(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075708
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】薄膜型キャパシタ製造用ニッケル箔及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/33 20060101AFI20240528BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01G4/33 102
H01G4/30 541
H01G4/30 544
H01G4/30 547
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045763
(22)【出願日】2024-03-21
(62)【分割の表示】P 2022521004の分割
【原出願日】2019-12-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0132806
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515059290
【氏名又は名称】ロッテエナジーマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ソン キ トク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チャン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ユン サン ファ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】化学的機械的研磨(CMP)工程を経ずとも、粗さが低く均一であり、光沢度が高い、薄膜型キャパシタ電極用の電解ニッケル箔の製造方法及び電解ニッケル箔を提供する。
【解決手段】電解ニッケル箔は、表面粗さがRa 0.05μm以下、Rz 0.20μm以下及びRt 0.50μm以下であり、60°鏡面反射角測定により測定した光沢度が約200GU以上である平坦面を少なくとも一面に具備する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
算術平均粗さRaが0.05μm以下であり、10点平均粗さRzが0.20μm以下であり、突起の最大高さRtが0.50μm以下であり、60°鏡面光沢度が200GU以上である平坦面を少なくとも一面に具備したことを特徴とする、電解ニッケル箔。
【請求項2】
前記平坦面は、Raが0.03μm以下、Rzが0.15μm以下、Rtが0.30μm以下であり、60°鏡面光沢度が400GU以上であることを特徴とする、請求項1に記載の電解ニッケル箔。
【請求項3】
前記電解ニッケル箔の厚さは、1~100μmであることを特徴とする、請求項1又は請求書2に記載の電解ニッケル箔。
【請求項4】
ニッケルイオン前駆体400~600g/L、pH緩衝剤10~30g/L及び粗さ調節剤0.5~2.0g/Lを含み、pHが1~5である電解液を用いて電解メッキする段階を含むことを特徴とする、電解ニッケル箔の製造方法。
【請求項5】
前記ニッケルイオン前駆体は、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル及び窒酸ニッケルからなる群より1種以上選択されることを特徴とする、請求項4に記載の電解ニッケル箔の製造方法。
【請求項6】
前記粗さ調節剤は、サッカリン、カルボキシエチルイソチオウロニウムクロリド(carboxyethyl isothiuronium chloride)、アリルスルホン酸ナトリウム(sodium allyl sulfonate)、ブチネジオールプロポキシレート(butynediol propoxylate)、ブチネジオールエトキシレート(butynediol ethoxylate)、プロパルギルアルコールプロポキシレート(propargyl alcohol propoxylate)、ピリジニウムプロピルスルフォベタイン(pyridinium propyl sulfobetaine)、プロパンスルホン酸ナトリウム塩(propanesulfonic acid sodium salt)からなる群より2種以上選択されることを特徴とする、請求項4に記載の電解ニッケル箔の製造方法。
【請求項7】
前記電解メッキは、メッキ液温度40~60℃で電流密度10~100A/dm2の電流を印加することを特徴とする、請求項4に記載の電解ニッケル箔の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の電解ニッケル箔、前記電解ニッケル箔の上部に形成された誘電体、前記誘電体の上に形成された伝導性金属層を含むことを特徴とする、薄膜キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解ニッケル箔、特に、CMP研磨工程を経ずに薄膜型キャパシタを製造し得る、粗さが低く光沢度が高い電解ニッケル箔及びその製造方法及びそれから製造される薄膜型キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路を含んだ半導体装置は、高周波及び高速信号送信が可能であるとともに低い電圧で作動することが要求されている。安定的な電力供給と同時にノイズ発生を最小化するためには、一次的にシステムの低いインピーダンスが必要である。したがって、印刷回路基板のパッケージには、静電容量密度が高い薄膜型セラミックス薄膜キャパシタが用いられる。
【0003】
薄膜型セラミックス薄膜キャパシタは、ニッケルなどの金属箔に誘電体を蒸着し、これを塑性した後、誘電体上にまた金属を蒸着する段階を経て製造される。このような構造のキャパシタは、放電(short)が起きないようにするためには金属箔の平坦度が高い必要があるが、従来用いられる金属箔は、そのまま使用するには表面の平坦度が低いため不適合であるという問題点がある。
【0004】
薄膜型キャパシタの製造用金属箔の粗さを低めるために最も広く採択される方法としては、化学的機械的研磨(Chemical-Mechanical Polishing、CMP)がある。しかし、CMP研磨は、大韓民国特許公報第10-2012-0007064号に開示されたように、粗さを減少させるには効果があるが、工程費用が高いだけでなく、工程に時間がかかるという短所がある。
【0005】
工程の効率性及び製造されるキャパシタの安定性を向上させるために、表面粗さが低い金属薄膜を得るための多様な研究が進行されている。例えば、大韓民国特許出願番号第10-2017-0174849号には、表面粗さに優れた鉄-ニッケル合金フォイルの製造方法に対して開示されている。しかし、この発明によると、平均表面粗さ(Ra)は、約0.1μm程度に低めるに過ぎず、いまだ薄膜型セラミックス薄膜キャパシタを製造するには十分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、粗さが低く均一であり、光沢度が高いため、別途のCMP研磨工程を経ずとも薄膜型キャパシタを製造し得る電解ニッケル箔を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、前記電解ニッケル箔から製造される薄膜型キャパシタを提供することである。
【0008】
本発明のまた他の目的は、低い粗さと高い光沢度により別途のCMP研磨工程を伴わなくても前記電解ニッケル箔を製造する方法を提供することである。
【0009】
本発明の上記及びその他の目的は、下記で説明する本発明により全て達成され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1.本発明の一つの観点は、電解ニッケル箔に関する。前記電解ニッケル箔は、表面の算術平均粗さRaが約0.05μm以下であり、10点平均粗さRzが約0.20μm以下であり、突起の最大高さRtが約0.50μm以下であり、60°鏡面光沢度が約200GU以上である平坦面を少なくとも一面に具備した電解ニッケル箔により達成される。
【0011】
2.前記1の具体例で、前記電解ニッケル箔は、表面のRaが約0.03μm以下、Rzが約0.15μm以下、Rtが約0.30μm以下であり、60°鏡面光沢度が約400GU以上であってもよい。
【0012】
3.前記1又は2の具体例で、前記電解ニッケル箔の全体厚さは、約1~100μmであってもよい。
【0013】
4.本発明のまた他の観点は、前記電解ニッケル箔の製造方法に関する。前記製造方法は、ニッケルイオン前駆体約400~600g/L、pH緩衝剤約10~30g/L、粗さ調節剤約0.5~2.0g/Lを含み、pHが約1~5である電解液を用いて電解メッキする段階を含むものであってもよい。
【0014】
5.前記4の具体例で、前記ニッケルイオン前駆体は、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル及び窒酸ニッケルからなる群より1種以上選択され得る。
【0015】
6.前記4又は5の具体例で、前記pH緩衝剤は、ホウ酸又はクエン酸ナトリウムのうちから選択され得る。
【0016】
7.前記4~6の具体例で、前記粗さ調節剤は、サッカリン、カルボキシエチルイソチオウロニウムクロリド(carboxyethyl isothiuronium chloride)、アリルスルホン酸ナトリウム(sodium allyl sulfonate)、ブチネジオールプロポキシレート(butynediol propoxylate)、ブチネジオールエトキシレート(butynediol ethoxylate)、プロパルギルアルコールプロポキシレート(propargyl alcohol propoxylate)、ピリジニウムプロピルスルフォベタイン(pyridinium propyl sulfobetaine)、プロパンスルホン酸ナトリウム塩(propanesulfonic acid sodium salt)からなる群より2種以上選択され得る。
【0017】
8.前記4~7の具体例で、前記電解メッキは、メッキ液温度約40~60℃で電流密度約10~100A/dm2の電流を印加するものであってもよい。
【0018】
9.本発明のまた他の観点は、電解ニッケル箔、前記電解ニッケル箔の上部に形成された誘電体及び前記誘電体上に形成された伝導性金属層を含む薄膜型キャパシタに関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、研磨されない状態でも表面の算術平均粗さRa、10点平均粗さRzと突起の最大高さRtが小さく、60°鏡面光沢度が高くて平滑度が高いので、誘電体を薄くコーティングしても電解ニッケル箔に形成された突起(nodule)が誘電体層から突き出て伝導性金属層に接して放電(short)が起きる危険性が低い電解ニッケル箔、前記電解ニッケル箔を製造する方法及び前記電解ニッケル箔を具備したキャパシタを提供することができる。
【0020】
また、本発明は、粗さが低く、光沢度が高いため、CMP工程のような別途の研磨工程なしでも薄膜型キャパシタ製造に用いられ得る電解ニッケル箔及び工程の効率性に優れた前記電解ニッケル箔を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1a】
図1aは、実施例1の電解ニッケル箔を1,000倍に拡大したSEM写真である。
【
図1b】
図1bは、比較例1の電解ニッケル箔を1,000倍に拡大したSEM写真である。
【
図2a】
図2aは、実施例1の電解ニッケル箔の一面を白色光走査干渉計方式で3Dプロファイリングした写真である。
【
図2b】
図2bは、実施例1の電解ニッケル箔の一面を白色光走査干渉計方式で測定した写真である。
【
図2c】
図2cは、実施例1の電解ニッケル箔の一面の粗さ分布図を示したグラフである。
【
図2d】
図2dは、実施例1の電解ニッケル箔の横方向粗さ分布図を示したグラフである。
【
図2e】
図2eは、実施例1の電解ニッケル箔の縦方向粗さ分布図を示したグラフである。
【
図3a】
図3aは、比較例1の電解ニッケル箔の一面を白色光走査干渉計方式で3Dプロファイリングした写真である。
【
図3b】
図3bは、比較例1の電解ニッケル箔の一面を白色光走査干渉計方式で3D測定した写真である。
【
図3c】
図3cは、比較例1の電解ニッケル箔の一面の粗さ分布図を示したグラフである。
【
図3d】
図3dは、比較例1の電解ニッケル箔の横方向粗さ分布図を示したグラフである。
【
図3e】
図3eは、比較例1の電解ニッケル箔の縦方向粗さ分布図を示したグラフである。
【
図4】
図4は、薄膜型キャパシタの断面構造を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下で、本発明の実施例は添付図面を参照して詳しく説明する。ただし、本発明を説明するにおいて、関連した公知技術又は構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要に濁す恐れがあると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0023】
後述する用語は、本発明での機能を考慮して定義された用語であって、これは使用者や運用者の意図又は慣例などによって変わり得るため、その定義は、本発明を説明する本明細書の全般にわたった内容を基に行われなければならない。
【0024】
本明細書で用いられたRa、Rz及びRtは、それぞれ電解ニッケル箔の粗さを示すパラメーターであって、ISO 25178規格によって測定したものである。
【0025】
Raは、算術平均粗さを意味し、Rzは、10点平均粗さを意味し、Rtは、突起最大高さを意味する。
【0026】
電解ニッケル箔の光沢度は、60°鏡面光沢度を意味し、JIS Z 8741規格によって測定した値である。単位は、GU(Gloss Unit)である。
【0027】
以下の実施例は、本発明の実現手段の例示に過ぎず、本発明が以下の実施例によって限定されるものではなく、以下の実施例は、本発明が適用される構成及び本発明が適用される条件によって修正又は変更されるべきである。
【0028】
電解ニッケル箔の製造
【0029】
電解ニッケル箔は、ニッケルイオン前駆体、pH緩衝剤、粗さ調節剤を含み、pH濃度が1~5である電解液を用いて電解メッキすることで製造され得る。
【0030】
前記電解液は、電解液の全体容量部に対してニッケルイオン前駆体を約400~600g/Lで含み、前記範囲で電解ニッケル箔の表面粗さ及び光沢度が優秀である。前記ニッケルイオン前駆体は、ニッケルイオンメッキに用いられる前駆体であれば、制限なしに用いることができるが、好ましくは、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル、窒酸ニッケルからなる群より選択され得、特に好ましくは、硫酸ニッケル又はスルファミン酸ニッケルが用いられ得る。
【0031】
前記粗さ調節剤は、サッカリン、カルボキシエチルイソチオウロニウムクロリド(carboxyethyl isothiuronium chloride)、アリルスルホン酸ナトリウム(sodium allyl sulfonate)、ブチネジオールプロポキシレート(butynediol propoxylate)、ブチネジオールエトキシレート(butynediol ethoxylate)、プロパルギルアルコールプロポキシレート(propargyl alcohol propoxylate)、ピリジニウムプロピルスルフォベタイン(pyridinium propyl sulfobetaine)、プロパンスルホン酸ナトリウム塩(propanesulfonic acid sodium salt)のうち1種以上選択された化合物を含むことができる。好ましくは、サッカリンとアリルスルホン酸ナトリウムを組み合わせて用いることができる。
【0032】
前記粗さ調節剤は、電解液のうち約0.01g/L~2g/L、好ましくは、約0.85~1.8g/Lの濃度で用いることができる。具体例では、サッカリンとアリルスルホン酸ナトリウムを適用する場合、それぞれ約0.05g/L~1.0g/Lの濃度で用いることができる。
【0033】
具体例では、サッカリンとアリルスルホン酸ナトリウムの濃度比は、約1:0.01~100、好ましくは、約1:0.05~1:20であってもよい。
【0034】
前記電解液は、pH濃度を調節するためにpHバッファー剤を含むことができる。前記pH緩衝剤は、前記電解液のpH濃度を適正なレベルに制御するための程度であれば、特別に制限なしに用いることができるが、電解液の全体容量部に対して約10~30g/Lで含まれ得、前記範囲内で工程の効率性に優れる。一方、前記pH緩衝剤の種類としては、本発明の目的に応じて、不必要な化学的反応を起こすものではない限り、いずれも用いることができるが、例えば、ホウ酸又はクエン酸ナトリウムが用いられ得る。これらpHバッファー剤を適用する場合、工程の安定性が向上し、粗さに優れた電解ニッケル箔が製造され得る。
【0035】
前記pHバッファー剤は、電解液のうち約15~50g/Lで含まれる。前記範囲でpH濃度及び工程制御が容易である。
【0036】
前記電解液のpH濃度は、約1~5、好ましくは、約2~4の範囲である。前記範囲で電解ニッケル箔の表面粗さが優秀である。
【0037】
電解メッキは、通常の方法で行われ得、例えば、電解液に基材又はマンドレルを入れ、電解メッキを行った後、前記基材やマンドレルを除去する方式で行われ得る。
【0038】
具体例で、前記電解メッキは、前記電解液に約10A/dm2~100A/dm2の電流、例えば、約15A/dm2~80A/dm2の電流を印加する方法で製造され得る。前記範囲で効率的な工程により表面粗さに優れた電解ニッケル箔の製作が可能である。
【0039】
具体例で、前記電解メッキは、約40℃~60℃の温度で行われ得る。好ましくは、約55℃以上~60℃未満であってもよい。前記条件で粗さ及び物理的性質に優れた電解ニッケル箔が形成される。
【0040】
前記電流印加時間は、電解ニッケル箔の量によって適切に調節され得る。具体例では、約300~500秒、好ましくは、約350~450秒の時間の間印加され得る。前記範囲内で電解ニッケル箔の工程が効率的であるとともに粗さ及び光沢度に優れた薄型の電解ニッケル箔を製造することができる。
【0041】
前記製造された電解ニッケル箔は、厚さが約1μm~100μmであってもよく、好ましくは、約3μm~75μmの範囲であってもよい。前記範囲内で耐久性及び汎用性に優れると共に、薄膜型薄膜キャパシタなどの製品への使用に適合する。
【0042】
本発明の電解ニッケル箔の少なくとも一面には、優れた粗さを有する平坦面が具備される。
【0043】
前記電解ニッケル箔の平坦面は、白色光走査干渉計(White-light Scanning Interferometry、WSI)及び位相差干渉計(Phase-Shift Interferometry、PSI)方法で測定した粗さ係数は、Ra=約1.2μm以下、Rz=約1.0μm以下、Rt=約1.5μm以下である。
【0044】
一具体例では、表面粗さが算術平均粗さRa=約0.5以下、10点平均粗さRz=約0.2μm以下、突起最大高さRt=約0.5μm以下である。
【0045】
他の具体例では、表面粗さがRa=約0.03μm以下、Rz=約0.15μm以下、Rt=約0.3μm以下である。
【0046】
また他の具体例では、表面粗さがRa=約0.01μm~0.03μm、Rz=約0.05μm~0.15μm、Rt=約0.1μm~0.2μmである。
【0047】
前記粗さ範囲で、平坦面は、別途の研磨工程なしでも優れた粗さを有することになって表面欠陥が減るという長所を有する。もし、粗さ係数が前記範囲を超過する場合、キャパシタ内の誘電体層の性能に悪影響を及ぼして絶縁抵抗及び漏洩電流をもたらし得る。前記表面粗さの範囲内で全体的に平坦であるだけでなく特別に突出した部分のない優れた電解ニッケル箔の提供が可能である。
【0048】
また、前記平坦面の60°鏡面光沢度は、約50GU~800GUであってもよく、例えば、約200GU~700GUであってもよい。平坦面の光学的特性が前記範囲内にある場合、表面が均一で且つ平坦性に優れる。
【0049】
薄膜型セラミックス薄膜キャパシタ
【0050】
本発明の電解ニッケル箔を含む薄膜型セラミックス薄膜キャパシタ100は、
図4に示したように、ニッケル薄膜層110、誘電体層120及び伝導性金属層130が順次に積層された構造を有する。
【0051】
前記電解ニッケル箔を形成した後、別途の研磨工程を経ずに電解ニッケル箔の表面に誘電体結晶粒を形成して電解ニッケル箔全体をコーティングする。このとき、薄膜誘電体の形成方法としては、スパッタリング、レーザー研削、化学的蒸着及び化学的溶液沈着方式が用いられ得るが、誘電体の緻密性を向上させるためには、スパッタリング方式が好ましい。
【0052】
通常の技術者であれば、スパッタリング方法などを通じて本発明の前記電解ニッケル箔から容易にキャパシタを製作することができるが、例えば、電解ニッケル箔を蒸着プレートに位置させ、蒸着プレートを約500~800℃に加熱した後、誘電体をスパッタリングすることによって電解ニッケル箔の上部に誘電体を形成することができる。
【0053】
一定の厚さで誘電体を沈着した後には、誘電体を塑性させて誘電体層の結晶化及び緻密化を向上させることができる。
【0054】
電極を蒸着させるために、上部に誘電体が形成された電解ニッケル箔を冷凍させた後、その表面にスパッタリング方式を通じて電極を蒸着させることによって薄膜キャパシタを完成することができる。前記電極は、通常的に、金又は銅電極が用いられるが、電気的連結を可能にする物質であれば、制限なしに用いられ得る。
【0055】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成及び作用をより詳しく説明する。ただし、これは本発明の好ましい例示で提示されたものに過ぎず、何らの意味でもこれによって本発明が制限されるものではない。
【0056】
ここに記載しない内容は、この技術分野に熟練した者であれば、十分に技術的に類推できるものであるので、その説明を省略する。
【0057】
<実施例1>
【0058】
ニッケルイオン前駆体として硫酸ニッケルを約450g/L、pH緩衝剤としてホウ酸約25g/L、粗さ調節剤としてサッカリン約0.1g/Lとアリルスルホン酸ナトリウム約0.8g/Lを含有するpH約3の電解液を用いた。電解液の温度約55℃で、電流密度約20A/dm2で約400秒間電流を印加して、厚さ約27μmのニッケル箔を製造した。
【0059】
製造された電解ニッケル箔は、研磨されない状態で表面の算術平均粗さRaが約0.05μm、10点平均粗さRzが約0.19μm、突起の最大高さRtが約0.37μmであり、60°鏡面光沢度は、約445GUであった。
【0060】
<実施例2~10>
【0061】
下の表1に記載した電解液及び電解条件を適用したこと以外は、実施例1と同一の方法で電解ニッケル箔を製造した。
【0062】
【0063】
<比較例1~4>
【0064】
下の表2に記載した電解液及び電解条件を適用したこと以外は、実施例1と同一の条件と方法で電解ニッケル箔を製造した。
【0065】
【0066】
<物性の評価>
【0067】
粗さ測定
【0068】
粗さ測定器(Nano System社、モデルNV-2700)を用いてISO 25178標準によって試験片の一面全般の粗さ分布を測定し、試験片の中心点を基準として縦方向及び横方向のRz、Rt、Raを測定した。
【0069】
光沢度測定
【0070】
光沢度測定器(IG-410 Ultra High Gloss Meter、Horiba社)でJIS Z 8741標準によって入射角60°鏡面光沢度を測定した。光沢度の測定単位は、GU(Gloss Unit)である。
【0071】
前記方法で測定されたそれぞれの実施例及び比較例の粗さ及び光沢度は、下の表3に整理した通りである。
【0072】
【0073】
前記表3から分かるように、実施例1~10は、比較例1~4に比べて表面粗さ係数であるRa、Rz、Rtが全て非常に低く、光沢度(Gs 60)が高いことが確認できる。
【0074】
SEM写真評価
【0075】
実施例1及び比較例1の電解ニッケル箔の平坦面を1,000倍の割合で拡大してSEM写真を撮影した。その結果は、それぞれ
図1aと
図1bの通りである。
図1aと
図1bを比較すると、実施例1が比較例1より表面突起の高さが低いだけでなく、高さの分布も均一である点が確認できる。
【0076】
3Dプロファイリング
【0077】
実施例1及び比較例1の電解ニッケル箔の平坦面に対して白色光走査干渉計方式で3Dプロファイリングし、実施例1に対して
図2a~
図2e、比較例1に対しては、
図3a~
図3eのプロファイリング結果を導出した。
【0078】
3Dプロファイリングを通じて得られた
図2aと
図3aを比較すると、実施例1が比較例1より規則的で低い高さの表面突起を有する表面を有していることが確認できる。放電、すなわち、ショート(short)は、周囲より顕著に高い突起部分で発生するという事実から、実施例1が非常に優れた形態性(morphology)を有していることが容易に分かる。
【0079】
図2cと
図3cは、それぞれ実施例1と比較例1の電解ニッケル箔の表面の粗さ分布図を示したグラフであり、
図2cの突起高さ(Rz)の分布が狭いと共に突起高さの最大値(Rt)が低いという事実が確認され、これは、実施例1の表面が均一であるということを意味する。
【0080】
図2dと
図3dは、それぞれ実施例1と比較例1の電解ニッケル箔の横方向粗さ分布図を示したグラフであり、実施例1の
図2dが比較例1の
図3dより非常に平坦で平滑度が高いということが分かる。
【0081】
図2eと
図3eは、それぞれ実施例1と比較例1の電解ニッケル箔の縦方向粗さ分布図を示したグラフであって、実施例1の
図2eが比較例1の
図3eより非常に平坦で平滑度が高いということが分かる。
【0082】
キャパシタの製作
【0083】
<実施例11>
【0084】
実施例1の電解ニッケル箔をスパッタリング蒸着プレートの上に置き、アルゴン95%、酸素5%で構成されたチャンバ雰囲気下で約3torrの気圧を維持した。蒸着プレートを約650℃に加熱した後、RF電力約150Wを用いて直径が約3インチであるチタン酸バリウム(BaTiO3)標的物を用いて電解ニッケル箔の上にチタン酸バリウムをスパッタリングした。約150分間蒸着を行い、厚さが約0.7μmである誘電体を形成した。
【0085】
チタン酸バリウムがコーティングされた電解ニッケル箔を約900℃温度のチャンバ内で約2時間の間酸素部分圧力が約2X10-7atmで塑性した後に冷凍させた。チタン酸バリウムがコーティングされた電解ニッケル箔の表面にスパッタリング方式を通じて約0.2μmの銅電極を蒸着することでキャパシタを製作した。
【0086】
<比較例5>
【0087】
比較例1の電解ニッケル箔に対して実施例11と同一の方法でキャパシタを製作した。
【0088】
キャパシタショート実験
【0089】
完成されたキャパシタサンプルに対して、デジタルLCRメートルを用いて室温(25℃)、約1khz、発振電圧(oscillating voltage)約50mVで電圧約-10~10Vのバイアスを加えてショート発生有無を確認した。その結果、実施例1の電解ニッケル箔で製造されたキャパシタは、ショートが発生しない一方、比較例1の電解ニッケル箔で製造されたキャパシタは、ショートが発生した。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0089
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0089】
完成されたキャパシタサンプルに対して、デジタルLCRメートルを用いて室温(25℃)、約1khz、発振電圧(oscillating voltage)約50mVで電圧約-10~10Vのバイアスを加えてショート発生有無を確認した。その結果、実施例1の電解ニッケル箔で製造されたキャパシタは、ショートが発生しない一方、比較例1の電解ニッケル箔で製造されたキャパシタは、ショートが発生した。
以下の項目[態様1]~[態様8]に本発明の実施形態の例を列記する。
[態様1]
算術平均粗さRaが0.05μm以下であり、10点平均粗さRzが0.20μm以下であり、突起の最大高さRtが0.50μm以下であり、60°鏡面光沢度が200GU以上である平坦面を少なくとも一面に具備したことを特徴とする、電解ニッケル箔。
[態様2]
前記平坦面は、Raが0.03μm以下、Rzが0.15μm以下、Rtが0.30μm以下であり、60°鏡面光沢度が400GU以上であることを特徴とする、態様1に記載の電解ニッケル箔。
[態様3]
前記電解ニッケル箔の厚さは、1~100μmであることを特徴とする、態様1又は態様2に記載の電解ニッケル箔。
[態様4]
ニッケルイオン前駆体400~600g/L、pH緩衝剤10~30g/L及び粗さ調節剤0.5~2.0g/Lを含み、pHが1~5である電解液を用いて電解メッキする段階を含むことを特徴とする、電解ニッケル箔の製造方法。
[態様5]
前記ニッケルイオン前駆体は、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル及び窒酸ニッケルからなる群より1種以上選択されることを特徴とする、態様4に記載の電解ニッケル箔の製造方法。
[態様6]
前記粗さ調節剤は、サッカリン、カルボキシエチルイソチオウロニウムクロリド(carboxyethyl isothiuronium chloride)、アリルスルホン酸ナトリウム(sodium allyl sulfonate)、ブチネジオールプロポキシレート(butynediol propoxylate)、ブチネジオールエトキシレート(butynediol ethoxylate)、プロパルギルアルコールプロポキシレート(propargyl alcohol propoxylate)、ピリジニウムプロピルスルフォベタイン(pyridinium propyl sulfobetaine)、プロパンスルホン酸ナトリウム塩(propanesulfonic acid sodium salt)からなる群より2種以上選択されることを特徴とする、態様4に記載の電解ニッケル箔の製造方法。
[態様7]
前記電解メッキは、メッキ液温度40~60℃で電流密度10~100A/dm
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の電流を印加することを特徴とする、態様4に記載の電解ニッケル箔の製造方法。
[態様8]
態様1又は態様2に記載の電解ニッケル箔、前記電解ニッケル箔の上部に形成された誘電体、前記誘電体の上に形成された伝導性金属層を含むことを特徴とする、薄膜キャパシタ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Raが0.05μm以下であり、Rzが0.20μm以下であり、Rtが0.50μm以下であって、60°鏡面光沢度が400GU以上の薄膜型キャパシタ製造用電解ニッケル箔の製造方法であり、
ニッケルイオン前駆体400~600g/L、pH緩衝剤10~30g/L及び粗さ調節剤0.5~2.0g/Lを含み、pHが1~5である電解液を用いて電解メッキする段階を含み、前記粗さ調節剤はサッカリン及びアリルスルホン酸ナトリウムを含むことを特徴とする、薄膜型キャパシタ製造用電解ニッケル箔の製造方法。
【請求項2】
前記粗さ調節剤において、サッカリン及びアリルスルホン酸ナトリウムの濃度比は、1:0.05~1:20であることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型キャパシタ製造用電解ニッケル箔の製造方法。
【請求項3】
前記粗さ調節剤は、サッカリン0.1~1g/L及びアリルスルホン酸ナトリウム0.4~0.8g/Lを含むことを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型キャパシタ製造用電解ニッケル箔の製造方法。
【請求項4】
前記ニッケルイオン前駆体は、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル及び窒酸ニッケルからなる群より1種以上選択されることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型キャパシタ製造用電解ニッケル箔の製造方法。
【請求項5】
前記電解メッキは、メッキ液温度40~60℃で電流密度10~100A/dm2の電流を印加することを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型キャパシタ製造用電解ニッケル箔の製造方法。