(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075712
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】空気からのガスの分離
(51)【国際特許分類】
B01D 53/047 20060101AFI20240528BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B01D53/047
B01J20/18 B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046004
(22)【出願日】2024-03-22
(62)【分割の表示】P 2022530911の分割
【原出願日】2020-11-23
(31)【優先権主張番号】1913287
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルティス,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ペルシヨン,キトリ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】窒素/酸素分離において選択性が高く、特に、酸素を保持せずに窒素を保持できる低コストのゼオライト吸着剤を提供する。
【解決手段】(V)PSAによる工業用ガス、特に空気ガスの非低温分離のための、フォージャサイト(FAU)ゼオライト結晶をベースとするゼオライト吸着剤の使用を提供し、そのSi/Alモル比は1.00~1.20の間であり、その非ゼオライト相(NZP)含有率は0<NZP≦25%である。また、少なくとも前記ゼオライト吸着剤材料を含む呼吸補助機械を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(V)PSAによる工業用ガスの非低温分離のため、特に窒素及び酸素の分離(N2/O2)のため、最も具体的には空気からの医療用酸素の調製のため、及び(V)PSAによる酸素の工業的調製のための、ゼオライト吸着剤材料の使用であって、
- Si/Alモル比が、限界値を含んで、1.00~1.20、好ましくは1.00~1.15、好ましくは1.00~1.12であるフォージャサイト(FAU)ゼオライト結晶をベースとし、
- 非ゼオライト相(NZP)の含有率が、前記ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して、0<NZP≦25重量%、好ましくは0<NZP≦20重量%、より好ましくは0<NZP≦15重量%、有利には0<NZP≦10重量%、さらにより有利には0<NZP≦8重量%である、
使用。
【請求項2】
前記ゼオライト吸着剤のナトリウム含有率が、限界値を含んで、95%を超え、好ましくは97%を超え、より好ましくは98%を超え、より好ましくは99%を超え、これらのナトリウム含有率は交換可能部位のパーセンテージとして表される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ゼオライト吸着剤を形成するゼオライト結晶が、FAU LSX型ゼオライト結晶(Si/Al比が1.00に等しい)及びFAU MSX型ゼオライト(Si/Al比が不等式1.00<Si/Al≦1.20に対応する)から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記ゼオライト吸着剤材料が、7mm以下、好ましくは0.05mm~5mm、より好ましくは0.2mm~3mmの体積平均直径を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記ゼオライト吸着剤材料が、0.55kg.m-3~0.80kg.m-3、好ましくは0.58kg.m-3~0.75kg.m-3、より好ましくは0.60kg.m-3~0.70kg.m-3のかさ密度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
25℃で4bar(0.4MPa)下で測定された、前記ゼオライト吸着剤材料の窒素(N2)質量吸着容量が、23Ncm3.g-1を超え、好ましくは24Ncm3.g-1を超え、より好ましくは25Ncm3.g-1を超え、最も特に好ましくは26Ncm3.g-1を超える、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
呼吸補助用酸素濃縮器における吸着要素としての、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記ゼオライト材料が、好ましくは1つ又は2つ、3つ又はそれ以上の他の吸着剤層を有する吸着剤層の形態で使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記他の吸着剤が、CaLSX、LiTrLSX、5A、NaX、LiX、LiAgLSX、LiLSX及びLiCaLSXから選択されるゼオライトを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
NaLSX/LiLSX二重層又はNaMSX/LiLSX、好ましくはNaLSX/LiLSX二重層、より好ましくはNaLSX/LiLSX比が重量で5/95~95/5、さらに良好には50/50~95/5であるNaLSX/LiLSX二重層を形成する、LiLSXをベースとする吸着剤を有する二重層として前記吸着剤を用いる、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の使用に使用される少なくとも1つのゼオライト吸着剤材料を含む、輸送可能又は移動可能な呼吸補助用酸素濃縮器。
【請求項12】
NaLSX/LiLSX二重層又はNaMSX/LiLSX二重層、好ましくはNaLSX/LiLSX二重層、より好ましくはNaLSX/LiLSX比が重量で5/95~95/5、さらに良好には50/50~95/5であるNaLSX/LiLSX二重層を含む、請求項11に記載の濃縮器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(V)PSAによる工業用ガスの分離、特に空気中に含まれる窒素及び酸素の分離に関するものであり、一つの完全に適切な用途は医療用酸素の調製であり、他の考えられる用途は工業用酸素の調製のためのVPSA用途である。
【0002】
より正確には、本発明は、空気ガス及び工業用ガスの分離のための、より具体的には、空気のようなガス流中での吸着による窒素の分離のための特定の吸着剤の使用、及び窒素(N2)の吸着による高純度の酸素(O2)の調製、及びより具体的には、空気からの医療用酸素の調製に関する。
【背景技術】
【0003】
ガス混合物からの窒素の分離は、PSA(圧力スイング吸着)又はVPSA(真空圧スイング吸着)の方法による空気からの酸素の生成をはじめとする、いくつかの非低温工業方法の基礎にあり、PSA方法は最も重要なものの1つである。
【0004】
この用途では、空気が圧縮され、窒素分子を顕著に選択する吸着剤のカラムに送られる。このようにして、吸着サイクルの間、アルゴンとともに約94~95%の純度の酸素が生成される。一定時間後、カラムを減圧した後、低圧に維持し、その間窒素を脱着する。その後、生成された酸素の一部又は空気によって再加圧が確保され、サイクルが続く。一般的に行われる低温方法に対するこの方法の利点は、設備がより単純であること、保守管理がより容易であること、及び特に小規模から中規模の設備、すなわち、1日に数十トン以下の精製ガスを生産する設備について結果としてより効率的な使用及びより経済的な実施が可能であることにある。
【0005】
しかし、使用される吸着剤の品質は、効率的で競合的な方法の鍵となっている。吸着剤の性能には多くの要因が連動しており、その中でも特に窒素吸着容量及び窒素と酸素との間の選択性(カラムのサイジング及び生産収率の最適化(生産された酸素と導入された酸素との比)の決定要因となる)、並びに吸着動態(サイクル時間の最適化及び設備の生産性の向上を可能にする)が挙げられる。
【0006】
特許US6596256B1号は、カリウムを添加せずに、ナトリウムLSXゼオライト及びナトリウムMSXゼオライトを調製する方法を開示する。次いで、このようにして調製されたゼオライトは、リチウム交換LSXゼオライトの場合、例えば窒素/酸素分離に使用される前に、リチウムイオン、カルシウムイオン、希土類金属カチオン、又はこれらのカチオンの組み合わせとのカチオン交換に供される。
【0007】
特許US5464467A号は、50%~約95%のリチウムイオンを含むX型ゼオライトを含有する少なくとも1つの吸着ゾーンへのガス混合物の通過を含む、ガス混合物から窒素を調製するための方法を記載する。このようなリチウムゼオライトは、全面的に有利な酸素生成能を有し、これは、先行技術の又は他のカチオンを含むゼオライトで得られる吸着容量よりも顕著に良好である。
【0008】
フォージャサイト(FAU)型ゼオライトをベースとするゼオライト吸着剤、特に、例えば、国際特許出願WO2018/100318号に記載されているシリコン/アルミニウムモル比(LiLSX)の低いリチウム交換ゼオライトをベースとする吸着剤も知られている。これらの吸着剤は、酸素/窒素分離、特に空気からの医療用酸素の調製に完全に適しているだけでなく、非常に効率的であることが証明されている。
【0009】
結果的に、先行技術は、ガス混合物からの(例えば、窒素/酸素混合物からの、又は空気からの)酸素の生成が、X型ゼオライトをベースとし、リチウムイオンを含むLSXゼオライトを依然としてよりベースとするゼオライト吸着剤を用いることによって最適化されることを、当業者に教示する。
【0010】
実際、リチウム交換ゼオライト吸着剤は窒素/酸素分離のために現在も販売されており、これらのゼオライトが最も効率的であると考えられている。しかし、リチウム交換吸着剤は、天然資源が継続的に減少している金属であるリチウム金属の固有のコストのために、製造コストが比較的に高いという問題を抱えている。
【0011】
これらの欠点を克服し、特にリチウムを含むゼオライト吸着剤の使用を減少させるために、特許US6027548A号は、NaX型及びLiX型の吸着剤を重ねた多層吸着カラムを使用することを提案している。NaX型の吸着剤はLiX型の吸着剤に比べて性能が比較的劣るにもかかわらず、この文献に記載されている多層吸着剤は中程度のコストのものであり、有利なコスト/性能比を有するものとして提示されている。
【0012】
特に、NaX型の吸着剤は、リチウム交換吸着剤に比べて製造/販売コストが低いことから、時に使用できることがよく知られている。しかし、NaX型の吸着剤は、窒素吸着容量及び窒素/酸素選択性の点で効率がより悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6596256号明細書
【特許文献2】米国特許第5464467号明細書
【特許文献3】国際公開第2018/100318号
【特許文献4】米国特許第6027548号明細書
【発明の概要】
【0014】
その結果、窒素吸着容量及び窒素/酸素選択性の点で良好な性能特性を有する手頃な価格の製品が依然として必要とされている。このように、本発明の第一の目的は、ガス分離の点で、特に窒素/酸素分離の点で、より具体的に酸素の生成の点で、特に医療用酸素の生成の点で、良好な、又は非常に良好な性能を有する、手頃な価格のゼオライト吸着剤を提案することである。
【0015】
特に最も的を絞った目的は、窒素/酸素分離において選択性が高く、特に、酸素を保持せずに窒素を保持できる低コストのゼオライト吸着剤、より具体的に窒素を選択的に吸着し、酸素を吸着しないか、あるいは非常に少量しか吸着しないゼオライト吸着剤である。
【0016】
本発明の目的の1つは、顕著に、窒素及び酸素の分離のための既存のナトリウムグレードのゼオライト吸着剤(「シーブ」としても知られる)を、酸素を保持しないか、又は非常に少量しか保持せず、窒素を非常に優先的に保持する固体を提案することによって改良することにある。他のさらなる目的は、以下の発明の説明から明らかになる。
【0017】
出願人は今回、以下に記載する本発明により、上記の目的を完全に又は少なくとも部分的に達成できることを発見した。
【0018】
(V)PSAによる工業用ガスの非低温の分離、特に窒素及び酸素(N2/O2)の分離、最も具体的には空気からの医療用酸素の調製、及び(V)PSAによる酸素の工業的調製のために、FAU型ゼオライトの結晶からゼオライト吸着剤材料を調製することが可能であることが今回発見された。
【0019】
したがって、第一の態様によれば、本発明の主題は、(V)PSAによる工業用ガスの非低温分離のため、特に窒素及び酸素の分離(N2/O2)、典型的には空気からの医療用酸素の調製のため、及び(V)PSAによる酸素の工業的調製のための以下のゼオライト吸着剤材料の使用である。
【0020】
- Si/Alモル比が、限界値を含んで、1.00~1.20、好ましくは1.00~1.15、好ましくは1.00~1.12であるフォージャサイト(FAU)ゼオライト結晶をベースとし、
- 非ゼオライト相(NZP)の含有率は、ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して、0<NZP≦25重量%、好ましくは0<NZP≦20重量%、より好ましくは0<NZP≦15重量%、有利には0<NZP≦10重量%、さらにより有利には0<NZP≦8重量%である。
【0021】
好ましい態様によれば、本発明の関連において使用され得るゼオライト吸着剤のナトリウム含有率は、一般に、限界値を含んで、95%を超え、好ましくは97%を超え、より好ましくは98%を超え、より好ましくは99%を超え、これらのナトリウム含有率は交換可能部位のパーセンテージとして表される。95%を超えるナトリウム含有率で、本発明の関連において使用されるゼオライト吸着剤は、以下に「ナトリウムグレードのゼオライト吸着剤」又は「ナトリウムグレードのシーブ」と呼ぶ。
【0022】
本発明の必要性については、前記ゼオライト吸着剤の形成に使用され得るゼオライトは、ナトリウム溶液から合成され、イオン交換を全く受けないか、又は交換後のゼオライト吸着剤の交換可能部位が、限界値を含んで、ナトリウムイオンで95%超を占められ、好ましくは97%超を占められ、より好ましくは98%超を占められ、さらにより好ましくは99%超を占められるように、イオン交換を受けないことが有利であることを理解すべきである。
【0023】
したがって、本発明の最も特に好ましい実施形態によれば、工業用ガス、特に空気ガスの非低温分離のために使用され得るゼオライト吸着剤はナトリウムグレードのゼオライト吸着剤であり、その交換可能部位は、その95%超がナトリウムイオンで占められ、ナトリウム以外のカチオンの含有率が酸化物として表されるのは5%未満、好ましくは4%未満、より良好には2%未満であり、ナトリウム以外のカチオンは、例えば、リチウム、カリウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、セシウム、及び銀などの遷移金属から選択され、好ましくはリチウム、カリウム、カルシウム及びバリウムから選択される。
【0024】
さらに、本発明に関連して使用され得るゼオライト吸着剤を形成するゼオライト結晶は、フォージャサイト型(FAU型ゼオライトとして知られる)のゼオライト結晶であり、そのケイ素/アルミニウムモル比(Si/Alモル比)は低~中程度である。換言すれば、本発明の関連で使用され得るゼオライト吸着剤を形成するゼオライト結晶は、FAU LSX型ゼオライト結晶、すなわち、Si/Al比が1.00と等しいもの、及びFAU MSX型ゼオライト、すなわち、Si/Al比が不等式1.00<Si/Al≦1.20に相当するものから選択される。
【0025】
全く驚くべきことに、同様の窒素吸着容量について、酸素吸着容量は、本発明に関連して使用され得るナトリウムグレードのゼオライト吸着剤のゼオライトのSi/Al比を比例的に低くすることが発見された。換言すれば、ナトリウムグレードのゼオライト吸着剤のSi/Al比が低いほど、より少ない酸素が吸着され、窒素は大きく吸着される。
【0026】
したがって、上に示すように、本発明に有用なゼオライト吸着剤の調製に用いることができるゼオライトの中で、LSX又はMSXゼオライトであるFAU型ゼオライト、特にSi/Alモル比が1.00~1.20の間、好ましくは1.00~1.15の間、及び好ましくは1.00~1.12の間の範囲内にあり、限界値を含むFAU型ゼオライトが好ましい。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、窒素/酸素分離に使用され得るゼオライト吸着剤の調製には、FAU LSX型ゼオライト(Si/Alモル比=1.00)が最も特に好ましい。
【0028】
ゼオライト吸着剤材料中に存在する、考えられる異なる種類のゼオライトは、XRDによって決定される。ゼオライト(複数可)の総量は同様にXRDによって測定され、吸着剤の総重量に対する重量パーセンテージで表される。
【0029】
さらに、前述のように、ゼオライト吸着剤材料はNZPとして知られるある量の非ゼオライト相を含む。本発明において、用語「非ゼオライト相」(又は「NZP」)は、「ゼオライト相」又は「ZP」と呼ばれる前記ゼオライト吸着剤材料中に存在するゼオライト(複数可)以外の、本発明のゼオライト吸着剤材料中に存在する任意の相を意味する。非ゼオライト相の量は、吸着剤のゼオライト相の、100%に対する残余で表され、換言すれば、以下の式により表される。
【0030】
%NZP=100-%ZP
式中、%NZPはゼオライト吸着剤材料の総重量に対するNZPの重量パーセンテージ、%ZPはゼオライト吸着剤材料の総重量に対するゼオライト相の重量パーセンテージを表す。
【0031】
したがって、前述のように、本発明の関連において有用なゼオライト吸着剤材料のNZPは、ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して、0<NZP≦25重量%、好ましくは0<NZP≦20重量%、より好ましくは0<NZP≦15重量%、有利には0<NZP≦10重量%、さらにより有利には0<NZP≦8重量%となるものである。
【0032】
本発明に関連して使用され得るゼオライト吸着剤材料は、ビーズ、押出物又は他の形態のいずれであってもよく、一般に、7mm以下、好ましくは0.05mm~5mm、より好ましくは0.2mm~3mmの体積平均直径、又は平均長さ(球形でない場合は最長寸法)を有する。本発明の必要性のために、ビーズの形態のゼオライト吸着剤材料が好ましい。
【0033】
本発明に関連して使用されるゼオライト吸着剤材料はまた、それらが、目的が定められている用途に最も適した機械的特性、すなわち、以下を有している。
【0034】
- 体積平均直径(d50)又は長さ(材料が球形でない場合は最長寸法)が1mm未満(限界値を含む)の材料については、規格ASTM7084-04に従って測定される、1.5MPa超、好ましくは2.0MPa超、好ましくは2.5MPa超のバルク破砕強度、
- 又は体積平均直径(d50)又は長さ(材料が球形でない場合は最長寸法)が1mm以上(限界値を含む)の材料については、規格ASTM D4179(2011)及びASTM D6175(2013)に従って測定される、0.5daN~30daNの間、好ましくは1daN~20daNの間のペレット破砕強度のいずれか。
【0035】
より具体的には、及び本発明の好ましい一実施形態によれば、ゼオライト吸着剤材料は、0.05mm~5mm(端点を含む)の平均体積直径を有するビーズの形態を取る。より好ましく、より具体的には、医療用酸素の調製のための用途において、この体積平均直径は、0.05mm~1.0mm、より好ましくは0.15mm~0.65mm、完全に好ましくは0.25mm~0.55mmである。工業用ガスの分離のような用途では、この体積平均直径は、より具体的で、より一般的には、1.0mm~5.0mmであることができる。
【0036】
本発明のゼオライト吸着剤材料の別の好ましい特徴は、そのかさ密度であり、これは一般に0.55kg.m-3~0.80kg.m-3、好ましくは0.58kg.m-3~0.75kg.m-3、より好ましくは0.60kg.m-3~0.70kg.m-3である。
【0037】
本発明はまた、以下の工程を含む、本発明に関連して使用され得るゼオライト吸着剤材料の調製方法に関する。
【0038】
a/ 凝集バインダーでFAU MSXゼオライト及び/又はFAU MSXゼオライトの結晶を凝集させた後、凝集結晶を成形、乾燥、焼成する工程、
b/ 任意に塩基性アルカリ溶液の作用によりバインダーの少なくとも一部をゼオライト化させる工程、
c/ 任意に、工程a/又は工程b/で得られた生成物の交換可能部位のカチオンをナトリウムカチオンで置換し、続いてこのように処理した生成物を洗浄、乾燥させる工程、
d/ 得られたゼオライト吸着剤材料を活性化させる工程。
【0039】
ゼオライト化工程b/を実施する場合、特に、FAU型ゼオライトへのバインダーの変換を促進するために、工程a/の間にシリカ源を加えることが有利である場合がある。
【0040】
前述のように、前記の方法の工程a/で使用されるゼオライトの種類は、前述のように、Si/Alモル比が1.00~1.20の間であり、限界値を含むFAU型ゼオライトである。
【0041】
これらのゼオライト結晶は、当業者に知られた任意の手段によって調製することができ、例えば、FR2925478号又はUS6596256号に記載されているものと同様の方法に従って得ることができる。
【0042】
上記の調製方法において、表示量は全て焼成当量、すなわち重量により又は重量パーセンテージとして表され、導入された各成分について測定された強熱減量(LOI)を差し引いたものである。この工程a/では、例えば、US5464467号に記載されているように、少なくとも部分的に希土類金属と交換されたFAU型ゼオライトの結晶を使用することも可能である。
【0043】
FAU型ゼオライトの結晶の重量は、一般に、工程a/の終了時に得られた生成物の総重量に対して75重量%~95重量%の間であり、ゼオライト化可能な粘土の量は、部分的には、一般に、工程a/の結果得られた前記生成物の総重量に対して5重量%~25重量%の間である。
【0044】
シリカ源を加える場合には、工程a/の結果得られた前記生成物の全重量に対して0.1重量%~10重量%、より好ましくは0.2重量%~6重量%の量を加えることが好ましい。使用され得るシリカ源は、それ自体知られた任意の種類、例えば、固体シリカ、コロイド状シリカ、ケイ酸ナトリウム、及び当業者に周知の他の源である。
【0045】
工程a/の成形は、当業者に周知の技術に従って行われる。同様に、乾燥及び焼成は、当業者に同様に周知の通常の説明に従って行われる。したがって、乾燥は典型的には50℃~200℃の間の温度で行われる。焼成は、当業者に知られた任意の焼成方法によって実施することができ、例えば、限定されるものではないが、焼成は不活性ガス及び/又は酸化ガス、特に、酸素、窒素、空気、乾燥空気及び/又は脱炭酸空気、乾燥及び/又は脱炭酸されてもよい酸素激減空気などのガスによるブランケティング(blanketing)下で、200℃を超える、典型的には250℃~700℃の間、好ましくは300℃~650℃の間の1つ以上の温度で、数時間、例えば、1時間~6時間の間実施することができる。
【0046】
工程a/で使用される凝集バインダーは、当業者に知られた従来のバインダーから選択することができ、好ましくは、粘土、粘土の混合物、シリカ、アルミナ、コロイド状シリカ、アルミナゲルなど、及びそれらの混合物から選択される。
【0047】
粘土は、好ましくは、カオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライト及びメタカオリン、並びに全ての比率でのそれらの2種以上の混合物から選択される。
【0048】
セピオライト又はアタパルジャイト型の繊維状粘土が好ましく、粘土(複数可)は、場合により、一般には乾式粉砕して選択した粉末又はより良好にはゲル(すなわち、剥離粘土)の形態で配合され、分散され、任意に粉砕され、市販の粘土Min-U-Gel(R)、Pansil(R)、Pangel(R)、Cimsil(R)、Attagel(R)、Actigel(R)などで、1つ以上の化学的処理を受けたものと受けなかったものがある。このようなゲルは、例えば、EP170299号又はUS6743745号に記載されている。
【0049】
別の好ましい実施形態において、工程a/で使用される凝集バインダーは、凝集バインダーの総重量に対して、少なくとも80重量%のゼオライト化可能な粘土(「ゼオライト化可能部分」と呼ばれる)を含むことが好ましい。
【0050】
用語「ゼオライト化可能な粘土」とは、現在当業者に周知の技術により、アルカリ性塩基性溶液の作用によりゼオライト材料に変換することができる粘土又は粘土の混合物を指す。
【0051】
本発明の関連で使用され得るゼオライト化可能な粘土は、典型的には、カオリナイト、ハロイサイト、ナクライト、ディッカイト、カオリン及び/又はメタカオリンのクラスに属し、シリカ源も上記のようにこれらの粘土に加えることができる。
【0052】
ゼオライト化可能な粘土(複数可)に加えて、例えば、1種以上の他の種類のゼオライト化可能でない粘土、及び非限定的な方法で、アタパルジャイト、セピオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、及びその他から選択される粘土を組み込むことも可能である。しかし、この実施形態は好ましいものではない。
【0053】
さらに、凝集工程a/の間に、特に成形を容易にし、及び/又は凝集材料に機械的安定性、多孔性プロファイル及びその他のような特定の特性を付与することを目的として、1種以上の有機添加剤を組み込むことが可能である。これらの添加剤は当業者に周知であり、工程a/の終了時に得られる生成物の総重量に対して0~5重量%の間の量で組み込むことができる。
【0054】
ゼオライト化工程b/は、ゼオライト材料への、バインダーに含まれるゼオライト化可能な粘土(複数可)の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%の変換を可能にする。好ましい実施形態において、本発明に関連して使用され得るゼオライト吸着剤は、ゼオライト化されなかったバインダーを含む。
【0055】
ゼオライト化は、一般に水性であるアルカリ性塩基性溶液(その濃度は好ましくは0.5Mより大きい)、有利には水酸化ナトリウム水溶液及び/又は水酸化カリウム水溶液に凝集物を浸すことによって行うことができる。前記濃度は一般に5M未満、好ましくは4M未満、有利には3M未満である。
【0056】
ゼオライト化は、方法の反応速度を改善し、したがって浸漬時間を8時間未満に短縮するために、高温(室温を超える温度)、典型的には80℃~100℃程度の温度で行うことが好ましい。しかし、より低い温度で、より長い浸漬時間で操作することは、本発明の範囲外ではない。このゼオライト化工程の間に、塩基性アルカリ溶液に、固体又は液体のシリカ源、例えば、ケイ酸ナトリウム又は溶解シリカを加えることも本発明の範囲外ではない。
【0057】
この手順に従い、かつ上記に示すように、バインダーに含まれるゼオライト化可能な粘土(複数可)の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%のゼオライト化を達成することは容易である。次の工程は水洗であり、その後乾燥が続く。
【0058】
工程b/で得られた生成物の交換可能部位のカチオンをナトリウムカチオンで置換する任意の工程c/は望ましくないか、又はゼオライトのナトリウム含有率が交換可能部位の95%未満がナトリウムイオンで占められているような場合を除いて必要でさえない。次いで、このような交換は、当業者に周知の方法、例えば、特許EP0893157号に記載されている方法に従って行うことができる。
【0059】
本特許出願において、用語「交換可能部位」は、ゼオライト結晶中の全ての交換可能部位を指し、バインダーのゼオライト化の間に形成される交換可能部位も指す。本発明の好ましい実施形態では、任意のナトリウム交換は、本発明のゼオライト吸着剤材料中のナトリウム含有率(交換可能部位のパーセンテージとして表される)が95%以上であるように行われる。
【0060】
ナトリウムカチオンとの任意の交換の他に、本発明のゼオライト吸着剤材料が少なくとも95%以上のナトリウムイオンで占有された交換可能部位の含有率を有する場合には、元素の周期表のIA、IIA、IIIA、IIIA及びIIIB(それぞれ列1、2、13及び3)からの1種以上の他のカチオンだけでなく、ランタニド又は希土類金属系列の1種以上の他の3価イオン、亜鉛(II)イオン、銅(II)イオン、クロム(III)イオン、鉄(III)イオン、アンモニウムイオン及び/又はヒドロニウムイオンとの交換を行うことも可能である。
【0061】
本発明によるゼオライト吸着剤材料を得る方法の最終工程である活性化(工程d/)の目的は、含水量を固定し、吸着剤の強熱減量を最適限度内に抑えることである。一般的な手順は熱活性化であり、好ましくは300~650℃で、一定時間、典型的には1~6時間、強熱時の所望の含水量及び所望の強熱減量に応じて、及び吸着剤の意図した使用に従って実施される。一実施形態において、工程a/における焼成及び工程d/における活性化は付随して、すなわち、例えば、炉のような、同じ加熱チャンバー内で同時に行うことができる。
【0062】
本発明によるゼオライト吸着剤材料は、空気ガスの分離のための窒素吸着材として、及び水素の精製のための優れた窒素吸着剤及び/又は一酸化炭素吸着剤として最も有利な用途を見出す。
【0063】
25℃で4bar(0.4MPa)下で測定した、本発明によるゼオライト吸着剤材料の窒素(N2)質量吸着容量は、通常23Ncm3.g-1より大きく、好ましくは24Ncm3.g-1より大きく、より好ましくは25Ncm3.g-1より大きく、最も好ましくは26Ncm3.g-1より大きい。
【0064】
前述のように、全く驚くべきことに、本発明によるゼオライト吸着剤材料は通常、25℃で4bar(0.4MPa)下で測定される、12Ncm3.g-1未満、より好ましくは11Ncm3.g-1未満、より好ましくは10Ncm3.g-1未満、最も好ましくは9Ncm3.g-1未満である酸素(O2)質量吸着容量も有することが観察された。本明細書では、用語「窒素/酸素選択性」は、25℃で4bar(0.4MPa)下で測定した窒素(N2)質量吸着容量と、25℃で4bar(0.4MPa)下で測定した酸素(O2)質量吸着容量との比、換言すれば、N2容量/O2容量の比であり、容量は25℃で4bar(0.4MPa)下で測定される。
【0065】
本発明によるゼオライト吸着剤材料を使用する吸着方法は、通常、PSA法、VSA法又はVPSA法、好ましくはPSA法又はVPSA法であり、工業用ガス中のN2/O2分離用、及び医療用酸素を製造する装置中でのN2/O2分離用である。
【0066】
したがって、本発明によるゼオライト吸着剤材料は、呼吸補助のための酸素濃縮器における吸着要素として特に有利な用途を見出す。本発明の特に有利な態様によれば、本発明によるゼオライト吸着剤材料はゼオライト吸着剤の消耗カートリッジの活性材料を構成し、このゼオライト吸着剤は、この濃縮器が定着型、輸送可能又は移動可能、好ましくは携帯可能のいずれであっても、呼吸補助用酸素濃縮器に挿入することができる。
【0067】
ゼオライト吸着剤の消耗カートリッジは、呼吸補助用酸素濃縮器での容易な挿入及び交換に適した任意の形態を有することができる。一実施形態によれば、前記カートリッジは、少なくとも1種の樹脂、好ましくは熱可塑性ホモポリマー及び/又はコポリマー及び重縮合物から好ましく選択されるポリマー樹脂によって相互に凝集性にされるビーズの形態の本発明によるゼオライト吸着剤材料から出発して調製されてもよい。
【0068】
このようなポリマー樹脂の非限定的な例は、ポリオレフィン、特に低密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレン及び/又は超高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリアクリル、アクリロニトリルホモポリマー及び/又はコポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリレートコポリマー及び/又はメタクリレートコポリマー、ポリスチレン及び/又はスチレンコポリマー、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ハロゲン化ポリマー及びコポリマー、例えば、ポリ(二フッ化ビニリデン)(PVDF)ポリマー及びポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)ポリマー及び/又はコポリマー、ポリアミド、例えば、ポリアミド-11及びポリアミド-12、他の偶数及び奇数番号のポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性樹脂及びエラストマー樹脂など、並びに任意の割合でのこれらの混合物である。
【0069】
さらに別の態様によれば、本発明は、輸送可能、移動可能であり、好ましくは携帯可能で、少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料、又は少なくとも1つの固定吸着床、又は少なくとも1種の複合材料、又は上述の種類の少なくとも1つのカートリッジを含む呼吸補助用酸素濃縮器に関する。
【0070】
変形例として、本発明に関連して使用され得るゼオライト材料は、吸着剤層(吸着剤床としても知られる)の形態で、好ましくは1つ又は2つ、3つ又はそれ以上の他の吸着剤層と共に使用され得る。他の吸着剤(複数可)は、当業者に知られた任意の種類のものであり得、言及され得る非限定的な例としては、CaLSX、LiTrLSX、5A、NaX、LiX、LiAgLSX、LiLSX及びLiCaLSXから選択されるゼオライトを含む吸着剤が挙げられる。
【0071】
最も特に好ましい態様によれば、本発明による使用は、LiLSXをベースとする吸着剤を有する二重層として先に定義された吸着剤を使用し、それによりNaLSX/LiLSX二重層又はNaMSX/LiLSX二重層、好ましくはNaLSX/LiLSX二重層、より好ましくはNaLSX/LiLSX二重層であって、NaLSX/LiLSXの重量比が5/95~95/5、より良好には50/50~95/5であるものを形成する。
【0072】
まさに定義されたようにNaLSX及び/又はNaMSXをベースとするゼオライト吸着剤材料は、本発明による窒素/酸素分離に使用する際に、現在入手可能な吸着剤よりも劣る酸素吸着容量を有すると同時に、非常に良好な窒素吸着容量を保持していることが観察された。
【0073】
この低い酸素吸着容量により、良好な窒素吸着容量と相まって、NaLSX及び/又はNaMSXをベースとするゼオライト吸着剤材料は、窒素/酸素分離のために現在一般に使用され、通常、比較的多量のリチウムイオンを含有するゼオライト吸着剤に対し完全に競合する。この理由は、本発明で使用されるゼオライト吸着剤材料にはリチウムが全く含まれていないか、又はリチウムの量が極めて少なく、そのような製造コストのために該ゼオライト吸着剤を使用者に全面的に有利なものにしているからである。
【0074】
さらに別の態様によれば、本発明は、輸送可能、移動可能であり、好ましくは携帯可能で、少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料、又は少なくとも1つの固定吸着床、又は少なくとも1種の複合材料、又は上記の種類の少なくとも1つのカートリッジを含む呼吸補助用酸素濃縮器に関する。
【0075】
窒素及び酸素(N2/O2)の分離、特に空気からの医療用酸素の調製、及びまた(V)PSAによる酸素の工業的調製にも最も特に適している濃縮器は、NaLSX/LiLSX又はNaMSX/LiLSX二重層、好ましくはNaLSX/LiLSX二重層、より好ましくはNaLSX/LiLSXの重量比が5/95~95/5であり、さらに良好に50/50~95/5であるNaLSX/LiLSX二重層を含む。
【0076】
本発明に関連して使用され得るゼオライト吸着剤材料の物理的特性は、当業者に知られた方法により評価され、その中の主なものは以下に記載する。
【0077】
以下の例は、まさに上で記載した発明を説明するのに役立ち、特許請求範囲によって付与される保護の範囲を制限することを意図していない。
【0078】
<特性評価技術-分析方法>
本発明によるゼオライト凝集材料の物理的特性は、当業者に知られた方法により評価され、その中の主なものは以下に記載する。
【0079】
本発明のゼオライト凝集材料の調製に用いられるゼオライト結晶の数平均直径を走査型電子顕微鏡(SEM)下での観察により推定する。
【0080】
試料上のゼオライト結晶のサイズを推定するために、一連の画像を少なくとも5000倍の倍率で撮影する。次に、例えば、LoGraMiが発表したSmile Viewソフトウェアなどの専用ソフトウェアを用いて、少なくとも200個の結晶の直径を測定する。精度は3%程度である。
【0081】
各結晶について記録されたサイズは、問題の結晶の最も長い断面のサイズである。ゼオライト凝集材料中に存在する可能性のある0.5μm未満の粒子は計数にあたって考慮しない。
【0082】
得られた粒径分布は、各画像について観察された粒径分布の平均値と等価である。ピーク幅及び数平均直径は、ガウス分布の統計的規則を適用して、当業者に知られた従来の方法によって計算される。
【0083】
本発明によるゼオライト凝集材料の元素化学分析は、当業者に知られた種々の分析技術に従って実施することができる。これらの技術には、波長分散分光計(WDXRF)、例えば、Brueker社のTiger S8上で規格NF EN ISO12677:2011に記載されているような、X線蛍光による化学分析の技術が含まれる。
【0084】
X線蛍光は、試料の元素組成を定めるために、X線範囲の原子の光ルミネセンスを利用する非破壊スペクトル技術である。原子の励起は、一般にX線ビーム又は電子衝撃によって、原子の基底状態に戻った後に特定の放射線を発生させる。
【0085】
他の分析方法は、例えば、Perkin Elmer 4300DV型の機器上でNF EN EN ISO21587-3又はNF EN ISO21079-3に記載されている原子吸光分析法(AAS)及び誘導結合プラズマ原子発光分析法(ICP-AES)によって説明される。
【0086】
X線蛍光スペクトルは元素の化学的組み合わせに依存することが極めて少ない利点を有し、定量的にも定性的にも精密な測定法を提供する。各酸化物SiO2及びAl2O3、並びに様々な酸化物(例えば、ナトリウムのような交換可能なカチオンに由来するものなど)について校正後、0.4重量%未満の測定不確実性が従来から得られている。
【0087】
以上より、上記の元素化学分析により、ゼオライト凝集材料内で使用されるゼオライトのSi/Al比及びゼオライト凝集材料のSi/Al比の両方を検証することが可能となる。本発明の説明において、Si/Al比に対する測定不確実性は±5%である。凝集材料中に存在するゼオライトのSi/Al比は固体ケイ素核磁気共鳴(NMR)分光法によっても測定できる。
【0088】
イオン交換の質は交換後のゼオライト凝集材料中の問題のカチオンのモル数と結びついている。より具体的には、所定のカチオンによる交換の程度は、該カチオンのモル数と交換可能なカチオンの全てのモル数との比を評価することによって推定される。各カチオンのそれぞれの量を対応するカチオンの化学分析により評価する。例えば、ナトリウムイオンによる交換の程度は、Na+カチオンの総数と交換可能なカチオンの総数(例えば、Ca2+、K+、Li+、Ba2+、Cs+、Na+など)との比を評価することによって推定され、カチオンのそれぞれの量は対応する酸化物(Na2O、CaO、K2O、BaO、Li2O、Cs2Oなど)の化学分析によって評価される。この計算方法はまた、ゼオライト凝集材料の残留バインダー中に存在する考えられる酸化物を考慮に入れる。
【0089】
本発明に記載されるゼオライト吸着剤材料のバルク破砕強度は、規格ASTM7084-04に従って特性評価される。
【0090】
本発明によるゼオライト凝集材料のかさ密度は、規格DIN8948/7.6に記載されているように測定される。
【0091】
本発明のゼオライト吸着剤材料中のゼオライトの純度は、XRDという頭文字によって当業者に知られたX線回折分析によって評価される。この識別は、BruekerブランドのXRD機器で実行される。
【0092】
各ゼオライトは回折ピークの位置及びその相対強度によって決まる独特のディフラクトグラムを持っているので、この分析は凝集材料中に存在する種々のゼオライトを同定することを可能にする。
【0093】
ゼオライト吸着剤材料は、単純な機械的圧縮により粉砕され、次いで試料担体上に広げられ、平らになる。Brueker D8 Advance機器で作成されたディフラクトグラムが取得される条件は、以下の通りである。
・ 40kV-30mAで使用されるCu管、
・ Sollerスリットサイズ=2.5°、照射面幅16mm、
・ 10rpmで回転する試料装置、
・ 測定範囲:4°<2θ<70°、
・ 増分:0.015°、
・ 増分当たりの計数時間:0.8秒。
【0094】
得られたディフラクトグラムの解釈はEVAソフトウェアで行い、ゼオライトの同定にはICDD PDF-2発表2011データベースを用いる。
【0095】
重量によるFAUゼオライト画分の量は、X線蛍光分析又はXRD解析によって測定する。後者の方法は、FAU以外のゼオライト画分の量を測定するためにも用いることができる。XRD解析は一般的にBruekerの機器で行い、ゼオライト画分の重量は次にBruekerのTOPASソフトウェアを用いて評価する。
【0096】
吸着に先立ち、ゼオライト凝集材料を300℃~450℃の間で、真空(6.7.10-4Paより低い圧力)下で9時間~16時間の間脱気する。次いで、吸着等温線は、0~4bar(0.4MPa)の間の圧力で少なくとも10の測定点をとり、Hiden IsochemaブランドのIGA機器で測定される。ゼオライト凝集材料の質量吸着容量は、4barの圧力下で、25℃の等温線上で読み取られ、Ncm3.g-1で表される。
【0097】
25℃、4bar(0.4MPa)下でのゼオライト凝集材料の質量吸着容量を、窒素又は酸素のようなガスに対する吸着等温線の25℃での測定から決定する。
【0098】
本発明のゼオライト凝集材料の平均体積直径(又は「体積平均直径」)は、試料がカメラレンズの前を通過できるコンベアベルトを用いる、規格ISO13322-2:2006に従った画像形成による吸着材料の試料の粒径分布の分析により決定される。
【0099】
次に、規格ISO9276-2:2001を適用して粒径分布から体積平均直径を計算する。ゼオライト吸着剤材料について、本文書では「体積平均直径」又は「サイズ」という用語が用いられている。精度は、本発明のゼオライト吸着剤材料のサイズ範囲に対して0.01mm程度である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1】吸着剤A、B及びCの窒素(N
2)及び酸素(O
2)の等温線を示す。
【実施例0101】
<吸着剤A:NaLSX-Si/Al比=1.00(本発明による)>
Zeoclay(R)アタパルジャイトを300gと、特許出願WO2009/081022号に記載された手順に従い、数平均径(d50)=7μmのLSXゼオライト結晶1700gと、成形前のペーストの強熱減量が39%となるような水分量からなる均質な混合物を調製する。このようにして調製されたペーストを、ゼオライト凝集材料のビーズを製造するために使用する。
【0102】
得られたビーズを、直径が0.2mm~0.8mmのビーズを集めるためにふるい分けにより選択する。
【0103】
ビーズを80℃の換気されたオーブン中で一夜乾燥させる。続いて脱炭酸乾燥空気のブランケット下で、550℃で2時間焼成する。
【0104】
次に、2Mの塩化ナトリウム溶液を用いて、固体の20mL.g-1の割合で、連続5回の交換を行う。各交換を100℃で4時間継続し、中間洗浄を行うことにより、各工程で過剰の塩を除去することが可能となる。最終工程では、20ml.g-1の割合で4回の洗浄を室温で行う。ナトリウム交換の程度は99.6%である。
【0105】
ビーズを80℃の換気されたオーブン中で一夜乾燥させる。次に、脱炭酸乾燥空気のブランケット下で、550℃で2時間活性化させる。
【0106】
<吸着剤B:NaX-Si/Al比=1.24(比較例)>
Zeoclay(R)アタパルジャイトを300gと、特許US10300455B2号の実施例1で調製した、数平均径(d50)=1.8μm、Si/Al比=1.24のX型ゼオライト結晶1700g、及び形成前のペーストの強熱減量が39%となるような水分量からなる均質な混合物を調製する。このようにして調製されたペーストを、ゼオライト凝集材料のビーズを製造するために使用する。得られたビーズを、直径が0.2mm~0.8mmのビーズを集めるためにふるい分けにより選択する。ナトリウム交換の程度は100%である。
【0107】
ビーズを80℃の換気されたオーブン中で一夜乾燥させる。次に脱炭酸乾燥空気のブランケット下で、550℃で2時間焼成し、活性化させる。
【0108】
<吸着剤C:NaMSX-Si/Al比=1.13(本発明による)>
Zeoclay(R)アタパルジャイトを300gと、特許US6596256号の表4の実施例26に従って調製したMSXゼオライト結晶1700g(Si/Al=1.13)、及び形成前のペーストの強熱減量が39%となるような水分量からなる均質な混合物を調製する。このようにして調製されたペーストを、ゼオライト凝集材料のビーズを製造するために使用する。
【0109】
得られたビーズを、直径が0.2mm~0.8mmのビーズを集めるためにふるい分けにより選択する。
【0110】
ビーズを80℃の換気されたオーブン中で一夜乾燥させる。次に脱炭酸乾燥空気のブランケット下で、550℃で2時間焼成し、活性化させる。ナトリウム交換の程度は100%である。
【0111】
[例1:窒素及び酸素の質量吸着等温線]
吸着剤A、B及びCのそれぞれの吸着等温線を、Hiden IsochemaブランドのIGA機器を用いて、上記の条件に従ってプロットする。窒素(N
2)及び酸素(O
2)の等温線を
図1のグラフに報告する。
【0112】
吸着剤A、B及びCは窒素吸着容量に関し、全く同様の挙動を示すことが非常に明らかになった。一方、本発明の吸着剤A及びCは、比較吸着剤Bで観察されたものよりもはるかに劣る酸素吸着容量を有することが全く驚くべきことに観察された。本発明の吸着剤A(NaLSX)及びC(NaMSX)は、窒素吸着に関して比較吸着剤B(NaX)とまさに同じくらい効率的でありながら、酸素に関して全く予想外に、より低い吸着容量を示す。
【0113】
したがって、本発明に関連して使用され得るゼオライト吸着剤は、医療用酸素濃縮器での使用に特に適しており、この場合、窒素は吸着剤上に保持されるが、酸素ははるかに少なくしか保持されず、したがって、酸素を空気から分離するための機械からより直接的に利用することができる。
【0114】
この驚くべき効果は、1.5bar(0.15MPa)を超える、好ましくは2bar(0.2MPa)を超える、より好ましくは2.5bar(0.25MPa)を超える、さらにより好ましくは3bar(0.3MPa)を超える、より好ましくは3.5bar(0.35MPa)を超える、及び典型的には4bar(0.4MPa)を超える圧力で行われた吸着容量測定で特に目立つ。これにより、本発明に関連して想起される用途、特に医療用酸素濃縮器についての最適な作業圧力を、すでに上で示したように想定することが可能になる。
【0115】
以下の表1は、4bar(0.4MPa)で測定した窒素及び酸素の質量吸着容量値を照合したものである。
【0116】
【0117】
Si/Alモル比が1.20未満、好ましくは1.15未満、より好ましくは1.12未満の場合、酸素質量吸着容量は比例的に小さいが、窒素質量吸着容量は実質的に一定のままであることが明白に現れる。このように、空気からガスを分離して得られる医療用酸素の調製のために、Si/Alモル比が1.20未満、好ましくは1.15未満、より好ましくは1.12未満の吸着剤、すなわち、NaLSX又はNaMSXゼオライトをベースとし、好ましくはNaLSXゼオライトをベースとする吸着剤を用いることに大きな関心が寄せられている。
NaLSX/LiLSX二重層又はNaMSX/LiLSX、好ましくはNaLSX/LiLSX二重層、より好ましくはNaLSX/LiLSX比が重量で5/95~95/5、さらに良好には50/50~95/5であるNaLSX/LiLSX二重層を形成する、LiLSXをベースとする吸着剤を有する二重層として前記吸着剤を用いる、請求項7又は8に記載の使用。
NaLSX/LiLSX二重層又はNaMSX/LiLSX二重層、好ましくはNaLSX/LiLSX二重層、より好ましくはNaLSX/LiLSX比が重量で5/95~95/5、さらに良好には50/50~95/5であるNaLSX/LiLSX二重層を含む、請求項10に記載の濃縮器。