(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007575
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】パン粉付けフライ用食品及びパン粉付けフライ食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20240112BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20240112BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20240112BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240112BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L35/00
A23L17/00 A
A23L13/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106786
(22)【出願日】2022-07-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003274
【氏名又は名称】マルハニチロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 太弦
(72)【発明者】
【氏名】宮武 史尊
【テーマコード(参考)】
4B025
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B025LB07
4B025LB08
4B025LG28
4B025LG60
4B025LP01
4B025LP10
4B036LF13
4B036LH12
4B036LH50
4B036LP03
4B036LP13
4B042AD18
4B042AH01
4B042AK09
4B042AK20
4B042AP05
4B042AP14
(57)【要約】
【課題】本発明は、フライ時にパン粉が脱落しにくいパン粉付けフライ用食品、及びこれを油ちょうして製造されるパン粉付けフライ食品について、その製造方法を提供する。
【解決手段】パン粉付けフライ用食品の製造において、i)パン粉と加工でん粉とを混合する工程、及び、ii)工程i)で混合したパン粉を中種に付着させる工程を実施する。前記フライ用食品を油ちょうして、パン粉付けフライ食品を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)パン粉と加工でん粉とを混合する工程、及び
ii)工程i)で混合したパン粉を中種に付着させる工程、
を含む、パン粉付けフライ用食品の製造方法。
【請求項2】
工程ii)の前に、中種にバッター液を付着させる工程、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加工でん粉が、エーテル化でん粉、架橋でん粉及び/又はエーテル化架橋でん粉である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程i)において、パン粉と加工でん粉の混合比が、重量比で100:1~100:40である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法で製造されたパン粉付けフライ用食品を油ちょうする工程、を含むパン粉付けフライ食品の製造方法。
【請求項6】
表面に付着するパン粉部分に含まれる加工でん粉の量が、10~286mg/gである、パン粉付けフライ用食品。
【請求項7】
前記加工でん粉が、エーテル化でん粉、架橋でん粉及び/又はエーテル化架橋でん粉である、請求項6に記載のパン粉付けフライ用食品。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のフライ用食品を油ちょうして製造される、パン粉付けフライ食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油ちょうしてパン粉付けフライ食品を製造するためのパン粉付けフライ用食品の製造方法、及びパン粉付けフライ食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カツ、コロッケ等のパン粉付けフライ食品は、打粉をした中種(食材)を、小麦粉や澱粉、水、牛乳等を主原料とするバッター液に浸漬し、更にパン粉を付着させた後、フライして製造されるのが一般的である。バッター液は、通常、パン粉と中種の接着性を高め、フライ時のパン粉の脱落を防ぐために使用される。特許文献1には、薄く均一に塗布可能で、かつ、パン粉の接着性の高いバッター液を調製するために、蛋白含有物質50~90質量%、油脂10~50質量%ならびに穀粉類および/または澱粉類20質量%以下を含み、上記蛋白含有物質として、粉末状大豆タンパク含有物質を10~60質量%、卵白粉を5~30質量%および乳蛋白含有物質を乳蛋白として0~10質量%含むことを特徴とするバッターミックスを使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フライ時にパン粉が脱落しにくいパン粉付けフライ用食品、及びこれを油ちょうして製造されるパン粉付けフライ食品について、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、パン粉に加工でん粉と混合した後に具材に付着させることで、フライ時に脱落するパン粉の量を低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
(1)i)パン粉と加工でん粉とを混合する工程、及びii)工程i)で混合したパン粉を中種に付着させる工程、を含む、パン粉付けフライ用食品の製造方法。
(2)工程ii)の前に、中種にバッター液を付着させる工程、を含む(1)に記載の方法。
(3)前記加工でん粉が、エーテル化でん粉、架橋でん粉及び/又はエーテル化架橋でん粉である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記工程i)において、パン粉と加工でん粉の混合比が、重量比で100:1~100:40である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の方法で製造されたパン粉付けフライ用食品を油ちょうする工程、を含むパン粉付けフライ食品の製造方法。
(6)表面に付着するパン粉部分に含まれる加工でん粉の量が、10~286mg/gである、パン粉付けフライ用食品。
(7)前記加工でん粉が、エーテル化でん粉、架橋でん粉及び/又はエーテル化架橋でん粉である、(6)に記載のパン粉付けフライ用食品。
(8)(6)又は(7)に記載のフライ用食品を油ちょうして製造される、パン粉付けフライ食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フライ時にパン粉が脱落しにくいパン粉付けフライ用食品、及びこれを油ちょうして製造されるパン粉付けフライ食品を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、数値A及びBを用いる「A~B」の記載は、特に説明のない限り、「A以上B以下」を示す。また、濃度を表す「%」の記載は、特に説明のない限り、「重量%」を示す。
【0009】
1.第1の実施形態-パン粉付けフライ用食品の製造方法
本発明の第1の実施形態は、下記の工程i)及びii)を含む、ことを特徴とするパン粉付けフライ用食品の製造方法である。
i)パン粉と加工でん粉とを混合する工程;
ii)工程i)で混合したパン粉を中種に付着させる工程。
【0010】
本明細書において、「パン粉付けフライ食品」とは、食材の最表面に全体的にパン粉を付着させた後、油ちょうすることで得られる食品を指す。具体的には、カツ(豚カツ、チキンカツ、メンチカツなど)、コロッケ、水産フライ(エビフライ、白身魚フライなど)等が挙げられる。一方、本明細書において「パン粉付けフライ用食品」とは、パン粉付けフライ食品をフライする前の状態の食品、すなわち、食材の最表面に全体的にパン粉を付着させた状態の食品を指す。パン粉付けフライ用食品は、製造された直後に油ちょうされてパン粉付けフライ食品にまで加工されてもよく、また、冷蔵、冷凍状態で保管され、流通してもよい。以下、パン粉付けフライ食品及びパン粉付けフライ用食品を、単に「フライ食品」および「フライ用食品」とも称する。
【0011】
本明細書において「中種」とは、フライ用食品から衣材を除いた食材・具材そのものを指す。ここでいう「衣材」とは、食材の表面に塗布するもの全般を指し、具体的には、打粉、バッター液、パン粉等を指す。中種は特に限定されず、加熱前の食肉、魚、野菜等の食材であってもよく、加熱調理済みの具材であってもよい。また、中種は均質なものであっても、不均質なものであってもよい。
【0012】
本明細書において「パン粉」とは、パン、クラッカー等、すなわち、小麦粉等の穀粉類と水、酵母、塩などを混合した生地を焼成することで調製されたものを、グラインダー等で粉砕したものを指す。パン粉には、主に、乾燥したパン、クラッカー等を粉砕したもの(乾燥パン粉)と、乾燥していないパンを粉砕したもの(生パン粉)に分けられる。乾燥パン粉の水分量は通常10~12%、生パン粉の水分量は通常35~38%である。乾燥パン粉と生パン粉の間の水分量を有するセミドライパン粉も多用される。本明細書に記載の「パン粉」は、乾燥パン粉、セミドライパン粉、生パン粉のいずれも包含する。本明細書において、パン粉の種類を特定せず単に「パン粉」とのみ記載する場合は、水分量10%の乾燥パン粉を指すものとする。
【0013】
本明細書において、「加工でん粉」とは、何らかの化学修飾又は物理変性を有するでん粉を指す。加工でん粉としては、でん粉分解物(焙焼デキストリン、酸処理でん粉、酸化でん粉等)、酸化でん粉(酸化でん粉、ジアルデヒドでん粉等)、エステル化でん粉(酢酸でん粉、リン酸化でん粉、オクテニルコハク酸でん粉等)、エーテル化デンプン(ヒドロキシアルキル化でん粉、カルボキシメチル化でん粉、カチオン化でん粉、シアノエチル化でん粉等)、架橋でん粉(リン酸架橋でん粉、アジピン酸架橋でん粉、グリセロール架橋でん粉、ホルマリン架橋でん粉等)、クラフトでん粉(ポリアクリル酸クラフトでん粉、共デキストリン等)、物理変性でん粉(α-でん粉、湿熱処理でん粉、放射線処理でん粉、分別アミロース等)、酵素変性でん粉(マルトデキストリン、デキストリン、アミロース等)等が知られる。本明細書の加工でん粉には、1分子に、上記の化学修飾及び物理変性のうち2以上を有するでん粉も含まれる。
【0014】
本明細書において「バッター液」とは、フライ食品の製造において、中種(具材)表面に、又は打ち粉をした中種の表面全体に塗布する液状の衣材を指す。通常は、小麦粉等の穀粉類、デンプン、油脂、調味料、香辛料等を水に溶いて調製される。バッター液は、これらに加えて、乳化剤、増粘剤、液卵、卵白、卵黄粉、卵白粉、粉末状大豆たん白、加工でん粉等を含んでいてもよい。
【0015】
1-1 工程i)パン粉と加工でん粉との混合工程
本実施形態の方法は、工程i)として、パン粉と加工でん粉とを混合する工程を含む。使用するパン粉は、特に限定されず、乾燥パン粉、生パン粉のいずれも使用可能であるが、特に乾燥パン粉を好適に使用できる。パン粉の粒径は特に限定されず、通常、フライ食品に使用される粒径のものを使用できる。フライ食品に使用される通常のパン粉の粒径は、例えば1.5~12メッシュのものが知られる。
【0016】
パン粉と混合する加工でん粉としては、特に限定されないが、エーテル化でん粉、架橋でん粉、エーテル化架橋でん粉、及びこれらの混合物から選択されるいずれか1つとすることが好ましい。エーテル化でん粉としては、特にヒドロキシプロピル化でん粉を使用することができる。また、エーテル化リン酸架橋でん粉としては、特に、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉を使用することができる。架橋でん粉としては、特に、リン酸架橋でん粉を使用することができる。エーテル化でん粉、架橋でん粉及び/又はエーテル化架橋でん粉は、さらにこれらとは異なる他の加工でん粉、例えばデキストリンと混合して使用することができる。特に、架橋でん粉は、デキストリンと混合して使用することが好ましい。エーテル化でん粉、架橋でん粉及び/又はエーテル化架橋でん粉と前記他の加工でん粉との配合比は、重量比で3:1~15:1程度とすることが好ましい。
【0017】
パン粉と加工でん粉との混合比率は、重量比100:1~100:40とすることが好ましく、特に100:2~100:30、さらに100:3~100:15とすることが好ましい。ここでいう重量比は、乾燥パン粉又は生パン粉を水分量10%の状態にした状態の重量を基準として算出することが好ましい。上記好適な配合比率とすることで、油ちょう時のパン粉の脱落を低減させ、かつ、衣材の厚さや食感を、従来のフライ食品と変わらない適切なものとすることができる。
【0018】
パン粉と加工でん粉との混合は、これらを満遍なく混合される手段であれば、どのような手段を用いてもよいが、例えば、タライ型ミキサー(例えば、株式会社マゼラー製)を使用して混合することができる。
【0019】
1-2 バッター付け工程
工程i)で調製されたパン粉と加工でん粉の混合物は、中種表面に直接付着させてもよいが、中種の表面にバッター液を付着させ、そのさらに表面に前記混合物を付着させるのが通常である。そのため、本実施形態の方法は、好ましくは、工程ii)のパン粉付け工程の前に、中種にバッター液を付着させるバッター液付着工程を含む。
【0020】
バッター液は、中種表面に直接付着させてもよいが、多くの場合、中種に小麦粉、でん粉等の打粉を付着させた後に、その表面に付着させる。バッター液は、中種表面に付着させ、後段のパン粉付け工程でパン粉を表面に満遍なく付着させるために、粘着性を有する必要がある。また、一定の厚みを有する状態で中種表面に付着させるため、一定の流動性と粘度を備える必要がある。流動性が高すぎれば、中種表面にバッター液が保持されず、パン粉付けを補助する役割を果たせない、という問題が生じ得る。一方、粘度が高すぎれば、中種表面に厚く残存するため、調製されるフライ食品の衣が厚くなりすぎてしまい、喫食時の満足感が得られにくい、という問題が生じ得る。
【0021】
中種へのバッター液の付着は、中種の表面全体にバッター液を満遍なく均一的に付着させられれば、特に限定されないが、塗布、浸漬等により実施することができる。例えば、バターリングマシン等を使用して付着させることができる。
【0022】
1-3 工程ii)パン粉付け工程
本実施形態は、工程ii)として、工程i)で混合したパン粉を中種に付着させる工程を含む。中種へのパン粉付けの手段は、表面にパン粉が満遍なく付着できれば特に限定されないが、例えば、ブレッティングマシン等を用いることができる。
【0023】
バッター付け工程及びパン粉付け工程は、それぞれ複数回行ってもよい。具体的には、中種にバッター液、パン粉、バッター液、パン粉・・・の順に重ねて衣材を付着させることもできる。ここで、内側と外側のバッター液は同一のものを使用してもよく、異なる組成の物を使用してもよい。また、パン粉も、内側と外側を同じものとしてもよく、異なるものとしてもよい。しかし、どの態様においても、少なくとも最表面に付着させるパン粉は、第1の実施形態で調製したパン粉と加工でん粉の混合物とすることを要する。
【0024】
上記の工程を経て、フライ用食品、すなわち油ちょう前のフライ食品を得ることができる。前記フライ用食品は、油ちょうする際に、付着させたパン粉の脱落が生じにくい、という利点を有する。前記フライ用食品は、直ちに油ちょうしてフライ食品とすることもできるが、冷蔵保存又は冷凍保存を行い、その状態で流通させることもできる。
【0025】
2.第2の実施形態-パン粉付けフライ食品の製造方法
本発明の第2の実施形態は、上記の第1の実施形態の方法で調製されたフライ用食品を油ちょうする工程を含む、フライ食品の製造方法である。第1の実施形態の方法で調製されたフライ用食品を直ちに油ちょうする態様としてもよい。あるいは、前記フライ用食品を冷蔵保存又は冷凍保存した後に、室温に戻す/解凍する工程を加える、又は加えないで油ちょうする態様としてもよい。本実施形態において、用語の定義は、特に記載のない限り、第1の実施形態と同様である。
【0026】
本明細書において「油ちょう」とは、加熱した食用油脂に食材を接触させて食材を加熱する調理手法を指す。使用する食用油脂としては、通常油ちょうに使用される油脂であれば特に限定されず、材料としては、大豆油、菜種油、キャノーラ油、ひまわり油、オリーブ油、コーン油、綿実油、ヤシ油、ゴマ油、豚脂、牛脂、パーム油等、又はこれらの混合物をいずれも使用できる。ここでいう「食用油脂」には、上記油脂材料そのものに加えて、上記油脂材料に乳化剤、抗酸化剤(例えば、ビタミンE)等を添加した油脂組成物も含まれる。油ちょう時の食用油脂は、調理対象の食材全体が浸る程度の量を超える量で使用することが望ましい。
【0027】
油ちょうの温度は、調理対象の食材によって異なり、特に限定されないが、150~210℃、特に160~190℃とすることができる。油ちょうの時間は、特に限定されないが、0.5~10分間程度で、中種に火が通り、衣全体に色がつく程度の時間で設定することができる。
【0028】
本実施形態の方法は、油ちょう時にフライ食品からパン粉の脱落が生じにくい、という利点を有する。そのため、パン粉が全面に付着した状態で完成した、外観の優れたフライ食品を得ることができる。
【0029】
3.第3の実施形態-パン粉付けフライ用食品
本発明の第3の実施形態は、表面に付着するパン粉部分に含まれる加工でん粉の量が、10~286mg/gである、パン粉付けフライ用食品である。具体的には、本実施形態のフライ用食品は、本発明の第1の実施形態の方法を用いて製造されたフライ用食品である。本実施形態において、用語の定義は、特に記載のない限り、第1の実施形態と同様である。
【0030】
本実施形態のフライ用食品は、衣材のパン粉部分のみを振り落として採取した試料において、加工でん粉の含有量が、10~286mg/g、好ましくは20~231mg/g、より好ましくは29~130mg/gである。
【0031】
前記加工でん粉は、エーテル化でん粉、架橋でん粉、エーテル化架橋でん粉、及びこれらの混合物から選択されるいずれか1つとすることが好ましい。エーテル化でん粉としては、特にヒドロキシプロピル化でん粉を使用することができる。架橋でん粉としては、特にリン酸架橋でん粉を使用することができる。また、エーテル化リン酸架橋でん粉としては、特に、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉を使用することができる。
【0032】
本実施形態のフライ用食品は、油ちょう時にパン粉の脱落が生じにくい、という利点を有する。本実施形態のフライ用食品は、直ちに油ちょうによりフライ食品に加工されてもよい。あるいは、本実施形態のフライ用食品は、冷蔵又は冷凍され、冷蔵食品又は冷凍食品として流通してもよい。
【0033】
4.第4の実施形態-パン粉付けフライ食品
本発明の第4の実施形態は、第3の実施形態のフライ用食品を油ちょうして製造される、パン粉付けフライ食品である。本実施形態において、用語の定義は、特に記載のない限り、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様である。
【0034】
本実施形態のパン粉付けフライ食品は、油ちょう時のパン粉の脱落が少ないことから、外観の優れたものとして得られやすい、という利点を有する。
【実施例0035】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
<実施例1 フライ食品調製時のパン粉の脱落低減効果の加工でん粉の種類による比較(1)>
乾燥マッシュポテト10質量部に対して30質量部の水を加えてマッシュポテトを調製した。マッシュポテト25gを、直径40mmの円形状に成形し、5~10℃まで冷却した。成形マッシュポテトに薄力粉を付着させた後、バッター液(焙焼小麦粉98質量部、乾燥卵白1質量部、粉末大豆たんぱく質1質量部、キサンタンガム0.2質量部、水200質量部を混合したもの)を1個当たり6.5~7.0gとなるように中種に付着させた。その後表1に示す加工でん粉1~5を3重量%配合したセミドライパン粉(水分量33±1%、2メッシュ相当(横山食品株式会社製)、以下同じ)を、それぞれ直径が55mmとなるように付着させた後、揚げ種を得た。揚げ種の重量を測定してパン粉付け前の重量を差し引くことで、付着したパン粉の重量(混合した加工でん粉の重量を含む、以下同じ)を算出した。揚げ種をキャノーラ油で180℃、2分30秒間の条件下で油ちょうし、フライ食品を得た。油ちょう後のキャノーラ油をろ過して脱落したパン粉を回収し、重量を測定した。対照区として、パン粉に加工でん粉を配合せずに同様の揚げ種、フライ食品を調製した。各試験区、対照区の結果を表2に示す。表2中に示す加工でん粉のパン粉との混合量は、いずれもセミドライパン粉(水分量33±1%)100重量部との混合量を示す(以下同様)。
【0037】
【0038】
【0039】
フライ前のパン粉付着量(A)に占めるフライ後のパン粉の脱落量(B)の割合、B/A×100(%)をパン粉脱落度合いの指標とした。表2に示す通り、対照区と比較して、加工でん粉1(ヒドロキシプロピル化でん粉)及び加工でん粉3(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン)でパン粉の脱落量が少なくなることが示された。
【0040】
<実施例2 フライ食品調製時のパン粉の脱落低減効果の加工でん粉の配合量による比較>
加工でん粉1を表3に示す配合量で配合したパン粉を使用した以外は、実施例1と同様の手順で揚げ種を調製し、フライ後のパン粉の脱落度合いを測定した。結果を表3に示す。表3に示す通り、パン粉に配合する加工でん粉の配合割合が20%程度になるまでは、配合する加工でん粉の配合割合に従って、パン粉の脱落量が減少することが示された。一方、パン粉に配合する加工でん粉量をそれ以上としても、パン粉の脱落効果に大きな変化はなく、表面を覆うために要するパン粉(衣)の量が増加することが示された。
【0041】
【0042】
<実施例3 白身タルタルフライの調製時のパン粉脱落度合いの評価>
スケソウダラブロック38質量部の片面にタルタルソース13質量部を塗布して、1次バッター液(加工でん粉、植物油脂、粉末油脂、香辛料、調味料、焙焼小麦粉、乳化剤、キサンタンガム及び水を混合したもの)8質量部を付着させて、α化小麦でん粉を7%含有するパン粉を5.5質量部付着させた。次いで、2次バッター液(加工でん粉、植物油脂、卵白、調味料、乳化剤、キサンタンガム、水を混合したもの)を16質量部付着した後に、加工でん粉1を0.57質量部含有する2次パン粉を19.45質量部付着させ、揚げ種を調製した。揚げ種を中心温度が75℃以上となるように油ちょうして、白身魚とタルタルソースを中種とするフライ食品を得た。フライ後のパン粉の脱落度合いは、実施例1の試験区1と同等程度であった。これにより、中種が均質でなく2層になっている場合も、さらに、バッター液とパン粉の付着を2重に行っている場合も、最表面に付着させるパン粉に加工でん粉1を配合することで、パン粉の脱落量を減少させることが可能なことが示された。
【0043】
<実施例4 ほうれん草とチーズのささみカツ調製時のパン粉脱落度合いの評価>
原料練肉39質量部に対してチーズソースを19質量部混合し成型した。成型後、1次バッター液(加工でん粉、植物油脂、粉末油脂、焙焼小麦粉、乳化剤、キサンタンガム、水を混合したもの)を5質量部付着させ、パン粉を4質量部付着させた。2次バッター液(加工でん粉、卵白、植物油脂、粉末油脂、焙焼小麦粉、調味料、乳化剤、キサンタンガム、水を混合したもの)を17質量部付着させた後に加工でん粉1を0.45質量部含有する2次パン粉を15.41質量部付着させ、揚げ種を調製した。揚げ種を中心温度が75℃以上となるように油ちょうして、食肉とチーズを中種とする油ちょう食品を得た。フライ後のパン粉の脱落度合いは、実施例1の試験区1と同等程度であった。これにより、中種が均質でない場合や、バッター液とパン粉の付着を2重に行っている場合も、最表面に付着させるパン粉に加工でん粉1を配合することで、パン粉の脱落量を減少させることが可能なことが示された。
【0044】
<実施例5 フライ食品調製時のパン粉の脱落低減効果の加工でん粉の種類による比較(2)>
厚みのある魚肉ハムを1個につき25gとなるように円形状にカットした。得られた魚肉ハムに1次バッター液(加工でん粉、植物油脂、粉末油脂、焙焼小麦粉、乳化剤、キサンタンガム、水を混合したもの)を1.0~1.5gの範囲となるように中種に付着させた。バッター液の上にパン粉を付着させ、さらに2次バッター液(加工でん粉、卵白、植物油脂、焙焼小麦粉、調味料、乳化剤、キサンタンガム、水を混合したもの)を表面に付着させた後に、表4の試験区10~13に示す加工でん粉を配合したパン粉を付着して重量を測定した。重量を測定後、180℃のキャノーラ油で2分30秒間油ちょうした。油ちょう後に油から脱落したパン粉を回収して重量を測定した。
【0045】
【0046】
表4に示す通り、対照区と比較して、加工でん粉1(ヒドロキシプロピル化でん粉)、加工でん粉2(リン酸架橋でん粉)又は加工でん粉3(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉)と加工でん粉6(デキストリン)とを混合したパン粉を付着した試験区(試験区11~13)において、パン粉の脱落が低減することが示された。
【0047】
<実施例6 フライ食品調製時のパン粉の脱落低減効果の加工でん粉の種類とバッター液量による比較>
乾燥マッシュポテト10質量部に対して30質量部の水を加えてマッシュポテトを調製した。マッシュポテト25gを、直径40mmの円形状に成形し、5~10℃まで冷却した。成形マッシュポテトに薄力粉を付着させた後、重量を測定し、バッター液(小麦粉98質量部、乾燥卵白1質量部、粉末大豆たんぱく質1質量部、キサンタンガム0.2質量部、水200質量部を混合したもの)を表5に示す付着量となるように付着させた。加工でん粉1を10重量%配合したパン粉を、それぞれ表面全体を覆うように付着させ、揚げ種を得た。揚げ種の重量を測定してパン粉付け前の重量を差し引くことで、付着したパン粉の重量を算出した。揚げ種をキャノーラ油で180℃、2分30秒間の条件下で油ちょうし、フライ食品を得た。油ちょう後のキャノーラ油をろ過して脱落したパン粉を回収し、重量を測定した。対照区として、パン粉に加工でん粉を配合せずに、同様のバッター付着量となるように揚げ種を調製し、油ちょうしてフライ食品を調製した。各試験区、対照区の結果を表5に示す。
【0048】
【0049】
表5に示す通り、バッター付着量を変更することで、パン粉の脱落度合いが変化した。しかし、バッター付着量が同じ量である前提で比較すると、すなわち、対照区4と試験区14、対照区5と試験区15、及び対照区6と試験区16をそれぞれ比較すると、試験区でパン粉の脱落度合いが低減していた。これにより、バッター付着量に関係なく、パン粉に加工でん粉1を配合することで、パン粉の脱落低減効果が得られることが示された。
【0050】
<実施例7 フライ食品調製時のパン粉の脱落低減効果の加工でん粉の種類とバッター液への加水量による比較>
乾燥マッシュポテト10質量部に対して30質量部の水を加えてマッシュポテトを調製した。マッシュポテト25gを、直径40mmの円形状に成形し、5℃~10℃まで冷却した。成形マッシュポテトに薄力粉を付着させた後、重量を測定し、表6に示すバッター液1~3(焙焼小麦粉98質量部、乾燥卵白1質量部、粉末大豆たんぱく質1質量部、キサンタンガム0.2質量部、水200質量部を混合したもの)を、それぞれ付着量が4.5~5.0gとなるように付着させた。加工でん粉1を10重量%配合したパン粉を、それぞれ表面全体を覆うように付着させ、揚げ種を得た。揚げ種の重量を測定してパン粉付け前の重量を差し引くことで、付着したパン粉の重量を算出した。揚げ種をキャノーラ油で180℃、2分30秒間の条件下で油ちょうし、フライ食品を得た。油ちょう後のキャノーラ油をろ過して脱落したパン粉を回収し、重量を測定した。対照区として、バッター液1~3をそれぞれ付着させた後、加工でん粉を含まないパン粉を付着させて揚げ種を調製し、油ちょうしてフライ食品を調製した。各試験区、対照区の結果を表7に示す。
【0051】
【0052】
【0053】
表7に示す通り、バッター液への加水量を変更することで、パン粉の脱落度合いが変化した。しかし、バッター液への加水量が同じである前提で比較すると、すなわち、対照区7と試験区17、対照区8と試験区18、及び対照区9と試験区19をそれぞれ比較すると、試験区でパン粉の脱落度合いが低減していた。これにより、バッター液への加水量に関係なく、パン粉に加工でん粉1を配合することで、パン粉の脱落低減効果が得られることが示された。
表7に示す通り、バッター液への加水量を変更することで、パン粉の脱落度合いが変化した。しかし、バッター液への加水量が同じである前提で比較すると、すなわち、対照区7と試験区17、対照区8と試験区18、及び対照区9と試験区19をそれぞれ比較すると、試験区でパン粉の脱落度合いが低減していた。これにより、バッター液への加水量に関係なく、パン粉に加工でん粉1を配合することで、パン粉の脱落低減効果が得られることが示された。
本発明は以下の実施形態を含む。
(1)i)パン粉と加工でん粉とを混合する工程、及びii)工程i)で混合したパン粉を中種に付着させる工程、を含む、パン粉付けフライ用食品の製造方法。
(2)工程ii)の前に、中種にバッター液を付着させる工程、を含む(1)に記載の方法。
(3)前記加工でん粉が、エーテル化でん粉、架橋でん粉及び/又はエーテル化架橋でん粉である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記工程i)において、パン粉と加工でん粉の混合比が、重量比で100:1~100:40である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の方法で製造されたパン粉付けフライ用食品を油ちょうする工程、を含むパン粉付けフライ食品の製造方法。
(6)表面に付着するパン粉部分に含まれる加工でん粉の量が、10~286mg/gである、パン粉付けフライ用食品。
(7)前記加工でん粉が、エーテル化でん粉、架橋でん粉及び/又はエーテル化架橋でん粉である、(6)に記載のパン粉付けフライ用食品。
(8)(6)又は(7)に記載のフライ用食品を油ちょうして製造される、パン粉付けフライ食品。
前記工程i)において、パン粉とβ-ヒドロキシプロピル化でん粉及び/又はβ-ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉の混合比が、重量比で100:1~100:40である、請求項1に記載の方法。