(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075734
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20240528BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240528BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C08L15/00
C08L9/00
B60C1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048538
(22)【出願日】2024-03-25
(62)【分割の表示】P 2019217351の分割
【原出願日】2019-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】曽根 遼大
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、タイヤへ適用した際の操縦安定性を良好に維持しつつ、優れた低発熱性が実現されたゴム組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】共役ジエン単位と芳香族ビニル単位とを有する共重合体を含有するゴム成分と、充填剤とを含むゴム組成物であって、前記共重合体は、前記芳香族ビニル単位の含有量が10質量%未満であり、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された変性共重合体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン単位と芳香族ビニル単位とを有する共重合体を含有するゴム成分と、充填剤とを含むゴム組成物であって、
前記共重合体は、前記芳香族ビニル単位の含有量が10質量%未満であり、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された変性共重合体であり、
前記ゴム成分における前記変性共重合体の含有量が、0.1~100質量%であることを特徴とする、ゴム組成物。
【化1】
(式中、R
1~R
8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;L
1及びL
2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;nは2~4の整数である。)
【請求項2】
前記ゴム成分は、前記変性共重合体とは異なる共役ジエン系ゴムをさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記共重合体の前記芳香族ビニル単位の含有量が、8質量%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記変性剤は、式(1a)~(1e)のうちのいずれか1つであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【化2】
【請求項5】
前記共重合体は、式(2)で表される化合物を含む変性剤によってさらに変性された変性共重合体であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【化3】
(式(2)中、R
1~R
3は、互いに独立して、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;又は炭素数3~30の複素環基であり、R
4は、単一結合;置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
5は、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基;又は下記化学式(2a)若しくは化学式(2b)で表される作用基であり、nは1~5の整数であり、R
5のうち少なくとも1つは下記化学式(2a)若しくは化学式(2b)で表される作用基であり、nが2~5の整数の場合、複数のR
5は互いに同一であるか、異なってもよい。
【化4】
式(2a)において、R
6は、置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
7及びR
8は、互いに独立に炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、R
9は、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基であり、XはN、O又はS原子であり、XがO又はSである場合、R9は存在しない。
【化5】
式(2b)において、R
10は、置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
11及びR
12は、互いに独立に炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基である。)
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの社会的な要請及び環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に対する要求はより高くなっている。このような低燃費性の要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の減少が求められてきている。タイヤの転がり抵抗を下げる手法としては、タイヤ構造の最適化による手法についても検討されてきたものの、ゴム組成物としてより発熱性の低い材料を用いることが一般的な手法として行われている。
【0003】
ゴム組成物の低発熱性を改善する技術として、例えば特許文献1には、特定のイミノ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させてなる変性共重合体を、ゴム成分として用いたゴム組成物が開示されている。
特許文献1のゴム組成物では、ゴム組成物中の充填剤の分散性が改善されるため、タイヤへ適用した際に一定の転がり抵抗低減効果を得ることができる。しかしながら、近年の低燃費化への要求に対応するには、特許文献1のゴム組成物の改善効果では十分とはいえず、さらなる低発熱性の改善が望まれていた。
【0004】
また、ゴム組成物の低発熱性の改善のため、ゴム成分の調整を図った技術も開発されている。例えば特許文献2には、スチレン量を減らしたスチレンブタジエンゴムをゴム成分として用いたゴム組成物が開示されている。
しかしながら、スチレン量を減らしたスチレンブタジエンゴムを用いた場合、低発熱性については改善が可能となるものの、ゴム組成物をタイヤへ適用した際の操縦安定性等の性能が低下することが考えられる。
【0005】
さらに、ゴム組成物の低発熱性の改善のため、カーボンブラック等の充填剤の含有量を低減することも考えられるが、スチレン量を減らしたスチレンブタジエンゴムを用いた場合と同様に、ゴムの補強性や、耐摩耗性、タイヤへ適用した際の操縦安定性等の性能が低下することが考えられる。
そのため、タイヤへ適用した際の操縦安定性等の、低発熱性以外の性能を低下させることなく、低発熱性を大きく改善できる技術の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4478262号公報
【特許文献2】特開2018-131560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、本発明は、タイヤへ適用した際の操縦安定性を良好に維持しつつ、優れた低発熱性が実現されたゴム組成物、さらに、転がり抵抗及び操縦安定性が改善されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく検討を行った結果、ゴム成分として、共役ジエン単位と芳香族ビニル単位とを有する共重合体を用い、該共重合体の芳香族ビニル単位の含有量を10質量%未満と低くすることによって、ゴム組成物の低発熱性を改良できることに着目した。ただし、共重合体の芳香族ビニル単位の含有量が低い場合には、上述したように、ゴム組成物をタイヤへ適用した際の操縦安定性等の性能が低下するという問題がある。そのため、本発明者はさらに鋭意研究した結果、共重合体を、オリゴシロキサンと3級アミノ基を有する特定の変性剤によって変性することによって、充填剤の分散性を大きく向上させることができるため、ポリマー改良による低発熱性向上効果に加えて、充填剤の分散性改善により、低発熱性のさらなる向上や、タイヤへ適用した際の操縦安定性についても向上できることを見出した。
【0009】
本発明の要旨は以下の通りである。
本発明のゴム組成物は、共役ジエン単位と芳香族ビニル単位とを有する共重合体を含有するゴム成分と、充填剤とを含むゴム組成物であって、
前記共重合体は、前記芳香族ビニル単位の含有量が10質量%未満であり、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された変性共重合体であることを特徴とする。
【化1】
(式中、R
1~R
8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;L
1及びL
2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;nは2~4の整数である。)
上記構成によって、タイヤへ適用した際の操縦安定性を良好に維持しつつ、優れた低発熱性を実現できる。
【0010】
また、本発明のゴム組成物については、前記変性共重合体とは異なる共役ジエン系ゴムをさらに含有することが好ましい。タイヤへ適用した際の操縦安定性や、耐摩耗性等をより向上させることができるためである。
【0011】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記共重合体の前記芳香族ビニル単位の含有量が、8質量%以下であることが好ましい。より優れた低発熱性を得ることができるためである。
【0012】
また、本発明のゴム組成物については、前記変性剤は、式(1a)~(1e)のうちのいずれか1つであることが好ましい。
【化2】
低発熱性及びタイヤへ適用した際の操縦安定性をより高いレベルで両立できるためである。
【0013】
さらにまた、前記共重合体は、式(2)で表される化合物を含む変性剤によってさらに変性された変性共重合体であることが好ましい。
【化3】
(式(2)中、R
1~R
3は、互いに独立して、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;又は炭素数3~30の複素環基であり、R
4は、単一結合;置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
5は、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基;又は下記化学式(2a)若しくは化学式(2b)で表される作用基であり、nは1~5の整数であり、R
5のうち少なくとも1つは下記化学式(2a)若しくは化学式(2b)で表される作用基であり、nが2~5の整数の場合、複数のR
5は互いに同一であるか、異なってもよい。
【化4】
式(2a)において、R
6は、置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
7及びR
8は、互いに独立に炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、R
9は、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基であり、XはN、O又はS原子であり、XがO又はSである場合、R9は存在しない。
【化5】
式(2b)において、R
10は、置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
11及びR
12は、互いに独立に炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基である。)
低発熱性及びタイヤへ適用した際の操縦安定性をより高いレベルで両立できるためである。
【0014】
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。
上記構成によって、転がり抵抗及び操縦安定性を改善することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本発明は、タイヤへ適用した際の操縦安定性を良好に維持しつつ、優れた低発熱性が実現されたゴム組成物を提供できる。また、本発明によれば、転がり抵抗及び操縦安定性が改善されたタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について具体的に説明する。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、充填剤とを含むゴム組成物である。
以下に、本発明のゴム組成物を構成する各成分について説明する。
【0017】
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分を含む。
該ゴム成分の構成については、共役ジエン単位と芳香族ビニル単位とを有する共重合体を含有し、該共重合体は、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された変性共重合体である。
【化6】
前記ゴム成分として、充填剤親和性作用基であるオリゴシロキサン及び3級アミノ基を含んだ式(1)で表される化合物を含んだ変性剤によって変性させた共重合体を用いることによって、シリカ等のゴム組成物中の充填剤の分散性を高めることができる。その結果、本発明のゴム組成物は、低発熱性が大きく改善され、充填剤の分散性が改善されるため、補強性や、タイヤへ適用した際の操縦安定性、加工性等の他の物性についても向上が可能となる。
【0018】
式(1)において、R1~R8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;L1及びL2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;nは2~4の整数である。
【0019】
具体的には、式(1)において、R1~R4は、それぞれ独立して置換又は非置換の炭素数1~20のアルキル基であってもよく、前記R1~R4が置換される場合、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数4~10のシクロアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数2~12のアルカノイルオキシ基(alkanoyl、RaCOO-、この時、Raは炭素数1~9のアルキル基である)、炭素数7~13のアラルキルオキシ基、炭素数7~13のアリールアルキル基、及び、炭素数7~13のアルキルアリール基からなる群から選択される1つ以上の置換基に置換され得る。
より具体的には、前記R1~R4は置換又は非置換の炭素数1~10のアルキル基であってもよく、さらに具体的に前記R1~R4は、それぞれ独立して置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基であってもよい。
【0020】
また、式(1)において、R5~R8は、それぞれ独立して置換又は非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、具体的には、置換又は非置換の炭素数1~10のアルキル基、さらに具体的には、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基であってもよく、置換される場合、先にR1~R4で説明したような置換基に置換され得る。前記R5~R8がアルキル基ではなく、加水分解可能な置換基の場合、N-R5R6及びN-R7R8の結合が水分存在下にN-Hに加水分解されて重合体の加工性に悪影響を及ぼし得る。
【0021】
より具体的には、前記式(1)で表される化合物において、R1~R4はメチル基又はエチル基であり、R5~R8は炭素数1~10のアルキル基とすることができる。
【0022】
本発明において、前記式(1)で表される化合物中のアミノ基、即ち、N-R5R6及びN-R7R8が、3級アミノ基であることが好ましい。前記3級アミノ基は、式(1)で表される化合物が変性剤として用いられた際、さらに優れた加工性を有するようにする。
なお、前記R5~R8にアミノ基を保護するための保護基が結合するか、又は、水素が結合する場合には、前記式(1)で表される化合物による効果の具現が難しい可能性がある。水素が結合する場合、変性過程で陰イオンが水素と反応して反応性を失うようになって変性反応自体が不可能となり、保護基が結合する場合、変性反応が行われるが、重合体末端に結合した状態で後加工時に加水分解によって脱保護されて1次又は2次アミノ基になり、脱保護された1次又は2次アミノ基は、その後の配合時に配合物の高粘度化現象を引き起こし、加工性低下の原因になるおそれがある。
【0023】
また、前記式(1)で表される化合物中のL1及びL2は、それぞれ独立して置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基である。
より具体的には、L1及びL2は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキレン基、さらに具体的には、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基のような炭素数1~6のアルキレン基とすることができる。
【0024】
前記式(1)で表される化合物中のL1及びL2については、分子内のSi原子とN原子との間の距離が近いほどより優れた効果を奏する。ただし、SiがNと直接結合する場合、後の処理工程中にSiとNとの間の結合が切れるおそれがあり、この際に発生した2次アミノ基は後処理中に水により流失する可能性が高く、製造される変性共重合体では、シリカ充填剤との結合を促進するアミノ基の部材によってシリカ充填剤との結合が難しく、その結果、分散剤の分散効果が低下することがある。このようにSiとNとの間の結合の長さによる改善効果を考慮すると、前記L1及びL2は、それぞれ独立して、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基のような炭素数1~3のアルキレン基であることがさらに好ましく、より具体的には、プロピレン基とすることができる。また、L1及びL2は、先にR1~R4で説明したような置換基に置換され得る。
【0025】
また、前記式(1)で表される化合物は、例えば、下記式(1a)~(1e)で表される化合物のうちのいずれか1つであることが好ましい。より高いレベルで低発熱性及びタイヤに適用した際の操縦安定性を両立できるためである。
【化7】
【0026】
本発明の変性剤において、前記式(1)で表される化合物は、アルコキシシラン構造が共役ジエン系重合体活性化末端と結合する一方、Si-O-Si構造及び末端に結合した3つ以上のアミノ基が、シリカ等の充填剤に対して親和力を示すことによって、従来分子内一つのアミノ基を含む変性剤と比較して充填剤と変性共重合体との結合を促進させることができる。また、前記共役ジエン系重合体の活性化末端の結合程度が均一で、カップリング前後に分子量分布の変化を観察すると、カップリング後にも前に比べて分子量分布が大きくならずに一定である。そのため、変性共重合体自体の物性低下がなく、ゴム組成物内の充填剤の凝集を防ぎ、充填剤の分散性を高めることができるため、ゴム組成物の加工性を向上させることができる。これらの効果は、特に、ゴム組成物をタイヤに適用した際の燃費特性、摩耗特性及び操縦安定性をバランスよく改善させることが可能となる。
【0027】
なお、前記式(1)で表される化合物は、下記反応式1で表される縮合反応を通じて製造され得る。
【化8】
【0028】
前記反応式1において、R1~R8、L1及びL2、及びnは、上述した式(1)で定義されたものと同様であり、R’及びR’’は、前記縮合反応に影響を及ぼさない任意の置換基である。例えば、前記R’及びR’’は、それぞれ独立してR1~R4のいずれか1つと同一のものとすることができる。
【0029】
前記反応式1の反応は、酸条件下で進められ、酸は一般に縮合反応に用いられるものであれば、制限なしに用いることができる。当業者は、前記反応が進められる反応器の種類、出発物質、反応温度などの多様な工程変数に合わせて最適な酸を選択することができる。
【0030】
前記式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性される共重合体は、共役ジエン単位と芳香族ビニル単位とを有する共重合体である。
なお、前記共役ジエン単位及び芳香族ビニル単位は、無秩序に配列、結合されたランダム共重合体とすることができる。
【0031】
本発明のゴム組成物では、前記共重合体の芳香族ビニル単位の含有量(共重合体の総質量に対する芳香族ビニル単位の占める質量)が10質量%未満であることを要する。ゴム組成物の低発熱性を改善できるためである。同様の観点から、前記芳香族ビニル単位の含有量は、8質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。なお、ゴム組成物をタイヤに適用した際の操縦安定性や、耐摩耗性を良好なレベルに維持する観点からは、前記共重合体の芳香族ビニル単位の含有量は、3質量%以上であることが好ましい。
【0032】
ここで、前記共役ジエン単位となる共役ジエン系単量体の種類については、特に制限されるものではない。例えば、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン及び2-フェニル-1,3-ブタジエンからなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0033】
また、前記芳香族ビニル単位となる芳香族ビニル単量体の種類については、特に限定はされない。例えば、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン及び1-ビニル-5-ヘキシルナフタレンからなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0034】
さらに、前記変性共重合体の共重合体については、上述した共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル単量体の組合せとすることができるが、それらの中でも、スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。他の性能を低下させることなく、より確実に優れた低発熱性を実現でき、タイヤに適用した際のウェット性能についても優れるためである。
【0035】
また、前記変性共重合体は、1.1~3.0の狭い分子量分布:Mw/Mn(多分散指数(PDI)ともいう)を有するものとすることができる。前記変性共重合体の分子量分布が3.0を超えるか、1.1未満の場合、ゴム組成物へ適用時に引張特性及び粘弾性が低下するおそれがある。前記変性共重合体の分子量分布の制御による、重合体の引張特性及び粘弾性改善の効果の顕著性を考慮すると、前記変性共重合体の分子量分布を、1.3~2.0とすることが好ましい。なお、前記変性共重合体は、前記変性剤を用いることによって、変性前の共重合体の分子量分布と類似する。
【0036】
なお、前記変性共重合体の分子量分布は、重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)から計算され得る。このとき、前記数平均分子量(Mn)は、n個の重合体分子の分子量を測定し、これら分子量の総合を求めてnで割って計算した個別の重合体分子量の共通平均(commonaverage)であり、前記重量平均分子量(Mw)は高分子組成物の分子量分布を表す。全体分子量の平均は、モル当たりグラム(g/mol)で表すことができる。
また、本発明において、前記重量平均分子量及び数平均分子量は、それぞれゲル透過型クロマトグラフィ(GPC)で分析されるポリスチレン換算分子量である 。
【0037】
また、前記変性共重合体は、上記した分子量分布の条件を満たしていると同時に、数平均分子量(Mn)が50,000g/mol~2,000,000g/molであり、より具体的には、200,000g/mol~800,000g/molとすることができる。前記変性共重合体は、重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol~4,000,000g/molであり、より具体的には、300,000g/mol~1,500,000g/molとすることができる。
【0038】
前記変性共重合体の重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol未満であるか、又は数平均分子量(Mn)が50,000g/mol未満の場合、ゴム組成物に適用する際の引張特性の低下のおそれがある。また、重量平均分子量(Mw)が4,000,000g/molを超えているか、数平均分子量(Mn)が2,000,000g/molを超える場合には、変性共重合体の加工性の低下にゴム組成物の作業性が悪化し、混練が困難となり、ゴム組成物の物性を十分に向上させることは難しくなることがある。
より具体的には、本発明の一実施例に係る前記変性共重合体は、前記分子量分布とともに、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の条件を同時に満たしている場合には、ゴム製の組成物に適用時のゴム組成物の粘弾性と加工性をバランスよく改善させることができる。
【0039】
また、本発明では、前記式(1)で表される化合物を含む変性剤を利用した前記変性共重合体の製造方法を提供できる。
前記変性共重合体の製造方法では、具体的には、1)炭化水素溶媒中で、有機アルカリ金属化合物の存在下、芳香族ビニル系単量体及び共役ジエン系単量体を重合して少なくとも一末端にアルカリ金属が結合された活性重合体を製造する段階、及び、2)前記活性重合体を前記化学式1で表される化合物を含む変性剤と反応させる段階を含むことができる。
【0040】
前記1)の段階は、少なくとも一末端にアルカリ金属が結合された活性重合体を製造するための段階であって、炭化水素溶媒中で、有機アルカリ金属化合物の存在下、芳香族ビニル系単量体及び共役ジエン系単量体を重合することによって行うことができる。
【0041】
なお、前記炭化水素溶媒は、特に制限されるものではないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン及びキシレンからなる群から選択された1種以上のものを用いることができる。
【0042】
前記有機アルカリ金属化合物は、単量体の全体100gを基準に0.1mmol~1.0mmolで用いることができる。
前記有機アルカリ金属化合物は、特に制限されるものではないが、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルフォネート、ナトリウムスルフォネート、カリウムスルフォネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド及びリチウムイソプロピルアミドからなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0043】
前記1)の段階の重合は、必要に応じて極性添加剤をさらに添加して行うものであってもよく、前記極性添加剤は、前記単量体の全体100重量部に対して0.001重量部~1.0重量部で添加することができる。具体的には前記単量体の全体100重量部に対して0.005重量部~0.5重量部、より具体的には0.01重量部~0.3重量部で添加することができる。
前記極性添加剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジテトラヒドロフリルプロパン、ジエチルエーテル、シクロアマルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンジメチルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、3級ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン及びテトラメチルエチレンジアミンからなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0044】
なお、上述の製造方法では、 前記の極性添加剤を用いることによって共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル系単量体を共重合させる場合、これらの反応速度の差を補うことによってランダム共重合体を容易に形成することができるように誘導することができる 。
【0045】
また、前記1)の段階における重合は、断熱重合を介して行うか、等温重合を介して行うことができる。
ここで、前記断熱重合は、有機アルカリ金属化合物を投入した以後、任意に熱を加えることなく自己反応熱で重合させる段階を含む重合方法を示すものであり、前記等温重合は、前記有機アルカリ金属化合物を投入した以後、任意に熱を加えるか熱を奪って重合物の温度を一定に維持する重合方法を示すものである。
【0046】
さらに、前記重合は、20℃~200℃の温度範囲で行うものであってもよく、具体的には0℃~150℃、より具体的には10℃~120℃の温度範囲で行うことができる。
【0047】
また、前記2)の段階は、変性共重合体を製造するために、前記活性重合体と前記式(1)で表される化合物を含む変性剤を反応させる変性反応段階である。
【0048】
このとき、前記式(1)で表される化合物を含む変性剤は、上述したものと同じであってもよい。前記式(1)で表される化合物は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して、0.1~2.0モルになる割合で用いることができる。
さらに、前記2)の段階における反応は、重合体に官能基を導入させるための変性反応であって、前記各反応は、0℃~90℃の温度範囲で1分~5時間の間行うものであってもよい。
【0049】
なお、上述した製造方法は、前記2)の段階以後、必要に応じて溶媒及び未反応単量体回収及び乾燥のうちの1つ以上の段階をさらに含むこともできる。
【0050】
また、前記ゴム成分は、タイヤへ適用した際の操縦安定性や、補強性、耐摩耗性等の向上を目的として、前記変性共重合体以外とは異なる共役ジエン系ゴムを、ゴム成分(以下、「その他の共役ジエン系ゴム」ということがある。)を含むことが好ましい。
前記その他の共役ジエン系ゴムについては、要求される性能に応じて適宜選択することができるが、例えば、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性又は精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱タンパク天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)エチレン-プロピレン共重合体ゴムなどのような合成ゴムであってもよく、これらのうちいずれか一つ又は二つ以上の混合物を用いることもできる。
【0051】
なお、前記ゴム成分における前記式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性共重合体の含有量は、特に限定はされないが、0.1~100質量%とすることができ、10~100質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましい。前記変性共重合体の含有量が0.1重量%以上の場合、他の物性を良好に保ったまま低発熱性を向上でき、結果的に前記ゴム組成物を利用して製造された成形品、例えば、タイヤでの燃費特性、摩耗特性及び制動特性等の効果がより確実に得られる。
【0052】
また、前記共重合体は、上述したように、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性されるが、式(2)で表される化合物を含む変性剤によってさらに変性されることが好ましい。ゴム組成物中の充填剤の分散性をさらに向上できるため、低発熱性、及び、タイヤへ適用した際の操縦安定性をより高いレベルで両立でき、耐摩耗性や加工性をより向上させることもできる。
【0053】
【化9】
上記式(2)において、R
1~R
3は、互いに独立して、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;又は炭素数3~30の複素環基であり、R
4は、単一結合;置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
5は、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基;又は下記化学式(2a)若しくは化学式(2b)で表される作用基であり、nは1~5の整数であり、R
5のうち少なくとも1つは下記化学式(2a)若しくは化学式(2b)で表される作用基であり、nが2~5の整数の場合、複数のR
5は互いに同一であるか、異なってもよい。
【0054】
【化10】
上記式(2a)において、R
6は、置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
7及びR
8は、互いに独立に炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、R
9は、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基であり、XはN、O又はS原子であり、XがO又はSである場合、R9は存在しない。
【0055】
【化11】
上記式(2b)において、R
10は、置換基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基に置換又は非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;又は置換基に置換又は非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、上記置換基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R
11及びR
12は、互いに独立に炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基である。
【0056】
また、上記式(2)で表される化合物では、R1~R3は、互いに独立に水素;炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;又は炭素数2~10のアルキニル基であり、R4は、単一結合;又は非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R5は、炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;又は下記化学式(2a)又は化学式(2b)で表される作用基であり、上記化学式(2a)において、R6は、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R7及びR8は、互いに独立に非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R7は、炭素数1~10のアルキル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;又は炭素数3~20の複素環基であり、上記化学式(2b)において、R10は、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R11及びR12は、互いに独立に炭素数1~10のアルキル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;又は炭素数3~20の複素環基であってもよい。
【0057】
さらに、より具体的には、上記式(2)で表される化合物は、以下の式(2-1)~式(2-3)で表される化合物とすることができる。
【0058】
【0059】
なお、前記共重合体を、上記式(2)で表される化合物を含む変性剤によって変性させる場合には、式(2)で表される化合物を含む変性剤を、変性開始剤として用いる。
具体的には、例えば、炭化水素溶媒中で、式(2)で表される化合物を含む変性剤の存在下にて、共役ジエン単量体及び芳香族ビニル単量体を重合させることで、式(2)で表される化合物由来の変性基を、前記共重合体に付与することができる。
【0060】
ここで、前記共役ジエン単量体及び芳香族ビニル単量体の重合は、例えば、アニオン重合とすることができ、具体的な例として、アニオンによる成長重合反応により重合末端にアニオン活性部位を有するリビングアニオン重合であってもよい。
また、前記重合は、昇温重合、等温重合または定温重合(断熱重合)であってもよく、上記定温重合は、上記式(2)で表される化合物を含む変性剤を投入した以後、任意に熱を加えることなく自己反応熱で重合させる段階を含む重合方法を意味し、前記昇温重合は、変性開始剤を投入した以後、任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味し、前記等温重合は、上記変性開始剤を投入した以後、熱を加えて熱を増加させたり、熱を奪い取って重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味する。
【0061】
(充填剤)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分に加えて、充填剤を含む。
充填剤を、前記変性共重合体を含有するゴム成分とともに用いることで、充填剤の分散性が高まり、ゴム組成物をタイヤへ適用した際の、操縦安定性、強度、耐摩耗性、ウェットグリップ性等の性能を高いレベルで維持しつつ、優れた低発熱性を実現できる。
【0062】
ここで、前記充填剤の含有量は、特に限定されるものではないが、前記ゴム成分100質量部に対して10~160質量部であることが好ましく、30~120質量部であることがより好ましい。充填剤の量について適正化を図ることで、より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためであり、含有量が10質量部以上の場合には、十分な耐摩耗性が得られ、含有量が160質量部以下の場合には、低発熱性の悪化を抑えることができる。
【0063】
また、前記充填剤の種類については特に限定はされない。例えば、カーボンブラックや、シリカ、その他の無機充填剤を含むことができる。その中でも、前記充填剤は、少なくともシリカを含むことが好ましい。低発熱性、耐摩耗性、及び、タイヤに用いた際のウェット性能のさらなる改善が可能となるためである。
成物の加工性悪化を抑えることができる。
【0064】
また、前記シリカは、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)比表面積が、好ましくは50m2/g以上であり、また、好ましくは350m2/g以下である。シリカのCTAB比表面積が50m2/g以上の場合、耐摩耗性が更に向上し、また、シリカのCTAB比表面積が350m2/g以下の場合、転がり抵抗が小さくなる。
前記シリカの種類については、特に限定はされない。例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
さらに、前記シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記湿式シリカは、沈降シリカを用いることができる。なお、沈降シリカとは、製造初期に、反応溶液を比較的高温、中性~アルカリ性のpH領域で反応を進めてシリカ一次粒子を成長させ、その後酸性側へ制御することで、一次粒子を凝集させる結果得られるシリカのことである。
【0065】
また、前記シリカの含有量は、特に限定はされないが、前記ゴム成分100質量部に対して10~160質量部であることが好ましく、30~120質量部であることがより好ましい。充填剤の量について適正化を図ることで、より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためであり、含有量が10質量部以上の場合には、十分な耐摩耗性が得られ、含有量が30質量部以下の場合には、低発熱性の悪化を抑えることができる。
【0066】
また、前記充填剤については、前記シリカの他にも、カーボンブラックを含むことが好ましい。より優れた補強性や耐摩耗を実現できるからである。
ここで、前記カーボンブラックとしては、GPF、FEF、SRF、HAF、ISAF、IISAF、SAFグレード等のカーボンブラックが挙げられる。
【0067】
なお、前記カーボンブラックの含有量は、よりすぐれた耐摩耗性を得る観点から、前記ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上であることが好ましく、4質量部以上であることがより好ましい。前記カーボンブラックの含有量を、前記ゴム成分100質量部に対して2質量部以上とすることで、ゴム組成物の耐摩耗性をより向上できるためである。また、前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、90質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。前記カーボンブラックの含有量を、前記ゴム成分100質量部に対して90質量部以下とすることで、耐摩耗性を高いレベルで維持しつつ、低発熱性や加工性についてより改善できるためである。
【0068】
また、前記その他の充填剤としては、例えば下記式(A)で表される無機化合物を用いることも可能である。
nM・xSiOY・zH2O ・・・ (A)
(式中、Mは、Al、Mg、Ti、Ca及びZrからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、並びに、これらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;n、x、y及びzは、それぞれ1~5の整数、0~10の整数、2~5の整数、及び0~10の整数である。)
【0069】
上記式(A)の無機化合物としては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al2O3);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのような電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等を挙げることができる。
【0070】
(その他の成分)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分及び充填剤の他にも、その他の成分を、発明の効果を損なわない程度に含むことができる。
その他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、熱可塑性樹脂、可塑剤、液状ゴム、老化防止剤、架橋促進剤、架橋剤、架橋促進助剤、オゾン劣化防止剤、界面活性剤等の、ゴム工業で通常使用されている添加剤を適宜含むことができる。
【0071】
前記シランカップリング剤は、前記充填剤としてシリカを含む場合には、共に用いることで、前記シリカの分散性を高め、より優れた低発熱性や補強性が得られる。
ここで、前記シランカップリング剤については、特に限定はされず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド又はジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等を挙げることができ、これらのうちいずれか一つ又は二つ以上の混合物が用いることができる。
ゴム組成物の補強性の改善効果の観点からは、前記シランカップリング剤として、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド又は3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドを含むことが好ましい。
【0072】
なお、本発明のゴム組成物については、前記ゴム成分として活性部位にシリカ系充填剤との親和性が高い官能基が導入された変性共重合体が用いられているので、シランカップリング剤の配合量を、通常の場合より低減することができる。例えば、前記シランカップリング剤の含有量を、前記シリカ100重量部に対して1質量部~20質量部とすることができる。前記範囲で用いられるとき、カップリング剤としての効果が十分に発揮できるとともに、前記ゴム成分のゲル化を防止することができる。同様の観点から、前記シランカップリング剤の含有量は、前記シリカ100質量部に対して5質量部~15質量部とすることができる。
【0073】
また、本発明のゴム組成物は、さらに熱可塑性樹脂を含むことができる。前記熱可塑性樹脂を含むことによって、ゴム組成物の加工性を向上できることに加え、ゴム組成物をタイヤに用いた場合の乾燥路面及び湿潤路面での制動性能について向上させることができる。
【0074】
なお、前記熱可塑性樹脂の種類については、特に限定はされない。例えば、C5系樹脂、C9系樹脂、C5~C9系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、ロジン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、又は、テルペンフェノール系樹脂等が挙げられる。
【0075】
ここで、前記C5系樹脂とは、C5系合成石油樹脂を指し、C5留分を、AlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体を指す。具体的には、イソプレン、シクロペンタジエン、1,3-ペンタジエン及び1-ペンテンなどを主成分とする共重合体、2-ペンテンとジシクロペンタジエンとの共重合体、1,3-ペンタジエンを主体とする重合体などが例示される。
また、前記C9系樹脂とは、C9系合成石油樹脂を指し、C9留分を、AlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体を指す。具体的には、インデン、メチルインデン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどを主成分とする共重合体等が例示される。
さらに、前記C5~C9系樹脂とは、C5~C9系合成石油樹脂を指し、C5~C9留分を、AlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体を指す。例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデンなどを主成分とする共重合体などが挙げられる。本発明においては、このC5~C9系樹脂として、C9以上の成分の少ない樹脂が、ゴム成分との相溶性の観点から好ましい。ここで、「C9以上の成分が少ない」とは、樹脂全量中のC9以上の成分が50質量%未満、好ましくは40質量%以下であることをいうものとする。
【0076】
前記ジシクロペンタジエン系樹脂とは、前記C5留分中のジシクロペンタジエンを主原料として用いた石油樹脂のことである。例えば、丸善石油化学(株)の商品名「マルカレッツM」シリーズ(M-890A、M-845A、M-990A等)が挙げられる。
また、前記ロジン系樹脂としては、天然樹脂ロジンとして、生松ヤニやトール油に含まれるガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどがあり、変性ロジン、ロジン誘導体、変性ロジン誘導体として、例えば、重合ロジン、その部分水添ロジン;グリセリンエステルロジン、その部分水添ロジンや完全水添ロジン;ペンタエリスリトールエステルロジン、その部分水添ロジンや重合ロジンなどがある。
【0077】
前記アルキルフェノール系樹脂とは、アルキル基を有するフェノール系樹脂のことである。例えば、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂などのアルキルフェノール-アセチレン樹脂、低重合度のアルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
さらに、前記テルペンフェノール系樹脂とは、テルペン類と種々のフェノール類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させたり、あるいはさらにホルマリンで縮合する方法で得ることができる樹脂である。原料のテルペン類としては特に制限はないが、α-ピネンやリモネンなどのモノテルペン炭化水素が好ましく、α-ピネンを含むものがより好ましく、特にα-ピネンであることが好ましい。本発明においては、フェノール成分の比率の多いテルペンフェノール系樹脂が好適である。これらの樹脂は、1種又は2種以上を併用することができる。
さらにまた、前記フェノール樹脂として、ノボラック型フェノール樹脂を含むことが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂を含有させることにより、硬化剤を用いることなく、しかもウェット性能を低下させずに、ゴム組成物における弾性率を増大させ、操縦安定性を向上させることができる。
【0078】
なお、前記熱可塑性樹脂の含有量については特に限定はされないが、加工性やタイヤに適用した際の制動性を向上させつつ、耐摩耗性や補強性を悪化させない観点から、前記ゴム成分100質量部に対して、3~50質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましい。
【0079】
前記老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されない。例えば、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤等を挙げることができる。これら老化防止剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0080】
前記架橋促進剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されるものではない。例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤;ジアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。これらの架橋促進剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0081】
前記架橋剤についても、特に制限はされない。例えば、硫黄、ビスマレイミド化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
前記ビスマレイミド化合物の種類については、例えば、N,N’-o-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンなどを例示することができる。本発明では、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド及びN,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド等を好適に用いることができる。
【0082】
前記架橋促進助剤については、例えば、亜鉛華(ZnO)や脂肪酸等が挙げられる。脂肪酸としては、飽和若しくは不飽和、直鎖状若しくは分岐状のいずれの脂肪酸であってもよく、脂肪酸の炭素数も特に制限されないが、例えば炭素数1~30、好ましくは15~30の脂肪酸、より具体的にはシクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸;ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸;メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;ロジン、トール油酸、アビエチン酸等の樹脂酸などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、亜鉛華又はステアリン酸を好適に用いることができる。
【0083】
なお、本発明のゴム組成物を製造する方法については、特に限定はされず、ゴム組成物を構成する各成分(ゴム成分、充填剤及びその他の成分)を、配合し、混練することによって得ることができる。
【0084】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。本発明のゴム組成物をタイヤ材料として用いることによって、得られたタイヤは、操縦安定性及び転がり抵抗を大きく改善することができる。
本発明のタイヤでは、具体的には、上述したゴム組成物を、いずれかの部材に適用するが、かかるタイヤ用部材の中でも、トレッドに適用することが特に好ましい。前記ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、転がり抵抗の低減効果に加えて、補強性(ひいては耐摩耗性、操縦安定性等)を高いレベルで実現できる。なお、本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の若しくは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスが挙げられる。
【実施例0085】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0086】
<実施例1、比較例1>
表1の成分組成に従って、各ゴム組成物のサンプルを調製する。なお、各成分の配合量については、ゴム成分100質量部に対する質量部で示している。
【0087】
なお、表1中の「変性SBR-1」及び「変性SBR-2」については、以下の条件によって作製する。
(変性SBR-1の作製)
乾燥し、窒素置換した800ミリリットルの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液、及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン67.5g及びスチレン7.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6ミリモルを加え、0.8ミリモルのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行う。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、〔N,N-ビス(トリメチルシリル)-(3-アミノ-1-プロピル)〕(メチル)(ジエトキシ)シランを0.72ミリモル添加し、50℃で30分間変性反応を行う。その後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2ミリリットルを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBR-1を得る。
また、得られる変性SBR-1のミクロ構造を測定した結果、結合スチレン含有量が10質量%、ブタジエン部分のビニル含有量が40%、ゲル浸透クロマトグラフィーにより得られたポリスチレン換算ピーク分子量が200,000である。
【0088】
(変性剤の製造例)
真空乾燥させた4Lステンレススチール圧力容器を2つ用意する。最初の圧力容器にシクロヘキサン944g、下記化学式2-1で表される化合物161g及びテトラメチルエチレンジアミン86gを投入し、第1反応溶液を製造する。これと同時に、2番目の圧力容器に液状の20重量%n-ブチルリチウム318g及びシクロヘキサン874gを投入し、第2反応溶液を製造する。この時、下記の化学式(2-1)で表される化合物、n-ブチルリチウム及びテトラメチルエチレンジアミンのモル比は1:1:1である。各圧力容器の圧力は7barに維持させた状態で、質量流量計を用いて連続式反応器内に、第1連続式チャネルに第1反応溶液を1.0g/minの注入速度で、第2連続式チャネルに第2反応溶液を1.0g/minの注入速度でそれぞれ注入する。この時、連続式反応器の温度は-10℃を維持し、内部圧力はバックプレッシャレギュレータ(backpressure regulator)を用いて3barを維持し、反応器内の滞留時間は10分以内になるように調節する。反応を終了して変性開始剤を得る。
【化13】
(変性SBR-2の作製)
3基の反応器が直列に連結された連続反応器のうち第1基反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解したスチレン溶液を0.84kg/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解した1,3-ブタジエン溶液を15.10kg/h、n-ヘキサン47.66kg/h、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが2.0重量%で溶解した1,2-ブタジエン溶液を10g/h、極性添加剤としてn-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解した溶液を10.0g/h、上記製造例で製造された変性開始剤を292.50g/hの速度で注入する。この時、第1基反応器の温度は50℃となるように維持し、重合転換率が43%となった時、移送配管を通じて、第1反応器から第2反応器に重合物を移送する。
引き続き、第2反応器にn-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解した1,3-ブタジエン溶液を0.68kg/hの速度で注入する。この時、第2基反応器の温度は65℃となるように維持し、重合転換率が95%以上となった時、移送配管を通じて、第2反応器から第3反応器に重合物を移送する。
上記第2反応器から第3反応器に重合物を移送し、変性剤として下記式(1a)が溶解した溶液を第3反応器に投入する(変性剤:act. Li=1:1mol)。第3反応器の温度は65℃となるように維持する。
【化14】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に酸化防止剤として30重量%で溶解したIR1520(BASF社)溶液を、170g/hの速度で注入して攪拌する。その結果、得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて攪拌し、溶媒を除去することで、変性SBR-2を得る。
なお、得られる変性SBR-2のミクロ構造を測定した結果、スチレン含有量が5質量%、ブタジエン部分のビニル含有量が37%である。
【0089】
<評価>
得られる実施例1、比較例1のゴム組成物のサンプルについて、以下の評価を行う。結果を表1に示す。
【0090】
(1)低発熱性
各サンプルに対して、Metravib社製の高周波数用動的粘弾性測定装置を用い、温度30℃、歪み5%、周波数15Hzの条件で、損失正接(tanδ)を測定する。得られるtanδの値は、比較例1の値を100としたときの指数として表示し、表1に示す。なお、tanδの指数値は、小さい程低発熱性に優れることを示す。
【0091】
(2)操縦安定性
各サンプルに対して、Metravib社製の高周波数用動的粘弾性測定装置を用い、30℃、歪み10%、周波数15Hzの条件で、貯蔵せん断弾性係数G’(Pa)を測定する。得られるG’の値は、比較例1の値を100としたときの指数として表示し、表1に示す。なお、G’の指数値は、大きい程、タイヤへ適用した際の操縦安定性に優れることを示す。
【0092】
【0093】
*1: 天然ゴム、RSS#3
*2: 旭カーボン株式会社製 「#80」
*3: 東ソーシリカ株式会社社製 「ニップシールHQ-N」
*4: 東燃化学合同会社社製「T-REZ RD104」
*5: 日油株式会社社製、桐印ステアリン酸
*6: ハクスイテック株式会社社製 「酸化亜鉛2種」
*7: 出光興産株式会社社製 「ダイアナプロセスNH-70S」
*8: 精工化学株式会社社製 「サンタイトA」
*9: 住友化学株式会社社製 「アンチゲン6C」
*10: 信越化学工業株式会社社製 「ABC-856」、ビス-トリエトキシシリルプロピル-ポリサルファイド
*11: 精工化学株式会社社製 「ノンフレックスRD-S」
*12: 住友化学株式会社社製 「ソクシノールD-G」
*13: 三新化学工業株式会社社製 「サンセラーDM-TG」
*14: 大内新興化学工業株式会社社製 「ノクセラーNS-P」
*15: 細井化学工業株式会社社製 「HK200-5」
*16: ランクセス社製 「アクチプラスト(登録商標)PP」
*17: HAMBURG STRUCTOL社製 「VP1405」
【0094】
表1の結果から、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された変性共重合体を含み、該変性共重合体のビニル単位の含有量が低い実施例1のサンプルについては、比較例1のサンプルに比べて、低発熱及び操縦安定性のいずれについても高い評価が得られていることがわかる。
本発明によれば、タイヤへ適用した際の操縦安定性を良好に維持しつつ、優れた低発熱性が実現されたゴム組成物を提供できる。また、本発明によれば、転がり抵抗及び操縦安定性が改善されたタイヤを提供できる。