(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075771
(43)【公開日】2024-06-04
(54)【発明の名称】固形腫瘍を治療するためのチューブリン破壊剤を含む抗体薬物コンジュゲートの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240528BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240528BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240528BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240528BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240528BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240528BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20240528BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20240528BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20240528BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20240528BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240528BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20240528BHJP
A61K 31/537 20060101ALI20240528BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20240528BHJP
A61K 31/366 20060101ALI20240528BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20240528BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20240528BHJP
A61K 31/4164 20060101ALI20240528BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20240528BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20240528BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240528BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61K47/68
A61P35/00
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A61P37/04
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K38/07
A61K38/05
A61K31/165
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A61K31/395
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A61K38/06
A61K31/366
A61K31/427
A61P43/00 111
A61K31/357
A61K31/4164
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A61K39/395 L
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A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K31/365
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052953
(22)【出願日】2024-03-28
(62)【分割の表示】P 2020550674の分割
【原出願日】2019-03-22
(31)【優先権主張番号】62/647,346
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/658,276
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503188759
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カオ,アンソニー,トア
(72)【発明者】
【氏名】ガーディー,シャイラ,ジェーン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】チューブリン破壊剤を含む抗体薬物コンジュゲートを投与するステップを含む、固形腫瘍を治療するための改善された方法を提供する。
【解決手段】式:薬物-リンカー単位-抗体(D-LU-Ab)を有し、式中、Dはチューブリン破壊剤である抗体薬物コンジュゲート剤を、固形腫瘍を治療するのに有効な量で、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、固形腫瘍を治療するための方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2018年3月23日出願の米国特許仮出願第62/647,346号および2018年4月16日出願の米国特許仮出願第62/658,276号(これらの全体が参照により本明細書中に組み入れられる)の優先権の利益を主張する。
本開示の分野
本開示は、一般的に、薬物-リンカー単位-抗体コンジュゲート療法(このとき、薬物はチューブリン破壊剤である)を投与するステップを含む、固形腫瘍の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小管は、細胞分裂および細胞輸送などの多数の細胞プロセスに関与する重要なヘテロ二量体構造体である。微小管の破壊は、G2/M期での細胞周期停止を誘導する。微小管/チューブリン阻害剤は、それらの作用機序に従って、2種類の主要なカテゴリーに分類することができる:チューブリン多量体化を促進して微小管構造を安定化させる薬剤(例えば、パクリタキセル)およびチューブリン多量体化を阻害して微小管構造を不安定化する薬剤(メイタンシノイド、アウリスタチン、ビンブラスチンおよびビンクリスチンなど)(Chen et al., Molecules 22:1281, 2017)。
【0003】
MMAEなどのチューブリン破壊剤は、白血病のための抗体薬物コンジュゲートに用いられてきた。例えば、ブレンツキシマブ・ベドチンは、微小管破壊剤であるモノメチルアウリスタチンEにプロテアーゼ切断可能リンカーによりコンジュゲート化されている抗CD30モノクローナル抗体から構成される抗体-薬物コンジュゲートである。ブレンツキシマブ・ベドチンは、自家幹細胞移植(ASCT)の失敗後またはASCT候補でない患者での少なくとも2回の先行する多剤化学療法レジメンの失敗後の古典的ホジキンリンパ腫患者の治療に関して、および再発/進行のリスクが高いホジキンリンパ腫患者に対するASCT後併用治療として、承認されている。ADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブ・ベドチン)米国処方情報およびADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブ・ベドチン)欧州医薬品製品概要を参照されたい。この薬剤は、少なくとも1回の先行する多剤化学療法レジメンの失敗後の全身性未分化大細胞リンパ腫に関しても承認されている。抗CD30 MMAE ADCは、固形腫瘍で有効であることは示されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chen et al., Molecules 22:1281, 2017
【非特許文献2】ADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブ・ベドチン)米国処方情報
【非特許文献3】ADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブ・ベドチン)欧州医薬品製品概要
【発明の概要】
【0005】
本開示は、チューブリン破壊剤を含む抗体薬物コンジュゲートを投与するステップを含む、固形腫瘍を治療するための改善された方法を提供する。本明細書中には、チューブリン破壊剤が、固形腫瘍細胞中でERストレスタンパク質経路に影響を及ぼし、かつATP分泌、および腫瘍部位への免疫細胞の移動を誘導し、腫瘍生長を減少させる他のERストレス現象を誘導することが開示される。
【0006】
本明細書中には、固形腫瘍を治療するために有効な量で、式:薬物-リンカー単位-抗体(D-LU-Ab;式中、Dはチューブリン破壊剤である)を有する抗体薬物コンジュゲート剤を、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、固形腫瘍を治療するための方法が提供される。
【0007】
また、固形腫瘍中でのアポトーシスを誘導するために有効な量で、式:薬物-リンカー単位-抗体(D-LU-Ab;式中、Dはチューブリン破壊剤である)を有する抗体薬物コンジュゲート剤を投与するステップを含む、固形腫瘍中でのATP放出を調節するための方法も提供される。
【0008】
更に、固形腫瘍中への免疫細胞浸潤を誘導するために有効な量で、式:薬物-リンカー単位-抗体(D-LU-Ab;式中、Dはチューブリン破壊剤である)を有する抗体薬物コンジュゲート剤を、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、固形腫瘍への免疫細胞移動を誘導する方法が、本開示により企図される。
【0009】
別の態様では、本開示は、固形腫瘍中での免疫原性細胞死を誘導するために有効な量で、式:薬物-リンカー単位-抗体(D-LU-Ab;式中、Dはチューブリン破壊剤である)を有する抗体薬物コンジュゲート剤を、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、固形腫瘍での免疫原性細胞死(ICD)を誘導するための方法を提供する。
【0010】
薬物-リンカー単位-抗体(D-LU-Ab)は、本明細書中では、抗体薬物コンジュゲートまたはADCと称される場合もあることが理解される。
【0011】
種々の実施形態では、抗体は、癌細胞の表面上の抗原に結合する。種々の実施形態では、抗体は、CD30、CD19、CD70、CD71、CD20、CD52、CD133、EGFR、HER2、VEGF、VEGFR2、PD-1、PDL1、RANKL、CTLA-4、IL-6、SLAMF7、CD3、TNF-α、PDGFR-α、CD38、GD2、cCLB8、p97、ネクチン-4、またはEpCAMに対して特異的である。
【0012】
種々の実施形態では、チューブリン破壊剤は、ERストレスタンパク質経路を増大させ、ATP分泌を増加させ、かつ高移動度群ボックス1(HMGB1)タンパク質を増加させる。
【0013】
種々の実施形態では、チューブリン破壊剤は、アウリスタチン、チューブリシン、コルヒチン、ビンカアルカロイド、タキサン、クリプトフィシン、メイタンシノイド、ヘミアステルリン、および他のチューブリン破壊剤からなる群より選択される。本方法での使用のために考慮される例示的チューブリン破壊剤は、詳細な説明の中でより詳細に記載される。
【0014】
種々の実施形態では、チューブリン破壊剤は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、およびドラスタチン-10(dolostatin-10)からなる群より選択されるアウリスタチンである。
【0015】
種々の実施形態では、チューブリン破壊剤は、チューブリシンD、チューブフェニルアラニン(tubuphenylalanine)およびチューブチロシン(tubutyrosine)からなる群より選択されるチューブリシンである。
【0016】
種々の実施形態では、チューブリン破壊剤は、コルヒチンおよびCA-4からなる群より選択されるコルヒチンである。
【0017】
種々の実施形態では、チューブリン破壊剤は、ビンブラスチン(VBL)、ビノレルビン(VRL)、ビンクリスチン(VCR)およびビンデシン(VDS)からなる群より選択されるビンカアルカロイドである。
【0018】
種々の実施形態では、チューブリン破壊剤は、パクリタキセルおよびドセタキセルからなる群より選択されるタキサンである。
【0019】
種々の実施形態では、チューブリン破壊剤は、クリプトフィシン-1およびクリプトフィシン-52からなる群より選択されるクリプトフィシンである。
【0020】
種々の実施形態では、チューブリン破壊剤は、メイタンシン、メイタンシノール、メイタンシン類似体、DM1、DM3およびDM4、ならびにアンサマイトシン-2(ansamatocin-2)からなる群より選択されるメイタンシノイドである。
【0021】
種々の実施形態では、チューブリン破壊剤は、ヘミアステルリンおよびHTI-286からなる群より選択されるヘミアステルリンである。
【0022】
種々の実施形態では、チューブリン破壊剤は、タッカロノリドA、タッカロノリドB、タッカロノリドAF、タッカロノリドAJ、タッカロノリドAI-エポキシド、ジスコデルモリド、エポチロンA、エポチロンB、およびラウリマライドからなる群より選択される。
【0023】
種々の実施形態では、固形腫瘍は、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、消化管癌、頭頸部癌、黒色腫、肉腫、食道癌、膵臓癌、転移性膵臓癌、膵臓の転移性腺癌、膀胱癌、胃癌、線維性癌、神経膠腫、悪性神経膠腫、びまん性内在性橋膠腫、再発小児脳新生物、腎細胞癌、明細胞性転移性腎細胞癌、腎癌、前立腺癌、転移性去勢療法抵抗性前立腺癌、ステージIV前立腺癌、転移性黒色腫、黒色腫、悪性黒色腫、皮膚の再発黒色腫、黒色腫脳転移、ステージIIIA皮膚黒色腫;ステージIIIB皮膚黒色腫、ステージIIIC皮膚黒色腫;ステージIV皮膚黒色腫、頭頸部の悪性黒色腫、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、扁平上皮非小細胞肺癌、乳癌、再発転移性乳癌、肝細胞癌、リヒター症候群;ワルデンストレームマクログロブリン血症、成人膠芽腫;成人神経膠肉腫、再発膠芽腫、再発小児横紋筋肉腫、再発ユーイング肉腫/末梢性原始神経外胚葉腫瘍、再発神経芽腫;再発骨肉腫、結腸直腸癌、MSI陽性結腸直腸癌;MSI陰性結腸直腸癌、鼻咽頭非角化癌;再発鼻咽頭未分化癌、子宮頸部腺癌;子宮頸部腺扁平上皮癌;子宮頸部扁平上皮癌;再発子宮頸癌;ステージIVA子宮頸癌;ステージIVB子宮頸癌、肛門管扁平上皮癌;転移性肛門管癌;再発肛門管癌、再発頭頸部癌;頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、卵巣癌、結腸癌、胃癌、進行型GI癌、胃腺癌;胃食道接合部腺癌、骨新生物、軟組織肉腫;骨肉腫、胸腺癌、尿路上皮癌、再発メルケル細胞癌;ステージIIIメルケル細胞癌;ステージIVメルケル細胞癌、骨髄異形成症候群およびセザリー症候群からなる群より選択される。一実施形態では、固形腫瘍は、非リンパ腫固形腫瘍である。一部の実施形態では、固形腫瘍は、多発性骨髄腫であり得る。
【0024】
種々の実施形態では、薬物-リンカー単位-抗体コンジュゲート/抗体薬物コンジュゲートは、プロテアーゼ切断可能リンカー、酸切断可能リンカーまたはジスルフィドリンカーを含む。
【0025】
種々の実施形態では、プロテアーゼ切断可能リンカーは、チオール反応性スペーサーおよびジペプチドを含む。種々の実施形態では、プロテアーゼ切断可能リンカーは、チオール反応性マレイミドカプロイルスペーサー、バリン-シトルリンジペプチド、およびp-アミノ-ベンジルオキシカルボニルスペーサーからなる。
【0026】
種々の実施形態では、酸切断可能リンカーは、ヒドラジンリンカーまたは第4級アンモニウムリンカーである。
【0027】
種々の実施形態では、方法は、被験体に化学療法レジメンを施すステップをさらに含む。
【0028】
種々の実施形態では、化学療法レジメンは、本質的に、併用療法として、ドキソルビシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン(AVD)からなる。他の実施形態では、化学療法レジメンは、本質的に、併用療法として、シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾン(CHP)からなる。
【0029】
種々の実施形態では、抗体薬物コンジュゲートの抗体は、モノクローナル抗体である。種々の実施形態では、抗体は、ヒトまたはヒト化抗体である。
【0030】
種々の実施形態では、抗体は抗CD30抗体であり、抗CD30抗体薬物コンジュゲートは、(i) 配列番号4で示される重鎖CDR1、配列番号6で示される重鎖CDR2、配列番号8で示される重鎖CDR3;ならびに(ii) 配列番号12で示される軽鎖CDR1、配列番号14で示される軽鎖CDR2、および配列番号16で示される軽鎖CDR3を含む。
【0031】
特定の実施形態では、抗体は抗CD30抗体であり、抗CD30抗体薬物コンジュゲートは、(i) 配列番号2で示される重鎖可変領域に対して少なくとも85%同一なアミノ酸配列、および(ii) 配列番号10で示される軽鎖可変領域に対して少なくとも85%同一なアミノ酸配列を含む。アミノ酸可変領域配列が、配列番号2または配列番号10のいずれかに対して90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得ることが企図される。
【0032】
種々の実施形態では、抗体は抗CD30抗体であり、抗体薬物コンジュゲートの抗CD30抗体はキメラ型AC10抗体である。
【0033】
種々の実施形態では、薬物-リンカー単位-抗体コンジュゲート/抗体薬物コンジュゲートは、モノメチルアウリスタチンEおよびプロテアーゼ切断可能リンカーを含む。種々の実施形態では、プロテアーゼ切断可能リンカーは、チオール反応性スペーサーおよびジペプチドを含む。種々の実施形態では、プロテアーゼ切断可能リンカーは、チオール反応性マレイミドカプロイルスペーサー、バリン-シトルリンジペプチド、およびp-アミノ-ベンジルオキシカルボニルスペーサーからなる。
【0034】
種々の実施形態では、抗CD30抗体薬物コンジュゲートは、ブレンツキシマブ・ベドチンである。種々の実施形態では、抗CD30抗体薬物コンジュゲートは、3週間毎に投与される。
【0035】
種々の実施形態では、抗CD30抗体薬物コンジュゲートの抗CD30抗体は、モノクローナル抗CD30抗体である。種々の実施形態では、抗CD30抗体薬物コンジュゲートの抗CD30抗体は、キメラ型AC10抗体である。
【0036】
種々の実施形態では、抗体薬物コンジュゲートは、モノメチルアウリスタチンEおよびプロテアーゼ切断可能リンカーを含む。種々の実施形態では、プロテアーゼ切断可能リンカーは、チオール反応性スペーサーおよびジペプチドを含む。種々の実施形態では、プロテアーゼ切断可能リンカーは、チオール反応性マレイミドカプロイルスペーサー、バリン-シトルリンジペプチド、およびp-アミノ-ベンジルオキシカルボニルスペーサーからなる。
【0037】
種々の実施形態では、抗体は、IgG抗体、好ましくはIgG1またはIgG2抗体である。
【0038】
本明細書中に記載される各特徴もしくは実施形態、または組み合わせは、本発明の態様のうちのいずれかの非限定的な例示的な例であり、したがって、本明細書中に記載されるいずれかの他の特徴もしくは実施形態、または組み合わせと組み合わせ可能であることを意味することが理解される。例えば、特徴が、「一実施形態」、「一部の実施形態」、「特定の実施形態」、「さらなる実施形態」、「具体的な例示的実施形態」、および/または「別の実施形態」などの語句と共に記載される場合、これらのタイプの実施形態のそれぞれが、すべての考えられる組み合わせを列記する必要なしに、本明細書中に記載される、いずれかの他の特徴、または特徴の組み合わせと組み合わせられることが意図される特徴の非限定的な例である。そのような特徴または特徴の組み合わせは、本発明の態様のいずれかに適用される。範囲内に入る値の例が開示される場合、これらの例のうちのいずれかが、ある範囲の考えられる端点として考慮され、そのような端点同士の間のいずれかおよびすべての数値が企図され、かつ上下の端点のいずれかおよびすべての組み合わせが想定される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】MMAEを用いた処理後のERストレスタンパク質誘導のレベルを示す図である。ウエスタンブロットは、タンパク質およびリン酸化のレベルを示す(
図1A)。
図1BはATP分泌のレベルを示し、
図1Cは細胞からのHMGB1放出のレベルを示す。
【
図2】チューブリン破壊剤であるMMAE、ビンクリスチンおよびパクリタキセルに対するERストレス誘導のレベルを示す図である。
図2AはCHOPルシフェラーゼアッセイによるERストレス誘導を示し、
図2Bはin vivoの異種移植モデルでのERストレス誘導を示す。
【
図3-1】MiaPac2膵臓細胞(
図3A、ATP)またはPC-3前立腺腫瘍細胞(
図3B、ATP)での、チューブリン破壊剤であるMMAE、ビンクリスチンおよびパクリタキセルに応答したATP分泌および他の作用を示す図である。
【
図3-2】チューブリン破壊剤であるMMAE、ビンクリスチンおよびパクリタキセルに応答したATP分泌および他の作用を示す図である。MMAEを用いたPC-3細胞の処理は、ERストレス(IRE1およびJNKのリン酸化)(
図3C)、ATPの放出(
図3D)およびHMGB1放出(
図3E)を引き起こす。
【
図4】胸腺欠損ヌードマウスでの、移植されたPC-3細胞および免疫細胞浸潤に対する処理の効果を示す図である。
図4A:樹状細胞;
図4B:マクロファージ浸潤;
図4C:樹状細胞抗原提示;
図4D:マクロファージ抗原提示。
【
図5】胸腺欠損ヌードマウスでの移植されたPC-3細胞に対する、ELISAにより測定した場合のサイトカイン/ケモカイン産生への処理の効果を示す図である。
図5A~5C:それぞれ、MIP-1a、IP-10およびIL-1Bの腫瘍内サイトカインレベル;
図5D~5F:それぞれ、IP-10、GCSF、およびIL-6の末梢循環サイトカインレベル。
【
図6】MMAE、ビンクリスチンおよびパクリタキセルを用いた処理後のHeLa子宮頸癌細胞のウエスタンブロットにより、ERストレス誘導を示す図である。
【
図7A】一群としてのATP放出に対する皮膚細胞固形腫瘍株でのMMAE、ビンクリスチンおよびパクリタキセルを用いた処理の効果を示す図である。
【
図7B】細胞タイプに分けたATP放出に対する皮膚細胞固形腫瘍株でのMMAE、ビンクリスチンおよびパクリタキセルを用いた処理の効果を示す図である。
【
図7C】皮膚癌細胞でのHMGB1放出に対する処理の効果を示す図である。
【
図8】A2058(
図8A)、SK-MEL-5(
図8B)、およびSK-MEL-28(
図8C)皮膚細胞のMMAE処理が、腫瘍細胞株の2/3で抗原提示の増加をもたらし、パクリタキセルよりも堅牢であることを示す図である。
【
図9A】MMAE、ビンクリスチン、パクリタキセルまたは抗p97-MMAEを用いたA2058腫瘍細胞の処理の、試験したサイトカインおよびケモカインに対する効果を示す図である。
【
図9B】MMAE、ビンクリスチン、パクリタキセルまたは抗p97-MMAEを用いたSK-MEL-5腫瘍細胞の処理の、試験したサイトカインおよびケモカインに対する効果を示す図である。
【
図10-1】BxPC3(
図10A)およびHPAFII(
図10B)細胞の抗原提示の増加に対するMMAE、ビンクリスチンおよびパクリタキセルの効果を示す図である。
【
図10-2】BxPC-3細胞での、それぞれ、ATP分泌およびHMGB-1放出を示す図である。
【
図11A】MMAE、ビンクリスチン、パクリタキセルまたは抗p97-MMAEを用いたBxPC3腫瘍細胞の処理の、試験したサイトカインおよびケモカインに対する効果を示す図である。
【
図11B】MMAE、ビンクリスチン、パクリタキセルまたは抗p97-MMAEを用いたHPAFII腫瘍細胞の処理の、試験したサイトカインおよびケモカインに対する効果を示す図である。
【
図12-1】Calu-1(
図12A)、HT1080(
図12B)およびSK-MES-1(
図12C)細胞のMMAE、ビンクリスチン、パクリタキセルまたはp97-MMAE処理の、マクロファージとの共培養後の抗原提示のレベルに対する効果を示す図である。
【
図13】MMAE、ビンクリスチン、パクリタキセルまたはp97-MMAEを用いた処理後のCalu-1細胞でのサイトカインまたはケモカイン誘導のレベルを示す図である。
【
図14】MCF7細胞抗原提示(
図14A)およびサイトカイン/ケモカインン産生(
図14B)に対する、MMAE、MMAE含有ADC(抗CD71 OKT9)、ビンクリスチン、およびパクリタキセルの効果を示す図である。
【
図15】MCF-7乳癌細胞ストレス誘導(
図15A)、ATP分泌(
図15B)およびHMGB1放出(
図15C)に対するMMAEまたはMMAE含有ADC(ラディラツズマブ・ベドチン(Ladiratuzumab vedotin)、SGN-LIV1A)の効果を示す図である。
【
図16】MCF-7乳癌細胞ストレス誘導(
図16A)およびATP分泌(
図16B)に対するMMAE、エリブリン、パクリタキセル、ドセタキセルまたはSGN-LIV1Aの効果を示す図である。
【
図17】胸腺欠損ヌードマウスでの移植されたMCF-7細胞での免疫活性に対するMMAE含有ADCであるSGN-LIV1Aまたは抗CD71-MMAEの効果を示す図である。
図17A:樹状細胞浸潤;
図17B:樹状細胞抗原提示;
図17C:マクロファージ抗原提示;
図17D:IP10レベル;
図17E:RANTESレベル。
【
図18】MMAE、タプシガルギンまたはMMAE含有ADC(エンフォルツマブ・ベドチン(Enfortumab vedotin)、ASG-22ME)を用いて処理されたMDA-MB-468細胞によるATP分泌を示す図である。
【
図19-1】MMAE、チューブリシンM、ビンクリスチン、およびパクリタキセルを用いて処理された細胞の、ATP分泌(
図19A:JHH7;
図19B:Huh7;
図19C:Hep3b)のレベルを示す図である。
【
図19-2】MMAE、チューブリシンM、ビンクリスチン、およびパクリタキセルを用いて処理された、Hep3b(
図19D)、Huh7(
図19E)、およびJHH7(
図19F~19G)上での、共刺激(CD86発現により測定、JHH7)および抗原提示(MHCII発現細胞の頻度により測定)を示す図である。
【
図20A】MMAE、チューブリシンM、ビンクリスチンまたはパクリタキセルを用いたHep3b細胞の処理のサイトカインおよびケモカインのレベルに対する効果を示す図である。
【
図20B】MMAE、チューブリシンM、ビンクリスチンまたはパクリタキセルを用いたHuh7細胞の処理のサイトカインおよびケモカインのレベルに対する効果を示す図である。
【
図20C】MMAE、チューブリシンM、ビンクリスチンまたはパクリタキセルを用いたJHH7細胞の処理のサイトカインおよびケモカインのレベルに対する効果を示す図である。
【
図21】T-24膀胱腫瘍細胞のATP分泌(
図21A)、抗原提示(
図21B)およびサイトカイン/ケモカイン産生(
図21C)に対する、MMAE、MMAE含有ADC(エンフォルツマブ・ベドチン、ASG-22ME)、ビンクリスチン、およびパクリタキセルの効果を示す図である。
【
図22】U-266細胞に対するMMAE、MMAE-ADC(SGN-CD48A)および対照の効果を示す図である。
図22Aは、ホスホ-JNK Thr183/Tyr185(pJNK)、PARP、ATF4、AT6、ホスホ-IRE-1 Ser274(pIRE-1)を用いて行なったウエスタンブロット分析を示し;
図22Bは、細胞傷害性マーカーであるHSP70およびカルレティキュリンについての染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示は、チューブリン破壊剤を含む抗体薬物コンジュゲートを投与するステップを含む、固形腫瘍を治療するための方法を提供する。本明細書中には、チューブリン破壊剤が、固形腫瘍細胞でのERストレスタンパク質経路に影響を及ぼし、ATP分泌および免疫細胞を腫瘍部位へと移動させかつ腫瘍生長を減少させる他のERストレス現象を誘導することが開示される。
定義
特に記載しない限り、本明細書中で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。以下の参考文献は、本発明で用いられる用語のうちの多数の一般的定義を当業者に提供する:Singleton et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY (2d ed. 1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY (Walker ed., 1988);THE GLOSSARY OF GENETICS, 5TH ED., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991);およびHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY (1991)。
【0041】
本明細書中で引用される各刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それが本開示と矛盾しない程度まで、その全体が参照により組み入れられる。
【0042】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」および「the」は、文脈がそうでないことを明らかに示さない限り、複数形の指示対象を含む。つまり、例えば、「誘導体」(a derivative)への言及は、複数のそのような誘導体を含み、「被験体」(a subject)への言及は、1人以上の被験体への言及を含む、などである。
【0043】
種々の実施形態の説明が用語「含む」(comprising)を用いる場合、一部の具体的な例では、実施形態は代替的に語句「本質的に~からなる」または「からなる」を用いて記載することができることを当業者は理解するであろうことが、さらに理解されるべきである。
【0044】
別途定義されない限り、本明細書中で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと類似するかまたは同等な方法および材料を、開示される方法および組成物の実践で用いることができるが、例示的方法、装置および材料が、本明細書中に記載される。
【0045】
「治療上有効量」または「~するために有効な量」とは、本明細書中で用いる場合、健康に対して意図される有益な作用を生じるために有効な薬剤の量を意味する。
【0046】
用語「固形腫瘍」とは、本明細書中で用いる場合、通常は嚢胞または液体領域を含まない、組織の異常な塊を意味する。固形腫瘍は、良性または悪性であり得る。様々なタイプの固形腫瘍が、それらを形成する細胞のタイプに由来する名称を有する。固形腫瘍は、肉腫(sarcoma)および癌腫(carcinoma)を含む。肉腫とは、血管、骨、脂肪組織、靭帯、リンパ管、筋肉または腱の中の腫瘍を意味する。癌腫とは、上皮細胞中に形成される腫瘍を意味する。固形腫瘍は非リンパ腫固形腫瘍であることが企図される。
【0047】
用語「チューブリン破壊剤」とは、微小管機能を阻害する薬剤を意味する。チューブリン破壊剤は、それらの作用機序に従って、2種類の主要なカテゴリーに分類することができる:チューブリン多量体化を促進して微小管構造を安定化させる薬剤、およびチューブリン多量体化を阻害して微小管構造を不安定化する薬剤。例示的なチューブリン破壊剤は、詳細な説明の中でより詳細に記載される。
【0048】
用語「免疫細胞移動」とは、本明細書中で用いる場合、末梢血単核細胞、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、顆粒球等をはじめとする免疫細胞の、腫瘍部位への、または腫瘍部位からの移動を意味する。
【0049】
用語「治療する」、「治療すること」または「治療」とは、文脈により別途示されない限り、治療的処置および疾患の進行または再発を防止するための予防的手段を意味し、この場合、目的は、癌の発達または分散などの、望ましくない生理学的変化もしくは障害を阻害または遅延(低減)させることである。有益または望まれる臨床的結果としては、限定するものではないが、検出可能か検出不可能かにかかわらず、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患進行の遅延または鈍化、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的または完全にかかわらず)が挙げられる。「治療」とは、治療を受けなかった場合に予測される生存と比較して、延長された生存を意味することもできる。治療が必要な対象としては、状態または障害を既に有する対象、および状態または障害を有する傾向がある対象が挙げられる。用語「治療すること」としては、以下のうちのいずれかまたは全部が挙げられる:腫瘍細胞、癌細胞、または腫瘍の増殖を阻害すること;腫瘍細胞もしくは癌細胞の複製を阻害すること、腫瘍全体量を減少させること、または癌性細胞数を減少させること、および疾患に関連する1種以上の症状を改善させること。
【0050】
「患者」または「被験体」の例としては、限定するものではないが、ヒト、ラット、マウス、モルモット、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、鳥類および家禽が挙げられる。例示的実施形態では、患者はヒトである。
【0051】
用語「製薬上許容される」とは、本明細書中で用いる場合、合理的な利益/リスク比に見合う、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織との接触に対して好適である、化合物、材料、組成物、および/または剤型を意味する。用語「薬学的に適合する成分」とは、それらと一緒に抗体-薬物コンジュゲートが投与される、製薬上許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを意味する。
【0052】
用語「特異的結合性」および「特異的に結合する」とは、抗CD30抗体が、高度に選択的な様式で、その対応する標的であるCD30と反応し、多数の他の抗原とは反応しないであろうことを意味する。
【0053】
用語「モノクローナル抗体」とは、いずれかの真核細胞もしくは原核細胞クローン、またはファージクローンをはじめとする単一細胞クローンに由来する抗体を意味し、それを作製する方法を意味しない。つまり、用語「モノクローナル抗体」は、本明細書中で用いる場合、ハイブリドーマ技術を通じて作製された抗体に限定されない。
【0054】
用語「同一である」または「同一性パーセント」とは、2種類以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈中で、同じであるか、または比較および最大対応性のためにアライメントした場合に同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基の明記される割合(%)を有する、2種類以上の配列または部分配列を意味する。同一性パーセントを決定するために、配列同士を、最適な比較の目的のためにアライメントする(例えば、第2のアミノ酸または核酸配列との最適なアライメントのために、第1のアミノ酸または核酸配列の配列中にギャップを挿入することができる)。続いて、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置で、アミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占められている場合、当該位置で分子は同一である。2種類の配列間の同一性パーセントは、該配列により共有される同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一位置数/位置の総数(例えば、重複する位置)×100)。特定の実施形態では、2つの配列は同じ長さである。
【0055】
用語「実質的に同一な」とは、2つの核酸またはポリペプチドの文脈中では、少なくとも70%または少なくとも75%の同一性;より典型的には少なくとも80%または少なくとも85%の同一性;さらにより典型的には少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性(例えば、下記の方法のうちの1種類を用いて決定される場合)を有する、2種類以上の配列または部分配列を意味する。
【0056】
2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。2つの配列の比較のために用いられる数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268のアルゴリズム(Karlin and Altschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877の通りに改変)である。そのようなアルゴリズムは、Altschul, et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、対象となるタンパク質をコードする核酸に類似するヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて行なうことができる。BLASTタンパク質検索は、対象となるタンパク質に類似するアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行なうことができる。比較の目的のためにギャップ入りアライメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschul et al., 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載される通りに用いることができる。あるいは、PSI-Blastを、分子間の距離関係を検出する反復検索を行なうために用いることができる(上掲)。配列の比較のために用いられる数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、Myers and Miller, CABIOS (1989)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)へと組み込まれている。配列分析のための別のアルゴリズムは、当技術分野で公知であり、Torellis and Robotti, 1994, Comput. Appl. Biosci. 10:3-5に記載されるADVANCEおよびADAM;ならびにPearson and Lipman, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444-8に記載されるFASTAが挙げられる。あるいは、タンパク質配列アライメントは、Higgins et al., 1996, Methods Enzymol. 266:383-402に記載される通りに、CLUSTAL Wアルゴリズムを用いて実行することができる。
【0057】
略語「MMAE」とは、モノメチルアウリスタチンEを意味する。
【0058】
略語「vc」および「val-cit」とは、ジペプチドバリン-シトルリンを意味する。
【0059】
略語「PAB」とは、以下の自己犠牲スペーサーを意味する:
【0060】
【化1】
略語「MC」とは、以下のストレッチャーマレイミドカプロイルを意味する:
【0061】
【化2】
cAC10-MC-vc-PAB-MMAEとは、MC-vc-PABリンカーを介して薬物MMAEにコンジュゲート化されたキメラ型AC10抗体を意味する。
【0062】
抗CD30 vc-PAB-MMAE抗体-薬物コンジュゲートとは、米国特許第9,211,319号の式(I)に示される通りのジペプチドバリン-シトルリンおよび自己犠牲スペーサーPABを含むリンカーを介して薬物MMAEにコンジュゲート化された抗CD30抗体を意味する。
【0063】
抗体
本開示の抗体は、好ましくはモノクローナルであり、多重特異的、ヒト、ヒト化またはキメラ型抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab')断片、Fab発現ライブラリーにより生成される断片、および上記のうちのいずれかの抗原結合性断片であり得る。用語「抗体」とは、本明細書中で用いる場合、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、CD30に免疫特異的に結合する抗原結合性部位を含む分子を意味する。本開示の免疫グロブリン分子は、いずれかのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子のものであり得る。
【0064】
本開示の特定の実施形態では、抗体は、本開示のヒト抗原結合性抗体断片であり、限定するものではないが、Fab、Fab'およびF(ab')2、Fd、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fvs(sdFv)およびVLまたはVHドメインのいずれかを含む断片が挙げられる。単鎖抗体をはじめとする抗原結合性抗体断片は、可変領域を単独で、または、ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3およびCLドメインの全体もしくは一部分と組み合わせて含むことができる。ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3およびCLドメインとの可変領域のいずれかの組み合わせも含む抗原結合性断片もまた、本開示に含められる。好ましくは、抗体は、ヒト、ネズミ(例えば、マウスおよびラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリである。本明細書中で用いる場合、「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、ヒトB細胞から、または下記および、例えば、米国特許第5,939,598号にKucherlapatiらにより記載される通りの、1種以上のヒト免疫グロブリンに関してトランスジェニックな動物から単離される抗体が挙げられる。
【0065】
本開示の抗体は、単一特異的、二重特異的、三重特異的またはそれ以上の多重特異性のものであり得る。多重特異的抗体は、CD30の異なるエピトープに対して特異的であり得、またはCD30ならびに異種タンパク質の両方に対して特異的であり得る。例えば、国際公開第93/17715号;同第92/08802号;同第91/00360号;同第92/05793号;Tutt, et al., 1991, J. Immunol. 147:60-69;米国特許第4,474,893号;同第4,714,681号;同第4,925,648号;同第5,573,920号;同第5,601,819号;Kostelny et al., 1992, J. Immunol. 148:1547-1553を参照されたい。
【0066】
本開示の抗体は、それらが含む特定のCDRに関して記載または明示することができる。本開示は、抗体または重鎖もしくは軽鎖可変ドメインを含むその誘導体を包含し、該可変ドメインは、(a) CDRのセットが所望のモノクローナル抗体由来である3つのCDRのセット、および(b) フレームワーク領域のセットが所望のモノクローナル抗体中のフレームワーク領域のセットとは異なり、かつ該抗体またはその誘導体が標的抗原に免疫特異的に結合する、4つのフレームワーク領域のセットを含む。
【0067】
種々の実施形態では、抗体は、癌細胞の表面上の抗原に結合する。種々の実施形態では、抗体は、CD30、CD19、CD70、CD71、CD20、CD52、CD133、EGFR、HER2、VEGF、VEGFR2、PD-1、PDL1、RANKL、CTLA-4、IL-6、SLAMF7、CD3、TNF-α、PDGFR-α、CD38、GD2、cCLB8、p97、ネクチン-4、またはEpCAMに対して特異的である。
【0068】
本明細書中での使用のために企図される抗CD19抗体は、例えば、米国特許第9,073,993号に開示されている。本明細書中での使用のために企図される抗CD70抗体は、例えば、米国特許第9,345,785号に開示されている。癌関連抗原に結合する他の抗体は当技術分野で公知であり、限定するものではないが、リツキシマブ、アダリムマブ、アレムツズマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、イブリツモマブ・チウキセタン、セツキシマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ、オファツムマブ、イピリムマブ、ブレンツキシマブ・ベドチン、ペルツズマブ、アドトラスツズマブ・エムタンシン、オビヌツズマブ、ラムシルマブ、ペムブロリズマブ、トシツモマブ、ニボルマブ、ジヌツキシマブ、ダラツムマブ、ネシツムマブ、エロツズマブおよびアテゾリズマブが挙げられる。
【0069】
当技術分野で公知のマウス抗CD30 mAbは、ホジキン病(HD)細胞株または精製されたCD30抗原を用いたマウスの免疫化により生成されている。元々はC10と称されたAC10(Bowen et al., 1993, J. Immunol. 151:5896-5906)は、この抗CD30 mAbが、ヒトNK様細胞株であるYTに対して調製された点で異なる(Bowen et al., 1993, J. Immunol. 151:5896-5906)。当初、このmAbのシグナル伝達活性は、CD28およびCD45分子の細胞表面発現のダウンレギュレーション、細胞表面CD25発現のアップレギュレーションならびにC10のYT細胞に対する結合に続く同型接着の誘導により明らかになった。AC10抗体の配列は、配列番号1~16および下記の表Aに示される。キメラ型AC10抗体を開示する、参照により本明細書中に組み入れられる米国特許第7,090,843号もまた参照されたい。
【0070】
一態様では、本開示の抗体は、CD30に免疫特異的に結合し、悪性細胞に対する細胞静止作用および細胞毒性作用を発揮する。特定の実施形態では、本開示の抗体は、AC10の1種以上のCDRを含む。
【0071】
具体的な実施形態では、本開示は、抗CD30抗体または重鎖可変ドメインを含むその誘導体を包含し、該可変ドメインは、(a) CDRのセットが配列番号4、6、または8を含む3つのCDRのセット、および(b) フレームワーク領域のセットがモノクローナル抗体AC10中のフレームワーク領域のセットとは異なり、かつ該抗体またはその誘導体がCD30に免疫特異的に結合する、4つのフレームワーク領域のセット、を含む。
【0072】
種々の実施形態では、本発明は、抗体または軽鎖可変ドメインを含むその誘導体を包含し、該可変ドメインは、(a) CDRのセットが配列番号12、14または16を含む3つのCDRのセット、および(b) フレームワーク領域のセットがモノクローナル抗体AC10中のフレームワーク領域のセットとは異なり、かつ該抗体またはその誘導体がCD30に免疫特異的に結合する、4つのフレームワーク領域のセット、を含む。
【0073】
加えて、本開示の抗体はまた、それらの一次構造に関して記載または明示され得る。公知の抗体(例えば、AC10)の可変領域に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%および最も好ましくは少なくとも98%の同一性(当技術分野で公知の方法および本明細書中に記載される方法を用いて算出される場合)を有する抗体もまた、本発明の方法に含められる。本開示の抗体はまた、標的抗原に対するそれらの結合親和性に関して記載または明示され得る。好ましい結合親和性としては、5×102M、10-2M、5×10-3M、10-3M、5×10-4M、10-4M、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×10-14M、10-14M、5×10-15M、または10-15M、未満の解離定数またはKdを有するものが挙げられる。
【0074】
抗体はまた、修飾され、すなわち、共有結合が標的抗原への抗体の結合を妨げないような、抗体へのいずれかのタイプの分子の共有結合により修飾されている誘導体も含む。例えば、限定するものではないが、抗体誘導体としては、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護基(protecting/blocking group)による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への連結等により、修飾されている抗体が挙げられる。多数の化学的修飾のうちのいずれかを、限定するものではないが、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成等をはじめとする公知の技術により、行なうことができる。加えて、誘導体は、1個以上の非古典的アミノ酸を含有することができる。
【0075】
本発明での使用のために企図される抗体は、当技術分野で公知のいずれかの好適な方法により作製することができる。
【0076】
本開示はさらに、限定するものではないが、本開示のタンパク質およびその断片をはじめとするタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。本明細書中で企図される核酸は、好ましくは、CD30に結合し、かつHD細胞に対して細胞毒性作用または細胞静止作用を発揮する抗体の1個以上のCDRをコードする。本発明の例示的核酸は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号11、配列番号13、または配列番号15を含む。本発明の可変領域核酸は、配列番号1または配列番号9を含む(表Aを参照されたい)。
【0077】
種々の実施形態では、抗体は、IgG抗体、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体、好ましくはIgG1抗体である。
【0078】
抗体-薬物コンジュゲート
固形腫瘍を治療するための、チューブリン破壊剤を含む薬物-リンカー単位-抗体コンジュゲート、または抗体薬物コンジュゲートの使用が、本明細書中で考慮される。
【0079】
チューブリン破壊剤の数種類の異なるカテゴリーが当技術分野で公知であり、アウリスタチン、チューブリシン、コルヒチン、ビンカアルカロイド、タキサン、クリプトフィシン、メイタンシノイド、ヘミアステルリン、および他のチューブリン破壊剤が挙げられる。
【0080】
アウリスタチンは、天然の産物であるドラスタチンの誘導体である。例示的なアウリスタチンとして、ドラスタチン-10(dolostatin-10)、MMAE(N-メチルバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-ノルエフェドリン)およびMMAF(N-メチルバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-フェニルアラニン)およびAFPが挙げられる。国際公開第2015/057699号は、MMAEをはじめとするPEG化アウリスタチンを記載する。使用のために企図されるさらなるドラスタチン(dolostatin)誘導体が、参照により本明細書中に組み入れられる米国特許第9,345,785号に開示される。
【0081】
チューブリシンとしては、限定するものではないが、チューブリシンD、チューブリシンM、チューブフェニルアラニン(tubuphenylalanine)およびチューブチロシン(tubutyrosine)が挙げられる。国際公開第2017/096311号および同第2016/040684号は、チューブリシンMをはじめとするチューブリシン類似体を記載する。
【0082】
コルヒチンとしては、限定するものではないが、コルヒチンおよびCA-4が挙げられる。
【0083】
ビンカアルカロイドとしては、限定するものではないが、ビンブラスチン(VBL)、ビノレルビン(VRL)、ビンクリスチン(VCR)およびビンデシン(VDS)が挙げられる。
【0084】
タキサンとしては、限定するものではないが、パクリタキセルおよびドセタキセルが挙げられる。
【0085】
クリプトフィシンとしては、限定するものではないが、クリプトフィシン-1およびクリプトフィシン-52が挙げられる。
【0086】
メイタンシノイドとしては、限定するものではないが、メイタンシン、メイタンシノール、メイタンシン類似体、DM1、DM3およびDM4、ならびにアンサマイトシン-2(ansamatocin-2)が挙げられる。例示的メイタンシノイド薬物部分としては、C-19-デクロロ(米国特許第4,256,746号)(アンサマイトシンP2の水素化アルミニウムリチウム還元により調製される);C-20-ヒドロキシ(またはC-20-デメチル)+/-C-19-デクロロ(米国特許第4,361,650号および同第4,307,016号)(ストレプトミセス属もしくはアクチノミセス属を用いる脱メチル化またはLAHを用いる脱塩素化により調製される);およびC-20-デメトキシ、C-20-アシルオキシ(--OCOR)、+/-デクロロ(米国特許第4,294,757号)(塩化アシルを用いるアシル化により調製される)などの修飾型芳香環を有するもの、ならびに他の位置での修飾を有するものが挙げられる。
【0087】
メイタンシノイド薬物部分としてはまた、以下のものなどの修飾を有するものも挙げられる:C-9-SH(米国特許第4,424,219号)(H.sub.25またはP.sub.2S.sub.5とのメイタンシノールの反応により調製される);C-14-アルコキシメチル(デメトキシ/CH.sub.2OR)(米国特許第4,331,598号);C-14-ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CH.sub.2OHまたはCH.sub.2OAc)(米国特許第4,450,254号)(ノカルジア菌から調製される);C-15-ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(ストレプトミセス属によるメイタンシノールの変換により調製される);C-15-メトキシ(米国特許第4,313,946号および同第4,315,929号)(トレウィア・ヌディフローラ(Trewia nudlflora)から単離される);C-18-N-デメチル(米国特許第4,362,663号および同第4,322,348号)(ストレプトミセス属によるメイタンシノールの脱メチル化により調製される);および4,5-デオキシ(米国特許第4,371,533号)(メイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元により調製される)。HER-2に結合するTA.1-メイタンシノイド(TA.1-maytansonoid)コンジュゲート(Chari et al., Cancer Research 52:127-131 (1992))の細胞傷害性が、ヒト乳癌細胞株SK-BR-3に対してin vitroで試験された。薬物コンジュゲートは、遊離メイタンシノイド薬物と類似の細胞毒性の程度を達成し、これは、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増加させることにより増大させることができた。
【0088】
ヘミアステルリンとしては、限定するものではないが、ヘミアステルリンおよびHTI-286が挙げられる。
【0089】
他のチューブリン破壊剤としては、タッカロノリドA、タッカロノリドB、タッカロノリドAF、タッカロノリドAJ、タッカロノリドAI-エポキシド、ジスコデルモリド、エポチロンA、エポチロンB、およびラウリマライドが挙げられる。
【0090】
本明細書中の方法での使用のために企図される薬物-リンカー単位-抗体、または抗体薬物コンジュゲートは、リンカー単位を含む。典型的には、ADCまたはADC誘導体は、治療剤と抗体またはその誘導体との間にリンカー領域を含む。リンカーは、プロテアーゼ切断可能リンカー、酸切断可能リンカー、ジスルフィドリンカー、自己安定化リンカーであり得る。種々の実施形態では、リンカーは、細胞内条件下で切断可能であり、それにより、リンカーの切断が、細胞内環境中に抗体から治療剤を放出する。
【0091】
例えば、一部の実施形態では、リンカーは、細胞内環境中(例えば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラ内)に存在する切断剤により切断可能である。リンカーは、例えば、限定するものではないが、リソソームまたはエンドソームプロテアーゼをはじめとする、細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素により切断される、ペプチジルリンカーであり得る。典型的には、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長または少なくとも3アミノ酸長である。切断剤としては、カテプシンBおよびDならびにプラスミンが挙げられ、これらのすべてが、ジペプチド薬物誘導体を加水分解して、標的細胞内部での活性薬物の放出をもたらすことが公知である(例えば、Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123を参照されたい)。最も典型的なものは、抗原提示細胞中に存在する酵素により切断可能なペプチジルリンカーである。例えば、癌性組織中で高度に発現されるチオール依存性プロテアーゼであるカテプシン-Bにより切断可能なペプチジルリンカーを用いることができる(例えば、Phe-LeuまたはGly-Phe-Leu-Glyリンカー)。他のそのようなリンカーが、例えば、米国特許第6,214,345号に記載されている。具体的な実施形態では、細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチジルリンカーは、Val-CitリンカーまたはPhe-Lysリンカーである(例えば、val-citリンカーを用いるドキソルビシンの合成を記載する米国特許第6,214,345号を参照されたい)。治療剤の細胞内タンパク質分解放出を用いる1つの利点は、コンジュゲート化されているときには薬剤が典型的には弱力化されること、およびコンジュゲートの血清安定性が典型的には高いことである。米国特許第9,345,785号も参照されたい。
【0092】
用語「細胞内で切断される」および「細胞内切断」とは、それにより、薬物部分(D)と抗体単位との間の共有結合(例えば、リンカー)が破壊されて、遊離薬物、または細胞内で抗体から解離するコンジュゲートの他の代謝産物が生じる、抗体薬物コンジュゲートに対する細胞内部での代謝的プロセスまたは反応を意味する。薬物-リンカー単位-Abコンジュゲートの切断された部分は、つまり、細胞内代謝産物である。
【0093】
種々の実施形態では、切断可能リンカーはpH感受性であり、すなわち、特定のpH値での加水分解に対して感受性である。典型的には、pH感受性リンカーは、酸性条件下で加水分解可能である。例えば、リソソーム中で加水分解可能な酸不安定リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シス-アコニット酸アミド、オルトエステル、アセタール、ケタール等)を用いることができる(例えば、米国特許第5,122,368号;同第5,824,805号;同第5,622,929号;Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123;Neville et al., 1989, Biol. Chem. 264:14653-14661を参照されたい)。そのようなリンカーは、血中などの中性pH条件下では相対的に安定であるが、リソソームのおおよそのpHであるpH5.5または5.0未満では不安定である。特定の実施形態では、加水分解可能リンカーは、チオエーテルリンカーである(例えば、アシルヒドラゾン結合を介して治療剤に連結したチオエーテルなど(例えば、米国特許第5,622,929号を参照されたい))。
【0094】
種々の実施形態では、リンカーは、還元性条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。様々なジスルフィドリンカーが公知であり、例えば、SATA(N-スクシンイミジル-5-アセチルチオアセタート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチラート)およびSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)-、SPDBおよびSMPTを用いて形成できるものが挙げられる(例えば、Thorpe et al., 1987, Cancer Res. 47:5924-5931;Wawrzynczak et al., In Immunoconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C. W. Vogel ed., Oxford U. Press, 1987)を参照されたい。米国特許第4,880,935号もまた参照されたい)。
【0095】
種々の実施形態では、リンカーは、マロナートリンカー(Johnson et al., 1995, Anticancer Res. 15:1387-93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al., 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1299-1304)、または3'-N-アミド類似体(Lau et al., 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1305-12)である。
【0096】
一部の実施形態では、リンカー単位は切断可能ではなく、薬物は抗体分解により放出される(米国特許出願公開第2005/0238649号を参照されたい)。
【0097】
種々の実施形態では、リンカーは、細胞外環境に対して実質的に感受性でない。本明細書中で用いる場合、「細胞外環境に対して実質的に感受性でない」とは、リンカーの文脈では、ADCまたはADC誘導体が細胞外環境中(例えば、血漿中)に存在する場合に、ADCまたはADC誘導体のサンプル中の、約20%以下、典型的には約15%以下、より典型的には約10%以下、さらにより典型的には約5%以下、約3%以下、または約1%以下のリンカーが切断されることを意味する。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性でないか否かは、例えば、(a) ADCまたはADC誘導体(「ADCサンプル」)および(b) 等モル量の未コンジュゲート化抗体または治療剤(「対照サンプル」)の両方を、所定の時間(例えば、2、4、8、16、または24時間)にわたって独立に血漿と共にインキュベートするステップ、続いて、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定して、ADCサンプル中に存在する未コンジュゲート化抗体または治療剤の量を、対照サンプル中に存在するものと比較するステップにより、決定することができる。
【0098】
種々の実施形態では、リンカーは、細胞内在化を促進する。特定の実施形態では、リンカーは、治療剤にコンジュゲート化された場合に(すなわち、本明細書中に記載されるADCまたはADC誘導体のリンカー-治療剤部分の環境で)、細胞内在化を促進する。また他の実施形態では、リンカーは、薬物および抗原特異的抗体またはその誘導体の両方にコンジュゲート化された場合に(すなわち、本明細書中に記載されるADCまたはADC誘導体の環境で)、細胞内在化を促進する。
【0099】
本発明の組成物および方法と共に用いることができる様々なリンカーが、国際公開第2004/010957号(発明の名称「Drug Conjugates and Their Use for Treating Cancer, An Autoimmune Disease or an Infectious Disease」、2003年7月31日出願)に記載されている。
【0100】
種々の実施形態では、プロテアーゼ切断可能リンカーは、チオール反応性スペーサーおよびジペプチドを含む。一部の実施形態では、プロテアーゼ切断可能リンカーは、チオール反応性マレイミドカプロイルスペーサー、バリン-シトルリンジペプチド、およびp-アミノ-ベンジルオキシカルボニルスペーサーからなる。
【0101】
種々の実施形態では、酸切断可能リンカーは、ヒドラジンリンカーまたは第4級アンモニウムリンカーである。
【0102】
マレイミド基を含む自己安定化リンカーは、参照により本明細書中に組み入れられる米国特許第9,504,756号に記載される。
【0103】
種々の実施形態では、アウリスタチンなどのチューブリン破壊剤は、参照により本明細書中に組み入れられる米国特許第9,463,252号に記載されるリンカー単位とアミド結合を形成するC末端カルボキシル基により、リンカーにコンジュゲート化される。種々の実施形態では、リンカー単位は、少なくとも1個のアミノ酸を含む。N,N-ジアルキルアウリスタチンのバインダー-薬物コンジュゲート(ADC)が、米国特許第8,992,932号に開示されている。
【0104】
種々の実施形態では、リンカーは、ストレッチャー単位および/またはアミノ酸単位も含む。例示的ストレッチャー単位およびアミノ酸単位は、それぞれが参照により本明細書中に組み入れられる米国特許第9,345,785号および同第9,078,931号に記載される。
【0105】
種々の実施形態では、vc-PABリンカーを介してMMAEに共有結合される抗CD30抗体を含む抗体薬物コンジュゲートの使用が、本明細書中に提供される。抗体薬物コンジュゲートは、医薬組成物として被験体に送達される。CD30抗体薬物コンジュゲートは、参照により本明細書中に組み入れられる米国特許第9,211,319号に記載される。
【0106】
種々の実施形態では、本発明の薬物-リンカー単位-抗体/抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式またはその製薬上許容される塩を有する:
【0107】
【化3】
(式中、mAbは、抗CD30または抗CD19抗体などのモノクローナル抗体であり、Sは抗体の硫黄原子であり、A-はストレッチャー単位であり、pは約3~約5である)。
【0108】
薬物搭載量(drug loading)は、医薬組成物中の抗体当たりの薬物分子の平均数であるpにより表わされる。例えば、pが約4である場合、医薬組成物中に存在する抗体のすべてを考慮した平均薬物搭載量が、約4である。pは、約3~約5、より好ましくは約3.6~約4.4、さらにより好ましくは約3.8~約4.2の範囲である。pは、約3、約4、または約5であり得る。コンジュゲート化反応の調製物中の抗体当たりの薬物の平均数は、質量分析、ELISAアッセイ、およびHPLCなどの慣用の手段により特性決定することができる。pに関する抗体-薬物コンジュゲートの定量的分布もまた決定することができる。一部の例では、pが特定の値である均一な抗体-薬物コンジュゲートの、他の薬物搭載量を有する抗体-薬物コンジュゲートからの分離、精製、および特性決定を、逆相HPLCまたは電気泳動などの手段により達成することができる。
【0109】
ストレッチャー単位(A)は、抗体のスルフヒドリル基を介して、バリン-シトルリンアミノ酸単位に抗体単位を連結することが可能である。スルフヒドリル基は、例えば、抗原特異的抗体の鎖間ジスルフィド結合の還元により、生成させることができる。例えば、ストレッチャー単位は、抗体の鎖間ジスルフィド結合の還元から生じる硫黄原子を介して、抗体に連結されることができる。一部の実施形態では、ストレッチャー単位は、抗体の鎖間ジスルフィド結合の還元から生じる硫黄原子を介して、抗体だけに連結される。一部の実施形態では、スルフヒドリル基は、2-イミノチオラン(トラウト試薬)または他のスルフヒドリル生成試薬との、抗体のリジン部分のアミノ基の反応により生成することができる。特定の実施形態では、抗体は、組み換え抗体であり、1個以上のリジンを有するように遺伝子操作されている。特定の他の実施形態では、組み換え抗体は、追加のスルフヒドリル基(例えば、追加のシステイン)を有するように遺伝子操作される。
【0110】
MMAEの合成および構造は、その全体がすべての目的のために参照により本明細書中に組み入れられる米国特許第6,884,869号に記載されている。例示的ストレッチャー単位の合成および構造ならびに抗体薬物コンジュゲートの作製方法は、例えば、それぞれがその全体で参照により本明細書中に組み入れられる米国特許出願公開第2006/0074008号および同第2009/0010945号に記載されている。
【0111】
代表的ストレッチャー単位は、米国特許第9,211,319号の式IIIaおよびIIIbの角括弧内に記載されており、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0112】
種々の実施形態では、抗体薬物コンジュゲートは、モノメチルアウリスタチンEおよびプロテアーゼ切断可能リンカーを含む。プロテアーゼ切断可能リンカーは、チオール反応性スペーサーおよびジペプチドを含むことが企図される。種々の実施形態では、プロテアーゼ切断可能リンカーは、チオール反応性マレイミドカプロイルスペーサー、バリン-シトルリンジペプチド、およびp-アミノ-ベンジルオキシカルボニルスペーサーからなる。
【0113】
好ましい実施形態では、抗体薬物コンジュゲートは、ブレンツキシマブ・ベドチンであり、これは、以下の構造を有する抗体-薬物コンジュゲートである:
【0114】
【化4】
ブレンツキシマブ・ベドチンは、以下の3種類の構成要素からなるCD30標的化抗体-薬物コンジュゲートである:(i) ヒトCD30に対して特異的なキメラ型IgG1抗体cAC10、(ii) 微小管破壊剤MMAE、および(iii) MMAEをcAC10に共有結合させるプロテアーゼ切断可能リンカー。薬物-抗体比または薬物搭載量は、ブレンツキシマブ・ベドチンの構造中で「p」により表わされ、1~8の整数の範囲である。医薬組成物中のブレンツキシマブ・ベドチンの平均薬物搭載量は、約4である。
【0115】
使用方法
固形腫瘍を治療するために、チューブリン破壊剤を含む抗体-薬物コンジュゲートを投与するステップを含む、固形腫瘍を治療するための方法が、本明細書中に提供される。種々の実施形態では、本開示の方法が、微小管(mictrotubule)機能の破壊後にERストレス経路を誘導することにより、固形腫瘍を治療することが企図される。種々の実施形態では、チューブリン破壊剤を含む抗体薬物コンジュゲート剤は、固形腫瘍中でアポトーシスを誘導する。
【0116】
種々の実施形態では、チューブリン破壊剤を含む抗体薬物コンジュゲート剤は、固形腫瘍への免疫細胞移動を増加させる。
【0117】
チューブリン破壊剤は、ERストレスタンパク質経路を増加させ、例えば、ATP分泌を増加させかつ高移動度群ボックス1(HMGB1)タンパク質レベルを上昇させ、これにより、細胞のアポトーシスの増加がもたらされ、結果として、免疫細胞を、アポトーシスおよび細胞ストレスの部位へと引き寄せることができることが、実施例中に実証される。
【0118】
本明細書中の方法は、被験体での腫瘍サイズもしくは腫瘍量を減少させ、かつ/または被験体での転移を減少させることが企図される。種々の実施形態では、被験体での腫瘍サイズが、約25~50%、約40~70%もしくは約50~90%またはそれ以上、減少する。種々の実施形態では、方法は、腫瘍サイズを10%、20%、30%またはそれ以上減少させる。種々の実施形態では、方法は、腫瘍サイズを10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%減少させる。
【0119】
本明細書中の方法は、腫瘍量を減少させ、また癌が寛解に至れば、腫瘍の再発を減少または防止することが企図される。
【0120】
本明細書中で企図される例示的固形腫瘍としては、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、消化管癌、頭頸部癌、黒色腫、肉腫、食道癌、膵臓癌、転移性膵臓癌、膵臓の転移性腺癌、膀胱癌、胃癌、線維性癌、神経膠腫、悪性神経膠腫、びまん性内在性橋膠腫、再発小児脳新生物、腎細胞癌、明細胞性転移性腎細胞癌、腎癌、前立腺癌、転移性去勢療法抵抗性前立腺癌、ステージIV前立腺癌、転移性黒色腫、黒色腫、悪性黒色腫、皮膚の再発黒色腫、黒色腫脳転移、ステージIIIA皮膚黒色腫;ステージIIIB皮膚黒色腫、ステージIIIC皮膚黒色腫;ステージIV皮膚黒色腫、頭頸部の悪性黒色腫、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、扁平上皮非小細胞肺癌、乳癌、再発転移性乳癌、肝細胞癌、リヒター症候群;ワルデンストレームマクログロブリン血症、成人膠芽腫;成人神経膠肉腫、再発膠芽腫、再発小児横紋筋肉腫、再発ユーイング肉腫/末梢性原始神経外胚葉腫瘍、再発神経芽腫;再発骨肉腫、結腸直腸癌、MSI陽性結腸直腸癌;MSI陰性結腸直腸癌、鼻咽頭非角化癌;再発鼻咽頭未分化癌、子宮頸部腺癌;子宮頸部腺扁平上皮癌;子宮頸部扁平上皮癌;再発子宮頸癌;ステージIVA子宮頸癌;ステージIVB子宮頸癌、肛門管扁平上皮癌;転移性肛門管癌;再発肛門管癌、再発頭頸部癌;頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、卵巣癌、結腸癌、胃癌、進行型GI癌、胃腺癌;胃食道接合部腺癌、骨新生物、軟組織肉腫;骨肉腫、胸腺癌、尿路上皮癌、再発メルケル細胞癌;ステージIIIメルケル細胞癌;ステージIVメルケル細胞癌、骨髄異形成症候群およびセザリー症候群が挙げられる。一実施形態では、固形腫瘍は、非リンパ腫固形腫瘍である。一部の実施形態では、固形腫瘍は、多発性骨髄腫であり得る。
【0121】
種々の実施形態では、ADCは、1種以上の化学療法剤と共に投与することができる。例示的な化学療法剤を以下の表に開示し、これらは単独で、または1種以上の追加の化学療法剤と組み合わせて使用することができ、したがって、抗体薬物コンジュゲートと組み合わせて投与することもできる。
【0122】
化学療法剤
種々の実施形態では、療法が、定期的に、例えば、週2回、週1回、2週間毎、3週間毎、月1回、2ヵ月に1回、またはより長い間隔で、施される。関連する実施形態では、例示的治療の中で、抗体薬物コンジュゲートが、0.1~15mg/kgの用量範囲で投与される。
【0123】
一態様では、本開示の方法は、医薬組成物を投与するステップを含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、無菌組成物である。
【0124】
本開示の方法は、限定するものではないが、注入、経口摂取、鼻内投与、局所投与、経皮投与、非経口投与、吸入噴霧、経膣投与、または直腸投与をはじめとする、哺乳動物被験体に直接的または間接的に治療剤を導入するためのいずれかの医学的に許容される手段を用いて行なわれる。本明細書中で用いる場合、非経口との用語は、皮下注入、静脈内注入、筋内注入、および嚢内注入、ならびにカテーテルまたは輸液技術を含む。皮内、乳房内、腹腔内、くも膜下腔、球後、肺内注入および/または特定部位での外科的移植による投与が、同様に企図される。
【0125】
一実施形態では、投与は、癌または治療を必要とする罹患組織の部位で、当該部位への直接的注入により、または体内に製剤を送達できる持続送達もしくは持続放出機構を介して、行なわれる。例えば、組成物(例えば、可溶性ポリペプチド、抗体、または小分子)の持続送達が可能である、生分解性ミクロスフェアもしくはカプセルまたは他の生分解性ポリマー構造体を、癌の近傍または癌の部位に移植される本開示の製剤中に含めることができる。
【0126】
治療用組成物はまた、複数の部位で患者に送達することもできる。多重投与は、同時とすることができ、または一定期間にわたって投与することができる。特定の例では、治療用組成物の連続流を提供することが有益である。
【0127】
限定するものではないが、化学療法剤をはじめとする本明細書中に記載される通りの別の薬剤と組み合わせた抗体組成物などの、複数の薬剤の投与もまた、本開示の中で企図される。
【0128】
所定の投与剤型中の抗体薬物コンジュゲート組成物の量は、療法が施される個体のサイズならびに治療される障害の特性に応じて変化し得る。例示的治療では、約1mg/日、5mg/日、10mg/日、20mg/日、50mg/日、75mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、500mg/日または1000mg/日を投与する必要がある場合がある。これらの濃度を、単一投与剤型として、または複数用量として、投与することができる。最初は動物モデルでの、続いて臨床試験での、標準的な用量-応答試験により、特定の疾患状態および患者集団に対する最適な投与量が明らかにされる。
【0129】
固形腫瘍の治療のための、上述の抗体薬物コンジュゲートのうちのいずれかを含む組成物および医薬の調製でのその使用もまた企図される。シリンジ(例えば、単回使用または予備充填シリンジ)、無菌密閉容器(例えば、バイアル、瓶、容器(vessel))、および/あるいは任意により好適な使用説明書を伴う、上述の抗体もしくは組成物のうちのいずれかを含むキットまたは包装もまた企図される。
【0130】
製剤
種々の送達システムを、薬物-リンカー単位-抗体コンジュゲート/抗体-薬物コンジュゲートを投与するために用いることができる。本開示の特定の実施形態では、抗体-薬物コンジュゲート化合物の投与は、静脈内点滴または皮下注入によるものである。一部の実施形態では、投与は、30分間、1時間または2時間の静脈内点滴による。
【0131】
抗体-薬物コンジュゲート化合物は、1種以上の薬学的に適合する成分を含む医薬組成物として投与することができる。例えば、医薬組成物は、典型的に、1種以上の製薬上許容される担体、例えば、水系担体(例えば、無菌液体)を含む。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合には、より典型的な担体である。
【0132】
所望であれば、組成物はまた、例えば、生理食塩液塩、緩衝剤、塩、非イオン性界面活性剤、および/または糖も含有することができる。好適な医薬用担体の例は、『Remington's Pharmaceutical Sciences』(E. W. Martin著)に記載されている。製剤は、投与様式に対応する。
【0133】
本開示は、例えば、治療上有効量の抗体-薬物コンジュゲート、緩衝剤、任意により凍結防止剤、任意により増量剤、任意により塩、および任意により界面活性剤を含む医薬組成物を提供する。追加の薬剤を、組成物に添加することができる。単独の薬剤が複数の機能を担う場合がある。例えば、トレハロースなどの糖は、凍結防止剤と増量剤との両方として機能することができる。いずれかの好適な製薬上許容される緩衝剤、界面活性剤、凍結防止剤(cyroprotectant)および増量剤を、本発明に従って用いることができる。
【0134】
血液学的癌を治療するための方法を提供することに加えて、本発明は、凍結乾燥、または他のタンパク質保存方法が行なわれた薬物コンジュゲート製剤を含む抗体薬物コンジュゲート製剤、ならびに凍結乾燥が行なわれていない抗体薬物製剤を提供する。
【0135】
一部の実施形態では、抗体薬物コンジュゲート製剤は、(i) 約1~25mg/mL、約3~約10mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、または約5mg/mL(例えば、式Iの抗体-薬物コンジュゲートまたはその製薬上許容される塩)、(ii) 約5~50mM、好ましくは約10mM~約25mMのクエン酸塩、リン酸塩、もしくはヒスチジンバッファーから選択されるバッファーまたはそれらの組み合わせ、好ましくはクエン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩、またはそれらの組み合わせ、(iii) 約3%~約10%のスクロースもしくはトレハロースまたはそれらの組み合わせ、(iv) 任意により約0.05~2mg/mLのポリソルベート20もしくはポリソルベート80から選択される界面活性剤またはそれらの組み合わせ;および(v) 水を含み、このとき、該組成物のpHは約5.3~約7、好ましくは約6.6である。
【0136】
一部の実施形態では、抗体薬物コンジュゲート製剤は、約1~25mg/mL、約3~約10mg/mL、好ましくは約5mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、(ii) 約10mM~約25mMのクエン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩から選択されるバッファー、またはそれらの組み合わせ、(iii) 約3%~約7%のトレハロースもしくはスクロースまたはそれらの組み合わせ、任意により(iv) 約0.05~約1mg/mLのポリソルベート20またはポリソルベート80から選択される界面活性剤、および(v) 水を含むであろうが、このとき、該組成物のpHは約5.3~約7、好ましくは約6.6である。
【0137】
一部の実施形態では、抗体薬物コンジュゲート製剤は、約5mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、(ii) 約10mM~約25mMのクエン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩から選択されるバッファーまたはそれらの組み合わせ、(iii) 約3%~約7%のトレハロース、任意により(iv) 約0.05~約1mg/mLのポリソルベート20またはポリソルベート80から選択される界面活性剤、および(v) 水を含むであろうが、このとき、該組成物のpHは約5.3~約7、好ましくは約6.6である。
【0138】
上記の製剤のうちのいずれかを、液体または凍結形態で保存することができ、任意により保存プロセスに供することができる。一部の実施形態では、上記の製剤は凍結乾燥され、すなわち、それらは凍結乾燥に供される。一部の実施形態では、上記の製剤は、保存プロセス(例えば、凍結乾燥)に供され、その後に、好適な液体(例えば、水)を用いて再構成される。凍結乾燥されるとは、組成物が、真空下で凍結-乾燥してあることを意味する。凍結乾燥は、典型的には、特定の製剤を、溶質が溶媒から分離するように凍結することにより達成される。続いて、昇華(すなわち、一次乾燥)により、次に脱離(すなわち、二次乾燥)により、溶媒が除去される。
【0139】
本発明の製剤は、本明細書中に記載される方法を用いて、または疾患を治療するための他の方法を用いて、使用することができる。抗体薬物コンジュゲート製剤は、被験体への投与前にさらに希釈することができる。一部の実施形態では、製剤は、生理食塩液を用いて希釈され、被験体への投与前にIVバッグまたはシリンジに入れられるであろう。したがって、一部の実施形態では、被験体での血液学的癌を治療するための方法は、式Iを有する抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物の毎週用量を、それを必要とする被験体に投与するステップを含むであろうが、このとき、投与される抗体-薬物コンジュゲートの用量は、約1.8mg/kgまたは1.2mg/kg被験体体重~0.9mg/kg被験体体重であり、かつ医薬組成物は、少なくとも3週間にわたって投与され、このとき、被験体への投与に先立って、抗体薬物コンジュゲートは、(i) 約1~25mg/mL、好ましくは約3~約10mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、(ii) 約5~50mM、好ましくは約10mM~約25mMのクエン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩から選択されるバッファー、またはそれらの組み合わせ、(iii) 約3%~約10%のスクロースもしくはトレハロースまたはそれらの組み合わせ、(iv) 任意により、約0.05~2mg/mLのポリソルベート20もしくはポリソルベート80から選択される界面活性剤またはそれらの組み合わせ;および(v) 水を含む製剤中に存在し、該組成物のpHは約5.3~約7、好ましくは約6.6である。
【0140】
化学療法剤の製剤を本明細書中の使用のために企図することができ、例えば、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、またはプレドニゾンが、癌の治療で典型的に用いられるものとして提供される。例えば、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾンは市販され、かつ複数のタイプの癌を有する患者の治療での使用のために、米国FDAおよび他の規制機関により承認されている。
【0141】
本発明はまた、固形腫瘍の治療のためのキットも提供する。キットは、(a) 抗体-薬物コンジュゲートを含有する容器、および任意により、1種以上の化学療法剤を含む容器を含むことができる。そのようなキットは、所望であれば、当業者には容易に明らかになるであろう通り、例えば、1種以上の製薬上許容される担体を含む容器、追加の容器等などの、1種以上の種々の慣用の医薬用キット構成要素をさらに含むことができる。投与される成分の量、投与のためのガイドライン、および/または構成要素を混合するためのガイドラインを示す、挿入物またはラベルのいずれかでの印刷された指示書もまた、キットに含めることができる。
【実施例0142】
実施例1:固形腫瘍に対するチューブリン破壊剤の効果
固形腫瘍細胞株に対するチューブリン破壊剤の効果を評価した。癌細胞を、MMAEを用いて処理し、その後の免疫原性細胞死(ICD)特性;ERストレス、ATP分泌および細胞外HMGB1レベルについて評価した。
【0143】
MCF7乳癌細胞を、100nM MMAEを用いて16時間処理し、ウエスタンブロット分析のためにRIPAバッファー中に回収した。MMAEを用いる処理は、IRE1およびeIF2aのリン酸化(
図1A)、ならびに全長ATF6の切断により示される通り、ERストレス応答の3種類すべての経路を活性化した。重度のERストレスは、腫瘍細胞の表面上の食作用促進シグナルの曝露に対する必要条件であり、リン酸化IRE1によるJNKシグナル伝達の活性化およびCHOPの発現により示される通り、MMAEにより引き起こされる。
【0144】
ICDの誘導はまた、ATPおよびHMGB1の分泌によっても特徴付けられる。細胞外ATPは、強力な走化性シグナルとして機能し、腫瘍部位への免疫細胞の移動を促進する。到着すると、細胞外HMGB1は、種々の炎症性受容体(TLR2、TLR4、RAGE)を通じてシグナル伝達し、抗原提示細胞を活性化して、それにより腫瘍内での免疫活性を促進する。MMAEを用いるMCF7細胞の処理は、ATPおよびHMGB1の分泌の増加をもたらす(
図1B、1C)。
【0145】
重度のERストレスは、CHOPのアップレギュレーションを引き起こし、ミトコンドリアアポトーシスを開始させる。MiaPaca2膵臓腫瘍細胞を遺伝子操作して、重度ERストレスの定量可能なモニタリングを可能にするCHOP駆動型ルシフェラーゼリポーターシステム(Signosis社から購入)を発現させた。MiaPaca-CHOP-ルシフェラーゼ細胞を、MMAE、ビンクリスチン、およびパクリタキセルを用いて処理し、16時間後にルシフェラーゼ発現についてアッセイした。MMAEおよびビンクリスチンを用いる処理は、重度ERストレス誘導の代わりとしてのルシフェラーゼシグナルの用量依存的増加を示したが、パクリタキセルはピーク用量で中等度のルシフェラーゼシグナルを誘導した(
図2A)。
【0146】
MiaPaca-CHOP-ルシフェラーゼ細胞を、NOD/SCID/ガンマ鎖欠損マウスへと皮下移植した。皮下腫瘍を、MMAE(0.36mg/kg)、ビンクリスチン(1.0mg/kg)、およびパクリタキセル(10mg/kg)を用いて腫瘍内処理し、腫瘍のルシフェラーゼシグナルを経時的にモニタリングした。明らかなとおり、MMAEおよびビンクリスチンを用いる処理は、移植された腫瘍中で重度ERストレスを迅速に引き起こしたが、パクリタキセルはERストレスを引き起こさない(
図2B)。
【0147】
MiaPaca2細胞を、MMAE、ビンクリスチン、またはパクリタキセルを用いて処理した。処理の16時間後に上清を回収し、ATP分泌について分析した。MMAEを用いる処理は堅牢なATP分泌を引き起こしたが、パクリタキセル処理は中等度のATP分泌をもたらした(
図3A)。
【0148】
PC-3前立腺腫瘍細胞もまた、MMAE、ビンクリスチン、またはパクリタキセルを用いて処理した。処理の16時間後に上清を回収し、ATP分泌について分析した。MMAEおよびビンクリスチンを用いる処理は堅牢なATP分泌を引き起こしたが、パクリタキセル処理は中等度のATP分泌をもたらした(
図3B)。PC-3細胞を、MMAE含有ADC(SGN-LIV1A)またはMMAEを用いて24時間処理し、ウエスタンブロット分析のためにRIPAバッファー中に回収した(
図3C)。MMAEを用いる処理はERストレス(IRE1およびJNKのリン酸化)ならびにATPおよびHMGB1の放出を引き起こし、これにより免疫原性細胞死の誘導が生じる(
図3D~3E)。
【0149】
胸腺欠損ヌードマウスに、PC-3細胞を皮下移植した。200立方ミリメートルに達した時点で、マウスにMMAE含有ADC(SGN-LIV1Aまたは抗CD71-MMAE)を単回腹腔内投与した。ADC処理の8日後に、腫瘍を摘出し、フローサイトメトリーにより免疫細胞浸潤および組成について評価した。MMAE-ADCを用いて処理された腫瘍は、免疫細胞の浸潤増加を示し、増強された活性化がさらに示された(
図4A~D)。
【0150】
別の研究で、胸腺欠損ヌードマウスに、PC-3細胞を皮下移植した。200立方ミリメートルに達した時点で、マウスにMMAE含有ADC(SGN-LIV1Aまたは抗CD71-MMAE)を単回腹腔内投与した。ADC処理の8日後に、腫瘍を摘出し、RIPAバッファー中にホモジナイズして、サイトカイン/ケモカイン産生をELISAにより測定した。末梢サイトカインレベルもまた、ELISAにより血清中で測定した。腫瘍内の免疫細胞の増加に加えて、これらの免疫細胞からのサイトカインおよびケモカイン産生の増大により明らかな通り、免疫活性が増強している(
図5A~F)。
【0151】
HeLa子宮頸癌細胞を、1000nMまたは100nM MMAE、ビンクリスチン、またはパクリタキセルを用いて16時間処理し、ウエスタンブロット分析のために回収した。それぞれの処理が、IRE1のリン酸化により示される通り、ERストレス応答を活性化した。しかしながら、MMAEは、より重度のERストレス応答を引き起こし、これは、JNKのさらなるリン酸化により明らかな通り、低下した用量でも維持された。堅牢なJNKリン酸化は、低用量のパクリタキセルでは見られなかった(
図6)。
【0152】
皮膚腫瘍株A2058、SK-MEL-5およびSK-MEL-28、Calu-1(肺)、HT-1080(線維肉腫)、SK-MES-1(肺)、およびBXPC3(膵臓)細胞を、MMAE、ビンクリスチン、およびパクリタキセルを用いて処理した。処理の17時間後に上清を回収し、ATP分泌について分析した。MMAEおよびビンクリスチンを用いる処理はアッセイした細胞株のうちの大多数(6/7種類)でATP分泌を引き起こし、アッセイしたすべての細胞株でパクリタキセルよりも堅牢な応答を誘導できた(
図7A)。MMAEを用いる処理は、A2058、SK-MEL-5、SK-MEL-28(皮膚)細胞株の3種類全部からの強力なATP分泌を引き起こしたが、パクリタキセルは3種類の細胞株のうちの1種類のみからのATP分泌を引き起こした(
図7B)。
【0153】
A2058、SK-MEL-5、SK-MEL-28(皮膚)、Calu-1、HT-1080、SK-MES-1(肺)、ならびにBXPC3およびHPAFII(膵臓)細胞を、MMAE含有ADC(例えば、抗p97-MMAEまたは抗CD71-MMAE)またはパクリタキセルを用いて処理した。処理の一晩後に上清を回収し、ELISAによりHMGB1放出について分析した。MMAE含有ADCまたはパクリタキセルを用いる処理は、アッセイした細胞株のうちの大多数(5/7種類)でHMGB1放出を引き起こし、アッセイしたすべての細胞株でパクリタキセルよりも堅牢な応答を誘導できた。抗CD71-MMAEを用いる処理は、3種類の皮膚細胞株のうちの2種類からの強力なHMGB1放出を引き起こした。例えば、
図7Cおよび下記の追加の説明を参照されたい。
【0154】
追加の実験では、MMAEを用いて処理された細胞株は、健康ドナーの末梢血単核細胞(PBMC)由来の免疫細胞と共培養されるか、またはそれらに「投入」(fed)され、免疫細胞機能に対する処理細胞の効果が評価される。
【0155】
実施例2:免疫細胞活性化に対するチューブリン破壊剤の分析
腫瘍細胞が免疫細胞活性化を誘導する能力に対するチューブリン破壊剤の効果を決定するために、チューブリン破壊剤を用いて処理され、ERストレスおよび潜在的な細胞死を被る過程にある細胞を、抗原提示細胞に投入し、APC誘導に対する効果を測定した。
【0156】
細胞培養グレードのプラスチックへとPBMCを接着させることにより、2名の健康なドナー由来のPBMCから、マクロファージを富化した。非接着細胞を24時間後に除去し、マクロファージに関して富化させた細胞集団を残した。
【0157】
A2058、SK-MEL-5、およびSK-MEL-28(皮膚)細胞を、MMAE、ビンクリスチン、およびパクリタキセルを用いて24時間処理した。細胞を洗浄および回収し、続いて、上記で調製した富化されたマクロファージと共に共培養した。マクロファージを、共培養から4日後に回収し、フローサイトメトリーにより免疫活性化についてアッセイした。抗原提示のレベル(MHCII発現細胞の頻度により測定)を定量し、未処理腫瘍細胞と共に共培養されたマクロファージに対して標準化した。腫瘍細胞のMMAE処理は、2/3種類の腫瘍細胞株での抗原提示の増加を引き起こし、これはパクリタキセルよりも堅牢であった(
図8A~8C)。
【0158】
マクロファージと死滅しかけたA2058およびSK-MEL-5腫瘍細胞との共培養からの上清を24時間後に回収し、ELISAによりサイトカインおよびケモカイン産生のレベルについてアッセイして、未処理腫瘍細胞と共に共培養されたマクロファージに対して標準化した。MMAEまたはMMAE含有ADC(抗p97-MMAE)を用いる腫瘍細胞の処理は、示されるサイトカインおよびケモカインの増加をもたらし、これはパクリタキセルを用いる処理よりも堅牢であった(
図9A~9B)。A2058細胞は、未処理細胞と比較してGM-CSF、IFNg、MCP-3、IL-1RA、IL-7、MIP-1a、MIP-1bの増加を示し、一方で、SK-MEL-5細胞は、GM-CSF、INFa2、IFNg、MCP-3、IL-12p70、IL-17A、IL-1a、IL-1b、MCP-1、MIP-1a、MIP-1bの増加を示した。
【0159】
実施例3
チューブリン破壊剤を用いる処理後の抗原提示の追加的分析
細胞培養グレードのプラスチックへとPBMCを接着させることにより、2名の健康なドナー由来のPBMCから、マクロファージを富化した。非接着細胞を24時間後に除去し、マクロファージに関して富化させた細胞集団を残した。
【0160】
BxPC3およびHPAFII(膵臓)細胞を、MMAE、ビンクリスチン、およびパクリタキセルを用いて24時間処理した。細胞を洗浄および回収し、続いて、上記で調製した富化されたマクロファージと共に共培養した。マクロファージを、共培養から4日後に回収し、フローサイトメトリーにより免疫活性化についてアッセイした。抗原提示のレベル(MHCII発現細胞の頻度により測定)を定量し、未処理腫瘍細胞と共に共培養されたマクロファージに対して標準化した。腫瘍細胞のMMAEおよびビンクリスチン処理は、1/2種類の腫瘍細胞株での抗原提示の増加を引き起こしたが、パクリタキセルを用いる処理はマクロファージ抗原提示の変化を引き起こさなかった(
図10A~10B)。BxPC-3細胞を、MMAE、ビンクリスチン、またはパクリタキセルを用いて17時間処理し、ATP分泌について分析した。3種類すべてのチューブリン結合性薬剤を用いる処理が、同等なレベルのATP分泌を引き起こすことができた(
図10C)。
【0161】
パクリタキセルまたはMMAE含有ADC(抗p97-MMAE)を用いる処理の24時間後、BxPC-3細胞からのHMGB1放出を、ELISAにより評価した。MMAE駆動細胞死は、パクリタキセル処理と比較して、中等度のHMGB1放出の増加をもたらした(
図10D)。
【0162】
マクロファージと死滅しかけた腫瘍細胞との共培養からの上清を、24時間後に回収し、ELISAによりサイトカインおよびケモカイン産生のレベルについてアッセイして、未処理腫瘍細胞と共に共培養されたマクロファージに対して標準化した。MMAEまたは抗p97-MMAEを用いる腫瘍細胞の処理は、示されたサイトカインおよびケモカインの増加をもたらし、これはパクリタキセルを用いる処理よりも堅牢であった(
図11A~11B)。
【0163】
追加の細胞株[Calu-1(肺)、HT1080(線維肉腫)およびSK-MES-1(皮膚)]を、上記のマクロファージとの共培養後に抗原提示のレベルについて調べた。共刺激のレベル(CD86発現マクロファージの頻度により測定、Calu-1)または抗原提示のレベル(MHCII発現マクロファージの頻度により測定、HT1080およびSK-MES-1)を定量し、未処理腫瘍細胞と共に共培養されたマクロファージに対して標準化した。腫瘍細胞のMMAE処理は、3/3種類の腫瘍細胞株での免疫活性化の増加をもたらし、これはパクリタキセルを用いる処理よりも堅牢であった(
図12A~12C)。Calu-1、HT-1080、およびSK-MES-1細胞を、MMAE含有ADC(抗p97-MMAE)、ビンクリスチン、またはパクリタキセルを用いて24時間処理し、ELISAによりHMGB1放出について分析した。抗p97-MMAEを用いる処理は、3種類の細胞株のうち2種類からの強力なHMGB1放出を引き起こした(
図12D~12F)。
【0164】
上記の通りに、マクロファージと死滅しかけた腫瘍細胞との共培養からの上清を、24時間後に回収し、ELISAによりサイトカインおよびケモカイン産生のレベルについてアッセイして、未処理腫瘍細胞と共に共培養されたマクロファージに対して標準化した。MMAEまたはMMAE含有ADCを用いるCalu-1細胞の処理は、示されたサイトカインおよびケモカインの増加をもたらし、これはパクリタキセルを用いる処理よりも堅牢であった(
図13)。
【0165】
MCF7(トリプルネガティブ乳癌)細胞を、MMAE、MMAE含有ADC(抗CD71 OKT9-1006)、ビンクリスチン、およびパクリタキセルを用いて24時間処理した。細胞を洗浄および回収し、続いて、上記で調製した富化されたマクロファージと共に共培養した。マクロファージを、共培養から4日後に回収し、フローサイトメトリーにより免疫活性化についてアッセイした。MMAEまたはMMAE含有ADCを用いる腫瘍細胞の処理は、マクロファージ抗原提示(MHCII発現マクロファージの頻度により測定)の増加をもたらし、これはパクリタキセルを用いる処理よりも堅牢であった(
図14A)。マクロファージと死滅しかけたMCF7細胞との共培養からの上清を、24時間後に回収し、ELISAによりサイトカインおよびケモカイン産生のレベルについてアッセイして、未処理腫瘍細胞と共に共培養されたマクロファージに対して標準化した。MMAEまたはMMAE含有ADCを用いるMCF7細胞の処理は、示されたサイトカインおよびケモカインの増加をもたらし、これはパクリタキセルを用いる処理よりも堅牢であった(
図14B)。
【0166】
MCF7細胞を、MMAEまたはMMAE含有ADC(SGN-LIV1A)を用いて16時間処理し、ウエスタンブロット分析のためにRIPAバッファー中に回収した。MMAEを用いる処理は、IRE1およびeIF2aのリン酸化、ならびに全長ATF6の切断により示される通り、ERストレス応答の3種類すべての経路を活性化した。重度のERストレスは、腫瘍細胞の表面上の食作用促進シグナルの曝露に対する必要条件であり、リン酸化IRE1によるJNKシグナル伝達の活性化およびCHOPの発現により示される通り、MMAEにより引き起こされる(
図15A)。ICDの誘導はまた、ATPおよびHMGB1の分泌によっても特徴付けられる。細胞外ATPは、強力な走化性シグナルとして機能し、腫瘍部位への免疫細胞の移動を促進する。到着すると、細胞外HMGB1は、種々の炎症性受容体(TLR2、TLR4、RAGE)を通じてシグナル伝達し、抗原提示細胞を活性化して、それにより腫瘍内での免疫活性を促進する。MMAEおよびSGN-LIV1Aを用いるMCF7細胞の処理は、ATPおよびHMGB1の分泌の増加をもたらす(
図15B~15C)。
【0167】
SGN-LIV1Aまたはエリブリンを用いるMCF7の処理は、重度ERストレス(IRE1およびJNKのリン酸化)を引き起こすが、パクリタキセルおよびドセタキセルはJNKリン酸化を引き起こさない。ATP分泌の増加もまた、SGN-LIV1A、またはエリブリンを用いる処理の48時間後には明らかであり、このことは微小管破壊の結果としての強力なICD誘導を示したが、パクリタキセルおよびドセタキセルのいずれも、ATP分泌を引き起こさなかった(
図16A~16B)。
【0168】
SCIDマウスにMCF7細胞を皮下移植した。200立方ミリメートルに達した時点で、マウスにMMAE含有ADC(SGN-LIV1Aまたは抗CD71-MMAE)を単回腹腔内投与した。ADC処理の8日後に、腫瘍を摘出し、フローサイトメトリーにより免疫細胞組成について評価した。MMAE駆動細胞死および免疫原性の結果として、MMAE-ADC処理腫瘍は、腫瘍浸潤性免疫細胞による免疫活性化レベルの上昇を示した(
図17A~17E)。
【0169】
MDA-MB-468細胞を、MMAEまたはMMAE含有ADC(ASG-22ME)を用いて処理した。処理の48時間後に上清を回収し、ATP分泌について分析した。MMAEまたはASG-22MEを用いる処理は、堅牢なATP分泌を引き起こし、これは、タプシガルギン(公知のERストレスおよび自食作用誘導因子)と同等であった(
図18)。
【0170】
肝臓腫瘍株Hep3b、Huh7、およびJHH7細胞を、MMAE、チューブリシンM、ビンクリスチン、およびパクリタキセルを用いて24時間処理し、ATP分泌について分析した。MMAEまたはチューブリシンMを用いる処理は、評価した3種類の細胞株のうちの3種類からの強力なATP分泌を引き起こした(
図19A~19C)。細胞を洗浄および回収し、続いて、上記の通りに調製した富化されたマクロファージと共に共培養した。マクロファージを、共培養から4日後に回収し、フローサイトメトリーにより免疫活性化についてアッセイした。共刺激のレベル(CD86発現により測定、JHH7)および抗原提示のレベル(MHCII発現細胞の頻度により測定、Hep3b、Huh7、およびJHH7)を定量して、パクリタキセル処理腫瘍細胞と共に共培養されたマクロファージに対して標準化した。腫瘍細胞のMMAE処理は3/3種類の腫瘍細胞株での免疫活性化の増大をもたらし、これはパクリタキセルよりも堅牢であった(
図19D~19G)。マクロファージと死滅しかけた肝臓腫瘍細胞との共培養からの上清を、24時間後に回収し、ELISAによりサイトカインおよびケモカイン産生のレベルについてアッセイして、未処理腫瘍細胞と共に共培養されたマクロファージに対して標準化した。MMAEまたはチューブリシンMを用いるHep3b、Huh7、およびJHH7細胞の処理は、示されたサイトカインおよびケモカインの増加をもたらし、これはパクリタキセルを用いる処理よりも堅牢であった(
図20A~20C)。
【0171】
T-24(膀胱)細胞を、MMAEまたはMMAE含有ADC(ASG-22ME)を用いて48時間処理し、ATP分泌について分析した。MMAEまたはASG-22MEを用いる処理は、強力なATP分泌を引き起こした(
図21A)。T-24細胞もまた、MMAE、MMAE含有ADC(ASG22ME、エンフォルツマブ・ベドチン)、ビンクリスチン、およびパクリタキセルを用いて24時間処理した。細胞を洗浄および回収し、続いて、上記の通りに富化されたマクロファージと共に共培養した。マクロファージを、共培養から4日後に回収し、フローサイトメトリーにより免疫活性化についてアッセイした。抗原提示のレベル(MHCII発現マクロファージの頻度により測定)を定量して、未処理腫瘍細胞と共に共培養されたマクロファージに対して標準化した。MMAEまたはMMAE含有ADCを用いるT-24細胞の処理はマクロファージ抗原提示の増加をもたらし、これはパクリタキセルを用いる処理よりも堅牢であった(
図21B)。マクロファージと死滅しかけたT-24腫瘍細胞との共培養からの上清を、24時間後に回収し、ELISAによりサイトカインおよびケモカイン産生のレベルについてアッセイして、未処理腫瘍細胞と共に共培養されたマクロファージに対して標準化した。MMAEまたはMMAE含有ADCを用いるT-24細胞の処理は、示されたサイトカインおよびケモカインの増加をもたらし、これはパクリタキセルを用いる処理よりも堅牢であった(
図21C)。
【0172】
U-266多発性骨髄腫細胞を、遊離MMAE(492nM)、MMAE含有ADC(SGN-CD48A、10ng/mL)および非結合性MMAE-ADC(10ng/mL)を用いて24時間および48時間処理した。各時点で細胞を回収し、全細胞溶解物を調製した。各サンプルの溶解物をSDS-PAGEにかけ、ニトロセルロースメンブレンにトランスファーした。ホスホ-JNK Thr183/Tyr185(pJNK)、PARP、ATF4、AT6、ホスホ-IRE-1 Ser274(pIRE-1)を用いて、ウエスタンブロット分析を行なった。β-アクチンは、ロード量対照として機能する。U-266などの多発性骨髄腫細胞は、基底pJNKおよびpIRE-1染色の検出により示される高レベルの内因性ERストレスを示す(
図22A)。しかしながら、MMAEおよびSGN-CD48Aを用いる処理は、ATF4発現ならびにJNKのリン酸化の上昇により示される通り、ERストレス応答をさらに増大させた。PARPの切断(低分子量バンド)は、アポトーシスを起こしている細胞の指標である。重要なことに、U-266細胞でのMMAEによるERストレスの誘導は、ICDのマーカーを生起するために十分であった。
【0173】
U-266細胞を、遊離MMAE(492nM)、MMAE含有ADC(SGN-CD48A、10ng/mL)、および非結合性MMAE-ADC(10ng/mL)を用いて48時間処理した。細胞を回収し、フローバッファー中で洗浄し、その後、アネキシンV(アポトーシスのマーカー)とHSP70の両方について染色した。細胞はまた、アネキシンVとカルレティキュリンの両方を用いても染色した。両方の条件で、アネキシンV陰性であった細胞を選択し、HSP70またはカルレティキュリンについて陽性であった集団の割合(%)を決定した。ICDマーカーの割合(%)の増加は、死滅前のSGN-CD48Aおよび遊離MMAEを用いる処理時の細胞表面上で明らかであり(
図22B)、このことは、抗腫瘍免疫を強化するための強力な食作用促進シグナルを提供する。
【0174】
上記の例示的実施例で説明される本発明の多数の変更および改変が、当業者には想起されることが予測される。それゆえ、添付の特許請求の範囲に表わされる限定のみが、本発明に対してなされるべきである。
【0175】
本発明は、以下を提供する。
1. 式:薬物-リンカー単位-抗体(D-LU-Ab)を有し、式中、Dはチューブリン破壊剤である抗体薬物コンジュゲート剤を、固形腫瘍を治療するのに有効な量で、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、固形腫瘍を治療するための方法。
2. 式:薬物-リンカー単位-抗体(D-LU-Ab)を有し、式中、Dはチューブリン破壊剤である抗体薬物コンジュゲート剤を、固形腫瘍中でのアポトーシスを誘導するのに有効な量で投与するステップを含む、固形腫瘍中でのATP放出を調節するための方法。
3. 式:薬物-リンカー単位-抗体(D-LU-Ab)を有し、式中、Dはチューブリン破壊剤である抗体薬物コンジュゲート剤を、固形腫瘍への免疫細胞浸潤を誘導するのに有効な量で、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、固形腫瘍への免疫細胞移動を誘導する方法。
4. 式:薬物-リンカー単位-抗体(D-LU-Ab)を有し、式中、Dはチューブリン破壊剤である抗体薬物コンジュゲート剤を、固形腫瘍中での免疫原性細胞死を誘導するのに有効な量で、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、固形腫瘍中での免疫原性細胞死(ICD)を誘導するための方法。
5. 前記抗体が、CD30、CD19、CD70、CD71、CD20、CD52、CD133、EGFR、HER2、VEGF、VEGFR2、PD-1、PDL1、RANKL、CTLA-4、IL-6、SLAMF7、CD3、TNF-α、PDGFR-α、CD38、GD2、cCLB8、p97、ネクチン-4、またはEpCAMに対して特異的である、上記1~4のいずれかに記載の方法。
6. 前記チューブリン破壊剤が、ERストレスタンパク質経路を増大させ、ATP分泌を増加させ、かつ高移動度群ボックス1(HMGB1)タンパク質を増加させる、上記1~5のいずれかに記載の方法。
7. 前記チューブリン破壊剤が、アウリスタチン、チューブリシン、コルヒチン、ビンカアルカロイド、タキサン、クリプトフィシン、メイタンシノイド、ヘミアステルリン、および他のチューブリン破壊剤からなる群より選択される、上記1~6のいずれかに記載の方法。
8. 前記チューブリン破壊剤が、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、およびドラスタチン-10(dolostatin-10)からなる群より選択されるアウリスタチンである、上記1~7のいずれかに記載の方法。
9. 前記チューブリン破壊剤が、チューブリシンD、チューブフェニルアラニン(tubuphenylalanine)およびチューブチロシン(tubutyrosine)からなる群より選択されるチューブリシンである、上記1~7のいずれかに記載の方法。
10. 前記チューブリン破壊剤が、コルヒチンおよびCA-4からなる群より選択されるコルヒチンである、上記1~7のいずれかに記載の方法。
11. 前記チューブリン破壊剤が、ビンブラスチン(VBL)、ビノレルビン(VRL)、ビンクリスチン(VCR)およびビンデシン(VDS)からなる群より選択されるビンカアルカロイドである、上記1~7のいずれかに記載の方法。
12. 前記チューブリン破壊剤が、パクリタキセルおよびドセタキセルからなる群より選択されるタキサンである、上記1~7のいずれかに記載の方法。
13. 前記チューブリン破壊剤が、クリプトフィシン-1およびクリプトフィシン-52からなる群より選択されるクリプトフィシンである、上記1~7のいずれかに記載の方法。
14. 前記チューブリン破壊剤が、メイタンシン、メイタンシノール、メイタンシン類似体、DM1、DM3およびDM4、ならびにアンサマイトシン-2(ansamatocin-2)からなる群より選択されるメイタンシノイドである、上記1~7のいずれかに記載の方法。
15. 前記チューブリン破壊剤が、ヘミアステルリンおよびHTI-286からなる群より選択されるヘミアステルリンである、上記1~7のいずれかに記載の方法。
16. 前記チューブリン破壊剤が、タッカロノリドA、タッカロノリドB、タッカロノリドAF、タッカロノリドAJ、タッカロノリドAI-エポキシド、ジスコデルモリド、エポチロンA、エポチロンB、およびラウリマライドからなる群より選択される、上記1~7のいずれかに記載の方法。
17. 前記固形腫瘍が、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、消化管癌、頭頸部癌、黒色腫、肉腫、食道癌、膵臓癌、転移性膵臓癌、膵臓の転移性腺癌、膀胱癌、胃癌、線維性癌、神経膠腫、悪性神経膠腫、びまん性内在性橋膠腫、再発小児脳新生物、腎細胞癌、明細胞性転移性腎細胞癌、腎癌、前立腺癌、転移性去勢療法抵抗性前立腺癌、ステージIV前立腺癌、転移性黒色腫、黒色腫、悪性黒色腫、皮膚の再発黒色腫、黒色腫脳転移、ステージIIIA皮膚黒色腫;ステージIIIB皮膚黒色腫、ステージIIIC皮膚黒色腫;ステージIV皮膚黒色腫、頭頸部の悪性黒色腫、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、扁平上皮非小細胞肺癌、乳癌、再発転移性乳癌、肝細胞癌、リヒター症候群;ワルデンストレームマクログロブリン血症、成人膠芽腫;成人神経膠肉腫、再発膠芽腫、再発小児横紋筋肉腫、再発ユーイング肉腫/末梢性原始神経外胚葉腫瘍、再発神経芽腫;再発骨肉腫、結腸直腸癌、MSI陽性結腸直腸癌;MSI陰性結腸直腸癌、鼻咽頭非角化癌;再発鼻咽頭未分化癌、子宮頸部腺癌;子宮頸部腺扁平上皮癌;子宮頸部扁平上皮癌;再発子宮頸癌;ステージIVA子宮頸癌;ステージIVB子宮頸癌、肛門管扁平上皮癌;転移性肛門管癌;再発肛門管癌、再発頭頸部癌;頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、卵巣癌、結腸癌、胃癌、進行型GI癌、胃腺癌;胃食道接合部腺癌、骨新生物、軟組織肉腫;骨肉腫、胸腺癌、尿路上皮癌、再発メルケル細胞癌;ステージIIIメルケル細胞癌;ステージIVメルケル細胞癌、骨髄異形成症候群およびセザリー症候群からなる群より選択される、上記1~16のいずれかに記載の方法。
18. 前記抗体薬物コンジュゲートが、プロテアーゼ切断可能リンカー、酸切断可能リンカーまたはジスルフィドリンカーを含む、上記1~17のいずれかに記載の方法。
19. 前記プロテアーゼ切断可能リンカーが、チオール反応性スペーサーおよびジペプチドを含む、上記18に記載の方法。
20. 前記プロテアーゼ切断可能リンカーが、チオール反応性マレイミドカプロイルスペーサー、バリン-シトルリンジペプチド、およびp-アミノ-ベンジルオキシカルボニルスペーサーからなる、上記18または19に記載の方法。
21. 前記酸切断可能リンカーが、ヒドラジンリンカーまたは第4級アンモニウムリンカーである、上記18に記載の方法。
22. 化学療法レジメンを施すステップをさらに含む、上記1~21のいずれかに記載の方法。
23. 前記化学療法レジメンが、本質的に、併用療法として、ドキソルビシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン(AVD)からなる、上記22に記載の方法。
24. 前記化学療法レジメンが、本質的に、併用療法として、シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾン(CHP)からなる、上記22に記載の方法。
25. 前記抗体薬物コンジュゲートの抗体がモノクローナル抗体である、上記1~24のいずれかに記載の方法。
26. 前記抗体が抗CD30抗体であり、抗CD30抗体薬物コンジュゲートが、以下:
(i) 配列番号4で示される重鎖CDR1、配列番号6で示される重鎖CDR2、配列番号8で示される重鎖CDR3;および
(ii) 配列番号12で示される軽鎖CDR1、配列番号14で示される軽鎖CDR2、および配列番号16で示される軽鎖CDR13
を含む、上記1~25のいずれかに記載の方法。
27. 前記抗体が抗CD30抗体であり、抗CD30抗体薬物コンジュゲートが、以下:
(i) 配列番号2で示される重鎖可変領域に対して少なくとも85%同一なアミノ酸配列、および
(ii) 配列番号10で示される軽鎖可変領域に対して少なくとも85%同一なアミノ酸配列
を含む、上記1~25のいずれかに記載の方法。
28. 前記抗体が抗CD30抗体であり、前記抗体薬物コンジュゲートの該抗CD30抗体がキメラ型AC10抗体である、上記1~27のいずれかに記載の方法。
29. 前記抗体薬物コンジュゲートが、モノメチルアウリスタチンEおよびプロテアーゼ切断可能リンカーを含む、上記1~28のいずれかに記載の方法。
30. 前記プロテアーゼ切断可能リンカーが、チオール反応性スペーサーおよびジペプチドを含む、上記29に記載の方法。
31. 前記プロテアーゼ切断可能リンカーが、チオール反応性マレイミドカプロイルスペーサー、バリン-シトルリンジペプチド、およびp-アミノ-ベンジルオキシカルボニルスペーサーからなる、上記29または30に記載の方法。
32. 前記抗CD30抗体薬物コンジュゲートがブレンツキシマブ・ベドチンである、上記1~31のいずれかに記載の方法。
33. 前記抗体薬物コンジュゲートが、腫瘍の部位への免疫細胞移動を誘導する、上記1~32のいずれかに記載の方法。