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特開2024-75527ダストカバー、ダストカバーの取付構造、及び、ダストカバーの製造方法
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  • 特開-ダストカバー、ダストカバーの取付構造、及び、ダストカバーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075527
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ダストカバー、ダストカバーの取付構造、及び、ダストカバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 3/04 20060101AFI20240528BHJP
   F16F 9/38 20060101ALI20240528BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20240528BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20240528BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240528BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
F16J3/04 C
F16F9/38
F16F9/54
F16J15/52 Z
B29C45/00
B29C49/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186964
(22)【出願日】2022-11-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】山本 梨紗子
【テーマコード(参考)】
3J043
3J045
3J069
4F206
4F208
【Fターム(参考)】
3J043AA03
3J043CB13
3J043DA09
3J043FA03
3J043FA07
3J043FA09
3J043FB20
3J045AA20
3J045BA03
3J045CB14
3J045EA10
3J069AA50
3J069CC10
3J069CC29
3J069CC31
3J069DD44
3J069DD48
4F206AA45
4F206AG10
4F206AH15
4F206JA07
4F206JL02
4F206JN41
4F206JW26
4F208AA45
4F208AG10
4F208AH17
4F208LA01
4F208LB01
4F208LG04
4F208LG22
4F208LJ09
(57)【要約】
【課題】シリンダから抜け難くできるダストカバー、ダストカバーの取付構造、及び、ダストカバーの製造方法を提供すること。
【解決手段】ダストカバー30は、軸方向の第1端33がロッド16側に取り付けられる。ダストカバー30の最も第2端34側の谷部32によって引掛部35が形成され、シリンダ11の外周面に設けられた凹部15に引掛部35が嵌まることで、ダストカバー30の第2端34側がシリンダ11に取り付けられる。引掛部35の第1端33側に隣接する谷部32によって第2谷部36が形成され、その第2谷部36の内周面よりも径方向内側に引掛部35の内周面が位置する。これにより、シリンダ11からダストカバー30を抜け難くできる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部と谷部とが軸方向に反復的に連続する蛇腹状の筒体により前記軸方向に伸縮可能に形成されて前記軸方向の第1端および第2端を備えた熱可塑性エラストマ製のダストカバーであり、筒状のシリンダの先端から突出量を変化可能に軸状のロッドが前記軸方向に突出した伸縮機構の径方向外側を前記筒体で囲み、前記第1端が前記ロッド側に取り付けられ、前記先端側に対して径方向内側へ凹むように前記シリンダの外周面に設けられた凹部に前記第2端側が嵌まって前記シリンダに取り付けられるダストカバーであって、
最も前記第2端側の前記谷部により形成され、前記凹部に嵌まる引掛部と、
前記引掛部の前記第1端側に隣接する前記谷部により形成される第2谷部と、を備え、
前記引掛部の内周面は、前記第2谷部の内周面よりも径方向内側に位置することを特徴とするダストカバー。
【請求項2】
前記筒体の軸心を含む断面において、前記引掛部は、前記第2谷部よりも外周面の曲率半径が大きいことを特徴とする請求項1記載のダストカバー。
【請求項3】
前記筒体の軸心を含む断面において、前記引掛部は、前記第2谷部よりも径方向の肉厚が厚いことを特徴とする請求項1記載のダストカバー。
【請求項4】
前記引掛部は、前記筒体の全周に亘って連続して形成されていることを特徴とする請求項1記載のダストカバー。
【請求項5】
前記引掛部と前記第2谷部との間の前記山部により形成される端山部を備え、
前記端山部は、前記端山部よりも前記第1端側の複数の前記山部に対して前記軸方向に長く形成されていることを特徴とする請求項1記載のダストカバー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のダストカバーと、前記ダストカバーの前記筒体で径方向外側が囲まれる伸縮機構とを備え、前記ダストカバーに前記伸縮機構を取り付けるためのダストカバーの取付構造であって、
前記伸縮機構は、前記軸方向に沿って延びる筒状のシリンダと、
前記シリンダの前記軸方向の先端から突出量を変化可能に前記軸方向に突出して前記ダストカバーの前記第1端側が取り付けられる軸状のロッドと、を備え、
前記シリンダの外周面には、前記先端側に対して径方向内側へ凹むように凹部が設けられ、
前記引掛部を前記凹部に嵌めることで前記ダストカバーの前記第2端側が前記シリンダに取り付けられることを特徴とするダストカバーの取付構造。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載のダストカバーの製造方法であって、
金型内で熱可塑性エラストマから蛇腹状の前記筒体を成形する成形工程と、
前記成形工程後であって前記筒体を前記伸縮機構に取り付ける前に、前記金型から取り出した前記筒体を前記軸方向に予備圧縮する予備圧縮工程と、を備えることを特徴とするダストカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダから抜け難くできるダストカバー、ダストカバーの取付構造、及び、ダストカバーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、筒状のシリンダの先端からロッドが突出したショックアブソーバをダストカバーで囲むことによって、シリンダの内部に埃などを入り込ませ難くすることが知られている。特許文献1に開示されたダストカバーは、山部と谷部とが軸方向に反復的に連続する蛇腹状の熱可塑性エラストマ製の筒体によって形成され、ショックアブソーバの伸縮に合わせて軸方向に伸縮する。
【0003】
ダストカバーの軸方向の一端は、ロッド側に取り付けられる。また、シリンダの外周面の一部からは径方向外側へフランジが張り出し、このフランジにダストカバーの内周面の形状を沿わせることで、ダストカバーの軸方向の他端がシリンダに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-185656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、シリンダのフランジの下面(軸方向の他端側の面)に引っ掛かる第1の谷部に対し、軸方向の一端側に隣接した第2の谷部が径方向内側に位置する。そのため、ダストカバーの伸縮時に第2の谷部がフランジに接触し易い。この接触によって第1の谷部の近傍が径方向外側へ変形し、第1の谷部がフランジから外れ易くなるという問題点がある。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、シリンダから抜け難くできるダストカバー、ダストカバーの取付構造、及び、ダストカバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明のダストカバーは、山部と谷部とが軸方向に反復的に連続する蛇腹状の筒体により前記軸方向に伸縮可能に形成されて前記軸方向の第1端および第2端を備えた熱可塑性エラストマ製のものであり、筒状のシリンダの先端から突出量を変化可能に軸状のロッドが前記軸方向に突出した伸縮機構の径方向外側を前記筒体で囲み、前記第1端が前記ロッド側に取り付けられ、前記先端側に対して径方向内側へ凹むように前記シリンダの外周面に設けられた凹部に前記第2端側が嵌まって前記シリンダに取り付けられるものであって、最も前記第2端側の前記谷部により形成され、前記凹部に嵌まる引掛部と、前記引掛部の前記第1端側に隣接する前記谷部により形成される第2谷部とを備え、前記引掛部の内周面は、前記第2谷部の内周面よりも径方向内側に位置する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のダストカバーは、軸方向の第1端がロッド側に取り付けられる。ダストカバーの最も第2端側の谷部によって引掛部が形成され、シリンダの外周面に設けられた凹部に引掛部が嵌まることで、ダストカバーの第2端側がシリンダに取り付けられる。この状態で、シリンダからのロッドの突出量が変化して伸縮機構が伸縮すると、ダストカバーも軸方向に伸縮する。引掛部の第1端側に隣接する谷部によって第2谷部が形成され、その第2谷部の内周面よりも径方向内側に引掛部の内周面が位置する。これにより、ダストカバーの軸方向の伸縮時に、引掛部が嵌まる凹部の近傍のシリンダに第2谷部を接触させ難くできる。よって、それらの接触に伴って引掛部の近傍が径方向外側へ変形することを抑制でき、凹部から引掛部を外れ難くできる。即ち、シリンダからダストカバーを抜け難くできる。
【0009】
請求項2記載のダストカバーによれば、請求項1記載のダストカバーが奏する効果に加え、次の効果を奏する。筒体の軸心を含む断面において、引掛部は、第2谷部よりも外周面の曲率半径が大きい。これにより、ダストカバーの軸方向の伸縮時に、第2谷部に対して引掛部を折れ曲がり難くでき、引掛部を凹部からより外れ難くできる。
【0010】
請求項3記載のダストカバーによれば、請求項1記載のダストカバーが奏する効果に加え、次の効果を奏する。筒体の軸心を含む断面において、引掛部は、第2谷部よりも径方向の肉厚が厚い。これにより、ダストカバーの軸方向の伸縮時に、第2谷部に対して引掛部を折れ曲がり難くでき、引掛部を凹部からより外れ難くできる。
【0011】
請求項4記載のダストカバーによれば、請求項1記載のダストカバーが奏する効果に加え、次の効果を奏する。引掛部は、筒体の全周に亘って連続して形成されている。これにより例えば、円筒状のパリソンの内側にエアーを吹き込んで外周側の金型に押し当てるブロー成形によって、引掛部を含むダストカバーを成形する場合、引掛部を形成する部位のうち周方向の一部が径方向外側へ過度に拡径して薄くなることを抑制できる。その結果、引掛部の肉厚を全周に亘って確保できるので、ダストカバーの軸方向の伸縮時に、第2谷部に対して引掛部を折れ曲がり難くでき、引掛部を凹部からより外れ難くできる。
【0012】
請求項5記載のダストカバーによれば、請求項1記載のダストカバーが奏する効果に加え、次の効果を奏する。山部のうち引掛部と第2谷部とを連結する端山部は、端山部よりも第1端側の複数の山部に対して軸方向に長く形成されている。これにより、ダストカバーの軸方向の伸縮時に、それら第1端側の複数の山部に対して端山部を折れ曲がり難くできる。その結果、端山部の折れ曲がりが引掛部の変形や変位に影響することを抑制でき、引掛部を凹部からより外れ難くできる。
【0013】
請求項6記載のダストカバーの取付構造によれば、請求項1から5のいずれかに記載のダストカバーが奏する効果と同一の効果を奏する。
【0014】
請求項7記載のダストカバーの製造方法は、請求項1から5のいずれかに記載のダストカバーを製造する方法であって、そのダストカバーが奏する効果に加え、次の効果を奏する。成形工程では、金型内で熱可塑性エラストマから蛇腹状の筒体を成形する。蛇腹状の筒体(ダストカバー)は、熱可塑性エラストマ製である場合、ゴム製である場合と比べて、軸方向の圧縮時の変形の一部が圧縮を解除しても戻り難く、筒体の各部が塑性変形し易い。これは、金型から取り出してから全く軸方向に圧縮していない場合に顕著である。
【0015】
そこで、成形工程後に行われる予備圧縮工程では、金型から取り出した筒体を軸方向に予備圧縮して、予め筒体を塑性変形させる。この予備圧縮工程後にダストカバー(筒体)を伸縮機構に取り付けることで、伸縮機構の伸縮に応じてダストカバーが伸縮しても、引掛部の形状やダストカバーの軸方向寸法が変化し難くなる。よって、その変化に応じて引掛部が凹部から抜け易くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態におけるダストカバーの正面図である。
図2図1のII-II線におけるダストカバーの断面図である。
図3図2のIII部分を拡大したダストカバーの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、一実施形態におけるダストカバー30、ストッパ20及びショックアブソーバ(伸縮機構)10について説明する。図1は、一実施形態におけるダストカバー30、ストッパ20及びショックアブソーバ10の正面図である。図2は、図1のII-II線におけるダストカバー30、ストッパ20及びショックアブソーバ10の断面図である。図2の断面は、ショックアブソーバ10のロッド16の軸心Cを含む断面である。
【0018】
本明細書では、特に指定がない限り、軸心Cの軸方向を単に「軸方向」と称し、軸心Cに直交する方向を単に「径方向」と称して説明する。また、説明を簡略化するために、軸方向のうち一方側(図1,2紙面上側)を上方とし、他方側(図1,2紙面下側)を下方として説明する。これらの上下方向は、ショックアブソーバ10が搭載された車両の上下方向とは必ずしも一致しない。
【0019】
ショックアブソーバ10は、主に車輪(図示せず)と車体(図示せず)とを繋ぎ、車輪から車体への振動を緩衝するためのサスペンションの一部である。ショックアブソーバ10は、車体を支えつつ車輪からの衝撃を吸収するコイルスプリング(図示せず)の振動を減衰する。ショックアブソーバ10は、車輪側に取り付けられるシリンダ11と、シリンダ11から軸方向に突出する円柱状(軸状)のロッド16と、を主に備える。ショックアブソーバ10は、車輪からの荷重入力に伴い、シリンダ11からのロッド16の突出量が変化して軸方向に伸縮し、振動を減衰する。
【0020】
シリンダ11は、軸心Cを中心とした略円筒状に形成される。このシリンダ11の上方の先端12からロッド16が軸方向に突出する。シリンダ11の外周面には、フランジ13及び複数の爪14が形成されている。軸心Cを含む断面において、シリンダ11の外周面は、これらフランジ13及び複数の爪14を除いた部分が軸心Cと平行である。
【0021】
フランジ13は、先端12から離れた位置でシリンダ11の外周面から径方向外側へ突出した部位であり、全周に亘り連続した環状に形成される。複数の爪14は、フランジ13よりも先端12側でシリンダ11の外周面から径方向外側へそれぞれ突出した部位であり、周方向に間隔を空けて配置されている。
【0022】
フランジ13は、爪14よりも径方向外側へ大きく張り出している。フランジ13及び爪14の下面はいずれも、軸心Cと垂直に形成されている。フランジ13及び爪14の上面はいずれも、径方向外側へ向かうにつれて下降傾斜する。軸心Cを含む断面において、シリンダ11の外周面に対するフランジ13の傾斜角度は、シリンダ11の外周面に対する爪14の傾斜角度よりも大きい。
【0023】
これらフランジ13と複数の爪14との間によって、シリンダ11の外周面には凹部15が形成される。凹部15は、先端12側の爪14に対して径方向内側へ凹んだ部位であり、爪14の位置に対応して周方向に複数設けられている。
【0024】
ロッド16の上方の先端には相手部材17が固定される。相手部材17は、車体側に取り付けられる金属製の部材であり、軸方向視において円形状の窪み18が下面に形成されている。この窪み18は、ストッパ20が挿入される部位であり、窪み18の内径がシリンダ11の外径と略同一である。窪み18の底面は、軸心Cに垂直な平面であり、シリンダ11の先端12と軸方向に対向する。窪み18の内周壁面は、窪み18の底面の周縁から下方へ向かって垂直に立ち上がる。更に、その内周壁面には、径方向内側へ突出する凸部19が、窪み18の底面から離れた部分に全周に亘って形成されている。
【0025】
ストッパ20は、ロッド16の径方向外側を囲むようにシリンダ11と相手部材17との間に配置される筒状のバウンドバンパである。ストッパ20は、軸心Cに垂直な断面が軸心Cを中心とした円環状に形成されている。即ち、ロッド16の軸心Cとストッパ20の軸心とは共通する。ショックアブソーバ10の大収縮時、シリンダ11の先端12と相手部材17の窪み18の底面との間でストッパ20が軸方向に圧縮されることで、ストッパ20の弾性変形により圧縮時の衝撃を吸収する。
【0026】
ストッパ20は、各部が一体成形された熱可塑性エラストマ製の部材である。ストッパ20を形成する熱可塑性エラストマの種類には、熱可塑性エラストマの特性に大きく寄与するハードセグメントに応じて、スチレン系、オレフィン系、ジエン系、塩化ビニル系、ウレタン系、エステル系、アミド系、フッ素系などが挙げられる。本実施形態の熱可塑性エラストマは、エステル系(例えば、ポリブチレンテレフタレート)のハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル(例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール)のソフトセグメントとのブロック共重合体である。
【0027】
ストッパ20は、山部21と谷部22とが軸方向に反復的に連続する蛇腹状の筒体である。なお、山部21及び谷部22は、ストッパ20の外周面における山頂および谷底の部分によってそれぞれ形成されている。山部21の内周面は谷底であって、谷部22の内周面は山頂である。ストッパ20の上端は谷部22によって形成され、下端24は山部21によって形成されている。この下端24は、シリンダ11の外周面よりも径方向外側へ張り出している。
【0028】
複数の山部21の内周面(谷底)は、複数の谷部22の外周面(谷底)よりも径方向外側に位置する。ストッパ20の内周面から外周面までの肉厚は、蛇腹の山の大きさ(例えば、谷部22の外周面から山部21の外周面までの径方向の寸法)に対して十分に薄くなっている。これにより、ゴム等に比べて硬い熱可塑性エラストマ製のストッパ20の蛇腹が複数の山部21及び谷部22を支点に折り畳まれるようにして、ストッパ20が軸方向に圧縮可能となる。
【0029】
ストッパ20には、最も上側の蛇腹の一山分によって取付部23が形成されている。取付部23は、相手部材17に取り付けられる部位である。取付部23の山部21の外径は、窪み18の内径と略同一であり、凸部19の内径よりも大きい。そのため、凸部19よりも窪み18の底面側(上側)に取付部23の山部21を挿入することで、凸部19で取付部23が保持され、ストッパ20が相手部材17に取り付けられる。
【0030】
取付部23と下端24との間における複数の山部21の外径は、取付部23の山部21の外径や凸部19の内径よりも小さい。これにより、凸部19に取付部23が保持されていても、ストッパ20の軸方向の圧縮時、取付部23と下端24との間における複数の山部21を凸部19に干渉させ難くできる。これにより、ストッパ20の蛇腹を綺麗に折り畳み易くできるので、ストッパ20の一部に応力が集中し難くなり、ストッパ20の耐久性を向上できる。
【0031】
ダストカバー30は、シリンダ11に埃などを付着し難くするためのものである。ダストカバー30は、ストッパ20と同様に、山部31と谷部32とが軸方向に反復的に連続する蛇腹状の筒体によって形成される。ダストカバー30は、軸心Cに垂直な断面が軸心Cを中心とした円環状に形成されている。即ち、ロッド16の軸心Cとダストカバー30の軸心とは共通する。
【0032】
なお、山部31及び谷部32は、ダストカバー30の外周面における山頂および谷底の部分によってそれぞれ形成されている。山部31の内周面は谷底であって、谷部32の内周面は山頂である。
【0033】
複数の山部31の内周面(谷底)は、複数の谷部32の外周面(谷底)よりも径方向外側に位置する。ダストカバー30の内周面から外周面までの肉厚は、蛇腹の山の大きさ(例えば、谷部32の外周面から山部31の外周面までの径方向の寸法)に対して十分に薄くなっている。これにより、ゴム等に比べて硬い熱可塑性エラストマ製のダストカバー30の蛇腹が複数の山部31及び谷部32を支点に折り畳まれるようにして、ダストカバー30が軸方向に圧縮可能となる。
【0034】
更に、ストッパ20の肉厚よりもダストカバー30の肉厚が薄いので、ストッパ20と比べてダストカバー30を軸方向に圧縮させ易くできる。また、ダストカバー30は、シリンダ11と相手部材17との間で軸方向に圧縮されずにシリンダ11の外周側を覆うように、ダストカバー30の最小内径がシリンダ11の最小内径よりも十分に大きく形成されている。
【0035】
ダストカバー30の軸方向の上端である第1端33は、山部31によって形成され、ストッパ20の下端24に連なる。本実施形態では、第1端33と下端24とが一致するが、第1端33と下端24とをストレート形状の筒部で連結しても良い。
【0036】
ダストカバー30及びストッパ20は、熱可塑性エラストマによって一体成形されている。ストッパ20が相手部材17を介してロッド16に取り付けられているため、ダストカバー30の第1端33がロッド16側に取り付けられていると言える。
【0037】
ダストカバー30の軸方向の下端である第2端34は、山部31によって形成されている。ダストカバー30は、最も第2端34側の谷部32により形成される引掛部35と、引掛部35の第1端33側に隣接する谷部32により形成される第2谷部36と、引掛部35及び第2谷部36の間の山部31により形成される端山部37と、を備える。これら引掛部35、第2谷部36及び端山部37は、ダストカバー30の全周に亘って形成され、軸対称に形成されている。
【0038】
引掛部35は、フランジ13と爪14との間の凹部15に嵌まる部位である。引掛部35が凹部15に嵌まることで、ダストカバー30の第2端34側がシリンダ11に取り付けられる。更に、上述した通り、ダストカバー30の第1端33がロッド16側に取り付けられているので、シリンダ11からのロッド16の突出量が変化してショックアブソーバ10が伸縮すると、ダストカバー30も軸方向に伸縮する。このショックアブソーバ10及びダストカバー30の伸縮時に、凹部15から引掛部35を抜け難くすること、即ちシリンダ11からダストカバー30の第2端34側を抜け難くすることが望まれている。
【0039】
なお、凹部15よりも下方のフランジ13が、ダストカバー30の複数の山部31と略同じ位置まで径方向外側へ大きく張り出しているので、凹部15から下方へ引掛部35が抜け難い。一方、爪14を越えて凹部15に引掛部35を嵌め易くするために、爪14の径方向外側への張出量が小さく形成されているので、下方と比べると上方へは、凹部15から引掛部35が抜け易い。よって、特に、凹部15から上方へ引掛部35を抜け難くすることが望まれている。
【0040】
図3は、図2のIII部分(引掛部35等の近傍)を拡大したダストカバー30の部分拡大断面図である。なお、図3には、シリンダ11の先端12がストッパ20に当たるまで短縮したダストカバー30が二点鎖線で示されている。
【0041】
引掛部35の内周面は、第2谷部36の内周面よりも径方向内側に位置する。これにより、ダストカバー30の軸方向の伸縮時に、引掛部35が嵌まる凹部15の近傍のシリンダ11に第2谷部36を接触させ難くできる。より具体的に、爪14に第2谷部36を接触させ難くできる。
【0042】
ここで、爪14の上面(外周面)は、爪14を越えて凹部15に引掛部35を嵌め易くするために径方向外側へ向かうにつれて下降傾斜している。このような爪14の上面に第2谷部36が接触すると、第2谷部36が径方向外側へ変形し、その変形に伴って引掛部35も径方向外側へ変形してしまう。
【0043】
これに対し、本実施形態では、引掛部35に対する第2谷部36の位置関係により第2谷部36が爪14に接触し難いので、その接触に伴って引掛部35の近傍が径方向外側へ変形することを抑制できる。その結果、凹部15から引掛部35を外れ難くでき、シリンダ11からダストカバー30を抜け難くできる。
【0044】
軸心Cを含む断面において、引掛部35の外周面の曲率半径は、第2谷部36の外周面の曲率半径よりも大きい。これにより、ダストカバー30の伸縮時に、第2谷部36に対して引掛部35を折れ曲がり難くできる。従って、引掛部35の変形に伴って凹部15から引掛部35が外れ易くなることを抑制でき、シリンダ11からダストカバー30を抜け難くできる。
【0045】
更に、軸心Cを含む断面において、引掛部35の外周面の曲率半径は、第2谷部36だけでなく引掛部35よりも上側(第1端33側)における複数の谷部32の外周面の曲率半径よりも大きい。これにより、ダストカバー30の伸縮時に、引掛部35をより折れ曲がり難くでき、シリンダ11からダストカバー30をより抜け難くできる。
【0046】
また、引掛部35の外周面の曲率半径が大きいため、凹部15に引掛部35を嵌めるとき、引掛部35を外周面の谷底で折り曲げるのではなく、引掛部35を全体的に弾性変形させ易い。よって、引掛部35の軸方向寸法や、凹部15の軸方向寸法にばらつきがあっても、凹部15に引掛部35を嵌め易くできる。
【0047】
なお、引掛部35等の谷部32の軸方向寸法とは、その谷部32のうち外周面の谷底よりも径方向内側に位置する部位の軸方向の長さである。また、端山部37等の山部31の軸方向寸法とは、その山部31のうち内周面の谷底よりも径方向外側に位置する部位の軸方向の長さである。
【0048】
引掛部35の外周面の谷底は、爪14の径方向外側の先端よりも径方向内側に位置する。この点によっても、凹部15に嵌めるときに引掛部35を全体的に弾性変形させ易くでき、各々の軸方向寸法にばらつきがあっても凹部15に引掛部35を嵌め易くできる。
【0049】
シリンダ11への取り付け前の状態における引掛部35の内周面の山頂の内径は、凹部15におけるシリンダ11の外径よりも小さいことが好ましい。この場合、凹部15に嵌まった引掛部35が凹部15の底面(軸心C側の面)に押し付けられる。これにより、ダストカバー30の伸縮時に、引掛部35を径方向外側へ変形させ難くでき、引掛部35を凹部15からより外れ難くできる。
【0050】
軸心Cを含む断面において、引掛部35は、引掛部35よりも上側における複数の谷部32(第2谷部36等)よりも肉厚(内周面の谷底から外周面の山頂までの径方向寸法)が厚い。これにより、ダストカバー30の伸縮時に、上側の複数の谷部32に対して引掛部35を折れ曲がり難くでき、引掛部35を凹部15からより外れ難くできる。
【0051】
引掛部35と第2谷部36との間の端山部37は、端山部37よりも上側の複数の山部31に対して軸方向に長く形成されている。これにより、ダストカバー30の伸縮時に、それら上側の複数の山部31に対して端山部37を折れ曲がり難くできる。従って、図3に二点鎖線で示すように、ダストカバー30の伸縮時には、ダストカバー30のうち第2谷部36よりも上側が主に変形し、第2谷部36よりも下側の端山部37及び引掛部35が変形し難くなる。よって、端山部37の折れ曲がりが引掛部35の変形や変位に影響することを抑制でき、引掛部35を凹部15からより外れ難くできる。
【0052】
次に、ストッパ20及びダストカバー30の製造方法について説明する。ストッパ20及びダストカバー30は、基本的な形状が成形工程で成形され、その後の予備圧縮工程で軸方向に予備圧縮されて完成する。
【0053】
成形工程は、既知の押出成形およびブロー成形でストッパ20及びダストカバー30を成形する。具体的に成形工程では、まず押出成形によって、熱可塑性エラストマから略円筒状のパリソンを成形する。次いで、ブロー成形によって、そのパリソンの内側に空気を吹き込み、パリソンの外周面を金型に押し付けることで、蛇腹状のストッパ20及びダストカバー30を一体成形する。
【0054】
蛇腹状のストッパ20及びダストカバー30は、熱可塑性エラストマ製であるため、それらがゴム製である場合と比べて、軸方向の圧縮時の変形の一部が圧縮を解除しても戻り難い。この圧縮による塑性変形は、金型から取り出して全く軸方向に圧縮していない場合に顕著である。
【0055】
そこで、成形工程後の予備圧縮工程では、ブロー成形用の金型から取り出して不要な部分をカットしたストッパ20及びダストカバー30を軸方向に予備圧縮し、それらを予め塑性変形させてそれらの形状を安定化させる。予備圧縮工程では具体的に、ショックアブソーバ10に取り付けたストッパ20に加わることが想定される最大荷重(例えば30kN程度)で、ストッパ20を軸方向に3回圧縮すると、ストッパ20の形状が概ね安定する。また、ショックアブソーバ10に取り付けたダストカバー30に対して想定される最大の圧縮率になるまで、ダストカバー30を軸方向に3回圧縮すると、ダストカバー30の形状が概ね安定する。
【0056】
予備圧縮工程を行って完成したストッパ20及びダストカバー30が、ショックアブソーバ10に取り付けられる。これにより、ショックアブソーバ10の伸縮に応じてストッパ20及びダストカバー30が伸縮しても、ストッパ20及びダストカバー30の軸方向寸法が変化し難くなると共に、引掛部35の形状も変化し難くなる。よって、その変化に応じて引掛部35が凹部15から抜け易くなることを抑制できる。
【0057】
また、予備圧縮工程によって引掛部35は、内周面の山頂の内径が小さくなるように塑性変形する。これにより、予備圧縮工程後の引掛部35を凹部15に嵌めたとき、凹部15の底面に引掛部35をより強く押し付けることができる。その結果、ダストカバー30の伸縮時に、引掛部35を径方向外側へ変形させ難くでき、引掛部35を凹部15からより外れ難くできる。
【0058】
ブロー成形でダストカバー30を成形するため、成形後の外径が小さい部位ほど、略円筒状のパリソンからの周長の拡大率が小さく、内周面から外周面までの肉厚を確保し易い。成形後の引掛部35は、引掛部35よりも上側における複数の谷部32(第2谷部36等)よりも外周面の谷底の外径が小さい(外周面が径方向内側に位置する)。これにより、ブロー成形後の引掛部35の肉厚を、上側の複数の谷部32の肉厚よりも厚くし易い。その結果、ダストカバー30の伸縮時に、上側の複数の谷部32に対して引掛部35を折れ曲がり難くでき、引掛部35を凹部15から外れ難くできる。
【0059】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。ストッパ20やダストカバー30、相手部材17等の各部の形状や寸法は適宜変更しても良い。例えば、ストッパ20やダストカバー30の蛇腹の山の数を変更しても良い。また、円筒状や円柱状の部位などを、角筒状や楕円筒状、角柱状や楕円筒状などに変更しても良い。
【0060】
上記実施形態では、ショックアブソーバ10にストッパ20及びダストカバー30を取り付ける場合について説明したが、必ずしもこれに限らない。シリンダ11の先端12から突出量を変化可能にロッド16が軸方向に突出する伸縮機構であれば、ショックアブソーバ10以外の伸縮機構にストッパ20及びダストカバー30を取り付けても良い。その伸縮機構としては、例えばエアシリンダや油圧シリンダ、電動シリンダ等が挙げられる。また、車両以外に搭載された伸縮機構にストッパ20及びダストカバー30を取り付けても良い。
【0061】
上記実施形態では、既知のブロー成形によりストッパ20及びダストカバー30を成形する場合について説明したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ストッパ20及びダストカバー30を射出成形などで成形しても良い。この場合、金型から取り外すときに成形品の内側に空気を吹き込んで膨らませたり、崩壊性の中子を有する金型を用いたりすれば良い。
【0062】
また、ストッパ20及びダストカバー30を一体成形する場合に限らず、ストッパ20を省略しても良い。この場合、伸縮機構のシリンダ11にダストカバー30の第2端34側を取り付けつつ、伸縮機構のロッド16に固定したブラケット等にダストカバー30の第1端33を直接取り付けても良い。更に、ダストカバー30とは別部材からなるストッパ20を伸縮機構に取り付けても良い。このストッパ20は、熱可塑性エラストマ以外の弾性体から構成しても良い。
【0063】
上記実施形態では、引掛部35がダストカバー30の全周に亘り連続して形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限らない。例えば、引掛部35を周方向に断続的に形成し、周方向に隣り合う引掛部35の間の部位を径方向外側へ膨らませても良い。但し、このような引掛部35をブロー成形で成形する場合には、引掛部35の間の部位が径方向外側へ過度に拡径して薄くなり、引掛部35の近傍が変形し易くなるおそれがある。
【0064】
これに対し、引掛部35をダストカバー30の全周に亘り連続して形成することで、ブロー成形で引掛部35を成形したときに、引掛部35を形成する部位のうち周方向の一部が径方向外側へ過度に拡径して薄くなることを抑制できる。その結果、引掛部35の肉厚を全周に亘って確保できる。よって、ダストカバー30の軸方向の伸縮時に、引掛部35以外の谷部32(第2谷部36等)に対して引掛部35を折れ曲がり難くでき、引掛部35を凹部15からより外れ難くできる。
【0065】
上記実施形態では、複数の爪14を周方向に間隔を空けて配置する場合について説明したが、必ずしもこれに限らない。フランジ13のように爪14をシリンダ11の全周に亘り連続させても良い。この場合、フランジ13と爪14との間の凹部15もシリンダ11の全周に亘り連続する。
【0066】
また、フランジ13と爪14との間によって凹部15を形成する場合に限らない。例えば、爪14を省略し、シリンダ11の外周面の一部を径方向内側へ凹ませることで、溝状の凹部15をシリンダ11の全周に亘り形成しても良い。
【符号の説明】
【0067】
10 ショックアブソーバ(伸縮機構)
11 シリンダ
12 先端
15 凹部
16 ロッド
30 ダストカバー
31 山部
32 谷部
33 第1端
34 第2端
35 引掛部
36 第2谷部
37 端山部
C 軸心

図1
図2
図3