(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075642
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】溶剤臭用消臭剤組成物及びこれを用いた溶剤臭の消臭方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20240528BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20240528BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61L9/01 V
A61L9/01 J
A61L9/14
C11B9/00 T
C11B9/00 S
C11B9/00 C
C11B9/00 L
A61L9/01 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040128
(22)【出願日】2024-03-14
(62)【分割の表示】P 2020024361の分割
【原出願日】2020-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000208086
【氏名又は名称】大洋香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】水盛 隆司
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏
(57)【要約】
【課題】トルエンやキシレン等の有機溶剤臭や、石炭の燃焼時に生じる臭いやコークス臭等の種々の成分を含む臭気に対して、効果的な消臭剤組成物を提供すること、及び、容易で効果的な消臭方法を提供する。
【解決手段】有効成分として、サリチル酸イソアミル、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、2-オクチン酸メチル及びリナロールより選択される香料成分の少なくとも1種とγ-メチルイオノンとを含む香料組成物Bを含む、溶剤臭用消臭剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、
サリチル酸イソアミル、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、2-オクチン酸メチル及びリナロールより選択される香料成分の少なくとも1種とγ-メチルイオノンとを含む香料組成物Bを含む、溶剤臭用消臭剤組成物。
【請求項2】
3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチルシトレート及びイソプロピルミリステートからなる群より選択される溶媒を少なくとも1種含む、請求項1に記載の溶剤臭用消臭剤組成物。
【請求項3】
溶剤臭は有機溶剤臭及び/又はコークス臭である請求項1又は2に記載の溶剤臭用消臭剤組成物。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の溶剤臭用消臭剤組成物を、散布、噴霧又は添加することを特徴とする溶剤臭の消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶剤臭用消臭剤組成物及びこれを用いた溶剤臭の消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種化学工場や製紙工場等では、製品の製造に伴い、各種のさまざまな不快に感じる臭気が発生する。このような臭気は、通常低濃度のものが多いが、特に近隣地区に住宅街が存在する場合、その防臭処理は確実に行う必要がある。
このため、それらの工場では、臭気ガスを吸引して消臭装置に導き、そこでストリッピング処理や、活性炭処理、生物処理及び化学洗浄処理等を行い、無臭の排ガスとして系外に排出している(特許文献1、2参照)。
また、家庭内でも、さまざまな不快に感じる臭気が発生する。このような臭気に対して香料を主体とした芳香系消臭剤(マスキング剤、臭気中和剤等)の散布や噴霧が行なわれている(特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、上記の消臭装置に臭気ガスを吸引して処理する方法では、吸引や消臭装置の設備コストが大きく、簡単には導入できない場合がある。
特に化学工場等では、キシレン、トルエン及びベンゼン等の溶剤が多用されるが、このような有機溶剤が原因となって溶剤臭が発生する。また、タールからも溶剤臭が発生する。通常、これらの溶剤臭の濃度自体は希薄である場合が多く、溶剤臭に対して上記のような比較的大規模な装置を導入するとなると、設備コストに加え、処理効率が上がらないという問題がある。
一方、家庭内においては、上記の芳香系消臭剤で大半の臭気は防臭可能であるが、溶剤を使用したボールペン等の文房具や、家庭用の各種油性ペンキ類等から発生する溶剤臭に対しては、消臭及びマスキング効果が十分でないという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、特定の香料成分を3種類以上含有する溶剤臭用防臭剤組成物が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-319842号公報
【特許文献2】特開2007-160142号公報
【特許文献3】特開2000-355696号公報
【特許文献4】特開2009-172189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トルエンやキシレン等の有機溶剤臭に加えて、石炭の燃焼時に生じる臭いやコークス臭等の種々の成分を含む臭気に対して、効果的に消臭作用を発揮する消臭剤及び消臭方法が望まれていた。
【0007】
本発明は、トルエンやキシレン等の有機溶剤臭や、石炭の燃焼時に生じる臭いやコークス臭等の種々の成分を含む臭気に対して、効果的な消臭剤組成物を提供すること、及び、容易で効果的な消臭方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、以下の発明を完成させた。
すなわち、本発明は、少なくとも有効成分として、以下のa群より選択される香料成分を少なくとも1種とジヒドロジャスモンとを含む香料組成物A、以下のb群より選択される香料成分を少なくとも1種とγ-メチルイオノンとを含む香料組成物B、以下のc群より選択される香料成分を少なくとも1種とサリチル酸イソアミルとを含む香料組成物C及び以下のd群より選択される香料成分を少なくとも1種とスチラリルアセテートとを含む香料組成物Dの少なくとも一種を含む溶剤臭用消臭剤組成物である。
a群:γ-メチルイオノン、サリチル酸イソアミル、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニル及びリナロール
b群:ジヒドロジャスモン、サリチル酸イソアミル、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、2-オクチン酸メチル及びリナロール
c群:ジヒドロジャスモン、γメチルイオノン、アニシルアセテート、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、2-オクチン酸メチル、炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニル及びリナロール
d群:ジヒドロジャスモン、γ-メチルイオノン、サリチル酸シス-3-ヘキセニル及び炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニル
また、本発明の溶剤臭用消臭剤組成物は、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチルシトレート及びイソプロピルミリステートからなる群より選択される溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
上記溶剤臭はコークス臭であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、上記溶剤臭用消臭剤組成物を、散布、噴霧又は添加することを特徴とする溶剤臭の消臭方法でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トルエンやキシレン等の有機溶剤臭や、石炭の燃焼時に生じる臭いやコークス臭等の種々の成分を含む臭気に対して、効果的な消臭剤組成物を提供することができる。また、トルエンやキシレン等の有機溶剤臭や、石炭の燃焼時に生じる臭いやコークス臭等の種々の成分を含む臭気に対して、容易で効果的な消臭方法を提供することができる。さらに、本発明の溶剤臭用消臭剤組成物を用いた消臭処理、本発明の溶剤臭の消臭方法では、処理後に新たな不快臭を生じない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の溶剤臭用消臭剤組成物や消臭方法の対象となる溶剤臭は、キシレン、トルエン、及びベンゼン等の有機溶剤から発生する有機溶剤臭、及び、複数成分を含む臭気であるコークス臭である。本明細書において、溶剤臭は、上記有機溶剤臭及び上記コークス臭を含むものであるが、それぞれの臭気を特異的に説明する場合は、有機溶剤臭、コークス臭と示して説明する。
有機溶剤臭は、例えば、化学工場等で使用される溶剤タンク等から発生する。また、コークス臭は、例えば、製鋼工場におけるコークス炉やタールデカンター等から発生する。
【0012】
本発明の溶剤臭用消臭剤組成物は、少なくとも有効成分として、以下のa群より選択される香料成分を少なくとも1種とジヒドロジャスモンとを含む香料組成物A、以下のb群より選択される香料成分を少なくとも1種とγ-メチルイオノンとを含む香料組成物B、以下のc群より選択される香料成分を少なくとも1種とサリチル酸イソアミルとを含む香料組成物C及び以下のd群より選択される香料成分を少なくとも1種とスチラリルアセテートとを含む香料組成物Dの少なくとも一種を含む。
a群:γ-メチルイオノン、サリチル酸イソアミル、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニル及びリナロール
b群:ジヒドロジャスモン、サリチル酸イソアミル、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、2-オクチン酸メチル及びリナロール
c群:ジヒドロジャスモン、γメチルイオノン、アニシルアセテート、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、2-オクチン酸メチル、炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニル及びリナロール
d群:ジヒドロジャスモン、γ-メチルイオノン、サリチル酸シス-3-ヘキセニル及び炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニル
特定の2種以上の香料成分を含む香料組成物A、B、C及びDの少なくとも1種の香料組成物を有効成分として含むことで、単一成分からなる溶剤臭のみではなく、複数成分からなる溶剤臭に対しても効果的に消臭効果を発揮する。本発明の溶剤臭用消臭剤組成物は、上記特定の2種以上の香料成分を含む香料組成物A、B、C及びDの少なくとも1種の香料組成物の他に、他の香料成分を含んでいてもよい。
【0013】
本発明の溶剤臭用消臭剤組成物は、少なくとも有効成分として、上記香料組成物A、B、C及びDの少なくとも1種の香料組成物を含んでいればよく、例えば、上記香料組成物A、B、C、又はDに加え、ジヒドロジャスモン、γ-メチルイオノン、サリチル酸イソアミル、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、2-オクチン酸メチル、炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニル及びリナロールからなる群より選択される香料成分を少なくとも1種を含み、3種以上の香料成分を含んでいてもよい。
また、本発明の溶剤臭用消臭剤組成物は、ジヒドロジャスモン、γ-メチルイオノン、サリチル酸イソアミル、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、2-オクチン酸メチル、炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニル及びリナロールからなる9種の香料成分を含む組成物であってもよい。
【0014】
本発明の溶剤臭用消臭剤組成物は、上記の選択された香料を、水やアルコール等の適当な溶媒に溶解して水性系として、又は、濃厚な界面活性剤等を用いて非水性系として、溶液状で使用することができる。
本発明の溶剤臭用消臭剤組成物に含まれる溶媒は、特に限定されず、水やアルコール等を用いることができるが、低臭、低毒、生分解性に加え、安全性に優れた溶媒であることが好ましい。このような溶媒を含む溶剤臭用消臭剤組成物は、化学工場、製鉄所において環境及びヒトに対して安全に使用できるためである。なお、このような溶媒として、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチルシトレート及びイソプロピルミリステートが挙げられる。本発明の溶剤臭用消臭剤組成物に含まれる溶媒は、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチルシトレート及びイソプロピルミリステートからなる群より選択される溶媒を少なくとも1種含むことが好ましく、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールを含むことがより好ましい。
【0015】
上記水性系の場合には、香料の濃度にもよるが、香料の溶解や乳化、分散浸透等を容易にするために、上記香料成分以外にさらに界面活性剤を添加してもよい。
本発明の溶剤臭用消臭剤組成物に使用される前記界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性のいずれの界面活性剤も使用可能であるが、望ましくはノニオン性界面活性剤を使用する。
このようなノニオン性界面活性剤として、脂肪族アルコール(炭素数8~24)アルキレンオキシド(炭素数2~8)付加物(重合度=1~100)、多価(2価~10価またはそれ以上)アルコール脂肪酸(炭素数8~24)エステル[モノステアリン酸グリセリン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレングリコールソルビタンモノオレート等]、脂肪酸(炭素数8~24)アルカノールアミド[1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、1:1型ラウリン酸ジエタノールアミド等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2~8、重合度=1~100)アルキル(炭素数1~22)フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジオール、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2~8、重合度=1~100)アルキル(炭素数8~24)アミンおよびアルキル(炭素数8~24)ジアルキル(炭素数1~6)アミンオキシド[ラウリルジメチルアミンオキシド等]、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、上記溶剤臭用消臭剤組成物の香料の溶解や乳化、分散、浸透を一層容易にするために、又は溶剤臭用消臭剤組成物が凝固するのを防止するために、さらに多価アルコール類を添加することもできる。
このような多価アルコール類としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、イソプレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が例示される。
【0016】
本発明の溶剤臭用消臭剤組成物中の成分濃度は、水性系状組成物の場合、通常、香料が0.1~10質量%、必要により界面活性剤が0.5~20質量%、及びさらに必要により多価アルコール類が1~30質量%、水が残部となるように配合する。
一方、非水性系の場合、通常、香料が0.5~60質量%、残部が界面活性剤、又は多価アルコール類を添加する場合、通常、多価アルコール類が1~30質量%、界面活性剤が残部となるように配合する。
【0017】
このような溶液状の溶剤臭用消臭剤組成物の場合、臭気が発生している固体や液体の臭気発生源に直接散布、又は噴霧することができる。その場合、手で振り掛けても良いが、通常は適当な散布器や噴霧器等の器具を使用して行う。
【0018】
本発明に係る溶剤臭用消臭剤組成物は上記溶液状に限定されず、固体状、粉末状、ゲル状、エアゾール状など、臭気発生対象に応じて、任意の形状により使用することができる。
固体状溶剤臭用消臭剤組成物は、担体を用いてそれに溶液状溶剤臭用消臭剤組成物を含浸させ、適当な容器に収納して得られる。この目的に使用される担体としては、活性炭、ゼオライト、アルミナ、珪藻土、珪酸カルシウム、ガラス繊維、及び素焼き等の無機多孔体からなる担体や動植物ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸、シュガーエステル、ろ紙等の有機性担体が挙げられる。
ゲル状溶剤臭用消臭剤組成物は、寒天、カラギーナン、シリカゲル、ジェランガム、ゼラチン、セルロース誘導体、多糖類ゲル、金属石鹸、ポリビニルアルコール、吸水性高分子等に前記溶液状防溶剤臭用消臭剤組成物を含浸・担持させ、適当な容器に収納して得られる。
エアゾール状溶剤臭用消臭剤組成物は、液状又は粉状の前記溶剤臭用消臭剤組成物と液化プロパンガス、ジメチルエーテル、炭酸ガス、圧縮空気などの噴射剤とを耐圧容器に充填して得られる。
なお、本発明に係る溶剤臭用消臭剤組成物を包接することができるシクロデキストリン等の天然・合成系ホスト化合物を用いると、粉末状溶剤臭用消臭剤組成物とすることができる。
【0019】
本発明に係る溶剤臭用消臭剤組成物は、必要に応じて、さらに他の香料を添加してもよい。
そのような香料としては、例えば、酢酸テルピニル、テルピネオール、ショウ脳、アセトアルデヒドエチルヘキセニルアセタール、cis-ジャスモン、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジヒドロジャスモン酸メチル、安息香酸ベンジル等を挙げることができるが、本発明の目的に反しない限り、使用目的に応じて添加することができる。
さらに、本発明に係る溶剤臭用消臭剤組成物は、必要により、さらに防腐剤、殺菌剤、増粘剤、天然・合成色素、乳化剤等を配合することができる。例えば、防腐剤、殺菌剤としては、ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム等の1種又は2種以上を挙げることができる。
【0020】
本発明の溶剤臭用消臭剤組成物は、コークス臭の消臭に使用されることが好ましい。本発明の溶剤臭用消臭剤組成物は、有機溶剤臭及びコークス臭のいずれに対しも効果的に消臭する作用を発揮するが、複数成分を含むコークス臭をより効果的に消臭できるためである。
【0021】
本発明の溶剤臭用消臭剤組成物がコークス臭用消臭剤組成物である場合、香料成分として、ジヒドロジャスモン、γ-メチルイオノン、サリチル酸イソアミル、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、2-オクチン酸メチル、炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニル及びリナロールを含むことが好ましい。9種の香料成分を含むことにより、複数成分を含む臭気であるコークス臭をさらに効果的に消臭できるためである。
【0022】
また、本発明は、上記溶剤臭用消臭剤組成物を散布、噴霧又は添加することを特徴とする溶剤臭の消臭方法でもある。上記消臭方法が散布又は噴霧である場合、上記溶剤臭用消臭剤組成物は、使用時に溶液状であればよく、溶液状の溶剤臭用消臭剤組成物を、原液で若しくは希釈して用いてもよく、また、固体状溶剤臭用消臭剤組成物を水またはアルコール等の溶媒に溶解させて使用してもよい。また、上記消臭方法が、上記溶剤臭用消臭剤組成物を添加する場合、上記溶剤収容消臭剤組成物は、溶液状又は固体状のいずれの形態であってもよく、添加しやすい形態にして用いることができる。
【0023】
以下、実験例、比較実験例、実施例及び比較例に基いて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0024】
[有機溶剤臭に対する各香料成分による消臭試験]
(実験例1~5及び比較実験例1及び2)
キシレンに対する下記表1に記載の各香料成分の消臭効果を次のようにして測定した。
(1)キシレンを下記表1に記載の濃度となるように無臭空気を充填した1Lサンプリングバッグに入れ、50℃の高温槽で1時間静置し、臭気ガスを調製した。
(2)1L三角フラスコに、下記表1に記載の各香料成分の原液を5g入れた後、シリコン栓で密封し、上記(1)で調製した臭気ガスを20ml(キシレンガス)上記1L三角フラスコに入れた。
(3)常温(25℃)で30分静置後、検知管を用いて臭気ガスの濃度を測定した。なお、比較実験例1(ブランク)では、上記各香料成分を添加しなかった。また、比較実験例2(水)では、上記各香料成分の代わりに水5gを添加した。
(4)得られたキシレン濃度を下記式(I)に当てはめ、比較試験例1(ブランク)又は比較試験例2(水)と比較した消臭率を算出した。得られた結果を下記表1に示す。
式(I):消臭率(%)=(ブランク(水)の濃度結果-測定濃度結果/ブランク(水)の濃度結果×100
【0025】
(香料成分)
実験例、実施例及び比較例で用いた香料成分の詳細は下記の通りである。
1.ジヒドロジャスモン:株式会社井上香料製造所
2.γ-メチルイオノン:ジボダン ジャパン株式会社
3.サリチル酸イソアミル:豊玉香料株式会社
4.スチラリルアセテート:株式会社井上香料製造所
5.アニシルアセテート:株式会社井上香料製造所
6.サリチル酸シス-3-ヘキセニル:シムライズ株式会社
7.2-オクチン酸メチル:ジボダン ジャパン株式会社
8.炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニル:アイ・エフ・エフ日本株式会社
9.リナロール:BASFジャパン株式会社
【0026】
【0027】
(実験例6~9及び比較実験例3及び4)
キシレンに対する下記表2に記載の各香料成分の消臭効果を、上記実験例1と同様にして測定した。また、比較実験例3(ブランク)は、上記比較実験例1と同様にして測定し、また、比較実験例4(水)は、上記比較実験例2と同様にして測定した。得られた結果を下記表2に示す。
【0028】
【0029】
(実験例10~14及び比較実験例5及び6)
トルエンに対する下記表3に記載の各香料成分の消臭効果を、上記実験例1と同様にして測定した。なお、実験例10~14では、実験例1の実験操作(1)の代わりに、トルエンを下記表3に記載の濃度となるように無臭空気を充填した1Lサンプリングバッグに入れ、50℃の高温槽で1時間静置し臭気ガスを調製し、また、実験操作(2)において、臭気ガス10ml(トルエンガス)を上記1L三角フラスコに入れた以外は、実験例1と同様の操作を行い、臭気ガス(トルエン)濃度を測定した。なお、比較実験例5(ブランク)では、各香料成分を添加しなかった以外は実験例10と同様の操作を行い、臭気ガス(トルエン)濃度を測定した。また、比較実験例6(水)では、上記各香料成分の代わりに水5gを添加した以外は実験例10と同様の操作を行い、臭気ガス(トルエン)濃度を測定した。得られた結果を下記表3に示す。
【0030】
【0031】
(実験例15~18及び比較実験例7及び8)
トルエンに対する下記表4に記載の各香料成分の消臭効果を、上記実験例10と同様にして測定した。また、比較実験例7(ブランク)は、上記比較実験例5と同様にして測定し、また、比較実験例8(水)は、上記比較実験例6と同様にして測定した。得られた結果を下記表4に示す。
【0032】
【0033】
(実験例19~24及び比較実験例9及び10)
トルエンに対する下記表5に記載の各香料成分を10%に希釈した溶液の消臭効果を、上記実験例10と同様にして測定した。なお、実験例19~24では、実験例10の実験操作(1)の代わりに、トルエンを下記表5に記載の濃度となるように無臭空気を充填した1Lサンプリングバッグに入れ、50℃の高温槽で1時間静置し臭気ガスを調製した以外は、実験例10と同様の操作を行い、臭気ガス(トルエン)濃度を測定した。なお、比較実験例9(ブランク)では、各香料成分を添加しなかった以外は実験例19と同様の操作を行い、臭気ガス(トルエン)濃度を測定した。また、比較実験例10(水)では、上記各香料成分の代わりに水5gを添加した以外は実験例19と同様の操作を行い、臭気ガス(トルエン)濃度を測定した。得られた結果を下記表5に示す。
【0034】
【0035】
(実験例25~27及び比較実験例11及び12)
トルエンに対する下記表6に記載の各香料成分を10%に希釈した溶液の消臭効果を、上記実験例19と同様にして測定した。また、比較実験例11(ブランク)は、上記比較実験例9と同様にして測定し、また、比較実験例12(水)は、上記比較実験例10と同様にして測定した。得られた結果を下記表6に示す。
【0036】
【0037】
上記表1~6の結果から、各香料成分(ジヒドロジャスモン、γ-メチルイオノン、サリチル酸イソアミル、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、2-オクチン酸メチル、炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニル及びリナロール)はいずれも、トルエン及びキシレンに対し消臭効果を有することを確認した。
【0038】
[有機溶剤臭に対する消臭効果]
(実施例1~19、比較例1~17及び参考例1~9)
上記実験例においてトルエン及びキシレンに対し消臭効果を示した9種の香料成分について、2種の組み合わせによる消臭効果を確認した。
【0039】
具体的に、トルエンに対する下記表7に記載の2種の香料成分を1:1で混合したものを1質量%(w/w%)、界面活性剤としてイオネットT-80V(非イオン界面活性剤、三洋化成工業株式会社製)を3質量%、及び、純水を96質量%添加して混合した36種類のサンプル溶液の、トルエンに対する消臭効果を測定した。
上記実験例10の実験操作(1)の代わりに、トルエンを60ppmとなるように無臭空気を充填した1Lサンプリングバッグに入れ、50℃の高温槽で1時間静置し臭気ガスを調製した以外は、上述の実験例10と同様の操作を行い、臭気ガス(トルエン)濃度を測定した。また、参考例1(ブランク)として、香料成分を用いず、イオネットT-80Vを3質量%及び純粋を97質量%を混合し、参考例1に係るサンプル溶液を調製した以外は、上記36種類のサンプル溶液に対する操作と同様の操作を行い、臭気ガス(トルエン)濃度を測定した。また、参考例2~10として、9種類の各香料成分を単独で1質量%、界面活性剤としてイオネットT-80Vを3質量%、及び、純水を96質量%添加混合し、参考例2~10に係るサンプル溶液を調製した以外は、上記36種類のサンプル溶液に対する操作と同様の操作を行い、参考例2~10(香料成分単独)の臭気ガス(トルエン)濃度を測定した。参考例1(ブランク)に係るサンプル溶液の消臭比率を1とした時の、36種類のサンプル溶液の消臭比率、参考例2~10に係るサンプル溶液の消臭比率を下記表7及び下記表8~15に示す。なお、下記表8~15において、上記36種類のサンプル溶液のうち、消臭比率が1を超えるサンプルは消臭効果を示したサンプルと判断し、実施例とした。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
以上表7~表15の結果から、比較例8~17に係る、アニシルアセテート、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、2-オクチン酸メチル、炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニル及びリナロールの5種から選択された2種を含むサンプル溶液については、参考例1(ブランク)に係るサンプル溶液の消臭比率1と同等以下の消臭比率を示し、消臭効果を得られなかった。
また、比較例1に係るジヒドロジャスモン及び2-オクチン酸メチルを含むサンプル溶液、比較例2又は3に係るγメチルイオノンとサリチル酸シス-3-ヘキセニル又は炭酸メチル(Z)-3-ヘキセニルとを含むサンプル溶液、比較例4に係るサリチル酸イソアミル及びスチラリルアセテートを含むサンプル溶液、比較例5~7に係るスチラリルアセテートと、アニシルアセテート、2-オクチン酸メチル又はリナロールを含むサンプル溶液についても、参考例1に係るサンプル溶液の消臭比率1と同等以下の消臭比率を示し、消臭効果を得られなかった。
【0050】
一方、上述の比較例17種以外の実施例1~19に係るサンプル溶液については、参考例1に係るサンプル溶液の消臭比率1よりも、高い消臭比率を示し、消臭効果を確認することができた。
また、実施例1~12、18及び19に係るサンプル溶液については、香料成分2種の組み合わせによる予想値よりも高い消臭比率が得られており、組み合わせによる相乗効果が確認され、より優れた消臭効果が得られた。
【0051】
[コークス臭に対する消臭効果]
(実施例20)
参考例2~10で用いた9種の香料成分を全て含有する実施例20に係るサンプル(MARINE T-23200」(大洋香料株式会社製))を約5000倍に希釈したものを、某製鉄工場で生じるコークス臭対策として、1m3あたり50mL、空気中に散布した。6名のパネラーがサンプル散布前後の臭いを確認した結果、コークス臭に対する優れた消臭効果を確認した。