(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075631
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ダイカスト用アルミニウム合金
(51)【国際特許分類】
C22C 21/00 20060101AFI20240528BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240528BHJP
C22F 1/04 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
C22C21/00 N
C22F1/00 602
C22F1/00 611
C22F1/00 630A
C22F1/00 630C
C22F1/00 630K
C22F1/00 661A
C22F1/00 661Z
C22F1/00 682
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024038605
(22)【出願日】2024-03-13
(62)【分割の表示】P 2021505658の分割
【原出願日】2019-08-01
(31)【優先権主張番号】62/713,805
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510192916
【氏名又は名称】テスラ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パラニヴェル,シヴァネシュ
(72)【発明者】
【氏名】クーマン,チャーリー
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥッキ,ジェイソン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ,イーサン
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,ポール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】容易に破損しないような高い降伏強度を有し、同時に、重大な熱間割れを生じることなく、様々な用途に十分な導電率を有する、鋳造可能なアルミニウム合金を提供する。
【解決手段】鋳造用アルミニウム合金は、4~6wt%のNiと、アルミニウムと、を含み、少なくとも約90MPaの降伏強度および少なくとも約48%IACSの導電率を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4~6wt%のNiと、
アルミニウムと、を含み、少なくとも約90MPaの降伏強度および少なくとも約48%IACSの導電率を有する、鋳造用アルミニウム合金。
【請求項2】
0.2~0.8wt%のFeをさらに含む、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
約0.3wt%のFeを含む、請求項2に記載の合金。
【請求項4】
0.01~0.1wt%のTiをさらに含む、請求項1に記載の合金。
【請求項5】
約0.03wt%のTiを含む、請求項4に記載の合金。
【請求項6】
4.3~6wt%のNiを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項7】
5~5.5wt%のNiを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項8】
約5.3wt%のNiを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項9】
約5.1wt%のNiを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項10】
約5.3wt%のNi、約0.3wt%のFe、および約0.03wt%のTiを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項11】
最大でも約1wt%の随伴不純物を含む、請求項1に記載の合金。
【請求項12】
前記随伴不純物がSiである、請求項11に記載の合金。
【請求項13】
実質的にSiを含まない、請求項1に記載の合金。
【請求項14】
製品に鋳造される、請求項1に記載の合金。
【請求項15】
前記製品が電気モータの一部分である、請求項14に記載の合金。
【請求項16】
前記電気モータの部分がロータである、請求項15に記載の合金。
【請求項17】
前記モータのロータが、請求項1に記載の合金を含む、請求項14に記載のモータ。
【請求項18】
請求項1に記載の合金を含むモータ。
【請求項19】
アルミニウム合金を製造するための方法であって、
請求項1に記載のアルミニウム合金を含む溶融物を形成することと、
T5工程に従って前記溶融物を鋳造することを
含む、方法。
【請求項20】
前記アルミニウム合金が、約5.3wt%のNi、約0.3wt%のFe、および約0.03wt%のTiを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年8月2日に出願され「HIGH PERFORMANCE ALUMINUM ALLOYS WITH ENHANCED CASTABILITY FOR DIE CASTING」と題された米国特許仮出願第62/713,805号の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、アルミニウム合金に関する。より具体的には、本発明は、自動車部品を含む高性能用途のための高強度、高められた導電率、および改善された鋳造性を有するアルミニウム合金に関する。
【背景技術】
【0003】
市販の鋳造用アルミニウム合金は、高い降伏強度を持つ、または高い導電率を持つ、という2つのカテゴリのいずれかに分類される。たとえば、A356アルミニウム合金は、175MPaを超える降伏強度を有するが、導電率はおよそ40%IACSである。逆に、100.1アルミニウム合金は、48%IACSを超える導電率を有するが、降伏強度は50MPa未満である。特定の用途、たとえば、ロータまたはインバータなどの電気自動車内の部品に対しては、高強度と高導電率の両方が求められる。また、これらの電気自動車部品を鋳造工程で形成することが望まれるため、鍛造用合金を使用できない。むしろ、部品が、低圧および高速の金属注入または高圧ダイカスト工程などによって迅速かつ確実に鋳造され得るように、鋳造工程を通じて部品を形成することが望ましい。鋳造後、適切な合金は、必要な用途に十分な特性を維持する必要がある。合金の鋳造性が悪いと、しばしば熱間割れが観察され、最終鋳造部品の機械的および電気的特性を一般的に低下させる充填の問題が発生する可能性がある。
【0004】
合金が、容易に破損しないような高い降伏強度を有し、同時に、重大な熱間割れを生じることなく、様々な用途に十分な導電率を有する、鋳造用アルミニウム合金を製造することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
鋳造可能なアルミニウム合金を本明細書に記載する。本開示のアルミニウム合金の実施形態は、高い降伏強度、高い押出速度、高い導電率および/または高い熱伝導率を有する。いくつかの実施形態では、鋳放しの状態で合金を使用することができ、これは、追加およびその後の溶体化熱処理なしでの加工を可能にし、高い降伏強度を提供するアルミニウム合金の能力を損なわない。一実施形態では、アルミニウム合金は、製品を形成するための鋳造技術とともに使用するように設計される。いくつかの実施形態では、ダイカストが使用されるが、砂型鋳造(生砂および乾燥砂)、永久金型鋳造、石膏鋳造、インベストメント鋳造、連続鋳造、または任意の他の鋳造技術を使用することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、アルミニウム合金は、4.0~6wt%のニッケル(Ni)を含み、残りのwt%は、アルミニウム(Al)および随伴不純物である。様々な実施形態では、アルミニウム合金は、4.0~6wt%のニッケル(Ni)、0.2~0.8wt%の鉄(Fe)、0.01~0.1wt%のチタン(Ti)を含み、残りのwt%は、アルミニウム(Al)および随伴不純物である。いくつかの実施形態では、合金は、5~5.5wt%のNiを含む。いくつかの実施形態では、電気モータなどのモータは、記載された合金を含む。いくつかの実施形態では、モータは、記載された合金を含むロータを
含む。いくつかの実施形態では、ロータは、4.3~6wt%のNiを含む合金から作られる。他の実施形態では、ロータは、5~5.5wt%のNiを含む合金から作られる。さらに他の実施形態では、合金は、90MPaを超える降伏強度を有する。いくつかの実施形態では、合金は、46%IACSを超える導電率を有する。他の実施形態では、合金は、48%IACSを超える導電率を有する。一実施形態では、合金は、46%~55%IACSの間または約46%~約55%IACSの間の導電率を有する。一実施形態では、アルミニウム合金は、T5工程に従って加工される。いくつかの実施形態では、アルミニウム合金は、鋳造または関連する工程を通じて物品または製品を形成するために使用される。
【0007】
一態様では、鋳造用アルミニウム合金が記載されている。合金は、4~6wt%のNiを含み、残りのwt%は、Alと随伴不純物である。合金はさらに、少なくとも約90MPaの降伏強度および少なくとも約48%IACSの導電率を有する。
【0008】
いくつかの実施形態では、合金は、0.2~0.8wt%のFeをさらに含む。いくつかの実施形態では、合金は、約0.3wt%のFeを含む。いくつかの実施形態では、合金は、0.01~0.1wt%のTiをさらに含む。いくつかの実施形態では、合金は、約0.03wt%のTiを含む。いくつかの実施形態では、合金は、4.3~6wt%のNiを含む。いくつかの実施形態では、合金は、5~5.5wt%のNiを含む。いくつかの実施形態では、合金は、約5.3wt%のNiを含む。いくつかの実施形態では、合金は、約5.1wt%のNiを含む。いくつかの実施形態では、合金は、約5.3wt%のNi、約0.3wt%のFe、および約0.03wt%のTiを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、随伴不純物は、最大でも約1wt%である。いくつかの実施形態では、合金は、最大でも随伴不純物としてのSiの量を含む。いくつかの実施形態では、合金は実質的にSiを含まない。
【0010】
いくつかの実施形態では、合金は、製品に鋳造される。いくつかの実施形態では、製品は、電気モータの一部分である。いくつかの実施形態では、電気モータの部分は、ロータである。いくつかの実施形態では、モータのロータは、請求項1に記載の合金を含む。
【0011】
別の態様では、鋳造用アルミニウム合金を含むモータが記載されている。
【0012】
別の態様では、鋳造用アルミニウム合金を製造するための方法が記載されている。この方法は、アルミニウム合金を含む溶融物を形成すること、およびT5工程に従って溶融物を鋳造することを含む。
【0013】
この方法のいくつかの実施形態では、アルミニウム合金は、約5.3wt%のNi、約0.3wt%のFe、および約0.03wt%のTiを含む。
【0014】
さらなる実施形態および特徴は、以下の説明に部分的に記載されており、部分的には、明細書を検討することで当業者に明らかになるか、または本明細書で論じられる実施形態の実施によって学習され得る。特定の実施形態の性質および利点を、本開示の一部を形成する明細書および図面の残りの部分を参照することによって、さらに理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【0016】
【
図2】既知の鋳造用アルミニウム合金、鍛造用アルミニウム合金、銅合金、および本開示の合金設計空間を降伏強度対導電率プロット上に示すチャートである。
【0017】
【
図3】鍛造用合金および鋳造用合金として考えられる組成の一般的な範囲を共晶図に示す。
【0018】
【
図4】様々な金属組成の物理的試験片に対する実験的硬さおよび導電率の結果を折れ線グラフで示す。
【0019】
【
図5】様々な組成範囲の物理的試験片に対する実験的応力-ひずみの結果をまとめた折れ線グラフである。
【0020】
【
図6】3種のアルミニウム合金および本開示の合金設計空間を降伏強度対導電率プロット上に示すチャートである。
【0021】
【
図7】様々な組成範囲の物理的試験片に対する実験的流動性の結果をまとめた棒グラフである。
【0022】
【
図8】様々な組成範囲の物理的試験片に対する実験的熱間割れ感受性の結果をまとめた棒グラフである。
【0023】
【
図9】様々な合金組成の物理的試験片に対する実験的熱間割れ感受性の結果を示す一連の画像(パネルA、B、C、およびD)である。
【0024】
【
図10A】様々な合金組成について、時間の関数として液相率を決定するために使用された計算実験をまとめた折れ線グラフである。
【0025】
【
図10B】様々な合金組成について、収縮率を決定するために使用された計算実験をまとめた棒グラフである。
【0026】
【
図10C】様々な合金組成について、固相率の関数として温度依存性を決定するために使用された計算実験をまとめた折れ線グラフである。
【0027】
【
図11】様々な合金組成について、固相率に対する温度の計算実験をまとめた棒グラフである。
【0028】
【
図12】様々な合金組成について、固相率に対する温度の計算実験をまとめた折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に説明する図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することによって、本開示を理解することができる。例示を明確にするために、様々な図面の特定の要素は、一定の縮尺で描かれていないか、概略的または概念的に表されているか、そうでなければ、実施形態の特定の物理的構成に正確には対応していない可能性があることに留意されたい。
【0030】
実施形態は、製品を作成するのに有用なアルミニウム合金に関する。一実施形態では、合金は、十分な鋳造性を提供し、また、比較的高い降伏強度および導電率、ならびに改善された流動度および熱間割れまたは亀裂に対する耐性を提供するように作成された。アルミニウム金属に4.0~6%の間のニッケルを添加すると、これら多くの強化剤が、合金に所望の特徴をもたらすことが発見された。アルミニウム-ニッケル合金は、従来の市販のアルミニウム合金と比較して、高い降伏強度および高い導電率を有することが見出され
た。以下に述べるように、アルミニウム合金は、本明細書において、合金内の全元素および粒子の重量パーセント(wt%)、ならびに合金の特定の特性によって記述される。本明細書に記載された合金の残りの組成は、アルミニウムおよび随伴不純物であることが理解されよう。
【0031】
図1は、電気モータ100の分解図を示す。電気モータは、ロータ102、ステータ104、ハウジング106、マウント108、およびシャフト110を備える。いくつかの実施形態では、モータは、本明細書に記載のアルミニウム合金を含み得る。いくつかの実施形態では、ロータは、本明細書に記載のアルミニウム合金を含み得る。いくつかの実施形態では、電気自動車などの車両は、アルミニウム合金を含む電気モータを含み得る。
【0032】
図2は、既知の鋳造用アルミニウム合金、1つの鍛造用アルミニウム合金(6101-T63)、1つの銅合金(10100-O)、および本開示の合金設計空間を降伏強度対導電率プロット上に示す。
図2に示す合金設計空間内にあるアルミニウム合金は、48%~55%もしくは約48%~約55%の国際標準軟銅(IACS)の導電率、および90MPaの最小降伏強度を有する。いくつかの実施形態では、
図2に見られるように、合金設計空間の所望の降伏強度は、90MPa~130MPaの間、もしくは約90MPa~約130MPaの間にある。
【0033】
図2を参照すると、アルミニウム合金は、降伏強度は高いが導電率は低いものと、導電率は高いが降伏強度は低いもの、という2つの一般的なグループに分類できる。しかしながら、合金設計空間内に性能特性を有し、また鋳造可能であるアルミニウム合金を有することが望ましい。いくつかの実施形態では、そのようなアルミニウム合金が、電気自動車または電気モータ内の特定の金属部品に適する可能性がある。
【0034】
図2はまた、鍛造用アルミニウム合金6101-T63の降伏強度および導電率を示す。鍛造用アルミニウム合金6101-T63は、鍛造用合金の加工ステップを通じて付与される降伏強度および導電率などが、示されている設計空間付近にあり、より望ましい性能特性を備えていることがわかる。しかしながら、鍛造用合金では得られない加工性のために、鋳造用合金が望まれる。
図3は、鍛造用合金および鋳造用合金として考えられる組成の一般的な範囲を共晶図に示す。セクション3内でLと標識された共晶点は、通常、最も鋳造可能な組成と考えられ、共晶組成から逸脱した組成は鋳造性が低くなり、鍛造用合金として使用される可能性が高くなる。
【0035】
図2を引き続き参照すると、Castasil21-Fは、合金設計空間の電気的および機械的特性に最も近い電気的および機械的特性を有する市販の鋳造用合金であり、導電率は44%IACS、降伏強度は85Mpaである。ただし、これらの特性は、少なくとも48%IACSの導電率および90Mpa以上の降伏強度を必要とする、電気自動車に使用する部品など、鋳造技術を介して一部の部品を作成するにはまだ不十分である。
【0036】
鋳造時の十分な降伏強度および導電率に加えて、鋳造用アルミニウム合金は、十分な流動度と熱間割れに対する耐性を提供する必要がある。金属の鋳造工程では、金属合金は、金型のすべての複雑な細部に流れ込み、かつ充填するのに十分な流動度を有する必要がある。狭いおよび/または長い金型チャネルを備えた金型では、金型を充填するために十分に高い合金の流動度が求められる。
【0037】
熱間割れは、アルミニウム合金を含む合金を鋳造するときに観察される一般的で壊滅的な欠陥である。合金の熱間割れを防ぐことができなければ、信頼性と再現性のある部品を作成することはできない。熱間割れは、鋳造部品がまだ半固相鋳造中にある間に、不可逆的な亀裂が形成されることである。熱間割れは、多くの場合、鋳造工程自体に関連、すな
わち、凝固中のメルトフローの収縮中に熱応力が発生することに関連しているが、合金の基礎となる熱力学と微細構造が関与している。
【0038】
本開示は、熱間割れを最小限に抑え、鋳造工程で使用するのに十分な流動度を有し、所望の高い降伏強度および導電率を有する、鋳造可能なアルミニウム合金組成を記載する。
アルミニウム合金組成
【0039】
本発明の実施形態は、高い降伏強度および高い導電率の両方、ならびに改善された流動度および熱間割れまたは亀裂に対する耐性を有するアルミニウム合金の鋳造に関する。アルミニウム合金は、従来の市販のアルミニウム合金と比較して、高い降伏強度および高い導電率を有することが見出された。アルミニウム合金は、本明細書では、合金内の全元素および粒子の重量パーセント(wt%)、ならびに合金の特定の特性によって記述される。本明細書に記載された合金の残りの組成は、アルミニウムおよび随伴不純物であることが理解されよう。
【0040】
不純物は、出発材料中に存在するか、アルミニウム合金を作成するための加工および/または製造ステップの1つで導入される可能性がある。随伴不純物は、降伏強度、導電率、流動度、および熱間割れ耐性などの組成物の材料特性に影響を与えない、または実質的に影響を与えない化合物および/または要素である。実施形態では、随伴不純物は、およそ0.2wt%以下である。他の実施形態では、随伴不純物は、およそ1wt%以下である。さらなる実施形態では、随伴不純物は、およそ0.5wt%以下である。さらに別の実施形態では、随伴不純物は、およそ0.1wt%以下である。いくつかの実施形態では、Siは随伴不純物である。いくつかの実施形態では、Siは、最大でも随伴不純物としての量で存在する。いくつかの実施形態では、Siは実質的に存在しない。いくつかの実施形態では、Siは存在しない。
【0041】
いくつかの実施形態では、アルミニウム合金組成物は、4.0~6wt%の範囲のNi、0.2~0.8wt%の範囲のFe、0.01~0.1wt%の範囲のTiを含み、残りの組成(wt%による)は、Alと随伴不純物である。いくつかの実施形態では、アルミニウム合金組成物は、4.3~6wt%の範囲のNiあるいは5~5.5wt%の範囲のNi、0.2~0.8wt%の範囲のFe、0.01~0.1wt%の範囲のTiを含み、残りの組成(wt%による)は、Alと随伴不純物である。
【0042】
いくつかの実施形態では、アルミニウム合金組成物は、2wt%、3wt%、3.5wt%、4wt%、4.2wt%、4.3wt%、4.5wt%、4.7wt%、5wt%、5.2wt%、5.5wt%、5.7wt%、5.9wt%、6wt%、6.5wt%、7wt%、もしくは8wt%、または約2wt%、約3wt%、約3.5wt%、約4wt%、約4.2wt%、約4.3wt%、約4.5wt%、約4.7wt%、約5wt%、約5.2wt%、約5.5wt%、約5.7wt%、約5.9wt%、約6wt%、約6.5wt%、約7wt%、もしくは約8wt%、またはそれらの間にある任意の範囲の値の量でNiを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、アルミニウム合金組成物は、0.05wt%、0.1wt%、0.15wt%、0.2wt%、0.25wt%、0.3wt%、0.35wt%、0.4wt%、0.45wt%、0.5wt%、0.55wt%、0.6wt%、0.65wt%、0.7wt%、0.75wt%、0.8wt%、0.85wt%、0.9wt%、もしくは1wt%、または約0.05wt%、約0.1wt%、約0.15wt%、約0.2wt%、約0.25wt%、約0.3wt%、約0.35wt%、約0.4wt%、約0.45wt%、約0.5wt%、約0.55wt%、約0.6wt%、約0.65wt%、約0.7wt%、約0.75wt%、約0.8wt%、約0.85wt%、約0
.9wt%、もしくは約1wt%、またはそれらの間にある任意の範囲の値の量でFeを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、アルミニウム合金組成物は、0.001wt%、0.01wt%、0.02wt%、0.03wt%、0.04wt%、0.05wt%、0.06wt%、0.07wt%、0.08wt%、0.09wt%、0.1wt%、0.15wt%、0.2wt%、0.3wt%もしくは0.5wt%、または約0.001wt%、約0.01wt%、約0.02wt%、約0.03wt%、約0.04wt%、約0.05wt%、約0.06wt%、約0.07wt%、約0.08wt%、約0.09wt%、約0.1wt%、約0.15wt%、約0.2wt%、約0.3wt%もしくは0.5wt%、またはそれらの間にある任意の範囲の値でTiを含む。
【0045】
合金性能
本明細書に記載のアルミニウム合金の降伏強度は、少なくとも90MPaまたは少なくとも約90MPaである。いくつかの実施形態では、降伏強度は、少なくとも90MPa、95MPa、100MPa、110MPa、120MPa、130MPa、140MPaもしくは150MPa、または少なくとも約90MPa、約95MPa、約100MPa、約110MPa、約120MPa、約130MPa、約140MPaもしくは約150MPa、またはそれらの間にある任意の範囲の値である。一実施形態では、本明細書に記載のアルミニウム合金の導電率は、少なくとも40%IACSまたは少なくとも約40%IACSを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルミニウム合金は、少なくとも40%IACS、45%IACS、46%IACS、48%IACS、50%IACS、52%IACS、55%IACSもしくは60%IACS、または少なくとも約40%IACS、約45%IACS、約46%IACS、約48%IACS、約50%IACS、約52%IACS、約55%IACSもしくは約60%IACS、またはそれらの間にある任意の範囲の値を有する。
【0046】
合金の鋳造性
数千、数十万のアルミニウム合金部品を鋳造する可能性のある産業用途では、高い降伏強度および導電率が必要になる場合がある。一方、鋳造工程を使用して部品を再現性よく製造できるように、金属合金の鋳造性も考慮する必要がある。
【0047】
一実施形態では、合金は、合金が金型の全長を濡らし、モールドが適切に形成されることを保証する適切な流動性を有し、その結果、合金は、鋳造物が凝固するときに、熱間割れに耐え、所望の降伏強度を保持する。
【0048】
米国特許仮出願第62/577,516号は、望ましい降伏強度および導電率を生み出すアルミニウム-ニッケル合金に焦点を当てた。2017年10月26日に出願された米国特許仮出願第62/577,516号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。米国特許仮出願第62/577,516号は、ニッケル組成が3.5重量パーセント、ケイ素組成が1重量パーセントのアルミニウム合金が、110MPaの降伏強度、および48%IACSの導電率を有する鋳放し部品になることを示した。しかしながら、その合金の鋳造性は、本明細書に記載の合金によって改善された。
【0049】
アルミニウム合金の鋳造性を改善するために、他の元素成分がアルミニウムと共晶を形成し、アルミニウムの導電率を著しく低下させず、強化析出物を形成することが望ましい。基準に基づくと、所望の鋳造性を生み出すためにアルミニウムと合金化させる2つの候補は、ニッケル(Ni)およびセリウム(Ce)であることが見出された。ニッケルは、およそ6%の重量パーセントでアルミニウムと共晶を形成し、それによってセリウムおよびケイ素は、より大きな重量パーセントでアルミニウムと共晶を形成した。望ましい引張
強度および導電率のために、アルミニウム合金中により多くの割合のアルミニウムを含めることが望ましいので、ニッケルの添加は、セリウムの添加よりも望ましいことが見出された。
【0050】
共晶温度に達する量のニッケルをアルミニウム合金に含めると、鋳造用の溶融物を作成するために必要な加工温度が低下し、それによってエネルギーコストおよびリソースが節約されることが見出された。合金を鋳造するとき、共晶は液相の最後の20%が凝固する温度範囲を低下させた。熱間割れを減らすために、合金系を比較的小さいデルタTで、80%固相から100%固相に冷却することが望ましい。実験結果は、本発明による組成のアルミニウム合金にNiを含めると、比較的小さいデルタTをもたらし、それによって、鋳造部品が熱間割れを起こす傾向が減少することを示した。
【0051】
元素と粒子
アルミニウム合金の一部として含まれる様々な元素や粒子は、アルミニウム合金の特性、特に金属間化合物相を変える可能性がある。以下の説明は、一般に、アルミニウム合金に元素を含めることの影響について説明している。
【0052】
Ni
特定の実施形態では、本開示のアルミニウム合金はニッケルを含有する。ニッケルは、硬さと降伏強度を改善し、膨張係数を低下させることもできる。
【0053】
Fe
特定の実施形態では、本開示のアルミニウム合金は鉄を含有する。鉄は、金型溶着に対する耐性を高め、それによって全体的な工具寿命を延ばすことができる。ただし、鉄は、延性、および有害なβ相を形成する傾向に起因する疲労など、合金の機械的特性に悪影響を与える可能性がある。
【0054】
Ti
特定の実施形態では、本開示のアルミニウム合金はチタンを含有する。チタンは、鉄の金属間化合物を断片化し、合金の形態を変化させ、粒を微細化させる可能性がある。チタンを合金に含めることは、たとえば、降伏応力の機械的特性および導電率の両方を向上させることに役立ち得る。
【0055】
加工方法
いくつかの実施形態では、合金の構成成分の溶融温度より高く、合金を加熱することによって、合金の溶融物を調製することができる。溶融物を鋳造し、室温に冷却した後、合金は様々な熱処理、時効、特定の速度での冷却、および精錬または溶融を経ることがある。加工条件により、より大きいまたはより小さい粒サイズを作成させ、析出物のサイズと数を増減させ、鋳放しの偏析を最小限に抑えるのに役立たせることができる。
【0056】
特定の実施形態では、アルミニウム合金は、さらなる加工なしで鋳造される。他の実施形態では、鋳放しのアルミニウム合金は、さらに加工される。いくつかの実施形態では、鋳放しのアルミニウム合金をエージングする。特定の実施形態では、アルミニウム合金を、鋳造、続いて冷却(空冷、温水焼入れ、後焼入れ、または別のタイプの焼入れまたは冷却など)、次いで250℃±5℃、2時間±15分間(温度上昇および下降時間を含む)、次いで空冷を含む、T5工程に従ってエージングする。他の実施形態では、アルミニウム合金を、鋳造、続いて540℃±5Cで1.75時間±15分間(温度上昇および下降時間を含む)加熱、次いで温水焼入れ、次いで225℃、2時間±15分間(全時間)、次いで空冷を含む、T6工程に従ってエージングする。さらに他の実施形態では、アルミニウム合金を、鋳造、続いて540℃±5Cで1.75時間±15分間(温度上昇および
下降時間を含む)加熱、次いで温水焼入れ、次いで250℃、2時間±15分間(全時間)、次いで空冷を含む、T7工程に従ってエージングする。
【0057】
特定の実施形態では、アルミニウム合金の溶融物が形成された後、それを型で鋳造して、高性能の製品または部品を形成することができる。いくつかの実施形態では、製品は、電気モータの部品などの自動車の一部であり得る。いくつかの実施形態では、モータの部品は、ロータ、ステータ、バスバー、インバータ、または他の電気モータ部品であり得る。
【0058】
[実施例]
材料特性シミュレーション 所望の材料特性を有し得るアルミニウム合金を特定するために、計算分析を行った。これらのシミュレーションの結果を、
図10A~
図10Cにまとめる。
【0059】
図10Aは、本開示の態様による、様々な潜在的な合金組成について、時間の関数として液相率を予測するために使用された計算実験をまとめている。CSCは、T
脆弱/T
滞留の比である。T
脆弱は、熱間割れが発生する可能性が高い脆弱な時間である。T
滞留は、熱亀裂が発生しにくい時間である。この間、液相は、凝固工程中に形成されたチャネルに流れ込み、熱間割れを防ぐことができる。したがって、熱間割れを防ぐには、CSC比を低くすることが望ましい。CSC比が0.71のアルミニウム合金に対して、5.4%のニッケルを含むアルミニウム合金は、CSC比が0.2であった。CSC比は、金型の形状に依存する。これらの計算は、
図9に示す部品を製造する金型の形状に基づいている。この金型は、熱間割れの観点では難しい形状であるため、難易度の低い形状で形成された鋳造部品では、熱間割れが少なくなると予想される。
【0060】
図10Bは、合金を液相線から固相線に冷却するようにシミュレートした場合の収縮実験の計算実験結果を示す。液相線から固相線への収縮ができるだけ少ない合金を設計することが望ましい。観察できるように、5.4%のニッケルを含むアルミニウム合金は、良好に機能し、5.54%の収縮しか示さなかった。収縮を最小限に抑えることは、制御部品の生産を維持し、部品を公差内に保つために重要である。これらの計算実験は、ニッケルの重量パーセントが4.3~6%の間のアルミニウム合金が良好な収縮特性を示すことを示した。
【0061】
図10Cは、本開示の態様による、様々な組成について、固相率の関数として温度依存性を分析した計算実験をまとめている。熱間割れは、樹状突起間の境界に存在する残りの液相において、凝固の後期に発生すると予測された。割れは、通常、固相80~100%の間で発生する。この領域内の温度変化が大きいほど、合金がこの領域で費やす時間が長くなり、割れが発生する可能性が高くなる。
図10Cに示すように、5.4%のニッケルを含むアルミニウム合金は、固相率にほとんど依存せず、したがって、割れが発生する可能性は低い。追加の計算実験は、4.3~6重量パーセントの範囲のニッケルを含むアルミニウム合金が、同様に固相80~100%の領域内で小さな温度範囲を経験したことを示す。
【0062】
図11は、これらの結果を、固相率0.5に対する温度の比として示す。
図11は、
図10Cの特定の計算データをまとめており、ここで、T対Fs
1/2の傾きは、0.87~0.94のFs
1/2範囲に対するKouの基準に従って表されている。この範囲が選択されるのは、凝固の最終段階で熱間割れが発生するためである。傾斜が小さいほど、合金が臨界領域内で費やす時間が短くなり、したがって熱間割れが発生する可能性は低くなる。基本的に一定のひずみ速度で、合金が臨界期内で費やす時間が短いほど、累積ひずみの合計は少なくなる。5.4%のニッケルを含むアルミニウム合金は、わずか2の勾配を
示した。これは、凝固工程中に他の合金よりも少ないひずみが蓄積されていることを示す。したがって、熱間割れが発生する可能性は低くなる。
【0063】
図12は、本開示の態様による、様々な組成について、固相率に対する温度の計算シミュレーション実験をまとめている。
図12は、本質的に、2つの粒の間の流れ込みチャネルの幅を示す。流れ込みチャネルが広いほど、液相が割れを埋める可能性が高くなり、したがって熱間割れの可能性は低くなる。これは、流れ込みにとって重要であり、計算実験は、5.4%のニッケルを含むアルミニウム合金が最高の性能を発揮することを示す。合金は、チャネル幅を大きくすると、次のように機能する。A206<Al1Si<Al3.5Si<A390<Al5.4Ni。
【0064】
材料特性実験
図10A~
図12の計算実験データを用いて、いくつかのアルミニウム合金組成物を作成し、それらの材料特性を試験した。
【0065】
本開示のアルミニウム合金の組成は、以下の表1A~表1Cに示され、これらは、計算モデリングおよびサンプルの物理的試験の両方を使用して開発された。アルミニウム合金は、
図2に示す従来の鋳造用合金と比較して、鋳造性が改善し、降伏強度および導電率が向上している。
【表1】
【0066】
図4は、硬さおよび導電率の測定が行われた物理的サンプル試験の結果を示す。硬さは、HV≒3σ
yの関係によって降伏強度に関係する。ここで、HVは硬さ値、σ
yは降伏応力である。
【0067】
硬さ値を測定し、次いで硬さ値に基づいて降伏応力を計算することによって、アルミニウム合金の降伏強度を間接的に決定できる。硬さは、ASTM E18(ロックウェル硬さ)、ASTM E92(ビッカース硬さ)、またはASTM E103(迅速押込硬さ)を使用し、次いで降伏強度を計算することを介して決定できる。降伏強度はまた、試験装置、試験試料、および引張試験の試験手順を取り扱うASTM E8を介して直接決定できる。アルミニウム合金の導電率は、電磁(渦電流)法を使用した導電率の決定を取り扱うASTM E1004、または導体材料の電気抵抗率の決定を取り扱うASTM B193を介して決定できる。
【0068】
図4に示すように、各合金組成物は、純粋アルミニウムよりも導電率が低くなるが、硬さは高くなる(つまり、降伏強度が大きくなる)。特定の自動車部品では、およそ48%IACSの導電率が望ましい。5.1重量パーセントのニッケルを含むアルミニウム合金は、十分に高い硬さ値を維持しながら、良好な導電率を示す。他の物理的および計算実験は、4.3~6重量パーセントの範囲のニッケル組成が同様に機能し、特定の自動車部品に十分な少なくとも46%IACSの導電率をもたらすことを示す。
【0069】
図5は、本開示の様々な合金組成物についての降伏応力測定の結果をまとめている。鉄およびチタンの添加は、アルミニウム-ニッケル合金の降伏強度を増加させることが見出された。物理的および計算実験は、0.2~0.8重量パーセントの間の鉄の組成範囲、および0.01~0.1重量パーセントの間のチタンの組成範囲が、合金の降伏強度を増加させることを示した。これは、合金全体に形成する、鉄およびチタンの析出物に起因する可能性がある。鉄および/またはチタンを含有するアルミニウム合金の冷却中に、様々な金属間化合物相が形成される場合がある。
【0070】
表2は、3種の異なるアルミニウム合金組成物の実験結果をまとめている。(1)1%のSi、0.4%のMg、および0.03%のTiと、残りのパーセントのアルミニウム、(2)3.6%のSi、0.04%のMg、および0.03%のTiと、残りのパーセントのアルミニウム、ならびに(3)5.3%のNi、0.35%のFe、および0.03%のTiと、残りのパーセントのアルミニウム。列挙されているパーセントは、すべて重量パーセントである。様々なサンプルを鋳造し(または、鋳放し)、次いで導電率、降伏強度、および引張強度の試験をした。または鋳造し、次いでT5処理工程に従って処理し、次いで導電率および降伏強度の試験をした。
【0071】
表2に示す合金の降伏強度、極限引張強度(UTS)、および導電率は、鋳放しまたはT5処理工程に従って加工されたいずれでも、多くの商用自動車部品の最小要件を満たした。さらに、T6またはT7処理工程で加工された合金も、降伏強度、極限引張強度(UTS)、および導電率の最小要件を同様に満たしていた。
【表2】
【0072】
図6は、表2に示す合金の降伏強度および導電率をグラフで示す。
図6に見られるように、3種の鋳造用アルミニウム合金はすべて、合金設計空間内またはその近くの降伏強度および導電率を有する。
【0073】
図7は、流動性実験の実験結果を示す。合金から部品を鋳造する場合、合金が金型を完全に濡らし、そして使用可能な部品が得られることを保証するには、一般に流動性が高い方がよい。いずれにせよ、金型および製造する部品によって、最小限の流動性が必要である。
図7は、5.3%のAl-Niを含むアルミニウム合金が、1%のSiを含むアルミニウム合金および3.%のSiを含むアルミニウム合金(すべて重量パーセント)よりも高い流動性を有することを示す実験結果を示す。したがって、流動性の観点から、ニッケルを含めると流動性が向上する。計算実験は、ニッケルの重量パーセントが4.3~6%の間の場合、多くの自動車部品および金型に必要なレベルの流動性を満たすことを示唆している。
【0074】
図8は、熱間割れ感受性(HTS)実験および計算の結果を示す。熱間割れ感受性は、以下の式に示すように、各バーに対する、バーの長さの評価(L)および亀裂の重大度の評価(C)の積を、バーの数にわたって合計したものである。
【0075】
【0076】
図8に示すように、5.3%のニッケルを含むアルミニウム合金は、非常に良く機能した。計算実験は、ニッケルの重量パーセントが4.3~6%の間の場合、多くの自動車部品および金型に必要なレベルのHTSを満たすことを示唆している。
【0077】
図9は、ダイカストによって形成された試験サンプルを示し、パネルAは低Si合金(
Al-1Si)を示し、パネルBは高Si合金(Al-3.5Si)を示し、パネルCは純粋なAlを示し、パネルDはNi合金(Al-5.3Ni-0.3Fe-0.03Ti)を示す。観察できるように、パネルDに示す5.3%のニッケル(ならびに0.3%のFeおよび0.03%のTi)を含むアルミニウム合金は、実験中に熱間割れをまったく示さなかった。
【0078】
しかしながら、パネルAに示す1%のSiを含む鋳放し合金、およびパネルCに示す純粋なAlの鋳造の両方で、画像の丸で囲んだ部分に示されているように、熱間割れおよび亀裂が見られる。したがって、パネルAおよびCに示す合金および金属は、熱間割れの影響を非常に受けやすく、降伏強度の低い製造部品が作成されることを示す。
【0079】
また観察できるように、パネルBに示す3.5%のケイ素を含むアルミニウム合金は、実験用金型を完全に濡らすのに十分な流動性を示さず、したがって鋳造用合金は金型の丸で囲んだ端まで完全には伸びなかった。したがって、パネルBに示す鋳造部品は不完全であり、合金の流動性が製造部品の鋳造に課題をもたらすことを示唆している。
【0080】
図9に示されるように、パネルDに示す5.3%のニッケルを含むアルミニウム合金は、鋳造用製造部品の使用に許容可能であることが示された唯一の鋳造用金属であった。
【0081】
前述の明細書では、本開示は、特定の実施形態を参照して説明されてきた。しかしながら、当業者が理解するように、本明細書に開示される様々な実施形態を、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な他の方法で修正または実施することができる。したがって、この説明は例示と見なされるべきであり、開示されたシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の様々な実施形態を作成および使用する方法を当業者に教えることを目的としている。本明細書に示され、説明される開示の形態は、代表的な実施形態として解釈されるべきと理解されるべきである。同等の要素、材料、工程またはステップを、本明細書に代表的に例示および記載されているものの代わりに使用することができる。さらに、本開示の特定の特徴は、他の特徴の使用とは独立して利用することができ、すべては、本開示のこの説明の利益を得た後、当業者には明らかであろう。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、またはそれらの文脈上の変形は、非排他的な包含を含むことを意図している。たとえば、要素のリストを含む工程、製品、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるわけではなく、そのような工程、製品、物品、または装置に明示的に列挙されていない、または固有ではない他の要素を含み得る。さらに、明示的に反対の記載がない限り、「または(or)」は、包括的orを指し、排他的orを指さない。たとえば、条件「AまたはB」は、以下、Aが真(または存在する)およびBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)およびBが真(または存在する)、ならびAおよびBの両方が真(または存在する)のいずれかを満たす。
【0083】
ステップ、操作、または計算は特定の順序で提示され得るが、異なる実施形態では、この順序を変更することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で複数のステップが連続して示されている範囲内で、別の実施形態では、そのようなステップのいくつかの組合せを同時に実行することができる。本明細書に記載されている一連の操作を、中断、一時停止、逆転、または別途、別の工程によって制御することができる。
【0084】
図面/図に示されている1つまたは複数の要素はまた、特定の用途に従って有用であるように、より分離もしくは統合された方法で実装され得るか、または特定の場合において
、操作不能として除去もしくは放棄さえされ得ることも理解されよう。さらに、図面/図の矢印はすべて、特に明記されていない限り、例示としてのみ考慮されるべきであり、限定するものではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4~6wt%のNiと、
アルミニウムと、を含み、少なくとも約90MPaの降伏強度および少なくとも約48%IACSの導電率を有する、鋳造用アルミニウム合金。
【外国語明細書】