(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075684
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】皮膚症状を改善するためのポリペプチドおよび方法
(51)【国際特許分類】
C07K 2/00 20060101AFI20240528BHJP
C07K 7/04 20060101ALI20240528BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20240528BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240528BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240528BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240528BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20240528BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20240528BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240528BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240528BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20240528BHJP
C12N 5/07 20100101ALN20240528BHJP
【FI】
C07K2/00 ZNA
C07K7/04
A61K8/64
A61Q17/04
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K38/10
A61K38/08
A61P17/02
A61P17/16
A61P17/18
C12N5/07
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044194
(22)【出願日】2024-03-19
(62)【分割の表示】P 2021531079の分割
【原出願日】2019-11-29
(31)【優先権主張番号】2018904570
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520448360
【氏名又は名称】インテルク ペプチド セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アグレズ,マイケル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】真皮老化を含む皮膚症状およびUV曝露に関連する皮膚症状を予防および/または処置するためのポリペプチド、組成物および方法を提供する。
【解決手段】配列RSKAKNPLYRを含むポリペプチド、およびそのペプチドの対応するデキストロ-レベルソ形(すなわち、rylpnkaksr)が、ポリアルギニン配列領域(例えば、N-末端)と隣接する場合、種々の皮膚症状を予防または処置するのに使用することができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真皮老化を含む皮膚症状およびUV曝露に関連する皮膚症状を予防および/または処置するためのポリペプチド、組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚老化、皮膚損傷および皮膚創傷治癒の細胞および分子機構は、完全には理解されていない。
【0003】
皮膚老化は、弾力性の喪失、乾燥、シワおよび色素沈着に関連する。皮膚への紫外線(UV)照射、および、特に290~320nmの波長を有するUVBへの曝露は、早期の皮膚老化および皮膚癌の誘発を含む慢性皮膚損傷を引き起こすことが知られている。皮膚癌は、オーストラリアの医療システムに毎年700百万ドルを超える費用がかかり、2018年に診断された新規皮膚癌の事例の推定数は、138,000を超える。
【0004】
UVB照射は、UVB媒介発癌促進における機能的役割を演じるCOX-2のアップレギュレーションを伴うシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の発現を誘導することが示されている。さらに、サイクリックAMP応答配列結合タンパク質(CREB)は、リン酸化されており、UVB処置で活性化され、UVB誘導性COX-2発現の要因である。
【0005】
光損傷DNAの修復は、損傷DNAへの修復酵素のアクセスを可能にする、そのコンパクトなクロマチン構造を解いて再構築するために大量の細胞エネルギーを必要とする。細胞内のエネルギーの主源は、アデノシン三リン酸(ATP)である。皮膚のUV放射への曝露は、皮膚をエネルギーストレスの状態に置き、ATPの生産は、一部はミトコンドリア機能を阻害する酸化的損傷のために減少する。ATP利用可能性の減少は、また、免疫系の有効性も低減し、UV誘導性免疫抑制をもたらす。UV曝露後のこのエネルギー欠乏状態において、抗原曝露により活性化されたエフェクターおよびメモリーT細胞の数は、低下する。UVBの免疫抑制効果は、何十年もの間、認識されてきている。
【0006】
紫外線曝露、主にUVB曝露は、また、活性酸素種(ROS)の増加をもたらし、順にDNAなどの細胞および細胞外成分に損傷を与える。UV光子の吸収は、電子を駆動し、ポルフィリン、ビリルビン、メラニン、およびプテリンなどの細胞の光増感剤から酸素分子にエネルギーを伝達し、ラジカルである一重項O2アニオンを生成する。したがって、一重項酸素アニオンは、DNAのグアニン部分の酸化、続いて構造的再配置および8-ヒドロキシ-2-デオキシグアノシン部分(8-OHdG)の形成を誘導する。8-OHdGは、最も重要なDNA付加体の1つであり、細胞老化および発癌に関連する酸化的DNA損傷の指示体として使用される。
【0007】
さらに、UV照射は、DNAがUVB放射から光子を吸収する場合、直接DNAに作用する。これは、結果として、DNA鎖にその後欠陥をもたらすヌクレオチドの構造的再配置となる。シクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)およびピリミジン(6-4)ピリミドン(6-4光産物、6-4PP)は、UVB誘導性DNA損傷の主な生成物である。さらに、CPDの形状でのUVB誘導性DNA損傷は、癌の進行をもたらす細胞(表皮細胞など)に突然変異を誘導する可能性がある。DNA修復酵素の適用を通じたCPDの減少は、UV誘導性皮膚癌およびアポトーシス性日焼け細胞の危険性を防ぐ。
【0008】
ヒト皮膚組織修復は、負傷後、皮膚(または他の臓器-組織)がそれ自身を修復する複雑なプロセスである創傷治癒として一般的に知られている。正常な皮膚において、表皮(最も外側の層)および真皮(より内側またはより深い層)は、恒常状態均衡にあり、外部環境に対して保護バリアを形成する。保護バリアが破壊されるか損傷を受けると、創傷治癒のプロセスが、すぐに発動し、重なり合う可能性があり、相互に排他的ではない3つまたは4つの連続相に分割することができ、その相は、止血、炎症、増殖および組織修復である。
【0009】
これらの相の中で、増殖因子は、細胞増殖を引き起こし、したがって、可溶性メディエータ、血液細胞、細胞外マトリックスの生産および実質細胞の増殖を含む動的変化の統合をもたらす。
【0010】
易感染性患者は、3ヶ月の期間内で解剖学的および機能的完全性を生じるために適時の修復プロセスをたどることができなかった非治癒性の慢性創傷を頻繁に生じる。そのような創傷は、罹患している患者の生活の質における有意な低下とともに医療システムに相当な経済的負担を提起する。USAにおける費用は、約200億USドルと推定されており、UKの報告によれば、慢性創傷の処置および看護が先進国における医療費全体の3%を占めることが示唆される。
【0011】
そのため、組織修復、特にヒト創傷治癒を支援することができる薬剤は、必要とされる。
【0012】
特に、抗酸化活性または皮膚ECMに損傷を与えるプロテアーゼの阻害などの化粧的機能を有するポリペプチド配列を用いる化粧目的のための局所療法は、過去20年間の間、急成長の分野になってきている。開発された多数のスキンケア製品の中で、多くは、単に、ヒトの皮膚の外観を改善するためのものならびに老化の兆候および症状を処置するためのものである。他の関連製品は、UV放射を遮断する遮蔽物を提供することにより皮膚を保護するように作用する。
【0013】
皮膚の光老化、皮膚損傷を含む種々の皮膚症状を処置および/または予防することができ、創傷治癒を促進することができる局所用組成物の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0014】
本発明者らは、配列RSKAKNPLYRを含むポリペプチド、およびそのペプチドの対応するデキストロ-レベルソ形(すなわち、rylpnkaksr)が、ポリアルギニン配列領域(例えば、N-末端)と隣接する場合、種々の皮膚症状を予防または処置するのに使用することができることを確認している。
【0015】
したがって、本発明は、ポリアルギニンアミノ酸配列領域に隣接するアミノ酸配列RSKAKNPLYR(配列番号1)、またはそのアミノ酸配列のデキストロ-レベルソ形(すなわち、rylpnkaksr-配列番号2)を含む単離または精製ポリペプチドを提供する。いくらかの実施形態において、ポリペプチドは、単離または精製される。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、アミノ酸配列RSKAKNPLYR(配列番号1)のC-末端またはそのアミノ酸配列のデキストロ-レベルソ形(すなわち、rylpnkaksr-配列番号2)のN-末端である。
【0016】
ポリアルギニンアミノ酸配列は、任意の適切な長さであり得る。しかし、いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、2~20のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、4~20のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、5~15のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、5~12のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、5~10のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、5~9のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、6~8のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、7または8のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、8のアルギニン残基からなる。
【0017】
いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のアルギニン残基を含む。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、8のアルギニン残基を含む。
【0018】
本発明のポリペプチドのC-末端の修飾は、ポリペプチドの生物学的活性を変更することができ、より正確には、通常、翻訳後修飾を受ける天然ポリペプチドを反映することができる。そのため、いくらかの実施形態において、ポリペプチドは、C-末端で修飾され、好ましくは、C-末端でアミド化される。いくらかの実施形態において、アミノ酸配列のデキストロ-レベルソ形は、C-末端でアミド化される(すなわち、rylpnkaksr-NH2)。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、C-末端でアミド化される。
【0019】
アミノ酸は、カルボキシル基に隣接するアルファ炭素で不斉であり、そのためL-およびD-異性体として存在する。本発明のいくらかの実施形態において、ポリペプチドは、Lアミノ酸を含む。本発明のいくらかの実施形態において、ポリペプチドは、Dアミノ酸を含む。
【0020】
上述したように、本発明者らは、本発明のポリペプチドが、創傷治癒を促進することを含む、生物学的活性を有することを確認している。例えば、実施例1は、ポリペプチドIK34720(配列番号3-RSKAKNPLYRRRRRRRRR)およびデキストロ-レベルソ配列IK236770(配列番号4-rrrrrrrrrylpnkaksr)が、局所的に適用された場合、未処置対象と比較して、創傷治癒を促進することを示す。
【0021】
したがって、本発明は、創傷治癒を促進するための、本明細書に記載されるようなポリペプチドを提供する。いくらかの実施形態において、創傷治癒を促進するためのポリペプチドは、RSKAKNPLYRRRRRRRRR(配列番号3)を含む(またはそれからなる)。いくらかの実施形態において、創傷治癒を促進するためのポリペプチドは、rrrrrrrrrylpnkaksr(配列番号4)を含む(またはそれからなる)。
【0022】
上述したように、本発明者らは、本発明のポリペプチドが、皮膚症状を処置および/または予防することができることを確認している。したがって、本発明は、皮膚症状を処置または予防するための、本明細書に記載されるようなポリペプチドを提供する。いくらかの実施形態において、皮膚症状を処置または予防するためのポリペプチドは、RSKAKNPLYRRRRRRRRR(配列番号3)を含む(またはそれからなる)。いくらかの実施形態において、皮膚症状を処置または予防するためのポリペプチドは、rrrrrrrrrylpnkaksr(配列番号4)を含む(またはそれからなる)。
【0023】
いくらかの実施形態において、皮膚症状は、皮膚老化;酸化的損傷;直射日光曝露により誘導される損傷;紫外線放射誘導性損傷;UVB誘導性損傷;および/またはDNA損傷の任意の1つまたは複数である。
【0024】
いくらかの実施形態において、上記皮膚症状の1つまたは複数は、CPDおよび/または8-OHdG形成により特徴づけられ、好ましくは、CPDおよび/もしくは8-OHdG形成により特徴づけられるDNA損傷またはCPDおよび/もしくは8-OHdG形成により特徴づけられる紫外線誘導性損傷である。
【0025】
いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、対象の細胞または皮膚において、CREBリン酸化;8-OHdG形成;シクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)形成;マトリックスメタロプロテイナーゼ1(MMP1)活性;細胞成分または細胞外成分の酸化的損傷;および/またはDNA損傷の任意の1つまたは複数を阻害する。
【0026】
いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、対象の細胞または皮膚において、アデノシン三リン酸(ATP)量;および/または紫外線放射損傷修復の任意の1つまたは複数を向上させる。
【0027】
本発明のポリペプチドは、組成物として配合される場合に有用である。そのため、本発明は、本明細書に記載のポリペプチドおよび局所的に許容される担体を含む局所使用のための組成物を提供する。本発明は、また、本明細書に記載のポリペプチドおよび局所的に許容される担体を含む局所用組成物も提供する。
【0028】
本発明の組成物は、好ましくは、創傷治癒を促進するためおよび/または皮膚症状を処置または予防するための、1つまたは複数のさらなる活性薬剤を含むことができる。さらに、本発明は、本明細書に記載されるようなポリペプチドおよび化粧品的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む化粧用途のための組成物を提供する。さらに、本発明は、本明細書に記載されるようなポリペプチドおよび化粧品的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む化粧用組成物を提供する。加えて、本発明は、本明細書に記載されるようなポリペプチドおよび医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0029】
いくらかの実施形態において、組成物は、さらに、1つもしくは複数の脂質および/または1つもしくは複数のさらなる活性薬剤を含む。本明細書に記載されるようなポリペプチドは、抗酸化活性を有すると同定されており、そのため、いくらかの実施形態において、単離または精製ポリペプチドは、1つもしくは複数の脂質および/または1つもしくは複数のさらなる活性薬剤を酸化的損傷から保護する。
【0030】
さらに、局所用組成物、化粧用組成物、および/または医薬組成物の製造のための、本明細書に記載されるようなポリペプチドの使用が、本発明により提供される。
【0031】
本発明は、哺乳動物へ、創傷へ、または皮膚症状の部位へ、有効量の本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは本明細書に記載されるような組成物を含むポリペプチドを投与することを含む、創傷治癒を促進する、または対象(哺乳動物など)における皮膚症状の処置または予防のための方法を提供する。好ましくは、ポリペプチドまたは組成物は、対象の皮膚に投与される。方法のいくらかの実施形態において、本発明は、皮膚老化、酸化的損傷;直射日光曝露により誘導される損傷;紫外線放射誘導性損傷;UVB誘導性損傷;UVA誘導性損傷;および/またはDNA損傷の1つまたは複数であり得る。
【0032】
方法のいくらかの実施形態において、上記皮膚症状の1つまたは複数は、CPDおよび/または8-OHdG形成、特にCPDおよび/もしくは8-OHdG形成により特徴づけられるDNA損傷またはCPDおよび/もしくは8-OHdG形成により特徴づけられる紫外線誘導性損傷により特徴づけられる。
【0033】
本発明は、また、本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を用いて細胞または皮膚を処置することを含む、対象の細胞、または皮膚におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ1(MMP1)活性を阻害するための方法も提供する。
【0034】
さらに、細胞におけるCREBリン酸化を阻害するための方法が提供され、その方法は、本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を用いて細胞を処置することを含む。加えて、本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を用いて細胞を処置することを含む、細胞における8-OHdG形成を阻害するための方法が提供される。細胞におけるCPD形成を阻害するための方法がさらに提供され、その方法は、本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を用いて細胞を処置することを含む。
【0035】
特定の実施形態は、以下の図面により説明される。以下の説明が、特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、説明に関して限定することを意図していないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、創傷治癒に対するポリペプチドIK34720(配列番号3-RSKAKNPLYRRRRRRRRR)の効果を示す。
【
図2】
図2は、創傷治癒に対するポリペプチドIK236770(配列番号4-rrrrrrrrrylpnkaksr)の効果を示す。
【
図3】
図3Aは、サイクリックAMP応答配列結合タンパク質(CREB)のUV照射誘導性リン酸化の予防に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を示し、
図3Bは、TGFβ受容体II(TGFβRII))のUV誘導性抑制の修復に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を示す。
【
図4】
図4は、太陽光模擬UV照射に曝露した初代ケラチノサイトにおけるATP量に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を示す。
【
図5】
図5は、皮膚におけるUV誘導性酸化的ストレスの阻害に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を免疫組織学的に説明する。
【
図6】
図6は、皮膚におけるUV誘導性酸化的ストレスの阻害に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を示す。
【
図7】
図7は、インビトロでのシクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)の形成により示されるような、UV誘導性DNA損傷に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を免疫組織学的に説明する。
【
図8】
図8は、インビトロでのCPDの形成により示されるような、UV誘導性DNA損傷に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を示す。
【
図9】
図9は、インビボでのCPDの形成により示されるような、UV誘導性DNA損傷に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を免疫組織学的に説明する。
【
図10】
図10は、マウスモデルにおけるインビボでのCPDの形成により示されるような、UV誘導性DNA損傷に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を示す。
【
図11】
図11は、UV照射後の細胞アポトーシスに対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を説明する。
【
図12】
図12は、ヒト皮膚外植片におけるCPDの形成により示されるような、UV誘導性DNA損傷に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を免疫組織学的に説明する。
【
図13】
図13は、ヒト外植片におけるCPDの形成により示されるような、UV誘導性DNA損傷に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を示す。
【
図14】
図14は、UV照射後3時間のヒト皮膚外植片におけるアポトーシス細胞の数に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を説明する。
【
図15】
図15は、UV照射後24時間のヒト皮膚外植片におけるアポトーシス細胞の数に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を説明する。
【
図16】
図16は、MMP-1活性に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を示す。
【
図17】
図17は、UV照射後3時間のヒト皮膚外植片におけるMMP-1陽性細胞の割合に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を示す。
【
図18】
図18は、UV照射後3時間のヒト皮膚外植片におけるMMP-1陽性細胞の割合に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を示す。
【
図19】
図19は、初代線維芽細胞溶解物中のチオール酸化還元状態(TRS)に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を示す。
【
図20】
図20は、細胞のメラニン含量に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書に言及されているヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、配列識別番号(配列番号)により表される。配列識別子の要約を表1に与える。配列リストも、本明細書の一部として提供される。
【0038】
【0039】
以下により詳細に説明するように、本発明者らは、アミノ酸配列RSKAKNPLYR(配列番号1)、またはそのアミノ酸配列のデキストロ-レベルソ形(すなわち、rylpnkaksr-配列番号2)、およびポリアルギニンアミノ酸配列領域を含むポリペプチドが、創傷治癒を促進すること、老化を処置または予防することなどの種々の皮膚症状を処置することができ、また、UV誘導性皮膚変化および細胞損傷の効果を処置および/または予防することもできる。
【0040】
本明細書において使用されるように、用語「IK34720」、「IK」または「IK3」は、配列番号3(RSKAKNPLYRRRRRRRRR)を指すために交換可能に使用される。
【0041】
本明細書において使用されるように、用語「IK236770」は、配列番号4(rrrrrrrrrylpnkaksr)を指すために交換可能に使用される。
【0042】
用語「皮膚」は、本明細書において使用されるように、少なくとも表皮および真皮を指す。したがって、皮膚症状、皮膚損傷または皮膚創傷に関連して使用される場合、この用語は、表皮および真皮に加えて、追加の組織(皮下組織など)を包含する、症状、損傷または創傷を除外しないように解釈されるべきである。
【0043】
用語「ポリペプチド」は、本明細書において使用されるように、通常、アミド結合により結合したアミノ酸モノマーで構成される分子を指す。この用語は、ポリペプチドの「プロドラッグ」、ポリペプチドの荷電形および非荷電形、ポリペプチドの医薬的に許容される塩、ならびに本開示の方法および使用において、機能的な活性を保持する、ポリペプチドの骨格および/または末端への修飾を含むポリペプチド任意の他の変異体、誘導体または修飾を含む。
【0044】
さらに、用語ポリペプチドは、本明細書において使用されるように、分子を形成することができるアミノ酸の数の最大長さを暗に特定するように解釈されるべきではない。しかし、いくらかの実施形態において、特定される場合、ポリペプチドの最大長さは、50のアミノ酸である。いくらかの実施形態において、最大長さは、45のアミノ酸である。いくらかの実施形態において、ポリペプチドの最大長さは、40のアミノ酸である。いくらかの実施形態において、最大長さは、35のアミノ酸である。いくらかの実施形態において、最大長さは、30のアミノ酸である。いくらかの実施形態において、最大長さは、25のアミノ酸である。いくらかの実施形態において、最大長さは、20のアミノ酸である。いくらかの実施形態において、最大長さは、18のアミノ酸である。
【0045】
いくらかの実施形態において、ポリペプチドは、単離または精製ポリペプチドである。
【0046】
天然または組換え技術により生産されたポリペプチドの「単離」および「精製」の方法は、当技術分野において、例えば、C-H Lee、タンパク質の単離および精製のための方法の簡単な概要、Endocrinology and Metabolism;2017年3月;32(1):18において、既知である。さらに、用語「単離」または「精製」は、合成および他の人工的に生産されたポリペプチドを含む。ポリペプチドを合成するための方法は、当技術分野において既知である。一般に、ポリペプチドは、1つのアミノ酸のカルボキシル基の、他方のアミノ基への縮合反応により化学的に合成される。ポリペプチドの化学合成は、溶液相技術または固相技術を使用して実行することができる。合成技術は、非天然アミノ酸ポリペプチドを組み込むポリペプチドの生産、骨格修飾およびD-異性体の合成を可能にすることができる。
【0047】
本明細書において使用されるように、用語ポリアルギニンは、隣接するアルギニンアミノ酸の配列を指す。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、2~20のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、4~20のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、5~15のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、5~12のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、5~10のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、5~9のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、6~8のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、7~8のアルギニン残基からなる。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、8のアルギニン残基からなる。
【0048】
本明細書に記載の単離または精製ポリペプチドの一態様において、アミノ酸配列RSKAKNPLYR(配列番号1)、またはそのアミノ酸配列のデキストロ-レベルソ形rylpnkaksr(配列番号2)は、ポリアルギニンアミノ酸配列領域と隣接する。
【0049】
本明細書に記載の単離または精製ポリペプチドの別の態様において、単離または精製ポリペプチドは、さらに、アミノ酸配列RSKAKNPLYR(配列番号1)、またはそのアミノ酸配列のデキストロ-レベルソ形(rylpnkaksr;配列番号2)と、ポリアルギニンアミノ酸配列領域との間にリンカー領域を含む。ポリペプチドリンカーなどのリンカーは、当分野において既知である。
【0050】
いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、アミノ酸配列RSKAKNPLYR(配列番号1)、またはそのアミノ酸配列のデキストロ-レベルソ形(すなわち、rylpnkaksr-配列番頭2)のN-末端および/またはC-末端である。例えば、いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、RSKAKNPLYR(配列番号1)のC-末端である。いくらかの実施形態において、ポリアルギニンアミノ酸配列領域は、rylpnkaksr(配列番号2)のN-末端である。
【0051】
いくらかの実施形態において、ポリペプチドは、アミノ酸配列RSKAKNPLYRRRRRRRRR(配列番号3)を含む。いくらかの実施形態において、ポリペプチドは、アミノ酸配列RSKAKNPLYRRRRRRRRR(配列番号3)からなる。
【0052】
いくらかの実施形態において、ポリペプチドは、アミノ酸配列rrrrrrrrrylpnkaksr(配列番号4)を含む。いくらかの実施形態において、ポリペプチドは、アミノ酸配列rrrrrrrrrylpnkaksr(配列番号4)からなる。
【0053】
いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、修飾される。いくらかの実施形態において、修飾は、ポリペプチドの薬理学的特性を変更する修飾であり得る。いくらかの実施形態において、修飾は、本発明の組成物またはポリペプチドの半減期を増大する。いくらかの実施形態において、修飾は、ポリペプチド(および/または本発明の組成物)の生物活性を増大することができる。いくらかの実施形態において、修飾は、本発明のポリペプチドまたは組成物の選択性を増加する修飾であり得る。
【0054】
一実施形態において、修飾は、保護基の付加である。保護基は、N-末端保護基、C-末端保護基または側鎖保護基であり得る。本発明のポリペプチドは、1つまたは複数のこれらの保護基を有することができる。当業者は、アミノ酸をこれらの保護基と反応させる適切な技術の認識がある。これらの基は、当技術分野において既知の調製方法により付加させることができる。基は、ポリペプチドに対して残る可能性があるか、使用または投与の前に除去される可能性がある。保護基は、合成中に付加され得る。
【0055】
いくらかの実施形態において、ポリペプチドは、そのC-末端でアミド化される。アミド化は、連続する細胞内および細胞外タンパク質分解による、グリシン延長基質のN-酸化的開裂のプロセスを指す。インビトロでアミド化ポリペプチドを生産するための方法、例えば:酵素的アミド化;組換え生産されたポリペプチドおよびタンパク質のC-末端の化学的修飾;固相ポリペプチド合成におけるアミド樹脂の使用;アンモニアの存在下でのカルボキシペプチダーゼの使用;ならびにメチルエステルへのポリペプチドのC-末端の変換および低温でのアンモニアの付加は、当技術分野において既知である。適切な技術の開示の例は、DJ Merkler、C-末端アミド化ポリペプチド:グリシン延長ポリペプチドのインビトロの酵素的アミド化による生産および生物活性に対するアミドの重要性、Enzyme Microbial technology、1994年6月;16(6):450-6およびV CerovskyおよびM-R Kula オレンジフラベドポリペプチドアミダーゼにより触媒されたC-末端ポリペプチドアミド化;Angewandte Chemie、1998年8月;37(13-14):1885を含む。
【0056】
C-末端のアミド化は、結果として、電荷を持たないC-末端となり、そのため、修飾ポリペプチドは、天然タンパク質をより忠実に模倣する。これにより、ポリペプチドが細胞に入る能力を強化すること;インビボでのポリペプチドの代謝安定性における改善;アミノペプチダーゼ(aminopetidases)、エキソペプチダーゼ、およびシンセターゼによるポリペプチドのインビボでの酵素的分解における低下;ならびにポリペプチドの貯蔵安定性の改善を含む一連の利点を有することができる。
【0057】
当技術分野において既知であるように、アルファアミノ酸は、アルファ位置で不斉炭素を含む。したがって、すべてのアルファアミノ酸は、グリシンを除いて、L-またはD-異性体である2つのエナンチオマーのいずれかで存在することができる。一般に、L-アミノ酸のみが、哺乳動物細胞中で製造され、タンパク質に取り込まれる。D-アミノ酸は、人工的に合成することができるか、細菌タンパク質中で認めることができる。LおよびDの表示は、アミノ酸の立体化学を直接指す場合には使用されないが、むしろ、アミノ酸を合成することができるグリセルアルデヒドの異性体の光学活性を直接指す場合に使用される(D-グリセルアルデヒドは、右旋性である;L-グリセルアルデヒドは、左旋回である)。
【0058】
いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、L-アミノ酸を含む。いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、L-アミノ酸のみを含む。いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、D-アミノ酸を含む。いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、D-アミノ酸のみを含む。いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、L-アミノ酸およびD-アミノ酸を含む。
組成物
【0059】
ポリペプチドの適用を容易にするため、ポリペプチドは、組成物に配合することができる。本明細書において定義されるように、組成物は、成分の任意の混合物をポリペプチドと一緒に含む。いくらかの形態において、組成物は、ポリペプチドを安定化させるように、および/または、ポリペプチドを保護するように、および/または、ポリペプチドの適用を改善するように構成される。いくらかの実施形態において、ポリペプチドは、組成物の別の成分を安定化する、および/または組成物の別の成分を保護する、および/または組成物の別の成分の適用を改善するのを支援することができる。
【0060】
多くの組成物は、脂質、酵素、タンパク質、ポリペプチド、エラスチン、コラーゲンおよびフィブリンなどの生体成分を含む。さらに、組成物は、一般に、水性溶媒を含む。生体成分は、水の存在下で、水の加水分解活性の結果として時間経過とともに典型的に酸化される。これにより、生体成分の分解がもたらされ、組成物内でのそれらの機能を縮小させる。そのため、本発明のポリペプチドなどの、これらの生体成分の酸化を低減することができる追加の成分を組成物中に含むことが好都合であり得る。
【0061】
問題は、スキンケア組成物中で最も一般的に使用される水中油型担体において特に悪化する。これらの組成物において、水-油界面での酸素のかなりの拡散があり、結果として生物活性成分、特に油相にカプセル封入された感受性化合物の深刻な分解となる可能性がある。
【0062】
したがって、本発明のポリペプチドを含む組成物が提供される。いくらかの実施形態において、組成物は、本発明のポリペプチドおよび少なくとも1つの生体成分または酸化性の成分を含む。いくらかの実施形態において、生体成分または酸化性の成分は、脂質、酵素、タンパク質、ポリペプチド、エラスチン、コラーゲンおよびフィブリンからなる群より選択される。いくらかの実施形態において、組成物は、1つもしくは複数の脂質または1つもしくは複数のさらなる活性化合物を含む。組成物のいくらかの実施形態において、本発明によるポリペプチドは、1つもしくは複数の脂質および/または1つもしくは複数のさらなる活性薬剤、または成分を酸化的損傷から保護する。
【0063】
組成物は、任意の適切な組成物であり得、その特定の使用のために当業者により適合される。例えば、組成物は、インビトロ実験またはインビボ投与における使用のために配合することができる。いくらかの好ましい実施形態において、組成物は、局所用組成物である。いくらかの実施形態において、組成物は、医薬組成物、好ましくは、局所用医薬組成物である。いくらかの実施形態において、組成物は、化粧用組成物、好ましくは、局所化粧用組成物である。
局所用組成物
【0064】
重要なことに、本発明者らは、ポリペプチドが局所的に適用される場合に活性があることが示されている。例えば、本発明者らは、本明細書に記載のポリペプチドが、皮膚にインビボまたはエクスビボで局所的に適用される場合、創傷治癒を促進することができ、皮膚損傷を低下させることができることを示した。したがって、一態様において、本発明は、局所使用のための組成物、または本発明によるポリペプチドおよび局所的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む、局所用組成物を提供する。別の態様において、本発明は、局所使用のための組成物の製造のための本発明によるポリペプチドの使用、または局所用組成物を提供する。好ましくは、局所使用のための組成物は、本明細書に記載のような皮膚症状を処置するために使用される。
【0065】
用語「局所用組成物」または「局所使用のための組成物」は、ケラチン組織、主に皮膚に主に適用されるが、毛髪および爪を含む場合もある、局所投与用に配合される組成物を指す。局所的とは、一般に、皮膚に送達させることを指すが、例えば、唇、口などの粘膜組織のように上皮細胞で裏打ちされたルーメン空間への送達を意味する可能性がある。
【0066】
局所送達用の製剤は、D OsborneおよびA Aman(編)、1990年、局所薬剤送達製剤、CRC press Taylor&FrancisならびにD Bhowmikら(2012)、新規局所薬剤送達システムにおける近年の進歩、the Pharma innovation、1:9、12-31において説明されている。治療用途のための許容される担体または希釈剤は、医薬技術では周知であり、例えば、Tarun Garg、Goutam Rath & Amit K.Goyal(2015)薬剤送達のための局所用剤形の添加物に対する包括的レビュー、Drug Delivery、22:8、969-987において説明されている。
【0067】
局所投与のための適切な形状は、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、ポマード、塗布剤、ローション、乳濁液、スプレー、エアロゾル、点滴薬または粉末を含む。軟膏およびクリームは、例えば、水性または油性ベースを用いて適切な増粘剤および/またはゲル化剤の添加を用いて配合することができる。ローションは、水性または油性ベースを用いて配合することができ、一般に、乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、または着色剤の1つまたは複数も含む。
【0068】
点滴薬または液体スプレーは、水性、または非水性のベース中、本発明のポリペプチドを用いて配合することができ、また、分散剤、可溶化剤または懸濁剤の1つまたは複数を含む。点滴薬は、単純点眼スポイトキャップボトルを介して、液体内容物を液滴で送達するのに適したプラスチックボトルを介して、または特別に成形されたクロージャを介して送達することができる。液体スプレーは、ポンプで送ることができ、加圧エアロゾルから好都合に送達し、操作可能なチューブなどの対象となるスプレー口を介して送達することができるか、液体を均一領域に広げるスプレー開口を介して送達することができる。さらに、ポリペプチドの可溶化された形状は、吸収媒体に含ませることができ、その後、皮膚の上に載せることができたり、擦ったりすることができる(例えば、可溶化ポリペプチドを含むファブリックワイプ)。
【0069】
本発明のいくらかの形状において、本発明のポリペプチドは、経皮投与のためのパッチ、膏薬、湿布または包帯を介して送達することができる。代わりに、ポリペプチドは、ポリアクリレートまたはアクリレート/ビニルアセテートコポリマーなどの接着性ポリマーの一部であるように配合することができる。
【0070】
局所用組成物は、任意で、水、油、塩、香料、芳香剤、着色剤、安定化剤、乳化剤、高圧ガス、添加剤、防腐剤または保存料、抗酸化剤、界面活性剤、増粘剤および局所用組成物において通常使用される他の賦形剤などの原料を含む。
【0071】
いくらかの実施形態において、局所使用のための組成物または局所用組成物は、創傷治癒を促進するため、または皮膚症状を処置もしくは予防するための1つまたは複数のさらなる活性薬剤を含む。
【0072】
本明細書において使用されるような用語「処置」および関連用語は、本質的に治療である、所望の薬理効果および/または生理効果を得ることを指す。例えば、効果は、対象における病状を改善する、対象における1つまたは複数の症状の改善、緩和および/またはその進行の遅延、対象の部分的または完全な安定化、または対象における治癒に関して治療的であり得る。
【0073】
本明細書において使用されるような用語「予防」および関連用語は、本質的に予防である、所望の薬理効果および/または生理効果を得ることを指す。例えば、効果は、対象における疾患、病状、状態または症状の完全な、もしくは部分的な予防、または対象における症状または病理の進行もしくは発生の完全な、もしくは部分的な予防であり得る。
【0074】
本発明による局所用組成物は、化粧用組成物(または単に化粧用途を意図した組成物)、および医薬組成物(または特に疾患、不快または病状の予防または処置のために使用されることを意図した組成物)に分割することができる。
化粧用組成物
【0075】
用語「化粧用組成物」は、本明細書において使用される場合、化粧目的、パーソナルケアおよび/または衛生目的のために使用することができる組成物に関する。組成物が化粧目的の1つより多くを有することができ、同時にこれらの目的の1つより多くのために使用することができることが理解される。用語「化粧用組成物」は、本明細書において使用される場合、限定されないが、モイスチャライジングクリーム、フェイシャルパウダーおよびボディパウダーなどを含むことができる。さらに、化粧用組成物は、マニキュア液、コンパクト、ソリッド、ペンシル、リップスティック、マスカラ、ルージュ、ファンデーション、ブラシ、アイライナーなどを含むことができる。
【0076】
米国食品医薬品局(FDA)が考える化粧品組成物は、それらの用途により、「洗浄する、美化する、魅力を高める、または外見を変更するために、人体を擦る、それに注ぐ、振りかける、またはスプレーする、導入する、または他の方法で適用することを目的とした製品」として化粧品を定義する連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C Act)により定義される[FD&C Act、sec.201(i)]。この定義に含まれる製品の中には、皮膚保湿剤、香水、リップスティック、マニキュア液、アイメイク用品および化粧品、クレンジングシャンプー、パーマネントウェーブ、ヘアカラー、および脱臭剤、ならびに、化粧製品の成分として使用することを意図する任意の物質である。
【0077】
いくらかの製品は、それらの使用目的に応じて化粧品および医薬品の両方として考えることができる。そのような状況において、用語「化粧品」は、組成物の医薬的または治療的用途を排除するために取られるべきである。
【0078】
化粧用途のための許容される担体または希釈剤は、当技術分野において既知であり、例えば、AO Barel、M PayneおよびHI Mailbach(編)(2014)化粧品化学および技術のハンドブック、第4版、CRC Press Taylor&Francis Group、USAにおいて説明される。
【0079】
本明細書の全体を通じた「非治療的」、または「化粧的」な方法および組成物への言及は、任意の潜在的な治療法または用途を排除するために取られるべきであり、そうでなければ特許請求の範囲に含まれ得る。いくらかの実施形態において、「非治療的」または「化粧的」方法組成物への言及は、ヒトに対して実行される療法による処置の方法、またはヒトの治療的処置のための組成物の特定排除を可能にすることができる。本出願の組成物および方法が、光老化の低減またはプロテアーゼもしくは他の酵素の分泌の低減などの生物活性があり得、これらは、治療の兆候または関連する病状がないため、治療の方法または治療のための組成物と見なされるべきではないと理解される。
医薬組成物
【0080】
一態様において、本発明は、本発明によるポリペプチドおよび医薬的に許容される担体または希釈剤を含む、医薬的使用のための、または医薬組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、局所使用のための薬剤、または医薬組成物の製造のための本発明によるポリペプチドの使用を提供する。
【0081】
米国食品医薬品局(FDA)は、連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C Act)により、一部はそれらの使用目的により、「疾患の診断、治癒、緩和、処置、または予防における使用を意図する物品」および「ヒトまたは他の動物の体の構造または任意の機能に影響を及ぼすことが意図された物品(食品以外)」と定義されるような医薬品とみなす[FD&C Act、sec.201(g)(1)]。
【0082】
組成物は、また、医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤も含む。成句「医薬的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症のない人類、または、場合によっては、動物の組織と接触して使用するのに適している、それらの化合物、物質、組成物、および/または剤形を指すために本明細書において使用される。
【0083】
適切な担体は、限定されないが、実質的に不活性な固体、半固体または液体充填剤、希釈剤、賦形剤、カプセル封じ材料または任意の種類の配合補助剤を含む。医薬的に許容される担体の例は、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。他の生理学的に許容される担体およびそれらの製剤は、当技術分野において既知である。医薬的に許容される担体または賦形剤として機能することもできる物質のいくらかの例は、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;コーンスターチおよび馬鈴薯澱粉などの澱粉類;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびセルロースアセテートなどのセルロースおよびその誘導体;トラガカント末;モルト;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐剤用ワックスなどの賦形剤;ピーナツ油、綿実油などの油;サフラワー油;ごま油;オリーブ油;コーン油および大豆油;プロピレングリコールなどのグリコール類;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;TWEEN 80などの界面活性剤;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリーの水;等張食塩水液;リンガー溶液;エチルアルコール;およびリン酸緩衝液を含み、同様に、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性の相溶性潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、塗工剤、甘味料、香味料および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤、懸濁剤(複数可)および可溶化剤も、存在することができる。適切なバインダーの例は、澱粉、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、自由流動性ラクトース、ベータ-ラクトース、コーン甘味料などの天然糖類、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウムなどの天然および合成ガム、カルボキシメチルセルロースおよびポリエチレングリコールを含む。適切な潤滑剤の例は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。一実施形態において、本発明は、防腐剤および/または安定化剤を提供する。防腐剤の例は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸およびp-ヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。抗酸化剤および懸濁剤も使用することができる。
【0084】
許容される担体は、さらに当技術分野において、例えば、A.R.Gennaro(編)2015年、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第14版、Mack Publishing Co.において説明される。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図された投与のルートおよび標準薬務に関して選択することができる。
【0085】
「医薬組成物」は、1つまたは複数の医薬的に許容される希釈剤、賦形剤または担体と組み合わせた本発明のポリペプチドの混合物を指す。いくらかの形状において、混合物の成分は、インターワーキング関係を形成し、有効成分(複数可)(本発明のポリペプチドなど)の機能性は、強化される。例えば、混合物は、表皮、真皮または創傷などの作用部位との接触を改善するか、延長することにより;医薬組成物の蒸発を低減することにより;ポリペプチドの安定性を改善することにより;ポリペプチドの酵素的分解または酸化を防止することにより;および/またはポリペプチドと相互作用して相乗的関係を作ることによりポリペプチドの生物学的利用能を向上させることができ、それによって、要素の相互作用が、組み合わせられたときに個々の要素の合計よりも大きい全体的効果を生じる。典型的に、この相乗的関係は、単独で投与された2つの成分の合計により達成することができるよりも、より大きい生物学的効果において明らかにされる。
【0086】
医薬組成物は、人間医学および獣医学におけるヒトまたは動物の使用のためのものであり得る。種々の異なる形状の本明細書に記載の医薬組成物のためのそのような適切な賦形剤の例は、PJ Sheskey、WG CookおよびCG Cable(編)2017年、医薬品賦形剤のハンドブック、第8版、APhA/Pharmaceutical Press、USAにおいて認めることができる。
【0087】
本明細書において使用されるような用語「有効量」(例えば「治療的有効量」または「化粧的有効量」)は、意図される終了、すなわち、創傷の治癒、UV関連損傷における低下および光老化における低下の達成を可能にする量を指す。前記「有効量」は、個体の年齢および全身状態に応じて、また処置される特定の状態、処置の期間、以前の処置および病状の性質および存在する期間(例えば、急性対慢性の創傷)などの要因を用いて対象ごとに変更される。
【0088】
特に、薬剤の有効量は、過度または耐えられない毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしで対象に投与することができ、合理的な利益/リスク比に見合った量であるが、本明細書全体に開示されるような適切な技術により評価されるように、所望の効果を提供するのに充分である量を定義する。したがって、正確な有効量を特定することができないが、当業者は、日常的な実験および背景一般知識を使用して、任意の個別の場合において適切な「有効」量を決定することができる。この状況における治療結果は、症状の根絶または低減を含む。治療結果は、病状の完全な改善(すなわち、治癒)を必要としない。
【0089】
本発明のポリペプチドは、医薬的に許容される塩の形状で投与することができるか、組成物に配合することができる。本発明の医薬的に許容される塩は、従来の化学的方法により塩基性、酸性または金属性の部分を含む親ペプチドから派生させることができる。一般に、そのような塩は、ポリペプチドの酸性または塩基性形状を適切な対塩基または酸の化学量と水性または有機溶媒中で反応させることにより調製することができる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性溶媒が好ましい。酸付加塩の例は、酢酸、乳酸、パルモイン(palmoic)酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、パルミチン酸、スベリン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、またはトリフルオロ酢酸などのような有機酸;タンニン酸、カルボキシメチルセルロースなどのようなポリマー酸;ならびに塩酸、臭化水素酸、硫酸リン酸などのような無機酸を含む。金属錯体は、亜鉛、鉄などを含む。他の医薬的に許容される塩が考えられる。適切な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、イーストン、Pa.、US、1985年、p.1418、およびStahlら編、「医薬品塩の特性の選択と使用のハンドブック」、Verlag Helvetica Chimica Acta and Wiley-VCH、2002年において認められる。
皮膚症状
【0090】
上で議論したように、本発明者らは、本発明のポリペプチドおよび組成物が、皮膚症状の処置において有用であることを示した。特に、ポリペプチドおよび組成物は、一般に皮膚への傷害の結果として、皮膚への損傷に関連する皮膚症状の予防または処置において有用である。特に例示される皮膚症状は、創傷治癒、皮膚へのUV損傷の処置または予防、光老化を含む皮膚老化の処置または予防、皮膚細胞における酸化ストレスおよび活性酸素種の処置または予防、皮膚の細胞外マトリックス(ECM)への損傷の処置または予防ならびに皮膚の細胞へのDNA損傷の処置または予防を含む。
【0091】
例えば、実施例1は、ポリペプチドIK34720(配列番号3-RSKAKNPLYRRRRRRRRR)およびデキストロ-レベルソ配列IK236770(配列番号4-rrrrrrrrrylpnkaksr)が、局所的に適用された場合、未処置対照と比較して創傷治癒を促進することを示す。実施例2は、ポリペプチドIK34720(配列番号3)が、太陽光模擬UV照射へのケラチノサイトの曝露後に適用された場合、初代ケラチノサイトのCREBの133位(CREB S-133)のセリンのUV誘導性リン酸化を阻害することを示す。実施例2は、また、UV処置が、TGFβRII量を抑制し、ポリペプチドIK34720(配列番号3)が、UV処置細胞におけるTGFβRII発現を修復することも示す。実施例3は、ポリペプチドIK34720(「IK」、配列番号3)が、太陽光模擬UVへの曝露後、初代ケラチノサイトにおけるATP量をカルシトリオールと類似の量まで高めることを示す。実施例4は、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、UV照射により誘導される皮膚細胞における酸化ストレスを低減することを示す。実施例5は、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、UV照射により誘導される皮膚細胞におけるCPD核の形成により測定されるようにDNA損傷を低下させることを示す。実施例6は、ポリペプチドIK34720(配列番号3)の局所適用が、UV照射後のアポトーシスケラチノサイトの数を低減することを示す。実施例7は、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、照射後3時間で急性UV照射後のヒト皮膚外植片におけるCPDの形成を低減することができることを示す。実施例8は、ポリペプチドIK34720(配列番号3)が、MMP-1活性化を用量依存様式で阻害し、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、UV照射により誘導されるMMP1発現を低下させることを示し、ポリペプチドIK34720(配列番号3)が経時的に光老化を低減するのに使用することができることを示唆する。実施例9は、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、真皮皮膚線維芽細胞溶解物中の細胞由来脂質のUV誘導性酸化的損傷を低下させることを示す。実施例10は、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、UVBによるメラニン誘導を低下させることを示す。
【0092】
したがって、本発明は、有効量の本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を皮膚、または皮膚の細胞に投与することを含む、皮膚症状を処置するための方法を提供する。
【0093】
本明細書において使用されるように、用語「投与」または「提供」は、ポリペプチドを投与すること、またはプロドラッグ、もしくはポリペプチドの誘導体、もしくは前述のポリペプチドのいずれか1つを含む組成物を投与し、結果として対象の体内、または標的細胞の内部への有効量の活性ポリペプチドの送達となることを含む。
創傷治癒
【0094】
上で議論したように、本発明者らは、本発明のポリペプチドが、創傷の治癒の促進において有用であることを示した。したがって、本発明の一態様において、創傷治癒を促進するための本発明によるポリペプチドが提供される。本発明の別の態様において、哺乳動物に、有効量の本発明によるポリペプチドまたは組成物を投与することを含む、哺乳動物における創傷治癒を促進するための方法が提供される。
【0095】
本明細書において、用語「創傷治癒」は、創傷の治癒に関与するすべての異なるステップを説明するために使用され、創傷の治癒の増強および加速を含む。そのため、傷を塞ぐ血餅の形成、炎症細胞による血餅の浸潤ならびに創縁を一緒に引き寄せる収縮性肉芽組織を形成するためのその後の線維芽細胞および毛細血管への浸潤、ならびに露出した創傷表面を覆うために切断された表皮端の前方への移動のステップを含む。
【0096】
本明細書において使用されるような用語「創傷」は、体の組織への任意の創傷を指す。好ましい形状において、用語「創傷」は、皮膚が破壊され、動物の皮膚に裂け目、切り傷、穿刺、切開、挫裂創、擦過傷、裂傷、長い切り傷、かすり傷、細長い裂け目、火傷、破裂または潰瘍を形成する皮膚創傷を指す。
【0097】
そのような創傷は、急性または慢性として分類することができる。慢性創傷は、少なくとも3ヶ月の期間、タイムリーで規則的な修復のプロセスにおいて修復に失敗した創傷として定義される。慢性創傷は、膨隆した過剰増殖性ではあるが非進行性の創縁の存在により識別され得る。種々の病因の慢性創傷の創傷床に由来する線維芽細胞は、老化、早期、または分化の表現型を表し、正常な刺激メッセージに応答しないか、非効率的に応答する。
【0098】
すべての創傷の種類は、慢性化する潜在性を有する。慢性創傷は、伝統的に病因学的に分割され、慢性創傷の処置に情報提供することができる。さらに、慢性創傷の処置は、また、静脈不全、動脈灌流、糖尿病、緩和されていない圧力ならびに栄養状態(I型またはII型糖尿病)、免疫抑制および感染などの全身性要因などの創傷の形成を生じさせることができるか、その要因となり得る基礎疾患の処置を伴うこともできる。
【0099】
一般的な慢性創傷は、静脈性潰瘍であり、通常、脚で生じ、主に、慢性創傷の別の主な原因である高齢者の糖尿病性潰瘍、通常、かかと、肩甲骨および仙骨などの一般に圧力を受ける体の部位の動きを阻害する麻痺などの病状を有する人々に生じる褥瘡、細菌、ウイルス、真菌類またはアメーバによる感染により最も一般的に引き起こされる角膜潰瘍に作用する。他の種類の慢性創傷は、虚血および放射能中毒などの原因によるものであり得る。
【0100】
急性創傷は、慢性創傷の分類に合致しない任意の創傷として分類することができる。したがって、急性創傷は、創傷部位の誘因から3ヶ月未満の創傷として定義することができ、多くの場合、誘因から最初の4週間以内に創傷治癒の兆候を示す。
【0101】
急性創傷は、創傷の原因となる物体により、異なる種類に分類することができる。例えば、切開または切創、挫裂創、擦過傷およびかすり傷、火傷、穿刺または穿通創。
【0102】
種々の実施形態において、本発明のポリペプチドまたは組成物は、補助療法とともに使用することができ、また、本発明の方法は、それをさらに含むことができる。補助療法は、パパインまたは当技術分野において既知の創面切除剤の使用、湿潤創傷床の適用、または抗生物質もしくは抗真菌剤を介した微生物負荷の管理などの創面切除処置を含むことができる。
【0103】
当技術分野において既知の、創傷治癒を測定するための種々の技術がある。これらは、以下を含むが、それらに限定されない。
【0104】
ルーラー技術-創傷の表面積は、最大長さおよび垂直方向の幅の測定値を掛け合わせることにより概算することができる。この技術は、ほとんどの創傷の形状の不均一性により制限され、したがって、この技術は、大きいまたは深い不規則な形状を有する創傷の面積を正確には予測しない。この技術の変更は、また、全創傷体積を予測するために創傷の深さを測定することである。しかし、この技術の正確性は、上で議論したように、同じ理由のために制限される。
【0105】
酢酸塩追跡および面積測定-創傷面積を推定するための代替方法は、酢酸塩追跡および接触面積測定である。この技術は、透明シートを創傷表面全体に配置すること、およびその後その縁を追跡することを含む。創傷の面積は、その後、グリッド上にトレーシングを配置して区切られた領域内の正方形の数を計数することにより手動で、または正確に面積を定量するためにコンピュータ画像解析を使用することにより、決定される。
【0106】
創傷面積推定は、また、非接触面積測定などの非接触様式で推定することもできる。この技術において、標的プレートまたはスケールゲージは、創傷と同じ平面に配置され、画像を捕捉する。デジタル画像解析は、標的プレート/スケールに関連して創傷の面積を推定するために行われる。
【0107】
創傷の三次元推定-創傷のより複雑な三次元形状測定は、立体照明またはレーザ光を使用して実行することができる。当技術分野において既知であるこれらの技術は、デジタルカメラおよび創傷面の曲率および深さに応じて歪む射影レーザビームを使用する。
皮膚損傷および皮膚症状
【0108】
重要なことに、本発明者らは、本発明のポリペプチドが、皮膚への損傷(非電離放射線損傷、例えば、UV損傷など)により、または皮膚の健康状態により、皮膚に引き起こされた損傷を予防または処置するために使用することができることをさらに示した。したがって、一態様において、皮膚症状を処置または予防するための本発明によるポリペプチドが提供される。別の態様において、皮膚症状を処置または予防するための組成物が提供される。別の態様において、哺乳動物に有効量の本明細書に記載されるようなポリペプチド、または組成物を投与することを含む、哺乳動物における皮膚症状を処置または予防するための方法が提供される。
【0109】
さらに、別の態様において、細胞における損傷を処置または予防するための方法が提供され、その方法は、本明細書に記載されるようなポリペプチドを用いて細胞を処置することを含む。
【0110】
いくらかの実施形態において、皮膚症状は、皮膚損傷である。いくらかの実施形態において、損傷は、直射日光曝露により誘導される。いくらかの実施形態において、皮膚症状は、紫外線(UV)放射誘導性損傷である。いくらかの実施形態において、UV放射は、UVB放射であり、損傷は、UVB誘導性損傷である。いくらかの実施形態において、UV放射は、UVA放射であり、損傷は、UVA誘導性損傷である。いくらかの実施形態において、皮膚症状は、DNA損傷である。いくらかの実施形態において、DNA損傷は、UVBまたはUVA放射などのUV放射により誘導される。いくらかの実施形態において、DNA損傷は、UVB放射により引き起こされる。いくらかの実施形態において、DNA損傷は、UVA放射により引き起こされる。
【0111】
いくらかの実施形態において、皮膚症状は、酸化的損傷である。いくらかの実施形態において、損傷は、増加した細胞アポトーシスである。いくらかの実施形態において、損傷は、皮膚の細胞外マトリックス(ECM)への損傷である。いくらかの実施形態において、ECMはコラーゲン、エラスチン、ラミニンまたはデルマタン硫酸およびヒアルノナンなどのプロテオグリカンである。
【0112】
いくらかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド、組成物および方法(複数可)は、DNA損傷を阻害する。いくらかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド、組成物および方法(複数可)は、紫外線放射誘導性損傷の修復を向上させる。
【0113】
損傷(UV曝露により誘導される損傷など)の観点での用語「処置」は、障害(例えば、UV照射)の後、本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を適用するか、本明細書に記載されるような方法を実行する場合、損傷を引き起こした傷害の結果として、細胞、または組織において引き起こされる任意の有害な変化の相対レベルを低減することを指す。さらに、損傷の観点での用語「予防」は、障害の前、または障害の結果として細胞または組織に引き起こされる有害な変化の誘導の前に、本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を適用するか、本明細書に記載されるような方法を実行する場合、損傷を引き起こした障害の結果として、細胞、または組織において引き起こされる任意の有害な変化の相対レベルを低減することを指す。
UV損傷
【0114】
本発明者らは、配列RSKAKNPLYRRRRRRRRR(配列番号3)などの本発明によるポリペプチドが、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、DNA損傷を低減することを示した。
【0115】
紫外線放射は、典型的に、10nm~400nmの波長を有する電磁放射として定義される。環境的UV放射の最も一般的な源は、太陽からであり、全光量の10%を占め、そのほとんどが地球の大気により濾過されるため、地上では太陽からの電磁放射の約3%がUV放射である。
【0116】
主に太陽から放出されるUVは、UVA、UVBおよびUVC放射に分割することができる。UVAは、315nm~400nmの波長を有するものとして分類され;UVBは、280nm~315nmの波長を有するものとして分類され;UVCは、100nm~280nmの波長を有するものとして分類される。海面では、UV放射の約95%がUVAであり、約5%がUVBであり、UVC放射は、大気により濾過される。
【0117】
UVBおよびUVAが、光損傷を皮膚に誘導し、UVAがUVBよりも深く浸透することが、動物モデルおよびヒト皮膚外植片において示されている。UV誘導性DNA光産物は、感受性遺伝子において特定の突然変異(UV署名)を引き起こすことができ、したがって、基底細胞癌および黒色腫を含む種々の皮膚癌の誘発における原因物質である。
【0118】
したがって、上で議論したように、本発明は、皮膚、特に皮膚細胞または皮膚のECMにおけるUV損傷を処置または予防するためのポリペプチド、組成物および方法を提供する。
【0119】
UV曝露により引き起こされる損傷の種類は、当技術分野において既知であり、(限定されないが)DNA損傷、細胞のアポトーシス、cAMP応答配列結合タンパク質(CREB)などの細胞シグナル伝達分子のリン酸化による細胞内シグナル伝達経路の活性化および活性酸素種(ROS)の生成を含む。
DNA損傷およびCPD形成
【0120】
細胞内のDNA損傷を評価するために当技術分野において既知の種々の技術がある。これらは、(限定されないが)CometAssay(登録商標)、PARP Universal Colorimetric Assay、細胞内のリン酸化H2AXのスーパーオキシドディスムターゼアッセイ分析、シクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)の生産を含む。
【0121】
ケラチノサイトのUV放射への曝露中、DNA損傷の2つの形状は、シクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)、およびピリミジン光産物DNA損傷を含む。CPDは、高度に変異原性であり、UV放射、特にUVB放射によりかなりの量が生産される。これらのダイマーは、任意の2つの隣接するピリミジン間で形成することができ、チミジン、シトシン、または5-メチルシトシンを含むことができる。CPDの変異原性は、皮膚細胞におけるそれらの長期持続性に関する。このことにより、CPDの脱アミノ化のための時間が確保され、脱アミノ化CPDは、DNAポリメラーゼによりバイパスされる場合、結果として変異原性イベントとなる。
【0122】
本発明者らは、配列RSKAKNPLYRRRRRRRRR(配列番号3)などの本発明によるポリペプチドが、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、CPD形成を低下させることを示した。そのため、いくらかの実施形態において、細胞におけるCPD形成により特徴づけられる損傷、特にUV誘導性損傷を低減するためのポリペプチド、組成物(複数可)および方法を提供する。さらに、いくらかの実施形態において、細胞におけるCPD形成により特徴づけられる損傷、特にUV誘導性損傷を予防するためのポリペプチド、組成物(複数可)および方法を提供する。
【0123】
いくらかの実施形態において、損傷は、細胞におけるCPD形成である。したがって、いくらかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド、組成物および方法は、特にUV曝露後の細胞におけるCPD形成を低減する。さらに、いくらかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド、組成物および方法は、特にUV曝露後の細胞におけるCPD形成の増加を予防する。したがって、本発明によるポリペプチドまたは組成物を用いて細胞を処置することを含む、細胞(皮膚細胞など)におけるCPD形成を阻害するための方法が提供される。
酸化的損傷
【0124】
酸化ストレスは、活性酸素種(ROS)形成と酵素的および非酵素的抗酸化剤との間の不均衡の結果である。正味の不均衡は、結果として細胞内、および細胞から分泌されるROSの蓄積となり得る。ROSにおける増加は、種々の損傷を細胞ならびにDNA損傷(例えば、二本鎖DNA破壊)を含む組織(皮膚など)の細胞外マトリックスへの損傷、ならびに脂質およびコラーゲンなどの細胞および細胞外成分の両方への酸化的損傷を引き起こすことができる。
【0125】
本発明者らは、配列RSKAKNPLYRRRRRRRRR(配列番号3)などの本発明によるポリペプチドが、UV照射された皮膚に適用された場合、細胞内の酸化ストレスを低下させることを示した。特に、配列RSKAKNPLYRRRRRRRRR(配列番号3)などの本発明によるポリペプチドが、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、皮膚における8-OHdG形成を阻害する。
【0126】
したがって、本発明は、細胞における酸化ストレス、または皮膚への酸化的損傷を処置または予防するための、本明細書に記載されるようなポリペプチドおよび組成物を提供する。さらなる態様において、本発明は、有効量の本発明によるポリペプチドまたは組成物を対象に(好ましくは、局所的に)投与することを含む、対象の皮膚への酸化的損傷を処置または予防するための方法を提供する。いくらかの実施形態において、酸化的損傷は、UV照射誘導性酸化的損傷である。方法のいくらかの実施形態において、ポリペプチドまたは組成物は、UV照射前に投与される。方法のいくらかの実施形態において、ポリペプチドまたは組成物は、UV照射後に投与される。
【0127】
本発明は、また、細胞内のROSにおける増加を処置および/または予防するための、本明細書に記載されるようなポリペプチドおよび組成物も提供する。さらなる態様において、本発明は、有効量の本発明によるポリペプチドまたは組成物を対象に(好ましくは、局所的に)投与することを含む、対象の皮膚におけるROS濃度の増加を処置または予防するための方法を提供する。いくらかの実施形態において、ROSの増加は、皮膚または細胞のUV照射に続く。方法のいくらかの実施形態において、ポリペプチドまたは方法は、UV照射前に投与される。方法のいくらかの実施形態において、ポリペプチドまたは組成物は、UV照射後に投与される。
【0128】
細胞における酸化的損傷を評価するための方法および技術は、当技術分野において、例えば、I.Marroccoら、ヒトにおける酸化ストレスのバイオマーカーの測定および臨床的意義、Oxidative Medicine and Cellular Longevity、2017年、記事ID 6501046において既知である。これらの技術は、限定されないが、ROSおよびROS誘導窒素種(例えば、DHR123、DCFH-DA、HEおよびC11-BODIPY)の検出のための蛍光プローブ;脂質酸化(例えば、HNE、F2-IsoPs、MDA、アルケナールおよびアルカジエナール)、DNAの酸化(例えば、8-OHdG、5-クロロシトシン、5-クロロウラシル、εdAおよびεdC)ならびに脂質の酸化(例えば、カルボニル(carbonils)、3-NO-Tyr、AOPP、ALE、AGEおよびoxLDL)などのROS誘導性修飾に基づくマーカーを含む。
【0129】
上で議論したように、本発明者らは、本発明によるポリペプチドが、UV曝露後の細胞における8-OHdGの濃度およびUV誘導性損傷を低減することができることを示した。そのため、本発明は、細胞における8-OHdGを低減するための、本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を提供する。いくらかの実施形態において、8-OHdGは、細胞のUV照射(紫外線ストレス)により誘導される。さらに、本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を用いて細胞を処置することを含む、細胞における8-OHdGを低減するための方法が提供される。方法のいくらかの実施形態において、ポリペプチドまたは組成物は、UV照射前に投与される。方法のいくらかの実施形態において、ポリペプチドまたは組成物は、UV照射後に投与される。いくらかの実施形態において、方法は、8-OHdGにより特徴づけられる、UVB誘導性損傷を阻害または低減する。いくらかの実施形態において、方法は、UVA誘導性損傷を阻害または低減する。
DNA損傷および細胞アポトーシス
【0130】
本発明者らは、配列RSKAKNPLYRRRRRRRRR(配列番号3)などの本発明によるポリペプチドが、UV照射後の、ヒト皮膚を含む皮膚に局所的に適用された場合、アポトーシス日焼け細胞の数を低減することを示した。
【0131】
UV照射などの障害に続く細胞に引き起こされる損傷は、細胞がアポトーシスを介してプログラム細胞死を起こすことに繋がる可能性がある。UV照射および活性酸素種などの障害により引き起こされるDNA損傷は、p53、Ku70およびKu86(Ku複合体)ならびにMNR複合体などの複数のアポトーシス因子の機能および活性を調節することができる。これは、同様に細胞におけるアポトーシスを誘導することができ、増加したアポトーシスは、皮膚老化と相関する。
【0132】
したがって、一態様において、本発明は、皮膚における(例えば、1つまたは複数の皮膚の細胞における)アポトーシスを低減するか、細胞におけるアポトーシスを予防するための、本明細書に記載されるようなポリペプチド、組成物を提供する。さらなる態様において、本発明は、有効量の本発明によるポリペプチドまたは組成物を対象に(好ましくは、局所的に)投与することを含む、皮膚におけるアポトーシスを低減するか、細胞におけるアポトーシスを予防する方法を提供する。
【0133】
細胞におけるアポトーシスを評価するための方法は、当技術分野、例えば、G Banfalvi、アポトーシス細胞死を検出する方法、Apoptosis、2017年2月;22(2):306-323において既知である。これらは、限定されないが、膜変化、DNA断片化、細胞毒性および細胞増殖ならびにミトコンドリア損傷の分析を含む。さらなる技術は、光散乱フローサイトメトリー、経時的顕微鏡灌流アッセイおよび遺伝子毒性に特異的なクロマチン変化の分析を含む。
細胞エネルギーおよびDNA修復
【0134】
本発明者らは、配列RSKAKNPLYRRRRRRRRR(配列番号3)などの本発明によるポリペプチドが、UV照射後の、ヒト皮膚を含む皮膚に局所的に適用された場合、細胞におけるATPの量を増加させることを示した。
【0135】
UV照射後の細胞において生産されるビタミンDは、局所的にヒドロキシル化され、UV誘導性損傷に対して細胞を保護する。さらに、ビタミンDステロイドホルモン1アルファ,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3;カルシトリオール)は、種々のモデルにおいて、ビタミンDの保護効果を向上させることおよびDNA損傷を低減すること、およびDNA修復を改善することを示している。
【0136】
さらに、1,25(OH)2D3が、解糖を促進して、エネルギー節約プロセスをもたらすことが、近年示されている。決定的に、DNA修復は、エネルギー依存性であり、そのため、増加したアデノシン三リン酸(ATP)を介する細胞内エネルギーにおける増加は、結果としてCPDの修復を向上させ、酸化的損傷を低下させることになる可能性がある。そのため、UV照射後の細胞におけるATP濃度を増加させる能力は、改善されたDNA修復を円滑にする必要がある。
【0137】
したがって、一態様において、本発明は、細胞におけるATP量を増加させるための、本明細書に記載されるようなポリペプチドおよび組成物を提供する。いくらかの実施形態において、細胞内のATPにおける増加は、UV曝露後である。さらに、本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を用いて細胞を処置することを含む、細胞におけるATP量を増加させる方法が提供される。いくらかの実施形態において、細胞は、UV放射への曝露前に処置される。いくらかの実施形態において、細胞は、UV放射への曝露後に処置される。
CREB活性化
【0138】
本発明者らは、配列RSKAKNPLYRRRRRRRRR(配列番号3)などの本発明によるポリペプチドが、太陽光模擬UV照射へのケラチノサイトの曝露後に適用された場合、初代ケラチノサイトにおけるリン酸化cAMP応答配列結合タンパク質(pCREB)の形成を阻害することを示した。
【0139】
CREBは、細胞転写因子である。それは、cAMP応答配列(CRE)と呼ばれる特定のDNA配列と結合し、それによって、遺伝子の転写を増加または低下させ、細胞増殖、細胞周期進行、代謝、DNA修復、細胞分化および細胞生存を含む種々の細胞経路の役割を有する。CREB活性化は、133位でのセリンのリン酸化により示唆される。133位でのリン酸化は、UV照射の結果として増加し、細胞へのUV誘導性損傷のマーカーおよび寄与因子としてみなされる。したがって、CREBリン酸化の阻害は、ケラチノサイトへのUV誘導性損傷を低下させることができ、したがって、皮膚へのUV損傷を低下させる。
【0140】
したがって、一態様において、本発明は、CREBリン酸化を低減するための本発明によるポリペプチドおよび組成物を提供する。さらに、本発明によるポリペプチドまたは組成物を用いて細胞を処置することを含む、細胞におけるCREBリン酸化を阻害するための方法が提供される。
TGFベータRIIおよびプロコラーゲン合成
【0141】
日焼け止め保護をTGFB/Smadシグナル伝達およびプロコラーゲン合成の刺激と関連付ける多くの報告(Rittie L & Fisher GJ、Ageing Res Reviews、2002年、1(4):705-720;Choi MSら、J Dermatol Sci、2007年、146(2):127-137;Bora NSら、Eur J Pharm Sci、2018年、127:261-275)がある。
【0142】
さらに、UV照射後8時間で、TGFB2およびTGFBRIIの両方が低減され、これは、同じ期間中のプロコラーゲン合成量の減少と一致しており、少なくとも一部が、TGFB2-TGFBRII-Smad経路において観察された変更により、低減されたプロコラーゲン合成が媒介となっている可能性が上昇していることも報告されている(Quan THら、J Invest Dermatol、2002年、119(2):499-506)。したがって、太陽紫外線照射は、TGF-ベータタイプII受容体をダウンレギュレートすること(Quan Tら、Am J Pathol、2004年、165(3):741-51)により、光老化したヒト皮膚においてコラーゲンを低減し、酸化ストレスは、また、TGFBタイプII受容体の減少を介して、TGFベータ経路も害する(He Tら、Age(Dordr)、2014年doi:10.1007/s11357-014-9623-6)。特に、TGFB2とは対照的に、TGFB1およびTGFB3発現は、UV曝露で増加する(Quan THら、上記参照)。同様に、TGF-ベータタイプII受容体の損失は、TGF-ベータによりSmad2/3の下流活性化を予防し、それによってタイプIプロコラーゲンの発現を低減する(He Tら、上記参照)。
【0143】
本発明者らは、TGFBRII発現が、UV照射で明らかに抑制され、初代線維芽細胞(FERATONIC-p5)においてIK34720(配列番号3;IK)を用いてUV処置後5時間で復元されたことを示した。
【0144】
したがって、プロコラーゲン合成を増加させるため、および/または、TGFβRIIのUV誘導性抑制を修復するために、本明細書に記載されるようなポリペプチドおよび組成物(複数可)が提供される。
老化
【0145】
正味の皮膚老化は、2つの同時に生じるプロセスの結果である。「先天性」または「内因性」の老化を指すことができる第1のものは、皮膚にゆっくりと影響を及ぼし、結合組織の部分的に可逆的な変性を誘導する。「外因性の老化」または「光老化」を指すことができる第2のプロセスは、主に、皮膚の早期老化に大きく寄与する紫外線放射によるものである。これらの2つの経路の独立性は、UV放射への曝露がない場合であっても、皮膚が依然として時間の経過とともに老化することを示す動物モデルにより例示される。真皮老化のプロセスは複雑であり、無数の細胞内変化、およびECMへの変化を含み、その結果、とりわけ、皮膚の弾力性、色調および色素の損失となる。皮膚老化の主な原因の2つは、蓄積された細胞損傷および皮膚のECMの破壊である。
【0146】
UV照射は、表皮および真皮に損傷を誘導し、その結果、光老化のような長期的な影響となる。光老化皮膚は、真皮における無秩序なエラスチンおよびフィブリンの増加および蓄積を伴う、細胞成分および細胞外マトリックスにおける変更を示す。さらに、光老化は、結果として、皮膚結合組織の主な構造タンパク質である介在性コラーゲンの損失となる可能性がある。
【0147】
したがって、皮膚老化を処置または予防するための、本明細書に記載されるようなポリペプチドおよび組成物が提供される。本発明は、さらに、有効量の本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を哺乳動物に(好ましくは、局所的に)投与することを含む、哺乳動物における皮膚老化を処置および/または予防のための方法を提供する。いくらかの実施形態において、老化は、内因性の老化である。いくらかの実施形態において、老化は、外因性の老化である。いくらかの実施形態において、外因性の老化は、光老化である。
【0148】
本発明は、皮膚の細胞成分または細胞外成分の損傷を阻害するための、本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を提供する。いくらかの実施形態において、損傷は、結果として皮膚の光老化となる可能性がある、(上で議論したように)ROSにより引き起こされる損傷などの酸化的損傷である。いくらかの実施形態において、損傷は、UV照射により誘導される。
【0149】
いくらかの実施形態において、損傷は、ECMの酵素的分解である。したがって、本発明は、ECMの分解および/または皮膚の光老化、特に細胞のUV放射への曝露後の分解を低減するための、本明細書に記載されるようなペプチドおよび組成物を提供する。さらに、皮膚、または皮膚内の細胞を、本明細書に記載されるようなペプチドまたは組成物を用いて処置することを含む、ECMの分解および/または皮膚の光老化を阻害する方法が提供される。
【0150】
本明細書において使用されるように、「皮膚老化」は、哺乳動物の皮膚の老化の外観を意味する。これは、内因性の老化および主に皮膚のUV曝露により引き起こされる外因性の老化の両方を含む。そのため、老化を「処置および/または予防すること」または「抗老化」は、皮膚老化の鈍化または阻害、および/または皮膚老化の外観の反転を指す。
【0151】
これらの変化を誘導する基礎となる薬剤は、活性酸素種(ROS)、主にUV生成ROSである。これらのROSは、皮膚の非酵素的および酵素的抗酸化防御システムの両方を枯渇および損傷させる。したがって、枯渇ROS防御システムの存在下、抗酸化剤は、主に細胞膜、脂質、ならびにエラスチンおよびコラーゲンなどの構造タンパク質に細胞損傷を引き起こす。さらに、基礎となる薬剤は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を含む。
MMP
【0152】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、およびプロテオグリカンなどの細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の種々の成分を分解することができる亜鉛含有エンドペプチダーゼである。UV照射は、皮膚におけるMMPの発現および分泌を増加することが示されており、ECMのそれらの分解を介して、光老化に寄与することができる。
【0153】
本発明者らは、配列RSKAKNPLYRRRRRRRRR(配列番号3)などの本発明によるポリペプチドが、細胞マトリックスメタロプロテイナーゼ1(MMP1)の活性化を低減することができることを示した。
【0154】
したがって、本発明は、細胞のUV放射への曝露後のMMPの濃度を低減するための、本明細書に記載されるようなポリペプチドおよび組成物を提供する。さらに、本明細書に記載されるようなポリペプチドまたは組成物を用いて細胞または組織を(好ましくは、局所的に)処置することを含む、細胞または組織内のMMP活性を阻害するための方法が提供される。いくらかの実施形態において、MMPは、MMP1である。
【0155】
皮膚におけるMMPの活性を低減することにより、皮膚のECMの分解、および皮膚の光老化を低減することができる。
老化の測定
【0156】
老化の兆候は、限定されないが、鼻、頬および首のクモ状静脈、そばかす、日光性黒子などの色素斑(加齢性シミまたは肝斑として既知)、ならびに不均一な肌色;肌の色調の一般的な喪失;シワの数の増加;シワの深さの増大;シワの長さの増大;額の眉間シワ線などの線の増加;良性光線性角化症の存在を含む。したがって、これらの真皮の特徴の評価は、老化を評価するために使用することができる。
【0157】
理論に縛られることを望むことなく、いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチドおよび方法は、上で与えられた老化の兆候の1つの形成を予防または低減するために使用することができた。いくらかの実施形態において、いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチド、組成物および方法は、鼻、頬および首のクモ状静脈の形成を予防または低減する。いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチド、組成物および方法は、色素斑の形成を予防または低減する。いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチド、組成物および方法は、そばかすの形成を予防または低減する。いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチド、組成物および方法は、日光性黒子の形成を予防または低減する。いくらかの実施において、本発明のポリペプチド、組成物および方法は、不均一な肌色の形成を予防または低減する。いくらかの実施において、本発明のポリペプチド、組成物および方法は、肌の色調の一般的な喪失の形成を予防または低減する。いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチド、組成物および方法は、シワを予防またはその数を低減する。いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチド、組成物および方法は、シワの増加を予防するか、その深さを低減する。いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチド、組成物および方法は、シワの長さの増加を予防または低減する。いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチド、組成物および方法は、額の眉間シワ線における増加を予防または低減する。いくらかの実施形態において、本発明のポリペプチド、組成物および方法は、良性光線性角化症の形成を予防または低減する。
【0158】
さらに、異なる皮膚の種類について皮膚老化を評価するための方法は、当技術分野において既知である。例えば、R Bazin、E Doublet、Skin Aging Atlas.第1巻.白人型.Med’Com;2007年;R BazinおよびF Flament 2010 Skin Aging Atlas.第2巻.アジア型.Editions Med’Com、フランス;R Bazin、F FlamentおよびF Giron 2012 Skin Aging Atlas.第3巻.アフリカ系アメリカ人型.Editions Med’Com、フランス;R Bazin、F FlamentおよびV Rubert、2015年、Skin Aging Atlas.第4巻.アジア型、Editions Med’Com、フランス;R Bazin、F FlamentおよびH Qiu、2017年、Skin Aging Atlas.第5巻:Photo-aging Face&Body Editions Med’Com、フランス。
【0159】
本開示を、さらに以下の実施例により説明する。以下の説明が、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、上記説明に関して限定することを意図するものではないことが理解される。
実施例1:ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRおよびrrrrrrrrrylpnkaksrは、創傷治癒を促進する。
【0160】
図1および
図2は、以下のプロトコルにしたがって、ポリペプチドIK34720(配列番号3-RSKAKNPLYRRRRRRRRR)(
図1)およびデキストロ-レベルソ配列IK236770(配列番号4-rrrrrrrrrylpnkaksr)(
図2)の10日間にわたるマウス創傷モデルにおける創傷治癒に対する効果を説明する。
【0161】
平均体重が22g(±2g)の8匹のオスICRマウスの3群を、本研究に使用した。研究中、動物を個々のケージに収容した。イソフルランガス麻酔下、各動物の肩および背中の領域の毛を刈り、シャープパンチ(ID12mm)を使用して、1日目に皮幹筋および接着性組織を含む皮膚を除去することにより創傷を誘導させた。
【0162】
創傷の誘導後、ポリペプチドIK34720およびIK236770を、動物あたり10μgの用量で創傷の部位に局所的に投与した。さらに、陽性対照群にアルファ2Aアゴニスト(CGS-21680)10μgを投与し、創傷治癒を改善することが示された(Montesinos MCら、J.Exp.Med.、1997年、186:1615-1620)。pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の投与を含む追加の群を、陰性対照として使用した。
【0163】
創傷の周囲を透明なプラスチックシートにトレースし、画像分析器ProPlus(Media Cybernetics、バージョン4.5.0.29により算出される創傷面積を用いて創傷治癒を5日目、7日目、9日目および11日目に分析した。創傷の閉鎖割合(%)を算出した。創傷の閉鎖割合を、5、7、9および11に測定した。ANOVAおよびDunnettの検定を適用して、測定の各時点で、処置群(ペプチドおよび陽性対照群)と陰性対照群との間の有意差を検定した。差は、P<0.05で統計的に有意であると見なされ、*で示される。
【0164】
図1に示すように、10日間連続して毎日マウス1匹あたりIK34720(配列番号3-RSKAKNPLYRRRRRRRRR)10ugの局所適用では、創傷の閉鎖割合が5日目から11日目まで、統計的に有意な増加(P<0.05)と関連していた。さらに、予想通り、10μg/マウスのアデノシンA2aアゴニストCGS-21680(陽性対照)の局所適用では、同じ研究期間中、陰性対照と比較して向上した創傷治癒と関連していた。
【0165】
図2に示すように、10日間連続して毎日マウス1匹あたりポリペプチドIK236770(配列番号4)10ugの局所適用では、陰性対照と比較して5日目に創傷治癒において(創傷閉鎖%割合により測定されたように)統計的に有意な増加と関連していた。
【0166】
図1および
図2におけるすべての値は、指定された時点での平均±SEMを表す。
【0167】
このデータから、ポリペプチドIK34720(配列番号3-RSKAKNPLYRRRRRRRRR)およびデキストロ-レベルソ配列IK236770(配列番号4-rrrrrrrrrylpnkaksr)が、局所的に適用された場合、未処置対照と比較して創傷治癒を促進することが説明される。
実施例2:ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRは、太陽光模擬UV照射へのケラチノサイトの曝露後に適用された場合、初代ケラチノサイトにおけるpCREB形成を阻害し、TGFβ受容体(TGFβRII)のUV誘導性抑制を修復する。
【0168】
CREBは、UV照射への細胞の曝露に応じて133位でのセリン(Ser-133)でリン酸化される。CREBリン酸化における増加は、細胞増殖、細胞周期、代謝、DNA修復、分化、炎症、血管新生、免疫応答および細胞生存を含む種々の機能に関連する。したがって、異常なCREBリン酸化は、腫瘍成長、悪性腫瘍および生存に関連する(Steven.AおよびSeliger B.、Oncotarget、2016年6月7日;7(23):35454-35465)。
【0169】
ポリペプチドIK34720(配列番号3)のCREBリン酸化に対する影響を、以下のプロトコルを使用して評価した。
【0170】
ケラチノサイトを、以前説明したように(Guptaら、J Invest Dermatol、2007年、127(3):707-215)、採取して培養した。3つの独立したドナーからのケラチノサイト(継代1~5)を、
図3で説明した実験において使用した。
【0171】
陽性対照処置(
図3において「D」と表示)を、カルシトリオール(1,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)
2D
3)-Cayman Chemical、Ml、USA)を100%分光用エタノール(メルク、ダルムシュタット、ドイツ)に可溶化することにより調製し、最終濃度を分光法(NanoDrop 2000、サーモフィッシャーサイエンティフィック、MA、USA)により測定した。ポリペプチドIK34720(配列番号3)を、pH7.2で1mMの濃度までリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に可溶化した。0.1%(v/v)分光用エタノールおよび0.1%(v/v)PBSで構成される媒体(
図3において「V」と表示)を陰性対照として使用するために調製した。
【0172】
Oriel 1000Wキセノンアークランプ(ストラトフォード、CT、USA)を使用して、培養した細胞を太陽光模擬UV照射(ssUV)により照射した。OL754線量計(オプトロニックラボラトリーズ社、オーランド、FL)により測定して、UVBについては400mJ/cm2およびUVAについては3600mJ/cm2のエネルギー量(全4000mJ/cm2)で照射を行った。この線量は、シドニー、オーストラリアで10月の正午12時での太陽の約4分間の照射に相当する。非照射対照細胞、(SHAM)は、照射された細胞と同時に処理されたが、ssUVからは保護された。照射溶液は、5mM D-グルコースを含むPBSであった。ケラチノサイトを6ウェルプレートに播種した。
【0173】
照射直後、1nMの1,25(OH)
2D
3、陰性対照(媒体)または0.1μM、1μMおよび5μMのIK34720(
図3において「IK」、配列番号3)を細胞培養に加えた。続いて、細胞を溶解し、(Rybchynら、上記参照、2017年、Rybchynら、JBC、2011年:286(27):23771-9において以前説明したように)ウエスタンブロットを使用して、ERK1/2-T202/Y204、GSK3α/β-S21/9、mTOR-S2448、CREB-S133およびa-チューブリン(ローディングコントロール)のリン酸化を分析した。ウエスタンブロットにおいて使用したすべての抗体は、Cell Signalling Technology(MA、USA)からであった。
【0174】
図3Aは、サイクリックAMP応答配列結合タンパク質(CREB)のUV照射誘導性リン酸化の予防に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を説明する。
図3から確認することができるように、ポリペプチドIK34720(配列番号3)は、太陽光模擬UV照射へのケラチノサイトの曝露後に適用された場合、初代ケラチノサイトのCREBの133位でのセリン(CREB S-133)のUV誘導性リン酸化を阻害する。
【0175】
内因性の皮膚老化およびUV誘導性皮膚老化は、両方とも、タイプ1プロコラーゲン合成に必要なTGFβRIIの低減をもたらす。さらに、日焼け止め保護によるプロコラーゲン合成の刺激は、TGFβシグナル伝達と関連する。
【0176】
ポリペプチドIK34720(配列番号3)のTGFβRIIリン酸化に対する影響を、以下のプロトコルを使用して評価した。
【0177】
ヒト皮膚真皮線維芽細胞を、健康な成人の皮膚の角膜切開生検から培養した。細胞は、3~6の継代の間であった。UV照射のため、サブコンフルエントの細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、UVで照射した。照射直後、陰性対照(媒体)または1μM、2.5μM、5μMおよび10μMのIK34720(
図3Bににおいて「IK」、配列番号3)を細胞培養に加えた。
【0178】
ウエスタン分析のため、核抽出物を調製し、膜画分を調製し、8%SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分解し、ポリビニリデンジフルオリド膜に移し、一次抗体と反応させた。ブロットを可視化し、定量した。
【0179】
図3Bは、TGFβ受容体(TGFβRII))のUV誘導性抑制の修復に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を説明する。
図3Bから確認することができるように、UV処置は、TGFβRII量を抑制し、ポリペプチドIK34720(配列番号3)は、UV処置細胞においてTGFβRII発現を修復する。TGFBRII発現は、明らかに、UV照射で抑制され、初代線維芽細胞(FERATONIC-p5)においてIK34720(配列番号3;IK)を用いてUV処置後5時間で復元された。
【0180】
これにより、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、UV照射後に適用された場合、TGFβRIIのUV誘導性抑制を修復することが示唆される。
実施例3:ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRは、太陽光模擬UV照射に曝露された初代線維芽細胞においてATP量を増加する。
【0181】
図4は、ポリペプチドIK34720(配列番号3)の、太陽光模擬UV照射に曝露された初代線維芽細胞におけるATP量に対する効果を説明する。UV曝露後の不適切に修復されたDNA損傷は、皮膚癌進行における原因となる因子であることが示されている。DNA修復は、エネルギーを必要とするが、UV曝露後、皮膚細胞は、一次エネルギー源であるATPを生産する能力の限界を有する。
【0182】
ポリペプチドIK34720(配列番号3)の、UV曝露後の細胞内ATPに対する影響を、以下のプロトコルを使用して評価した。
【0183】
初代線維芽細胞を実施例2において上述したように採取し、実施例2において説明した濃度で、カルシトリオール(陽性対照)またはポリペプチドIK34720(配列番号3;RSKAKNPLYRRRRRRRRR)の存在下または不在下で、実施例2において上述したように、ssUV照射(UVR)に曝露するか、照射しなかった(SHAM)。カルシトリオール(1α,25-ジヒドロキシビタミンD3)は、種々のモデルにおいてUV誘導性DNA損傷および光発癌を低減することが示されている。
【0184】
以前説明したように(Rybchynら、上記参照、2017年)、CellTiter-Glo(登録商標)2.0アッセイ(プロメガ、WI、USA)を使用してUVR後1.5時間、ATP量を測定した。
図4のデータはすべて、平均±SDとして示される。
*p<0.05、
**p<0.01。細胞を調製し、上述したように照射した。
【0185】
図4から確認することができるように、ポリペプチドIK34720(「IK」、配列番号3)は、太陽光模擬UVに曝露後の初代ケラチノサイトにおいてATP量をカルシトリオールの場合と類似の量まで高めた。ATP量における増加は、UV誘導性損傷後のDNAの修復を支援するために提案されている。
【0186】
これにより、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、UV照射後に適用された場合、太陽光模擬UVへの曝露後にATP量を増加させることが示唆される。
実施例4:UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRは、皮膚における酸化ストレスを低下させる。
【0187】
図5~
図6は、ポリペプチドIK34720(配列番号3)の、皮膚におけるUV誘導性酸化ストレスの阻害に対する効果を説明する。
【0188】
8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシンまたは8-オキソ-7,8-ジヒドロ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG/8-oxodG)は、酸化ストレスの測定値である細胞内の8-OHdGの濃度を用いて酸化病変においてフリーラジカル誘導の主要な形状の1つである。UV誘導性酸化ストレスにおけるポリペプチドIK34720(配列番号3)の役割を、以下のプロトコルを使用して評価した。
【0189】
6つのUVAチューブ(日立40W F40T 10/BL、東京、日本)と組み合わせた1つの蛍光UVBチューブ(Philips TL40W 12R/S、アイントホーフェン、オランダ)に曝露することにより、メスSkh:hr1無毛マウスを太陽光模擬UV照射(UVR)に曝露した。UVAおよびUVB照射は、以前説明したように(Dixon KMら、Biochem Mol Biol、2007年、103(3-5):451-6)、0.125mmセルロースアセテートシート(Grafix Plastics、クリーブランド、OH)に通して濾過した。UV照射マウスをUVR(3.98kJ/m2のUVBおよび63.8kJ/m2のUVA)の最小紅斑線量(MED)の3倍に等しい単回曝露に供した。照射された動物を、5つの処置群(1群あたりn=3)に無作為に分配した。
【0190】
照射直後、酸化ストレスを評価するための各処置群のマウスを、媒体(エタノール、プロピレングリコールおよび水を、それぞれ最終溶媒比2:1:1で含むベースローション)、11.4pmol/cm2のカルシトリオール(“1,25(OH)2D3)のいずれかで背面に対して局所的に処置したか、または100uLの水性溶液中、20μg、100μgもしくは200μgのポリペプチドIK34720(配列番号3)の処置であった。
【0191】
UVR後3時間でUV照射背部皮膚から生検を採取し、Histochoice固定剤(Amresco、ソロンOH)中で6時間固定した。皮膚試料をパラフィン包埋し、すべての分析のために、5μmの切片を切断した。切片は、40×倍率で日焼け細胞の可視化のために慣例のヘマトキシリンおよびエオシン染色に供し、皮膚切片の線形ミリメートルあたりの日焼け細胞の数を記録した。
【0192】
酸化ストレスを示唆する8-オキソ-2’-デオキシグアノシン(8oxodG)の量を、以下に示すように免疫組織化学的検査および画像解析(Dixon KMら、Cancer Prev Res 2011、4(9):1485-94)により検出した。
【0193】
スライドを脱パラフィンし、一連の段階的なエタノール溶液中で再水和した。プロテイナーゼKを37℃で30分間使用して抗原賦活化を実行し、続いて2N HCl(70%エタノール中)を用いて15分間、続いて50mMのトリス緩衝液でさらに15分間切片の処置を行った。8oxodGについては、さらに200μg/mlでRNase A(Amresco、オハイオ、USA)を用いて37℃で30分間スライドを処置した。メーカー(Dako、グロストルプ、デンマーク)により定められた方法を使用するDakoアニマルリサーチキットを使用して後続ステップを実行した。抗チミンダイマー抗体(シグマ-アルドリッチ、ミズーリ、USA)を10μg/mLで使用して、CPDの形成におけるDNA損傷を示唆し、その間、8oxodG抗体(Trevigen、メリーランド、USA)を2.5μg/mLで使用して、酸化ストレスを可視化した。
【0194】
図5で提示され、
図6で定量化された免疫組織学において確認することができるように、ポリペプチドIK34720(配列番号3)は、急性UV照射後のSkh:hr1マウスの皮膚における8-OHdG形成を阻害する。
図5において、核内の暗い染色は、8-oxo-dGの存在を示唆する。
【0195】
8oxodGについての免疫組織学的データの定量化は、媒体(陰性)対照と比較してUV照射に曝露されたすべての処置群において統計的に有意な低下があった(**p<0.01、***p<0.0001)ことを示した。アイソタイプ染色対照として使用されたモノクローナルマウスIgGアイソタイプでは、有意な染色は観察されなかった(データを示さず)。
【0196】
これにより、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、UV照射により誘導される皮膚細胞における酸化ストレスを低下させることが示唆される。
実施例5:ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、DNA損傷を低下させる。
【0197】
図7および
図8は、インビトロでのシクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)の形成により示されるような、UV誘導性DNA損傷に対するポリペプチドIK34720(配列番号3;「IK」)の効果を説明する。
【0198】
UV放射への曝露は、化学反応のカスケードを誘発し、ポリメラーゼを阻害することができる多くの分子生成物(光障害)が形成され、DNAの転写または複製中にミスリードを引き起こすか、複製の停止をもたらす。シクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)は、UV曝露の一般的な生成物であり、それらの濃度は、DNA損傷を定量化することができる。
【0199】
以下のプロトコルにしたがって、UV照射後3時間のケラチノサイトにおけるIHCによるCPD検出のデンシトメトリー分析を可能にするインビトロアッセイを実行した。
【0200】
ケラチノサイトを、実施例2で上述したように、採取して培養した。試料を、UV照射(UVR)および非UV照射(SHAM)である2群に分割した。また、実施例2で上述したように、細胞について太陽光模擬UV照射により、UV照射を実行した。照射溶液は、5mM D-グルコースを含むPBSであった。
【0201】
照射後、ケラチノサイトをカルシトリオール、媒体対照(Veh)または0.5μM、1μM、2.5μMまたは5μMのポリペプチドIK34720(配列番号3;「IK」)のいずれかで処置した。
【0202】
採取したケラチノサイトを、96ウェルプレートのポリ-D-リジンコートカバーガラス上に播種し、実施例2で上述したように、5mM D-グルコースを含むPBS中で照射した(または偽処置した)。ケラチノサイトをUV照射後3時間で固定した。以前説明したように(Gordon-Thomsonら、Photochem Photobiol Sci、2012年、11(12):1837-47;Guptaら、上記参照、Rybchyn MSら、J Invest Dermatol、2018年;138(5):1146-1156)、免疫組織化学的検査および画像解析を実行した。以前説明したように(Douki TおよびCadet J、Biochemistry、2001年、40(8):2495-501)、抗チミンダイマー抗体(シグマ-アルドリッチ、ミズーリ、USA)を10μg/mLで使用して、チミジンダイマーを検出し、CPDの指数として定量した。
【0203】
図7および
図8に示すように、ポリペプチドIK34720(それぞれ配列番号3;-「IK」)は、太陽光模擬UV照射に曝露された初代ケラチノサイトにおけるCPDレベルを用量依存様式で低下させる。5μMのポリペプチドIK34720(配列番号3)で処置されたケラチノサイトは、カルシトリオールで処置されたケラチノサイトに匹敵するCPD量の低減があり、媒体処置UV照射ケラチノサイトと比較してCPD量における統計的に有意な(
*p<0.05)低減があった。
【0204】
このデータから、ポリペプチドIK34720(配列番号3;「IK」)が、UV照射に曝露後の初代ケラチノサイトにおけるDNA損傷を低減することが示される。
【0205】
図8Bにおいて、CPDは、CPD染色の平均強度に関して算出された。重要なことに、
図8Bは、10uMでポリペプチドIK34720(配列番号3;「IK」)が、陽性対照1,25DよりもCPD形成の阻害に対してより効果的であることを示す。
【0206】
図9および
図10は、以下のプロトコルにしたがって、インビトロでのシクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)の形成により示されるような、UV誘導性DNA損傷に対するポリペプチドIK34720(配列番号3;「IK」)の効果を説明する。
【0207】
メスSkh:hr1無毛マウスを、実施例4で上述したように、太陽光模擬UV照射に曝露した。照射直後、また実施例4で説明したように、マウスを、背面に対して局所的に処置した。続いて、皮膚をUVR後3時間で固定し、上述したチミジンダイマー(CPD)に対して向けられる抗体を10μg/mLで使用する免疫組織化学染色に供した。モノクローナルマウスIgGアイソタイプ対照では、有意な染色が観察されなかった(図示せず)。
図9において、核内の暗い染色は、チミジンダイマー(CPD)の存在を示唆し、染色された%面積を表す。免疫組織学は、実施例4により定量化された。
【0208】
図9Aで提示され、
図10で定量化された免疫組織学において確認することができるように、ポリペプチドIK34720(配列番号3)は、急性UV照射後のSkh:hr1マウスの皮膚におけるCPD形成を阻害する。
【0209】
CPD核についての免疫組織学的データの定量化は、媒体(陰性)対照と比較してUV照射に曝露されたすべての処置群において統計的に有意な減少があった(**p<0.01、****p<0.0001)ことを示した。アイソタイプ染色対照として使用されたモノクローナルマウスIgGアイソタイプでは、有意な染色は観察されなかった(データを示さず)。
【0210】
これにより、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、UV照射により誘導される皮膚細胞におけるCPD核の形成により測定されるように、DNA損傷を低下させることが示唆される。
実施例6:ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRは、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、アポトーシス細胞の数を減少させる。
【0211】
図11は、UV照射後の細胞アポトーシスに対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を説明する。
【0212】
上昇したCPDの形状でのUV誘導性DNA損傷は、癌細胞の進行をもたらす表皮細胞における突然変異を誘導することができる。DNA修復酵素の適用を通じたCPDの低減は、UV誘導性皮膚癌の危険性を防ぎ、UV誘導性損傷後のアポトーシス細胞の量を低減する。UV照射後のアポトーシス皮膚細胞の数を、以下のプロトコルにしたがって評価した。
【0213】
実施例4の方法にしたがって、メスSkh:hr1無毛マウスを調製して照射し、生検した。生検の前で照射の直後、マウスをベースローション媒体(陰性対照)、媒体中の11.4pmol/cm2のカルシトリオール(陽性対照)、水中、20ug、100ugまたは200ugで全量100uLのポリペプチドIK34720(配列番号3)のいずれかで処置した。
【0214】
UVR後3時間でUV照射背部皮膚から生検を採取し、Histochoice固定剤(Amresco、ソロンOH)中で6時間固定した。皮膚試料をパラフィン包埋し、すべての分析のために、5μmの切片を切断した。切片(UV後24時間)を、日焼け細胞の可視化のために慣例のヘマトキシリンおよびエオシン染色に供した。染色した切片を、Zeiss-Axioplan光学顕微鏡下、40×倍率で調べ、皮膚切片の線形ミリメートルあたりの日焼け細胞の数を記録した。
【0215】
図11に示すように、ポリペプチドIK34720(配列番号3)の局所適用により、UV照射後のアポトーシスケラチノサイトの数が低減された。
【0216】
このデータから、ポリペプチドIK34720(配列番号3)が、UV照射に曝露後のケラチノサイトアポトーシスを低減することが示される。
実施例7:ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、UV照射損傷後のヒト皮膚に局所的に適用された場合、DNA損傷を低下させ、アポトーシス日焼け細胞の数を低減する。
【0217】
図12および
図13は、以下のプロトコルにしたがって、ヒト外植片におけるCPDの形成により示されるように、UV誘導性DNA損傷に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を説明する。
【0218】
待機的手術で除去されたヒト皮膚を洗浄し、切開して約5mm×5mmの小片に切断した。各小片を、各プレートが処置後3時間の効果を評価するように調製された96ウェルプレートのウェルに置いた。すべての試料は、各処置につき三連で実行された。皮膚を1.5時間、太陽光模擬UV源からのUV放射に供した(UVR)か、非照射(SHAM)とした。ヒト皮膚は、マウス皮膚よりも厚みがあることを考えると、ヒト皮膚外植片は、マウス皮膚について使用したよりも3倍高い放射線量、すなわち、それぞれ20J/cm2対7J/cm2に曝露し、研究用太陽シミュレータの出力スペクトルは、以前報告されており(Rybchyn MSら、J Invest Dermatol.2018年5月;138(5):1146-1156)、直後に媒体対照、カルシトリオール(1nM)または50μM、250μMもしくは500uMの濃度でのポリペプチドIK34720(配列番号3)を用いて処置した。
【0219】
3時間で採取した試料を、実施例5において説明したように、固定し、切片化し、染色し、定量した。
【0220】
図12で提示された免疫組織学において確認することができるように、UV照射は、照射/処置後3時間で、すべての照射群においてCPDを有する細胞(黒点として説明される)の数を増加させ、カルシトリオールまたは種々の濃度のポリペプチドIK34720(配列番号3)を用いて処置した試料の場合、染色された細胞が少ない。このデータは、500μMのポリペプチドIK34720(配列番号3)を用いて処置された場合、CPD陽性細胞の割合が統計的に有意に低減した2つの個体について、
図13Aおよび
図13Bにおいて定量化される。
【0221】
これにより、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、照射後3時間で急性UV照射後のヒト皮膚外植片におけるCPDの形成を低減することができることが示唆される。これは、また、
図9および
図10で提示されたマウスの結果を追認する。
【0222】
図14および
図15は、ヒト皮膚外植におけるアポトーシス細胞の数に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を説明する。
【0223】
皮膚外植片は、CPDについて上述したように、培養、照射および処置され、処置に続いて、例6について説明されるように染色して定量化した。
【0224】
図14は、種々の処置群におけるUV照射後3時間のヒト皮膚外植片の表皮1mmあたりの日焼け細胞の数を示す。
図15は、種々の処置群におけるUV照射後24時間のヒト皮膚外植片の表皮1mmあたりの日焼け細胞の数を示す。
【0225】
図14および
図15において示されるように、500μMのポリペプチドIK34720(配列番号3)を用いた処置は、UV照射後3時間および24時間のアポトーシス細胞の数を統計的に有意に低減する。
【0226】
このデータから、ポリペプチドIK34720(配列番号3)が、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、アポトーシス日焼け細胞の数を低減することが示唆される。
実施例8:ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRは、インビトロおよびヒト皮膚外植片でマトリックスメタロプロテイナーゼ-1(MMP-1)活性を阻害する。
【0227】
UV誘導性皮膚損傷は、ヒト皮膚細胞において、光老化の特徴であるコラーゲンの破壊をもたらす可能性があるMMP-1の上昇を開始する。コラーゲンIの消化の原因である主要な酵素、マトリックスメタロプロテイナーゼ1(MMP-1)は、日光への曝露にゆり誘導される(Dong KKら、Exp Dermatol、2008年、17(12):1037-44)ことが既知である。
【0228】
ポリペプチドIK34720(配列番号3)のMMP-1活性に対する効果を、以下のプロトコルを使用して評価した。
【0229】
APMAを用いて37℃で60分間活性化させたヒトリウマチ滑膜線維芽細胞MMP-1プロ酵素を活性化酵素として使用した。5μM、10μM800μMおよび1000μMの濃度でポリペプチドIK34720(配列番号3)を、改変MOPS緩衝液pH7.2中、8nM活性化酵素と37℃で60分間プレインキュベートした。4mM Mca-Pro-Leu-Gly-Leu-Dap-Ala-Argの添加により反応を開始し、2時間のインキュベーション期間が続いた。形成したMca-Pro-Leu-Glyの量の測定は、340nm/400nmで分光蛍光分析的に読み取った。
【0230】
図16は、インビトロでのMMP-1の活性に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を説明し、
図17および
図18は、UV誘導性皮膚損傷後のヒト皮膚外植片におけるポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を説明する。
【0231】
図16において確認することができるように、ポリペプチドIK34720(配列番号3)は、用量依存様式でMMP-1活性化を阻害する。このデータから、ポリペプチドIK34720(配列番号3)が、経時的に光老化を低減するために使用することができることが示唆される。
【0232】
ヒト皮膚におけるMMP-1活性に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を、以下のプロトコルを使用して評価した。
【0233】
図17および
図18は、以下のプロトコルにしたがって、MMP1発現に対するポリペプチドIK34720(配列番号3)の効果を説明する。
【0234】
待機的手術で除去されたヒト皮膚(2×ヒト外植片組織)を洗浄し、切開して約5mm×5mmの小片に切断した。各小片を、各プレートが処置後3時間の効果を評価するように調製された96ウェルプレートのウェルに置いた。皮膚を1.5時間、太陽光模擬UV源からのUV放射に供した(UVR)か、非照射(SHAM)とし、直後に媒体対照、カルシトリオール(1nM)または50μM、250μMもしくは500uMの濃度でのポリペプチドIK34720(配列番号3)を用いて処置した。
図17において、μM濃度としてのIK50、IK250およびIK500は、それぞれ培養培地/外植片120μLあたり15μg、75μgおよび150μgのIK34720を指す。
【0235】
3時間で採取した試料を固定し、切片化し、MMP1について免疫組織化学的に染色し、調べた全表皮面積の関数としてMMP1について染色された表皮面積を表すことによりMMP1発現について定量化した。
【0236】
図17で提示された免疫組織学において確認することができるように、UV照射は、照射/処置後3時間で、すべての照射群においてMMP-1活性について染色される細胞(黒点として説明される)の数を増加させ、カルシトリオールまたは種々の濃度のポリペプチドIK34720(配列番号3)を用いて処置した試料の場合、染色された細胞が少ない。アイソタイプ染色対照として使用されたモノクローナルマウスIgGアイソタイプでは、有意な染色は観察されなかった(データを示さず)。
【0237】
このデータは、500μMのポリペプチドIK34720(配列番号3)を用いて処置された場合、MMP1陽性細胞の割合が統計的に有意に低減した外植片について、
図18において定量化される。これにより、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、UV照射により誘導されるMMP1発現を低下させることが示唆される。
実施例9:ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRは、真皮皮膚線維芽細胞溶解物におけるUV誘導性脂質過酸化を阻害する。
【0238】
飽和脂質とは対照的に皮膚の自然な油バリアを維持するのに役立つので、多価不飽和脂肪酸(脂質)は、石鹸、スキンケアローションおよびクリーム、アフターシェーブ、メイク落としなどとして化粧品に高頻度で使用される。さらに、脂質の飽和が少ないと、脂質の流動性が高くなる。しかし、不飽和脂質は、UV照射などの薬剤からの酸化をより受けやすいので、抗酸化剤、例えば、ビタミンは、スキンケア配合物に添加されることが多い。
【0239】
酸化剤は、脂質構造を変更することができ、結果として、チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)として測定することができるマロンジアルデヒドの形成となる脂質過酸化物を生成する。
【0240】
実施例4に示されるように、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRは、UV照射後の皮膚に局所的に適用された場合、皮膚におけるUV誘導性酸化ストレスを低減する。
【0241】
細胞由来脂質のUV誘導性酸化的損傷を変更するポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRの能力を、TBARSチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)脂質過酸化アッセイを使用して調べた。
【0242】
真皮線維芽細胞の照射後または偽照射後、上清(900μL)を回収した。つまり、90μLのブチル化ヒドロキシトルエン(エタノール中2%w/w)を加え、TBARSアッセイまで、試料を凍結(-20℃)したままにした。ペトリ皿を1mLのHBSSで2回洗浄し、細胞を600μLの水中でこすり取り、60μLの0.5%水性Triton X100をこの溶液に加え、タンパク質測定のためにローリー法(Lowry OHら、J.Biol.Chem.、1951年、193:265-275)により実行した。TBARSは、説明したように(Morliere Pら、Biochim.Biophys.Acta、1991年、1084:261-268)、蛍光定量的アッセイであった。手短に言うと、酸性条件でチオバルビツール酸の存在下、解凍した試料を加熱し、TBARSを1-ブタノールで抽出し、蛍光定量的に定量した(λexc=515nmおよびλem=550nm)。アッセイ条件下でマロンジアルデヒド-チオバルビツール酸付加物を定量的に生じるテトラエトキシプロパンを、校正のために使用した。マロンジアルデヒド(MDA)当量で表されるTBARS値は、各ペトリ皿について細胞タンパク質に対して正規化された。各TBARS測定を三連(例えば、データポイントあたり3つのペトリ皿)で実行した。
【0243】
図19において確認することができるように、UV照射は、照射/処置後のすべての照射群においてTBA反応性物質(TRS)の数を増加させる。Shamと処置がないUV照射との間のTRSにおける有意差は、最小用量のRSKAKNPLYRRRRRRRRRと比較して、1,25Dまたは最大濃度(5μM)でのRSKAKNPLYRRRRRRRRR(「IK-3」)のいずれかの存在下では確認されない。
【0244】
これにより、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、真皮皮膚線維芽細胞溶解物における細胞由来脂質のUV誘導性酸化的損傷を低下させることが示唆される。
実施例10:メラニン生産に対するIK14800の効果。
【0245】
UVAによる黒色腫誘導は、メラニン色素を必要とし、UVB照射は、黒色腫を開始する。スキンケア製品の望ましい効果は、直射日光曝露から生じる皮膚色素沈着を低減することである。
【0246】
実施例2は、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRが、ケラチノサイトの太陽光模擬UV照射への曝露後に適用される場合、初代ケラチノサイトにおけるpCREB形成を阻害することを示す。リン酸化CREBは、myc様のマスター転写制御因子であり、メラノサイトにおいては、チロシナーゼおよび他の色素生合成酵素の発現を促進する、小眼球症(MITF)転写因子の活性化を誘導する。
【0247】
メラニン生産を変更するポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRの能力を調べた。
【0248】
つまり、MM1418-C1のわずかに色素沈着した黒色腫細胞を、24ウェル培養プレートで増殖させ、2kJ/cm2のUVB放射に曝露する前24時間、10μMのRSKAKNPLYRRRRRRRRR(「IK-3」)を用いて処置した。「Con」と標識された対照(RSKAKNPLYRRRRRRRRRで処置されていない)および「UVB」を、それぞれ0または2kJ/cm2のUVB放射のいずれかに曝露した。細胞群を24時間インキュベータに戻し、その後、細胞中のメラニンおよびタンパク質の量を、分光光度的に測定した。各実験において、三連の試料を測定した。
図19に示すデータは、UVB放射に曝露される前24時間、0または10μMのRSKAKNPLYRRRRRRRRRを用いて前処置された、0または2kJ/cm2のUVBに曝露された平均値±SEM(μgメラニン/mg細胞タンパク質)を示唆する。t-検定(両側)を使用して、統計的有意性、
*p<0.05、
***p<0.001を決定した。
【0249】
図20において確認することができるように、UVB照射は、細胞のメラニン含量を有意に増加させる。重要なことに、UVB処置の前にRSKAKNPLYRRRRRRRRRを用いて処置された細胞は、RSKAKNPLYRRRRRRRRRを用いて処置されなかった細胞と比較してメラニン含量の有意な低下を示す。
【0250】
これにより、ポリペプチドRSKAKNPLYRRRRRRRRRは、UVBによるメラニン誘導を低下させることが示唆される。
【0251】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書において提供される任意またはすべての実施例または典型的な言語(例えば、「など」)の使用は、例の実施形態をよりよく明らかにすることを単に意図するだけであり、別段の主張がない限り、特許請求の範囲に記載の本発明の制限を課すわけではない。明細書におけるすべての言語は、あらゆる非主張の要素を必須として示すものとして解釈されるべきではない。
【0252】
本明細書において提供される説明は、共通の特徴および主要点を共有することができるいくらかの実施形態に関連する。一実施形態の1つまたは複数の主要点が、他の実施形態の1つまたは複数の主要点と組み合わせ可能であり得ることが理解される。加えて、実施形態の1つの主要点または主要点の組み合わせは、追加の実施形態を構成することができる。
【0253】
当業者は、本明細書に記載の本発明が、具体的に記載されているもの以外の変更および修正を受けやすいことを理解するであろう。本発明が、そのようなすべての変更および修正を含むことが理解される。本発明は、また、本明細書において個々にまたは集合的に言及または示唆されるすべてのステップ、主要点、組成物および化合物、ならびにそのステップまたは主要点の任意の2つ以上の任意およびすべての組み合わせを含む。
【0254】
本明細書において使用される見出し語は、読者の参照を容易にするためにのみ含まれており、本開示または特許請求の範囲全体で認められる主題を制限するために使用されるべきではない。見出し語は、特許請求の範囲または特許請求の制限の解釈に使用されるべきではない。
【0255】
また、本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がすでに他のことを規定しない限り、複数の態様を含むことに留意する。したがって、用語「a」(または「an」)、「1つまたは複数」、および「少なくとも1つ」は、本明細書において交換可能に使用される。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における創傷治癒を促進するための、または皮膚症状を予防および/もしくは処置するための薬剤の製造における、アミノ酸配列RSKAKNPLYR(配列番号1)、または前記アミノ酸配列のデキストロ-レベルソ形(rylpnkaksr;配列番号2)、およびポリアルギニンアミノ酸配列領域を含む単離または精製ポリペプチドの使用であって、前記皮膚症状が、酸化的損傷、DNA損傷、直射日光曝露により誘発される損傷、紫外線放射誘導性損傷、CPDおよび/または8-HdG形成により特徴づけられる皮膚状態、皮膚の老化、ならびに皮膚のシワからなる群から選択される、使用。
【請求項2】
前記紫外線放射誘導性損傷が、UVB誘導性損傷またはUVA誘導性損傷である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
創傷治癒を促進するための、または皮膚症状を予防および/もしくは処置するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、アミノ酸配列RSKAKNPLYR(配列番号1)、または前記アミノ酸配列のデキストロ-レベルソ形(rylpnkaksr;配列番号2)、およびポリアルギニンアミノ酸配列領域を含むポリペプチドの有効量を含み、前記皮膚症状が、酸化的損傷、DNA損傷、直射日光曝露により誘発される損傷、紫外線放射誘導性損傷、CPDおよび/または8-HdG形成により特徴づけられる皮膚状態、皮膚の老化、ならびに皮膚のシワからなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項4】
前記紫外線放射誘導性損傷が、UVB誘導性損傷またはUVA誘導性損傷である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
細胞におけるCREBリン酸化を阻害するためのインビトロの方法であって、アミノ酸配列RSKAKNPLYR(配列番号1)、または前記アミノ酸配列のデキストロ-レベルソ形(rylpnkaksr;配列番号2)を含む単離または精製ポリペプチドの有効量により細胞をインビトロで処置することを含む、インビトロの方法。
【請求項6】
細胞における8-OHdG形成を阻害するためのインビトロの方法であって、アミノ酸配列RSKAKNPLYR(配列番号1)、または前記アミノ酸配列のデキストロ-レベルソ形(rylpnkaksr;配列番号2)を含む単離または精製ポリペプチドの有効量により細胞をインビトロで処置することを含む、インビトロの方法。
【請求項7】
細胞におけるCPD形成を阻害するためのインビトロの方法であって、アミノ酸配列RSKAKNPLYR(配列番号1)、または前記アミノ酸配列のデキストロ-レベルソ形(rylpnkaksr;配列番号2)を含む単離または精製ポリペプチドの有効量により細胞をインビトロで処置することを含む、インビトロの方法。