(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075805
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】太陽電池パネルの製造方法、半導体製造装置、及び光電変換基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0463 20140101AFI20240529BHJP
H01L 31/0224 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H01L31/04 532A
H01L31/04 260
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057488
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅宏
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA03
5F151BA14
5F151CB27
5F151DA07
5F151DA10
5F151FA02
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5F251AA03
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5F251DA07
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5F251FA02
5F251FA04
5F251FA06
5F251FA15
5F251FA18
5F251GA04
5F251HA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】強アルカリや強酸等のエッチング液を使用せずとも透明電極層のパターニングができる太陽電池パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】光電変換基板上に所定の形状にパターニングされた電極用レジスト層22を形成する電極用レジスト層形成工程と、光電変換基板と電極用レジスト層22に跨がって透明電極層23を形成する透明電極層形成工程と、電極加熱温度以上に加熱し、電極用レジスト層22の性状を変化させて光電変換基板から電極用レジスト層22上の透明電極層23を剥離する電極剥離工程を含む方法とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換基板上に透明電極層が積層された太陽電池パネルの製造方法であって、
光電変換基板上に所定の形状にパターニングされた電極用レジスト層を形成する電極用レジスト層形成工程と、
前記光電変換基板と前記電極用レジスト層に跨がって前記透明電極層を形成する透明電極層形成工程と、
第1加熱温度以上に加熱し、前記電極用レジスト層の性状を変化させて前記光電変換基板から前記電極用レジスト層上の透明電極層を剥離する電極剥離工程を含む、太陽電池パネルの製造方法。
【請求項2】
前記電極用レジスト層は、前記第1加熱温度以上において、以下の(1)又は(2)の特性を有する、請求項1に記載の太陽電池パネルの製造方法。
(1)固体から液体又は気体に変化する。
(2)前記光電変換基板に対する剥離強度が1/10以下になる。
【請求項3】
前記太陽電池パネルは、前記光電変換基板の裏側主面側に第1電極層と第2電極層が形成されたものであり、
前記第1電極層と前記第2電極層は、前記透明電極層を含み、
前記電極剥離工程において前記第1電極層の透明電極層と前記第2電極層の透明電極層とに分割する、請求項1又は2に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項4】
前記光電変換基板は、半導体基板の第1主面側に第1導電型半導体層と第2導電型半導体層が隣接して形成されており、
前記電極用レジスト層形成工程において、前記第1導電型半導体層と、前記第2導電型半導体層に跨って前記電極用レジスト層を形成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項5】
前記透明電極層は、タングステンドープ酸化インジウムを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項6】
前記光電変換基板は、半導体基板の第1主面上に第1真性半導体層及び第1導電型半導体層が形成された断面構造と、前記半導体基板の前記第1主面上に第2真性半導体層及び第2導電型半導体層が形成された断面構造を有するものであり、
前記半導体基板上に第1真性半導体層を形成する第1真性半導体層形成工程と、
前記第1真性半導体層上に第1導電型半導体層を形成する第1導電型半導体層形成工程と、
前記第1導電型半導体層上に第1半導体用レジスト層を形成する第1半導体用レジスト層形成工程と、
前記半導体基板上から前記第1半導体用レジスト層上に跨って第2真性半導体層を形成する第2真性半導体層形成工程と、
前記第2真性半導体層上に第2導電型半導体層を形成する第2導電型半導体層形成工程と、
第2加熱温度以上に加熱し、前記第1半導体用レジスト層の性状を変化させて前記第1導電型半導体層から前記第1半導体用レジスト層上の前記第2真性半導体層及び前記第2導電型半導体層を剥離する第1剥離工程を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項7】
前記半導体基板上に第2半導体用レジスト層を形成する第2半導体用レジスト層形成工程と、
前記半導体基板上から前記第2半導体用レジスト層上に跨って第1真性半導体層を形成する前記第1真性半導体層形成工程と、
第3加熱温度以上に加熱し、前記第2半導体用レジスト層の性状を変化させて前記半導体基板から前記第2半導体用レジスト層上の前記第1真性半導体層及び前記第1導電型半導体層を剥離する第2剥離工程を含む、請求項6に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項8】
所定の加熱温度で固体から液体又は気体に変化するレジスト層を使用して、半導体基板上に半導体層を形成する半導体製造装置であって、
前記半導体基板上に所定のパターンのレジスト層を形成するレジスト層形成部と、
前記半導体基板上から前記レジスト層に跨がって半導体層を製膜する半導体層形成部と、
前記所定の加熱温度以上に加熱し、前記レジスト層を液体又は気体に変化させる加熱剥離部を備える、半導体製造装置。
【請求項9】
半導体基板の第1主面上に第1真性半導体層及び第1導電型半導体層が形成された断面構造と、前記半導体基板の前記第1主面上に第2真性半導体層及び第2導電型半導体層が形成された断面構造を有する光電変換基板の製造方法であって、
前記半導体基板上に第1真性半導体層を形成する第1真性半導体層形成工程と、
前記第1真性半導体層上に第1導電型半導体層を形成する第1導電型半導体層形成工程と、
前記第1導電型半導体層上に第1半導体用レジスト層を形成する第1半導体用レジスト層形成工程と、
前記半導体基板上から前記第1半導体用レジスト層上に跨って第2真性半導体層を形成する第2真性半導体層形成工程と、
前記第2真性半導体層上に第2導電型半導体層を形成する第2導電型半導体層形成工程と、
第2加熱温度以上に加熱し、前記第1半導体用レジスト層の性状を変化させて前記第1導電型半導体層から前記第1半導体用レジスト層上の前記第2真性半導体層及び前記第2導電型半導体層を剥離する第1剥離工程を含む、光電変換基板の製造方法。
【請求項10】
半導体基板の第1主面上に第1真性半導体層及び第1導電型半導体層が形成された断面構造と、前記半導体基板の前記第1主面上に第2真性半導体層及び第2導電型半導体層が形成された断面構造を有する光電変換基板の製造方法であって、
前記半導体基板上に第2半導体用レジスト層を形成する第2半導体用レジスト層形成工程と、
前記半導体基板上から前記第2半導体用レジスト層上に跨って第1真性半導体層を形成する第1真性半導体層形成工程と、
前記第1真性半導体層上に前記第1導電型半導体層を形成する第1導電型半導体層形成工程と、
第3加熱温度以上に加熱し、前記第2半導体用レジスト層の性状を変化させて前記半導体基板から前記第2半導体用レジスト層上の前記第1真性半導体層及び前記第1導電型半導体層を剥離する第2剥離工程を含む、光電変換基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルの製造方法、半導体製造装置、及び光電変換基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光電変換基板の裏面側に第1電極層と第1電極層に対して対極となる第2電極層が形成されたバックコンタクト型の太陽電池が知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1の太陽電池は、半導体基板の裏面側の第1領域に真性半導体層及びp型半導体層が順に積層され、半導体基板の裏面側の第2領域に真性半導体層及びn型半導体層が順に積層された光電変換基板を有している。
特許文献1の太陽電池は、光電変換基板の受光面側に真性半導体層と光学調整層が順に積層され、光電変換基板のp型半導体層上に透明電極層と金属電極層で構成される第1電極層が積層され、n型半導体層上に透明電極層と金属電極層で構成される第2電極層が積層されている。
特許文献1の太陽電池は、裏面側にのみ電極層が形成されているため、両面に電極層が形成される両面電極型の太陽電池に比べて受光率を大きくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の太陽電池は、スパッタリング法により、半導体基板の裏面側の全面に透明電極層材料膜を製膜し、透明電極層材料膜上にエッチングペーストを塗布してレジスト層を形成する。その後、エッチング液たる塩酸によって透明電極層材料膜のレジスト層からの露出部分を除去し、レジスト層を剥離することで透明電極層をパターニングする。そして、パターン印刷法又は塗布法によって透明電極層上に銀によって構成される金属電極層を形成し、第1電極層および第2電極層を形成している。
すなわち、特許文献1の太陽電池は、透明電極層のパターニングの際に塩酸に浸すので、金属電極層として銀を使用する場合、金属電極層を形成した後に透明電極層のパターニングを行うと、金属電極層の銀成分が塩化銀となり、導電性が低下する。そのため、透明電極層のパターニング後に金属電極層を形成する必要があり、製造工程が複雑になる問題がある。
また、特許文献1の太陽電池は、透明電極層のパターニングの際に塩酸等のエッチング液に浸すと、エッチング液により他の半導体基板や半導体層に影響を与えるおそれもある。そのため、エッチング液に浸さずとも透明電極層のパターニングできる方法の開発が望まれていた。
【0005】
また、特許文献1の太陽電池は、第2領域における真性半導体層及びp型半導体層のパターニングの際に、所定の形状にパターニングした保護層をp型半導体層上に形成し、オゾンをフッ酸に溶解させた混合溶液等のエッチング液によって真性半導体層及びp型半導体層をパターニングし、保護層をアルカリ溶液で除去している。すなわち、特許文献1の太陽電池は、真性半導体層及びp型半導体層のパターニングに際して、強酸で半導体層を除去し、強アルカリによって保護層を除去する。そのため、環境や人体に影響が高い材料を使用する必要があり、エッチング液に使用せずとも半導体層のパターニングできる方法の開発が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、強アルカリや強酸等のエッチング液を使用せずとも透明電極層のパターニングができる太陽電池パネルの製造方法、半導体層のパターニングを効率的に行うことができる半導体製造装置、及び強アルカリや強酸等のエッチング液を使用せずとも半導体層のパターニングができる光電変換基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、光電変換基板上に透明電極層が積層された太陽電池パネルの製造方法であって、光電変換基板上に所定の形状にパターニングされた電極用レジスト層を形成する電極用レジスト層形成工程と、前記光電変換基板と前記電極用レジスト層に跨がって前記透明電極層を形成する透明電極層形成工程と、第1加熱温度以上に加熱し、前記電極用レジスト層の性状を変化させて前記光電変換基板から前記電極用レジスト層上の透明電極層を剥離する電極剥離工程を含む、太陽電池パネルの製造方法である。
【0008】
本様相によれば、第1加熱温度以上に加熱して電極用レジスト層の性状を変化させて光電変換基板から電極用レジスト層をその外側に形成された透明電極層ごと剥離するので、エッチング液を使用せずとも透明電極層のパターニングができる。
【0009】
好ましい様相は、前記電極用レジスト層は、前記第1加熱温度以上において、以下の(1)又は(2)の特性を有することである。
(1)固体から液体又は気体に変化する。
(2)前記光電変換基板に対する剥離強度が1/10以下になる。
【0010】
本様相によれば、電極用レジスト層が(1)の特性を有する場合には、固体形状を維持できないので光電変換基板上から剥離しやすく、電極用レジスト層が(2)の特性を有する場合には、ブロアー等による外力によって簡単に光電変換基板から剥離しやすい。
【0011】
好ましい様相は、前記太陽電池パネルは、前記光電変換基板の裏側主面側に第1電極層と第2電極層が形成されたものであり、前記第1電極層と前記第2電極層は、前記透明電極層を含み、前記電極剥離工程において前記第1電極層の透明電極層と前記第2電極層の透明電極層とに分割することである。
【0012】
本様相によれば、バックコンタクト型太陽電池パネルのように電極層が同一の主面側に形成された太陽電池パネルにおいて、簡単に透明電極層を分離でき、透明電極層同士が接触することによる短絡を防止できる。
【0013】
好ましい様相は、前記光電変換基板は、半導体基板の第1主面側に第1導電型半導体層と第2導電型半導体層が隣接して形成されており、前記電極用レジスト層形成工程において、前記第1導電型半導体層と、前記第2導電型半導体層に跨って前記電極用レジスト層を形成することである。
【0014】
本様相によれば、より透明電極層同士の接触による短絡を防止できる。
【0015】
ところで、透明電極層を構成する材料としてタングステンドープ酸化インジウム(以下、IWOともいう)が知られている。タングステンドープ酸化インジウムは、従来の酸化インジウム錫(以下、ITOともいう)に比べて高いホール移動度を有するため、ITOに代わる電極材料として期待されている。
しかしながら、IWOは、塩酸等のエッチング液では溶解せず、通常のウェットエッチングではエッチングできない問題がある。すなわち、IWOは、ITOとは異なり、通常のウェットエッチングではパターニングできない問題がある。
【0016】
好ましい様相は、前記透明電極層は、タングステンドープ酸化インジウムを含むことである。
【0017】
本様相によれば、加熱により電極用レジスト層の性状を変化させて透明電極層をパターニングするため、透明電極層としてタングステンドープ酸化インジウムを使用してもパターニングが可能である。
【0018】
好ましい様相は、前記光電変換基板は、半導体基板の第1主面上に第1真性半導体層及び第1導電型半導体層が形成された断面構造と、前記半導体基板の前記第1主面上に第2真性半導体層及び第2導電型半導体層が形成された断面構造を有するものであり、前記半導体基板上に第1真性半導体層を形成する第1真性半導体層形成工程と、前記第1真性半導体層上に第1導電型半導体層を形成する第1導電型半導体層形成工程と、前記第1導電型半導体層上に第1半導体用レジスト層を形成する第1半導体用レジスト層形成工程と、前記半導体基板上から前記第1半導体用レジスト層上に跨って第2真性半導体層を形成する第2真性半導体層形成工程と、前記第2真性半導体層上に第2導電型半導体層を形成する第2導電型半導体層形成工程と、第2加熱温度以上に加熱し、前記第1半導体用レジスト層の性状を変化させて前記第1導電型半導体層から前記第1半導体用レジスト層上の前記第2真性半導体層及び前記第2導電型半導体層を剥離する第1剥離工程を含むことである。
【0019】
本様相によれば、第2真性半導体層及び第2導電型半導体層の部分的な除去を加熱によって行えるので、エッチング液を使用せずとも第2真性半導体層及び第2導電型半導体層のパターニングができる。
【0020】
より好ましい様相は、前記半導体基板上に第2半導体用レジスト層を形成する第2半導体用レジスト層形成工程と、前記半導体基板上から前記第2半導体用レジスト層上に跨って第1真性半導体層を形成する前記第1真性半導体層形成工程と、第3加熱温度以上に加熱し、前記第2半導体用レジスト層の性状を変化させて前記半導体基板から前記第2半導体用レジスト層上の前記第1真性半導体層及び前記第1導電型半導体層を剥離する第2剥離工程を含むことである。
【0021】
本様相によれば、第1真性半導体層及び第1導電型半導体層の部分的な除去を加熱によって行えるので、エッチング液を使用せずとも第1真性半導体層及び第1導電型半導体層のパターニングができる。
【0022】
本発明の一つの様相は、所定の加熱温度で固体から液体又は気体に変化するレジスト層を使用して、半導体基板上に半導体層を形成する半導体製造装置であって、前記半導体基板上に所定のパターンのレジスト層を形成するレジスト層形成部と、前記半導体基板上から前記レジスト層に跨がって半導体層を製膜する半導体層形成部と、前記所定の加熱温度以上に加熱し、前記レジスト層を液体又は気体に変化させる加熱剥離部を備える、半導体製造装置である。
【0023】
本様相によれば、効率的に電極用レジスト層を加熱して剥離できる。
【0024】
本発明の一つの様相は、半導体基板の第1主面上に第1真性半導体層及び第1導電型半導体層が形成された断面構造と、前記半導体基板の前記第1主面上に第2真性半導体層及び第2導電型半導体層が形成された断面構造を有する光電変換基板の製造方法であって、前記半導体基板上に第1真性半導体層を形成する第1真性半導体層形成工程と、前記第1真性半導体層上に第1導電型半導体層を形成する第1導電型半導体層形成工程と、前記第1導電型半導体層上に第1半導体用レジスト層を形成する第1半導体用レジスト層形成工程と、前記半導体基板上から前記第1半導体用レジスト層上に跨って第2真性半導体層を形成する第2真性半導体層形成工程と、前記第2真性半導体層上に第2導電型半導体層を形成する第2導電型半導体層形成工程と、第2加熱温度以上に加熱し、前記第1半導体用レジスト層の性状を変化させて前記第1導電型半導体層から前記第1半導体用レジスト層上の前記第2真性半導体層及び前記第2導電型半導体層を剥離する第1剥離工程を含む、光電変換基板の製造方法である。
【0025】
本様相によれば、第2真性半導体層及び第2導電型半導体層の第1導電型半導体層上からの除去を加熱によって行えるので、エッチング液を使用せずとも第2真性半導体層及び第2導電型半導体層のパターニングができる。
【0026】
本発明の一つの様相は、半導体基板の第1主面上に第1真性半導体層及び第1導電型半導体層が形成された断面構造と、前記半導体基板の前記第1主面上に第2真性半導体層及び第2導電型半導体層が形成された断面構造を有する光電変換基板の製造方法であって、前記半導体基板上に第2半導体用レジスト層を形成する第2半導体用レジスト層形成工程と、前記半導体基板上から前記第2半導体用レジスト層上に跨って第1真性半導体層を形成する第1真性半導体層形成工程と、前記第1真性半導体層上に前記第1導電型半導体層を形成する第1導電型半導体層形成工程と、第2加熱温度以上に加熱し、前記第2半導体用レジスト層の性状を変化させて前記半導体基板から前記第2半導体用レジスト層上の前記第1真性半導体層及び前記第1導電型半導体層を剥離する第2剥離工程を含む、光電変換基板の製造方法である。
【0027】
本様相によれば、第1真性半導体層及び第1導電型半導体層の半導体基板上からの除去を加熱によって行えるので、エッチング液を使用せずとも第1真性半導体層及び第1導電型半導体層のパターニングができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の太陽電池パネルの製造方法によれば、強アルカリや強酸等のエッチング液を使用せずとも透明電極層のパターニングすることができる。
本発明の半導体製造装置によれば、半導体層のパターニングを効率的に行うことができる。
本発明の光電変換基板の製造方法によれば、強アルカリや強酸等のエッチング液を使用せずとも半導体層のパターニングができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態の太陽電池パネルの説明図であり、(a)は光電変換基板と電極層の関係を表す断面図であり、(b)は(a)の光電変換基板を詳細に表した断面図である。なお、理解を容易にするために(a),(b)のいずれにおいても透明電極層と金属電極層のみをハッチングで示し、残りはハッチングを省略している。
【
図2】本発明の第1実施形態で使用される半導体製造装置を概念的に示したブロック図である。
【
図3】
図1の太陽電池パネルの製造工程の説明図であり、(a)は第1製膜部で製膜した後の基板の断面図であり、(b)は第1レジスト層形成部で第1レジスト層を形成した後の基板の断面図であり、(c)は第2製膜部で製膜した後の基板の断面図である。なお、理解を容易にするために各工程で形成された層のみハッチングで示し、第1レジスト層を黒塗りで示し、残りの層はハッチングを省略する。
【
図4】
図3(c)に続く太陽電池パネルの製造工程の説明図であり、(a)は第1加熱剥離部で第1レジスト層を剥離した後の基板の断面図であり、(b)は第2レジスト層形成部で第2レジスト層を形成した後の基板の断面図であり、(c)は第3製膜部で製膜した後の基板の断面図である。なお、理解を容易にするために各工程で形成された層のみハッチングで示し、第2レジスト層を黒塗りで示し、残りの層はハッチングを省略する。
【
図5】
図4(c)に続く太陽電池パネルの製造工程の説明図であり、(a)は第1加熱剥離部で第2レジスト層を剥離した後の基板の断面図であり、(b)は第2レジスト層形成部で電極用レジスト層を形成した後の基板の断面図であり、(c)は透明電極層形成部で製膜した後の基板の断面図である。なお、理解を容易にするために各工程で形成された層のみハッチングで示し、電極用レジスト層を黒塗りで示し、残りの層はハッチングを省略する。
【
図6】
図5(c)に続く太陽電池パネルの製造工程の説明図であり、(a)は透明電極層形成部で製膜した後の基板の断面図であり、(b)は加熱剥離部で電極用レジスト層を剥離した後の基板の断面図である。なお、理解を容易にするために各工程で形成された層のみハッチングで示し、電極用レジスト層を黒塗りで示し、残りの層はハッチングを省略する。
【
図7】本発明の第2実施形態の太陽電池パネルの説明図であり、(a)は光電変換基板と電極層の関係を表す断面図であり、(b)は(a)の光電変換基板を詳細に表した断面図である。なお、理解を容易にするために(a),(b)のいずれにおいてもハッチングを省略している。
【
図8】本発明の第2実施形態で使用される半導体製造装置を概念的に示したブロック図である。
【
図9】
図7の太陽電池パネルの製造工程の説明図であり、(a)はレジスト層形成部でレジスト層を形成した後の基板の断面図であり、(b)は第2製膜部で製膜した後の基板の断面図であり、(c)は第3製膜部で製膜した後の基板の断面図である。なお、理解を容易にするために各工程で形成された層のみハッチングで示し、レジスト層を黒塗りで示し、残りの層はハッチングを省略する。
【
図10】
図9(c)に続く太陽電池パネルの製造工程の説明図であり、(a)は透明電極層形成部で製膜した後の基板の断面図であり、(b)は金属電極層形成部で製膜した後の基板の断面図であり、(c)は加熱剥離部でレジスト層を剥離した後の基板の断面図である。なお、理解を容易にするために各工程で形成された層のみハッチングで示し、レジスト層を黒塗りで示し、残りの層はハッチングを省略する。
【
図11】本発明の他の実施形態の太陽電池パネルの説明図であり、(a)は金属電極層形成工程後の基板の断面図であり、(b)は電極剥離工程後の基板の断面図である。なお、理解を容易にするために各工程で形成された層のみハッチングで示し、第2レジスト層を黒塗りで示し、残りの層はハッチングを省略する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0031】
本発明の第1実施形態の太陽電池パネル1は、
図1(a)のように、光電変換基板2の裏側主面57側に第1電極層3と第2電極層5が形成されたバックコンタクト型の太陽電池パネルである。
太陽電池パネル1は、第1電極層3と第2電極層5が隣接して設けられており、第1電極層3と第2電極層5との境界部分に短絡防止溝7,8を備えている。
【0032】
光電変換基板2は、PN接合を有し、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換部である。
光電変換基板2は、
図1(b)のように、半導体基板10の第1主面30側に半導体層16,20,17,21を備え、半導体基板10の第2主面31側に受光側半導体層11と反射防止層12を備えた多層基板である。
【0033】
光電変換基板2は、半導体基板10の第1主面30上に第1真性半導体層16、第1導電型半導体層17がこの順に積層された断面構造を有する第1領域35と、半導体基板10の第1主面30上に第2真性半導体層20、第2導電型半導体層21がこの順に積層された断面構造を有する第2領域36を備えている。
光電変換基板2は、第2主面31上に受光側半導体層11と反射防止層12をこの順に備えており、反射防止層12が太陽電池パネル1の受光側主面56を構成している。
【0034】
半導体基板10は、n型又はp型の半導体基板であり、具体的には、n型又はp型の結晶シリコン基板である。半導体基板10としては、単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を使用できる。
【0035】
第1真性半導体層16は、ドーパントを実質的に含まないシリコン薄膜であり、ドーパント濃度が第1導電型半導体層17のドーパント濃度の1/100以下であることが好ましい。
【0036】
第1導電型半導体層17は、ドーパントを含んだn型又はp型のシリコン系薄膜層であり、本実施形態ではp型のシリコン層である。
【0037】
第2真性半導体層20は、ドーパントを実質的に含まないシリコン薄膜であり、ドーパント濃度が第2導電型半導体層21のドーパント濃度の1/100以下であることが好ましい。
【0038】
第2導電型半導体層21は、ドーパントを含み、第1導電型半導体層17の導電型とは逆の導電型を有するシリコン層である。
すなわち、第1導電型半導体層17の導電型がn型の場合は、第2導電型半導体層21の導電型はp型であり、第1導電型半導体層17の導電型がp型の場合は、第2導電型半導体層21の導電型はn型である。
上記したように本実施形態では、第1導電型半導体層17は、p型のシリコン層であるから、第2導電型半導体層21は、n型の半導体層で形成されている。
【0039】
受光側半導体層11は、ドーパントを実質的に含まない真性シリコン薄膜である。
【0040】
反射防止層12は、透光性をもち、且つ光の反射を抑制する低反射層である。
反射防止層12は、例えば、酸化シリコン、酸化亜鉛、酸化チタンなどの金属酸化物や窒化シリコン等の金属窒化物などで形成できる。
反射防止層12は、入射光の光閉じ込め効果の観点から窒化シリコンで形成されていることが好ましい。
【0041】
第1電極層3は、第2電極層5と対をなし、第2電極層5とともに光電変換基板2で光電変換された電気エネルギーを取り出す電極である。
第1電極層3は、
図1(b)のように、第1領域35において第1導電型半導体層17上に形成されており、第2電極層5は、第2領域36において第2導電型半導体層21上に形成されている。
【0042】
電極層3,5は、
図1(a)のように、それぞれ透明電極層23と、金属電極層25で構成されている。
透明電極層23は、透明性と導電性を有する透明導電層であり、具体的には、酸化インジウム錫(ITO)やタングステンドープ酸化インジウム(IWO)などの透明導電性酸化物で構成された透明導電性酸化物層である。
本実施形態の透明電極層23は、IWOを使用している。
金属電極層25は、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル、パラジウム等の金属又はこれらの金属を含む合金で形成できる。
【0043】
短絡防止溝7,8は、
図1(a)のように、第1電極層3と第2電極層5が接触することによる短絡を防止する溝である。
短絡防止溝7,8は、
図1(b)のように、導電型半導体層17,21に跨って設けられ、導電型半導体層17,21を底部とする溝である。
短絡防止溝7,8は、導電型半導体層17,21の境界部分に沿って延びている。
【0044】
続いて、太陽電池パネル1の製造に好適に使用できる製造装置201について説明する。
【0045】
製造装置201は、
図2のように、クラスター構造を持つ半導体製造装置であり、第1クラスター部202と、第2クラスター部203を備えている。
第1クラスター部202は、第1移送部210を中心として、搬入部211と、第1製膜部212と、第2製膜部213と、第3製膜部214と、第1連結部218と、第1仮置部217と、第1加熱剥離部216と、第1レジスト層形成部215とが周方向に並んでいる。
第1移送部210は、搬入部211と、製膜部212~214と、第1連結部218と、第1仮置部217と、第1加熱剥離部216と、第1レジスト層形成部215間を相互に基材を移送する移送手段である。
搬入部211は、外部から半導体基板10を第1クラスター部202内に搬入する部位である。
第1製膜部212は、プラズマCVD装置を備え、受光側半導体層11及び反射防止層12を製膜する部位である。
第2製膜部213は、プラズマCVD装置を備え、第1真性半導体層16及び第1導電型半導体層17を製膜する半導体層形成部である。
第3製膜部214は、プラズマCVD装置を備え、第2真性半導体層20及び第2導電型半導体層21を製膜する半導体層形成部である。
第1レジスト層形成部215は、加熱により性状が変化する半導体用レジスト材料を塗布可能な塗布装置を備えており、所定のパターンのレジスト層15,18を形成する部位である。
第1加熱剥離部216は、レジスト層15,18を加熱し、レジスト層15,18の性状を変化させて剥離する剥離部であり、本実施形態では、レジスト層15,18を融解させて剥離する熱融解剥離部である。
第1加熱剥離部216は、レジスト層15,18の所定の温度T1,T2以上の温度に加熱可能な加熱装置と、融解したレジスト層15,18を基板から剥がし外部に排出する排出装置を備えている。
排出装置は、レジスト層15,18に外力を加えてレジスト層15,18を基板から剥がすブロアー等の吹付手段を備えていてもよいし、加熱により液体化したレジスト層15,18を吸引する吸引手段を備えていてもよい。
第1仮置部217は、第1移送部210で移送する基材を一時的に仮置きする部位であり、下流側の工程が滞っている場合に基板を受け取ることが可能となっている。
第1連結部218は、第2クラスター部203と連結され、第1クラスター部202から第2クラスター部203に製膜済みの基板を搬出する部位である。
【0046】
第2クラスター部203は、
図2のように、第2移送部220を中心として、第2連結部221と、第2レジスト層形成部222と、透明電極層形成部223と、金属電極層形成部224と、搬出部227と、第2仮置部226と、第2加熱剥離部225とが周方向に並んでいる。
第2連結部221は、第1クラスター部202の第1連結部218と連結され、第1クラスター部202から搬出された基板を第2クラスター部203内に搬入する部位である。
第2レジスト層形成部222は、加熱により性状が変化する電極用レジスト材料を塗布可能な塗布装置を備えており、所定のパターンの電極用レジスト層22を形成する部位である。
透明電極層形成部223は、スパッタ装置を備え、透明電極層23を製膜する製膜部である。
金属電極層形成部224は、真空蒸着装置を備え、金属電極層25を製膜する金属電極層形成部である。
第2加熱剥離部225は、電極用レジスト層22を加熱し、電極用レジスト層22の性状を変化させて剥離する加熱剥離部であり、本実施形態では、電極用レジスト層22を融解させて剥離する熱融解剥離部である。
第2加熱剥離部225は、電極用レジスト層22の所定の温度T3以上の温度に加熱可能な加熱装置と、融解した電極用レジスト層22を基板から剥がし外部に排出する排出装置を備えている。
排出装置は、電極用レジスト層22に外力を加えて電極用レジスト層22を基板から剥がすブロアー等の吹付手段を備えていてもよいし、加熱により液体化した電極用レジスト層22を吸引する吸引手段を備えていてもよい。
第2仮置部226は、第2移送部220で移送する基板を一時的に仮置きする部位であり、下流側の工程が滞っている場合に基板を受け取ることが可能となっている。
搬出部227は、製膜済みの太陽電池パネル1を第2クラスター部203から外部に搬出する部位である。
【0047】
続いて、本実施形態の製造装置201を用いた太陽電池パネル1の製造方法について説明する。
【0048】
まず、半導体基板10を第1クラスター部202の搬入部211からから搬入し、第1移送部210によって第1製膜部212に半導体基板10を移送する。そして、
図3(a)のように第1製膜部212において半導体基板10の第2主面31上に受光側半導体層11を製膜し(受光側半導体層形成工程)、さらに受光側半導体層11上に反射防止層12を製膜する(反射防止層形成工程)。
【0049】
続いて、第1移送部210によって第1製膜部212から第1レジスト層形成部215に受光側半導体層11及び反射防止層12が積層された基板を移送し、
図3(b)のように第1レジスト層形成部215において半導体基板10の第1主面30上に所定のパターンの第1レジスト層15(第2半導体用レジスト層)を製膜する(第1レジスト層形成工程,第2半導体用レジスト層形成工程)。
【0050】
このとき形成される第1レジスト層15は、耐熱性を有し、半導体層16,17の製膜時において形状を維持できるものである。
第1レジスト層15は、温度応答性材料で構成され、所定の加熱温度T1(第3加熱温度)以上になると、性状が変化するものである。
具体的には、第1レジスト層15は、以下の(1)又は(2)の特性を有する。
(1)固体から液体又は気体に変化する。
(2)半導体基板10に対する剥離強度が1/10以下になる。
本実施形態の第1レジスト層15は、(1)の特性を有し、温度応答カプセルが配合されたレジスト層であり、加熱温度T1未満では固体であり、加熱温度T1以上では液体又は気体となる。
すなわち、本実施形態の加熱温度T1は、第1レジスト層15の融解温度又は気化温度であり、半導体層16,17の製膜時の温度よりも高い温度である。
【0051】
続いて、第1移送部210によって第1レジスト層形成部215から第2製膜部213に第1レジスト層15が形成された基板を移送し、
図3(c)のように、第2製膜部213において半導体基板10上の第1レジスト層15からの露出部分から第1レジスト層15上に跨って第1真性半導体層16を製膜し(第1真性半導体層形成工程)、さらに第1真性半導体層16上に第1導電型半導体層17を製膜する(第1導電型半導体層形成工程)。
【0052】
続いて、第1移送部210によって第2製膜部213から第1加熱剥離部216に半導体層16,17が形成された基板を移送し、
図4(a)のように、第1加熱剥離部216において第1レジスト層15を半導体基板10から加熱剥離して除去する(第1除去工程,第2剥離工程)。
【0053】
このとき、第1レジスト層15は、第1加熱剥離部216の加熱装置によって加熱されて性状が変化し、半導体基板10から剥がれやすくなり、排出装置によって半導体基板10上から剥がされ外部に排出される。
またこのとき、第1レジスト層15の半導体基板10からの剥離に伴って、半導体基板10を基準として第1レジスト層15の外側に位置し、かつ第1レジスト層15が下地となる第1真性半導体層16の一部及び第1導電型半導体層17の一部が剥離されて除去される。
【0054】
続いて、第1移送部210によって第1加熱剥離部216から第1レジスト層形成部215に第1レジスト層15が除去された基板を移送し、
図4(b)のように第1レジスト層形成部215において、第1レジスト層15による除去により残った第1導電型半導体層17上に第2レジスト層18(第1半導体用レジスト層)を形成する(第2レジスト層形成工程,第1半導体用レジスト層形成工程)。
【0055】
このとき形成される第2レジスト層18は、第1レジスト層15と同様、耐熱性を有し、半導体層20,21の製膜時において形状を維持できるものである。
第2レジスト層18は、温度応答性材料で構成され、所定の加熱温度T2(第2加熱温度)以上になると、性状が変化するものである。
具体的には、第2レジスト層18は、以下の(1)又は(2)の特性を有する。
(1)固体から液体又は気体に変化する。
(2)第1導電型半導体層17に対する剥離強度が1/10以下になる。
本実施形態の第2レジスト層18は、(1)の特性を有し、温度応答カプセルが配合されたレジスト層であり、加熱温度T2未満では固体であり、加熱温度T2以上では液体又は気体となる。
すなわち、本実施形態の加熱温度T2は、第2レジスト層18の融解温度又は気化温度であり、半導体層20,21の製膜時の温度よりも高い温度である。
【0056】
続いて、第1移送部210によって第1レジスト層形成部215から第3製膜部214に第2レジスト層18が形成された基板を移送し、
図4(c)のように第3製膜部214において半導体基板10上から第2レジスト層18上に跨って第2真性半導体層20を形成し(第2真性半導体層形成工程)、さらに第2真性半導体層20上に第2導電型半導体層21を形成する(第2導電型半導体層形成工程)。
【0057】
続いて、第1移送部210によって第3製膜部214から第1加熱剥離部216に半導体層20,21が形成された基板を移送し、
図5(a)のように第1加熱剥離部216において第2レジスト層18を第1導電型半導体層17から加熱剥離して除去する(第2除去工程,第1剥離工程)。
【0058】
このとき、第2レジスト層18は、第1加熱剥離部216の加熱装置によって加熱されて性状が変化し、基板から剥がれやすくなり、排出装置によって基板上から剥がされ外部に排出される。
またこのとき、第2レジスト層18の基板からの剥離に伴って、半導体基板10を基準として第2レジスト層18の外側に位置し、かつ第2レジスト層18が下地となる第2真性半導体層20の一部及び第2導電型半導体層21の一部が剥離されて除去され、光電変換基板2が形成される。
【0059】
続いて、第1移送部210によって第1加熱剥離部216から第1連結部218に光電変換基板2を移送し、第1クラスター部202の第1連結部218から第2クラスター部203の第2連結部221に光電変換基板2を移送する。
【0060】
第2連結部221に光電変換基板2が移送されると、第2移送部220によって第2連結部221から第2レジスト層形成部222に光電変換基板2を移送する。そして、
図5(b)のように第2レジスト層形成部222において、光電変換基板2の第1導電型半導体層17と第2導電型半導体層21の境界部分において第1導電型半導体層17と第2導電型半導体層21に跨って電極用レジスト層22を形成する(電極用レジスト層形成工程)。
【0061】
このとき形成される電極用レジスト層22は、耐熱性を有し、電極層23,25の製膜時において形状を維持できるものである。
電極用レジスト層22は、温度応答性材料で構成され、所定の加熱温度T3(第1加熱温度)以上になると、性状が変化するものである。
具体的には、電極用レジスト層22は、以下の(1)又は(2)の特性を有する。
(1)固体から液体又は気体に変化する。
(2)光電変換基板2の第1導電型半導体層17及び第2導電型半導体層21に対する剥離強度がそれぞれ1/10以下になる。
本実施形態の電極用レジスト層22は、(1)の特性を有し、温度応答カプセルが配合されたレジスト層であり、加熱温度T3未満では固体であり、加熱温度T3以上では液体又は気体となる。
すなわち、本実施形態の加熱温度T3は、電極用レジスト層22の融解温度又は気化温度であり、少なくとも透明電極層23の製膜時の温度よりも高い温度である。
【0062】
続いて、第2移送部220によって第2レジスト層形成部222から透明電極層形成部223に電極用レジスト層22が形成された基板を移送し、
図5(c)のように透明電極層形成部223において、基板の第1主面30側の全面に透明電極層23を形成する(透明電極層形成工程)。
【0063】
このとき、透明電極層23は、第1導電型半導体層17、電極用レジスト層22、及び第2導電型半導体層21に跨って形成される。
【0064】
続いて、第2移送部220によって透明電極層形成部223から金属電極層形成部224に透明電極層23が形成された基板を移送し、
図6(a)のように、基板の第1主面30側の全面に金属電極層25を形成する(金属電極層形成工程)。
【0065】
このとき、金属電極層25は、透明電極層23上に形成される。
【0066】
続いて、第2移送部220によって金属電極層形成部224から第2加熱剥離部225に金属電極層25が形成された基板を移送し、
図6(b)のように、第2加熱剥離部225において電極用レジスト層22を基板から加熱剥離して除去する(電極剥離工程)。
【0067】
このとき、電極用レジスト層22は、第2加熱剥離部225の加熱装置によって加熱されて性状が変化し、基板から剥がれやすくなり、排出装置によって基板10上から剥がされ外部に排出される。
このとき、電極用レジスト層22の基板からの剥離に伴って、半導体基板10を基準として電極用レジスト層22の外側に位置し、かつ電極用レジスト層22が下地となる透明電極層23の一部及び金属電極層25の一部が剥離されて除去される。
このとき、電極用レジスト層22が剥離されることによって短絡防止溝7,8が形成される。また、短絡防止溝7,8によって透明電極層23及び金属電極層25が複数に分割されて第1領域35と第2領域36に区画され、第1電極層3と第2電極層5が形成される。
【0068】
続いて、第2移送部220によって第2加熱剥離部225から搬出部227に電極用レジスト層22が除去された基板を移送し、搬出部227から第2クラスター部203の外部に排出する。
【0069】
そして、必要に応じてインターコネクタ等の配線部材を電極層3,5に取り付けて太陽電池パネル1が完成する。
【0070】
本実施形態の太陽電池パネル1の製造方法によれば、電極用レジスト層22を加熱温度T3以上に加熱して、電極用レジスト層22の性状を変化させて光電変換基板2から電極用レジスト層22をその外側に形成された透明電極層23及び金属電極層25ごと剥離する。そのため、エッチング液を使用せずとも透明電極層23及び金属電極層25のパターニングができる。
また、本実施形態の太陽電池パネル1の製造方法によれば、透明電極層23を溶解して透明電極層23のパターニングを行わないので、エッチング液によって溶解しにくいタングステンドープ酸化インジウムを含む透明電極層23であってもパターニング可能である。
【0071】
本実施形態の太陽電池パネル1の製造方法によれば、レジスト層15,18を加熱温度T1,T2以上にそれぞれ加熱して、レジスト層15,18の性状を変化させて半導体層16,17,20,21の一部を剥離し、半導体層16,17,20,21のパターニングを行う。そのため、エッチング液を使用せずとも半導体層16,17,20,21のパターニングができる。
【0072】
本実施形態の太陽電池パネル1によれば、第1電極層3と第2電極層5との境界部分に短絡防止溝7,8が形成されているため、電極層3,5間で接触することによる短絡を防止できる。
【0073】
本実施形態の製造装置201によれば、加熱剥離部216,225を備えているため、レジスト層15,18,22の熱剥離を行いやすい。
【0074】
続いて、本発明の第2実施形態の太陽電池パネル301について説明する。なお、第1実施形態の太陽電池パネル1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。以下、同様とする。
【0075】
本実施形態の太陽電池パネル301は、
図7のように、光電変換基板302の受光側主面306上に第1電極層303が形成され、裏側主面307上に第2電極層305が形成された両面電極型の太陽電池パネルである。
【0076】
光電変換基板302は、
図7(b)のように、半導体基板10の第1主面30側に第1真性半導体層16、第1導電型半導体層17がこの順に積層されており、第2主面31側に第2真性半導体層20、第2導電型半導体層21がこの順に積層されている。
光電変換基板302は、第1主面30の一部が露出しており、さらに第1主面30から連続して立ち上がる端面308,309の一部又は全部が露出している。
第1電極層303は、光電変換基板302を基準として受光側主面306側に設けられる電極層であり、透明電極層23aと、金属電極層25aで構成されている。
第2電極層305は、光電変換基板302を基準として裏側主面307側に設けられる電極層であり、透明電極層23bと、金属電極層25bで構成されている。
【0077】
続いて、太陽電池パネル301の製造に好適に使用できる製造装置401について説明する。
【0078】
製造装置401は、
図8のように、クラスター構造を持つ半導体装置であり、クラスター部402を備えている。
クラスター部402は、第1移送部210を中心として、搬入部211と、第2製膜部213と、第3製膜部214と、透明電極層形成部223と、搬出部227と、金属電極層形成部424と、加熱剥離部425と、レジスト層形成部422とが周方向に並んでいる。
金属電極層形成部424は、印刷装置を備え、導電性ペーストによって金属電極層25を製膜する製膜部である。
加熱剥離部425は、レジスト層322を加熱し、レジスト層322の性状を変化させて剥離する加熱剥離部であり、本実施形態では、レジスト層322を融解させて剥離する熱融解剥離部である。
加熱剥離部425は、レジスト層322の所定の温度T4以上の温度に加熱可能な加熱装置と、融解したレジスト層322を基板から剥がし外部に排出する排出装置を備えている。
排出装置は、レジスト層322に外力を加えてレジスト層322を基板から剥がすブロアー等の吹付手段を備えていてもよいし、加熱により液体化したレジスト層322を吸引する吸引手段を備えていてもよい。
レジスト層形成部422は、加熱により性状が変化するレジスト材料を塗布可能な塗布装置を備えており、所定のパターンのレジスト層322を形成する部位である。
【0079】
続いて、本実施形態の製造装置401を用いた太陽電池パネル301の製造方法について説明する。
【0080】
まず、半導体基板10を搬入部211からクラスター部402内に搬入し、第1移送部210によってレジスト層形成部422に半導体基板10を移送し、
図9(a)のようにレジスト層形成部422において半導体基板10の第1主面30上に所定のパターンのレジスト層322を製膜する(レジスト層形成工程)。
【0081】
このとき、レジスト層322は、半導体基板10の端部に設けられ、端面308,309に沿って延びている。また、レジスト層322は、半導体基板10の第1主面30上から端面308,309側の一部に跨って設けられている。
【0082】
続いて、第1移送部210によってレジスト層形成部422から第2製膜部213にレジスト層322が形成された基板を移送し、
図9(b)のように第2製膜部213において半導体基板10上のレジスト層322からの露出部分からレジスト層322上に跨って第1真性半導体層16を製膜し(第1真性半導体層形成工程)、さらに第1真性半導体層16上に第1導電型半導体層17を製膜する(第1導電型半導体層形成工程)。
【0083】
このとき、第1真性半導体層16は、第1主面30側の全体に形成され、端面308,309まで回り込んで端面308,309でもレジスト層322上に形成されている。
第1導電型半導体層17は、第1真性半導体層16上の全体に形成され、端面308,309まで回り込んで端面308,309側でも第1真性半導体層16上に形成されている。
【0084】
続いて、第1移送部210によって第2製膜部213から第3製膜部214に半導体層16,17が形成された基板を移送し、
図9(c)のように第3製膜部214において半導体基板10の第2主面31上に第2真性半導体層20を形成し(第2真性半導体層形成工程)、さらに第2真性半導体層20上に第2導電型半導体層21を形成する(第2導電型半導体層形成工程)。
【0085】
このとき、第2真性半導体層20は、第2主面31側の全体に形成され、端面308,309まで回り込んで端面308,309側でも第2導電型半導体層21上に形成されている。
第2導電型半導体層21は、第2真性半導体層20上の全体に形成され、端面308,309まで回り込んで端面308,309側でも第2真性半導体層20上に形成されている。すなわち、第1導電型半導体層17と第2導電型半導体層21との間には、第2真性半導体層20が介在している。
【0086】
続いて、第1移送部210によって第3製膜部214から透明電極層形成部223に半導体層20,21が形成された基板を移送し、
図10(a)のように透明電極層形成部223において基板の両面に透明電極層23a,23bを形成する(透明電極層形成工程)。すなわち、第1導電型半導体層17上に透明電極層23aを製膜し、第2導電型半導体層21上に透明電極層23bを製膜する。
【0087】
このとき、第1透明電極層23aは、第1導電型半導体層17上の全体に形成され、端面308,309まで回り込んで端面308,309側で第2導電型半導体層21上に形成されている。第2透明電極層23bは、第2導電型半導体層21上の全体に形成され、端面308,309まで回り込んで端面308,309側で第1透明電極層23a上に形成されている。すなわち、透明電極層23a,23bは、端面308,309側で導通している。
【0088】
続いて、第1移送部210によって透明電極層形成部223から金属電極層形成部424に透明電極層23a,23bが形成された基板を移送し、
図10(b)のように金属電極層形成部424において透明電極層23a,23b上に金属電極層25a,25bを形成する(金属電極層形成工程)。
【0089】
このとき、第1金属電極層25aは、櫛状のパターンで形成されており、所定の方向に延びたバスバー電極部と、バスバー電極部に対する直交方向に延びるフィンガー電極部を構成している。
第2金属電極層25bは、櫛状のパターンで形成されており、所定の方向に延びたバスバー電極部と、バスバー電極部に対する直交方向に延びるフィンガー電極部を構成している。
【0090】
続いて、第1移送部210によって金属電極層形成部424から加熱剥離部425に金属電極層25a,25bが形成された基板を移送し、
図10(c)のように加熱剥離部425においてレジスト層322を基板から加熱剥離する(電極剥離工程)。
【0091】
このとき、レジスト層322が加熱剥離されることで、半導体基板10を基準としてレジスト層322の外側に位置し、かつレジスト層322が下地となる半導体層16,17の一部及び第1透明電極層23aの一部が剥がされて除去され、半導体基板10の一部が露出する。また、端面308,309でも、レジスト層322が剥がれて下地となる半導体層16,17の一部及び第1透明電極層23aの一部が剥がされて除去され、半導体基板10の端面308,309の一部が露出する。
【0092】
続いて、第1移送部210によって加熱剥離部425から搬出部227にレジスト層322が除去された基板を移送し、搬出部227からクラスター部402の外部に排出する。
【0093】
そして、必要に応じてインターコネクタ等の配線部材を電極層303,305に取り付けて太陽電池パネル301が完成する。
【0094】
本実施形態の太陽電池パネル301によれば、半導体基板10の端面308,309近傍において、半導体層16,17及び透明電極層23aと、半導体層20,21及び透明電極層23bが分離されている。そのため、第1電極層303と第2電極層305との短絡を防止できる。
【0095】
上記した実施形態では、レジスト層15,18,22,322は、所定の温度以上に加熱したときに、固体から液体又は気体に変化するものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。レジスト層15,18,22,322は、所定の温度以上に加熱したときに、被積層面に対する剥離強度が1/10以下になるものであってもよい。
【0096】
上記した第1実施形態では、電極層3,5及び半導体層16,17,20,21のパターニングをレジスト層15,18,22の加熱剥離によって行っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。電極層3,5のパターニングのみを電極用レジスト層22の剥離によって行い、他の半導体層16,17,20,21のパターニングを他の手法によってパターニングしてもよい。
【0097】
上記した第1実施形態では、金属電極層25を製膜してから電極用レジスト層22の剥離を行い、透明電極層23のパターニングを行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。電極用レジスト層22の剥離を行って透明電極層23のパターニングを行ってから金属電極層25を製膜してもよい。この場合、金属電極層25は塗布法や印刷法によって形成されることが好ましい。
【0098】
上記した第2実施形態では、第2金属電極層25bは、所定の形状にパターニングされていたが、本発明はこれに限定されるものではない。第2金属電極層25bは、裏側主面307全体、すなわち、第2透明電極層23b全体に形成されていてもよい。
【0099】
上記した第2実施形態では、レジスト層322を第1主面30から端面308,309に跨って設けていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図11(a)のようにレジスト層322を第1主面30上のみに設けてもよい。この場合、
図11(b)のように電極剥離工程においてレジスト層322上の半導体層16,17及び透明電極層23aが除去されて短絡防止溝537,538が形成されることとなる。
【0100】
上記した第2実施形態では、半導体基板10と第1真性半導体層16の間にレジスト層322を設けていたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1真性半導体層16と第1導電型半導体層17の間にレジスト層322を設けてパターニングを行ってもよい。
【0101】
上記した第2実施形態では、第1主面30側にレジスト層322を設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。第2主面31側にレジスト層322を設けてもよい。この場合、レジスト層322は、半導体基板10と第2真性半導体層20の間、又は第2真性半導体層20と第2導電型半導体層21の間に設けることが好ましい。
【0102】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0103】
1,301 太陽電池パネル
2,302 光電変換基板
3,303 第1電極層
5,305 第2電極層
7,8,337,338 短絡防止溝
10 半導体基板
15 第1レジスト層(第2半導体用レジスト層)
16 第1真性半導体層
17 第1導電型半導体層
18 第2レジスト層(第1半導体用レジスト層)
20 第2真性半導体層
21 第2導電型半導体層
22 電極用レジスト層
23 透明電極層
23a 第1透明電極層
23b 第2透明電極層
30 第1主面
57,307 裏側主面
201,401 製造装置
215 第1レジスト層形成部
216 第1加熱剥離部
222 第2レジスト層形成部
223 透明電極層形成部
224,424 金属電極層形成部
225 第2加熱剥離部
308,309 端面
425 加熱剥離部