(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075530
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20240528BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240528BHJP
【FI】
H01L33/48
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186975
(22)【出願日】2022-11-23
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148895
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】木暮 靖男
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142BA32
5F142CB23
5F142CD02
5F142CF13
5F142DA14
5F142DA24
5F142DA36
5F142DA73
5F142DB20
5F142GA40
5F142HA01
(57)【要約】
【課題】LEDなどの固体発光素子からの励起光によって蛍光体を励起し、蛍光体からの蛍光を出射する光源装置において、出射光に含まれるスパイク状の励起光を抑えつつ、近紫外~赤外域までの広い帯域をカバーする光源装置を提供すること
【解決手段】光源装置が、第1の波長帯の励起光を発する、少なくとも1つの第1の発光素子と、第1の発光素子の光路中に配置されて励起光によって励起され、第1の波長帯よりも波長の長い第2の波長帯の蛍光を発する蛍光体と、第1の発光素子を部分的に覆うように配置され蛍光体を透過する励起光の一部をカットする光学フィルタと、を備え、第1の発光素子に対する光学フィルタの相対的な位置が、蛍光の強度と励起光の強度に基づいて調整されていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長帯の励起光を発する、少なくとも1つの第1の発光素子と、
前記第1の発光素子の光路中に配置されて、前記励起光によって励起され、前記第1の波長帯よりも波長の長い、第2の波長帯の蛍光を発する蛍光体と、
前記第1の発光素子を部分的に覆うように配置され、前記蛍光体を透過する前記励起光の一部をカットする光学フィルタと、
を備え、
前記第1の発光素子に対する前記光学フィルタの相対的な位置が、前記蛍光の強度と前記励起光の強度に基づいて調整されている
ことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記励起光が、ピーク波長の異なる複数の光から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記複数の光が、ピーク波長370~390nmの光、およびピーク波長400~420nmの光を含むことを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記蛍光が、ピーク波長の異なる複数の光から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項5】
前記複数の光が、ピーク波長440~480nmの光、ピーク波長480~525nmの光、ピーク波長525~560nmの光、ピーク波長560~630nmの光、およびピーク波長630~750nmの光を含むことを特徴とする請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
第3の波長帯の出射光を発する、少なくとも1つの第2の発光素子をさらに備え、
前記第2の発光素子は、前記第3の波長帯の出射光が前記光学フィルタと干渉しないように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項7】
前記第3の波長帯は、前記第1の波長帯よりも波長が短いことを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記第3の波長帯の出射光が、ピーク波長330~350nmの光を含むことを特徴とする請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記第1の発光素子に対する前記光学フィルタの相対的な位置が、前記蛍光のピーク強度に対する前記励起光のピーク強度の比率が20~100%となるように調整されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項10】
前記光源装置からの光をミキシングして導光する光導光部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項11】
前記光源装置から出射される光のスペクトルが、波長340~800nmの範囲で連続していることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分析装置等に用いられる光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や尿などの体液成分を検体とし、糖やコレステロール、タンパク、酵素などの各種成分の測定を行う生化学分析装置において、各成分の定量のため分光光度計により340nmから800nmの波長域における吸光度が測定されており、この波長域の光を発光できる光源装置が使用されている。
【0003】
このような光源装置では、従来、光源としてハロゲンランプが用いられてきたが、波長300~400nmの近紫外域の出射強度は極めて微弱であるため、信頼性や測定スピードの観点からこの波長域の強度の増大が求められていた。そして、近年、近紫外光を発するLED(Light Emitting Diode)が開発され、近紫外光によって励起され、近赤外の波長域まで発光する蛍光体を用いた光源が、ハロゲンランプに代わる光源として提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、波長365nmにピーク波長を有する紫外光を発光する固体光源(LED)と、固体光源を覆い少なくとも一種の蛍光体を含有する蛍光膜と、を備え、LEDからの紫外光によって蛍光膜を励起し、350nmから1200nmまでの波長域の光を出射する発光装置(光源装置)が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、複数の蛍光体を透明樹脂に分散させた樹脂層を、LEDからの波長340nmの紫外光によって励起し、広い波長域の光を出射する光源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2019/240150号
【特許文献2】特開2020-87974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2の光源装置によれば、広い波長域(例えば、350~1200nmの範囲)に連続的な発光スペクトルを有する出射光を得ることができる。
しかしながら、このような蛍光膜を励起光で励起して蛍光を出射する光源装置の構成では、蛍光膜に入射した励起光のうち、蛍光に変換されなかった励起光の一部と、蛍光膜内で発生した蛍光とが混合されて蛍光層の出射面より出射されるため、蛍光膜の中を透過する励起光の強度と、蛍光膜から放射する蛍光の強度は、蛍光膜内の蛍光体の充填量や、蛍光膜の膜厚の影響を受けることになる。このため、出射光の分光分布は、励起光の中心波長付近がスパイク状の分光分布となり、周辺の波長域と比較して著しく強度が増大する傾向にある。そして、このスパイク状の出射光は近紫外域の比較的エネルギーの大きな光であるため、生化学分析に使用される試薬に化学的な影響を与える可能性がある。
また、このようなスパイク状の励起光を抑える手段として、蛍光膜に含まれる蛍光体の充填量や膜厚を増やし、励起光を蛍光膜の中で吸収拡散させる方法も考えられるが、励起光を蛍光体の吸収拡散により抑制すると、蛍光膜内で発生した蛍光についても、励起光と同様に、蛍光が発生した位置から蛍光層の出射面までの間にある蛍光体によって、吸収拡散などの影響を受けてしまい、強度が却って抑えられてしまうといった現象が発生する。そして、蛍光の強度が抑えられてしまうと、所望の強度(分析に必要な強度)が得られない、といった問題も発生する。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、LEDなどの固体発光素子からの励起光によって蛍光体を励起し、蛍光体からの蛍光を出射する光源装置において、出射光に含まれるスパイク状の励起光を抑えつつ、近紫外~赤外域までの広い帯域をカバーする光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の光源装置は、第1の波長帯の励起光を発する、少なくとも1つの第1の発光素子と、第1の発光素子の光路中に配置されて、励起光によって励起され、第1の波長帯よりも波長の長い第2の波長帯の蛍光を発する蛍光体と、第1の発光素子を部分的に覆うように配置され、蛍光体を透過する励起光の一部をカットする光学フィルタと、を備え、第1の発光素子に対する光学フィルタの相対的な位置が、蛍光の強度と励起光の強度に基づいて調整されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、不必要な励起光の強度が光学フィルタによって調整されるため、出射光に含まれるスパイク状の励起光が抑えられると共に、近紫外~赤外域までの広い帯域をカバーする出射光が得られる。
【0011】
また、励起光が、ピーク波長の異なる複数の光から構成されていることが望ましい。また、この場合、複数の光が、ピーク波長370~390nmの光、およびピーク波長400~420nmの光を含むことが望ましい。
【0012】
また、蛍光が、ピーク波長の異なる複数の光から構成されていることが望ましい。また、この場合、複数の光が、ピーク波長440~480nmの光、ピーク波長480~525nmの光、ピーク波長525~560nmの光、ピーク波長560~630nmの光、およびピーク波長630~750nmの光を含むことが望ましい。
【0013】
また、第3の波長帯の出射光を発する、少なくとも1つの第2の発光素子をさらに備え、第2の発光素子は、第3の波長帯の出射光が光学フィルタと干渉しないように配置されていることが望ましい。また、この場合、第3の波長帯は、第1の波長帯よりも波長が短いことが望ましい。また、第3の波長帯の出射光が、ピーク波長330~350nmの光を含むことが望ましい。
【0014】
また、第1の発光素子に対する光学フィルタの相対的な位置が、蛍光のピーク強度に対する励起光のピーク強度の比率が20~100%となるように調整されていることが望ましい。
【0015】
また、光源装置からの光をミキシングして導光する光導光部をさらに備えることが望ましい。
【0016】
また、光源装置から出射される光のスペクトルが、波長340~800nmの範囲で連続していることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の光源装置によれば、出射光に含まれるスパイク状の励起光が抑えられ、近紫外~赤外域までの広い帯域で所望の分光特性を得ることが可能な光源装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る光源装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る光源装置に備わる光源ユニットの構成を説明する平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る光源装置に備わる蛍光体層で使用した、5種類の蛍光体の光強度分布(発光スペクトル)を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る光源装置に備わる光学フィルタの分光透過率を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る光源装置に備わる光導光部の出射端面から出射される出射光のスペクトルを示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る光源装置に備わる光源ユニットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光源装置1の構成を示す図であり、
図1(a)は、光源装置1の斜視図であり、
図1(b)は、光源装置1をYZ平面で切断したときの断面図である。本実施形態の光源装置1は、生化学分析装置等に用いられる、広い波長域の光を出射する装置である。なお、本明細書においては、
図1の座標に示すように、後述する発光素子(第1LED22、23、第2LED24、第3LED26)の出射方向をZ軸方向、基板21を規定する方向をX軸方向及びY軸方向と定義して説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の光源装置1は、ケース10と、光源ユニット20と、ヒートシンク30と、光導光部40と、を備えている。
【0022】
ケース10は、内部に光源ユニット20、ヒートシンク30、冷却ファン(不図示)等を収容する、金属製の箱形の部材である。
ヒートシンク30は、光源ユニット20の基板21の裏面に密着するように配置され、光源ユニット20で発生した熱を放熱する、いわゆる空冷ヒートシンクである。ヒートシンク30は、アルミニウムや銅等の熱伝導性の良好な材料からなり、基板21が当接する面とは反対側の面に、複数の放熱フィン32を備えている。各放熱フィン32は、YZ平面に平行な薄板状の形状を呈し、X軸方向及びY軸方向に所定の間隔をおいて設けられている。なお、本実施形態においては、不図示の冷却ファンによって生成される冷却風によって、複数の放熱フィン32が一様に冷却されるようになっている。
ケース10の上面(Y軸方向+側の面)及び下面(Y軸方向-側の面)には、それぞれ、ケース10内の空気を排気する矩形状の排気口11、12が形成されており、放熱フィン32の間を流れた空気が排気口11、12から排出されるようになっている。
また、ケース10の前面(Z軸方向+側の面)には、光導光部40が取付けられている。本実施形態の光導光部40は、ミキシングロッド41と、光ファイババンドル42を有し、光源ユニット20からの光をミキシングロッド41でミキシングし、光ファイババンドル42で導光して出射する。なお、ミキシングロッド41としては、石英からなる多角形の柱状ロッド、または内面が反射面の多角形の筒状の部材を使用することができる。
【0023】
光源ユニット20は、ケース10の前面に沿って配置され、光導光部40に向けて出射光を出射する部材である。
図2は、本実施形態の光源ユニット20の構成を説明する平面図である。
図2に示すように、光源ユニット20は、基板21と、第1LED22、23(第1の発光素子)と、第2LED24(第1の発光素子)と、第3LED26(第2の発光素子)と、ダム材27と、蛍光体層28(蛍光体)と、光学フィルタ29(グレー部)と、を有している。
【0024】
基板21は、熱伝導率の高い材料(例えば、窒化アルミニウム)で形成された矩形状の配線基板であり、その表面には、第1LED22、23、第2LED24、第3LED26が、COB(Chip On Board)実装されている。
基板21上には、第1LED22、23、第2LED24、第3LED26のそれぞれに電力を供給するためのアノードパターン(不図示)及びカソードパターン(不図示)が形成されており、第1LED22、23、第2LED24、第3LED26のそれぞれは、アノードパターン及びカソードパターンにそれぞれハンダ付けされ、電気的に接続されている。また、基板21は、不図示の配線ケーブルによって不図示のドライバ回路と電気的に接続されており、第1LED22、23、第2LED24、第3LED26のそれぞれには、アノードパターン及びカソードパターンを介して、ドライバ回路から駆動電流が供給されるようになっている。
【0025】
第1LED22、23は、第1波長(例えば、405nm)にピーク波長を有する出射光を発する発光素子である。基板21のアノードパターン及びカソードパターンを介して、第1LED22、23に駆動電流が供給されると、駆動電流に応じた強度の出射光が出射される。なお、本実施形態の第1LED22、23の出射面上(つまり、光路上)には、後述の蛍光体層28(
図1の斜線部)が形成されている。また、第1LED22の全体と第1LED23の一部が、後述の光学フィルタ29によって覆われている。
【0026】
第2LED24は、第2波長(例えば、385nm)にピーク波長を有する出射光を発する発光素子である。基板21のアノードパターン及びカソードパターンを介して、第2LED24に駆動電流が供給されると、駆動電流に応じた強度の出射光が出射される。なお、本実施形態の第2LED24の出射面上(つまり、光路上)には、後述の蛍光体層28(
図1の斜線部)が形成されている。また、第2LED24の一部が、後述の光学フィルタ29によって覆われている。
【0027】
第3LED26は、第3波長(例えば、340nm)にピーク波長を有する出射光を発する発光素子である。基板21のアノードパターン及びカソードパターンを介して、第3LED26に駆動電流が供給されると、駆動電流に応じた強度の出射光が出射される。なお、第1LED22、23及び第2LED24とは異なり、本実施形態の第3LED26の出射面上(つまり、光路上)には、蛍光体層28は形成されておらず、また光学フィルタ29によって覆われてもいない。つまり、第3LED26は、出射光が光学フィルタ29と干渉しないように配置されている。
【0028】
ダム材27は、基板21上において、第1LED22、23、第2LED24、第3LED26を囲むように形成された枠状の部材であり、第1LED22、23、第2LED24と光学フィルタ29との間にZ軸方向の空間を形成するために設けられている。本実施形態のダム材27は、例えば、耐紫外線性を有するシリコーン樹脂等で形成される。
【0029】
蛍光体層28は、第1LED22、23及び第2LED24の出射面上に形成され、第1LED22、23及び第2LED24からの出射光を励起光として蛍光を発する膜厚:略100μmの薄膜である。本実施形態の蛍光体層28は、5種類の蛍光体を所定の比率でミキシングした粉体をシリコーン樹脂(例えば、三菱化学社製S111)に分散させ、第1LED22、23及び第2LED24の出射面上に直接塗布し、加熱硬化させる方法で形成した。
図3は、本実施形態の蛍光体層28で使用した5種類の蛍光体の光強度分布(発光スペクトル)を示す図である。
図3(a)~(e)は、本実施形態の蛍光体層28で使用した青色蛍光体(
図3(a))、青緑蛍光体(
図3(b))、βサイアロン蛍光体(
図3(c))、αサイアロン蛍光体(
図3(d))、赤色蛍光体(
図3(e)の発光スペクトルを正規化して示している。
図3(a)に示すように、蛍光体層28の青色蛍光体は、第1LED22、23及び第2LED24からの出射光を励起光として、ピーク波長466.2nmの蛍光を発するものである。
図3(b)に示すように、蛍光体層28の青緑蛍光体は、第1LED22、23及び第2LED24からの出射光を励起光として、ピーク波長504.00nmの蛍光を発するものである。
図3(c)に示すように、蛍光体層28のβサイアロン蛍光体は、第1LED22、23及び第2LED24からの出射光を励起光として、ピーク波長541.52nmの蛍光を発するものである。
図3(d)に示すように、蛍光体層28のαサイアロン蛍光体は、第1LED22、23及び第2LED24からの出射光を励起光として、ピーク波長593.21nmの蛍光を発するものである。
図3(e)に示すように、蛍光体層28の赤色蛍光体は、第1LED22、23及び第2LED24からの出射光を励起光として、ピーク波長674.20nmの蛍光を発するものである。
このように、第1LED22、23及び第2LED24からの出射光(励起光)が蛍光体層28に入射すると、青色蛍光体、青緑蛍光体、βサイアロン蛍光体、αサイアロン蛍光体、赤色蛍光体の発光スペクトルに応じた蛍光が発せられる。なお、蛍光体層28から放射する蛍光の強度は、第1LED22、23及び第2LED24からの励起光の強度、蛍光体層28内の各蛍光体の充填量、蛍光体層28の膜厚の影響を受けるが、本実施形態においては各蛍光のスペクトルが隣接する蛍光のスペクトルとオーバーラップし、合算スペクトルが、ハロゲンランプの可視域の発光スペクトルと略等しくなるように第1LED22、23及び第2LED24からの出射光の強度(つまり、駆動電流)が調整されている。
なお、蛍光体層28に入射した励起光(つまり、第1LED22、23及び第2LED24からの出射光)のうち、蛍光に変換されなかった励起光の一部は、蛍光体層28内で発生した蛍光と混合されて蛍光体層28の出射面より出射される。
【0030】
図2に戻り、光学フィルタ29は、蛍光体層28を有し蛍光を発する、第1LED22の全部、第1LED23の一部、第2LED24の一部を覆うように配置され(つまり、第1の発光素子を部分的に覆うように配置され)る、扇形状のガラス製の光吸収型フィルタである。
図4は、光学フィルタ29の分光透過率を示す図である。
図4に示すように、本実施形態においては、光学フィルタ29として、波長440nm以上の光を透過し、波長440nm未満の光をカット(吸収)するシャープカットフィルタ(HOYA株式会社製シャープカットフィルタ:Y44)を、厚さ:0.5mmに加工して使用した。
なお、本実施形態の光学フィルタ29は、第1LED22の全部、第1LED23の一部、第2LED24の一部を覆うように配置した上で、最終的に接着剤によってダム材27上に固定されるが、固定する前に、第1LED22、23及び第2LED24に対する光学フィルタ29の相対的な位置を調整している。具体的には、光学フィルタ29を透過しない励起光(つまり、第1LED23及び第2LED24からの出射光のうち、蛍光体層28によって蛍光に変換されなかった光であって、光学フィルタ29を通らない光)の強度と、光学フィルタ29を透過する蛍光(蛍光体層28によって蛍光に変換された光)の強度をモニタしながら、光学フィルタ29を基板21に対して平行に(つまり、X軸方向及びY軸方向に)移動させ、第1LED23を覆う面積と、第2LED24を覆う面積の微調整を行うことにより、第1波長(例えば、405nm)の出射強度と第2波長(例えば、385nm)の出射強度を調整している。なお、本実施形態においては、蛍光のピーク強度に対する、第1波長(例えば、405nm)の光のピーク強度の比率が所定値(例えば、20~100%)となるように調整している。
このように、本実施形態においては、必要以上に強度の高い励起光が光源装置1から出射されないように光学フィルタ29を設け、第1LED22、23及び第2LED24に対する光学フィルタ29の相対的な位置を調整している。
なお、光学フィルタ29を透過した蛍光、光学フィルタ29を透過しない励起光、および第3LED26からの出射光は、ケース10の前面に取付けられた光導光部40のミキシングロッド41の入射端面に入射し、光ファイババンドル42によって導光され、光導光部40(光ファイババンドル42)の出射端面から出射される。
【0031】
図5は、光導光部40の出射端面から出射される出射光の強度分布(スペクトル)を示す図である。
図5の実線は、光学フィルタ29を有する本実施形態の光源装置1の発光スペクトルであり(
図5:「フィルタあり」)、
図5の破線は、光学フィルタ29を有さない比較例の光源装置の発光スペクトルである(
図5:「フィルタなし」)。
図5に示すように、比較例(
図5:「フィルタなし」)においては、出射光に、非常に高い光量の第1波長(例えば、405nm)のスパイク状の光が含まれるが、本実施形態の光源装置1(
図5:「フィルタあり」)においては、第1波長(例えば、405nm)のスパイク状の光が抑えられ、蛍光のピーク強度(約0.3)に対する、第1波長(例えば、405nm)の光のピーク強度(約0.2)の比率が約67%になっているのが分かる。
また。本実施形態の光源装置1の発光スペクトルは、波長340~800nmの範囲で連続している(つまり、近紫外~赤外域までの広い帯域をカバーしている)ことが分かる。
なお、
図5の約340nm付近のスパイク状の光は、第3LED26からの出射光であるが、第3LED26からの出射光は、蛍光体層28及び光学フィルタ29を介さず、直接光導光部40に入射して出射されるものであるため、第3LED26に供給する駆動電流を変更することにより、その出射強度ピークを自由に変更することができる。
【0032】
以上が本実施形態の説明であるが、本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。
【0033】
例えば、本実施形態の光源装置1は、生化学分析装置に用いられる装置であるとしたが、必ずしもこのような用途に限定されるものではなく、広い波長域の光を必要とする他の用途に適用することもできる。
【0034】
また、本実施形態の光学フィルタ29は、波長440nm以上の光(つまり、蛍光体層28から発せられる蛍光)を透過し、波長440nm未満の光(つまり、蛍光体層28を透過する励起光)をカットする光吸収型フィルタであるとしたが、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、同等の分光特性を持った多層膜干渉フィルタを適用することもできる。
また、光学フィルタ29のカットオフ波長は、必ずしも440nmに限定されるものではなく、励起光と蛍光との関係から適宜選択される。
【0035】
また、本実施形態において、第1LED22、23の出射光はピーク波長:405nm(第1波長)、第2LED24の出射光はピーク波長:385nm(第2波長)、第3LED26の出射光はピーク波長:340nm(第3波長)としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、第1LED22、23の出射光はピーク波長:400~420nmの光、第2LED24の出射光は370~390nmの光、第3LED26の出射光はピーク波長:330~350nmの光とすることができる。
【0036】
また、本実施形態において、蛍光体層28から発せられる5種類の蛍光のピーク波長は、466.2nm、504.00nm、541.52nm、593.21nm、674.20nmとしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、それぞれ、440~480nm、480~525nm、525~555nm、580~610nm、660~690nmの範囲で変更することができる。
【0037】
また、本実施形態の蛍光体層28においては、5種類の蛍光体を使用したが、所望の分光特性(発光スペクトル)が得られればよく、蛍光体を適宜選択、組み合わせることにより、4種類、または6種類以上の蛍光体で構成することもできる。
【0038】
また、本実施形態においては、第1LED22、23及び第2LED24からの出射光(つまり、2種類の波長の光)を励起光として、蛍光体層28から蛍光を得る構成としたが、所望の分光特性(発光スペクトル)が得られればよく、励起光として、1種類、また3種類以上の波長の光を用いてもよい(つまり、1種類、または3種類以上の励起光を発する1個、または複数個のLEDを備えてもよい)。
【0039】
また、本実施形態においては、1枚の光学フィルタ29を使用し、光学フィルタ29が第1LED22の全部、第1LED23の一部、第2LED24の一部を覆うように配置されているとしたが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。例えば、複数枚の光学フィルタ29を使用し、各光学フィルタ29を第1LED22、第1LED23、および第2LED24のそれぞれに対応するように配置してもよい。なお、この場合、各光学フィルタ29が、それぞれ、第1LED22、第1LED23、および第2LED24の全部または一部を覆うように配置される。
【0040】
(光源ユニット20の変形例)
図6は、本実施形態の光源ユニット20の変形例に係る光源ユニット20Aを示す図である。
図6に示すように、本変形例に係る光源ユニット20Aは、第1LED22、23と平行に並ぶ、2つの第2LED24、25を有する点、光学フィルタ29が矩形状であり、第1LED22の一部、第1LED23の全部、第2LED24の一部、第2LED25の全部を覆うように配置されている点で、本実施形態の光源ユニット20と異なる。
【0041】
本実施形態の光源ユニット20と同様、光源ユニット20Aの光学フィルタ29も、固定する前に、第1LED22、23及び第2LED24、25に対する光学フィルタ29の相対的な位置が調整される。具体的には、光学フィルタ29を透過しない励起光(つまり、第1LED22及び第2LED24からの出射光のうち、蛍光体層28によって蛍光に変換されなかった光であって、光学フィルタ29を通らない光)の強度と、光学フィルタ29を透過する蛍光(蛍光体層28によって蛍光に変換された光)の強度をモニタしながら、光学フィルタ29をY軸方向に移動させ、第1LED22を覆う面積と、第2LED24を覆う面積の微調整を行うことにより、第1波長(例えば、405nm)の出射強度と第2波長(例えば、385nm)の出射強度を調整している。
このように本変形例の光源ユニット20Aにおいては、光学フィルタ29をY軸方向のみに移動させることで、第1波長(例えば、405nm)の出射強度と第2波長(例えば、385nm)の出射強度を調整できるため、本実施形態の光源ユニット20と比較して調整が容易となる。
【0042】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1 :光源装置
10 :ケース
11 :排気口
12 :排気口
20 :光源ユニット
20A :光源ユニット
21 :基板
22 :第1LED
23 :第1LED
24 :第2LED
25 :第2LED
26 :第3LED
27 :ダム材
28 :蛍光体層
29 :光学フィルタ
30 :ヒートシンク
32 :放熱フィン
40 :光導光部
41 :ミキシングロッド
42 :光ファイババンドル