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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075535
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】給与管理装置及び給与管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/105 20230101AFI20240528BHJP
   G06Q 10/06 20230101ALI20240528BHJP
【FI】
G06Q10/10 320
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186983
(22)【出願日】2022-11-23
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】507074915
【氏名又は名称】株式会社プライムコンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100186831
【弁理士】
【氏名又は名称】梅澤 崇
(72)【発明者】
【氏名】菊谷寛之
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA08
5L049AA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多様な職務の定量的な評価と賃金表の設定及び賃金管理を合理的、かつ、簡便に行い、また、等級異動に伴う賃金管理の煩雑さや人件費負担の増大、人材活用や適切な組織編成に支障をきたす賃金変動を回避する給与管理装置及び給与管理プログラムを提供する。
【解決手段】給与管理装置は、評価対象者毎の賃金の号俸と当該号俸の属する実賃金ランクを記憶する記憶部110と、評価項目毎に配点を設け、評価項目毎の点数を入力する点数評価部120と、前記評価項目毎の点数に基づいて多段階に分かれた基準ランクを判定する判定部130と、前記基準ランクに対して調整評価を入力し、入力した調整評価を前記基準ランクに加算した評価レートを求める調整評価部140と、実賃金ランクから、対応する号俸改定数を求める算出部150と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象者ごとの賃金の号俸と当該号俸の属する実賃金ランクを記憶する記憶部と、
評価項目ごとに配点を設け、当該評価項目ごとの点数を入力する点数評価部と、
前記点数に基づいて多段階に分かれた基準ランクを判定する判定部と、
前記基準ランクに対して調整評価を入力し、入力した調整評価を前記基準ランクに加算した評価レートを求める調整評価部と、
前記評価レートと前記実賃金ランクから、対応する号俸改定数を求める算出部を備えた、
給与管理装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記評価対象者の現在の賃金の号俸に、前記号俸改定数を加えることにより、当該評価対象者の新たな賃金の号俸を求め、号俸に対応付けた賃金表を参照して賃金を特定する、請求項1に記載の給与管理装置。
【請求項3】
前記記憶部は、複数の評価レートと複数の実賃金ランクに対応付けた号俸改定数のテーブルを保持しており、
前記算出部は、前記調整評価の加算後の評価レートと前記評価対象者の実賃金ランクから、前記テーブルを参照することにより、対応する号俸改定数を求める、
請求項1又は請求項2に記載の給与管理装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記号俸改定数について、
前記評価レートが前記実賃金ランクを上回る場合に昇給とし、前記評価レートが前記実賃金ランクを下回る場合に降給とし、
前記評価レートが前記実賃金ランクと一致する場合には号俸1つ分昇給として、さらに昇給後に前記賃金ランク内の上限号数に達していた場合には昇給停止とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の給与管理装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記基準ランクを異動する場合に、新たな号俸について前記算出部によって算出された前記号俸改定数を用い、前記基準ランクの降格の場合には新たな評価レートを1つ減少し、前記基準ランクの昇格の場合には新たな評価レートを1つ増加する、請求項1~請求項4のいずれかに記載の給与管理装置。
【請求項6】
前記算出部によって算出される賃金について、翌年以降について前記調整評価を0としたときの毎年の賃金を求めて、求めた毎年の賃金による賃金カーブを描き、前記賃金カーブと合わせて、都道府県別のモデル賃金に基づく賃金カーブを描いて、ともに表示する表示部を備える請求項1~請求項5のいずれかに記載の給与管理装置。
【請求項7】
評価対象者ごとの賃金の号俸と当該号俸の属する賃金ランクを記憶する記憶部を備える給与管理装置に、
評価項目ごとに配点を設け、当該評価項目ごとの点数を入力する点数評価ステップと、
前記点数に基づいて多段階に分かれた基準ランクを判定する判定ステップと、
前記基準ランクに対して調整評価を入力し、入力した調整評価を前記基準ランクに加算した評価レートを求める調整評価ステップと、
前記評価レートと前記実賃金ランクから、対応する号俸改定数を求める算出ステップを備えた、
ステップを実行させる、給与管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
給与管理装置及び給与管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、企業において、他の企業や個人と契約した業務に関する経費を、契約先ごとに配分する経費配分システムが開示されている。ここで、従業員区分ごとの賃金表(以下「等級別賃金表」)を設定し、人事評価(SABCD)に応じて、所定の号数をプラス・マイナスして賃金を改定することを自動計算で行えるようにした装置があった。
【0003】
(1) ジョブ型の雇用人事制度では、原則として、雇用主はあらかじめ従業員の担当職務内容や必要な知識・スキル等を「職務記述書」に記述し、これに基づいて組織上の責任や権限、賃金待遇等について個別労働契約を交わしたうえで労働者を雇用する。雇用後も、その職務内容に基づいて定期的に業績や行動等の勤務評定を行い、次年度以降の職務内容や賃金待遇等の雇用条件の見直し・確認を行う。このようにジョブ型の人事制度を運用するには、労働者個々のジョブ(以下、「職務」と表記することもある)を等級・グレードに分類する「職務評価」の手続きが不可欠であり、序列法・分類法・尺度法などの様々な手法が考案されてきた。
【0004】
1)序列法・・・個々のジョブの内容を相互に比較してその複雑さや責任の程度を判別・序列化し、その序列に従って直感的にジョブグレードを分類する方法。
2)分類法・・・対象となるジョブの複雑さや責任の程度をジョブグレードの定義文を参照しながら分類・格付けする方法。
3)得点要素法・・・複数の職務評価要素の評定尺度を用いて対象となるジョブの複雑さや責任の程度を定量的に数値化し、その総点数(本システムでは「職務ポイント」。「ジョブサイズ」などともいう)に基づいてジョブグレードを判別する方法。
以上のように、職務評価の簡易化と定量評価に基づく自動化がされてきた。
【0005】
(2) 次に、ジョブグレードに対応する賃金決定と昇給等の取り扱いについて説明する。従来型の属人的な賃金決定は、新卒採用または中途採用者の初任給(学歴別の新卒初任給または既存従業員の賃金との見合いで中途採用初任給をその都度決定)を起点に、毎年の定期昇給や昇格・昇進時の賃金改定を積み重ね、いわば年功的に個々の労働者の賃金が決められてきた。これに対してジョブ型の雇用・人事管理のもとでは、担当するジョブの内容に対して賃金を決める「職務給」が主流である。すなわち、担当するジョブの職務評価によってジョブグレードを格付け、そのグレードの賃金世間相場に照らして支給すべき、また個々の労働者の採用・定着に必要な賃金をダイレクトに決める。
【0006】
採用後の賃金の見直しは、ジョブグレードが変わらない限り同一グレードの賃金の上限・下限の範囲内(以下、「賃金バンド」と呼ぶ)で、物価上昇率や本人の業績・行動・スキル面の貢献度合いを考慮して必要な昇給を行うのみで、ジョブグレードにふさわしい賃金バンドを逸脱して賃金を昇給させたりすることは基本的にない。上位のジョブに昇進・昇格する場合は新たなジョブグレードに基づく賃金に改定するが、職務内容が変わらないのに年功的にジョブグレードを上げたり、物価上昇に対する賃金調整を行う以外に温情的に昇給させたりすることはしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-060502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(1)序列法や分類法は主観的な評定になりがちであるのに対して、得点要素法はより客観的な分析が可能であり、評定結果の説得力が増す。ただし複雑多岐にわたる様々なジョブを普遍的に評価できる評価項目や尺度を用意したり、職務評価そのものを体系的に実施することが一般の実務家には難しく、従来は外部から高額な専門ノウハウを購入できる大企業しか活用できなかったのが実情である。また、費用が限られている中堅・中小企業は、上記の主観的な序列法や分類法に頼る傾向があった。
(2)ジョブ型雇用の場合、ジョブグレードごとに適切な賃金バンドを設定する必要があるが、日本では非役職者・係長・課長・部長という一般的な区分に対する役職別賃金統計があるだけで、ジョブグレードに対応する賃金統計はそもそも存在しない。そのため、各社ともジョブグレードに対応する賃金決定と昇給等には苦慮している。
(3)このように、ジョブ型雇用に関して、得点要素法によるジョブグレード決定と、ジョブグレードごとの賃金バンド設定の両面において、特に中堅・中小企業にとって実務上の困難さがあり、ジョブ型雇用が広がりつつある現在、その解決が産業界の重要な課題として浮上している。本システムは、このような企業向けに、システムの力とランク型賃金表のノウハウを活用して、ジョブグレード別の賃金決定および昇給・昇格管理が簡易に行える手法を簡便かつ低コストで提供するものである。
【0009】
本発明の一形態は、ユーザーにも普遍的に活用可能な得点要素法による職務評価を簡便かつ低コストで提供することが可能な給与装置及び給与算出プログラムを提供すること、ランク型賃金表のノウハウを活用して、ジョブグレード別の賃金決定および昇給・昇格管理が簡易に行える手法を簡便かつ低コストで提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態は、評価対象者ごとの賃金の号俸と当該号俸の属する実賃金ランクを記憶する記憶部と、評価項目ごとに配点を設け、当該評価項目ごとの点数を入力する点数評価部と、前記点数に基づいて多段階に分かれた基準ランクを判定する判定部と、前記基準ランクに対して調整評価を入力し、入力した調整評価を前記基準ランクに加算した評価レートを求める調整評価部と、前記評価レートと前記実賃金ランクから、対応する号俸改定数を求める算出部を備えた、給与管理装置である。
【0011】
本発明の一形態は、評価対象者ごとの賃金の号俸と当該号俸の属する実賃金ランクを記憶する記憶部を備える給与管理装置に、評価項目ごとに配点を設け、当該評価項目ごとの点数を入力する点数評価ステップと、前記点数に基づいて多段階に分かれた基準ランクを判定する判定ステップと、前記基準ランクに対して調整評価を入力し、入力した調整評価を前記基準ランクに加算した評価レートを求める調整評価ステップと、前記評価レートと前記実賃金ランクから、対応する号俸改定数を求める算出ステップを実行させる、給与管理プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】給与管理装置の機能的構成を示すブロック図である。
図2】職務記述書の一例を示す。
図3】職務評価の基準の一例を示す。
図4】職務ポイントと職務レベルの対応表を示す。
図5】基準ランクと評価レートの関係を示す。
図6】評価レート表の一例を示す。
図7】ランク型賃金表の一例を示す。
図8】号俸改定基準の一例を示す。
図9】ランク型賃金表のモデル昇給カーブ描画機能の表示例を示す。
図10】都道府県別モデル賃金の一例を示す。
図11】給与算出および等級異動の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態に係る給与管理装置では、ユーザーにも普遍的に活用可能な得点要素法による職務評価を簡便かつ低コストで提供することが可能な給与装置及び給与算出プログラムを提供すること、ランク型賃金表のノウハウを活用して、ジョブグレード別の賃金決定および昇給・昇格管理が簡易に行える手法を簡便かつ低コストで提供することとした。特に、本実施の形態に係る給与管理装置は次の機能を有する。
【0014】
(1)職務記述書への入力により、要素別に職務ポイントを出して、その評価の合計点によりジョブグレードを判定する。
(2)従業員の給与は、ランク型賃金表に基づき、(1)のジョブグレードに対応する基準賃金ランク(以下、「基準ランク」と呼ぶ)に加えて、当該従業員のジョブに対する貢献度等の人事評価SABCDに対応する賃金ランクの範囲で決まることを明示する。
(3)従業員の給与は、現在の賃金の実ランク(以下、「実賃金ランク」と呼ぶ)、がどこであっても、(1)のジョブグレードに対応する基準賃金ランクに加えて、当該ジョブに対する貢献度の評価SABCDに対応する上限に向かって自動的に昇給額を計算する。
(4)採用時またはジョブグレードの昇格・降格時に従業員に支給する給与は、上記適用枠範囲を超えることを許容して決定する。
(5)同一のジョブグレードに対して、地域差や雇用区分の違いに応じて異なる賃金(月給、時給、年俸等)を設定する。
(6)世間のモデル賃金水準とユーザー企業の賃金実態水準、平均昇給額等を比較考量し、人材採用ポリシーに合った妥当なランク型賃金表の選択・設定を支援する。
【0015】
本実施の形態に係る給与管理装置の制御部は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、画像処理部と、メモリを備えている。CPU、ROM、RAM、画像処理部及びメモリは、バスを介して相互に接続されている。
【0016】
CPUは、ROMに記録されているプログラム、又はメモリからRAMにロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAMには、CPUが各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0017】
画像処理部は、DSP(Digital Signal Processor)や、VRAM(Video Random Access Memory)等から構成されており、CPUと協働して、画像のデータに対して各種画像処理を施す。
【0018】
メモリは、DRAMやキャッシュメモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等何らかの記憶媒体が挙げられる。メモリは、バスにより接続されるもののみならず、ドライブまたはインターネットを介して読み書きされるものも含まれる。本実施形態で記憶されたデータは、一時的記憶も不揮発性メモリによる長期記憶の場合も、このメモリにいったん記憶するものとして説明する。
【0019】
図1は、給与管理装置の機能的構成を示すブロック図である。図1に示す給与管理装置の制御部は、記憶部110と、点数評価部120と、判定部130と、調整評価部140と、算出部150と、表示部160と、入力部170と、を備える。
【0020】
まずはじめに、このブロック図を用いて本装置の機能の概要を説明する。記憶部110は、評価対象者ごとの賃金の号俸と当該号俸の属する実賃金ランク、職務評価の基準、職務ポイントと職務レベルの対応テーブル、基準ランクと評価レートの関係を示すテーブル、評価レート表、ランク型賃金表、を保持する。記憶部110は、複数の評価レートと複数の実賃金ランクに対応付けた号俸改定数のテーブルを保持する。
【0021】
点数評価部120は、職務の評価項目ごとに配点を設け、当該評価項目ごとの点数を入力する。図2に示す職務記述書に記載した事項について、図3に示すスケールにて評価項目ごとの点数を入力する。図3では8項目について1-5点で入力する場合について示しているが、項目数及び配点は任意でよい。
【0022】
判定部130は、スケールとして入力した点数に基づいて多段階に分かれた基準ランクを判定する。なお、基準ランクは職務レベルやジョブグレードと同じ値である。判定部130は、図4に記載した基準ランク(図4では「職務レベル」と表示)を判定する。調整評価部140は、判定された基準ランクに対して、当該職務に対する人事評価に基づく調整評価を入力し、入力した調整評価を基準ランクに加算した評価レートを求める。
【0023】
算出部150は、前記評価レートと前記評価対象者の実賃金ランクから、対応する号俸改定数を求める。算出部150は、評価対象者の現在の賃金の号俸に、号俸改定数を加えることにより、当該評価対象者の新たな賃金の号俸を求め、号俸に対応付けた賃金表を参照して賃金を特定する。算出部150は、調整評価の加算後の評価レートと評価対象者の実賃金ランクから、前記テーブルを参照することにより、対応する号俸改定数を求める。
【0024】
算出部150は、号俸改定数について、評価レートが実賃金ランクを上回る場合に昇給とし、評価レートが実賃金ランクを下回る場合に降給とする。算出部150は、号俸改定数について、評価レートが実賃金ランクと一致する場合には号俸1つ分昇給として、さらに昇給後に前記賃金ランク内の上限号数に達していた場合には昇給停止とする。
【0025】
算出部150は、基準ランクを異動する場合に、新たな号俸について算出部150によって算出された号俸改定数を用い、基準ランクの降格の場合には新たな評価レートを1つ減少し、基準ランクの昇格の場合には新たな評価レートを1つ増加する。
【0026】
表示部160は、制御部を通して与えられた各種情報を表示する。表示部160は、例えば各種ディスプレイを介して情報を表示する。表示する情報としては、職務記述書、職務評価の基準、スケールの入力画面、毎年の賃金による賃金カーブ、モデル賃金に基づく賃金カーブが挙げられる。
【0027】
表示部160は、算出部150によって算出される賃金について、翌年以降について調整評価を0(すなわち、評価レート=基準ランクの場合)としたときの毎年の賃金を求めて、求めた毎年の賃金による賃金カーブを描き、描いた賃金カーブと合わせて、都道府県別のモデル賃金に基づく賃金カーブを描いて、ともに表示する。入力部170は、制御部を通して与えられた各種情報を入力する。
【0028】
図2は、職務記述書の一例を示す。職務記述書は、従業員の担当職務の内容を記述したものである。表示部160は職務記述書を表示し、入力部170を介してその内容の入力を受け付ける。表示部160と入力部170は、職務評価を行うための「職務記述書」を作成するにあたって、次の3つの情報に連動して職務記述書の作成を支援する。
【0029】
・担当部署の「課題発見ワークシート」・・・会社の事業方針や担当部署の組織目標に対応して、組織が抱える問題・課題を分析し、課題解決のための組織目標および所属メンバー各人の取り組み課題・目標等を一覧にしたもの
・担当部署の「役割責任マップ」・・・部署ごとに所属メンバーの担当課業と成果責任の各人割付け状況を一覧にしたもの
・役割行動基準・コンピテンシーリスト・・・様々なマネジメント・リーダーシップ行動、成果達成の職務行動を体系的に収集し、職務レベル順に一覧化したディクショナリー
【0030】
表示部160と入力部170は、職務記述書に基づく貢献度の評価を行うため業績評価および行動評価を行うにあたって、上記の3つの情報に連動して「キャリアアップシート」(職務記述書に対応した貢献度の評価を行うための個人評価シート)の作成を支援する。設定する内容は、
・目標管理に基づく業績評価を行うための目標
・行動評価を行うための役割行動基準・コンピテンシー
【0031】
ここからは、各図を参照しながら本装置の機能を詳述する。まず、ジョブグレードおよび基準ランク(=職務レベル)の決定について説明する。
図3は、職務評価の基準の一例である。図2に示した職務記述書に対して、複数の職務評価要素からなる「評価スケール」を参照して職務レベルを点数化して「職務ポイント」とする。個々のジョブに対する職務評価の基準を設定し、この基準に基づき、図3に示す評価項目1~8について1~5点のスケールで職務ポイントを評価する。評価項目および点数基準は、ここでは厚生労働省が一般に公表している項目と点数基準の例を示した。会社ごとに内容を適宜修正できるほか、項目ごとにウェイトを加重した点数を用いることもできる。
【0032】
図4は、職務ポイントと職務レベルの対応表を示す。判定部130によって基準ランク(職務レベル)を判定する。図4に示す基準を用いて上記の職務ポイントの合計点に対応する職務レベル1~17を判定する。このようにして判定した職務レベルがそのまま当該ジョブのジョブグレードおよび基準ランク1~17となる。表示部160によって図4に示す対応表を表示し、該当部分を入力部170によってクリックすることにより、スケールを特定してもよい。特定したスケールは記憶部110に記憶する。
【0033】
次に、従業員の賃金の決め方について説明する。基本原理は、ジョブグレード(=基準ランク)の値を賃金表(以下「ランク型賃金表」という)のランクの高さの値に符号させ、対応する人事評価(SABCD)に応じて、所定の号数をプラス・マイナスして賃金を改定することを自動計算で行えるようにするものである。
【0034】
ランク型賃金表は、対象従業員に対する賃金額の範囲を定め、その中に複数の号俸を設定し、賃金額が「○等級○号=○円」という形で決まるようにし、さらに、1号または複数の号数をまとめて賃金ランクに区分したものである。ランク型賃金表の詳細は後述する。
【0035】
図5は、基準ランクと評価レートの関係を示す。基準ランクだけでは職務評価に基づく単一の賃金決定となり、従業員のスキルや業績など貢献度の違いを反映できない。そこでジョブごとに適用する「基準ランク」と、各人の貢献度の評価SABCDにより基準ランク±2点の数字で決まる数字(以下「評価レート」と呼ぶ)との対応関係を決めておく。
【0036】
評価レートは賃金改定時の基準ランクとSABCDの総合評価によって決まる数字(基準ランク±2点の範囲)である。評価レートは、従業員の貢献度をSABCDの5段階で評価し、「基準ランク」をジョブグレードに対する標準的な貢献度のB評価に見合う賃金と位置づけ、基準ランクを中心に+2ランク~-2ランクの範囲で貢献度の評価SABCDに対応した賃金決定を行う仕組みに拡張する。あるジョブグレードに対して、S評価=基準ランク+2ランク、A評価=基準ランク+1ランク、B評価=基準ランク、C評価=基準ランク-1ランク、D評価=基準ランク-2ランクが、そのジョブに対する貢献度の違いに応じた賃金ランクとなる。このように、基準ランクの数字にSABCD評価の調整点(+2~-2)を加えた点数を「評価レート」と呼ぶ。これにより同一のジョブグレードであっても、多様なスキル・業績の人材の賃金処遇が可能になる。
【0037】
図6は、評価レート表の一例を示す。号俸改定時には各人の実賃金ランク(実際に支給されている賃金のランク)と評価レートとの組み合わせにより、号俸改定数を自動計算する。
【0038】
図7は、ランク型賃金表の一例を示す。全等級をカバーする1本の賃金表(1号~百数十号に及ぶ通し号俸表)を作り、基本給(号俸)の高さに応じて「ランク」に分ける。賃金表の水準は、現状の支給実態、会社の体力、世間相場を総合的に勘案して任意に決定でき、同一のジョブグレードに対し、地域別または雇用区分別に月給、年俸、時給等の設定が可能である。
【0039】
それぞれのランクはさらに6~8号俸程度に細分し、上限号俸の金額(トップ)を、「T」をつけて表す。ジョブグレードnに対応するnランクを当該グレードの賃金の「基準ランク」とする。このように、ジョブグレードに対応する賃金ランクを「基準ランク」と呼び、基準ランクの上限額を当該ジョブグレードに対応して支給すべき標準的な賃金と位置づける。
【0040】
図8は、号俸改定基準の一例を示す。賃金改定時には、賃金改定号数を定めた図8の号俸改定基準を用いて、各人の賃金の実ランクと評価レートの関係に基づいて号俸を改定する。号俸の変化に対応して賃金表の適用金額が変化し、その新旧差額がその時点の昇給額になる。
【0041】
賃金改定のポイントは次のとおりである。
a:現在の実ランク<評価レート→昇給
b:現在の実ランク=評価レート→1号だけ昇給、上限号数で昇給停止
c:現在の実ランク>評価レート→降給
【0042】
次に、ジョブグレード異動時の賃金の取り扱いについて説明する。ランク型賃金表は、全対象者に共通の賃金表なので、ジョブグレード異動前後で同じ賃金額とすることができる。また、ジョブグレードごとの賃金バンド(基準ランク±SABCD評価の適用ランクの範囲)の外でも適用することができる。なお、人事制度として、ジョブグレードの異動前後で昇格昇給、降格降給を設定し、号数をプラス・マイナスすることは可能である。
ジョブグレード異動時の賃金の取り扱いを具体的に整理すると次のようになる。
・賃金バンドが重なっている部分で異動する場合、図8を参照)
d:同額(同ランク・同号数)のまま昇格または所定の号数をプラス
e:同額(同ランク・同号数)のまま降格または所定の号数をマイナス
・賃金バンドが重なっていない部分で異動する場合
f:同額(同ランク・同号数)のまま昇格または所定の号数をプラス
最低評価を下回るランクになるが、その分、ジョブグレード異動後は昇給しやすくなり、本人の意欲は高まる。
g:同額(同ランク・同号数)のまま降格または所定の号数をマイナス
最高評価を超えるランクになるので、翌年以降、徐々に降給になる。

このように、職務変更に伴うジョブグレードの異動時は賃金バンドの重なりの有無にかかわらず、同額(同ランク・同号数)のまま昇格・降格でき、賃金の読み替えや特別昇給の記録や降格等級の緩和策などの個別調整が不要となり、実務の負担が軽減される。
また、昇格昇給による人件費の急増や、降格降給による本人の意欲低下の心配がないため、等級異動を躊躇する必要がなくなり、人材活用の柔軟性が保たれる。職種によって適用ランクを変えることにより、同じ賃金表を使って職種別賃金を設定できる。
【0043】
ここで、従業員の貢献度と賃金の対応について説明する。評価レートを軸に貢献度と賃金をマッチングさせるので、経営者が全従業員のジョブグレードと貢献度を全社横断的に定量的に把握して賃金に反映させることができ、処遇の説明性・納得性を高めやすい。上記のことから、従業員からの情緒的な昇格圧力も弱まり、無用な人件費の高騰を回避できる。
【0044】
さらに毎回の賃金改定において、ジョブグレードと貢献度の評価に対応した賃金ランクの上限に向かって号俸を段階的に調整する仕組み(以下、「段階接近法」と呼ぶ)を導入した。この段階接近法により、個々の従業員の賃金がどの号俸からスタートしても、実際のジョブグレードと貢献度に応じた賃金の高さに段階的かつ自動的にマッチングさせる賃金調整機能を実現した。ジョブグレードの格付のみで硬直的に賃金が固定化されるのではなく、各人の能力・意欲に応じた賃金を実現することにより、従業員のモチベーションを高め、人件費の配分効率を高めることが期待できる。
【0045】
賃金表において、号俸表の代わりに賃金の上限・下限の範囲のみを表示した「範囲給」を設定し、現在の賃金のランクと、その都度定める昇給単位と貢献度評価の組み合わせに応じて賃金の改定額を変える方法もある。
【0046】
続いて、図9を参照しながら、ランク型賃金表の設定と都道府県別のモデル賃金水準との比較表示について説明する。図9は、ランク型賃金表のモデル昇給カーブ描画機能の表示例を示す。グラフ左の1.~6.は、従業員の役割責任段階を次の6段階で区分し、対応する賃金の範囲を表示部160により表示したものである。
1. 一般職
2. 担当職
3. 実務指導職(主任クラス)
4. 業務推進職(係長・店長・職長クラス)
5. 業務管理責任職(課長クラス)
6. 部門経営責任職(部長クラス)
なお、この1.~6.の役割責任の区分は、世間の賃金水準との比較のための区分であり、ジョブグレードを表すものではない。これらの各役割責任において、貢献度が標準B評価で昇給し続けた場合の最終到達額をBで示し、昇給の最高上限額をS、下限額をDまたはEで示す。
【0047】
グラフ右の右肩上がりの昇給カーブは、高校卒初任給を起点として、上記役割責任段階まで毎年オールA評価で昇格し、その役割責任段階においては毎年オールA評価または毎年オールB評価で昇給し続けた場合のモデル昇給カーブをそれぞれ示す。
【0048】
なお、賃金構造基本統計調査に準拠して都道府県別のモデル賃金水準とユーザー企業の賃金実態水準、平均昇給額等を比較考量し、人材採用ポリシーに合った妥当なランク型賃金表の選択・設定を支援する方法もある。賃金水準の異なる地域に事業を展開する企業では、地域別の賃金表を用意する必要がある。また基本賞与分を含めた年収管理を行う管理職・専門職や、時給制のパートタイマーなど、雇用区分によっては月給制の基本給以外の賃金表の形式が求められる場合がある。本システムは、このような地域別・雇用区分別のニーズにもこたえられるよう、同一のジョブグレードに対して複数の賃金表(月給制、年俸制、時給制等)を設定・運用できるようにしている。
【0049】
ランク型賃金表の設定と都道府県別のモデル賃金水準との比較について説明する。ジョブグレードの自動判定と貢献度の評価に連動した給与決定システムにおいては、ジョブグレードの高さに対応する賃金ランクの金額(基本給)は人材の採用・定着・意欲づけ・生活維持に必要な、また会社の賃金支払い能力に見合った適正水準となるようランク型賃金表を設定しておく必要がある。ただし、最も賃金水準の高い首都圏の大企業から、地方の零細企業まで、賃金の地域差や企業規模の違いによる賃金水準には大きな格差が存在する。
【0050】
図10は、都道府県別モデル賃金の一例を示す。都道府県名をプルダウンメニューで選択することにより、図10に示す様式で都道府県別のモデル賃金を出力画面に表示する。
1)都道府県別に5種類の代表的な役割責任段階の昇進・昇格モデルを設定し、ポイント年齢における基本給額と家族手当・管理職手当等を付加した所定内賃金の金額を全国水準・エリア水準・ローカル水準に分けて表示する。
【0051】
表示部160は、モデル昇給カーブのグラフを、高校、高専・短大・専門学校、4年制大学、大学院修士課程などの新卒初任給を起点として作成する。さらに、自社の非役職者、主任クラス、係長クラス、課長クラス、部長クラス等の基本給の支給実態を把握しながら役職別の下限額・標準額・上限額等の範囲を設定し、図10に示す対応する年齢別のモデル昇給カーブを描画する。
2)賃金の世間相場との比較のため、都道府県別の3種類のモデル賃金の情報を本システムに搭載しておく。このモデル賃金は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(賃金センサス)の都道府県別集計に基づく初任給および賃金カーブの地域格差を加味したもので、次の3種類の金額水準を用意している。
【0052】
&#8226; 全国水準……全国展開を行う企業に対抗する賃金政策をとる場合の望ましい賃金水準を想定している。大卒者のU ターン就職、大手企業からの中途採用などを積極的に進める場合には、少なくともこの程度の基本給水準が必要という考え方で金額を設定したものである。
&#8226; エリア水準……県庁所在地をはじめとする主要都市の中堅企業水準である。地元の優良企業として、周辺地域を含め広く人材を採用・配置するために必要な賃金水準を想定している。
&#8226; ローカル水準……その他の一般市町村の地場企業水準で、限られた地域内で採用する場合を想定している。その性質上かなり地域差があるが、参考程度に表示したものである。
【0053】
3)賃金表の設定作業時はこれらのデータを適宜選択・参照し、これと自社のランク型賃金表に基づくモデル賃金とのモデル昇給カーブとの水準比較を行いながら、自社の人材採用のポリシーや人件費負担等も考慮し、自社用のランク型賃金表の金額を決定する。
4)人件費負担については、設定したランク型賃金表に基づく全員の標準昇給額を自動的に算出する機能を活用して、平均賃金および賃金総額の上昇額・率を把握し、自社の経営業績との見合いでその人件費負担が許容範囲内に収まっているかどうかを判断する
5)こうして決定した自社用ランク型賃金表の各ランクの上限額を、自社における各ジョブグレードの基準額とすることで、自社従業員の個別賃金および賃金の世間相場とバランスのとれた職務給を自社従業員に適用できるようになる
6)なお職務記述書の職務評価に基づいて自動的に判別したジョブグレードの基準額が、自社の個別賃金実態または世間相場と比べてアンバランスな場合は、その職務記述書のジョブグレードを適宜プラス・マイナスすることで、その基準額を任意に変更することができる
【0054】
選択したモデル賃金は、モデル昇給カーブの様式でも出力画面に表示することができ、自社用のランク型賃金表で作成したモデル昇給カーブとの相対的な違いを比較することができる。選択したモデル賃金は、図7のランク型賃金表の様式で出力画面に表示することができ、そのまま自社用のランク型賃金表の元データとして活用し、金額を微調整したうえで、自社用のランク型賃金表に転用することができる。
【0055】
このようにして作成したランク型賃金表は、ただちに自社の従業員にあてはめ、全員に標準評価(B評価)を適用した場合の仮昇給額・率を算出して人件費負担の大きさを検討することができるので、自社用のランク型賃金表をスムーズに選択・評価・決定することができるようになる。決定したランク型賃金表は、個々の従業員の貢献度評価SABCDを入力することにより、職務給制度に基づく各人別の賃金改定作業を円滑に行うことができる。
【0056】
図11は、給与算出および等級異動の処理を示すフローチャートである。まず表示部160は職務記述書を表示し、入力部170はその内容を受けつける(ステップS1010)。職務記述書の入力が終わったら、次に表示部160は職務ポイントのスケールを表示し、点数評価部120はその内容を受けつける(ステップS1020)。
【0057】
次に判定部130は、基準ランクを判定する(ステップS1030)。基準ランクは、職務ポイントのスケールの単純合計により求めるが、スケールごとにウェイトを持たせてもよい。そして評価調整部140は、基準ランクに対する調整評価を入力し、調整評価を基準ランクに加えることにより評価レートを求める(ステップS1040)。
【0058】
評価レートを求めたら、次に算出部150は号俸改定数を算出する(ステップS1050)。評価レートと実賃金ランクの照合により、テーブル上の対応するものを号俸改定数とする。号俸改定数を求めたら、評価対象者の現在の号俸に求めた号俸改定数を加算し、新たな号俸に対応する賃金を新たな賃金とする。
【0059】
次にモデル昇給カーブの処理に移行する。表示部160は、初任給を起点として、例えばB評価などの特定の評価がずっと続くという想定で翌年以降の給与を求め、その給与の額を縦軸、年数を横軸に割り当てることで描かれるモデル昇給カーブを描く(ステップS1060)。
【0060】
次に、表示部160は、比較対象となる、例えば都道府県別のモデル賃金水準についての昇給カーブを作成する。これもステップS1060に示したモデル昇給カーブと同じく、表示部160は、その都道府県の初任給を起点とした、その都道府県の昇給額を加えていった時の賃金を縦軸にして、昇給カーブを作成して描画する(ステップS1070)。このようにモデル昇給カーブと、モデル賃金の昇給カーブを並べて表示することによって、モデル昇給カーブの妥当性を判断する助けになる。
【0061】
以上、本発明について実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施例に記載の範囲には限定されない。上記実施例に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0062】
記憶部110、点数評価部120、判定部130、調整評価部140、算出部150、表示部160、入力部170
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11