(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075590
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】リポソーム薬物製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/702 20060101AFI20240528BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240528BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240528BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240528BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240528BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61K31/702
A61K9/127
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/24
A61K47/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024031179
(22)【出願日】2024-03-01
(62)【分割の表示】P 2021510282の分割
【原出願日】2019-05-02
(31)【優先権主張番号】62/665,564
(32)【優先日】2018-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513204012
【氏名又は名称】インスメッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウォーシャム,ロバート
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アミカシン等のアミノグリコシドを含み、有利な脂質/薬物特性を有するリポソーム薬物製剤を大規模製造する方法を提供する。
【解決手段】方法は、高いアミノグリコシド封入効率でリポソームを得るために、脂質ストリーム対薬物ストリームの特定の相対流速比を利用する。得られるリポソーム薬物製剤は、有利には、1:1未満の全体的な脂質対薬物重量比を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質およびアミノグリコシドを含み、全体的な脂質対薬物重量比が1:1未満であるリポソームアミノグリコシド製剤を大規模調製する方法であって、
(a)脂質を含む第1のストリームを、アミノグリコシドを含む第2のストリームと混合
して、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームを形成する工程と、
(b)工程(a)の脂質-アミノグリコシドストリームを、反応容器内で水性生理食塩水と混合する工程と、
(c)リポソームアミノグリコシド製剤を含む工程(b)の生成物を洗浄して、封入されていないアミノグリコシドを除去する工程と
を含み、第2のストリーム対第1のストリームの相対流速比は、約1.5:1~約2:1である方法。
【請求項2】
第2のストリームが、アミカシンの水溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のストリームが、脂質のアルコール溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水性生理食塩水が、第3のストリームを介して反応容器に加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第3のストリームが、脂質-アミノグリコシドストリームと同時に反応容器に加えられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第3のストリームが、脂質-アミノグリコシドストリームよりも前に反応容器に加えられる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
第1のストリームの流速が、約0.5kg/分~約1.5kg/分であり、第2のストリームの流速が、約1kg/分~約2kg/分である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1のストリームの流速が、約3kg/分~約4kg/分であり、第2のストリームの流速が、約5kg/分~約7kg/分である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
第1のストリームの流速が、約0.5kg/分~約1.5kg/分であり、第2のストリームの流速が、約1kg/分~約2kg/分であり、第3のストリームの流速が、約1L/分~約2L/分である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
第1のストリームの流速が、約3kg/分~約4kg/分であり、第2のストリームの流速が、約5kg/分~約7kg/分であり、第3のストリームの流速が、約3L/分~約6L/分である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
水性生理食塩水が、1.5%塩化ナトリウムである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
アミノグリコシドが、アミノグリコシドの薬学的に許容される塩である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
脂質が、リン脂質を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
リン脂質が、ホスファチジルコリンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ホスファチジルコリンが、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
脂質が、ステロールを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステロールが、コレステロールである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
脂質が、DPPCおよびコレステロールを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
薬物および脂質ストリームが、混合前にそれぞれ約30℃~約50℃の温度に維持される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
薬物および脂質ストリームが、混合前にそれぞれ約35℃~約45℃の温度に維持される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームの温度が、反応容器内で水性生理食塩水により冷却される、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程(b)の後、リポソームが少なくとも40%のアミノグリコシド封入効率で調製さ
れる、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリーム中でリポソームが形成される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
全体的な脂質対薬物重量比が約0.7:1であるリポソーム薬物製剤を調製するための、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
洗浄工程(c)が、1.5%塩化ナトリウム水溶液を使用して行われる、請求項1から
23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
洗浄工程(c)が繰り返され、生成物が濃縮されて、約60g/L~約80g/Lの濃
度で存在するアミノグリコシドを含むリポソーム薬物製剤を生成する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
アミノグリコシドが、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロデストレプトマイシン(rhodestreptomycin)、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプト
マイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、またはそれらの組合せである、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
アミノグリコシドが、AC4437、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ボホルマイシン(boholmycin)、ブルラマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ダクチマイシン(dactimicin)、エチミシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、H107、ハイグロマイシン、ハイグロマイシンB、イノサマイシン、K-4619、イセパマイシン、KA-5685、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン(paromomycm)、プラゾマイシン、リボスタマイシン、
シソマイシン(sisomicm)、ロデストレプトマイシン(rhodestreptomycin)、ソルビス
チン、スペクチノマイシン、スポラリシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、ベルチルマイシン(vertilmicin)、またはそれらの組合せである、請求項
1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
アミノグリコシドが、アミカシンである、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
アミカシンが、アミカシン硫酸塩である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1から30のいずれか一項に記載の方法により製造されたリポソーム薬物製剤。
【請求項32】
アミノグリコシドが、約60g/L~約80g/Lの濃度で存在する、請求項31に記載のリポソーム薬物製剤。
【請求項33】
アミカシンが、約70g/Lの濃度で存在する、請求項31に記載のリポソーム薬物製剤。
【請求項34】
脂質が、約40g/L~約60g/Lの濃度で存在する、請求項31から33のいずれか一項に記載のリポソーム薬物製剤。
【請求項35】
脂質が、約50g/Lの濃度で存在する、請求項34に記載のリポソーム薬物製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2018年5月2日に出願された米国仮特許出願第62/665,564号の優先権を主張し、その開示は参照により全ての目的においてその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002] リポソーム薬物製剤は、疾患の特定部位での活性薬剤の吸収を標的化および向上させる能力を可能にする。そのような製剤は、肺感染により引き起こされるものを含む様々な肺障害を処置するために開発されており、それらの製剤は、その特性によって、抗感染薬剤の吸入送達のための理想的な選択肢となっている。
【0003】
[0003] 1つのそのような抗感染薬剤であるアミカシンは、リポソーム内に封入されており、マイコバクテリウムアビウムコンプレックス(MAC)により引き起こされる難治性非
結核性抗酸菌(NTM)肺疾患の処置のための、成人患者における複数の臨床試験において
試験されている。最近のアミカシンリポソーム吸入懸濁液(ALIS)の第III相試験では、ガイドラインに基づく治療(GBT)へのALISの追加によって、GBT単独の患者の
9%と比較して、患者の29%において6か月目までに痰中のMACにより引き起こされるNTM肺疾患の兆候が排除されたことが示された。
【0004】
[0004] 比較的高いアミカシン対脂質比でそれらを含むリポソームがベンチ規模で調製されているが、リポソーム製剤を商業的製造規模で生成するためにそのようなプロセスを拡張し、薬物濃度、製剤中の脂質の量、脂質対薬物比、捕捉量、薬物漏出、粘度、および粒子サイズ等のパラメーターが臨床および/または商業用途の仕様内で一定に維持されるのは、型通りにはいかないことはよく知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] 本発明は、アミカシン等のアミノグリコシド抗生物質を含み、高いアミノグリコシド対脂質重量比(すなわち低い脂質対アミノグリコシド重量比)ならびに優れた封入効率を有するリポソームを調製するための繰り返し可能な大規模プロセスの必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] 一態様において、本発明は、脂質およびアミノグリコシド(例えばアミカシン)を含み、脂質濃度に対して高いアミノグリコシド投入量(すなわちアミノグリコシド対脂質の相対重量比が高い)を有する、リポソームアミノグリコシド製剤を大規模製造する方法を提供する。特に、本発明の方法に従って調製されたリポソーム懸濁液中の脂質対アミノグリコシド(例えばアミカシン)重量比(「L/D重量比」とも称する)は、プロセスの
完了後に1:1未満、例えば約0.5:1~約0.9:1である。一実施形態において、本発明の方法に従って調製されたリポソーム懸濁液の脂質対アミノグリコシド重量比は、製造プロセスの完了後に約0.7:1(脂質:アミノグリコシド)である。
【0007】
[0007] 別の態様において、本発明は、脂質およびアミノグリコシド(例えばアミカシン)を含むリポソーム薬物製剤を大規模製造する方法に関し、アミノグリコシドは、高い封入効率(例えば、製剤から遊離アミノグリコシドを除去するための洗浄前に少なくとも約40%の封入効率)でリポソーム内に含まれる。
【0008】
[0008] 一実施形態において、方法は、脂質を含む第1のストリームを、アミノグリコシドを含む第2のストリームと混合して、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームを形成する工程を含む。組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームは、リポソームで封入されたアミノグリコシドを含み、これは、一実施形態において、脂質ストリームとアミノグリコシドストリームとの交差部で形成される。さらなる実施形態において、脂質-アミノグリコシドストリームは、反応容器内で水性生理食塩水と混合される(例えば
図1を参照されたい)。一実施形態において、アミノグリコシドは、混合工程の前に水溶液中に存在する。別の実施形態において、脂質は、混合工程の前にアルコール溶液、例えばエタノール溶液中に存在する。さらなる実施形態において、脂質は、リン脂質およびコレステロールを含む。一実施形態において、アミノグリコシドを含む第2のストリーム対脂質を含む第1のストリームの相対流速比は、約1.5:1(アミノグリコシドストリーム:脂質ストリーム)~約2:1(アミノグリコシドストリーム:脂質ストリーム)である。さらなる実施形態において、脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびコレステロールを含む。
【0009】
[0009] 一実施形態において、水性生理食塩水は、第3のストリームを介して反応容器に加えられる。さらなる実施形態において、第3のストリームは、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームと同時に反応容器に加えられる。別の実施形態において、第3のストリームは、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームを反応容器に加える前に反応容器に加えられる。別の実施形態において、水性生理食塩水は、反応容器に入る前にほぼ室温である。一実施形態において、水性生理食塩水は、約1.5%の塩化ナトリウム水溶液である。
【0010】
[0010] 1つの特定の態様において、本発明は、脂質およびアミノグリコシド(例えばアミカシン)を含むリポソーム薬物製剤を大規模製造する方法を提供し、アミノグリコシドは、洗浄工程の前に、少なくとも40%の封入効率でリポソーム内に封入される、またはリポソームと複合化される。一実施形態において接線流濾過により行われる洗浄工程後、リポソームアミノグリコシド製剤中の脂質対アミノグリコシドの重量比は、1:1未満、例えば約0.5:1~約0.9:1の間(例えば約0.7:1)である。この方法の一実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシンである。さらなる実施形態において、アミカシンは、アミカシン硫酸塩として存在する。
【0011】
[0011] 一実施形態において、脂質を含む第1のストリームは、アミノグリコシドを含む第2のストリームと混合され、リポソームアミノグリコシドを含む組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリーム(例えば脂質-アミカシンストリーム)を形成する。一実施
形態において、リポソームアミノグリコシド製剤は、2つのストリームの交差部で、すなわち組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームの形成後に形成される。さらなる実施形態において、脂質を含む第1のストリームの流速は、約0.5kg/分~約1.5kg/分であり、アミノグリコシドを含む第2のストリームの流速は、約1kg/分~約2kg/分である。さらなる実施形態において、脂質を含む第1のストリームの流速は、約3kg/分~約4kg/分であり、アミノグリコシドを含む第2のストリームの流速は、約5kg/分~約7kg/分である。別の実施形態において、アミノグリコシドを含む第2のストリーム対脂質を含む第1のストリームの相対流速比は、約1.5:1(アミノグリコシドストリーム流速:脂質ストリーム流速)~約2:1(アミノグリコシドストリ
ーム流速:脂質ストリーム流速)である。さらに別の実施形態において、脂質は、ジパル
ミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびコレステロールを含む。
【0012】
[0012] 一実施形態において、リポソーム薬物製剤を大規模製造する方法は、脂質を含む第1のストリームを、アミノグリコシドを含む第2のストリームと混合して、組み合わさ
れた脂質-アミノグリコシドストリームを形成する工程と、水性生理食塩水を含む容器に、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームを加える工程とを含む。一実施形態において、水性生理食塩水は、第3のストリームを介して反応容器に加えられる(例えば
図1を参照されたい)。
【0013】
[0013] さらなる実施形態において、脂質を含む第1のストリームの流速が約0.5kg/分~約1.5kg/分であり、アミノグリコシドを含む第2のストリームの流速が約1kg/分~約2kg/分である場合、第3のストリームの流速は、約0.5L/分~約2.0L/分、例えば約1.0L/分~約2.0L/分、例えば約1.0L/分~約1.5L/分であり、約1.25L/分を含む。別の実施形態において、脂質を含む第1のストリームの流速が約3kg/分~約4kg/分であり、アミノグリコシドを含む第2のストリームの流速が約5kg/分~約7kg/分である場合、第3のストリームの流速は、約3L/分~約6L/分、例えば約4L/分~約6L/分、例えば約4.5L/分~約5.5L/分であり、約5L/分を含む。
【0014】
[0014] 本明細書において使用される場合、別段に具体的に述べられていない限り、「アミノグリコシド」という用語は、アミノグリコシド遊離塩基およびその任意の薬学的に許容される塩を含むことを意図する。例えば、「アミカシン」という用語は、アミカシン遊離塩基およびその任意の薬学的に許容される塩(例えばアミカシン硫酸塩)を含むことを意図する。
【0015】
[0015] 一実施形態において、リポソームアミノグリコシド(例えばアミカシン)製剤を大規模製造する方法は、リン脂質を含む脂質を含む第1のストリームを、アミノグリコシド(例えばアミカシン)を含む第2のストリームと混合して、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームを形成する工程を含む。さらなる実施形態において、脂質-アミノグリコシドストリームは、反応容器内で水性生理食塩水と混合される。一実施形態において、リン脂質は、ホスファチジルコリンである。さらなる実施形態において、ホスファチジルコリンは、DPPCである。別の実施形態において、脂質は、リン脂質およびステロールを含む。さらなる実施形態において、ステロールは、コレステロールである。一実施形態において、脂質は、DPPCおよびコレステロールを含む。
【0016】
[0016] 一実施形態において、リポソームアミノグリコシド製剤を大規模製造する方法は、脂質を含む第1のストリームを、アミノグリコシドを含む第2のストリームと混合する工程を含み、第1のストリームは、第2のストリームと混合されて、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームを形成する。組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームは、リポソームアミノグリコシドを含む。一実施形態において、リポソームアミノグリコシドは、第1のストリームおよび第2のストリームの混合後に、例えば2つのストリームの交差部で形成される。さらなる実施形態において、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームは、反応容器に加えられ、水性生理食塩水と混合される。さらなる実施形態において、アミノグリコシドストリームおよび脂質ストリームは、混合前にそれぞれ約30℃~約50℃の温度に維持される。さらなる実施形態において、アミノグリコシドおよび脂質ストリームは、混合前にそれぞれ約35℃~約45℃、例えば約38℃~約42℃の温度に維持される。一実施形態において、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームは、反応容器に入った後に冷却される。別の実施形態において、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームは、反応容器内で水性生理食塩水により冷却される。一実施形態において、反応容器は、約25℃~約40℃、例えば約27℃~約35℃の温度に維持される。別の実施形態において、反応容器は、約30℃の温度に維持される。別の実施形態において、反応容器は、約33℃の温度に維持される。
【0017】
[0017] 本発明の別の態様において、リポソームアミノグリコシド製剤は、本明細書に記
載の方法に従って大規模に製造される。一実施形態において、そのようにして調製されたリポソーム薬物製剤中に存在するアミノグリコシド(例えばアミカシン)の濃度は、約10g/L以上、例えば約50g/L~約100g/Lであり、約60g/L~約80g/Lおよび約65g/L~約75g/L(例えば、約20g/L、約30g/L、約40g/L、約50g/L、約60g/L、約70g/Lまたは約80g/L)を含む。さらなる実施形態において、そのようにして調製されたリポソーム薬物製剤中に存在する脂質の濃度は、約10g/L~約100g/Lであり、約20g/L~約80g/Lおよび約40g/L~約60g/L(例えば約50g/L)を含む。別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って大規模に製造されたリポソーム薬物製剤のL/D比は、1:1未満、例えば約0.5:1~約0.8:1の間(例えば約0.7:1)である。
【0018】
[0018] 別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って大規模に製造されたリポソーム薬物製剤は、約200nm~約500nm、例えば約200nm~約400nm(例えば約250nm~約350nm)の平均粒子サイズ(すなわち平均直径)を有するリポソーム粒子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】リポソームアミノグリコシド製剤を調製するための本発明の一実施形態を示す図である。
【
図2】様々なリポソームアミカシン製剤の得られるL/D比に対する相対的脂質/アミカシン流速の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0019] 一態様において、本明細書に記載の発明は、リポソームアミノグリコシド製剤を大規模に製造するための方法に関する。一実施形態において、方法は、脂質を含む第1のストリーム(本明細書では「脂質ストリーム」とも称する)を、アミカシン等のアミノグリコシドを含む第2のストリーム(本明細書では「薬物ストリーム」とも称する)と混合して、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームを形成する工程を含み、脂質-アミノグリコシドストリームは、反応容器内で水性生理食塩水と混合される。いくつかの実施形態において、水性生理食塩水は、第3のストリームを介して反応容器に入る。
【0021】
[0020] 脂質および薬物ストリームの混合は、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームを形成する際に乱流が生じるように実行される。乱流は、脂質および薬物ストリームの「インライン」混合に適切なT字またはY字注入モジュールを使用して便利に達成される。
【0022】
[0021] 「大規模」という用語は、薬物ストリーム中の少なくとも約5kgのアミノグリコシドベース出発材料の使用を意味する(薬学的に許容される塩が使用される場合、少なくとも約5kgのアミノグリコシドベースとして計算される)。一実施形態において、約5kg~約50kgのアミノグリコシドベース出発材料、例えば約5kg~約35kgのアミノグリコシドベース出発材料が使用される。一実施形態において、少なくとも約8kgのアミノグリコシドベース出発材料が使用される。別の実施形態において、少なくとも約30kgのアミノグリコシドベース出発材料が使用される。一実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシン(例えばアミカシン硫酸塩)である。
【0023】
[0022] 本明細書に記載の方法において使用されるアミノグリコシドは、薬学的に許容される塩または遊離塩基として存在してもよい。上述したように、一実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシン、例えばアミカシン硫酸塩である。
【0024】
[0023] 別の実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシン、アプラマイシン、ア
ルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロデストレプトマイシン(rhodestreptomycin)、リボス
タマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、またはそれらの組合せである。
【0025】
[0024] さらに別の実施形態において、アミノグリコシドは、AC4437、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ボホルマイシン(boholmycin)、ブルラマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ダクチマイシン(dactimicin)、エチミシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、H107、ハイグロマイシン、ハイグロマイシンB、イノサマイシン、K-4619、イセパマイシン、KA-5685、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン(paromomycm)、プラゾマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン(sisomicm)、ロデストレプトマイシン(rhodestreptomycin)、ソルビスチン、スペクチノマイシン、スポラリシン、ストレ
プトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、ベルチルマイシン(vertilmicin)、
またはそれらの組合せである。
【0026】
[0025] 「薬学的に許容される塩」は、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含む。薬学的に許容される付加塩は、遊離塩基の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的または別様に望ましくないものではなく、また、これらに限定されないが塩酸(HCl)、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、およびこれらに限定されないが酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸(例えば乳酸塩として)、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酢酸(例えば酢酸塩として)、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、ウンデシレン酸
等の有機酸で形成されるそれらの塩を指す。一実施形態において、薬学的に許容される塩は、HCl、TFA、乳酸塩または酢酸塩である。一実施形態において、薬学的に許容される塩は、硫酸塩、例えばアミカシン硫酸塩である。
【0027】
[0026] 「リポソームアミノグリコシド製剤」は、脂質がリポソームの形態であり、アミノグリコシドがリポソーム二重層により封入されている、またはリポソーム二重層と複合化している脂質-アミノグリコシド製剤を指す。リポソームは、捕捉された水性容積部を内包する完全に閉じた脂質二重層膜である。リポソームは、単層ベシクル(単一膜二重層を有する)、または多重層ベシクル(それぞれ水性層により次の層から離間した複数膜二重層で特徴付けられる玉葱状構造)、またはそれらの組合せであってもよい。二重層は、疎水性「尾部」領域および親水性「頭部」領域を有する2つの脂質単分子層で構成される。膜二重層の構造は、脂質単分子層の疎水性(非極性)「尾部」が二重層の中心を向き、一方親水性「頭部」が水性相を向くような構造である。
【0028】
[0027] 一実施形態において、脂質-アミノグリコシド製剤は、2ストリーム注入プロセスを含む方法によって製造される。一実施形態において、方法は、T字注入モジュールま
たはY字注入モジュール内で第1の脂質ストリームを第2のアミノグリコシドストリームと混合する工程を含む。「T字注入モジュール」および「Y字注入モジュール」という用語は、本明細書において使用される場合、2つ以上のストリームが組み合わされて、例えば脂質ストリームおよび薬物ストリームが組み合わされて単一の脂質-アミノグリコシドストリームを形成するT字またはY字チャンバを指す。例えば、
図1の略図を参照されたい。注入モジュールは、使用される脂質および薬物ストリームの必要な速度に適切な口径サイズを有することが分かる。好適な口径サイズの例は、これらに限定されないが、3/16”および3/8”を含む。
【0029】
[0028] 一実施形態において、第1のストリーム(脂質ストリーム)は、脂質アルコール(例えばエタノール)溶液を含む。一実施形態において、第2のストリーム(アミノグリコシドストリーム)は、アミノグリコシド水溶液(例えばアミカシン水溶液)を含む。一実施形態において、第1および第2のストリームは混合されて、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームを形成する。一実施形態において、第1および第2のストリームはそれぞれ注入モジュールに入り、第1および第2のストリームは注入モジュール内で混合される。さらなる実施形態において、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームは注入モジュールから出て、その後反応容器に入る。
図1を参照されたい。
【0030】
[0029] 一実施形態において、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームは、反応容器、例えば組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームが注入モジュールを出た後に入る反応容器と同じ反応容器内で水性生理食塩水と混合される。一実施形態において、水性生理食塩水は、約0.5~2%の塩化ナトリウム水溶液(例えば約1.5%)を含む。一実施形態において、生理食塩水は、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームよりも前に反応容器に加えられる。別の実施形態において、生理食塩水は、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームと同時に、またはほぼ同時に反応容器に加えられる。さらなる実施形態において、生理食塩水は、第3のストリームを介して反応容器に加えられる。したがって、いくつかの実施形態において、脂質-アミノグリコシド製剤は、3ストリーム注入プロセスを含む方法によって製造される。いくつかの実施形態において、第3のストリームは、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームとは別個に反応容器に加えられる。
【0031】
[0030] 一実施形態において、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームは、リポソームアミノグリコシド(例えばアミカシン)を含み、リポソーム内の(またはリポソームに複合化した)アミノグリコシドの封入効率は、少なくとも約40%である。「封入効率」は、本明細書において使用される場合、遊離アミノグリコシドを除去するためのリポソームアミノグリコシド製剤の濾過工程、例えば接線流濾過の前にリポソームで封入された、またはリポソームと複合化したアミノグリコシドの量を指す。例えば、約40%~約70%(例えば約45%~約55%)の間の封入効率は、本明細書に記載の本発明の方法に従って、脂質およびアミノグリコシド(例えばアミカシン)ストリームを混合することにより達成され得る。
【0032】
[0031] 一実施形態において、アミノグリコシドストリームおよび脂質ストリームは、2つのストリームの混合前にそれぞれ約30℃~約50℃の温度に維持される。さらなる実施形態において、アミノグリコシドおよび脂質ストリームは、混合前にそれぞれ約35℃~約45℃、例えば約38℃~約42℃の温度に維持される。別の実施形態において、脂質およびアミノグリコシド溶液の組合せは、発熱挙動を示す。一実施形態において、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームの温度は、約40℃~55℃である。さらなる実施形態において、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームの温度は、約45℃~約50℃である。別の実施形態において、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームは、反応容器内で水性生理食塩水と混合され、水性生理食塩水は、組み合わ
された脂質-アミノグリコシドストリームと混合される前に室温に維持される。別の実施形態において、水性生理食塩水は、第3のストリームを介して反応容器に加えられ、第3のストリームは、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームと混合される前に室温に維持される。一実施形態において、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームは、反応容器に入った後に冷却される。別の実施形態において、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームは、反応容器内で水性生理食塩水により冷却される。別の実施形態において、組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームは、反応容器に入った後に冷却される。一実施形態において、反応容器は、約25℃~約40℃、例えば約27℃~約35℃の温度に維持される。別の実施形態において、反応容器は、約30℃の温度に維持される。別の実施形態において、反応容器は、約33℃の温度に維持される。
【0033】
[0032] 一実施形態において、本明細書に記載の方法により製造されたリポソーム薬物製剤の脂質成分は、電気的に正味中性の脂質、正に帯電した脂質、負に帯電した脂質、またはそれらの組合せを含む。別の実施形態において、脂質成分は、電気的に正味中性の脂質を含む。さらなる実施形態において、脂質成分は、電気的に正味中性の脂質から本質的になる。さらなる実施形態において、脂質は、DPPCおよびコレステロールである。
【0034】
[0033] 本発明のリポソーム製剤の製造において使用される脂質は、合成、半合成または天然の脂質であってもよく、リン脂質、トコフェロール、ステロール、脂肪酸、負に帯電した脂質およびカチオン性脂質の1つまたは複数を含む。一実施形態において、脂質成分は、電気的に中性の脂質、例えばステロールおよびリン脂質からなる。
【0035】
[0034] 一実施形態において、少なくとも1種のリン脂質がリポソーム薬物製剤中に存在する。一実施形態において、リン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG)、大豆ホスファチジルセリン(SPS)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE)、および大豆ホスファチジン酸(SPA);水素化卵および大豆相当物(例えば、水素化卵ホスファチジルコリンおよび水素化大豆ホスファチジルコリン)、コリン、グリセロール、イノシトール、セリン、エタノールアミンを含む、12~26個の炭素原子の鎖を含む2位および3位のグリセロール位置における脂肪酸のエステル結合と、グリセロールの1位における異なる頭部基とで構成されるリン脂質、ならびに対応するホスファチジン酸である。これらの脂肪酸における炭素鎖は、飽和または不飽和であってもよく、リン脂質は、異なる鎖長および異なる不飽和度の脂肪酸で構成されてもよい。
【0036】
[0035] 一実施形態において、本明細書に記載の方法により製造されたリポソーム薬物製剤の脂質成分は、ホスファチジルコリンを含む。例えば、一実施形態において、リポソーム薬物製剤中の脂質成分は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を含む。一実施形態において、リポソーム薬物製剤の脂質成分は、DPPCおよびステロール、例えばDPPCおよびコレステロールを含む。代替として、脂質は、DPPCおよびコレステロールから本質的になる、またはDPPCおよびコレステロールからなる。さらなる実施形態において、DPPCおよびコレステロールは、約19:1(DPPC:コレステロール)~
約1:1(DPPC:コレステロール)、または約9:1(DPPC:コレステロール)~約1:1(DPPC:コレステロール)、または約4:1(DPPC:コレステロール)~約1:1(DPPC:
コレステロール)、または約2:1(DPPC:コレステロール)~約1:1(DPPC:コレステロール)の範囲内のモル比を有する。さらなる実施形態において、DPPCおよびコレステロールは、約2:1(DPPC:コレステロール)のモル比を有する。
【0037】
[0036] 本明細書に記載の方法により製造されたリポソーム薬物製剤の脂質成分の他の例
は、これらに限定されないが、ジミリストイルホスファチジルコリン(dimyristoylphosphatidycholine)(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパ
ルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoylphosphatidcholine)(DPPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)、混合リン脂質、例えばパルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、および単一アシル化リン脂質、例えばモノ-オレイル-ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)を含む。
【0038】
[0037] 本明細書に記載の方法により製造されたリポソーム薬物製剤中のステロール化合物の例は、これらに限定されないが、コレステロール、コレステロールヘミスクシネートを含むコレステロールのエステル、硫酸水素コレステロールおよび硫酸コレステロールを含むコレステロールの塩、エルゴステロール、エルゴステロールヘミスクシネートを含むエルゴステロールのエステル、硫酸水素エルゴステロールおよび硫酸エルゴステロールを含むエルゴステロールの塩、ラノステロール、ラノステロールヘミスクシネートを含むラノステロールのエステル、硫酸水素ラノステロール、硫酸ラノステロールを含むラノステロールの塩、ならびにトコフェロールを含む。トコフェロールは、トコフェロール、トコフェロールヘミスクシネートを含むトコフェロールのエステル、硫酸水素トコフェロールおよび硫酸トコフェロールを含むトコフェロールの塩を含む。「ステロール化合物」という用語は、ステロール、トコフェロール等を含む。トコフェロールおよびその水溶性誘導体は、リポソームの形成に使用されており、例えばPCT公開第87/02219号を参照されたい。
【0039】
[0038] 一実施形態において、第1のストリーム中の脂質の濃度は、約10g/L~約50g/L、または約10g/L~約30g/L、または約15g/L~約25g/Lである。一実施形態において、第1のストリーム中の脂質の濃度は、約17g/L、約18g/L、約19g/L、約20g/L、約21g/L、約22g/L、約23g/L、約24g/Lまたは約25g/Lである。一実施形態において、第1のストリーム中の脂質の濃度は、約20g/Lである。
【0040】
[0039] 一実施形態において、第2のストリーム(アミノグリコシドストリーム)中のアミノグリコシドの濃度は、約10g/L~約100g/L;または約20g/L~約70g/L;または約30g/L~約60g/L;または約40g/L~約50g/Lである。一実施形態において、第2のストリーム中の薬物の濃度は、約4’g/L、約42g/L、約43g/L、約44g/L、約45g/L、約46g/L、約47g/L、約48g/L、約49g/Lまたは約50g/Lである。一実施形態において、第2のストリーム中のアミノグリコシドの濃度は、約45g/Lである。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシンである。
【0041】
[0040] 本発明の一実施形態において、アミノグリコシドストリームのpHは、6~約7、または約6.5~約7.0である。さらなる実施形態において、アミノグリコシドストリームのpHは、約6.7である。アミノグリコシドストリームのpHは、アルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム等の好適な塩基を使用して適切なpHに調整され得る。
【0042】
[0041] 別の実施形態において、水性生理食塩水は、約0.5%の塩化ナトリウム~約3%の塩化ナトリウム、例えば約0.75%、約1.0%、約1.25%、約1.5%、約1.75%、約2.0%、または約2.5%の塩化ナトリウムを含む。一実施形態において、水性生理食塩水は、約1.5%の塩化ナトリウムを含む。
【0043】
[0042] 一実施形態において、脂質ストリームの流速は、約0.5kg/分~約1.5kg/分であり、アミノグリコシドストリームの流速は、約1kg/分~約2kg/分である。さらなる実施形態において、脂質ストリームの流速は、約3kg/分~約4kg/分であり、薬物ストリームの流速は、約5kg/分~約7kg/分である。別の実施形態において、アミノグリコシドストリーム対脂質ストリームの相対流速比は、約1.5:1(アミノグリコシドストリーム流速:脂質ストリーム流速)~約2:1(アミノグリコシド
ストリーム流速:脂質ストリーム流速)である。
【0044】
[0043] 一実施形態において、脂質ストリームの流速が約0.5kg/分~約1.5kg/分であり、アミノグリコシドストリームの流速が約1kg/分~約2kg/分である場合、水性生理食塩水を含む第3のストリームの流速は、約0.5L/分~約2.0L/分、例えば約1.0L/分~約2.0L/分、例えば約1.0L/分~約1.5L/分であり、約1.25L/分を含む。別の実施形態において、脂質ストリームの流速が約3kg/分~約4kg/分であり、アミノグリコシドストリームの流速が約5kg/分~約7kg/分である場合、水性生理食塩水を含む第3のストリームの流速は、約3L/分~約6L/分、例えば約4L/分~約6L/分、例えば約4.5L/分~約5.5L/分であり、約5L/分を含む。
【0045】
[0044] 本発明の一実施形態において、脂質およびアミノグリコシド(例えばアミカシン)溶液は両方とも、例えば1つまたは複数の(例えば2つの直列の)約0.2μmのフィルタを通して濾過されてから、組み合わされたストリームに混合される(
図1)。
図1は2つの直列のフィルタを示しているが、この数は、方法の使用者の好みによって変更され得ることに留意されたい。例えば、1つ~5つのフィルタを使用して、まず脂質ストリームおよびアミノグリコシドストリームを濾過してもよい。
【0046】
[0045] 別の実施形態において、水性生理食塩水(例えば1.5%生理食塩水)もまた、例えば1つまたは複数の(例えば2つの直列の)約0.2μmのフィルタを通して濾過されてから、反応容器内で組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリームと混合される。さらなる実施形態において、脂質ストリームおよびアミノグリコシドストリームの交差部で、ならびに/または組み合わされた脂質-アミノグリコシドストリーム中で形成されたリポソームを含むリポソーム懸濁液は、透析等の再循環濾過システムを使用して反応容器内で濃縮される。上に記載されたように、「封入効率」は、本明細書において使用される場合、遊離アミノグリコシドを除去するためのリポソームアミノグリコシド製剤の濾過工程、例えば接線流濾過の前にリポソームで封入された、またはリポソームと複合化したアミノグリコシドの量を指す。例えば、約40%~約70%(例えば約45%~約55%)の間の封入効率は、本明細書に記載の本発明の方法に従って、脂質およびアミノグリコシド(例えばアミカシン)ストリームを混合することにより達成され得る。
【0047】
[0046] 別の実施形態において、得られた濃縮リポソーム懸濁液は、リポソーム懸濁液が適切な最終濃度のアミノグリコシドを含み、遊離アミノグリコシドの実質的に全てが除去されるまで、追加の水性生理食塩水(例えば濾過された1.5%生理食塩水)で処理(すなわち「洗浄」)され、透析等の再循環濾過システムを使用してさらなる濾過に供される。さらなる実施形態において、適切な最終アミノグリコシド濃度を達成するために、3回以上の洗浄(例えば3回、4回、5回または6回の洗浄)が行われる。
【0048】
[0047] 一実施形態において、洗浄後、本明細書に記載の方法に従って大規模に製造されたリポソームアミノグリコシド製剤中に存在するアミノグリコシドの濃度は、約10g/L以上である。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、約20g/L以上の濃度で製剤中に存在する。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、約30g/L以上の濃度で製剤中に存在する。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、約4
0g/L以上の濃度で製剤中に存在する。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、約50g/L以上の濃度で製剤中に存在する。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、約60g/L以上の濃度で製剤中に存在する。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、約70g/L以上の濃度で製剤中に存在する。別の実施形態において、アミノグリコシドは、約10g/L~約100g/Lの濃度で製剤中に存在する。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシンである。一実施形態において、アミノグリコシドは、約50g/L~約100g/Lの濃度で製剤中に存在する。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシンである。一実施形態において、アミノグリコシドは、約60g/L~約80g/Lの濃度で製剤中に存在する。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシンである。さらに別の実施形態において、アミノグリコシドは、約65g/L~約80g/Lの濃度で製剤中に存在する。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシンである。さらに別の実施形態において、アミノグリコシドは、約65g/L~約75g/Lの濃度で製剤中に存在する。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシンである。別の実施形態において、アミカシンは、約70g/Lの濃度で製剤中に存在する。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシンである。
【0049】
[0048] さらなる実施形態において、洗浄後、本明細書に記載の方法に従って大規模に製造されたリポソーム薬物製剤中に存在する脂質の濃度は、約10g/L~約100g/Lであり、約20g/L~約80g/Lおよび約40g/L~約60g/L(例えば約50g/L)を含む。
【0050】
[0049] 別の実施形態において、透析後、本明細書に記載の方法に従って大規模に製造されたリポソーム薬物製剤中の脂質対アミノグリコシド重量比は、1:1未満、例えば約0.5:1(脂質:アミノグリコシド)~約0.8:1(脂質:アミノグリコシド)の間(例えば約0.5:1(脂質:アミノグリコシド)または0.6:1(脂質:アミノグリコシド)または0.7:1(脂質:アミノグリコシド)または0.8:1(脂質:アミノグリコシド))である。一実施形態において、脂質対アミノグリコシド重量比は、約0.7:1(脂質:アミノグリコシド)である。
【0051】
[0050] 本明細書に記載の方法に従って大規模に製造されたリポソームアミノグリコシド製剤は、約200nm~約500nm、例えば約200nm~約400nm(例えば約250nm~約350nm)の平均粒子サイズ(すなわち平均直径)を有するリポソーム粒子を含む。リポソーム直径は、市販の光散乱技術を使用して、例えばNicomp(商標)380サブミクロン粒子サイズ測定器(Nicomp、Santa Barbara、California USA)を
使用した準弾性光散乱により測定され得る。
【0052】
[0051] 以下の実施例を参照することにより、本発明をさらに説明する。しかしながら、これらの実施例は、上述の実施形態および態様と同様に例示であり、決して本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【実施例0053】
実施例1:リポソームアミカシンの製造プロセスおよびプロセス制御
[0052] 3種の滅菌溶液ストリームの調製、Tコネクタ注入モジュールを介した適切な流速での脂質およびアミカシン硫酸塩ストリームの混合、滅菌透析(反応)容器での封入されたアミカシン硫酸塩を含むリポソームを含有する組み合わされた脂質-アミカシン硫酸塩ストリームの収集、透析容器への適切な流速での1.5%塩化ナトリウム水溶液のストリームの添加、続いて得られたリポソーム分散液の透析(洗浄を含む)および濃縮による最終生成物の形成を含む無菌プロセスを使用して、リポソームアミカシン硫酸塩の製造を行った。
【0054】
a)溶液調製:十分な量の以下の3種の溶液を調製した。
アミカシン硫酸塩溶液:注射用水(WFI)中のアミカシン硫酸塩、pHは水酸化ナトリウ
ムで6.6~6.8に調整。
脂質溶液:エタノール中のDPPC/コレステロール(2:1w/w)。
1.5%塩化ナトリウム溶液:WFI中の1.5%塩化ナトリウム、pHは6.6~6.8に調整。
溶液は調製から24時間以内に使用されなければならない。
【0055】
b)注入/最初の濃縮:アミカシン硫酸塩溶液および脂質溶液を温め、別個の滅菌フィルタに通してから、制御された添加速度でインラインTコネクタ注入モジュールに流した。混合されたストリームを、事前に滅菌された反応容器内に収集した。同時に、1.5%塩化ナトリウム水溶液を滅菌フィルタに通し、適切な流速で反応容器内にストリームとして導入した。この段階で、アミカシン封入のレベルに関して溶液をサンプリングすることができる。
【0056】
c)透析:透析を行った。この工程は、バルク溶液からエタノールを除去し、いかなる「捕捉されていない」または遊離したアミカシン硫酸塩を洗い流すように作用する。
【0057】
d)最後の濃縮:プロセス中の試験の結果を使用して、バルク溶液を適切なアミカシン硫酸塩濃度レベルまで濃縮した。濃縮が完了した後、アミカシン硫酸塩濃度およびL/D比に関する確認試験を行うことができる。
【0058】
表1は、実施例1の一般的方法に従って行われた実験(A)および(B)を説明している。(A)では、3/8”Tコネクタ注入モジュールを使用した。(B)では、3/16”Tコネクタ注入モジュールを使用した。
【0059】
【0060】
追加の実験において、全般的に実施例1のプロセスに従って、脂質およびアミカシンストリーム速度(流速)を変化させ、得られたリポソーム製剤中の脂質およびアミカシン濃度を測定した。各実験におけるL/D比を計算し、結果を
図2に示す。結果は、好ましいL/D比を達成するための最適な相対的脂質/アミカシン流速の指針を提供する。
*******
【0061】
[0053] 本出願全体を通して引用される全ての文献、特許、特許出願、刊行物、製品説明およびプロトコルは、参照により全ての目的においてその全体が本明細書に組み込まれる。
【0062】
[0054] 本明細書において例示および議論される実施形態は、本発明を作製および使用するための本発明者らが知る最善の手法を当業者に教示することのみを意図する。上記教示に照らして当業者に理解されるように、本発明から逸脱せずに本発明の上述の実施形態の修正および変型が可能である。したがって、本発明は、特許請求およびその均等物の範囲内で、具体的に説明されたものとは異なる様式で実践され得ることを理解されたい。