(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075532
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】バルブ付き合成樹脂注出具
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20240528BHJP
F16K 15/16 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B65D47/20 111
F16K15/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186978
(22)【出願日】2022-11-23
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米本 道博
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍太
(72)【発明者】
【氏名】村元 勝広
【テーマコード(参考)】
3E084
3H058
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA25
3E084AB01
3E084BA03
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FA02
3E084FB01
3E084GA01
3E084GA06
3E084GB01
3E084GB06
3E084HB02
3E084HD04
3E084KB02
3E084LB02
3E084LC02
3E084LD13
3H058AA13
3H058BB03
3H058BB22
3H058CA02
3H058CA03
3H058CA22
3H058CA23
3H058CC06
3H058EE19
(57)【要約】
【課題】コストを抑制しつつキャップ内においてバルブを安定保持してシール性を向上させることが可能なバルブ付き合成樹脂注出具を提供する。
【解決手段】本体と、吐出口を有するバルブと、を有して容器の口部に装着されるバルブ付き合成樹脂注出具であって、本体は、天面壁と、天面壁から立設された筒体と、筒体の頂部より内方へ延在するフランジ面と、フランジ面の内周側から垂下した係止壁部と、筒体の下方において径方向の内側に突出してバルブの底面縁部を保持可能な係止部と、を有する注出筒と、を含み、バルブは、パンチにより打ち抜かれた打ち抜き部と、打ち抜き部とは異なる位置に配されるシール部と、を有し、フランジ面と係止部との間に形成された収容空間に圧入されて注出筒に内包されてなり、筒体の内壁に対してシール部が密着することでシールポイントが形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、吐出口を有するバルブと、を有して容器の口部に装着されるバルブ付き合成樹脂注出具であって、
前記本体は、
天面壁と、
前記天面壁から立設された筒体と、
前記筒体の頂部より内方へ延在するフランジ面と、
前記フランジ面の内周側から垂下した係止壁部と、
前記筒体の下方において径方向の内側に突出して前記バルブの底面縁部を保持可能な係止部と、を有する注出筒と、を含み、
前記バルブは、
パンチにより打ち抜かれた打ち抜き部と、前記打ち抜き部とは異なる位置に配されるシール部と、を有し、
前記フランジ面と前記係止部との間に形成された収容空間に圧入されて前記注出筒に内包されてなり、
前記筒体の内壁に対して前記シール部が密着することでシールポイントが形成されてなることを特徴とするバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項2】
前記バルブは、前記収容空間に収容可能な環状の基部と、前記吐出口が形成された頂板部と、前記基部の内周側と前記頂板部とを連接させる薄肉可撓部と、を有し、
前記基部の側面に、前記打ち抜き部と、前記打ち抜き部の上方に位置する前記シール部とが設けられてなる、
請求項1に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項3】
前記径方向における前記シール部の外径は、前記打ち抜き部の外径よりも大きい、
請求項2に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項4】
前記係止壁部の底面は、前記バルブが前記収容空間に圧入されているときに、前記バルブの上面に対し、無加圧状態で接触されてなるか又は所定の間隙を有するように配置されてなる、
請求項3に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項5】
前記係止部は、前記筒体の内側面に設けられてヒンジ連結部を基点として回転可能なフラップ部の側面から突出する係止突起部であり、
前記注出筒の内壁には、前記フラップ部が収容可能なフラップ収容空間が設けられている、
請求項1~4のいずれか一項に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項6】
前記バルブの上面と前記フラップ部とが接触しながら前記ヒンジ連結部を基点に前記フラップ部が回転することで、前記バルブが前記収容空間に収容されると共に前記フラップ部が前記フラップ収容空間へ収容される、
請求項5に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項7】
前記係止部は、前記筒体の内面から径方向内側に突出する係止突起部であり、
前記注出筒の上面には、前記収容空間とそれぞれ連通するように、周方向に沿って断続的に複数の開口が形成され、
前記複数の開口の少なくとも1つに合致する軸方向位置には前記係止突起部が配置されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば容器の口部に取り付け可能なバルブ付き合成樹脂注出具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば調味料や洗剤など液状の内容物を保存する容器およびスリットバルブ付きキャップが知られている。かようなスリットバルブは、ゴムなどの比較的軟質な樹脂材に吐出口としてのスリットが設けられている。一方で容器については、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂など、上記したスリットバルブに比して硬質の樹脂材などが適用されている。
【0003】
上記したスリットバルブ付きキャップは、キャップとバルブとが別部材で構成されていることからバルブをキャップ内に組み込んで製造されている。
例えば特許文献1においては、キャップ本体7に対して環状側壁拘束体18を介してバルブ(自己閉鎖式排出ノズル)が嵌合された、3部品(3ピース)構成のバルブ付きキャップが提案されている。
【0004】
また特許文献2では、この特許文献1に開示された3ピース構成に比して2部品(2ピース)で構成されたバルブ付きキャップが開示されている。より具体的に当該特許文献2では、スリットバルブは、外側表面を球面の凹部とし、中央に端部を補強リブで囲んだスリットを刻設し、フラップを形成させたオリフィス形成壁を備え、キャップは、スリットバルブを取着し容器口筒部に螺着されたキャップ基体と、該キャップ基体に被嵌される被せ蓋とからなり、被せ蓋は、その下面にオリフィス形成壁の周縁に係合する押圧面と突出部とを備え、被せ蓋の閉蓋時にオリフィス形成壁に係合し、オリフィス形成壁表面の湾曲度を大きくして、スリットを開くように構成されたバルブ付きキャップが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2515730号公報
【特許文献2】特開平11-011502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献に提案された構造を含む従来技術においては、未だに市場のニーズを満たしてはおらず下記に述べる課題が存在する。
すなわちまず特許文献1に例示される3ピースタイプのバルブ付きキャップでは、そもそもバルブ止めのために追加の部品を要することから、キャップを構成する部品点数が多い分だけコスト増となってしまう。また、部品点数が多いことから、それぞれの寸法公差をより厳密に管理する必要があり、2ピースタイプのバルブ付きキャップに比して複雑となりやすい等の課題もある。
【0007】
他方で、特許文献2に例示される2ピースタイプのバルブ付きキャップとすれば、3ピースタイプに比して部品点数が削減できる点で有効ではあるものの、この特許文献2で示されたバルブ保持構造ではキャップ内でのバルブ保持の安定性に欠けてシール性に問題を生じる恐れがある。この点、特に例えば容器の種類によっては当該容器を押圧(スクイズ)して内容物を吐出する形態もあり、かような場合には吐出圧の影響でバルブがキャップ内でズレてしまうことは避けねばならない。
【0008】
このように上記特許文献を含む従来技術では未だに改善の余地はあり、本発明が有する目的の一例としては、スリット等の吐出口が形成されたバルブを保持するバルブ付き合成樹脂注出具において、コストを抑制しつつキャップ内においてバルブを安定保持してシール性を向上させることが可能なバルブ付き合成樹脂注出具を提供することが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一形態におけるバルブ付き合成樹脂注出具は、(1)本体と、吐出口を有するバルブと、を有して容器の口部に装着されるバルブ付き合成樹脂注出具であって、前記本体は、天面壁と、前記天面壁から立設された筒体と、前記筒体の頂部より内方へ延在するフランジ面と、前記フランジ面の内周側から垂下した係止壁部と、前記筒体の下方において径方向の内側に突出して前記バルブの底面縁部を保持可能な係止部と、を有する注出筒と、を含み、前記バルブは、パンチにより打ち抜かれた打ち抜き部と、前記打ち抜き部とは異なる位置に配されるシール部と、を有し、前記フランジ面と前記係止部との間に形成された収容空間に圧入されて前記注出筒に内包されてなり、前記筒体の内壁に対して前記シール部が密着することでシールポイントが形成されてなることを特徴とする。
【0010】
なお上記した(1)に記載のバルブ付き合成樹脂注出具においては、(2)前記バルブは、前記収容空間に収容可能な環状の基部と、前記吐出口が形成された頂板部と、前記基部の内周側と前記頂板部とを連接させる薄肉可撓部と、を有し、前記基部の側面に、前記打ち抜き部と、前記打ち抜き部の上方に位置する前記シール部とが設けられてなることが好ましい。
【0011】
また上記した(2)に記載のバルブ付き合成樹脂注出具においては、(3)前記径方向における前記シール部の外径は、前記打ち抜き部の外径よりも大きいことが好ましい。
【0012】
さらに上記した(3)に記載のバルブ付き合成樹脂注出具においては、(4)前記係止壁部の底面は、前記バルブが前記収容空間に圧入されているときに、前記バルブの上面に対し、無加圧状態で接触されてなるか又は所定の間隙を有するように配置されてなることが好ましい。
【0013】
また上記した(1)~(4)のいずれかに記載のバルブ付き合成樹脂注出具においては、(5)前記係止部は、前記筒体の内側面に設けられてヒンジ連結部を基点として回転可能なフラップ部の側面から突出する係止突起部であり、前記注出筒の内壁には、前記フラップ部が収容可能なフラップ収容空間が設けられていることが好ましい。
【0014】
そして上記した(5)に記載のバルブ付き合成樹脂注出具においては、(6)前記バルブの上面と前記フラップ部とが接触しながら前記ヒンジ連結部を基点に前記フラップ部が回転することで、前記バルブが前記収容空間に収容されると共に前記フラップ部が前記フラップ収容空間へ収容されることが好ましい。
【0015】
また上記した(1)~(4)のいずれかに記載のバルブ付き合成樹脂注出具は、(7)前記係止部は、前記筒体の内面から径方向内側に突出する係止突起部であり、前記注出筒の上面には、前記収容空間とそれぞれ連通するように、周方向に沿って断続的に複数の開口が形成され、前記複数の開口の少なくとも1つに合致する軸方向位置には前記係止突起部が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバルブ付き合成樹脂注出具によれば、本体とバルブとの2ピースで構成することから相対的にコストを抑制できつつ、筒体の係止壁部と係止部との間において打ち抜き部と異なる位置に配されるシール部によりシールポイントが形成されることで、シール性を確保しつつバルブを収容空間内で安定して保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態におけるバルブ付き合成樹脂注出具の外観斜視図である。
【
図2】実施形態におけるバルブ付き合成樹脂注出具の底面図である。
【
図3】実施形態のバルブ付き合成樹脂注出具における上蓋の開栓状態と閉栓状態の遷移を示す模式図である。
【
図4】実施形態におけるバルブの外観斜視図である。
【
図5】実施形態におけるバルブの上面図、側面図及び断面図である。
【
図6】実施形態におけるバルブの製造工程の一部を説明する模式図である。
【
図7】バルブ付き合成樹脂注出具の組み立て手法を説明するための模式図である。
【
図9】変形例1に係る本体を備えたバルブ付き合成樹脂注出具の模式図(その1)である。
【
図10】変形例1に係る本体を備えたバルブ付き合成樹脂注出具の模式図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適に実施するための実施形態について説明する。
なお本実施形態においては、説明の便宜上、図を用いた説明においてX、Y及びZ方向を適宜設定したが、説明の便宜上であって本発明を何ら過度に限定するものではない。また、以下で詳述する構成以外については、上記した特許文献を含む公知の容器やスリットバルブ等の構造を適宜援用することができる。
【0019】
≪バルブ付き合成樹脂注出具300≫
図1~8を参照しつつ、本実施形態に係るバルブ付き合成樹脂注出具300の構造について詳細に説明する。
図1~
図3などに示すとおり、本実施形態のバルブ付き合成樹脂注出具300は、本体100と、吐出口220d(
図2など参照)を有するバルブ200と、を有して容器(不図示)の口部に装着可能に構成されている。なお上記した容器の口部へのバルブ付き合成樹脂注出具300の取付態様としては、例えば後述するネジを用いた螺合の他に、例えば打栓式嵌合など他の公知の取付手法を適用してもよい。
【0020】
ここで、本実施形態に好適な容器としては、液状の内容物を保存可能であれば特に制限はなく、例えばPETボトルなどの比較的硬質の容器やパウチなどの軟質で可撓性の容器など公知の種々の容器形態が例示できる。また、容器の材質としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などのポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂などのオレフィン樹脂あるいは公知のゴム材などが好適であるが、特に制限はなく公知の種々の材質が適用できる。なお容器の材質としては、上記した樹脂材などが積層された構造であってもよい。
【0021】
上記した容器に保存される液状の内容物としては、特に制限はなく、例えば洗剤や調味料、あるいは水やお茶など清涼飲料水など公知の種々の液体が適用できる。また、上記した容器に保存される内容物としては、上記した各種の液体に代えて、例えばゼリーなどゲル状の公知の半固体材料を適用してもよい。
【0022】
<本体100>
次に図面を参照しつつ、上記したバルブ付き合成樹脂注出具300を構成する本体100の構成について詳述する。
本実施形態の本体100は、
図1などから理解されるとおり、天面壁10と、この天面壁10から立設される注出筒20と、この天面壁10の周縁から垂下するスカート壁30と、を含んで構成されている。なお
図1に示すように、バルブ付き合成樹脂注出具300は、上記したスカート壁30から所定の間隙を有して径方向外側に配置されて天面壁10から垂下する外環壁40と、この外環壁40に対してヒンジ接続部53を介して接続される上蓋50をさらに具備していることが好ましい。
【0023】
この本体100の材質としては、例えばPET樹脂などバルブに比して相対的に硬質の樹脂が例示できる。なお、
図6などで例示されるように、天面壁10の底面側には公知のインナーリング11が設けられており、このインナーリング11を介して上記した容器の口部が密封可能となっている。
【0024】
注出筒20は、
図3及び8などに示すように、筒体21、フランジ面22、係止壁部23及び係止部などを含んで構成されている。
筒体21は、上記した天面壁10から鉛直上方(Z方向上方)へ向けて延びるように立ち上がる中空の筒状部である。
図1及び3などに示すように、この筒体21は、天面壁10との接続部である下端から上端(後述するフランジ面22)に向けて外周面21bが漸次縮径するように立設されていることが好ましい。なお、本実施形態における筒体21は、
図1及び3に示すような上方に向けて縮径する形態に限られず、外周面21bが縮径せずに天面壁10から立設する円筒状の外形であってもよい。
【0025】
フランジ面22は、前記した筒体21より内方(筒体21の開口における中心側)へ延在する部位である。より具体的に本実施形態のフランジ面22は、筒体21の上端を基点にして、内方へ延びるよう延在して設けられている。
【0026】
係止壁部23は、例えば
図3及び8などに示されるように、前記したフランジ面22の内周側から下方(Z方向下方)に向けて垂下するように設けられている。これらの図から理解されるとおり、係止壁部23は、フランジ面22を介して筒体21から所定の距離だけ内方に位置して設けられている。なお同図から明らかなとおり、Z方向の上方から見た場合、係止壁部23は、後述するフラップ収容空間FCSに収容された際のフラップ部24の係止突起部25の先端よりも中心側(すなわち頂板部220側)に位置付けられている。
【0027】
係止部は、前記した筒体21の下方において径方向の内側に突出してバルブ200の底面縁部210f1を保持可能に構成されている。なお本実施形態における係止部は、筒体21の内側面に設けられてヒンジ連結部24aを基点として回転可能なフラップ部24の側面から突出する係止突起部25となっている。
【0028】
フラップ部24は、前記した筒体21の内側面21aに設けられてヒンジ連結部24aを基点として回転可能に構成されている。また、
図3及び
図8を合わせて参照すると理解できるように、本実施形態における注出筒20の内壁(具体的には筒体21の内側面21a)には、前記したフラップ部24が収容可能なフラップ収容空間FCSが設けられている。これにより、バルブ200の本体100への組み入れ時に、バルブ200の上面とフラップ部24とが接触しながらヒンジ連結部24aを基点にフラップ部24が回転することで、バルブ200が収容空間CSに収容されると共にフラップ部24がフラップ収容空間FCSへ収容される。
【0029】
また、例えば
図2、3及び8などに示すように、フラップ部24の外表面24b(フラップ収容空間FCSに収容される内面とは反対側の面)には、当該外表面24bから突出してバルブ200の基部210における底面縁部210f1を支持可能な係止突起部25が設けられている。
【0030】
係止突起部25は、例えば
図3、
図7及び
図8などに示されるように、フラップ部24がフラップ収容空間FCSへ収容されたときに、前記した筒体21の内側面21aから径方向内側に向けて突出するように設けられており、後述するとおり、少なくとも係止突起部25の上面25aを介して前記したバルブ200を保持可能なように構成されている。
【0031】
図2及び
図8などに示すように、本実施形態のフラップ部24およびヒンジ連結部24aは、前記した注出筒20の内壁(筒体21の内側面21a)上で周方向に沿って断続的に複数形成されている。このように上記したフラップ部24(さらには係止突起部25)は、筒体21の内側面21aにおいて、周方向(θz方向)に断続して複数形成されていることが好ましい。なお、本実施形態ではフラップ部24及び係止突起部25が周方向に沿って8つ設けられているが、この態様に限られず例えば8つ以外の少なくとも2つのフラップ部24及び係止突起部25としてもよい。
【0032】
また本実施形態では
図2に示すように、本体100の底面側から見た場合に、周方向に関してフラップ部24(及び係止突起部25)が互いに等間隔となるように設けられている。また、
図2から理解されるとおり、本実施形態においては、複数のフラップ部24は、それぞれが頂板部220の吐出口220dを基点として対称となるように(すなわち、あるのフラップ部24に対して吐出口220dを基点とした反対側には他のフラップ部24が配置される関係)周方向に配置されていてもよい。なお本実施形態は、周方向において少なくとも一部の区間で非等間隔で複数のフラップ部24が設けられていてもよい。
【0033】
図8に示すように本実施形態では、筒体21の内側面21a、フランジ面22の底面、係止壁部23の底面23bm、及びフラップ部24の係止突起部25の上面25aとの間において、バルブ200を収容可能な収容空間CSが形成されている。そして本実施形態のバルブ200は、例えば圧入治具を介して、筒体21の係止壁部23とフランジ面22とフラップ部24との間に形成された収容空間CSに圧入されて注出筒20に内包される。
【0034】
外環壁40は、例えば
図1に示すように、上記した天面壁10の周縁から垂下するとともに、スカート壁30は二重壁を構成するようにこの外環壁40の内側に配置されている。また、天面壁10の上面周縁にはフック部12fを備えた環状突出部12が設けられている。これにより、上蓋50における周壁52の内側に設けられたアンダーカット52aと係合して注出筒20を閉塞することが可能となっている。
【0035】
上蓋50は、例えば
図1に示すように、頂壁51からそれぞれ垂下する環状壁54と筒部55を備えて構成されている。従って上蓋50のアンダーカット52aがフック部12fと係合したときに、環状壁54の内周面が筒体21の外周面21bと密着する。筒部55の先端は頂板部220に接触ないし近接している。なお
図1及び
図3などに示すように、上蓋50には、当該上蓋50の開状態を維持することが可能な公知のブリッジ部56及び切り欠き58a、58bを備えていてもよい。また、同図に示すように、上蓋50のヒンジ接続部53とは反対側に、使用者が指などを引っ掛けることが容易となるように径方向外側に突出する突出部57が設けられていてもよい。
【0036】
<バルブ200>
次に主に
図4~
図6などを参照しつつ、上記したバルブ付き合成樹脂注出具300を構成するバルブ200の構成について詳述する。
本実施形態のバルブ200は、例えば
図4及び
図5から理解されるとおり、基部210と、頂板部220と、薄肉可撓部230と、を含んで構成されている。本実施形態のバルブ200は、パンチにより打ち抜かれた打ち抜き部PPNと、この打ち抜き部PPNとは異なる位置に配されるシール部SPNとを有している。バルブ200の材質としては、例えば天然又は合成のゴム材やシリコン、ポリエチレンなどの軟質なオレフィン樹脂などが例示できる。
【0037】
基部210は、
図5などからも理解されるとおり、上記した本体100における収容空間CSに収容可能な大きさの外形を有する環状の部位である。なお本実施形態においては、基部210の側面210eに、前記した打ち抜き部PPNと、この打ち抜き部PPNの上方に位置するシール部SPNとが設けられている。打ち抜き部PPNとシール部SPNが同一の位置に設けられていないことで、バルブ200の打ち抜きによるバリや切断痕によって生じる凹凸痕に影響することなくシール機能を果たすことができる。
【0038】
また、
図5(b)に示すように、本実施形態のバルブ200においては、径方向におけるシール部SPNの外径Rsは、打ち抜き部PPNの外径Rp以下となるように設定されている。なお本実施形態では、シール部SPNの外径Rsが打ち抜き部PPNの外径Rp以下となっているが、この形態に限られず、フラップ部24及び係止突起部25が成す内径によっては、シール部SPNの外径Rsが打ち抜き部PPNの外径Rpよりも大きくなるように設定されていてもよい。
【0039】
なおバルブ200を本体100の収容空間CSに圧入したときには、
図8に示すとおり筒体21の内壁に対してシール部SPNが密着することでシールポイントSPが形成される。このとき、注出筒20における係止壁部23の底面23bmは、バルブ200が収容空間CSに圧入されているときは、バルブ200がキャップ本体から脱落しない観点から常に軸方向に応力がかかることを防ぐため、バルブ200の上面210aに対し、無加圧状態で接触されてなるか又は所定の間隙を有するように配置されていることが好ましい。
【0040】
頂板部220は、上記した環状の基部210の内側(環の内側)に配置される円盤状の部位である。
図2に示すように、この頂板部220の中央部には、容器に保存された内容物を吐出可能な吐出口220dが設けられている。かような吐出口D220dしては、例えば十字状のスリットや微細孔など、液状の内容物を吐出可能な公知の吐出口の構造を適用してもよい。
【0041】
薄肉可撓部230は、
図5などから理解されるとおり、前記した基部210の内周側と前記した頂板部220とを連接させる部位である。同図から明らかなとおり、薄肉可撓部230は、基部210の内周に沿って環状となるように、基部210と頂板部220との間に介在し、断面形状としては基部の上面210aより内方へ延出したのち、頂板部220の外周縁部上面に接続するよう垂下する形状となっている。頂板部220は、この薄肉可撓部230によって支持されることで、鉛直方向への移動を許容されつつ吐出口220dを介して液状の内容物を吐出することが可能となっている。
【0042】
<バルブ200における打ち抜き部PPNとシール部SPNの関係>
次に本実施形態のバルブ200における基部210の構造について、当該バルブ200を効率的に生産する製法上の観点から説明する。
図6に示すように、本実施形態のバルブ200は、公知の射出成形法などによって合成樹脂のベース材シートBMSに複数設けられる。図示されるとおり、ベース材シートBMSには合計9つのプレバルブ体201が形成されている。各々のプレバルブ体201は、上記した打ち抜き部PPNを介してベース材シートBMSと連続している。
【0043】
打ち抜き工程では、パンチ410とダイ420を備えた公知の打ち抜き型400によって打ち抜かれることで、個々のバルブ200が製造される。より具体的には
図6に示すように、プレバルブ体201の基部210が挿入可能な開口を有する公知のダイ420に当該プレバルブ体201をセットした後に、公知のパンチ410によってバルブ200だけ打ち抜くことで、上記した打ち抜き部PPNを境にしてバルブ200がベース材シートBMSから分離される。これにより
図6に示すように、バルブ200における基部210の側面201eには、上記した打ち抜き部PPNが形成されると共に、この打ち抜き部PPNとは異なる位置(本例では打ち抜き部PPNの上方(鉛直方向に関して上側)となる位置)にシール部SPNが配される。
【0044】
<本体100へのバルブ200の取付方法>
次に
図7も参照しつつ、本実施形態におけるバルブ付き合成樹脂注出具300の製造方法の一例、すなわち圧入治具を用いた本体100へのバルブ200の組入手法について説明する。同図から理解されるとおり、本体100の収容空間CSへのバルブ200の圧入に際しては、バルブ200の底面を押し上げ可能な公知の圧入治具(不図示)を用いてもよい。
【0045】
このとき、
図7に示されるバルブの圧入前状態においては、フラップ部24はヒンジ連結部24aを基点にフラップ収容空間FCSから離脱した状態となっている。そしてバルブ200をフラップ収容空間FCSに向けて上記した圧入治具等で押し上げると、基部210の外側上部210dとフラップ部24が接触する。
【0046】
次いでバルブ200をフラップ収容空間FCSに向けて更に押し上げると、ヒンジ連結部24aを基点にフラップ部24が旋回しながら係止突起部25も基部210に接触し、最終的にはフラップ部24がフラップ収容空間FCSへ収容されるとともにバルブ200が前記収容空間CSに収容されて圧入完了状態となる。
【0047】
なお
図8も合わせて参照すると理解されるとおり、本実施形態における基部210の外側上部210dは、上方(頂部210c側)に向けて径方向内側へ漸次縮径するテーパー状の傾斜面となっていることが好ましい。これにより、収容空間CSに向けて押し上げるようにバルブ200を圧入する際にフラップ部24を適正な方向へヒンジ連結部24aを介して旋回させることが可能となっている。
【0048】
<収容空間CS内におけるバルブ200の支持態様>
次に
図7及び
図8も参照しつつ、収容空間CS内におけるバルブ200の支持態様について説明する。
上述したとおり、例えば調味料や洗剤などを保存する容器や注出具がスパウトであるケースでは、当該容器をスクイズして内容物を注出することが求められる場合があり、かような場合にはスクイズした際における加圧の影響で本体100内の収容空間CSからバルブ200がズレてしまうことは避けねばならない。
【0049】
そこで本実施形態では、注出筒20内における少なくとも筒体21のフランジ面22、係止壁部23、フラップ部24及び係止部との間に形成された収容空間CSにバルブ200が内包される構成が採用されている。
なお本実施形態における「収容空間CSにバルブ200が内包される」とは、バルブ200の底面が上記した係止部に支持された状態で収容空間CSにバルブ200が圧入される形態を言う。このとき
図8に示すように、筒体21の内壁に対してバルブ200のシール部SPNが密着することで、容器内の密封状態を維持可能なシールポイントSPが形成されることになる。さらには、打ち抜き部PPNとは異なる位置でシールポイントが形成されることから、打ち抜きによって打ち抜き部PPNに生じたバリや打ち抜きによる凹凸痕に影響することなく、バルブと筒体との密着性を向上させることが可能となる。従って、容器内の内容物は、上記したシールポイントSPで封止状態が維持されて漏洩することが抑制される。これにより本実施形態では、本体100内におけるバルブ200の安定保持性を大きく向上させることが可能となっている。
【0050】
また、
図8(b)から理解されるとおり、本実施形態におけるバルブ200は、少なくとも前記した基部210の底面縁部210f1が、筒体21のうち係止突起部25の上面25aと接触されていることが好ましい。これによりバルブ200が意図せず鉛直下方(-Z方向)に脱落してしまうことを抑制できる。なお本実施形態では基部210の底面のうちの少なくとも一部(底面縁部210f1)を係止突起部25が下支えする形態を示しているが、基部210の底面すべて(本例では底面縁部210f1と底面210f2)を係止突起部25が下支えして支持する形態であってもよい。
【0051】
また、同図から理解されるとおり、本実施形態におけるバルブ200は、前記した基部210の側面210eの少なくとも一部(例えば打ち抜き部PPN)が、前記した筒体21のうちフラップ部24と接触されていてもよい。これにより係止壁部23と協働してバルブ200が意図せず水平方向(XY平面方向)にズレてしまうことを抑制できる。
【0052】
また、同図から理解されるとおり、バルブ200が収容空間CSに収容されたときに、基部210の頂部210cが、前記した筒体21におけるフランジ面22の底面に対して所定の間隙を有していてもよい。なお本実施形態では頂部210cとフランジ面22の底面とが所定の間隙を有する形態となっているが、これらが密着している形態であってもよい。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、下記に例示するように各種の変更例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0054】
<変形例1>
次に
図9及び
図10を参照しつつ上記した実施形態に適用可能な変形例1に係る本体110について説明する。上記した実施形態の本体100では、筒体21の内面にはフラップ部24が形成されると共に、係止部はこのフラップ部24の側面から突出する係止突起部25であった。これに対して変形例1に係る本体110では、これらの図に示すように、筒体21の内面に上記したフラップ部24が形成されておらず、係止部は筒体21の内面から径方向内側に突出する係止突起部25である点に主とした特徴がある。
【0055】
このように変形例1における係止突起部25は、フラップ部24に設けられて旋回移動するものではなく、筒体21の内面に固定して配されている。また、上述のとおりバルブ200は射出成形によって製造されることが好ましいため、変形例1に係る注出筒20の上面には、収容空間CSとそれぞれ連通するように周方向に沿って断続的に複数の開口26が形成されている。このとき
図9及び
図10から理解されるとおり、前記した複数の開口26の少なくとも1つに合致する軸方向位置(Z方向において重なる位置)には、筒体21の内面から径方向内側に突出する係止突起部25が配置されている。
【0056】
以上説明した変形例1に係る注出筒20を備えた本体110によっても、上記した収容空間CS内にバルブ200を保持することが可能であり、筒体の係止壁部と係止突起部との間にバルブが内包されることからキャップ内でシール性を確保しつつバルブを安定して保持できる。
【0057】
<その他>
例えば本体100におけるスカート壁30の内側に形成されるネジ部31は省略して公知のアンダーカットを付与することで本体100が容器の口部に打栓される形態であってもよい。
【0058】
また、上記したバルブ付き合成樹脂注出具300としては、上記した容器に螺合や打栓などで装着可能なキャップに限られず、例えば公知のパウチに装着可能なスパウト(飲み口)の形態であってもよい。
【0059】
以上説明した本実施形態及び変形例によれば、本体とバルブの2ピースで注出具を構成することから従来の3ピース構造に比して材料面でもコストを抑制することが可能となっている。これに加え、本実施形態によれば、筒体の内部に形成された収容空間内で打ち抜き部とは異なるシール部でシールポイントを形成してバルブを収容空間で内包することから、従来構造に比してシール性を高めつつバルブを格段に安定して保持することが可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、低コストでありつつバルブの高い安定保持性を両立させたバルブ付き合成樹脂注出具を実現するのに好適である。
【符号の説明】
【0061】
100、110 本体
10 天面壁
20 注出筒
30 スカート壁
40 外環壁
50 上蓋
200 バルブ
210 基部
220 頂板部
230 薄肉可撓部
PPN 打ち抜き部
SPN シール部
300 バルブ付き合成樹脂注出具