(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075810
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】樹脂シート
(51)【国際特許分類】
C08F 222/40 20060101AFI20240529BHJP
C08L 35/00 20060101ALI20240529BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20240529BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C08F222/40
C08L35/00
C08K5/3492
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061155
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 和恵
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 康貴
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4M109
【Fターム(参考)】
4J002BC131
4J002BH021
4J002EU186
4J002EX067
4J002EX077
4J002EX087
4J002FD346
4J002FD347
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GQ01
4J100AB15R
4J100AM55P
4J100AM55Q
4J100AM59Q
4J100BA02P
4J100BA03R
4J100BC04P
4J100BC43Q
4J100BC44Q
4J100BC45P
4J100BC67P
4J100CA04
4J100CA05
4J100JA03
4J100JA44
4M109AA01
4M109CA26
4M109EA07
4M109EB02
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB13
4M109EC09
(57)【要約】
【課題】埋め込み性を向上させることができる樹脂シートを提供すること。
【解決手段】(A)樹脂成分を含有する樹脂組成物から形成される樹脂シートであって、前記(A)樹脂成分が、(A1)第1のマレイミド樹脂を含有し、前記(A1)第1のマレイミド樹脂が、1分子中に2つ以上のマレイミド基を有し、少なくとも1対の2つのマレイミド基を連結する結合基が、主鎖に4つ以上のメチレン基を有するマレイミド樹脂であり、前記樹脂組成物の(A)樹脂成分の合計量を100質量%とした際の前記(A1)第1のマレイミド樹脂の含有量が、30質量%以上58質量%以下である、樹脂シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)樹脂成分を含有する樹脂組成物から形成される樹脂シートであって、
前記(A)樹脂成分が、(A1)第1のマレイミド樹脂を含有し、
前記(A1)第1のマレイミド樹脂が、1分子中に2つ以上のマレイミド基を有し、少なくとも1対の2つのマレイミド基を連結する結合基が、主鎖に4つ以上のメチレン基を有するマレイミド樹脂であり、
前記樹脂組成物の(A)樹脂成分の合計量を100質量%とした際の前記(A1)第1のマレイミド樹脂の含有量が、30質量%以上58質量%以下である、
樹脂シート。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂シートにおいて、
前記(A)樹脂成分が、さらに(A2)第2のマレイミド樹脂を含有し、
前記(A2)第2のマレイミド樹脂が、(A1)第1のマレイミド樹脂とは化学構造が異なるマレイミド樹脂である、
樹脂シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂シートにおいて、
前記(A2)第2のマレイミド樹脂が、1分子中に2つ以上のマレイミド基及び2つ以上のフェニレン基を含むマレイミド樹脂である、
樹脂シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
前記樹脂組成物が、さらに(B)密着性付与剤を有する化合物を含有する、
樹脂シート。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂シートにおいて、
前記(B)密着性付与剤が、(B1)トリアジン骨格を有する化合物を含有する、
樹脂シート。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂シートにおいて、
前記(B)密着性付与剤が、1分子中に、塩基性基を有し、かつトリアジン骨格を有する化合物(B1)である、
樹脂シート。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂シートにおいて、
前記(B)密着性付与剤が、1分子中に、トリアジン骨格及びイミダゾール構造を有する化合物である、
樹脂シート。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
前記(B)密着性付与剤が、(B2)カップリング剤を含有する、
樹脂シート。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
前記(A)樹脂成分が、さらに(A3)アリル樹脂を含有する、
樹脂シート。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の樹脂シートであって、
前記樹脂シートが、間隙を埋め込むために用いられる、
樹脂シート。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の樹脂シートであって、
前記樹脂シートが、半導体素子を封止すること、或いは、半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いられる、
樹脂シート。
【請求項12】
請求項11に記載の樹脂シートにおいて、
前記樹脂シートが、複数の半導体チップを一括で封止するために用いられる、
樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体に用いる樹脂シートに、シリカ等の無機フィラーを配合することが検討されている。特許文献1には、ポリエチレンテレフタレート等の支持体と、該支持体上に形成された樹脂組成物層と、該樹脂組成物層を保護するポリプロピレンフィルム等の保護フィルムとがこの順で積層された接着フィルムが開示されている。特許文献1に記載の樹脂組成物は、多官能エポキシ樹脂、硬化剤、フェノキシ樹脂、及び無機充填材を含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、200℃以上の高温動作が想定されるパワー半導体素子に適用するにあたり、特許文献1に記載の樹脂組成物は、耐熱性が十分とはいえなかった。そこで、耐熱性向上のために、マレイミド樹脂を熱硬化性成分として用いることが検討されている。しかしながら、マレイミド樹脂を用いた熱硬化性の樹脂組成物を使用した場合に、半導体素子を封止する際の埋め込み性が不十分となる場合があることが分かった。
【0005】
本発明は、埋め込み性を向上させることができる樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、(A)樹脂成分を含有する樹脂組成物から形成される樹脂シートであって、前記(A)樹脂成分が、(A1)第1のマレイミド樹脂を含有し、前記(A1)第1のマレイミド樹脂が、1分子中に2つ以上のマレイミド基を有し、少なくとも1対の2つのマレイミド基を連結する結合基が、主鎖に4つ以上のメチレン基を有するマレイミド樹脂であり、前記樹脂組成物の(A)樹脂成分の合計量を100質量%とした際の前記(A1)第1のマレイミド樹脂の含有量が、30質量%以上58質量%以下である、樹脂シートが提供される。
【0007】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(A)樹脂成分が、さらに(A2)第2のマレイミド樹脂を含有し、前記(A2)第2のマレイミド樹脂が、(A1)第1のマレイミド樹脂とは化学構造が異なるマレイミド樹脂であることが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(A2)第2のマレイミド樹脂が、1分子中に2つ以上のマレイミド基及び2つ以上のフェニレン基を含むマレイミド樹脂であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記樹脂組成物が、さらに(B)密着性付与剤を有する化合物を含有することが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(B)密着性付与剤が、(B1)トリアジン骨格を有する化合物を含有することが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(B)密着性付与剤が、1分子中に、塩基性基を有し、かつトリアジン骨格を有する化合物(B1)であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(B)密着性付与剤が、1分子中に、トリアジン骨格及びイミダゾール構造を有する化合物であることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(B)密着性付与剤が、(B2)カップリング剤を含有することが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(A)樹脂成分が、さらに(A3)アリル樹脂を含有することが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記樹脂シートが、間隙を埋め込むために用いられることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記樹脂シートが、半導体素子を封止すること、或いは、半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いられることが好ましい。
【0017】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記樹脂シートが、複数の半導体チップを一括で封止するために用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、埋め込み性を向上させることができる樹脂シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る積層体の断面概略図である。
【
図2】埋め込み性の試験片であるパッケージ部品の作製方法を説明するための図である。
【
図3】埋め込み性の試験片であるパッケージ部品を示す図であり、
図3(a)が上面図であり、
図3(b)が断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[樹脂組成物]
まず、本実施形態に係る樹脂シートを形成するための樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)樹脂成分を含有する。本実施形態に係る(A)樹脂成分は、(A1)第1のマレイミド樹脂を含有する。
【0021】
((A)樹脂成分)
(A)樹脂成分(以下、単に「(A)」と称する場合がある)は、弾性率やガラス転移点など樹脂組成物の物性を制御する性質を有する。本実施形態における(A)樹脂成分は、前述のとおり、(A1)第1のマレイミド樹脂(以下、単に「(A1)」と称する場合がある)を含有する。
【0022】
(A1)第1のマレイミド樹脂
本実施形態における(A1)第1のマレイミド樹脂は、1分子中に2つ以上のマレイミド基を有し、少なくとも1対の2つのマレイミド基を連結する結合基が、主鎖に4つ以上のメチレン基を有するマレイミド樹脂である。
ここで、2つのマレイミド基を連結する結合基は、硬化物の柔軟性の観点から、主鎖に6つ以上のメチレン基を有することが好ましく、主鎖に8つ以上のメチレン基を有することがより好ましく、主鎖に10以上のメチレン基を有することが特に好ましい。また、これらのメチレン基は、連結して、炭素数4以上のアルキレン基となっていることがより好ましい。このアルキレン基において、少なくとも1つの-CH2-は、-CH2-O-又は-O-CH2-で置き換えられていてもよい。
また、2つのマレイミド基を連結する結合基は、硬化物の柔軟性の観点から、1つ以上の側鎖を有することが好ましい。この側鎖としては、アルキル基及びアルコキシ基等が挙げられる。さらに、2つ以上の側鎖がある場合には、側鎖同士が結合して、脂環構造を形成していてもよい。
【0023】
この(A1)の使用により、樹脂シートの耐熱性を向上させつつ、埋め込み性も向上できる。また、(A1)は他のマレイミド樹脂を用いた場合の相溶性も高い。
【0024】
本実施形態における(A1)第1のマレイミド樹脂は、硬化物の柔軟性及び耐熱性の観点から、下記一般式(1)で表されることが好ましい。
【0025】
【0026】
前記一般式(1)において、n1は、0以上の整数であり、1以上10以下の整数であることが好ましく、1以上5以下の整数であることがより好ましい。また、n1の平均値は、0.5以上5以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましい。
L1及びL2は、それぞれ独立に、炭素数4以上の置換もしくは無置換のアルキレン基であり、このアルキレン基において、少なくとも1つの-CH2-は、-CH2-O-又は-O-CH2-で置き換えられていてもよい。このアルキレン基の炭素数は、硬化物の柔軟性の観点から、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上30以下であることが特に好ましい。また、アルキレン基の水素が置換されている場合、置換基は、炭素数1以上14以下のアルキル基、又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基である。さらに、これらの置換基同士は、結合して、脂環構造又は複素環構造を形成していてもよい。
X1は、それぞれ独立に、炭素数4以上の置換もしくは無置換のアルキレン基(少なくとも1つの-CH2-が-CH2-O-又は-O-CH2-で置き換えられているものを含む。)を有しない基であり、さらに、フタルイミド基を有する2価の基であることが好ましい。なお、フタルイミド基には、フタルイミドから誘導される基も含まれる。X1として、具体的には、例えば、下記構造式(2)、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される基が挙げられる。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
前記一般式(3)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、メチル基又はエチル基であり、メチル基であることが好ましい。
本実施形態における前記一般式(1)で表されるマレイミド樹脂としては、具体的には、例えば、下記一般式(5)、下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
前記一般式(5)において、n2は、1以上5以下の整数である。
前記一般式(6)において、n3は、1以上5以下の整数である。また、nの平均値は、1以上2以下である。
前記一般式(7)において、n4は、1以上5以下の整数である。また、nの平均値は、1以上2以下である。
前記一般式(5)で表されるマレイミド樹脂の製品としては、Designer Molecules Inc.社製の「BMI-3000」等が挙げられる。
前記一般式(6)で表されるマレイミド樹脂の製品としては、Designer Molecules Inc.社製の「BMI-1700」等が挙げられる。
前記一般式(7)で表されるマレイミド樹脂の製品としては、Designer Molecules Inc.社製の「BMI-1500」等が挙げられる。
【0035】
本実施形態において、(A1)第1のマレイミド樹脂の含有量は、樹脂組成物の(A)樹脂成分の合計量を100質量%とした際の、前記(A1)第1のマレイミド樹脂の含有量が、30質量%以上58質量%以下であることが必要である。(A1)の含有量が前記範囲内であれば、樹脂シートの耐熱性を向上させつつ、埋め込み性も向上できる。また、同様の観点から、(A1)の含有量の下限値は、33質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましく、また(A1)の含有量の上限値は、56質量%以下であることが好ましい。
【0036】
(A2)第2のマレイミド樹脂
本実施形態における樹脂組成物が含有する(A)樹脂成分は、樹脂シートの硬化物の250℃における貯蔵弾性率E’を上昇させる観点から、さらに(A2)として前記(A1)第1のマレイミド樹脂とは化学構造が異なる第2のマレイミド樹脂を含有していてもよい。本実施形態における(A2)第2のマレイミド樹脂(以下、単に「(A2)」と称する場合がある)は、前記(A1)第1のマレイミド樹脂とは化学構造が異なるものであり、かつ1分子中に2つ以上のマレイミド基を含むマレイミド樹脂であれば、特に限定されない。すなわち、(A2)第2のマレイミド樹脂は、1分子中に2つ以上のマレイミド基を有し、いずれの2つのマレイミド基を連結する結合基も、主鎖に4つ以上のメチレン基を有しないマレイミド樹脂である。樹脂シートが(A2)を含有することで、樹脂シートの硬化後の凝集性が向上する。このため、硬化後の樹脂シートの凝集破壊に起因した接着性低下を防止することができる。
【0037】
本実施形態における(A2)第2のマレイミド樹脂は、耐熱性の観点から、例えば、ベンゼン環を含むことが好ましく、ベンゼン環にマレイミド基が連結した構造を含むことがより好ましい。また、マレイミド化合物は、ベンゼン環にマレイミド基が連結した構造体を2つ以上備えていることが好ましい。
【0038】
本実施形態における(A2)第2のマレイミド樹脂は、1分子中に2つ以上のマレイミド基及び2つ以上のフェニレン基を含むことが好ましく、1分子中に2つ以上のマレイミド基及び1つ以上のビフェニル骨格を含むマレイミド樹脂(以下、単に「ビフェニルマレイミド樹脂」と称する場合がある)であることが好ましい。
【0039】
本実施形態における(A2)第2のマレイミド樹脂は、耐熱性及び接着性の観点から、下記一般式(8)で表されることが好ましい。
【0040】
【0041】
前記一般式(8)において、n5及びn6は、それぞれ独立に、1以上2以下の整数であり、1であることがより好ましい。ただし、n5及びn6の合計は、3以下である。
R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基であり、炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。複数のR3は、互いに同一であるか又は異なる。複数のR4は、互いに同一であるか又は異なる。
n7及びn8は、それぞれ独立に、0以上4以下の整数であり、0以上2以下の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
n9は、1以上の整数であり、n9の平均値は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましく、1以上3以下であることがさらに好ましい。
【0042】
本実施形態における前記一般式(8)で表されるマレイミド樹脂としては、例えば下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
【0043】
【0044】
前記一般式(9)において、n9は前記一般式(8)のn9と同様である。
前記一般式(9)で表されるマレイミド樹脂の製品としては、日本化薬株式会社製の「MIR-3000」等が挙げられる。
【0045】
また、本実施形態における(A2)第2のマレイミド樹脂は、1分子中に2つ以上のマレイミド基及び2つ以上のフェニレン基を含むマレイミド樹脂であることも好ましい。溶剤への溶解性を高くし、シート形成性を向上させる観点から、フェニレン基上に置換基を有することが好ましい。置換基としては、例えば、メチル基、及びエチル基等のアルキル基、及びアルキレン基等が挙げられる。
また、本実施形態における(A2)第2のマレイミド樹脂は、シート形成性の観点から、マレイミド基とフェニレン基との間にエーテル結合を有するマレイミド樹脂が好ましい。
【0046】
前記1分子中に2つ以上のマレイミド基及び2つ以上のフェニレン基を含むマレイミド樹脂は、例えば、下記一般式(10)で表される。
【0047】
【0048】
前記一般式(10)において、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基であり、L3は、炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、L4及びL5は、それぞれ独立に、炭素数1以上2以下のアルキレン基又は炭素数6以上10以下のアリーレン基であり、n10及びn11は、それぞれ独立に0又は1である。ただし、L3、L4及びL5のうち、アルキレン基であるものの炭素数の合計は、3以下である。
【0049】
本実施形態において、(A)中のマレイミド樹脂((A1)及び(A2)の合計)の含有量は、(A)の固形分の全量基準(すなわち、溶媒を除く(A)の不揮発分の量を100質量%としたとき)で、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。(A)中のマレイミド樹脂の含有量の上限値は、(A)の固形分の全量基準で、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、92.5質量%以下であることがさらに好ましい。(A)中のマレイミド樹脂の含有量がこのような範囲にあることで、本実施形態に係る樹脂シートの硬化後の耐熱性を更に向上させることができる。
【0050】
(A3)アリル樹脂
本実施形態における樹脂組成物が含有する(A)樹脂成分は、さらに(A3)アリル樹脂を含有することが好ましい。(A3)アリル樹脂(以下、単に「(A3)」と称する場合がある)は、常温で液体であることが好ましい。(A)樹脂成分がアリル樹脂を含むことで、本実施形態に係る樹脂シートの反応温度を低下させつつ、樹脂シートの硬化後の剥離強度を向上させることがより容易となる。
【0051】
本実施形態において、マレイミド樹脂の合計量(A1+A2)の(A3)アリル樹脂に対する質量比(マレイミド樹脂の合計量(A1+A2)/(A3))が、1.5以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることが特に好ましい。
また、質量比(マレイミド樹脂の合計量(A1+A2)/(A3))が上記範囲であれば、樹脂シートの複素粘度ηを適宜に調整し、被着体への適用時の樹脂シートの流動性を確保しつつ、樹脂シートの硬化後の耐熱性のさらなる向上が実現される。さらに、質量比(マレイミド樹脂の合計量(A1+A2)/(A3))が上記範囲であれば、樹脂シートからのアリル樹脂のブリードアウトも抑制される。なお、質量比(マレイミド樹脂の合計量(A1+A2)/(A3))の上限値は、特に制限されない。例えば、質量比(マレイミド樹脂の合計量(A1+A2)/(A3))が、50以下であればよく、25以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0052】
本実施形態における(A3)アリル樹脂は、アリル基を有する樹脂であれば、特に限定されない。本実施形態における(A3)アリル樹脂は、例えば、1分子中に2つ以上のアリル基を含むアリル樹脂であることが好ましい。
また、この(A3)アリル樹脂は、芳香環を有することが好ましい。さらに、この前記(A3)アリル樹脂におけるアリル基は、芳香環に直接結合していることが好ましい。また、この(A3)アリル樹脂は、ヒドロキシ基を有し、このヒドロキシ基が芳香環に直接結合していることが好ましい。
本実施形態におけるアリル樹脂は、下記一般式(11)で表されるものが挙げられる。
【0053】
【0054】
前記一般式(11)において、R9及びR10は、それぞれ独立に、アルキル基であり、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基及びエチル基からなる群から選択されるアルキル基であることがさらに好ましい。
前記一般式(11)において、n12は、1以上4以下であり、1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましい。また、前記一般式(14)で表されるアリル樹脂中において、n12が1である成分の比率が、90mol%以上であることが好ましい。
【0055】
本実施形態における(A3)アリル樹脂としては、前記一般式(11)で表されるアリルフェノール樹脂が好ましい。前記一般式(11)で表される化合物の中でも、フェニル基の4位にヒドロキシ基を有する4-ヒドロキシフェニル基を有していることが好ましい。また前記一般式(11)で表される化合物の中でも、フェニル基の3位又は5位にアリル基を有することが好ましい。また前記一般式(11)で表される化合物の中でも、アリル基のオルト位にヒドロキシ基を有することが好ましい。さらに前記一般式(11)で表される化合物の中でも、ジアリルビスフェノールA(2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン)が特に好ましい。これらのアリル樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
(A)樹脂成分として、前述の(A1)、(A2)、および(A3)を用いることによって、加熱を受けると三次元網状化し、所望する物性を有する樹脂硬化物を得ることができる。
【0057】
(A4)その他の樹脂成分
本実施形態の(A)樹脂成分は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、(A1)、(A2)、及び(A3)以外に(A4)その他の樹脂成分(以下、単に「(A4)」と称する場合がある)を含有していてもよい。
(A4)その他の樹脂成分としては、(A1)、(A2)、及び(A3)以外の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は架橋剤等が挙げられる。
(A4)その他の樹脂成分を用いることで、樹脂シートの硬化後の剥離強度を向上させることや、(A1)、(A2)、(A3)又はその他の成分と接合させて樹脂シートの耐熱性を向上させることや、樹脂シートのハンドリング性、シート形成性を向上させることができる。
【0058】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂、及びメラミン樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(A4)として熱硬化性樹脂を用いることにより、樹脂シートの硬化後の剥離強度をさらに向上させ、かつ耐熱性を向上することができる。ただし、高耐熱性の観点から、(A)樹脂成分は、エポキシ樹脂を実質的に含まないことが好ましい。
【0059】
前記熱可塑性樹脂としては、硬化前の樹脂シートの複素粘度を所望の範囲に調整し易くなり、樹脂シートのハンドリング性、及びシート形成性を向上させることを目的として、脂肪族化合物であるか、芳香族化合物であるかを問わず広く選定できる。熱可塑性樹脂は、例えば、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、及びポリアミドイミド樹脂からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂であることが好ましく、耐熱性の観点からフェノキシ樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂であることがより好ましい。なお、ポリエステル樹脂は、全芳香族ポリエステル樹脂であることが好ましい。また、ポリアミドイミド樹脂としては、樹脂シートの柔軟性を向上させる観点から、ゴム変性のポリアミドイミド樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格(以下、ビスフェノールAを「BisA」と称する場合がある)、ビスフェノールF骨格(以下、ビスフェノールFを「BisF」と称する場合がある)、ビフェニル骨格、及びナフタレン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂であることが好ましく、ビスフェノールA骨格及びビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂であることがより好ましい。
【0061】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、樹脂シートの複素粘度を所望の範囲に調整し易くするという観点から、10,000以上1,000,000以下であることが好ましく、15,000以上800,000以下であることがより好ましく、20,000以上500,000以下であることがさらに好ましい。本明細書における重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算値である。
【0062】
本実施形態において(A4)として熱可塑性樹脂を使用する場合、その含有量は、樹脂組成物の固形分の全量基準(すなわち、溶媒を除く樹脂組成物の不揮発分の全量を100質量%としたとき)で、1.5質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。樹脂組成物の含有量の上限値は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂の含有量を上記範囲にすることで、造膜性を付与し、樹脂組成物をシート状に成形しやすくできる。
熱可塑性樹脂は、(A1)、(A2)、(A3)、又はその他の成分を接合する機能を持たせるために、官能基を有していてもよい。このように熱可塑性樹脂が官能基を有する場合、熱可塑性を有しつつも、熱硬化性も併せて有することができる。
【0063】
前記の架橋剤としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物等が挙げられる。架橋剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤を用いることで、(A1)、(A2)、(A3)又はその他の成分と接合させて樹脂シートのハンドリング性、シート形成性、耐熱性を向上させることや、樹脂シートの硬化前の初期接着性、及び凝集性を調節することができる。
【0064】
有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物、及びこれらの多価イソシアネート化合物の三量体、並びにこれら多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートレタンプレポリマー等が挙げられる。
有機多価イソシアネート化合物のさらに具体的な例としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、及びリジンイソシアネート等が挙げられる。有機多価イソシアネート化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
上記のような架橋剤を使用する場合、架橋剤の含有量は、前述の(A1)、(A2)、及び(A3)の合計量100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。架橋剤の含有量の上限値は、12質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0066】
本実施形態において、樹脂組成物中の(A)樹脂成分の含有量は、樹脂組成物の固形分の全量基準(すなわち、溶媒を除く樹脂組成物の不揮発分の全量を100質量%としたとき)で、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。また、(A)樹脂成分の含有量の上限値は、75質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。
(A)樹脂成分の含有量が上記範囲内であることで、樹脂シートのハンドリング性、シート形状維持性、及び樹脂組成物の耐熱性が向上する。
【0067】
(B)密着性付与剤
本実施形態において、樹脂組成物は、さらに(B)密着性付与剤(以下、単に「(B)」と称する場合がある)を含むことが好ましい。この(B)密着性付与剤により、樹脂組成物の硬化後の剥離強度をさらに向上できる。
(B)密着性付与剤としては、例えば(B1)トリアジン骨格を有する化合物や、(B2)カップリング剤が挙げられる。
【0068】
(B1)トリアジン骨格を有する化合物
(B1)トリアジン骨格を有する化合物(以下、単に「(B1)」と称する場合がある)としては、次のような化合物であることが好ましい。すなわち、(B1)は、1分子中に、塩基性基を有し、かつトリアジン骨格を有する化合物であることが好ましく、1分子中に、含窒素複素環を有し、かつトリアジン骨格を有する化合物であることがより好ましく、1分子中に、トリアジン骨格及びイミダゾール構造を有する化合物であることが好ましい。
トリアジン骨格及びイミダゾール構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(12)で表される化合物が挙げられる。
【0069】
【0070】
前記一般式(12)において、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、ヒドロキシメチル基、又はフェニル基であり、水素原子、又は炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は炭素数1以上3以下のアルキル基であることがより好ましい。R13は、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、フェニル基、又はアリル基であり、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル基であることがより好ましい。L6は、炭素数1以上5以下のアルキレン基であり、炭素数2以上4以下のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
【0071】
本実施形態におけるトリアジン骨格を有するイミダゾール化合物としては、具体的には、2,4-ジアミノ-6-[2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2-(2-エチル-4-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン、及び2,4-ジアミノ-6-[2-(2-ウンデシル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。これらの化合物の中でも、樹脂組成物及び樹脂シートの剥離強度及び反応温度の観点から、2,4-ジアミノ-6-[2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン、又は2,4-ジアミノ-6-[2-(2-エチル-4-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジンが好ましい。
【0072】
(B2)カップリング剤
(B2)カップリング剤(以下、単に「(B2)」と称する場合がある)としては、次のような化合物であることが好ましい。
(B2)カップリング剤は、前述の(A)樹脂成分に含まれる化合物が有する官能基と反応する基を有することが好ましい。(B2)カップリング剤を使用することで、樹脂シートの硬化物と被着体との間の剥離強度が向上する。
【0073】
(B2)カップリング剤としては、その取り扱いの容易性からシラン系(シランカップリング剤)が好ましい。(B2)カップリング剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
シランカップリング剤としては、アミノ基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び、エポキシ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(フェニルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等が挙げられる。
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
これらの化合物の中でも樹脂組成物及び樹脂シートの剥離強度の観点から、エポキシ基を有するシランカップリング剤がより好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラがよりさらに好ましい。
【0074】
(B)密着性付与剤は、(A)と(B)の合計含有量100質量部に対して、(B)の合計含有量0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがよりさらに好ましい。また15質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがよりさらに好ましい。このような範囲とすることで、樹脂シートの硬化物と被着体との間の剥離強度が向上する。
【0075】
(B)密着性付与剤は(B1)トリアジン骨格を有する化合物と、(B2)カップリング剤を併用することがより好ましい。併用することで樹脂組成物の硬化後の剥離強度をさらに向上できる。
【0076】
(B)密着性付与剤として(B1)トリアジン骨格を有する化合物を用いる場合は、(A)と(B)の合計含有量100質量部に対して、(B1)の含有量が0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがよりさらに好ましい。また15質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがよりさらに好ましい。このような範囲とすることで、樹脂シートの硬化物と被着体との間の剥離強度が向上する。
【0077】
(B)密着性付与剤として(B2)カップリング剤を用いる場合は、(A)と(B)の合計含有量100質量部に対して、(B2)の含有量が0.05質量部以上であることが好ましく、0.10質量部以上であることがより好ましく、0.50質量部以上であることがよりさらに好ましい。また10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがよりさらに好ましい。このような範囲とすることで、樹脂シートの硬化物と被着体との間の剥離強度が向上する。
【0078】
(C)無機フィラー
本実施形態において、樹脂組成物は、(A)及び(B)の他に、(C)無機フィラー(以下、単に「(C)」と称する場合がある)を含むことが好ましい。この(C)により、樹脂組成物の熱的特性及び機械的特性の少なくとも一方を向上させることができる。
(C)無機フィラーとしては、シリカフィラー、アルミナフィラー、窒化ホウ素フィラー、及びポリテトラフルオロエチレンフィラー等が挙げられる。これらの中でも、シリカフィラーが好ましい。
シリカフィラーとしては、例えば、溶融シリカ、及び球状シリカ等が挙げられる。
(C)無機フィラーは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、(C)無機フィラーは、表面処理されていてもよい。
【0079】
(C)無機フィラーの平均粒径は、特に制限されない。(C)の平均粒径は、0.1nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが特に好ましい。また、(C)の平均粒径の上限値は、100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。本明細書における、(C)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計により測定した値である。
【0080】
樹脂組成物中の(C)無機フィラーの含有量は、樹脂組成物の固形分の全量基準(すなわち、溶媒を除く樹脂組成物の不揮発分の全量を100質量%としたとき)で、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。(C)の含有量の上限値は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂組成物中の(C)無機フィラーの含有量を上記範囲にすることで、樹脂組成物の線膨張係数を低くでき、例えば、炭化ケイ素等の被封止物と樹脂組成物又は樹脂シートとの線膨張係数の差を小さくできる。
【0081】
(D)硬化触媒
本実施形態に係る樹脂シートでは、樹脂組成物が、樹脂成分を含む場合、本発明の目的を損なわない限りにおいて、(D)硬化触媒をさらに含有してもよい。これにより、樹脂成分の硬化反応を効果的に進行させることが可能となり、樹脂シートを良好に硬化することが可能となる。硬化触媒の例としては、イミダゾール系硬化触媒、アミン系硬化触媒、リン系硬化触媒、トリアゾール系硬化触媒、チアゾール系硬化触媒、ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0082】
イミダゾール系硬化触媒の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及び2-フェニル-4,5-ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール等が挙げられ、反応性の観点から、2-エチル-4-メチルイミダゾールを使用することが好ましい。なお、前述の(B)密着性付与剤として、トリアジン骨格及びイミダゾール構造を有する化合物を用いた場合、硬化触媒としても作用する。
【0083】
アミン系硬化触媒の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びN,N-ジメチルベンジルアミントリエチルアミン等の第三級アミン化合物が挙げられる。
【0084】
リン系硬化触媒の具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、及びトリ(ノニルフェニル)ホスフィン等が挙げられる。
【0085】
トリアゾール系硬化触媒の具体例としては、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。
【0086】
チアゾール系硬化触媒の具体例としては、ベンゾチアゾール系化合物等が挙げられる。
【0087】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、過酸化物、及びアゾ化合物等が挙げられる。
【0088】
これらの(D)硬化触媒は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(D)硬化触媒を使用する場合、これらの含有量は、(A)の合計含有量を100質量部とした際、15質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることが特に好ましい。
【0089】
(E)その他の成分
本実施形態において、樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、さらに(E)その他の成分を含んでいてもよい。(E)その他の成分としては、例えば、着色材料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオントラップ剤、及びイオン捕捉剤からなる群から選択される少なくともいずれかの成分が挙げられる。
これらの(E)その他の成分は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(E)その他の成分を使用する場合、これらの含有量は、(A)の合計含有量を100質量部とした際、10質量部であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0090】
本実施形態において、樹脂シートが塗工により形成される場合には、樹脂組成物は溶媒を含むことが好ましい。溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の一般的な溶媒のほか、シクロヘキサノン(沸点:155.6℃)、ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189.0℃)、エチレングリコールのエーテル類(セロソルブ)(沸点:120~310℃程度)、オルト-キシレン(沸点:144.4℃)等の高沸点溶媒等が挙げられる。
【0091】
[樹脂シート]
本実施形態に係る樹脂シートは、前述の本実施形態に係る樹脂組成物から形成される。本実施形態に係る樹脂シートにおいては、耐熱性を維持しつつ、埋め込み性を向上できる。そのため、例えば、樹脂シートで半導体素子を封止する際に、半導体素子が配置された構造体に間隙がある場合でも、この間隙を埋め込むために用いることができる。
【0092】
本実施形態に係る樹脂シートの熱硬化後の剥離強度は、2.0N/10mm以上であることが好ましく、3.0N/10mm以上であることがより好ましく、4.0N/10mm以上であることがさらに好ましく、6.0N/10mm以上であることが特に好ましい。熱硬化後の剥離強度の上限値は、50N/10mm以下であることが好ましく、40N/10mm以下であることが特に好ましい。
本実施形態に係る樹脂シートの熱硬化後の剥離強度が2.0N/10mm以上であれば、樹脂シートを封止材として用いた場合に、被着体に対して、高い接着性を維持することが可能である。
本実施形態に係る樹脂シートの熱硬化後の剥離強度は、例えば、樹脂組成物に用いる成分を選択し、好ましくは、アリル樹脂及び密着性付与剤から選択される少なくとも一種を樹脂組成物に配合し、その種類及び配合量を調整することにより、上記範囲に調整することができる。
なお、本実施形態に係る樹脂シートの熱硬化後の剥離強度は、後述の測定方法を用いて、熱硬化後の樹脂シートと被着体との間で、剥離角度90度の引き剥がし試験を行うことによって求めた。具体的には、実施例の記載のように、試験片を作成し、引き剥がし試験を行った。
本実施形態に係る樹脂シートにおいて、樹脂組成物がシート化されていることにより、被着体への適用が簡便になり、特に被着体が大面積である場合の貼り付けが簡便になる。
樹脂組成物がシート状であれば、封止工程後の形状に対して適合した形状に予め形成されているので、適用するだけで、ある程度の均一性を保った封止材として供給できる。また、樹脂組成物がシート状であれば、流動性がないので、取り扱い性に優れる。
【0093】
樹脂組成物をシート化する方法は、従来公知のシート化する方法を採用でき、特に限定されない。溶媒を含有する樹脂組成物の塗布により樹脂組成物から樹脂シートを形成する場合には、塗布後の乾燥工程において溶媒を完全に揮発させてもよいし、一部の溶媒を樹脂シート中に残留させてもよい。本実施形態に係る樹脂シートは、帯状のシートであってもよく、ロール状に巻き取られた状態で提供されてもよい。ロール状に巻き取られた本実施形態に係る樹脂シートは、ロールから繰り出されて所望のサイズに切断する等して使用することができる。
【0094】
本実施形態に係る樹脂シートの厚さは、例えば、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、当該厚さは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、さらには300μm以下であることが好ましい。
【0095】
本実施形態に係る樹脂シートは、半導体素子に用いられることが好ましい。具体的には、本実施形態に係る樹脂シートは、半導体素子を封止することに用いられることが好ましい。また、本実施形態に係る樹脂シートは、半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いられることが好ましい。
半導体素子は、パワー半導体素子であることが好ましい。
本実施形態に係る樹脂シートは、耐熱性に優れるため、200℃以上の高温動作が想定されるパワー半導体素子を封止すること、又はパワー半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いることができる。
【0096】
また、本実施形態に係る樹脂シートは、複数の半導体素子に一括して適用されることが好ましい。例えば、本実施形態に係る樹脂シートであれば、複数の間隙が設けられたフレームの間隙ごとに半導体素子が配置された構造体に対して、樹脂シートを適用し、フレームと半導体素子を一括して封止する、いわゆるパネルレベルパッケージに使用することができる。
【0097】
また、本実施形態に係る樹脂シートは、炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれか1種以上を用いた半導体素子を封止することに用いられることが好ましい。又は、本実施形態に係る樹脂シートは、炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれか1種以上を用いた半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いられることが好ましい。他の電子部品としては、例えば、プリント配線基板、及びリードフレーム等が挙げられる。
シリコン半導体素子の動作温度の上限は175℃程度であるため、パワー半導体素子には高温動作が可能な炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれか1種以上を用いた半導体素子を用いることが好ましい。
本実施形態に係る樹脂シートは、耐熱性に優れるため、200℃以上の高温動作が想定される炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれか1種以上を用いた半導体素子を封止すること、又は炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれか1種以上を用いた半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いることができる。
【0098】
(熱硬化条件)
本実施形態に係る樹脂シートにおける熱硬化条件において、加熱温度は、50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることが好ましい。
本実施形態に係る樹脂シートにおける熱硬化条件において、加熱時間は、10分以上10時間以下であることが好ましく、20分以上7時間以下であることがより好ましい。
樹脂シートにおける熱硬化条件が上記の範囲であることによって、樹脂シートの熱硬化を実現することができる。
【0099】
[積層体]
図1には、本実施形態に係る積層体1の断面概略図が示されている。
本実施形態に係る積層体1は、第1の剥離材2と、第2の剥離材4と、第1の剥離材2及び第2の剥離材4の間に設けられた樹脂シート3とを有する。樹脂シート3は、本実施形態に係る樹脂シートである。
【0100】
第1の剥離材2、及び第2の剥離材4は、剥離性を有し、第1の剥離材2の樹脂シート3に対する剥離力と第2の剥離材4の樹脂シート3に対する剥離力とに差があることが好ましい。第1の剥離材2及び第2の剥離材4の材質は特に限定されない。第1の剥離材2の剥離力P1に対する第2の剥離材4の剥離力P2の比(P2/P1)は、0.02≦P2/P1<1又は1<P2/P1≦50であることが好ましい。
【0101】
第1の剥離材2、及び第2の剥離材4は、例えば、剥離材そのものに剥離性がある部材の他、剥離処理が施された部材、又は剥離剤層が積層された部材等であってもよい。第1の剥離材2、及び第2の剥離材4に剥離処理が施されていない場合、第1の剥離材2、及び第2の剥離材4の材質としては、例えば、オレフィン系樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
第1の剥離材2、及び第2の剥離材4は、剥離基材と、剥離基材の上に形成された剥離剤層とを備える剥離材とすることができる。剥離基材と剥離剤層とを備える剥離材とすることで、取り扱いが容易となる。また、第1の剥離材2、及び第2の剥離材4は、剥離基材の片面のみに剥離剤層を備えていてもよいし、剥離基材の両面に剥離剤層を備えていてもよい。剥離剤の形成は、例えば、剥離剤の塗布により行うことができる。
【0102】
剥離基材としては、例えば、紙基材、この紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、及びプラスチックフィルム等が挙げられる。紙基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、及びキャストコート紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等)、並びにポリオレフィンフィルム(例えば、ポリプロピレン、及びポリエチレン等)等が挙げられる。これらのうちでも、ポリエステルフィルムが好ましい。
【0103】
剥離剤としては、例えば、シリコーン樹脂で構成されたシリコーン系剥離剤;ポリビニルカーバメート、及びアルキル尿素誘導体等の長鎖アルキル基を含有する化合物で構成された長鎖アルキル基含有化合物系剥離剤;アルキド樹脂(例えば、不転化性アルキド樹脂、及び転化性アルキド樹脂等)で構成されたアルキド樹脂系剥離剤;オレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレン等)、アイソタクチック構造、又はシンジオタクチック構造を有するプロピレン単独重合体、及びプロピレン-α-オレフィン共重合体等の結晶性ポリプロピレン樹脂等)で構成されたオレフィン樹脂系剥離剤;天然ゴム、及び合成ゴム(例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、メチルメタクリレート-ブタジエンゴム、及びアクリロニトリル-ブタジエンゴム等)等のゴムで構成されたゴム系剥離剤;並びに(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等のアクリル樹脂で構成されたアクリル樹脂系剥離剤等の各種剥離剤が挙げられ、これらを1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうちでも、アルキド樹脂系剥離剤が好ましい。
【0104】
第1の剥離材2、及び第2の剥離材4の厚さは、特に限定されない。通常、1μm以上500μm以下であり、3μm以上100μm以下であることが好ましい。
剥離剤層の厚さは、特に限定されない。剥離剤を含む溶液を塗布して剥離剤層を形成する場合、剥離剤層の厚さは、0.01μm以上3μm以下であることが好ましく、0.03μm以上1μm以下であることがより好ましい。
【0105】
積層体1の製造方法は、特に限定されない。例えば、積層体1は、次のような工程を経て製造される。まず、第1の剥離材2の上に、溶媒を含む樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する。次に、この塗膜を乾燥させて、樹脂シート3を形成する。次に、樹脂シート3と、第2の剥離材4とを貼り合わせることで、積層体1が得られる。
【0106】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る樹脂シートによれば、埋め込み性を向上させることができる樹脂シートが得られる。
【0107】
上述のとおり、本実施形態に係る樹脂シートは、パワー半導体素子に好適に用いることができる。換言すれば、本実施形態に係る半導体装置において、半導体素子は、パワー半導体素子であることが好ましい。パワー半導体素子は、200℃以上の高温での動作も想定されている。そのため、パワー半導体素子を有する半導体装置に使用する材料には、耐熱性が要求される。本実施形態に係る樹脂シートは、耐熱性に優れるため、半導体装置においてパワー半導体素子を覆うこと、或いは、パワー半導体素子と他の部品との間に介在させることに好適に用いられる。
【0108】
上述のとおり、本実施形態に係る樹脂シートは、炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれか1種以上を用いた半導体素子に好適に用いることができる。換言すれば、本実施形態に係る半導体装置において、半導体素子は、炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれか1種以上を用いた半導体素子であることが好ましい。炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれか1種以上を用いた半導体素子は、シリコン半導体素子とは異なる特性を有するので、パワー半導体素子、基地局用高出力デバイス、センサー、ディテクター、及びショットキーバリアダイオード等の用途に好ましく用いられる。これらの用途では、炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれか1種以上を用いた半導体素子の耐熱性にも着目しており、本実施形態の樹脂シートは、耐熱性に優れるため、炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれか1種以上を用いた半導体素子と組み合わされて好適に用いられる。
【0109】
[実施形態の変形]
本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良等は、本発明に含まれる。
【0110】
前記実施形態では、第1の剥離材と、第2の剥離材と、第1の剥離材及び第2の剥離材の間に設けられた樹脂シートとを有する積層体について説明したが、その他にも、樹脂シートの一方の面のみに剥離材を有する積層体であってもよい。
【0111】
また、前記半導体装置の実施形態では半導体封止用途について説明したが、本発明の樹脂シートは、その他にも、回路基板用絶縁材料(例えば、硬質プリント配線板材料、フレキシブル配線基板用材料、及びビルドアップ基板用層間絶縁材料等)、ビルドアップ用接着フィルム、並びに接着剤等として用いることができる。
【実施例0112】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0113】
[樹脂組成物の調製]
表1に示す配合割合(質量%(固形分換算の割合))にて各成分を溶媒に溶解または分散させることで、実施例1~5、並びに比較例1に係る樹脂組成物を調製した。なお、実施例及び比較例における(A)、(B)及び(C)の含有量を表1に示す。
樹脂組成物の調製に用いた材料は以下の通りである。
【0114】
(A1)第1のマレイミド樹脂
・BMI-3000:長鎖アルキル型マレイミド樹脂(前記一般式(5)で表されるマレイミド樹脂、Designer Molecules Inc.社製「BMI-3000」、温度25℃において固体)
・BMI-1700:長鎖アルキル型マレイミド樹脂(前記一般式(6)で表されるマレイミド樹脂、Designer Molecules Inc.社製「BMI-1700」、温度25℃において液状)
・BMI-1500:長鎖アルキル型マレイミド樹脂(前記一般式(7)で表されるマレイミド樹脂、Designer Molecules Inc.社製「BMI-1500」、温度25℃において液状)
(A2)第2のマレイミド樹脂
・MIR-3000:ビフェニル基を有するマレイミド樹脂(前記一般式(3)で表されるマレイミド樹脂、日本化薬株式会社製「MIR-3000」)
(A3)アリル樹脂
・DABPA:ジアリルビスフェノールA(大和化成工業株式会社製「DABPA」)
(A4)その他の樹脂成分
・YX7200:BisA型フェノキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製「YX7200」)
【0115】
(B1)トリアジン骨格を有する化合物
・2E4MZ-A:2,4-ジアミノ-6-[2-(2-エチル-4-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン(四国化成工業株式会社製「2E4MZ-A」)
(B2)カップリング剤
・KBM403:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM403」)
【0116】
(C)無機フィラー
・シリカフィラー:シリカフィラー分散液(アドマテックス株式会社製「SC2050-HLJ」、平均粒径0.50μm)
【0117】
<樹脂組成物及び樹脂シートの評価>
[樹脂シートを含む積層体の作製]
第1の剥離材として剥離シート1(アルキド樹脂系剥離剤から形成される剥離層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルム、リンテック株式会社製「PET38AL-5」、厚さ38μm)上に、ナイフコーターにて樹脂ワニス(シクロヘキサノンに、樹脂組成物の各成分が溶解または分散した塗布用溶液、固形分濃度は60質量%。)を塗布し、100℃で1分間乾燥した後、110℃で1分間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物の厚さは30μmであった。乾燥炉から出した直後に、乾燥後の樹脂組成物と、第2の剥離材として剥離シート2(シリコーン系剥離剤から形成される剥離層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルム、リンテック株式会社製「SP-PET382150」、厚さ38μm)とを貼り合わせ、第1の剥離材、樹脂組成物からなる樹脂シート、及び第2の剥離材がこの順で積層された積層体を作製した。
【0118】
[埋め込み性]
銅張積層板(日立化成株式会社製「MCL-E-705G」、厚さ200μm)をエッチングして、両面の各頂点付近にマーカー(銅)が形成された基板を得た。このようにして得られた基板に、ルータ加工機を用いて、大きさ4.56mm×4.56mmの正方形の貫通孔を形成する加工を施して、
図2(a)に示すようなフレーム5を作製した。また、フレーム5の片面5αに、
図2(a)に示すように、粘着テープ6(リンテック株式会社製「ADWILL H-231F」)を貼付し、次に、
図2(b)に示すように、穴から露出した粘着面に、正方形のミラー研磨加工されたチップ7(大きさ4.26mm×4.26mm、厚さ200μm)のミラー研磨加工面を、実装機(パナソニックファクトリーソリューションズ株式会社製「NM-EJM1D」)で搭載した。次に、フレーム5の反対面5βに、第2の剥離材を剥離した樹脂シート3(厚さ30μm)を載せ、ラミネート装置(ニッコー・マテリアルズ株式会社製、「V-130」)を用いて、ラミネート温度130℃、到達圧力100Pa、時間60秒間の条件で減圧圧着することで貼り合わせ、フレーム5の反対面5βを封止した。次いで、樹脂シート3の第1の剥離材を剥離し、封止されたフレーム及びチップ7を
図2(c)に示す状態とし、温度180℃1時間の条件で加熱した後、粘着テープ6を剥離して
図2(d)に示す状態とし、剥離した面に樹脂シート3(厚さ30μm)を乗せ、ラミネート装置を用いて前述と同じ条件で貼り合わせ、温度200℃4時間の条件で樹脂シート3の熱硬化を行ってフレーム5の片面5αを封止して
図2(e)に示す状態とした。最後に、ダイシング装置(株式会社ディスコ製「DFD6362」)を用いて、
図2(f)に示すように、チップ7を中心に基板を大きさ6mm×6mmの正方形に分割し、
図3に示すようなパッケージ部品8を得た。そして、パッケージ部品8を試験片として、以下の埋め込み性評価を行った。
まず、試験片をアクリル樹脂に包埋し、研磨により試験片中心部の断面を露出させた。その断面をデジタル顕微鏡(キーエンス株式会社製「VHX-5000」)で観察した。なお、
図3に示すフレーム5とチップ7の隙間部分を観察した。隙間の幅wは、100μmであり、チップ7の厚さtは、200μmであった。
次に、得られた断面のデジタル画像(JPEG形式)を画像編集・処理ソフト「GIMP」(フリーソフト)を用いて、1回目の封止(
図2(c)参照)により埋め込まれた部分を赤色で着色した。なお、1回目の封止により埋め込まれた部分は、2回の熱硬化が施されるため、2回目の封止の部分とは、色が異なるため、判別できる。そして、色情報の機能を用いて、フレーム5とチップ7の隙間部分を100%としたとき(w×tを100%とする)の着色部分の埋め込み面積比率(単位:%)を求めた。この埋め込み面積比率が大きいほど、埋め込み性が優れている。また、この埋め込み面積比率に基づいて、以下の基準に従って、埋め込み性を評価した。得られた結果を表1に示す。
A:埋め込み面積比率が90%以上である。
B:埋め込み面積比率が60%以上90%未満である。
F:埋め込み面積比率が60%未満である。
【0119】
【0120】
表1に示す結果から、樹脂成分中の(A1)の含有量が30質量%以上58質量%以下である場合(実施例1~5)には、埋め込み性が優れていることが確認された。
1…積層体、2…第1の剥離材、3…樹脂シート、4…第2の剥離材、5…フレーム、6…粘着テープ、7…チップ、8…パッケージ部品、5α…フレームの片面、5β…フレームの反対面、w…隙間の幅、t…チップの厚さ。