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  • 特開-バラの木の抽出物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075763
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】バラの木の抽出物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240528BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051482
(22)【出願日】2024-03-27
(62)【分割の表示】P 2021577849の分割
【原出願日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】1907145
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】595100370
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L′OREAL
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ファゴット
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディーヌ ドゥジャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ケラチン物質をケアする為に有用な活性剤を提供する。
【解決手段】バラの木の抽出物であって、該バラの木が、品種メイチボン(Meichibon)と品種デルグラマウエ(Delgramaue)とを交配することによって得られたハイブリッドであることを特徴とする、上記バラの木の抽出物を提供する。特に、本発明は、上記バラの木の抽出物を使用することによってケラチン物質をケアする為の、化粧的使用及び化粧的方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラの木の抽出物であって、前記バラの木が、品種メイチボン(Meichibon)と品種デルグラマウエ(Delgramaue)とを交配することによって得られたハイブリッドであることを特徴とする、前記バラの木の抽出物。
【請求項2】
前記バラの木の抽出物が、前記バラの木の花、花頂及び/又は葉から得られることを特徴とする、請求項1に記載のバラの木の抽出物。
【請求項3】
前記バラの木の抽出物が、前記バラの木の全体又は一部のアルコール混合物の超臨界COでの抽出によって得られることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバラの木の抽出物。
【請求項4】
アルコール混合物は、前記バラの木の全体又は一部を、アルコール溶媒を含む少なくとも1つの浴中で50℃未満の温度で浸出した後に得られたものであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のバラの木の抽出物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のバラの木の抽出物を含む組成物。
【請求項6】
品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られたハイブリッドのバラの木の抽出物の、又は該抽出物を含む組成物の、ケラチン物質をケアする為の化粧的使用
【請求項7】
皺、小皺、しなびた皮膚、皮膚の弾力性及び/又は張り及び/又は密度の喪失、皮膚の色つやの輝きの低下、皮膚の紙のような外観、皮膚のたるみ、並びに皮膚のしなびた外観から選択される化粧的徴候を処置及び/又は予防する為の、請求項6に記載の化粧的使用。
【請求項8】
ケラチン物質をケアする為の化粧的方法であって、それを必要としている個体に、少なくとも1つのバラの木の抽出物を活性剤として投与することからなる少なくとも1つの工程を含み、該バラの木が、品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られたハイブリッドであることを特徴とする、前記化粧的方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン物質、例えば皮膚又は外皮、をケアすること、特に皮膚老化に対して作用すること、に特化された活性剤の分野に関する。本出願は、主に化粧品の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト皮膚は、幾つかの区画から構成されており、そのうちの3つ、すなわち、表皮である表在性区画、真皮、及び皮下組織である深部区画が、身体全体を被覆している。
【0003】
該皮下組織は、脂肪の蓄積及び貯蔵に特化されている細胞の一種である脂肪細胞から本質的になる。
【0004】
該真皮は、コラーゲン線維及び弾性線維、並びにまたグリコサミノグリカン、プロテオグリカン及び線維芽細胞からなる結合組織である。該組織の構造は、細胞外マトリックス構成物と、その合成及び分解に関与している線維芽細胞との配置及び相互作用から生じる。この細胞外マトリックスは、エラスチン及びコラーゲンから主に構成されている。コラーゲンは、全ての結合組織の細胞外媒体に存在する線維状タンパク質である。20種の特定されているタイプのコラーゲンの中でも、I型及びIII型コラーゲンは、真皮の主な成分である。それらは、らせん構造を形成する3つのα-ポリペプチド鎖からなるプロコラーゲンの形態において、線維芽細胞によって該細胞外マトリックスに分泌される。
【0005】
真皮表皮接合部(DEJ:dermo-epidermal junction)又は基底膜は、異なる起源の細胞、すなわちケラチノサイト及び線維芽細胞、を分離する、膜(leaflet)状の細胞外マトリックスから構成されている。このDEJの主な構成物は、二次元網目構造を形成する非線維性タンパク質であるIV型コラーゲン、並びにプロテオグリカン、例えばラミニン、ナイドジェン及びパールカン、である。最後に、ケラチノサイト及び線維芽細胞によって分泌されたVII型コラーゲン分子は、表皮の基底膜と真皮との間に接着性を付与するアンカリング線維(anchoring fibers)を形成する。
【0006】
最後に、表皮は、ケラチノサイトから主に構成されているが、また他の細胞、特にメラニン細胞、から構成されている。これらの細胞は、該細胞を該真皮と分離する基底膜に位置する。メラニン細胞は、メラニンを合成する機能を有する、特殊化された樹状細胞である。
【0007】
概略的には、3つのタイプの表皮細胞、すなわちケラチノサイト、メラニン細胞及び或る常在リンパ球、がこの系に関与する。皮膚でのみ見られるこれらの細胞は、瘢痕化(cicatrization)において及び再上皮化現象(re-epithelialization phenomena)において必須の役割を果たす。
【0008】
従って、再上皮化は、ケラチノサイトの3つの機能、すなわち移動、増殖及び分化、の結果として概念的に定義されうる。
【0009】
皮膚老化は、内因性因子又は外因性因子が関与する、2つの別個の独立なプロセスから生じる。内因性老化又は時間生物学的老化は、加齢性の正常な又は生理的な老化に対応する。
【0010】
皮膚は、時間と共に、とりわけ経時的老化及び/又は光誘起老化の過程において、数々の変性及び分解を受けるが、それらは組織レベルにおいては、表皮、真皮表皮接合部、真皮の構造、並びに血液供給及び神経支配系の崩壊、並びに様々な細胞代謝、例えばバリア機能の平衡に関与する代謝又はメラニン形成に関与する代謝の減速又は調節解除、によって反映される。細胞レベルにおいては、老化は、主な細胞型、例えば真皮の線維芽細胞、表皮のケラチノサイト、及びまたメラニン細胞の生理又は代謝の低下、によって反映される。
【0011】
内因性老化は、とりわけ、表皮細胞の再生の減速、及び皺又は小皺の出現、によって反映される。真皮レベルにおいては、巨大分子、例えばコラーゲン、の生合成は、年齢と共に減少して、真皮の機械特性を変化させ、その結果として、老化の臨床徴候の1つである皮膚のたるみが生じる。
【0012】
外因性老化は、一般的に環境によって引き起こされる老化に対応し、より特には、太陽光への曝露に起因する光老化に対応する。光誘起皮膚老化、すなわち、太陽光への曝露によって引き起こされた老化は、光老化又は光損傷皮膚(heliodermia)としても既知である。
【0013】
光老化は、真皮レベルにおけるコラーゲン線維分解の結果であり、該結果は、とりわけ臨床的低下、例えば深い皺及びたるんだ革のような皮膚の形成、である。従って、皮膚老化は、UV光への長期的曝露によって加速される。
【0014】
従って、健康な皮膚は、とりわけそのバリア及び抗菌薬防御特性、並びにまたその再上皮化特性を用いることによって、外部ストレスに対して皮膚自体を防御することができる。これらのストレスは、長期的には、皮膚のバリア特性に対する抑制効果によって反映されうる。
【0015】
これらのストレスはまた、該再上皮化特性に影響を及ぼし得、表皮再生の且つ瘢痕化のプロセスを損ない得、とりわけ皮膚老化の徴候を引き起こすストレスとなりうる。
【0016】
従って、化粧的観点から、再上皮化、とりわけケラチノサイトの移動、を促進することによって、皮膚老化と関連する徴候を予防し、及び/又は処置することが可能である。
【0017】
従来技術
とりわけ化粧分野において、ケラチン物質をケアする為の様々な化合物が提案されてきている。
【0018】
例として、仏国特許出願公開第2890311号明細書が挙げられ、該明細書は、皮膚の表面及び/又は粘膜への微生物付着を予防又は低減する為の、バラ属由来の植物抽出物の化粧的使用を教示している。
【0019】
仏国特許出願公開第2985423号明細書は、皮膚及び毛髪の審美的ケアの為の、バラ種由来の脱分化された植物細胞の化粧的使用を教示している。
【0020】
Deshayes等(''A 3D in vitro model of the re-epithelialization phase in the wound-healing process''; Experimental Dermatology; Vol. 27, Issue 5, 2017)は更に、再上皮化のイン・ビトロモデルを報告し、該文献において、プニカ酸、エラグ酸及びアスコルビン酸が、瘢痕化促進活性剤(pro-cicatrizing active agents)として特定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、ケラチン物質をケアする為に有用である新規な活性剤の継続する必要性がある。特に、天然であり且つケラチン物質に対してプラスの効果を有するところの新規な活性剤の必要性が依然としてある。
【0022】
表皮の再上皮化、再生及び瘢痕化特性を強化する為に有用である新規な活性剤の必要性が依然としてある。
【0023】
ケラチン物質の老化の徴候を予防及び/又は処置する為に好適である新規な活性剤の必要性が依然としてある。
【0024】
皮膚のバリア特性を強化することができる新規な、有用な活性剤の必要性が依然としてある。
【0025】
本発明の目的は、これらの必要性を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
第1の主題に従うと、本発明は、バラの木の抽出物であって、該バラの木が、品種メイチボン(Meichibon)と品種デルグラマウエ(Delgramaue)とを交配することによって得られたハイブリッドであることを特徴とする上記バラの木の抽出物に関する。
【0027】
特に、該バラの木の抽出物は、該バラの木の花、花頂及び/又は葉から得られうる。
【0028】
特に、該バラの木の抽出物は、該バラの木の全体又は一部のアルコール混合物の超臨界COを用いた抽出によって得られうる。
【0029】
特に、該アルコール抽出物は、該バラの木の全体又は一部を、アルコール混合物を得る為に、アルコール溶媒を含む少なくとも1つの浴中で50℃未満の温度で浸出した後に得られたものであることを特徴としうる。
【0030】
第2の主題に従うと、本発明は、既に定義されている通りのバラの木の抽出物を含む組成物に関する。
【0031】
第3の主題に従うと、本発明は、品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られたハイブリッドのバラの木の抽出物の、又は該抽出物を含む組成物の、ケラチン物質をケアする為の化粧的使用に関する。
【0032】
特に、該化粧的使用は、皺、小皺、しなびた(wizened)皮膚、皮膚の弾力性(elasticity)及び/又は張り(tonicity)及び/又は密度の喪失、皮膚の色つやの輝きの低下、皮膚の紙のような外観、皮膚のたるみ、並びに皮膚のしなびた外観から選択される化粧的徴候を処置及び/又は予防する目的のものでありうる。
【0033】
第4の主題に従うと、本発明は、ケラチン物質をケアする為の化粧的方法であって、それを必要としている個体に、少なくとも1つのバラの木の抽出物を活性剤として投与することからなる少なくとも1つの工程を含み、該バラの木が、品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られたハイブリッドであることを特徴とする上記方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、花浸出液の、超臨界COによる抽出によって(par extraction)バラ抽出物を得る為の、一般的なプロトコールを表す。該質量は、示唆的な値であり、それは変動を受けうる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
驚くべきことに、本発明者等は、培養中のケラチノサイトモデルにおいて、品種メイチボン(Meichibon)と品種デルグラマウエ(Delgramaue)とを交配することによって得られた、特定のハイブリッドのバラの木由来の抽出物の有利な特性を特定した。
【0036】
該品種名メイチボンは、バラ属バラ科に属するバラの木を云う。該品種は、ハイブリッドティーローズであり、商業的にはTchaikovski(商標)、又はTchaikovski(商標)Meichibon、又はMeillandバラの木とも云われる。
【0037】
該品種名デルグラマウエは、バラ属バラ科フロリバンダ種に属するバラの木を云い、商業的には「rose synactif by Shisheido(商標)」(Delbard)、又は「La Rose du Petit Prince」とも云われる。
【0038】
このようなハイブリッドのバラの木は、幾らかピンク色の先端を示しうる豊富な白色の二重の葉、すなわち、茎1本当たり平均5つの花、並びに(i)グレープフルーツ及びシトラス香バラのトップノート、(ii)アプリコット及びライチのミドルノート、並びに(iii)グリーンのベースノートを包含する、様々なノートを示す芳香も提示しうる。該バラの木は、平均で高さ約70~80cm、及び幅約40~50cmに達し得、分枝は約8~10mmの直径を有する。
【0039】
特に、このようなハイブリッドのバラの木は、該品種名デルグラマウエの「雄性」品種及び該品種名メイチボンの「雌性」品種の交雑によって得られうる。
【0040】
特に、このようなハイブリッドのバラの木は、受粉によって、すなわち、「雄性」花、特に該品種名デルグラマウエに属する花の雄しべからの花粉を、「雌性」花、特に該品種名メイチボンに属する花の雌しべ上に適用することによって得られうる。
【0041】
このハイブリッドのバラの木は、とりわけ、下記の特色の組み合わせによって、既に定義されている該品種メイチボン及びデルグラマウエとは区別されうる。
このタイプのバラの木は、花弁の数がより多いという点で、花弁の数が、一般的に該メイチボン品種とは異なり、サイズもより大きく、既に記述されている通りグレープフルーツの特徴的なノートを有する、より強い香りを放つ花を有する。
該花弁の色は、一般的に白色であるが、該Delgramaue品種はライラック色の花弁を有するという点で、花弁の色が、一般的に該デルグラマウエ品種とは異なり、より活力があり、「バラの黒点病」として知られている病気に対して、より耐性が高い。
【0042】
従って、本発明者等は、Deshayes等(''A 3D in vitro model of the re-epithelialization phase in the wound-healing process''; Experimental Dermatology; Vol. 27, Issue 5, 2017)に記載されている、ケラチノサイト培養のイン・ビトロモデルにおける該ハイブリッドのバラの木の抽出物の移動促進能及び再上皮化能を特定した。
【0043】
これらの移動促進能及び再上皮化能は、移動又は再上皮化欠陥と関連する徴候を処置及び/又は予防する為の、組成物、とりわけ化粧組成物、の化粧的若しくは非化粧的適用、又はそれらの調製の為に、有利に組み入れられうる。
【0044】
特に、該ハイブリッドのバラの木の超臨界CO抽出物は、人工的な均質な創傷領域を模倣することができる系において、正常なヒトケラチノサイトの移動の刺激を誘導することが示された。該抽出物を用いて得られた結果は、正の対照(EGF)を用いて得られた結果と同じ大きさを有する。従って、最初の1時間の移動から、該正の対照に対して50%の移動加速度が観察される。
【0045】
超臨界CO抽出物は、一般的に、「超臨界」状態の、すなわち、高圧レベル(一般的に、50バール超、又は更には70バール超)及び低温(一般的に、30℃超及び50℃未満)におけるCOガスを使用するプロセスによって得られた抽出物を云う。
【0046】
一つの実施態様に従って、該抽出は、該超臨界状態における、すなわち、少なくとも31.1℃の温度及び少なくとも74.5バールの圧力における、COガスの存在下で実施される。
【0047】
該超臨界CO抽出物は、とりわけ、国際公開第2012/085366号パンフレットに記載されており、本明細書で以下に詳説されるプロトコールに従って得られうる。
【0048】
従って、品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られたハイブリッドのバラの木の抽出物は、ケラチン物質、特に皮膚及びその外皮をケアする為、最も特には、皮膚老化の徴候、例えば皺、小皺、しなびた皮膚、皮膚の弾力性及び/又は張り及び/又は密度の喪失、皮膚の色つやの輝きの低下、皮膚の紙のような外観、皮膚のたるみ、皮膚のしなびた外観、を処置及び/又は予防する為に、有利に使用されうる。
【0049】
語「ケラチン物質」は、皮膚及びその外皮、とりわけ頭皮、毛包及びケラチン線維、とりわけ頭髪、眉毛、まつ毛、顎ひげ及び口ひげ、並びに陰毛を示すことを意図される。
【0050】
語「皮膚」は、頭皮、粘膜、半粘膜(semimucousmembrane)、及び皮膚外皮を包含する、身体の皮膚の全てを意味する。
【0051】
語「皮膚外皮」は、体毛、まつ毛、頭髪及び爪を意味する。より特には、本発明において、頭髪、ネックライン、頸部及び顔面の皮膚、まつ毛及び眉毛が考慮される。
【0052】
また語「予防する」は、「現象の発生又は再発の確率を低減すること」を意味する。
【0053】
語「皮膚老化の徴候」は、それが時間生物学的老化及び/又は光誘起老化であるかどうかに関わらず、弛緩しており、皺が出現している皮膚をもたらす、老化に起因する皮膚の外観の全ての変性、例えば、皺及び小皺、しなびた皮膚、皮膚の弾力性及び/若しくは張りの欠如、真皮の菲薄化、並びに/又はコラーゲン線維の分解を云う。該語はまた、変性した外観、例えば、皮膚の全ての内部分解、より特にはエラスチン線維又は弾性線維の分解、によって系統的に反映されない、皮膚の全ての内部変性を云うことが意図される。
【0054】
抽出物、組成物及び調製プロセス
主な実施態様に従って、本発明は、該バラの木が、品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られたハイブリッドであることを特徴とする、バラの木の抽出物に関する。
【0055】
本発明に従うバラ抽出物は、インビボ又はイン・ビトロで培養された、植物全体又は植物部分、例えば葉、茎、花、花頂、花弁、萼片又は根、から誘導された植物材料から得られうる。
【0056】
語「インビボ培養」は、標準タイプの、すなわち、野外若しくは温室内の土壌での、又は代替的には土壌以外での、任意の培養を意味する。
【0057】
語「イン・ビトロ培養」は、植物又は植物部分を人工的に得ることを可能にする、当業者に知られている全ての技術を意味する。与えられた選択圧により、インビボ培養された植物とは対照的に、標準化され、年中入手可能な植物材料を得ることが可能になる。
【0058】
特に、該バラの木の抽出物は、花、花頂、及び/又は葉から得られうる。
【0059】
第2の実施態様に従うと、本発明は、該バラの木が、品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られたハイブリッドであることを特徴とする、該バラの木の抽出物を含む化粧組成物又は医薬組成物、好ましくは化粧組成物、に関する。
【0060】
製剤
本発明に従う抽出物は、とりわけ、皮膚、爪又は粘膜(口腔内頬側、頬骨、歯肉、生殖器、結合組織)に適用する為の、任意の化粧組成物に製剤化されうる。本発明の組成物は、保持される投与方法に応じて、普通に使用される提示形態のいずれかでありうる。
【0061】
本発明に従う組成物は、生理的に許容される媒体を含む。
【0062】
語「生理的に許容される媒体」は、ケラチン物質、特に皮膚と適合性がある媒体を意味する。一つの実施態様に従うと、本発明に従う抽出物は、局所経路を介して投与されうる。
【0063】
一つの実施態様に従うと、本発明に従う、バラの木の抽出物は、該組成物の総重量に対して、少なくとも0.0001重量%を含む組成物中に存在し得、及び/又は該組成物で投与されうる。
【0064】
一つの実施態様に従うと、本発明に従う、バラの木の抽出物は、該組成物の総重量に対して、少なくとも0.001重量%を含む組成物中に存在し得、及び/又は該組成物で投与されうる。
【0065】
一つの実施態様に従うと、本発明に従う、バラの木の抽出物は、該組成物の総重量に対して、0.1重量%以下を含む組成物中に存在し得、及び/又は該組成物で投与されうる。
【0066】
一つの実施態様に従うと、本発明に従う、バラの木の抽出物は、該組成物の総重量に対して、1重量%以下を含む組成物中に存在し得、及び/又は該組成物で投与されうる。
【0067】
一つの実施態様に従うと、本発明に従う、バラの木の抽出物は、該組成物の総重量に対して、少なくとも0.0001重量%且つ1重量%以下を含む組成物中に存在し得、及び/又は該組成物で投与されうる。
【0068】
一つの実施態様に従うと、本発明に従う、バラの木の抽出物は、該組成物の総重量に対して、少なくとも0.0001重量%且つ0.1重量%以下を含む組成物中に存在し得、及び/又は該組成物で投与されうる。
【0069】
有利なことには、本発明に従う抽出物は、水若しくは水溶性有機溶媒、又はそれらの混合物において、製剤化又は溶解されうる。
【0070】
本発明における使用に好適な水溶性有機溶媒は、2~8個の原子を含む低級モノアルコール、及び2~6個のヒドロキシル基、好ましくは3~5個のヒドロキシル基、を含むC~C、好ましくはC~C、炭化水素系化合物、並びにそれらの混合物から選択されうる。
【0071】
本発明における使用に好適な該水溶性有機溶媒の中でも、とりわけ、2~8個の炭素原子を含有するグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール又は1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、及びそれらの混合物、が言及されうる。好ましくは、プロピレングリコール又は1,3-プロパンジオールが、本発明における使用に最も特に好適である。
【0072】
該低級モノアルコールの中でも、特に、2~6個の炭素原子を含むもの、例えばエタノール、イソプロパノール、プロパノール又はブタノール、が言及されうる。
【0073】
好ましい実施態様において、該水溶性有機溶媒は、エタノールである。
【0074】
水溶性有機溶媒は、それを含有する該組成物の20重量%~100重量%、好ましくは、それを含有する該組成物の30重量%~90重量%、好ましくは40重量%~80重量%、より好ましくは50重量%~70重量%、を構成しうる。
【0075】
本発明における使用に好適な水は、とりわけ、Vittel水、Vichy盆地から得られる水及びLa Roche Posay水から選択される、湧き水及び/又はミネラル水でありうる。本発明における使用に好適な水はまた、フローラルウォーター、例えばローズウォーター、でありうる。
【0076】
水は、それを含有する該組成物の、20重量%~100重量%、好ましくは、それを含有する該組成物の30重量%~90重量%、好ましくは40重量%~80重量%、より好ましくは50重量%~70重量%、を構成しうる。有利なことには、水は、それを含有する該組成物の、50重量%までを構成する。
【0077】
ケラチン物質、とりわけ皮膚又はその外皮、への局所適用については、組成物は、とりわけ、水性若しくは油性溶液又は該ローション若しくは美容液タイプの分散液、脂肪相を水性相に分散させるか(O/W)若しくはその逆(W/O)によって得られた液体若しくは半液体粘稠度の該乳液タイプのエマルション、又は該水性若しくは無水ゲル若しくはクリームタイプの軟質粘稠度の懸濁物若しくはエマルション、又はそれ以外ではマイクロカプセル若しくは微粒子、又はイオン及び/若しくは非イオンタイプの小胞分散液、の形態でありうる。これらの組成物は、該通常の方法に従って調製される。
【0078】
これらの組成物は、顔、手、足、大きい解剖学的な皺若しくは身体の為のクレンジング、保護、処置若しくはケア用クリーム(例えばデイクリーム、ナイトクリーム、メーキャップクリーム、メイク落としクリーム、下地クリーム又は日焼け止めクリーム)、フルイドファンデーション、メーキャップ組成物、例えばメイク落とし乳液、保護若しくはケア用ボディミルク、日焼け止め乳液、スキンケアローション、ゲル若しくはフォーム、例えばクレンジングローション、日焼け止めローション、人工タンニングローション、浴用組成物、殺菌剤を含むデオドラント組成物、アフタシェーブゲル若しくはローション、又は剃毛用クリーム、を構成しうる。これらの組成物はまた、石けん若しくはクレンジングバーを構成する固体調製物からなり得、又は加圧噴射剤も含むエアロゾル組成物の形態にパッケージされうる。
【0079】
ケラチン物質、例えばまつ毛又は眉毛、のメーキャップの為の組成物は、特に、マスカラ、アイライナー、リップスティック、リキッドファンデーション又はパウダーから選択されうる。
【0080】
一つの実施態様に従うと、本発明に従う組成物は、
少なくとも1種の油、例えば揮発性油、とりわけ揮発性炭化水素系油、及び/又は
少なくとも1種の脂肪物質、例えば25℃で固体である脂肪物質
を含みうる。
【0081】
本発明に従う組成物における様々な構成物の量は、考慮中の当分野において慣用的に使用されている量である。
【0082】
該組成物がエマルションである場合、該脂肪相の割合は、該組成物の総重量に対して、5重量%~80重量%、好ましくは5重量%~50重量%、の範囲でありうる。エマルション形態の組成物において使用される該油、ワックス、乳化剤及び共乳化剤は、該化粧分野で慣用的に使用されるものから選択される。該乳化剤及び該共乳化剤は、組成物中、該組成物の総重量に対して、0.3重量%~30重量%、好ましくは0.5重量%~20重量%、の範囲の割合で存在しうる。
【0083】
該組成物が油性溶液又はゲルである場合、該脂肪相は、該組成物の総重量の90%超となりうる。
【0084】
既知の方式で、本発明の化粧組成物は、該化粧分野において通常であるアジュバント、例えば親水性又は親油性ゲル化剤、親水性又は親油性添加剤、保存剤、抗酸化剤、溶媒、芳香剤、フィラー、スクリーニング剤、臭気吸収剤、及び色素、も含有しうる。これらの様々なアジュバントの量は、該化粧分野で慣用的に使用される量であり、例えば、該組成物の総重量の0.01%~10%である。これらのアジュバントは、それらの性質に応じて、該脂肪相、該水性相及び/又は脂質小球に導入されうる。
【0085】
本発明において使用されうる油又はワックスとして、鉱物油(液体ワセリン)、植物油(シアバターの液体画分、ヒマワリ油)、動物油(ペルヒドロスクアレン)、合成油(ピュアセリン油)、シリコーン油若しくはワックス(シクロメチコン)及びフルオロ油(パーフルオロポリエーテル)、蜜蝋、カルナウバワックス又はパラフィンワックスが言及されうる。脂肪アルコール及び脂肪酸(ステアリン酸)は、これらの油に添加されうる。
【0086】
本発明において使用されうる乳化剤として、例えば、ステアリン酸グリセリル、ポリソルベート60、及びGattefosse社によって名称Tefose(商標)63で販売されているPEG-6/PEG-32/ステアリン酸グリコール混合物が言及されうる。
【0087】
本発明において使用されうる溶媒として、低級アルコール、とりわけエタノール、イソプロパノール及びプロピレングリコール、が言及されうる。
【0088】
本発明において使用されうる親水性ゲル化剤として、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリル系コポリマー、例えばアクリレート/アルキルアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリサッカライド、例えばヒドロキシプロピルセルロース、天然ガム、好ましくはキサンタンガム、及び粘土、が言及され得、親油性ゲル化剤として、変性粘土、例えばベントン、脂肪酸の金属塩、例えばステアリン酸アルミニウム、並びに疎水性シリカ、エチルセルロース及びポリエチレン、が言及されうる。
【0089】
調製プロセス
品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られた、本発明に従うハイブリッドのバラの木の抽出物は、任意の既知の手段によって得られうる。
【0090】
例えば、本発明に従う抽出物は、石油化学から誘導された無極性揮発性溶媒、例えばヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、石油エーテル、プロパン又はブタン、を用いて抽出することによって得られうる。次に、該植物由来の水は、沈殿させることができ、該香料を含有する該溶媒は、真空下で濃縮されて、該抽出された香料抽出物が得られる。本発明に従う抽出物は、蒸気蒸留によって又は水蒸気蒸留によっても得られうる。
【0091】
該抽出物は、該バラの木の全体又は一部を、アルコール溶媒を含む少なくとも1つの浴で浸出することによって得られたアルコール混合物でありうる。
【0092】
超臨界COによる一般的な抽出プロセスは、既知である。COは、該超臨界状態、すなわち、74バール超(特に74.4バール超)及び31℃超(特に31.1℃超)において、非常に特殊な特性を有し、天然抽出溶媒として使用されうる。該得られた流体は、該流体に良好な拡散能を与える高い拡散率(およそガスの拡散率の)、並びに輸送及び抽出の為の高い能力を付与する高密度、によって特徴付けられる。
【0093】
好ましい方式において、本発明に従う、バラの木の抽出物は、とりわけその内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012/085366号パンフレットに記載される変形態様のいずれか1つに従う、該バラの木の全体又は一部の、超臨界COによる抽出プロセスによって得られる。
【0094】
従って、この好ましい実施態様に従うと、該バラの木の抽出物は、該バラの木の全体又は一部のアルコール混合物の超臨界COによる抽出によって得られうる。該アルコール混合物はまた、該バラの木の全体又は一部を、アルコール溶媒を含む少なくとも1つの浴で浸出することによって得られうる。
【0095】
本発明に従う超臨界COによる抽出工程は、静的モード又は動的モードで実施されうる。
【0096】
本発明に従うと、該COは、優先的には、130~200バールの圧力及び35~55℃の温度、更により優先的には150バール及び45℃において、向流モードで使用され、特に、糖、着色物質、及び水を殆ど含まず、少なくとも75%のアルコール価を有するクリアで透明で安定な、新鮮な花及び/又は葉の抽出物を得るのに好適である。
【0097】
有利なことには、本発明に従うプロセスはまた、超臨界COによる抽出の後に得られた該抽出物が、60℃未満の温度での穏やかな加熱を用いて真空下で得られたものとして、或いは支持体、例えば天然油、シアバター、天然グリセロール、又は天然芳香性分子、例えば天然の酢酸ベンジル、天然ゲラニオール若しくは天然ネロリドールの上に濃縮される、工程を含む。
【0098】
本発明に従うアルコール溶媒の例として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール及びイソアミルアルコール、優先的にはエタノール、から選択される天然アルコールが使用され、該アルコールは、より低い沸点を有し(メタノールを除く)、とりわけ、メタノールよりも毒性がはるかに低い。アルコール溶媒は、エタノール溶媒でありうる。
【0099】
最も特には、該アルコール混合物は、アルコール混合物若しくは水性アルコール混合物、又は更には芳香を付与されたアルコール混合物若しくは水性アルコール混合物を得る為に、アルコール溶媒を含む少なくとも1つの浴に、50℃未満の温度で、花、花頂、及び/又は葉を浸出した後に得られうる。
【0100】
本発明に従うと、該花、花頂及び/又は葉は、優先的には室温で、すなわち、15~35℃の温度で、該アルコール溶媒で浸出される。
【0101】
従って、アルコール混合物は、アルコール溶媒を含む少なくとも1つの浴中に、該バラの木の全体又は一部を浸出することによって得られうる。
【0102】
本発明に従う、バラの木の抽出物は、とりわけ、揮発性化合物、特には、シス-3-ヘキセノール、トランス-2-ヘキセノール、Cアルコール、ジエトキシエタノール、メチルヘプテノン、アセチン又は関連化合物、酢酸シス-3-ヘキセニル、酢酸ヘキシル、フェニルアセトアルデヒド、ベンジルアルコール、リナノール、フェニルエチルアルコール、ジアセチン又は関連化合物、酢酸ベンジル、コハク酸ジエチル、テルピネン-4-オール、ネロール、シトロネロール、ゲラニオール、ゲラニアール、システアスピラン、デルタ-エレメン、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、アルファ-コパエン、ベータ-エレメン、クマリン、ヒドロキシエズラン又は異性体、β-カリオフィレン、ジヒドロ-β-イオニン、ジヒドロ-β-イオノール、α-フムレン(jumulene)、γ-ムウロレン、ゲルマクレンD、α-カジネン、β-ビサボレン、γ-カジネン、γ-オイデスモール、β-オイデスモール、α-カジノール、4-オキソ-ジヒドロ-β-イオノール、安息香酸ベンジル、ミリスチン酸エチル、C19アルケン、C19アルカン、パルミチン酸、パルミチン酸エチル、C20アルカン、C21アルカン、リノール酸、リノレン酸、リノール酸エチル、リノレン酸エチル、ステアリン酸エチル、トリコセン、トリコサン、ジヒドロ-β-イオノールエステルから選択される少なくとも1種の化合物、を含みうる。
【0103】
特に、本発明に従う、バラの木の抽出物は、とりわけ、シス-3-ヘキセノール、トランス-2-ヘキセノール、Cアルコール、ジエトキシエタノール、メチルヘプテノン、アセチン又は関連化合物、酢酸シス-3-ヘキセニル、酢酸ヘキシル、フェニルアセトアルデヒド、ベンジルアルコール、リナノール、フェニルエチルアルコール、ジアセチン又は関連化合物、酢酸ベンジル、コハク酸ジエチル、テルピネン-4-オール、ネロール、シトロネロール、ゲラニオール、ゲラニアール、システアスピラン、デルタ-エレメン、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、アルファ-コパエン、ベータ-エレメン、クマリン、ヒドロキシエズラン又は異性体、β-カリオフィレン、ジヒドロ-β-イオニン、ジヒドロ-β-イオノール、α-フムレン、γ-ムウロレン、ゲルマクレンD、α-カジネン、β-ビサボレン、γ-カジネン、γ-オイデスモール、β-オイデスモール、α-カジノール、4-オキソ-ジヒドロ-β-イオノール、安息香酸ベンジル、ミリスチン酸エチル、C19アルケン、C19アルカン、パルミチン酸、パルミチン酸エチル、C20アルカン、C21アルカン、リノール酸、リノレン酸、リノール酸エチル、リノレン酸エチル、ステアリン酸エチル、トリコセン、トリコサン、ジヒドロ-β-イオノールエステルから選択される複数の化合物を含みうる。
【0104】
とりわけ超臨界COによる抽出によって得られた本発明に従う、バラの木の抽出物は、例えば、ゲラニオール、ゲラニアール、ネロール及びシトロネロール、から選択される少なくとも1種の化合物を含みうる。
【0105】
一つの実施態様に従うと、本発明に従う、バラの木の抽出物はまた、シス-又はトランス-テアスピラン、ジヒドロ-ベータ-イオノン、ジヒドロ-ベータ-イオノール、4-オキソジヒドロ-ベータ-イオノール(oxodihydronetaionol)から選択される少なくとも1種の化合物を含みうる。
【0106】
浸出中、該花、花頂及び/又は葉は、該アルコール溶媒中に浸され、且つ穏やかに旋回されうる。
【0107】
有利なことには、該浸出は、閉じた回路において溶媒循環を使用して実施され、すなわち、該溶媒は、とりわけ該花弁を破壊することなく該抽出器に移動させ、該花弁の周囲の該溶媒の飽和領域を回避するように、該花、花頂及び/又は葉上に循環される。従って、該旋回は、飽和度が低く、ひいては該抽出を実施する溶媒を提供する。代替的には、浸出は、処置される花及び/又は葉の量に応じて、付随的又は連続的な幾つかの浴中で実施されうる。
【0108】
例えば、花-葉/アルコール溶媒の最終的な重量/重量比が1:1~1:10、優先的には1:1~1:3の場合、単一浴を準備した後に新しい抽出溶媒を使用してすすぐこと、該花及び/若しくは葉を含む幾つかの浴を準備すること、又は更には該エタノールの低飽和度に起因して、同じ浴内に花及び/若しくは葉を数回流出入させること、が可能である。
【0109】
例えば、有利なことには、アルコールを飽和させる為に、同じアルコール浴中、花及び/又は葉を数回出し入れする、例えば5回出し入れする、ことが実施され得、それによって、アルコールの一次抽出物を濃縮することが可能になる。このことは、該抽出物を得る為の該プロセスが超臨界COによる抽出工程を含む場合、輸送され処置される体積に関して、より経済的であることが分かる。
【0110】
次に、該プロセスに従って、該花、花頂及び/又は葉は、一般的に過度の破砕を回避しながら脱水され、このようにして得られた該アルコール混合物は、濾過されて、約4~10℃の温度で1日から数カ月間冷却し続ける為に好適なアルコール花浸出液が収集される。
【0111】
従って、バラの木の抽出物を得る為のプロセスは、
a)品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られたハイブリッドのバラの木の全体又は一部を、アルコール溶媒、特にエタノール溶媒、を含む少なくとも1つの浴に50℃未満の温度で浸出して、アルコール混合物を得る工程と、
b)任意的に、該アルコール混合物を濾過して、アルコール花浸出液を収集する工程と、
c)該アルコール混合物又は該アルコール花浸出液の、超臨界COによる抽出を実施して、該抽出物を得る工程と
を含みうる。
【0112】
バラの木の抽出物を得る為のプロセスは、
a)品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られたハイブリッドのバラの木の該花、花頂及び/又は葉を摘む工程と、
b)工程a)で用意された該花、花頂及び/又は葉を、アルコール溶媒、特にエタノール溶媒、を含む少なくとも1つの浴に50℃未満の温度で浸出して、アルコール混合物を得る工程と、
c)任意的に、該アルコール混合物を濾過して、アルコール花浸出液を収集する工程と、
d)該アルコール混合物又は該アルコール花浸出液の、超臨界COによる抽出を実施して、該抽出物を得る工程と
を含みうる。
【0113】
化粧的又は治療的指標
品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られた、本発明に従うハイブリッドのバラの木の抽出物は、該瘢痕化及び再上皮化現象を促進し、且つ強化する。
【0114】
従って、本発明に従う抽出物は、とりわけ該再上皮化現象を強化することによって、該皮膚バリアの抵抗性を増大することを可能にする。
【0115】
再上皮化のイン・ビトロモデルにおいて収集された実験データは、該抽出物が、該再上皮化及び移動現象を改善する為に、とりわけ損傷した表皮細胞の蓄積を低減するか、又は更には遅延若しくは予防し、且つ表皮再生をまた改善する為に、効率的な活性剤であることを示している。
【0116】
これらの全ての効果は、本発明者等に、新規な活性組成物を定義することを可能にさせ、その特性は、とりわけ再上皮化と関連する皮膚障害(skin disorders)、とりわけ瘢痕化障害(cicatrization disorders)、に関する、又は皮膚若しくは毛包における該再上皮化プロセスの加齢性欠乏を伴う、ケラチン物質をケアする為に特には有利であり、注目に値することが分かる。
【0117】
該再上皮化プロセスの欠乏は、皮膚の時間生物学的老化又は光誘起老化によって引き起こされうるか、又は悪化しうる。
【0118】
従って本発明は、その主な主題の1つに従うと、品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られたハイブリッドのバラの木の抽出物の、又は該抽出物を含む組成物の、ケラチン物質をケアする為の化粧的使用に関する。
【0119】
特定の実施態様に従うと、考慮される徴候は、老化、とりわけ皮膚老化、に関連しうる徴候である。
【0120】
特に、本発明によって標的化される皮膚老化の徴候は、それが経時的及び/又は光誘起的であるかどうかに関わらず、老化に起因する皮膚の外観、例えば表皮の菲薄化、及び/又は表皮の硬さ、弾力性、密度及び/又は張り、及び/又は皺及び小皺の形成、の全ての改変に関する。
【0121】
従って、該抽出物は、皺、小皺、しなびた皮膚、皮膚の弾力性及び/又は張り及び/又は密度の喪失、皮膚の色つやの輝きの低下、皮膚の紙のような外観、皮膚のたるみ、並びに皮膚のしなびた外観から選択される化粧的徴候を処置及び/又は予防する為の、化粧的使用の状況において組み入れられうる。
【0122】
別の主題に従うと、本発明は、ケラチン物質をケアする為の化粧的方法であって、それを必要としている個体に、少なくとも1つのバラの木の抽出物を活性剤として投与することからなる少なくとも1つの工程を含み、該バラの木が、品種メイチボンと品種デルグラマウエとを交配することによって得られたハイブリッドであることを特徴とする上記化粧的方法に関する。
【0123】
更に別の主題に従うと、本発明は、再上皮化障害、とりわけ瘢痕化、を予防及び/又は処置する為の、該抽出物を含む医薬組成物又は皮膚科学的組成物に関する。
【0124】
代替的には、別の主題に従うと、本発明は、再上皮化障害、とりわけ瘢痕化、を予防及び/又は処置する為の組成物の調製の為の、該抽出物の使用に関する。
【0125】
好ましい実施態様に従うと、本発明に従う抽出物は、局所経路を介して投与されうる。
【0126】
実施例
【0127】
実施例1
白色バラの超臨界CO抽出物の生成
バラのハイブリッド品種は、母系品種(Tchaikovsky(商標)Meichibon)及び父系品種(La Rose du Petit Prince/Rose Synactif by Shisheido(商標)Delgramaue)の2つの品種を制御交配することによって得られる。
【0128】
該母系株はまた、その植物名メイチボンとして知られている。該父系株はまた、その植物名デルグラマウエ(Delgramau)として知られている。
【0129】
「超臨界CO」抽出物を得る為に組み入れられるプロトコールは、特許出願である国際公開第2012/085366号パンフレットに記載されているプロトコールである。
【0130】
簡潔には、このプロトコールは、本発明に従う新鮮な及び/又はわずかにしなびたバラの花、花頂及び/又は葉から抽出物を得ることにあり、該プロトコールは、
a)バラの花、花頂及び/又は葉が、摘まれる工程と、
b)該新しく摘まれた花、花頂及び/又は葉が、エタノール溶媒を含む少なくとも1つの浴に50℃未満の温度、例えば室温、で浸出されて、アルコール混合物(この場合、エタノール混合物)が得られる工程と、
c)該アルコール混合物が濾過されて、アルコール花浸出液が収集される工程と、
d)該アルコール花浸出液の、超臨界COによる抽出(図1中の「COsc抽出」)が、45℃及び150バールの圧力において実施されて、該抽出物が得られる工程と、
e)該抽出物が、中程度の真空(100~500mbar)下で、60℃を超えない温度で濃縮される工程と
を含む。
【0131】
実施例2
ケラチノサイトでの移動及び再上皮化試験
A.材料及び方法
A1.ケラチノサイトの培養及び処置
ケラチノサイトが、96ウェルプレート中の培養培地に播種され、次に移動分析にかけられた(参照名Platypus Oris(商標)Collagen I Coated Plate)。このプレートにおいて、該ウェルは、コラーゲン溶液で飽和され、各ウェルの中心にカバーが置かれ、この領域の細胞接着を予防し、従って人工創傷(移動領域)が形成された。該細胞の接着後、該カバーは廃棄され、該細胞はカルセイン-AMで標識された。30分間のインキュベーションの後、画像が撮られ(T0)、次に、該培地は、該試験抽出物又は該参照物(EGF)を含有する又は含有していない(対照)アッセイ培地で置き換えられた。該細胞がインキュベーションされ、画像分析が、14時間(T14)、18時間(T18)及び24時間(T24)の時点で動態学的に実施された。T14の時点で該画像が撮られる前に、該細胞は、再びカルセイン-AMで標識され、30分間インキュベーションされた。全ての実験条件が、n=3で実施された。
【0132】
A2.移動分析(Migration analysis)
該細胞の移動領域は、0時間、14時間、18時間及び24時間のインキュベーションの後に、高分解能イメージングシステム、INCell Analyzer(商標)2200自動化顕微鏡(GE Healthcare)(4倍レンズ)を用いてモニタリングされ、人工創傷の表面積は、ソフトウェアImage Jで分析された。該人口創傷の表面積(細胞が存在しない中央面積)が、T0時点において、並びに14時間、18時間及び24時間のインキュベーションの後に測定された。該創傷の被覆をモニタリングし、定量する為に、14時間、18時間及び24時間のインキュベーションの後の該損傷の測定は、T0において測定された初期表面積と関連付けられた。該移動に対する該化合物の効果が、未処置対照と比較された。該結果が、下記の表1~表3に示されている。
【0133】
B.結果
該対照条件下では、該正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK:normal human epidermal keratinocytes)の移動は、中庸(moderate)であり、14時間のインキュベーション後、創傷表面積の平均被覆度は41%であった。次の数時間以内に、NHEKの移動が増大して、24時間のインキュベーション後に平均被覆度は55%に達した。
【0134】
この研究の実験条件下では、本発明に従うバラの超臨界CO抽出物(COsc抽出物)は、系における正常ヒトケラチノサイトの移動の刺激を誘発し、それによって、均質な人工創傷の領域を模倣することを可能にする。該抽出物を用いて得られた結果は、驚くべきことに、該正の対照(EGF)を用いて得られたものと同じ大きさである。該正の対照に対して50%の移動加速度が、該移動の最初の1時間以内に観察される。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
上記の表1~表3について、統計的有意性閾値は、下記の通りである。
: 0.01~0.05。有意
**: 0.001~0.01。非常に有意
***: <0.001。極めて有意
【0139】
実施例3
下記の組成を有する抗皺エマルションが調製された。
油相 9%
界面活性剤 2%
メイチボン×デルグラマウエバラのCO抽出物 0.001%
水性相 %
ポリマー 40%
保存剤 0.50%
アルコール 3%
水 適量
【0140】
示されているパーセンテージの値は、該組成物の総重量に対する、重量による質量パーセンテージに対応する。
【0141】
実施例4
第2のハイブリッドのバラの木の抽出物との比較研究
本研究において、本発明に従って、超臨界COによる抽出によって得られたハイブリッドのバラの木メイチボン×デルグラマウエの抽出物は、別のハイブリッドのバラの木Rosa×Centifoliaのプロピレングリコール/水抽出物と比較される。
【0142】
A.材料及び方法
A1.試験された抽出物
該超臨界CO抽出物は、実施例1において既に詳説されている通りに得られる。
【0143】
この実施例を通して使用されるRosa Centifolia花抽出物の該プロピレングリコール/水抽出物(INCI:プロピレングリコール(及び)水(及び)Rosa Centifolia花抽出物)は、GATTEFOSSE SAS(36,chemin de Genas-BP603-F-69804 Saint-Priest Cedex-France)によって市販されている。その特徴は、下記の通りである。
【0144】
【表4】
【0145】
A2.他の試薬
該試験されたケラチノサイトは、5%CO下、37℃で培養されたNHEK細胞(Bioalternatives K593;第3継代)である。該細胞培養培地は、0.25ng/mLの表皮成長因子(EGF:Epidermal Growth Factor)、25μg/mLの下垂体抽出物(EP)及び25μg/mLのゲンタマイシンを補充された、ケラチノサイト-SFM培地である。試行培地は、EGFもEPも含まないことを除いて、前述されたものと同じである。
【0146】
A3.移動分析
該プロトコールは、実施例1において定義されている通りである。
【0147】
回復パーセンテージ(%)は、100-[(創傷回復)/(T0での創傷表面)×100]として定義される。群の間の比較は、両側スチューデントt検定(対なし(unpaired))を用いて達成される。0.05超のp値は、統計的に関連しないとみなされる。0.05以下のp値は、統計的に関連するとみなされ、且つ()とマーク付けされる。0.01以下のp値は、統計的に非常に関連するとみなされ、且つ(**)とマーク付けされる。0.001以下のp値は、統計的に極めて関連するとみなされ、且つ(***)とマーク付けされる。
【0148】
A4.細胞傷害性についての予備試験
該試験された細胞は、試行培地中24時間インキュベーションされたNHEK細胞に対応する。該細胞は、MTTアッセイ(テトラゾリウム塩)及び顕微鏡での形態学的研究の両方において評価される。
【0149】
B.結果
該対照条件下では、該正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)の移動は、中程度であり、14時間のインキュベーション後、創傷表面積の平均被覆度は30%であった。次の数時間以内に、NHEKの移動が増大して、24時間のインキュベーション後に平均被覆度は37%に達した。10ng/mLにおけるEGFは、NHEKの移動を有意に刺激し、この効果は、14時間、18時間、及び24時間のインキュベーションの後に観察される(該未処置試料と比較して、それぞれ221%、223%、208%)。この結果は、期待された結果であり、該研究の正当性を立証する。
【0150】
次に、ハイブリッドのバラの木メイチボン×デルグラマウエの抽出物(本発明に従う)が、0.01%及び0.03%で試験される。該抽出物は、該対照条件と比較した場合、14時間のインキュベーション後、ケラチノサイトの移動を有意に、濃度依存的に、それぞれ141%及び160%、刺激することが見出される。それらの条件下では、該刺激効果は、全てのインキュベーション条件(14時間、18時間、及び24時間)について、類似の大きさのものであることが見出される。
【0151】
下記の表5に、該詳細な結果(14時間のインキュベーションに対応する)が提供されている。
【0152】
その比較として、ハイブリッドのバラの木Rosa×Centifoliaのプロピレングリコール/水抽出物が、0.366%及び1.1%で試験される。この抽出物は、該対照条件と比較した場合、14時間のインキュベーション後、ケラチノサイトの移動を有意に、濃度依存的に抑制することが見出される(それぞれ、該対照条件の50%及び24%)。それらの条件下では、該抑制効果も、全てのインキュベーション条件(14時間、18時間、及び24時間)について、類似の大きさのものであることが見出される。
【0153】
従って、本発明に従うハイブリッドバラ抽出物は、ケラチノサイトの移動に対してイン・ビトロで刺激効果を有し、一方、本発明に属さない別のハイブリッドバラ抽出物は、抑制効果を有することが見出される。
【0154】
【表5】
【0155】
(I)でマーク付けされた抽出物は、本発明に従う、ハイブリッドのバラの木メイチボン×デルグラマウエの抽出物に対応する。
【0156】
「Rosa」としてマーク付けされた抽出物は、ハイブリッドのバラの木Rosa×Centifoliaのプロピレングリコール/水抽出物に対応する。
【0157】
創傷表面値はそれぞれ、3つの画像の平均として計算されている。
【0158】
示されているパーセンテージ値は、該組成物の総重量に対する、重量による質量パーセンテージに対応する。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラの木の抽出物であって、前記バラの木が、品種メイチボン(Meichibon)と品種デルグラマウエ(Delgramaue)とを交配することによって得られたハイブリッドであることを特徴とする、前記バラの木の抽出物。