(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075618
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】CAS9リボ核タンパク質を使用したノックアウト初代および増殖ヒトNK細胞の生成
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20240528BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240528BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240528BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240528BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240528BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240528BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
C12N15/09 110
A61P35/00
A61P35/02
A61K48/00
A61K35/17
C12N5/0783
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024034817
(22)【出願日】2024-03-07
(62)【分割の表示】P 2020564266の分割
【原出願日】2019-05-16
(31)【優先権主張番号】62/672,368
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515041446
【氏名又は名称】リサーチ インスティテュート アット ネイションワイド チルドレンズ ホスピタル
【氏名又は名称原語表記】RESEARCH INSTITUTE AT NATIONWIDE CHILDREN’S HOSPITAL
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】リー,ディーン アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ナエイミ カラロウディ,メイサム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】NK細胞を遺伝子操作するための組成物および方法を提供する。
【解決手段】NK細胞を遺伝子改変する方法であって、a)標的DNA配列に特異的なガイドRNA(gRNA)を得ることと、b)エレクトロポレーションを介して、標的NK細胞に、前記NK細胞のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体化したクラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas9)を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体を導入することと、を含む、方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NK細胞を遺伝子改変する方法であって、
a)標的DNA配列に特異的なガイドRNA(gRNA)を得ることと、
b)エレクトロポレーションを介して、標的NK細胞に、前記NK細胞のゲノムDNA
内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体
化したクラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas9)を含むリボ核タ
ンパク質(RNP)複合体を導入することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記NK細胞の前記ゲノムが、1つ以上の塩基対の挿入もしくは欠失によって、異種D
NA断片(例えば、ドナーポリヌクレオチド)の挿入によって、内因性DNA断片の欠失
によって、内因性DNA断片の反転もしくは転座によって、またはこれらの組み合わせに
よって改変される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記NK細胞が、初代または増殖NK細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記初代NK細胞を、エレクトロポレーションの前に、IL-2の存在下で、2、3、
または4日間インキュベートする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記初代NK細胞を、エレクトロポレーションの前に、照射されたフィーダー細胞の存
在下で、4日間増殖させる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記改変NK細胞を、エレクトロポレーションの後に、照射されたmbIL-21発現
フィーダー細胞と共に増殖させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、36μMのcas9を200μMのcrRNAおよびTracerRNA
の溶液に希釈することによって、前記RNP複合体を形成することをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法によって改変された、NK細胞。
【請求項9】
形質転換成長因子β受容体2(TGFBR2)またはヒポキサンチンホスホリボシルト
ランスフェラーゼ1(HPRT1)をコードする遺伝子のノックアウトを含む、遺伝子改
変NK細胞。
【請求項10】
操作されたNK細胞を、それを必要とする対象に養子移植する方法であって、
a)改変される標的NK細胞を得ることと、
b)標的DNA配列に特異的なgRNAを得ることと、
c)エレクトロポレーションを介して、前記標的NK細胞に、前記標的NK細胞のゲノ
ムDNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNA
と複合体化したクラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas9)を含む
RNP複合体を導入して、操作されたNK細胞を生成することと、
d)前記操作されたNK細胞を前記対象に移植することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記対象が、癌を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記NK細胞が、エクスビボで改変され、かつ改変後に前記対象に移植される初代NK
細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記NK細胞が、自己NK細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記NK細胞が、同種異系ドナー源由来である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記NK細胞を、前記対象に投与する前に、照射されたmbIL-21発現フィーダー
細胞と共に増殖させる、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記対象への前記NK細胞の移植後に、前記NK細胞を、IL-21または照射された
mbIL-21発現フィーダー細胞の投与を介して、前記対象において増殖させる、請求
項10に記載の方法。
【請求項17】
前記RNP複合体が、前記TGFRB2またはHPRT1遺伝子を標的にする、請求項
10に記載の方法。
【請求項18】
対象において癌を治療する方法であって、前記対象に、TGFBR2遺伝子のノックア
ウトを含むように改変されたNK細胞を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
癌免疫療法は、近年進歩している。遺伝子改変キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、
癌免疫療法で正常に展開された操作された免疫細胞の優れた例である。これらの細胞は、
最近、CD19+B細胞悪性腫瘍に対する治療のためにFDAによって承認されたが、こ
れまでのところ、成功は、少数の標的化可能な抗原を有する疾患に限定され、そのような
限られた抗原レパートリーを標的にすることは、免疫逃避によって失敗する傾向がある。
さらに、CAR T細胞は、同種異系T細胞によって引き起こされる移植片対宿主病のリ
スクのために、自己T細胞の使用に焦点が当てられてきた。対照的に、NK細胞は、抗原
非依存的な様式で腫瘍標的を死滅させることができ、移植片対宿主病(GVHD)を引き
起こさないため、癌免疫療法の優れた候補となる。
【0002】
CRISPR/Cas9技術は、最近、免疫細胞の操作に使用されているが、プラスミ
ドでNK細胞を遺伝的に再プログラムすることは、常に困難であった。これは、レンチウ
イルス形質導入およびレトロウイルス形質導入などのDNA依存的な様式での導入遺伝子
の送達は、実質的な手順関連NK細胞アポトーシスを引き起こし、遺伝子操作されたNK
細胞の産生を限定するため、困難であった。NK細胞を遺伝子操作する新しい方法が、必
要とされる。
【発明の概要】
【0003】
遺伝子改変NK細胞に関連する方法および組成物が、開示される。
【0004】
一態様では、NK細胞(例えば、初代または増殖NK細胞など)を遺伝子改変する方法
が本明細書に開示され、この方法は、NK細胞の標的DNA配列に特異的なガイドRNA
(gRNA)(例えば、形質転換成長因子-β受容体2(TGFBR2)またはヒポキサ
ンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT1)など)を得ることと、b)エ
レクトロポレーションを介して、標的NK細胞に、NK細胞のゲノムDNA内の標的配列
にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体化したクラス
2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas9)を含むリボ核タンパク質(R
NP)複合体を導入することと、を含む。
【0005】
また、任意の先行する態様の方法であって、NK細胞のゲノムが、1つ以上の塩基対の
挿入もしくは欠失によって、異種DNA断片(例えば、ドナーポリヌクレオチド)の挿入
によって、内因性DNA断片の欠失によって、内因性DNA断片の反転もしくは転座によ
って、またはこれらの組み合わせによって改変される方法も、本明細書に開示される。
【0006】
一態様では、任意の先行する態様のNK細胞を遺伝子改変する方法であって、NK細胞
(例えば、初代または増殖NK細胞)が、形質導入(エレクトロポレーションなど)の前
の4、5、6、または7日間、IL-2および/または照射されたフィーダー細胞の存在
下でインキュベートされる方法が、本明細書に開示される。
【0007】
また、任意の先行する態様のNK細胞を遺伝子改変する方法であって、エレクトロポレ
ーション後に、照射された膜結合インターロイキン-21(mbIL-21)発現フィー
ダー細胞と共に、改変NK細胞を増殖することをさらに含む方法も、本明細書に開示され
る。
【0008】
一態様では、任意の先行する態様の方法で作製される改変NK細胞が、本明細書に開示
される。一態様では、改変NK細胞は、形質転換成長因子-β受容体2(TGFBR2)
またはヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT1)をコードする
遺伝子のノックアウトを含むことができる。
【0009】
また、癌を有する対象に、任意の先行する態様の改変NK細胞を投与することを含む、
癌を治療する方法も、本明細書に開示される。
【0010】
一態様では、操作されたNK細胞を、それを必要とする対象に養子移植する方法が本明
細書に開示され、当該方法は、a)改変される標的NK細胞(初代NK細胞または増殖N
K細胞など)を得ることと、b)標的DNA配列に特異的なgRNAを得ることと、c)
エレクトロポレーションを介して、標的NK細胞に、標的NK細胞のゲノムDNA内の標
的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/Cas gRNAと複合体化したク
ラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(CAS9)を含むRNP複合体を導
入して、操作されたNK細胞を生成することと、d)操作されたNK細胞を対象に移植す
ることと、を含む。
【0011】
また、操作されたNK細胞を、それを必要とする対象に養子移植する方法も本明細書に
開示され、NK細胞は、初代NK細胞(例えば、自己NK細胞、または同種異系ドナー源
由来のNK細胞など)であり、エクスビボで改変され、そして改変後に対象に移植される
。
【0012】
一態様では、操作されたNK細胞を、任意の先行する態様の操作されたNK細胞を必要
とする対象に養子移植する方法が本明細書に開示され、NK細胞は、対象に改変NK細胞
を投与する前、投与すると同時に、もしくは投与した後に、照射されたmbIL-21発
現フィーダー細胞と共に、またはIL-21の投与と共に増殖される。
【0013】
一態様では、操作されたNK細胞を、それを必要とする対象に養子移植する方法が本明
細書に開示され、養子移植された改変NK細胞を受ける対象は、癌を有する。
【0014】
本明細書に組み込まれ、かつその一部を構成する添付の図面は、一部の実施形態を例示
し、また説明と共に、開示される組成物および方法を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】EN-138プログラムを使用したNK細胞におけるsiRNAおよびプラスミドDNA発現GFPのエレクトロポレーション効率を示す。ここで分かるように、NK細胞生存率は77.5%であり、生細胞の35%がGFP陽性であった。
【
図2】エレクトロポレーション最適化のために試験された16個のプログラム(DN-100)のうちの別の1つの生存率および効率を示す。
【
図3】消費(a)初代NK細胞における、(b)T7E1変異アッセイによって測定した、Cas9/RNP媒介性TGFBR2ノックアウトを示す。T7E1酵素は、ミスマッチDNAを認識し、切断する。各小さなバンド(青い矢印)は、インデルを担持する消化されたDNA断片を表す。
【
図4】T7E1変異アッセイによって測定した、増殖NK細胞におけるCas9/RNP媒介性HPRT破壊を示す。
【
図5】RT-PCRを使用してCas9/RNP(gRNA1+gRNA2)によって導入されたCRISPR改変NK細胞におけるTGFBR2外部ドメインのmRNA発現レベルを示す。GAPDHを、内因性対照遺伝子として使用した。RNAレベルの低下は、TGFBR2遺伝子の破壊を示す。
【
図6A】Cas9/RNP改変細胞(gRNA1+gRNA2、gRNA2およびgRNA3)の細胞毒性アッセイが、細胞をTGFBで一晩インキュベートしても、DAOY細胞を溶解するそれらの能力が有意に低下しないことを示す。
【
図6B】非改変NK細胞と比較した場合、Cas9/RNP改変細胞(gRNA2およびgRNA3)は、TGFBに対して感受性が低いことを示す。
【
図7】SOCS3遺伝子のエクソン2およびSOCS3遺伝子のエクソン2を標的にするために使用したgRNAを示す。
【
図8】ノックアウトしたNK細胞におけるSocs3の相対正規化発現レベルを、野生型NKと比較して示す。
【
図9A-9D】SOCS3-KO NK細胞のより良好な増殖および細胞毒性を示す。
図9Aは、AMLに対するSOCS3-KO NK細胞のIncucyte結果を示す。
図9Bおよび9Cは、DAOY細胞(9B)および神経芽細胞腫の細胞株NB1643(9C)に対する3ドナーからの細胞毒性の結果を示す。
図9Dは、
図9Bおよび
図9Cにおける、各細胞株の実際の死細胞数および処理条件を示す。
【
図10】NK細胞の増殖に対するSOCS3 KOの効果を示す増殖分析を示す。
【
図11】野生型およびCD38ノックアウトNK細胞でのCD38の発現を示す。
【
図12】ダラツムマブ媒介フラトリサイドに対する耐性を示す。
【
図13】Cas9/RNPプラットフォームが、NK細胞内のAAVS1遺伝子座を正常に標的にすることを示す。
【
図14】PCRを使用して評価した、ヒト初代NK細胞のAAVS1遺伝子座へのmCherryレポーター遺伝子の組み込みを示す。
【
図15】フローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡を使用して調べた、増殖および選別後のmCherryの安定した遺伝子発現を示す。*結果は、12個の設計されたAAV構築物のうち2個を表す。
【
図16】フローサイトメトリーを使用して評価した、異なる培養条件を使用したヒト初代NK細胞の増殖および選別後のmCherryの安定した遺伝子発現を示す。初代NK細胞をCAS9/RNPでエレクトロポレーションし、300,000MOIのAAV6 SS800-mCherryで形質導入し、RPMI培地+ウシ胎仔血清(FBS)または無血清AIMV培地中で培養した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法を開示および説明する
前に、それらは、特に明記しない限り、特定の合成方法または特定の組換えバイオテクノ
ロジー方法に限定されず、特に明記しない限り、特定の試薬に限定されず、当然のことな
がら、異なる場合があることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定
の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことも
理解されたい。
【0017】
A.定義
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「1つの」(「a」
、「an」、および「the」)は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示
対象を含む。したがって、例えば、「医薬担体」への言及は、2つ以上のそのような担体
の混合物、およびこれに類するものを含む。
【0018】
本明細書では、範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値
まで、のように表現することができる。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態
は、ある特定の値から、および/または他の特定の値まで、を含む。同様に、値が近似値
として表現される場合、先行詞の「約」を使用することによって、特定の値は別の実施形
態を形成することが理解されよう。さらに、範囲の各々の終点は、その他の終点と関連し
て、およびその他の終点とは独立して、の両方で有意であることが理解されよう。本明細
書に開示されるいくつかの値が存在し、各値はまた、値自体に加えて、その特定の値を「
約」として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場
合、次いで「約10」も開示される。当業者によって適切に理解されるように、値がある
値「以下」であることが開示される場合、「その値以上」およびそれらの値の間の可能な
範囲も開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「10以下
」ならびに「10以上」も開示される。また、本出願全体にわたって、データは、いくつ
かの異なる形式で提供され、このデータは、終点および始点、ならびにデータポイントの
任意の組み合わせの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータポイント「10
」および特定のデータポイント15が開示される場合、10と15の間に加えて、10お
よび15超、10および15以上、10および15未満、10および15以下、および1
0および15に等しいが開示されると見なされることが理解される。また、2つの特定の
ユニット間の各ユニットも開示されることが理解される。例えば、10および15が開示
される場合、11、12、13、および14も開示される。
【0019】
本明細書および後続の特許請求の範囲では、以下の意味を有するべく定義されたいくつ
かの用語を参照されたい。
【0020】
「任意選択的」または「任意選択的に」とは、後で説明する事象または状況が生じる場
合があり、または生じない場合があることを意味し、説明は、当該事象または状況が生じ
る事例および生じない事例を含む。
【0021】
「プライマー」は、ある種の酵素マニピュレーションを支持することができ、酵素マニ
ピュレーションを生じることができるように標的核酸とハイブリダイズすることができる
プローブのサブセットである。プライマーは、酵素マニピュレーションを妨げない、当該
技術分野で入手可能なヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体または類似体の任意の組み
合わせから作製することができる。
【0022】
「プローブ」は、典型的には、例えばハイブリダイゼーションを通して、配列特異的な
様式で標的核酸と相互作用することができる分子である。核酸のハイブリダイゼーション
は、当該技術分野で十分に理解され、かつ本明細書で論じられる。典型的には、プローブ
は、当該技術分野で入手可能なヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体または類似体の任
意の組み合わせから作製することができる。
【0023】
特定のRNAを「コードする」DNA配列は、RNAに転写されるDNA核酸配列であ
る。DNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されたRNA(mRNA)をコードし
てもよく(したがって、DNAおよびmRNAはともにタンパク質をコードする)、また
はDNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されないRNA(例えば、tRNA、r
RNA、マイクロRNA(miRNA)、「非コード」RNA(ncRNA)、ガイドR
NAなど)をコードしてもよい。
【0024】
「タンパク質コード配列」または特定のタンパク質またはポリペプチドをコードする配
列は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合、mRNAに転写され、(DNAの場合)
、かつインビトロまたはインビボでポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸配
列である。コード配列の境界は、5’末端(N末端)での開始コドンおよび3’末端(C
末端)での翻訳停止ナンセンスコドンによって決定される。コード配列としては、原核生
物または真核生物mRNA由来のcDNA、原核生物または真核生物DNA由来のゲノム
DNA配列、および合成核酸を挙げることができるが、これらに限定されない。転写終結
配列は、通常、コード配列の3’に位置する。
【0025】
本明細書で使用される場合、核酸、ポリペプチド、細胞、または生物に適用される「天
然に存在する」または「未改変」または「野生型」という用語は、天然に見出される核酸
、ポリペプチド、細胞、または生物を指す。例えば、自然界の供給源から単離することが
でき、かつ実験室内でヒトによって意図的に改変されていない生物(ウイルスを含む)中
に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、野生型である(および天然に存
在する)。
【0026】
「対象への投与」には、対象に薬剤を導入または送達する任意の経路が含まれる。投与
は、経口、局所、静脈内、皮下、経皮(transcutaneous)、経皮(tra
nsdermal)、筋肉内、関節内、非経口、動脈内、皮内、心室内、頭蓋内、腹腔内
、病巣内、鼻腔内、直腸、膣、吸入による、移植リザーバー経由、非経口(例えば、皮下
、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、腹腔内、肝臓内、病巣内、および
頭蓋内注射または注入技術)、ならびにこれに類するものを含む、任意の好適な経路によ
って実施することができる。本明細書で使用される場合、「同時投与(concurre
nt administration)」、「組み合わせ投与(administrat
ion in combination)」、「同時投与(simultaneous
administration)」、または「同時に投与する(administere
d simultaneously)」は、化合物が、時間的に同じ時点で投与されるか
、または本質的に互いに直後に投与されることを意味する。後者の場合、2つの化合物は
、観察された結果が、時間的に同じ時点で投与された場合に得られる結果と区別できない
ような十分近い時間に投与される。「全身投与」とは、例えば、循環系またはリンパ系へ
の入口を通して、対象の身体の広範な領域(例えば、身体の50%超の領域)に薬剤を導
入または送達する経路を介して、対象に薬剤を導入または送達することを指す。対照的に
、「局所投与」は、投与点の領域またはそれに直接隣接する領域に薬剤を導入または送達
し、治療上有意な量で薬剤を全身的に導入しない経路を介して、対象に薬剤を導入または
送達することを指す。例えば、局所投与される薬剤は、投与点の局所的な近傍で容易に検
出可能であるが、対象の身体の遠位部分では検出不能であるか、または無視できる量で検
出可能である。投与には、自己投与および他者による投与が含まれる。
【0027】
薬剤の「有効量」とは、所望の効果を提供するのに十分な量の薬剤を指す。「有効」で
ある薬剤の量は、対象の年齢および一般状態、特定の薬剤(複数可)、ならびにこれに類
するものなどの多くの要因に応じて、対象によって異なるであろう。したがって、定量化
された「有効量」を指定することは必ずしも可能ではない。しかしながら、任意の対象の
場合における適切な「有効量」は、日常的な実験を使用して当業者によって決定されても
よい。また、本明細書で使用される場合、かつ特に明記しない限り、薬剤の「有効量」と
は、治療上有効量および予防上有効量の両方をカバーする量も指すことができる。治療効
果を達成するのに必要な薬剤の「有効量」は、対象の年齢、性別、および体重などの要因
に従って変化する場合がある。投与計画は、最適な治療応答を提供するように調整するこ
とができる。例えば、いくつかに分割された用量を毎日投与してもよく、または治療状況
の緊急性によって示されるように、用量を比例して減らしてもよい。
【0028】
「薬学的に許容される」構成成分は、生物学的または他の理由で望ましくないものでは
ない構成成分、すなわち、著しく望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、また
はそれが含有される製剤の他の構成成分のいずれかと有害な様式で相互作用することなく
、本発明の医薬製剤に組み込まれ、かつ本明細書に記載のように対象に投与されてもよい
構成成分を指すことができる。ヒトへの投与に関して使用される場合、この用語は、一般
に、構成成分が必要とされる毒性試験および製造試験の基準を満たしている、またはそれ
が、米国食品医薬品局によって作成された不活性成分ガイドに含まれていることを意味す
る。
【0029】
「薬学的に許容される担体」(「担体」と称されることがある)は、一般に安全かつ無
毒の薬学的組成物または治療的組成物の調製において有用な担体または賦形剤を意味し、
また獣医学的および/またはヒトの薬学的使用または治療的使用が許容される担体を含む
。「担体」または「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝食塩水、水、エ
マルジョン(油/水もしくは水/油エマルジョンなど)、および/または様々な種類の湿
潤剤を含むことができるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「担体
」という用語は、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、脂質
、安定剤、または医薬製剤で使用するために当該技術分野で周知の材料、および本明細書
にさらに記載される材料を包含するが、これらに限定されない。
【0030】
「薬理学的活性」(または単に「活性」)は、「薬理学的活性」誘導体または類似体に
おいて、親化合物と同じ種類の薬理学的活性を有し、かつ程度がほぼ同等な誘導体または
類似体(例えば、塩、エステル、アミド、複合体、代謝産物、異性体、断片など)を指す
ことができる。
【0031】
「治療剤」は、有益な生物学的効果を有する任意の組成物を指す。有益な生物学的効果
としては、治療効果、例えば、障害または他の望ましくない生理学的状態の治療、および
予防効果、例えば、障害または他の望ましくない生理学的状態(例えば、非免疫原性癌)
の予防の両方が挙げられる。これらの用語はまた、本明細書に具体的に言及される有益な
薬剤の薬学的に許容される薬理学的に活性な誘導体を包含し、塩、エステル、アミド、前
駆薬剤、活性代謝産物、異性体、断片、類似体、およびこれに類するものを含むが、これ
らに限定されない。「治療剤」という用語が使用される場合、または特定の薬剤が具体的
に特定される場合、この用語は、薬剤自体、ならびに薬学的に許容される薬理学的に活性
な塩、エステル、アミド、前駆薬剤、複合体、活性代謝産物、異性体、断片、類似体など
を含むことを理解されたい。
【0032】
組成物(例えば、薬剤を含む組成物)の「治療上有効量」または「治療上有効用量」は
、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。一部の実施形態では、所望の治療結果
は、I型糖尿病の制御である。一部の実施形態では、所望の治療結果は、肥満の制御であ
る。所与の治療剤の治療上有効量は、典型的には、治療される障害または疾患の種類およ
び重症度、ならびに対象の年齢、性別、および体重などの要因に関して異なるであろう。
この用語はまた、疼痛緩和などの所望の治療効果を促進するのに有効な、治療剤の量、ま
たは治療剤の送達の速度(例えば、経時的な量)を指すこともできる。正確な所望の治療
効果は、治療される状態、対象の耐容性、投与される薬剤および/または薬剤製剤(例え
ば、治療剤の効力、製剤中の薬剤の濃度、およびこれに類するもの)、ならびに当業者に
よって理解される様々な他の因子に従って異なるであろう。場合によっては、所望の生物
学的応答または医学的応答は、数日、数週間、または数年にわたって、対象に対して組成
物の複数の用量を投与した後に達成される。
【0033】
本出願全体を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物全体の開示は、本出
願に関係する技術水準をより完全に説明するために参照により本出願に援用される。開示
される参考文献はまた、参考文献に依る文章で論じられ、それらに含まれる材料について
、個別にかつ具体的に参照により本明細書に援用される。
【0034】
B.NK細胞を遺伝子改変する方法
プラスミドを用いてNK細胞を遺伝的に再プログラムすることは、レンチウイルス形質
導入およびレトロウイルス形質導入などのDNA依存的な様式での導入遺伝子送達が、実
質的な手順関連NK細胞アポトーシスを引き起こし、遺伝子操作されたNK細胞の産生を
限定することから、常に困難であった。エンドヌクレアーゼリボ核タンパク質複合体(例
えば、Cas9/RNPなど)を利用してNK細胞を再プログラムする(すなわち、操作
するまたは改変する)、初代および増殖ヒトNK細胞のDNAを含まないゲノム編集を使
用する方法が、本明細書に記載される。
【0035】
エンドヌクレアーゼ/RNP(例えば、Cas9/RNP)は、CRISPR遺伝子座
と複合体化した3成分性の組換えエンドヌクレアーゼタンパク質(例えば、Cas9エン
ドヌクレアーゼ)からなる。CRISPR遺伝子座と複合体化したエンドヌクレアーゼは
、CRISPR/CasガイドRNAと称することができる。CRISPR遺伝子座は、
標的配列と複合体化した相補的反復RNA(crRNA)およびトランス相補的反復RN
A(tracrRNA)にハイブリダイズすることができるRNAからなる合成単一ガイ
ドRNA(gRNA)を含む。したがって、CRISPR/CasガイドRNAは、細胞
のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする。場合によっては、クラス2 CRI
SPR/Casエンドヌクレアーゼは、II型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ
である。場合によっては、クラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼは、Ca
s9ポリペプチドであり、対応するCRISPR/CasガイドRNAは、Cas9ガイ
ドRNAである。これらのCas9/RNPは、機能複合体としてのそれらの送達に起因
して、外来DNAに依存したアプローチと比較して、より高い効率でゲノム標的を切断す
ることができる。加えて、細胞からのCas9/RNPの迅速なクリアランスは、アポト
ーシスの誘導などのオフターゲット効果を低減することができる。したがって、一態様で
は、NK細胞を遺伝子改変する方法が本明細書に開示され、NK細胞の標的DNA配列に
特異的なガイドRNA(gRNA)を得ることと、b)NK細胞のゲノムDNA内の標的
配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体化したク
ラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas9)を含むリボ核タンパク質
(RNP)複合体を、標的NK細胞に形質導入する(例えば、エレクトロポレーションを
介して導入する)ことと、を含む。
【0036】
Cas9ヌクレアーゼ活性を標的部位に標的化し、またドナープラスミドを切断して、
ドナー導入遺伝子の宿主DNAへの組み換えを可能にするために、crisprRNA(
crRNA)を使用することが理解され、本明細書で企図される。場合によっては、cr
RNAをtracrRNAと組み合わせて、ガイドRNA(gRNA)を形成する。開示
されるプラスミドは、AAVS1と称される、ヒト染色体19上のタンパク質ホスファタ
ーゼ1の調節サブユニット12C(PPP1R12C)遺伝子のイントロン1を、導入遺
伝子の組み込みの標的部位とした、AAV組み込みを使用する。この遺伝子座は、「セー
フハーバー遺伝子」であり、多くの細胞型において安定した長期の導入遺伝子発現を可能
にする。PPP1R12Cの破壊は、いかなる既知の疾患とも関連しないため、AAVS
1遺伝子座は、導入遺伝子の標的化のためのセーフハーバーと見なされることが多い。A
AVS1部位が標的位置として使用されているため、CRSPR RNA(crRNA)
は、当該DNAを標的にしなければならない。ここで、開示されるプラスミドで使用され
るガイドRNAは、GGGGCCACTAGGGACAGGAT(配列番号9)、または
その任意の10ヌクレオチドのセンスもしくはアンチセンスの連続した断片を含む。AA
VS1は、本明細書で例示的な目的のために使用されるが、他の「セーフハーバー遺伝子
」を、同等の結果で使用することができ、またトランスフェクトされる特定の細胞型また
は導入遺伝子を考慮してより適切であれば、AAVS1に対して置換することができるこ
とが理解され、本明細書で企図される。他のセーフハーバー遺伝子の例としては、C-C
ケモカイン受容体5型(CCR5)、ROSA26遺伝子座、およびTRAC、が挙げら
れるが、これらに限定されない。
【0037】
標的ゲノムに送達されるドナー導入遺伝子構築物のサイズには、サイズ制限が存在する
可能性があることが理解され、本明細書で企図される。導入遺伝子の許容サイズを増加さ
せる1つの方法は、典型的に使用されるStreptococcus pyogenes
(SpCas9)のCas9を、異なる細菌源からの合成Cas9またはCas9に交換
することによって、追加の余地を生成することである。Cas9の置換を使用して、標的
特異性を増やすこともできるため、gRNAを使用する必要がより少なくなる。したがっ
て、例えば、Cas9は、Staphylococcus aureus(SaCas9
)、Acidaminococcus属種(AsCpf1)、Lachnospirac
ase bacterium(LbCpf1)、Neisseria meningit
idis(NmCas9)、Streptococcus thermophilus(
StCas9)、Campylobacter jejuni(CjCas9)、強化S
pCas9(eSpCas9)、SpCas9-HF1、Fokl融合dCas9、増殖
Cas9(xCas9)、および/または触媒不活性Cas9(dCas9)、に由来す
ることができる。
【0038】
特定のCas9を使用すると、Cas9エンドヌクレアーゼ(または代替物)を使用し
て標的をスクリーニングするPAM配列を変えることができることが理解され、本明細書
で企図される。本明細書で使用される場合、好適なPAM配列は、NGG(SpCas9
PAM)NNGRRT(SaCas9 PAM)NNNNGATT(NmCAs9 P
AM)、NNNNRYAC(CjCas9 PAM)、NNAGAAW(St)、TTT
V(LbCpf1 PAMおよびAsCpf1 PAM);TYCV(LbCpf1 P
AMバリアントおよびAsCpf1 PAMバリアント)を含み、式中、Nは、任意のヌ
クレオチドとし;V=A、CまたはGとし;Y=CまたはTとし;W=AまたはTとし;
かつR=AまたはGとすることができる。
【0039】
RNP複合体を作製するために、crRNAおよびtracrRNAを、約50μM~
約500μM(例えば、50、60、70、80、90、100、125、150、17
5、200、225、250、275、300、325、35、375、400、425
、450、475、または500μM)、好ましくは100μM~約300μM、最も好
ましくは約200μMの濃度の1:1、2:1、1:2の比で、95℃で約5分間混合し
て、crRNA:tracrRNA複合体(すなわち、ガイドRNA)を形成することが
できる。次いで、crRNA:tracrRNA複合体は、Casエンドヌクレアーゼ(
例えば、Cas9)の最終希釈が約20μM~約50μM(例えば、21、22、23、
24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、3
7、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、また
は50μM)で、混合することができる。
【0040】
標的細胞中の標的配列に結合すると、CRISPR遺伝子座は、標的DNAに、1つ以
上の塩基対の挿入もしくは欠失の導入によって、異種DNA断片(例えば、ドナーポリヌ
クレオチド)の挿入によって、内因性DNA断片の欠失によって、内因性DNA断片の反
転もしくは転座によって、またはそれらの組み合わせによってゲノムを改変することがで
きる。したがって、相同組換えのためにDNAと組み合わせた場合、ノックアウトまたは
ノックインを生成するために、本開示の方法を使用することができる。本明細書では、エ
レクトロポレーションを介したCas9/RNPの形質導入は、NK細胞における遺伝子
改変の以前の制約を克服する容易かつ比較的効率的な方法であることが示される。
【0041】
本開示の方法は、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、T細胞、B細胞、マクロファー
ジ、線維芽細胞、骨芽細胞、肝細胞、神経細胞、上皮細胞、および/または筋肉細胞を含
む任意の細胞型で利用できることが理解され、本明細書で企図される。ヒトNK細胞は、
CD56またはCD16の発現およびT細胞受容体(CD3)の不在によって定義される
末梢血リンパ球のサブセットである。NK細胞は、主要組織適合複合体(MHC)のクラ
スI分子を欠く標的細胞を感知し、死滅させる。NK細胞活性化受容体には、とりわけ、
自然細胞毒性受容体(NKp30、NKp44およびNKp46)、ならびにレクチン様
受容体NKG2DおよびDNAM-1が含まれる。それらのリガンドは、ストレスを受け
た細胞、形質転換した細胞、または感染した細胞で発現されるが、正常細胞では発現され
ないため、正常細胞を、NK細胞殺傷に対して耐性にさせる。NK細胞の活性化は、キラ
ー免疫グロビン(Ig)様受容体(KIR)、NKG2A/CD94、TGFβ、および
白血球Ig様受容体-1(LIR-1)などの抑制性受容体を介して負に調節される。一
態様では、標的細胞は、ドナー源(例えば、養子移植療法のための同種異系ドナー源もし
くは自己ドナー源(すなわち、改変NK細胞の最終レシピエント)、NK細胞株(NK
RPMI8866、HFWT、K562、およびEBV-LCLを含むが、これらに限定
されない)などから、または初代NK細胞源もしくはNK細胞株に由来する増殖NK細胞
源からの初代NK細胞であり得る。
【0042】
NK細胞の形質導入の前に、NK細胞を、NK細胞の増殖に好適な培地中でインキュベ
ートすることができる。培養条件は、サイトカイン、抗体、および/またはフィーダー細
胞の添加を含むことができることが理解され、本明細書で企図される。したがって、一態
様では、NK細胞を遺伝子改変する方法であって、NK細胞の増殖を支持する培地中で細
胞を形質導入する前に、NK細胞を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、
12、13、または14日間インキュベートすることをさらに含み、培地が、サイトカイ
ン、抗体、および/またはフィーダー細胞をさらに含む、方法が、本明細書に開示される
。例えば、培地は、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、および/またはI
L-21を含むことができる。一態様では、培地はまた、抗CD3抗体を含むことができ
る。一態様では、フィーダー細胞は、NK細胞を刺激するフィーダー細胞から精製するこ
とができる。本明細書に開示される、特許請求される発明において使用するためのNK細
胞刺激フィーダー細胞は、照射された自己もしくは同種異系末梢血単核細胞(PBMC)
または照射されていない自己もしくはPBMC;RPMI8866;HFWT、K562
;膜結合IL-15および41BBL、もしくはIL-21、もしくはこれらの任意の組
み合わせでトランスフェクトされたK562細胞;あるいはEBV-LCL、のいずれか
とすることができる。一部の態様では、NK細胞フィーダー細胞は、IL-21、IL-
15、および/または41BBLの溶液と組み合わせて提供される。フィーダー細胞は、
1:2、1:1、または2:1の比率で、NK細胞の培養に播種することができる。培養
期間は、エレクトロポレーション後1~14日間(すなわち、1、2、3、4、5、6、
7、8、9、10、11、12、13、または14日間)、好ましくは3~7日間、最も
好ましくは4~6日間とすることができることが理解され、本明細書で企図される。
【0043】
初代NK細胞および増殖NK細胞のインキュベーション条件は、異なる場合があること
が理解され、本明細書で企図される。一態様では、エレクトロポレーション前の初代NK
細胞の培養は、培地、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-12、IL-15、IL
-18、および/またはIL-21など)、および/または抗CD3抗体を、5日間未満
(例えば、1、2、3、または4日間)含む。増殖NK細胞について、培養は、サイトカ
イン(例えば、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、および/またはIL-
21など)および/または抗CD3抗体に加えて、またはそれに代えて、NKフィーダー
細胞の存在下で(例えば、1:1の比率で)行うことができる。増殖NK細胞の培養は、
形質導入前に1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間行うことができる。
したがって、一態様では、NK細胞を遺伝子改変する方法が、本明細書に開示され、エレ
クトロポレーションの前に、初代NK細胞を、IL-2の存在下で4日間インキュベート
すること、またはエレクトロポレーションの前に、照射されたフィーダー細胞の存在下で
、増殖NK細胞を、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17
、18、19、20、21、22、23、24、30、36、42、48、54、60時
間、3、4、5、6、または7日間インキュベートすること、を含む。
【0044】
本開示の方法において、NK細胞を改変するために形質導入する方法が限定されること
が理解され、本明細書で企図される。それらの免疫機能により、NK細胞は、ウイルスお
よび細菌ベクター、ならびに当該ベクターによるNK細胞のアポトーシスの誘導に耐性が
ある。したがって、本方法以前は、NK細胞のCRISPR/Cas改変は成功していな
かった。ウイルスベクターに関する問題を回避するために、開示される方法は、エレクト
ロポレーションを使用して標的NK細胞を形質転換する。エレクトロポレーションは、細
胞に電場を印加して、細胞膜の透過性を増加させる技法である。電場の印加は、細胞膜を
横切る電荷勾配を引き起こし、細胞膜を横切って核酸などの電荷分子を引き出す。したが
って、一態様では、NK細胞を遺伝子改変する方法が本明細書に開示され、NK細胞の標
的DNA配列に特異的なガイドRNA(gRNA)を得ることと、b)NK細胞のゲノム
DNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAで
複合体化したクラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas9)を含むリ
ボ核タンパク質(RNP)複合体を、標的NK細胞にエレクトロポレーションを介して導
入することと、を含む。
【0045】
NK細胞の形質導入(例えば、エレクトロポレーション)後、改変NK細胞は、ようや
く、改変NK細胞を刺激するフィーダー細胞を含む培地で増殖させることができる。した
がって、改変細胞は、照射されたフィーダー細胞を使用してエレクトロポレーション後に
増殖することができるため、生存能および増殖可能性を保持する。本明細書に開示される
、特許請求される発明において使用するためのNK細胞刺激フィーダー細胞は、照射され
た自己もしくは同種異系末梢血単核細胞(PBMC)または照射されていない自己もしく
はPBMC;RPMI8866;HFWT、K562;膜結合IL-15、および41B
BL、もしくはIL-21、もしくはこれらの任意の組み合わせでトランスフェクトされ
たK562細胞;あるいはEBV-LCL、のいずれかとすることができる。一部の態様
では、NK細胞フィーダー細胞は、IL-21、IL-15、および/または41BBL
の溶液と組み合わせて提供される。フィーダー細胞は、1:2、1:1、または2:1の
比率で、NK細胞の培養に播種することができる。培養期間は、エレクトロポレーション
後1~14日間(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、
13、または14日間)、好ましくは3~7日間、最も好ましくは4~6日間とすること
ができることが理解され、本明細書で企図される。一部の態様では、改変NK細胞を培養
するための培地は、例えば、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、および/
またはIL-21などのサイトカインをさらに含むことができる。
【0046】
一態様では、NK細胞を遺伝子改変する開示された方法の1つの目的は、改変NK細胞
を生成することであることが理解され、本明細書において企図される。したがって、開示
される方法によって作製される改変NK細胞が、本明細書に開示される。
【0047】
上述のように、NK細胞活性化は、キラー免疫グロビン(Ig)様受容体(KIR)、
NKG2A/CD94、TGFβ、および白血球Ig様受容体-1(LIR-1)などの
抑制性受容体を介して負に調節される。標的の溶解を防止するには、1つの抑制性受容体
の関与で十分であり得る。したがって、NK細胞は、多くのストレス誘発リガンドを発現
し、かつMHCクラスIリガンドをほとんど発現しない細胞を、効率的に標的にする。T
GFβは、NK細胞の活性化および機能を阻害する主要な免疫抑制サイトカインである。
したがって、有利であることになるNK細胞の1つの改変は、NK細胞の負の調節が抑制
されるように、キラー免疫グロビン(Ig)様受容体(KIR)、NKG2A/CD94
、TGFβ、および白血球Ig様受容体-1(LIR-1)などの抑制性受容体の抑制で
あることが理解され、本明細書で企図される。かかる改変細胞は、NK細胞の添加で治療
される可能性がある任意の疾患または状態の免疫療法において、非常に有用であることに
なる。したがって、一態様では、形質転換成長因子β受容体2(TGFBR2)またはヒ
ポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT1)をコードする遺伝子の
ノックアウトを含む遺伝子改変NK細胞が、本明細書に開示される。
【0048】
本開示全体を通して指摘されるように、開示される改変NK細胞は、理想的には、改変
(すなわち、操作された)NK細胞を、それ必要とする対象に養子移植するなどの免疫療
法における使用に好適である。したがって、一態様では、操作されたNK細胞をそれを必
要とする対象に養子移植する方法が、本明細書に開示され、当該方法は、a)改変される
標的NK細胞を得ることと、b)標的DNA配列に特異的なgRNAを得ることと、c)
エレクトロポレーションを介して、標的NK細胞に、標的NK細胞のゲノムDNA内で標
的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/Cas gRNAと複合体化したク
ラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas9)を含むRNP複合体を導
入して、操作されたNK細胞を生成することと、d)操作されたNK細胞を対象に移植す
ることと、を含む。
【0049】
一態様では、本開示の免疫療法の方法で使用される改変NK細胞は、ドナー源(例えば
、養子移植療法のための同種異系ドナー源もしくは自己ドナー源(すなわち、改変NK細
胞の最終レシピエント)など、NK細胞株(NK RPMI8866;HFWT、K56
2、およびEBV-LCLを含むが、これらに限定されない)、または初代NK細胞源も
しくはNK細胞株に由来する増殖NK細胞の供与源からの初代NK細胞であり得る。初代
NK細胞を使用することができるため、NK細胞の開示された改変がエクスビボまたはイ
ンビトロで生じることができることが理解され、本明細書で企図される。
【0050】
NK細胞の形質導入後、改変NK細胞を、改変(すなわち、操作された)NK細胞を対
象に投与する前に増殖および刺激することができる。例えば、NK細胞を、それを必要と
する対象に養子移植する方法が本明細書に開示され、NK細胞を、対象に投与する前に照
射されたmbIL-21発現フィーダー細胞と共に増殖させる。一部の態様では、改変さ
れた(すなわち、操作された)NK細胞のeh刺激および増殖は、対象への改変NK細胞
の投与後または投与と同時に、インビボで生じる可能性があることが理解され、本明細書
で企図される。したがって、IL-21または照射されたmbIL-21発現フィーダー
細胞の投与を介して対象にNK細胞を移植した後で、対象においてNK細胞を増殖させる
免疫療法の方法が、本明細書に開示される。
【0051】
TGFβ経路を標的にすることにより、免疫細胞機能が増加することができることが示
されている。TGFβに結合するTGBR2の外部ドメインをコードする領域を、標的に
した。代表的な結果は、この遺伝子のmRNA発現レベルの有意な減少を示し、改変NK
細胞がTGFβに対して耐性になることをさらに実証する。したがって、RNP複合体が
TGFRB2またはHPRT1遺伝子を標的にする、免疫療法の方法が、本明細書に開示
される。
【0052】
開示される改変NK細胞および改変NK細胞の養子移植の方法は、癌に対する効果的な
免疫療法である可能であることが理解され、本明細書で企図される。本開示の方法および
組成物を使用して、癌などの未制御な細胞増殖が生じる任意の疾患を治療することができ
る。異なる種類の癌(cancers)の非限定的なリストは、以下の通りである:リン
パ腫(ホジキンおよび非ホジキン)、白血病、癌(carcinomas)、固形組織の
癌、扁平上皮細胞癌、腺癌、肉腫、神経膠腫、高悪性度神経膠腫、芽細胞腫、神経芽細胞
腫、形質細胞腫、組織球腫、黒色腫、腺腫、低酸素腫瘍、骨髄腫、AIDS関連リンパ腫
もしくは肉腫、転移性癌、または一般的な癌。
【0053】
治療するために開示される組成物を用いることができる代表的であるが、非限定的な癌
のリストは、以下の通りである:リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉
症、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱癌、脳癌、神経系癌、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮
細胞癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌などの肺癌、神経芽細胞腫/神経膠芽腫、卵巣癌
、皮膚癌、肝臓癌、黒色腫、口、咽頭、喉頭癌、および肺の扁平上皮細胞癌、子宮頸癌(
cervical cancer)、子宮頸癌(cervical carcinoma
)、乳癌、ならびに上皮癌、腎臓癌、泌尿生殖器癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、大腸癌、
造血癌、精巣癌、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、または膵臓癌。したがって、一態様では、
TGFBR2遺伝子のノックアウトを含むように改変されたNK細胞を対象に投与するこ
とを含む、対象における癌を治療する方法が、本明細書に開示される。
【0054】
「治療する」、「治療すること」、「治療」、およびそれらの文法的変形は、本明細書
で使用される場合、1つ以上の疾患または状態の強度または頻度、疾患または状態の症状
、あるいは疾患または状態の根本的な原因を、部分的または完全に防止、遅延、治癒、快
癒、緩和、軽減、変化、治療、寛解、改善、安定化、軽減、および/または低減すること
を、意図または目的とする組成物の投与を含む。本発明による治療は、防止的、予防的、
緩和的、または治療的に適用されてもよい。予防的治療は、発症前(例えば、癌の明らか
な兆候の前)、早期発症中(例えば、癌の初期の兆候および症状時)、または確立された
癌の発達後に対象に投与される。予防的投与は、感染症の症状の発現の前に、1日(数日
)から数年の間行うことができる。
【0055】
1.ハイブリダイゼーション/選択的ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションという用語は、典型的には、プライマーまたはプローブと遺伝
子などの、少なくとも2つの核酸分子間の、配列駆動性の相互作用を意味する。配列駆動
性の相互作用とは、2つのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体もしくはヌクレオチド
誘導体間で、ヌクレオチド特異的な様式で生じる相互作用を意味する。例えば、Cと相互
作用するG、またはTと相互作用するAは、配列駆動性の相互作用である。典型的には、
配列駆動性の相互作用は、ヌクレオチドのワトソン-クリック面またはフーグスティーン
面上で生じる。2つの核酸のハイブリダイゼーションは、当業者に既知のいくつかの条件
およびパラメータによって影響される。例えば、反応の塩濃度、pH、および温度は全て
、2つの核酸分子がハイブリダイズするかどうかに影響する。
【0056】
2つの核酸分子間の選択的ハイブリダイゼーションのパラメータは、当業者に既知であ
る。例えば、一部の実施形態では、選択的ハイブリダイゼーションの条件は、ストリンジ
ェントなハイブリダイゼーション条件として定義することができる。例えば、ハイブリダ
イゼーションのストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーションステップおよび洗浄ステ
ップのいずれかまたは両方の温度および塩濃度の両方によって制御される。例えば、選択
的ハイブリダイゼーションを達成するためのハイブリダイゼーションの条件は、Tm(分
子の半分がそれらのハイブリダイゼーションパートナーから解離する融解温度)より約1
2~25℃低い温度での高イオン強度溶液(6XSSCまたは6XSSPE)中のハイブ
リダイゼーション、続いて、洗浄温度がTmより約5℃~20℃低いように選択される温
度および塩濃度の組み合わせでの洗浄、を伴ってもよい。フィルタ上に固定化された参照
DNAの試料を目的の標識核酸にハイブリダイズし、次いで異なるストリンジェンシーの
条件下で洗浄する予備実験において、温度および塩条件を容易に経験的に決定する。ハイ
ブリダイゼーション温度は、典型的には、DNA-RNAおよびRNA-RNAハイブリ
ダイゼーションに対してより高い。上述のようにストリンジェンシーを達成するために、
または当該技術分野で知られているように、これらの条件を使用することができる。DN
Aに対する好ましいストリンジェントなハイブリダイゼーション条件:DNAハイブリダ
イゼーションを6XSSCまたは6XSSPE中で約68℃(水溶液中)にて、続いて6
8℃で洗浄することができる。所望により、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のストリ
ンジェンシーは、所望の相補性の程度が減少するにつれて、さらに、可変性が検索される
任意の領域のG-CまたはA-Tの豊富さに応じて、適宜に低減させることができる。同
様に、すべて当該技術分野で既知であるように、所望により、ハイブリダイゼーションお
よび洗浄のストリンジェンシーは、所望される相同性が増加するにつれて、さらに、高相
同性が所望される任意の領域のG-CまたはA-T豊富さに応じて、適宜に増加させるこ
とができる。
【0057】
選択的ハイブリダイゼーションを定義する別の方法は、他方の核酸に結合した核酸の一
方の量(パーセンテージ)を調べることによるものである。例えば、一部の実施形態では
、選択的ハイブリダイゼーション条件は、制限核酸の少なくとも約60、65、70、7
1、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84
、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、
98、99、100%が非制限核酸に結合されるときであることになる。典型的には、非
制限プライマーは、例えば、10または100または1000倍過剰である。この種類の
アッセイは、制限プライマーおよび非制限プライマーの両方が、例えば、それらのkdを
10倍もしくは100倍もしくは1000倍下回る、または核酸分子のうちの1つのみが
10倍もしくは100倍もしくは1000倍であるか、または一方もしくは両方の核酸分
子がそれらのkdを上回る条件下で実施することができる。
【0058】
選択的ハイブリダイゼーションを定義する別の方法は、ハイブリダイゼーションが所望
の酵素マニピュレーションを促進するために必要とされる条件下で、酵素的にマニピュレ
ートされるプライマーのパーセンテージを調べることによるものである。例えば、一部の
実施形態では、選択的ハイブリダイゼーションの条件は、プライマーの少なくとも約60
、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、
82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、9
5、96、97、98、99、100%が酵素マニピュレーションを促進する条件下で酵
素的にマニピュレートされるときであることになり、例えば、酵素操作がDNA伸長であ
る場合、選択的ハイブリダイゼーションの条件は、プライマー分子の少なくとも約60、
65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、8
2、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95
、96、97、98、99、100%が伸長されるときであることになる。また、好まし
い条件には、製造業者によって示唆される条件、またはマニピュレーションを行う酵素に
適切な当該技術分野で示された条件、も含まれる。
【0059】
正に相同性と同様に、2つの核酸分子間のハイブリダイゼーションのレベルを決定する
ための様々な方法が、本明細書に開示されていることが理解される。これらの方法および
条件は、2つの核酸分子間のハイブリダイゼーションの異なる割合を提供する場合がある
ことが理解されるものの、特に指示しない限り、いずれかの方法のパラメータを満たすこ
とは十分であろう。例えば、80%のハイブリダイゼーションが必要とされる場合、これ
らの方法のいずれか1つで必要なパラメータ内で、ハイブリダイゼーションが生じる限り
、本明細書に開示されているものと見なされる。
【0060】
組成物または方法が、いずれか集合的にまたは個別に、ハイブリダイゼーションを決定
するためのこれらの基準のいずれか1つを満たす場合、それが、本明細書に開示された組
成物または方法であることを当業者が理解することが理解される。
【0061】
2.核酸
核酸に基づく本明細書に開示される様々な分子が存在し、例えば、核酸(例えば、TG
FβR2をコードする核酸、またはTGFRβ2ノックアウトを作製するための本明細書
に開示される核酸のいずれか)、またはその断片、ならびに様々な機能性核酸が含まれる
。開示される核酸は、例えば、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド
代替物から作製されている。これらおよび他の分子の非限定的な例が、本明細書で論じら
れる。例えば、ベクターが細胞内で発現される場合、発現したmRNAは典型的にはA、
C、G、およびUから作製されていることが理解される。同様に、例えば、アンチセンス
分子が、例えば外因性送達を通して細胞または細胞環境に導入される場合、アンチセンス
分子が、細胞環境中のアンチセンス分子の分解を低減するヌクレオチド類似体から構成さ
れることが有利であることが理解される。
【0062】
a)ヌクレオチドおよび関連分子
ヌクレオチドは、塩基部分、糖部分、およびリン酸部分を含有する分子である。ヌクレ
オチドは、それらのリン酸部分および糖部分を通して、一緒に連結され、ヌクレオシド間
結合を生成することができる。ヌクレオチドの塩基部分は、アデニン-9-イル(A)、
シトシン-1-イル(C)、グアニン-9-イル(G)、ウラシル-1-イル(U)、お
よびチミン-1-イル(T)とすることができる。ヌクレオチドの糖部分は、リボースま
たはデオキシリボースである。ヌクレオチドのリン酸部分は、五価リン酸である。ヌクレ
オチドの非限定的な例は、3’-AMP(3’-アデノシン一リン酸)または5’-GM
P(5’-グアノシン一リン酸)であることになる。当該技術分野で入手可能であり、本
明細書で入手可能である、多種多様なこれらの種類の分子が存在する。
【0063】
ヌクレオチド類似体は、塩基、糖、またはリン酸部分のいずれかに、何らかの種類の改
変を含有するヌクレオチドである。ヌクレオチドに対する改変は、当該技術分野で周知で
あり、例えば、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、
キサンチン、ヒポキサンチン、および2-アミノアデニン、ならびに糖またはリン酸部分
における改変を含むことになる。当該技術分野で入手可能であり、本明細書で入手可能で
ある、多種多様なこれらの種類の分子が存在する。
【0064】
ヌクレオチド代替物は、ヌクレオチドと同様の機能特性を有するが、ペプチド核酸(P
NA)などのリン酸部分を含まない分子である。ヌクレオチド代替物は、ワトソン-クリ
ックまたはフーグスティーン様式で核酸を認識するが、リン酸部分以外の部分を通して一
緒に連結される分子である。ヌクレオチド代替物は、適切な標的核酸と相互作用するとき
に、二重らせん型構造に適合することができる。当該技術分野で入手可能であり、本明細
書で入手可能である、多種多様なこれらの種類の分子が存在する。
【0065】
他の種類の分子(複合体)をヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に連結して、例え
ば、細胞取り込みを増強することも可能である。複合体は、ヌクレオチドまたはヌクレオ
チド類似体に化学的に連結することができる。そのような複合体としては、コレステロー
ル部分などの脂質部分が挙げられるが、これらに限定されない(Letsinger e
t al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86,655
3-6556)。当該技術分野で入手可能であり、本明細書で入手可能である、多種多様
なこれらの種類の分子が存在する。
【0066】
ワトソン-クリック相互作用は、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオ
チド代替物のワトソン-クリック面との少なくとも1つの相互作用である。ヌクレオチド
、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド代替物のワトソン-クリック面は、プリン系
のヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド代替物のC2、N1、および
C6位、ならびにピリミジン系のヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチ
ド代替物のC2、N3、C4位を含む。
【0067】
フーグスティーン相互作用は、二重鎖DNAの主溝に曝されるヌクレオチドまたはヌク
レオチド類似体のフーグスティーン面上で起こる相互作用である。フーグスティーン面は
、プリンヌクレオチドのN7位およびC6位の反応性基(NH2またはO)を含む。
【0068】
b)配列
本明細書に開示されるシグナル伝達経路に関与するタンパク質分子、例えば、TGFβ
R2、に関連する様々な配列が存在し、これらの全ては、核酸によってコードされるか、
または核酸である。これらの遺伝子のヒト類似体、ならびに他の類似体、およびこれらの
遺伝子のアレル、ならびにスプライスバリアントおよび他の種類のバリアントの配列は、
Genbankを含む様々なタンパク質および遺伝子データベースで入手可能である。当
業者は、配列の不一致および相違を解析する方法、ならびに特定の配列に関連する組成物
および方法を、他の関連配列に対して調整する方法を理解している。プライマーおよび/
またはプローブは、本明細書に開示され当該技術分野で既知の情報を考慮して任意の所与
の配列について設計することができる。
【0069】
c)プライマーおよびプローブ
本明細書に開示されるTGFβR2および/またはHPRT1などの開示される核酸と
相互作用することができるプライマーおよびプローブを含む組成物が開示される。特定の
実施形態では、プライマーを使用して、DNA増幅反応を支持する。典型的には、プライ
マーは、配列特異的な様式で伸長することができるであろう。配列特異的な様式でのプラ
イマーの伸長は、プライマーがハイブリダイズするかもしくは別途会合する核酸分子の配
列および/または組成物が、プライマーの伸長によって産生される産物の組成物もしくは
配列を誘導または影響する任意の方法を含む。したがって、配列特異的な様式でのプライ
マーの伸長には、PCR、DNA配列決定、DNA伸長、DNA重合、RNA転写、また
は逆転写が含まれるが、これらに限定されない。配列特異的な様式でプライマーを増幅す
る技法および条件が好ましい。特定の実施形態では、プライマーは、PCRまたは直接配
列決定などのDNA増幅反応に使用される。特定の実施形態では、プライマーはまた、非
酵素技術を使用して伸長することができ、例えば、プライマーを伸長するために使用され
るヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、それらが化学反応して配列特異的な様式で
プライマーを伸長するように改変されることが理解される。典型的には、開示されるプラ
イマーは、開示される核酸もしくは核酸の領域でハイブリダイズするか、またはそれらは
、核酸の相補体もしくは核酸の領域の相補体とハイブリダイズする。
【0070】
特定の実施形態では、核酸と相互作用するためのプライマーもしくはプローブのサイズ
は、DNA増幅、またはプローブもしくはプライマーの単なるハイブリダイゼーションな
どのプライマーの所望の酵素マニピュレーションを支持する任意のサイズとすることがで
きる。典型的なプライマーまたはプローブは、少なくとも6、7、8、9、10、11、
12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、2
5、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38
、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、
52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、6
5、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78
、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、
92、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、
200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、
450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、
900、950、1000、1250、1500、1750、2000、2250、25
00、2750、3000、3500、または4000ヌクレオチド長になることになる
。
【0071】
他の実施形態では、プライマーまたはプローブは、6、7、8、9、10、11、12
、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、
26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、3
9、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52
、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、
66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、7
9、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92
、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、20
0、225、250、275、300、325、350、375、400、425、45
0、475、500、550、600、650、700、750、800、850、90
0、950、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500
、2750、3000、3500、または4000ヌクレオチド長以下とすることができ
る。
【0072】
TGFβR2およびHPRT1遺伝子のプライマーは、典型的には、TGFβR2およ
びHPRT1遺伝子の領域または完全な遺伝子を含有する増幅DNA産物を産生するため
に使用される。一般に、典型的には、この産物のサイズは、サイズが3ヌクレオチド以内
、または2ヌクレオチド以内、または1ヌクレオチド以内に正確に決定することができる
ようになるであろう。
【0073】
特定の実施形態では、この産物は、少なくとも20、21、22、23、24、25、
26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、3
9、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52
、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、
66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、7
9、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92
、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、20
0、225、250、275、300、325、350、375、400、425、45
0、475、500、550、600、650、700、750、800、850、90
0、950、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500
、2750、3000、3500、または4000ヌクレオチド長である。
【0074】
他の実施形態では、産物は、20、21、22、23、24、25、26、27、28
、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、
42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、5
5、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68
、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、
82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、9
5、96、97、98、99、100、125、150、175、200、225、25
0、275、300、325、350、375、400、425、450、475、50
0、550、600、650、700、750、800、850、900、950、10
00、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、30
00、3500、または4000ヌクレオチド長以下である。
【0075】
3.発現系
細胞に送達される核酸は、典型的には、発現制御系を含有する。例えば、ウイルスおよ
びレトロウイルス系における挿入遺伝子は、通常、所望の遺伝子産物の発現を制御するの
に役立つプロモーター、および/またはエンハンサーを含有する。プロモーターは、一般
に、転写開始部位に関して相対的に固定された位置にあるときに機能するDNAの配列(
複数可)である。プロモーターは、RNAポリメラーゼおよび転写因子の基本的な相互作
用に必要なコア要素を含有してもよく、また上流要素および応答要素を含有してもよい。
【0076】
a)ウイルスプロモーターおよびエンハンサー
哺乳動物宿主細胞内のベクターからの転写を制御する好ましいプロモーターは、様々な
供給源、例えば、ポリオーマ、シミアウイルス40(SV40)、アデノウイルス、レト
ロウイルス、B型肝炎ウイルス、および最も好ましくはサイトメガロウイルスなどのウイ
ルスのゲノムから、または異種哺乳動物プロモーター、例えば、ベータアクチンプロモー
ターから得られる場合がある。SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、SV
40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる(Fiers
et al.,Nature,273:113(1978))。ヒトサイトメガロウイ
ルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として好都合に得られる(G
reenway,P.J.et al.,Gene 18:355-360(1982)
)。当然のことながら、宿主細胞または関連種由来のプロモーターも、本明細書で有用で
ある。
【0077】
エンハンサーは、一般に、転写開始部位から一定距離になくても機能し、転写単位に対
して5’側(Laimins,L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sc
i.78:993(1981))または3’側(Lusky,M.L.,et al.,
Mol.Cell Bio.3:1108(1983))のいずれかとすることができる
DNAの配列を指す。さらに、エンハンサーは、イントロン内(Banerji,J.L
.et al.,Cell 33:729(1983))、およびコード配列自体内(O
sborne,T.F.,et al.,Mol.Cell Bio.4:1293(1
984))とすることができる。これらは、通常、長さが10~300bpで、シスで機
能する。エンハンサーは、近くのプロモーターからの転写を増加させるように機能する。
エンハンサーはまた、しばしば、転写の調節を媒介する応答エレメントを含有する。プロ
モーターは、転写の調節を媒介する応答エレメントも含有することができる。エンハンサ
ーは、しばしば、遺伝子の発現の調節を決定する。多くのエンハンサー配列は、現在、哺
乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、フェトプロテイン、およびインス
リン)から既知であるが、典型的には、一般的な発現用に真核生物細胞のウイルス由来の
エンハンサーを使用することになる。好ましい例は、複製起点の後期側のSV40エンハ
ンサー(100~270bp)、サイトメガロウイルスの初期プロモーターのエンハンサ
ー、複製起点の後期側のポリオーマのエンハンサー、およびアデノウイルスのエンハンサ
ーである。
【0078】
プロモーターおよび/またはエンハンサーは、それらの機能を引き起こす光または特定
の化学的事象のいずれかによって特異的に活性化され得る。系は、テトラサイクリンおよ
びデキサメタゾンなどの試薬によって、調節することができる。また、ガンマ線照射など
の照射への曝露、またはアルキル化の化学療法薬によって、ウイルスベクターの遺伝子発
現を増強する方法も存在する。
【0079】
特定の実施形態では、プロモーターおよび/またはエンハンサー領域は、転写される転
写単位の領域の発現を最大化するための構成的プロモーターおよび/またはエンハンサー
として作用することができる。特定の構築物では、プロモーターおよび/またはエンハン
サー領域は、特定の時間に特定の種類の細胞でのみ発現する場合であっても、全ての真核
生物の細胞型において活性である。この種類の好ましいプロモーターは、CMVプロモー
ター(650塩基)である。他の好ましいプロモーターは、SV40プロモーター、サイ
トメガロウイルス(全長プロモーター)、およびレトロウイルスベクターのLTRである
。
【0080】
全ての特定の調節エレメントは、クローニングすることができ、黒色腫細胞などの特定
の細胞型において選択的に発現される発現ベクターを構築するために使用することができ
ることが示されてきた。グリア線維酢酸タンパク質(GFAP)プロモーターは、グリア
起源の細胞で、遺伝子を選択的に発現するために使用されてきた。
【0081】
また、真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または有核細胞)で
使用される発現ベクターは、mRNAの発現に影響を及ぼし得る転写の終結に必要な配列
を含有してもよい。これらの領域は、組織因子タンパク質をコードするmRNAの非翻訳
部分において、ポリアデニル化セグメントとして転写される。3’非翻訳領域には、転写
終結部位も含まれる。転写単位は、ポリアデニル化領域も含有することが好ましい。この
領域の利点の1つは、転写ユニットが、mRNAのようにプロセシングおよび輸送される
可能性を増加させることである。発現構築物におけるポリアデニル化シグナルの同定およ
び使用は、十分に確立されている。相同的なポリアデニル化シグナルが、導入遺伝子構築
物に使用されることが好ましい。特定の転写単位において、ポリアデニル化領域は、SV
40初期ポリアデニル化シグナルに由来し、約400塩基からなる。また、転写単位は、
単独で、または上記配列と組み合わせて、構築物からの発現または構築物の安定性を改善
する、他の標準的な配列を含有することも好ましい。
【0082】
b)マーカー
ウイルスベクターは、マーカー産物をコードする核酸配列を含むことができる。このマ
ーカー産物を使用して、遺伝子が細胞に送達されているかどうか、そして送達されていた
ら発現されているかどうかを決定する。好ましいマーカー遺伝子は、β-ガラクトシダー
ゼをコードするE.Coli lacZ遺伝子、および緑色蛍光タンパク質である。
【0083】
一部の実施形態では、マーカーは、選択可能なマーカーであってもよい。哺乳動物細胞
に好適な選択可能なマーカーの例は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジン
キナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似体G418、ヒドロマイシン、およびピュー
ロマイシンである。このような選択可能なマーカーが哺乳動物宿主細胞に正常に移行され
ると、形質転換された哺乳動物宿主細胞は、選択圧下に置かれた場合、生存することがで
きる。選択的レジームには、広く使用される2つの異なるカテゴリが存在する。第1のカ
テゴリは、細胞の代謝、および補充培地から独立して成長する能力を欠く変異細胞株の使
用、に基づく。2つの例としては:CHO DHFR細胞およびマウスLTK細胞、があ
る。これらの細胞は、チミジンまたはヒポキサンチンなどの栄養素を添加せずに成長する
能力を欠いている。これらの細胞は、完全なヌクレオチド合成経路に必要な特定の遺伝子
を欠いているため、欠損したヌクレオチドが補充培地に提供されない限り、生存すること
はできない。培地を補充する代替手段は、それぞれの遺伝子を欠く細胞に、無傷のDHF
RまたはTK遺伝子を導入することで、したがって、それらの成長要件を変化させる。D
HFRまたはTK遺伝子で形質転換されなかった個々の細胞は、非補充培地において生存
することができないであろう。
【0084】
第2のカテゴリは、任意の細胞型で使用される選択スキームを指し、変異細胞株の使用
を必要としない優性選択である。これらのスキームは、典型的には、宿主細胞の成長を停
止するために薬物を使用する。新規遺伝子を有するそれらの細胞は、薬剤耐性を伝達する
タンパク質を発現することになり、選択で生き残るであろう。このような優性選択の例は
、薬物のネオマイシン(Southern P.and Berg,P.,J.Mole
c.Appl.Genet.1:327(1982))、ミコフェノール酸(Mulli
gan,R.C.and Berg,P.Science 209:1422(1980
))、またはハイグロマイシン(Sugden,B.et al.,Mol.Cell.
Biol.5:410-413(1985))を使用する。3つの実施例は、真核細胞の
制御下の細菌遺伝子を用いて、それぞれ適切な薬物G418またはネオマイシン(ジェネ
ティシン)、xgpt(ミコフェノール酸)またはハイグロマイシンへの耐性を伝達する
。他には、ネオマイシン類似体G418およびピュラマイシンが含まれる。
【0085】
4.ペプチド
a)タンパク質バリアント
タンパク質バリアントおよび誘導体は、当業者によく理解され、またアミノ酸配列改変
が関与する可能性がある。例えば、アミノ酸配列改変は、典型的には、置換、挿入、また
は欠失バリアントの3つのクラスのうちの1つ以上に分類される。挿入には、アミノ末端
および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一もしくは複数のアミノ酸残基の配
列内挿入が含まれる。挿入は、通常、例えば、1~4個の残基程度で、アミノ末端または
カルボキシル末端の融合の挿入よりは小さいことになる。実施例に記載されるものなどの
免疫原性融合タンパク質の誘導体は、インビトロで架橋することによって、またはその融
合体をコードするDNAで形質転換された組換え細胞培養物によって、標的配列に免疫原
性を付与するのに十分な大きさのポリペプチドを融合することによって作製される。欠失
は、タンパク質の配列から、1個以上のアミノ酸残基を除去することを特徴とする。典型
的には、約2~6個以下の残基が、タンパク質分子内の任意の1つの部位で欠失される。
これらのバリアントは、通常、タンパク質をコードするDNA内のヌクレオチドの部位特
異的変異誘発によって調製され、それによって、バリアントをコードするDNAを産生し
、その後、組換え細胞培養物中でDNAを発現する。既知の配列を有するDNA中の所定
の部位で置換変異を作製するための技法、例えば、M13プライマー変異誘発およびPC
R変異誘発は周知である。アミノ酸置換は、典型的には、単一残基のものであるが、一度
にいくつかの異なる場所で生じる可能性があり、挿入は、通常、約1~10個のアミノ酸
残基程度であり、欠失は約1~30個の残基の範囲である。欠失または挿入は、好ましく
は、隣接する対、すなわち、2個の残基の欠失または2個の残基の挿入で行われる。置換
、欠失、挿入、またはそれらの任意の組み合わせ、を組み合わせて、最終構築物に到達す
ることができる。変異は、配列をリーディングフレームから外れさせてはならず、好まし
くは、二次mRNA構造を産生する可能性がある相補的領域を生成しないことになる。置
換バリアントは、少なくとも1個の残基が除去され、その位置に、異なる残基が挿入され
ているバリアントである。このような置換は、概して、以下の表1および2に従って行わ
れ、保存的置換と称される。
【表1】
【表2】
【0086】
機能または免疫学的同一性の実質的な変化は、表2のものよりも保存性が低い置換を選
択することによって、すなわち、(a)例えば、シートもしくはらせん構造としての置換
エリアにおけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎
水性、または(c)側鎖の嵩、を維持することに対するそれらの効果が著しく異なる残基
、を選択することによって行われる。一般に、タンパク質特性において最大の変化をもた
らすことが予想される置換は、(a)親水性残基、例えば、セリルまたはスレオニルが、
疎水性残基、例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、またはアラ
ニルに(またはそれによって)置換される;(b)システインまたはプロリンが、任意の
他の残基に(またはそれによって)置換される;(c)電気陽性側鎖、例えば、リシル、
アルギニル、またはヒスチジルを有する残基が、電気陰性残基、例えば、グルタミルまた
はアスパルチルに(またはそれによって)置換される;あるいは(d)嵩張る側鎖、例え
ば、フェニルアラニンを有する残基が、側鎖を有しない残基、例えば、グリシンに(また
はそれによって)置換され、この場合、(e)硫酸化および/またはグリコシル化の部位
の数を増加させることによって置換される、置換であろう。
【0087】
例えば、あるアミノ酸残基を、生物学的および/または化学的に類似する別のアミノ酸
残基に置き換えることは、保存的置換として当業者には既知である。例えば、保存的置換
は、1つの疎水性残基を別の疎水性残基に置き換えること、または1つの極性残基を別の
極性残基に置き換えることである。置換は、例えば、Gly、Ala;Val、Ile、
Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびP
he、Tyrなどの組み合わせを含む。このような、各明示的に開示された配列の保存的
に置換されたバリエーションは、本明細書に提供されるモザイクポリペプチドに含まれる
。
【0088】
置換または欠失変異誘発を用いて、N-グリコシル化(Asn-X-Thr/Ser)
またはO-グリコシル化(SerまたはThr)のための部位を挿入することができる。
システインまたは他の不安定な残基の欠失も望ましい場合がある。潜在的なタンパク質分
解部位(例えば、Arg)の欠失または置換は、例えば、塩基性残基のうちの1つを欠失
させるか、またはグルタミニルまたはヒスチジル残基で置換することによって達成される
。
【0089】
特定の翻訳後の誘導体化は、発現したポリペプチドに対する組換え宿主細胞の作用の結
果である。グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、翻訳後、対応するグルタミルおよ
びアスパリル残基にしばしば脱アミド化される。あるいは、これらの残基は、弱酸性条件
下で脱アミド化される。他の翻訳後修飾としては、プロリンおよびリジンのヒドロキシル
化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、お
よびヒスチジン側鎖のo-アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Prot
eins:Structure and Molecular Properties,
W.H.Freeman & Co.,San Francisco pp 79-86
[1983])、N末端アミンのアセチル化、および、場合によっては、C末端カルボキ
シルのアミド化、が挙げられる。
【0090】
本明細書に開示されるタンパク質のバリアントおよび誘導体を定義する1つの方法は、
特定の既知の配列に対する相同性/同一性の観点からバリアントおよび誘導体を定義する
ことによるものであることが理解される。記載の配列と、少なくとも70%または75%
または80%または85%または90%または95%の相同性を有する、これらのバリア
ントおよび本明細書に開示される他のタンパク質が、具体的に開示される。当業者は、2
つのタンパク質の相同性を決定する方法を、容易に理解する。例えば、相同性は、相同性
が最も高いレベルにあるように、2つの配列を整列した後に計算することができる。
【0091】
相同性を計算する別の方法は、公開されたアルゴリズムによって行うことができる。比
較のための配列の最適アライメントは、Smith and Waterman Adv
.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、N
eedleman and Wunsch,J.MoL Biol.48:443(19
70)の相同性アライメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipm
an,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444(1988
)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装によって(Wis
consin Genetics Software Package(Genetic
s Computer Group、575 Science Dr、Madison、
WI)内のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または検査に
よって行ってもよい。
【0092】
核酸に関して、同じ種類の相同性は、例えば、Zuker,M.Science 24
4:48-52,1989、Jaeger et al.Proc.Natl.Acad
.Sci.USA 86:7706-7710,1989、Jaeger et al.
Methods Enzymol.183:281-306,1989に開示されている
アルゴリズムによって、得ることができる。
【0093】
保存的変異および相同性の説明は、任意の組み合わせで、例えば、バリアントが保存的
変異である特定の配列に対して少なくとも70%の相同性を有する実施形態のように、一
緒に組み合わせることができることが理解される。
【0094】
本明細書は、様々なタンパク質およびタンパク質配列を論じるため、それらのタンパク
質配列をコードすることができる核酸もまた開示されることが理解される。これには、特
定のタンパク質配列に関連する全ての縮重配列、すなわち、1つの特定のタンパク質配列
をコードする配列を有する全ての核酸、ならびにタンパク質配列の開示されたバリアント
および誘導体をコードする縮重核酸を含む全ての核酸、が含まれることになる。したがっ
て、各特定の核酸配列は本明細書に記載されていない場合があるが、各配列および全ての
配列は、開示されたタンパク質配列を介して、実際に本明細書に開示され、かつ記載され
ていることが理解される。また、どの特定のDNA配列が生物内のタンパク質をコードす
るのかを示すいかなるアミノ酸配列もないが、開示されたタンパク質の特定のバリアント
が本明細書に開示されている場合、そのタンパク質をコードする既知の核酸配列もまた既
知であり、そして本明細書に開示され、かつ記載されることも理解される。
【0095】
開示された組成物に組み込むことができる多数のアミノ酸およびペプチド類似体が存在
することが理解される。例えば、表1および表2に示されるアミノ酸とは異なる機能的置
換基を有する多数のDアミノ酸またはアミノ酸が存在する。天然に存在するペプチドの反
対の立体異性体、ならびにペプチド類似体の立体異性体が開示される。これらのアミノ酸
は、tRNA分子に選択したアミノ酸を負荷することによって、および、例えば、アンバ
ーコドンを利用して、部位特異的な方法で、類似体アミノ酸をペプチド鎖に挿入する遺伝
子構築物を操作することによって、容易にポリペプチド鎖に組み込むことができる。
【0096】
ペプチドに似ているが、天然のペプチド結合を介して結合されていない分子を産生する
ことができる。例えば、アミノ酸またはアミノ酸類似体についての結合としては、CH2
NH--、--CH2S--、--CH2--CH2--、--CH=CH--(シスお
よびトランス)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--、および--CHH
2SO-が挙げられる(これらおよび他のものは、Spatola,A.F.in Ch
emistry and Biochemistry of Amino Acids,
Peptides,and Proteins,B.Weinstein,eds.,M
arcel Dekker,New York,p.267(1983);Spatol
a,A.F.,Vega Data(March 1983),Vol.1,Issue
3,Peptide Backbone Modifications(genera
l review);Morley,Trends Pharm Sci(1980)p
p.463-468;Hudson,D.et al.,Int J Pept Pro
t Res 14:177-185(1979)(--CH2NH--、CH2CH2-
-);Spatola et al.Life Sci 38:1243-1249(1
986)(--CHH2--S);Hann J.Chem.Soc Perkin T
rans.I 307-314(1982)(--CH--CH--、シスおよびトラン
ス);Almquist et al.J.Med.Chem.23:1392-139
8(1980)(--COCH2--);Jennings-White et al.
Tetrahedron Lett 23:2533(1982)(--COCH2--
);Szelke et al.European Appln,EP 45665 C
A(1982):97:39405(1982)(--CH(OH)CH2--);Ho
lladay et al.Tetrahedron.Lett 24:4401-44
04(1983)(--C(OH)CH2--)、およびHruby Life Sci
31:189-199(1982)(--CH2--S--);の中に見出され、これ
らの各々は、参照により本明細書に援用される。特に好ましい非ペプチド結合は、--C
H2NH--である。ペプチド類似体は、b-アラニン、g-アミノ酪酸およびこれに類
するものの結合原子間に2つ以上の原子を有することができることが理解される。
【0097】
アミノ酸類似体および類似体ならびにペプチド類似体は、しばしば、より経済的な生成
、より大きな化学的安定性、より強化された薬理学的特性(半減期、吸収、効力、有効性
など)、特異性の変化(例えば、広域の生物学的活性)、抗原性の低下などの強化された
特性、または所望の特性を有する。
【0098】
D-アミノ酸は、ペプチダーゼなどによって認識されないため、D-アミノ酸は、より
安定なペプチドを生成するために使用することができる。より安定なペプチドを生成する
ために、コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸の同じ種類のD-アミノ酸(例えば、L
-リジンの代わりにD-リジン)を用いた系統的な置換を使用することができる。システ
イン残基は、2つ以上のペプチドを一緒に環化するまたは結合するために使用することが
できる。これは、ペプチドを、特定の立体構造に拘束するのに有益である可能性がある。
【0099】
5.医薬担体/医薬製品の送達
上述のように、組成物は、薬学的に許容される担体中でインビボで投与することもでき
る。「薬学的に許容される」とは、いかなる望ましくない生物学的効果を引き起こすこと
なく、またはこの材料がその中に含有される医薬組成物のその他の構成成分のいずれとも
有害な様式で相互作用することなく、生物学的にまたは別の方法で望ましくないものでは
ない材料、すなわち、核酸またはベクターと共に、対象に投与されてもよい材料、を意味
する。担体は、当業者には周知のように、活性成分のあらゆる分解を最小限に抑え、かつ
対象におけるあらゆる有害な副作用を最小限に抑えるように、当然選択されることになる
。
【0100】
組成物は、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内に)、筋肉内注射によって、腹腔内
注射によって、経皮的に、体外的に、局所的に(局所鼻腔内投与または吸入剤による投与
を含む)、またはこれに類するものによって、投与されてもよい。本明細書で使用される
場合、「局所鼻腔内投与」とは、鼻孔の一方または両方を介して組成物を鼻および鼻道に
送達することを意味し、噴霧機構もしくは液滴機構による、または核酸もしくはベクター
のエアロゾル化による送達を含むことができる。吸入剤による組成物の投与は、噴霧また
は液滴機構による送達を介して鼻または口を通して行うことができる。送達は、挿管を介
して呼吸器系の任意の領域(例えば、肺)に直接送達することもできる。必要とされる組
成物の正確な量は、対象の種、年齢、体重、および一般状態、治療されるアレルギー障害
の重症度、使用される特定の核酸またはベクター、その投与方法、ならびにこれに類する
ものに応じて、対象によって異なるであろう。したがって、すべての組成物に対して正確
な量を指定することは不可能である。しかしながら、適切な量は、本明細書の教示を考慮
し日常的な実験のみを使用して、当業者によって決定することができる。
【0101】
組成物の非経口投与は、使用される場合、一般に、注射を特徴とする。注射剤は、液体
溶液または懸濁液、注射前に液体中の懸濁液の溶解のために好適な固体形態、あるいはエ
マルジョンのいずれかとして、従来の形態で調製することができる。最近改訂された非経
口投与のアプローチでは、一定の投薬量が維持されるような徐放系または持続放出系の使
用に関与する。例えば、米国特許第3,610,795号を参照されたい(参照により本
明細書に援用される)。
【0102】
材料は、溶液、懸濁液(例えば、微小粒子、リポソーム、または細胞に組み込まれる)
の状態であってもよい。これらは、抗体、受容体、または受容体リガンドを介して、特定
の細胞型を標的にしてもよい。以下の参考文献は、腫瘍組織に特異的なタンパク質を標的
にするための本技術の使用例である(Senter,et al.,Bioconjug
ate Chem.,2:447-451,(1991)、Bagshawe,K.D.
,Br.J.Cancer,60:275-281,(1989)、Bagshawe,
et al.,Br.J.Cancer,58:700-703,(1988)、Sen
ter,et al.,Bioconjugate Chem.,4:3-9,(199
3)、Battelli,et al.,Cancer Immunol.Immuno
ther.,35:421-425,(1992)、Pietersz and McK
enzie,Immunolog.Reviews,129:57-80,(1992)
、およびRoffler,et al.,Biochem.Pharmacol,42:
2062-2065,(1991))。「ステルス」および他の抗体複合体リポソーム(
結腸癌に対する脂質媒介性薬物標的化を含む)、細胞特異的リガンドを介したDNAの受
容体媒介性標的化、リンパ球特異的腫瘍標的化、ならびにインビボでのマウス神経膠腫細
胞の高度に特異的な治療用レトロウイルス標的化などのビヒクル。以下の参考文献は、腫
瘍組織に特定のタンパク質を標的にするための本技術の使用例である(Hughes e
t al.,Cancer Research,49:6214-6220,(1989
)、およびLitzinger and Huang,Biochimica et B
iophysica Acta,1104:179-187,(1992))。一般に、
受容体は、構成的またはリガンド誘導のいずれかのエンドサイトーシスの経路に関与する
。これらの受容体は、クラスリン被覆ピット内でクラスター化し、クラスリン被覆小胞を
介して細胞内に入り、受容体が選別される酸性化エンドソームを通過し、次いで細胞表面
にリサイクルされるか、細胞内に貯蔵されるか、またはリソソーム中で分解されるかのい
ずれかである。内部移行経路は、栄養素の取り込み、活性化タンパク質の除去、巨大分子
のクリアランス、ウイルスおよび毒素の日和見進入、リガンドの解離および分解、ならび
に受容体レベルの調節などの様々な機能を果たす。多くの受容体は、細胞型、受容体濃度
、リガンドの種類、リガンド価、およびリガンド濃度に応じて、2つ以上の細胞内経路に
従う。受容体媒介性エンドサイトーシスの分子機構および細胞機構が概説されている(B
rown and Greene,DNA and Cell Biology 10:
6,399-409(1991))。
【実施例0103】
以下の実施例は、当業者に、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、デバイ
ス、および/または方法の作製方法および評価方法の完全な開示および説明を提供するた
めに示されるものであり、純粋に例示的であることを意図するものであって、本開示を限
定するものではない。数値(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するように努力
がなされてはいるが、いくらかの誤差および偏差が考慮されるべきである。特に指定しな
い限り、部(parts)は重量部であり、温度は℃、または周囲温度であり、圧力は、
大気圧またはその付近である。
【0104】
1.実施例1
a)方法
(1)ヒトNK細胞の精製および増殖
供給源材料として、健康なドナーのバフィーコートを、Central Ohio R
egion American Red Crossから得た。この研究は、Insti
tutional Review Board of Nationwide Chil
dren’s Hospitalによって免除研究であると判断された。
【0105】
PBMCをバフィーコートから単離する。簡潔に述べると、15mlのFicol-P
aque上に35mLのバフィーコート試料を重層する。ブレーキを用いずに400xg
で20分間遠心分離する。回収したPBMCを、PBSで3回洗浄する。NK細胞は、こ
の段階でRosettesSepによって単離することができる。
【0106】
0、7、および14日目に、照射した10×106mbIL21発現フィーダー細胞で
刺激することによって、NK細胞を増殖する。培地を、10%FBS、1%グルタミン、
1%ペニシリン・ストレプトマイシン、および100IU/mLのIL-2を含有する新
鮮なAIMVまたはRPMIを用いて、培地の容積全体について1日おきに交換する。
【0107】
(2)gRNAの設計および選択
オンラインツール、例えば、NCBI、Ensembleを使用して、標的にする特定
のゲノム遺伝子座を選択する。例として、形質転換成長因子β受容体2(TGFBRR2
)外部ドメインを使用する。View record:PF08917、View In
terPro:IPR015013、位置:49-157aa。標的配列:TGFBR2
遺伝子のエクソン4(ENSG00000163513)
【0108】
gRNAを設計するには、http://crispr.mit.eduおよび「Be
nchling.com」などのCRISPRデザインWebツールを使用する。ステッ
プ2.1で選択したDNA配列を入力する。標的ゲノムとして、ヒト(hg19)を選択
する。CRISPRガイド(20ヌクレオチド、続いてPAM配列:NGG)を、先に入
力した配列からスキャンする。これはまた、選択されたゲノム全体にわたって可能なオフ
ターゲットのマッチも示す。オンターゲットとオフターゲットの割合に基づいて、最も高
いスコアを有する最良の3つのgRNAを選択する。
【0109】
表1は、CRISPR設計ウェブツールによって示されるTGFBR2遺伝子のエクソ
ン4を標的にするように設計されたCRISPR RNAを示す。
【表3】
【0110】
CRISPR RNAを合成配列特異的crRNAとしてオーダーし、保存されたトラ
ンス活性化RNA(tracrRNA)をオーダーして、crRNAとの部分的相同性を
通して相互作用させる。
【0111】
(3)欠失スクリーニングプライマーの設計
T7E1変異アッセイのためのgRNA切断部位にまたがるプライマーを設計する。予
測切断部位から少なくとも100bp離れたプライマーを使用して、変異アッセイ後に、
1.5%アガロースゲル上で、sgRNA標的部位において小さな挿入欠失(インデル)
を確保する。表2は、TGFBR2外部ドメインを増幅するために使用されたプライマー
を示す。
【表4】
【0112】
(4)ヒト初代および増殖NK細胞の形質導入
Cas9/RNPエレメントのNKへの形質導入は、以下のように、4D-Nucle
ofector Systemを使用したエレクトロポレーションによって行われる。
【0113】
(5)細胞の調製
初代NK細胞については、新たに単離したNK細胞を、100IU/mLのIL-2の
存在下、RPMIまたはAIMV培地中で4日間インキュベートし、5日目に、エレクト
ロポレーションを実施する(培地を、前述の通り1日おき、および形質導入の前日に交換
する)。これは、増殖NK細胞用に修正することができる。増殖NK細胞については、0
日目に、細胞を、照射されたフィーダー細胞(1:1の比率)で刺激し、5日目または6
日目または7日目にエレクトロポレーションを実施する。(培地を、前述の通り1日おき
、および形質導入の前日に交換する)。エレクトロポレーションの日に、エレクトロポレ
ーションを受ける細胞のために、100IU/mLのIL-2を含有する8mlの新鮮な
RPMIが充填されたT25フラスコを準備し、そして加湿した37℃/5%CO2イン
キュベーター内で、フラスコをプレインキュベートする。解凍された細胞または第2また
は第3の刺激を受けた細胞を、記載のように、それらの回復した後は、いつでもエレクト
ロポレーションすることができる。Nucleofector溶液中のNK細胞が非常に
高い濃度であると、形質導入率が増加するため、26μLの形質導入混合物について、1
つの条件あたり3~4×106個の細胞を用いる。細胞を、PBSで3回洗浄して、すべ
てのFBS(通常、RNAアーゼ活性を含んでいる)を除去する。毎回、300gで8分
間遠沈する。Cas/RNPについて、7つのエレクトロポレーションの条件、単一のg
RNA(gRNA1、gRNA2、gRNA3)および2つのgRNAの組み合わせ(g
RNA1+gRNA2、gRNA1+gRNA3、gRNA2+gRNA3)およびCA
S9/RNPを含まない1つの対照、を考慮する。
【0114】
(6)crRNA:tracerRNA/複合体の形成
crRNA(gRNA1、gRNA2およびgRNA3)およびTracerRNAを
1×TE溶液中で再懸濁して、最終濃度200μMにする。表3に示すように、2.2μ
lのgRNA(各200μM)を、200μMのTracerRNAと混合する。試料を
、95℃で5分間加熱し、ベンチトップで室温(15~25℃)まで冷却する。後で使用
するために、再懸濁したRNAおよびcrRNA:tracerRNA/複合体を、-2
0℃で保管する。
【表5】
【0115】
(7)RNP複合体の形成
時間を節約するために、洗浄ステップ中に、RNP複合体を形成する。単一crRNA
:tracrRNA二重鎖反応について、表4で言及されるように、Cas9エンドヌク
レアーゼを、36μMに希釈する。
【表6】
【0116】
crRNA:tracrRNA二重鎖の組み合わせ形質導入のために、表5に示される
ように、Cas9エンドヌクレアーゼを36μMに希釈する。
【表7】
【0117】
Cas9エンドヌクレアーゼを、crRNA:tracrRNA二重鎖に、30秒~1
分かけて、ピペット先端を旋回させながらゆっくりと添加する。混合物を室温で15~2
0分間インキュベートする。インキュベーション後に混合物を使用する準備ができていな
い場合は、混合物を使用するまで氷上に保つ。
【0118】
(8)エレクトロポレーション
全ての補充物を、Nucleofector溶液P3に添加し、室温に保つ。細胞ペレ
ットを、20μlのP3 Primary 4D Nucleofector溶液に再懸
濁する(3~4×106細胞)。ピペッティング中は、気泡を避ける。細胞は、P3溶液
中に長時間放置しないようにする。細胞懸濁液に、5μLのRNP複合体を直ちに添加す
る。Cas9/RNP/細胞混合物に、1μlの100μMのCAS9エレクトロポレー
ションエンハンサーを添加する。Cas9/RNP/細胞混合物を、20μlのNucl
eocuvette Stripに移す。Nucleocuvetteストリップを軽く
叩いて、試料がストリップの底部を覆っていることを確認する。4D-Nucleofe
ctorシステムを起動し、EN-138プログラムを選択する。
【0119】
(9)形質導入後
細胞をストリップで3分間休ませる。80μLの予め平衡化した培養培地をキュベット
に添加し、試料をフラスコに穏やかに移す。形質導入して48時間後、遺伝子欠失のスク
リーニングのために、5×105細胞からゲノムDNAを抽出する。TaqDNAポリメ
ラーゼキットを用いて、ステップ3.2で設計されたプライマーを使用して目的の遺伝子
を増幅する。T7EI消化のために、PCRアンプリコンのヘテロ二重鎖を形成し、生成
物をT7EI酵素と共に37℃で30~60分間インキュベートする。T7EIアッセイ
は、迅速で単純であり、Surveyorアッセイを使用する場合と比較して、きれいな
電気泳動結果を提供するため、スクリーニングに好ましい。しかしながら、この方法は、
Cas9RNP実験において非相同末端結合(NHEJ)活性によって生成される2つ以
下の塩基の挿入および欠失を検出することができない。
【0120】
消化されたDNAを、110Vで30~45分間、1.5%アガロースゲル上で実行し
、15分ごとにゲルを視覚化する。残りの細胞を、mbIL21発現フィーダー細胞で1
:1の割合で刺激する。刺激して5日後、qPCRを使用した遺伝子発現レベルのために
、RNAを抽出する。
【0121】
以前報告されているように、カルセインアッセイを実施する。簡潔に述べると、標的細
胞に、カルセインAMを負荷する(示された例では、3μg/mL/1,000,000
DAOY細胞を使用した)。IL2(100IU/mL)プラスまたはマイナス10ng
/mLの可溶性TGFβ中で、一晩休ませることによって、細胞毒性アッセイ用にNK細
胞を調製する。NK細胞を一晩休ませた同じサイトカイン中でカルセインアッセイを行う
。
【0122】
b)結果:
(1)エレクトロポレーション効率:
Cas9/RNPエレクトロポレーションの4D-Nucleofectionを最適
化するために、16個の異なるプログラムを、GFP非標的siRNAおよびDNAプラ
スミドをNK細胞に形質導入することで、試験した。フローサイトメトリーアッセイは、
両方の粒子について、EN-138が、最も高い割合の細胞生存率および形質導入効率を
有したことを示した(35%生GFP陽性細胞)。(
図1および
図2)。興味深いことに
、Cas9/RNPのエレクトロポレーションについて、このプログラムを使用すると効
率がより高く、TGFBR2 mRNA発現レベルで、60%の低下が観察された(
図5
)。
【0123】
(2)変異アッセイ
GRNA2、gRNA1+gRNA2およびgRNA3を含有するCas9/RNPは
、TGFBR2外部ドメイン遺伝子を正常にノックアウトしたが、gRNA1単独では、
T7E1検出可能なインデルが一切作製されなかった(
図3)。さらに、
図4は、市販の
gRNAを使用して、増殖ヒトNK細胞でヒトHPRT1(ヒポキサンチンホスホリボシ
ルトランスフェラーゼ1)を正常にノックアウトしたことを示す。
【0124】
(3)遺伝子発現レベルのアッセイ
結果の代表として、
図5は、RT-PCRによって分析したTGFBR2外部ドメイン
のmRNA産生レベルに対するCas9/RNP(gRNA1+gRNA2)の効果を示
す。グラフから分かるように、標的遺伝子のmRNA発現レベルは有意に低下した。
【0125】
(4)細胞毒性
図6から分かるように、gRNA1+gRNA2、gRNA2およびgRNA3 Ca
s9/RNP改変細胞を、TGFBとインキュベートし、DAOY細胞と共培養した後、
改変細胞は、培地中で一晩IL-2を有した対照群と比較して、それらの細胞毒性レベル
でいかなる有意な減少も示さなかった。この結果は、Cas9/RNP改変細胞がTGF
Bの存在下でそれらの細胞毒性機能を保持し、改変細胞がTGFB耐性になったことを示
す。
【0126】
(5)RNA配列の分析
ナイーブおよび増殖NK細胞におけるRNA配列の分析は、IL-21増殖NK細胞に
おける能動的DNA修復および複製機構を強調した。これは、消費されたNK細胞が、C
as9/RNP系を使用する遺伝子マニピュレーションに対してよりオープンである可能
性があることを示す。
【0127】
c)考察:
Cas9媒介ゲノム操作は、実験医学と臨床医学に革命をもたらした。この技法の使用
は、T細胞で成功しているが、NK細胞のDNA依存性改変は困難であった。CRISP
R/Cas9系において、得られる転写プロセスは、必要であるか、または望ましいかの
いずれかであるため、sgRNAのコード配列を担うDNAベクターを、U6またはH1
プロモーターの制御下に置く。レンチウイルスおよびレトロウイルストランスフェクショ
ンなどのDNA依存性導入遺伝子送達は、遺伝子操作されたNK細胞の効率的な産生を制
限する、実質的な手順関連NK細胞アポトーシスのために不十分である。
【0128】
したがって、合成的に予め形成したリボ核タンパク質(RNP)複合体およびCas9
タンパク質を、精製タンパク質として初代および増殖NK細胞に導入した。
【0129】
この方法は、DNA依存性形質導入の方法で生じると考えられる実質的な手順関連NK
細胞アポトーシスを引き起こす可能性があるRNAポリメラーゼIIによって開始される
キャップ形成、テール形成、ならびに他の転写および翻訳プロセスの排除を可能にした。
加えて、本明細書で報告される方法は、精製されたCas9タンパク質を使用し、Cas
9/RNPがエレクトロポレーション直後で活性であり、また同様に迅速に分解されるた
め、オンターゲット効果を増加させ、かつオフターゲットの影響を減少させ、現在のプロ
トコルへと改善を導く。
【0130】
要約すると、上に記載の方法を利用した癌免疫療法の目的で、ヒト初代および増殖NK
細胞を遺伝子改変するために、Cas9/RNPを使用することができる。この結果はま
た、TGFBR2外部ドメイン遺伝子の正常なノックアウトが、これらの改変NK細胞を
TGFB耐性にすることにつながることも実証した。
【0131】
RNP送達を鋳型DNAの供給源(天然組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ドナーベ
クターなど)と組み合わせることで、相同組換えによる部位特異的遺伝子挿入を可能にす
ることができる。
【0132】
2.実施例2:サイトカインシグナル抑制因子3(SOCS3)
癌免疫療法を増強するためのNK細胞の遺伝子改変は、広範囲の癌を治療するための用
途を有する。最近、エレクトロポレーションを介して、CRISPR/Cas9エレメン
トをリボ核タンパク質(RNP)としてNK細胞に導入し、続いて4-1BBLおよび膜
結合IL-21を発現するフィーダー細胞上で増殖させて多数の遺伝子改変NK細胞を生
成する新しい戦略が開発された。この方法を使用して、サイトカインシグナル抑制因子3
(SOCS3)を含む初代および増殖NK細胞のいくつかの遺伝子を遺伝子改変した。S
OCS3は、JAK/STAT経路を通して、サイトカインシグナル伝達を負に調節する
。Cas9/RNPを使用した初代NK細胞におけるSOCS3の破壊が、STAT3シ
グナル伝達レベルを維持し、続いて、それらの増殖および細胞毒性機能を増加させること
ができる、という仮説を立てた。
【0133】
gRNAを、SOCS3遺伝子のエクソン2(
図7)を標的にするように設計し、Lo
nza4Dエレクトロポレーターを使用して、Cas9タンパク質と共に(Cas9/R
NPとして)、初代NK細胞にエレクトロポレーションした。gRNAの6つの異なる条
件を、単独で、または組み合わせて、試験した。対照群のNK細胞を、Cas9/RNP
なしでエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、細胞を、100IUの
ヒトIL-2を補充した培養培地中で48時間休ませた後、照射されたフィーダー細胞を
使用して増殖させた。7日目に、同数の細胞を、照射されたフィーダー細胞で再刺激して
、増殖に対するSOCS3 KOの効果を試験した。ウェスタンブロットを使用して、タ
ンパク質レベルで、ノックアウトの有効性をアッセイした。カルセインアッセイおよびI
ncuCyte Zoom(Essen)を行って、2つの癌細胞株K562およびDa
oyに対する細胞毒性を測定した。
【0134】
結果は、3つの条件(gRNA1、gRNA3、およびgRNA1+gRNA3)にお
いて、SOCS3タンパク質レベルが、対照群と比較して、有意な減少を示した。SOC
S3の相対正規化発現を、
図8に示す。カルセインアッセイおよびIncuCyte Z
oomでは、改変されたSOCS3 KO NK細胞が、AMLおよびDaoy癌細胞株
における対照と比較して、より効率的に腫瘍を死滅させることができることを示した(図
9A、9B、9C、および9D)。gRNA1(G1)は、陰性対照(NC)の2倍の死
滅を示した。特に、NCは、10:1で80%の死滅を示し、G1は、5:1で80%の
死滅を示している(
図9Bおよび9D)。神経芽細胞腫の細胞は、SOCS3ノックアウ
トにおいて、より速い速度で死滅することはなかった(
図9Cおよび9D)。増殖データ
は、SOCS3 KO細胞が、対照群よりも速く成長することができることを示した(図
10)。
【0135】
結論として、データは、NK細胞機能におけるSOCS3およびJAK/STAT経路
の役割を実証し、SOCS3が、NK細胞を使用して癌免疫療法を改善するための遺伝子
改変の良好な標的であることを示す。
【0136】
3.実施例3:フラトリサイドを克服し、ADCCを増強するための、CD38-K
O NK細胞の生成
ナチュラルキラー細胞は、抗CD38モノクローナル抗体であるダラツマブ(DARA
)による、CD38発現多発性骨髄腫(MM)の標的化において重要な役割を果たす。D
ARA療法におけるNK細胞のフラトリサイドを克服するために、Cas9/RNPを使
用したノックアウトNK細胞を生成した。エクスビボ増殖自己ノックアウトNK細胞とD
ARAとの併用療法は、DARA誘導性の腫瘍細胞の死滅において有意な改善を示した(
図11および12)。
【0137】
4.実施例4:AAVS1
この方法論を使用して、初代NK細胞のゲノムへのCARおよびレポーター遺伝子を含
む任意の目的の遺伝子の組み込み部位として使用されるセーフハーバーとしてAAVS1
遺伝子を標的にした。
【0138】
ICE(CRISPR編集の干渉)は、Cas9/RNPを使用して、高効率の目的の
遺伝子の標的化を示した。AAVS1の標的化で、初代NK細胞の細胞毒性効果は変わら
ない(
図13)。
使用したgRNA:GGGGCCACTAGGGACAGGAT(配列番号9)
【0139】
5.実施例5:Cas9/RNPドナーを使用したCAR-NK生成の概念の証明と
しての、mCherry陽性初代NK細胞の生成
このアプローチを使用して、mCherry発現ヒト初代NK細胞を生成した。さらに
、これらの改変初代NK細胞を、照射されたmbIL21発現フィーダー細胞で刺激する
ことによって増殖させ、レポーター遺伝子の安定した発現を実証した(
図14、15、お
よび16)。これにより、初代および増殖したCAR-NK細胞の生成が確認される。
使用したgRNA:GGGGCCACTAGGGACAGGAT(配列番号9)
【0140】
6.実施例6:オフターゲット効果の試験
NK細胞でCas9/RNPを使用した後のオフターゲット効果を特定するために、正
常および改変NK細胞(CD38-KO)の全ゲノム配列決定を行った。WGSは、候補
遺伝子を予測するために使用されるアルゴリズムに基づいて、オフターゲットがないか、
または非常に低い(2個の遺伝子)ことを示した。
【0141】
Benching.comによって生成されたオフターゲット候補遺伝子のリストを、
CD-38を標的にするために使用されたgRNAについて調査した。(5’-CTGA
ACTCGCAGTTGGCCAT-3’(配列番号11))であり、いかなるオフター
ゲットも現われなかった。(表6に示されるオフターゲット候補遺伝子のリスト)
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
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