7により測定されるプラセボ対象における疾患進行は、徐々にであるので、少なくとも12ポイントの悪化が、18ヶ月間の治験期間にわたって予想される(Adams、2017、Berk、2013)。AG10は、進行するアミロイド形成を妨害することにより、疾患進行を停止すると予想されるので、18ヶ月間は、mNIS+7スコアの臨床的に意味のあるプラセボ-調節した変化を検出するのに、恐らく十分な長さであろう。
【0275】
投与される治療
対象は、二重盲検様式で、以下の治療アームを受け取るよう、1:1様式(AG10:プラセボ)で無作為化される:
・800mg AG10 BID、経口(2個の400mg AG10錠、BID)
・マッチするプラセボBID、経口(2個のプラセボ錠、BID)。
【0276】
試験薬物療法の忍容性が良くないことを指摘する対象のAE報告を基に、治験担当医師が投与量調節が正当化されることを決定するような事象において、盲検化された投与量は、BIDで投与される400mg AG10又はマッチするプラセボへ減少されてよい。これは試験スタッフが、試験薬物療法の2個の錠剤の代わりに1個をBID服用するよう対象を指導することにより達成される。あらゆる投与量調節は、データベースに文書化される。
禁忌薬物療法
1. パチシラン、イノテルセン、又は任意の他のATTR-PN治療に関する承認薬もしくは治験中の薬(タファミジス用量20mg以外)の使用は、本試験期間中は禁止される。
2. ATTR治療の適応(例えば、ジフルニサル、ドキシサイクリン)を除く承認された製品、又はATTRの未確認療法として使用される天然製品もしくは誘導体(例えば、緑茶抽出物、タウロウルソデオキシコール酸[TUDCA]/ウルソジオール)の使用は、本試験期間中は禁止される。
【0277】
試験手順
評価スケジュール
本試験を通じて実行される手順の説明を、以下に提供する。
【0278】
スクリーニング(-28日目から-1日目)
スクリーニングは、IMPの初回投与量の投与前、28日以内に行われる。以下の手順を、スクリーニング時に行う:
・インフォームドコンセントの記入
・対象が適格であることを確認する、組み入れ/除外基準の検証
・内科及び外科の病歴の評価
・NYHAクラス評価
・カルノフスキー全身状態
・mBMIを含む理学的検査
・生命徴候評価
・安静時12-誘導ECG
・PNDスコア
・NIS
・mNIS+7
・10メートル歩行試験(10MWT)、>24時間から<1週間間を空けて、2回の評価
・血液学、血清化学(循環バイオマーカーを含む)のための血液試料収集、尿検査
・血清及び血漿の探索的検査のための血液試料収集
・妊娠可能な女性対象のみ、尿妊娠試験
・薬歴評価。
【0279】
治療日
試験手順は、試験日別に以下に列挙し、理想的には、各日について、以下に列挙された順番で行う。
【0280】
1日目及び3ヶ月毎(±7日)
これらの評価は、1日目[0001] 及び3、6、9、15ヶ月目に行う:
・対象が適格であることを確認する、組み入れ/除外基準の検証(1日目)
・対象の治療アームへの無作為化及び無作為化番号の割付け(1日目)
・NYHAクラス評価
・mBMIを含む理学的検査
・生命徴候評価
・安静時12-誘導ECG
・PNDスコア
・Dyck/Rankinスコア
・mNIS+7
・ノーフォークQOL-DN
・COMPASS-31
・10メートル歩行試験(10MWT)、
・血液学、血清化学(循環バイオマーカーを含む)のための血液試料収集、尿検査
・妊娠可能な女性対象のみ、尿妊娠試験
・TTR安定化の分析のためのPD血液試料収集(投薬前)
・PK血液試料収集(投薬前)
・プレアルブミン血液試料収集(投薬前)
・指定された立会人(すなわち、施設の担当者)によるIMPの配布/収集及び投与
・併用薬物療法使用の評価
・AE/生命状態評価
・IMP服薬順守評価(1日目を除く全ての来院時)。
18ヶ月目(±7日)
・NYHAクラス評価
・mBMIを含む理学的検査
・生命徴候評価
・安静時12-誘導ECG
・PNDスコア
・Dyck/Rankinスコア
・mNIS+7
・ノーフォークQOL-DN
・COMPASS-31
・10メートル歩行試験(10MWT)、
・血液学、血清化学(循環バイオマーカーを含む)のための血液試料収集、尿検査
・妊娠可能な女性対象のみ、尿妊娠試験
・TTR安定化の分析のためのPD血液試料収集(投薬前)
・PK血液試料収集(投薬前)
・プレアルブミン血液試料収集(投薬前)
・指定された立会人(すなわち、施設の担当者)によるIMPの配布/収集及び投与
・併用薬物療法使用の評価
・AE/生命状態評価
・IMP服薬順守評価。
毎月の電話連絡(±7日)
これらの電話による連絡は、2、4、5、7、8、10、11、13、14、16、17ヶ月目に行う:
・併用薬物療法使用評価
・AE/生命徴候評価
・IMP服薬順守評価。
【0281】
対象が、試験薬及び試験評価を中断する場合、生命状態に関する毎月の連絡を完了することにより本試験の経過にわたり、或いはコンセントの取り下げまで、対象の経過観察を継続するようにあらゆる努力が払われなければならない。
【0282】
薬物濃度測定
PK血液採取スケジュール
参加施設で対象の亜群において、AG10血漿濃度を決定するために、PK試料を以下の時点で収集する:
・試験来院の1日目、及び3ヶ月毎:投薬前
【0283】
PD血液採取スケジュール
参加施設で対象の亜群において、蛍光プローブ排除(FPE)アッセイ及びウェスタンブロットを含む、TTR安定化の確立されたアッセイにより、AG10のPD特性を、評価する。これらのPDアッセイを行うために、サンプリングを以下の時点で行う:
・試験来院の1日目、及び3ヶ月毎:投薬前。
【0284】
プレアルブミン血液サンプリング手順
プレアルブミン濃度を測定するためのサンプリングは、以下の時点で行う:
・試験来院の1、28日目、及び3ヶ月毎:投薬前
【0285】
評価
以下の評価を完了する:
・10メートル歩行試験(10MWT)、
・神経障害スコア(NIS)
・補正神経障害スコア(mNIS+7)
・COMPASS-31
・Dyck/Rankinスコア
・栄養状態(mBMIを基に計算)。
【0286】
10メートル歩行試験(10MWT)
10MWTは、短い距離にわたり1秒につき歩行する速度をメートルで評価するために使用した、行動測定である。これは、機能的移動度、歩行(git)、及び前庭機能を決定するために利用する。無作為化の前に、2回の10MWTを、>24時間から<1週間、間をあけて、行った。
【0287】
神経障害スコア(NIS)
NISは、筋肉、反射及び感覚のモダリティ及び特定部位の標準群を使用し、臨床的神経障害のまとめ(虚弱、反射の減少及び感覚消失)を表す神経学的評価である。
【0288】
補正神経障害スコア(mNIS+7)
mNIS+7神経試験は、一部において、筋肉虚弱、感覚消失、及び低下した筋肉伸展反射を評価する複合スケールである。
【0289】
複合自律神経症状スコア-31(COMPASS-31)
COMPASS-31は、各対象の自立神経症状[0002] に対するTTRアミロイドーシスの影響を定量するために使用される。
【0290】
Dyck/Rankinスコア
Dyck/Rankinスコアを使用し、生活の質が評価される。
【0291】
栄養状態
栄養状態は、mBMIにおける変化を基に評価される。
【0292】
臨床検査測定
臨床検査試験のための血液試料及び尿試料を、収集する。スクリーニング時に、治験担当医師は、臨床検査室より提供される参照範囲の外側のあらゆる値の臨床的意味を評価し、臨床上意味があると判断した異常を伴う対象は、本試験から除外する。
以下の臨床検査試験を行う。
【表11】
【0293】
生命徴候
試験施設のスタッフは、投薬前及び投薬後5分間の安静の後、生命徴候を評価する。臨床的に意味があるとみなされる(すなわち、症状に関連し、及び/又は医学的介入を必要とする)あらゆる異常な生命徴候は、AEとして記録する。
【0294】
心電図
標準12-誘導ECGを評価する。ECGは、投薬前に5分間安静にした後、仰臥位で行う。治験担当医師又は資格のある治験分担医師は、臨床的意味に関して全てのECG解釈及び測定の間隔期間について検証する。臨床的に意味があると見なされる(すなわち、症状に関連し及び/又は医学的介入を必要とする)あらゆるECG解釈は、AEと報告される。
【0295】
理学的検査
対象は、mBMIを含む、完全な理学的検査(PE)を受け、これは医師又は適切に訓練された医療従事者により完了される。臨床的意味があると見なされる(すなわち、症状に関連し及び/又は医学的介入を必要とする)あらゆる異常な理学的検査所見は、AEと記録される。
【表12】
【表13】
【0296】
前記発明は、理解を明確化することを目的として図面及び実施例により一部詳細に説明されているが、当業者は、特定の変更及び改変が、添付された請求項の範囲内で行われ得ることを理解するであろう。加えて、本明細書に提供される各参考文献は、各々の参考文献が個別に引用により組み込まれているのと同程度に、その全体が引用により組み込まれている。本出願とそこで提供される参考文献の間に矛盾が存在する場合、本出願が支配するものである。