(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075818
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】防湿コート剤、防湿コート層、及び電子基板
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
C09D175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186997
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 徹
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DD002
4J038DG001
4J038GA06
4J038GA15
4J038NA08
4J038NA14
4J038NA25
4J038PB09
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】防湿性及び絶縁性を有する層を形成できながらも、アルミニウム、銅等の金属に対する密着性、耐熱性、貯蔵安定性、タック性、延伸性、及び耐黄変性に優れる1液型の防湿コート剤を提供すること。
【解決手段】電子基板に用いられる防湿コート剤であって、トリシクロデカンジメタノール及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する脂環骨格単位、並びにポリブタジエン構成単位を含むシロキサン変性酸基含有ポリウレタン樹脂と、有機溶剤を含有する防湿コート剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子基板に用いられる防湿コート剤であって、
トリシクロデカンジメタノール及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する脂環骨格単位、並びにポリブタジエン構成単位を含むシロキサン変性酸基含有ポリウレタン樹脂と、有機溶剤を含有する防湿コート剤。
【請求項2】
酸価が0.1~10mgKOH/gである請求項1に記載の防湿コート剤。
【請求項3】
前記トリシクロデカンジメタノール及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する脂環骨格単位及びポリブタジエン構成単位を含むシロキサン変性酸基含有ポリウレタン樹脂が、ポリブタジエンジオール化合物、酸基含有ジオール化合物、及びトリシクロデカンジメタノールを含むジオール化合物と、イソシアネート基含有オルガノポリシロキサン化合物、及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むイソシアネート化合物の反応生成物である請求項1又は2に記載の防湿コート剤。
【請求項4】
前記ジオール化合物が、ダイマージオールを含有する請求項3に記載の防湿コート剤。
【請求項5】
さらに、極性基を有する酸性ポリエステルを含有する請求項1又は2に記載の防湿コート剤。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の防湿コート剤から形成される防湿コート層。
【請求項7】
請求項6に記載の防湿コート層を備える電子基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿コート剤、防湿コート層、及び電子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品は、通常、電子回路と、該電子回路を支える電子基板とを有する。このような電子基板には、水分による回路ショートを防ぐ目的で、防湿コート組成物(防湿コート剤)が塗布される(特許文献1)。また、電子基板の配線保護用の樹脂組成物として、ポリウレタン樹脂等の水酸基を有する樹脂、ブロックイソシアネート等のポリイソシアネートを含む2液型の樹脂組成物が知られている(特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-169302号公報
【特許文献2】特開2017-183465号公報
【特許文献3】特開2018-92965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、市場では、アルミニウム、銅等の金属に対する密着性、耐熱性、貯蔵安定性、タック性、延伸性にも優れる層を形成できる防湿コート剤が求められている。更に、黄変がない防湿コート剤が求められている。
【0005】
本発明は、防湿性及び絶縁性を有する層を形成できながらも、アルミニウム、銅等の金属に対する密着性、耐熱性、貯蔵安定性、タック性、延伸性、及び耐黄変性に優れる1液型の防湿コート剤を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、前記防湿コート剤から形成される防湿コート層、及び防湿コート層を備える電子基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、電子基板に用いられる防湿コート剤であって、トリシクロデカンジメタノール及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する脂環骨格単位、並びにポリブタジエン構成単位を含むシロキサン変性酸基含有ポリウレタン樹脂と、有機溶剤を含有する防湿コート剤に関する。
【0008】
また、本発明は、前記防湿コート剤から形成される防湿コート層に関する。
【0009】
また、本発明は、前記防湿コート層を備える電子基板に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の防湿コート剤における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定されない。
【0011】
本発明の防湿コート剤は、電子基板に用いられ、トリシクロデカンジメタノール及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する脂環骨格単位、並びにポリブタジエン構成単位を含むシロキサン変性酸基含有ポリウレタン樹脂を含む。前記ポリウレタン樹脂は、絶縁性及び防湿性に優れ、また、ポリブタジエン構成単位を含むため耐熱性が高く、さらに、トリシクロデカンジメタノール及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する脂環骨格単位を含むので、延伸性及び耐黄変性に優れる。そのため、本発明の防湿コート剤から得られる防湿コート層は、アルミニウム、銅等の金属に対する密着性に優れるとともに、耐熱性、貯蔵安定性、タック性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の防湿コート剤は、トリシクロデカンジメタノール及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する脂環骨格単位、並びにポリブタジエン構成単位を含むシロキサン変性酸基含有ポリウレタン樹脂と、有機溶剤を含む。
【0013】
<トリシクロデカンジメタノール及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する脂環骨格単位、並びにポリブタジエン構成単位を含むシロキサン変性酸基含有ポリウレタン樹脂>
前記トリシクロデカンジメタノール及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する脂環骨格単位、並びにポリブタジエン構成単位を含むシロキサン変性酸基含有ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂骨格に、トリシクロデカンジメタノール及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する脂環骨格単位と、ポリブタジエン構成単位と、シロキサン結合と、酸基を有する樹脂であればよく、例えば、ポリブタジエンジオール化合物、酸基含有ジオール化合物、及びトリシクロデカンジメタノールを含むジオール化合物と、イソシアネート基含有オルガノポリシロキサン化合物、及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むイソシアネート化合物との反応物等が挙げられる。前記ポリウレタン樹脂は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0014】
<ジオール化合物>
前記ポリブタジエンジオールは、疎水性や柔軟性の観点から、質量平均分子量1,000~3,000のものを使用することが好ましい。前記ポリブタジエンジオールとしては、日本曹達社製「NISSO-PBGシリーズ」(G-1000、G-2000及びG-3000等)等が挙げられる。
【0015】
前記酸基含有ジオールは、例えば、一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、R
1は、水素原子、あるいは1~8個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状を有するアルキル基を表す。)で表される化合物、コハク酸、アジピン酸等と低級ポリオールとを反応させて得られる脂肪族カルボン酸含有ポリオール類、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸又はその無水物と低級ポリオールとを反応させて得られる芳香族カルボン酸含有ポリオール類等が挙げられる。これらの中でも、密着性向上の観点から、上記の一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0016】
前記ジオール化合物は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとの相溶性、黄変を防止する観点から、トリシクロデカンジメタノールを含む。
【0017】
前記ジオール化合物は、さらに、その他のジオール化合物を使用してもよく、例えば、疎水性の観点から、ダイマージオールを使用することが好ましい。前記ダイマージオールは、重合体脂肪酸の還元反応生成物である。前記重合体脂肪酸とは、ダイマー酸とも呼ばれ、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等のC18の不飽和脂肪酸、乾性油脂肪酸または半乾性油脂肪酸、およびこれらの脂肪酸の低級モノアルコールエステルを触媒の存在化または非存在化に二分子重合させたもの(二量体)である。市販品では、BASFジャパン社製ソバモール650NSおよびソバモール908、クローダジャパン社製プリポール2030およびプリポール2033、東亜合成社製ペスポールHP-1000、OLEON社製Radianol1990等が挙げられる。
【0018】
また、その他のジオール化合物としては、低分子ジオールが挙げられ、性能の低下しない範囲で使用することができる。前記低分子ジオールは、ポリウレタン樹脂中のウレタン基濃度を高め、塗膜凝集力を高める観点から、分子量が500以下であることが好ましい。前記低分子ジオールとしては、例えば、ヘプタン-2,6-ジオール、1,2-、1,3-、又は2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-、1,4-又は2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,4-、1,5-又は2,5-ヘキサンジオール、2-又は3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-又は3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、2-、3-又は4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、3-又は4-メチル-1,8-オクタンジオール及びネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添加ビスフェノールの脂環族ジオール、ビスヒドロキシエチルベンゼン等の芳香族ジオール等が例示できる。防湿性の点からは、脂環族ジオールが好ましい。
【0019】
前記ジオール化合物中、前記ポリブタジエンジオールは、塗膜の柔軟性の観点から、30質量%以上60質量%以下であることが好ましく、35質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
前記ジオール化合物中、前記酸基含有ジオールは、酸価を低くする観点から、0.1質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
前記ジオール化合物中、トリシクロデカンジメタノールは、塗膜物性の観点から、10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
また、前記ダイマージオールを使用する場合、前記ジオール化合物中、前記ダイマージオールは、防湿性の観点から、30質量%以上60質量%以下であることが好ましく、35質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
また、前記低分子ジオールを使用する場合、前記ジオール化合物中、トリシクロデカンジメタノールおよび前記低分子ジオールの合計は、塗膜物性の観点から、30質量%以下であることが好ましい。
【0024】
<イソシアネート化合物>
前記イソシアネート基含有オルガノポリシロキサン化合物は、アルミニウム、銅等の金属の密着性を向上でき、例えば、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、貯蔵安定性の観点から、加水分解を受け難いイソシアネートプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0025】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、防湿性、タック性、黄変性、延伸性の点から、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを使用することが好ましい。
【0026】
前記イソシアネート化合物は、塗膜強度の観点から、有機ジイソシアネートを使用することができる。前記イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族有機ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族有機ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシ リレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族有機ジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、防湿性及びタック性の点より、芳香族有機ジイソシアネート、脂環族有機ジイソシアネートが好ましい。更に、黄色に変色しない点からは、脂環族有機ジイソシアネートが好ましい。
【0027】
前記イソシアネート化合物のNCO基と前記ジオール化合物のOH基のモル当量(NCO/OH)は、0.9~1.0程度であることが好ましく、また、密着性の観点から、前記イソシアネート化合物のNCO基と前記イソシアネート基含有オルガノポリシロキサン化合物のOH基のモル当量(NCO/OH)は、0.04~0.06程度であることが好ましい。
【0028】
なお、トリシクロデカンジメタノール及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する脂環骨格単位及びポリブタジエン構成単位を含むシロキサン変性酸基含有ポリウレタン樹脂には、この性能を低下させない範囲で、従来からポリウレタン樹脂で使用されている他の成分を使用することも可能である。
【0029】
<極性基を有する酸性ポリエステル>
さらに、防湿コート剤には、極性基を有する酸性ポリエステルを含有させることも可能である。前記極性基を有するポリエステルとしては、極性基として、水酸基とカルボキシル基を有する酸性ポリエステルが使用できる。例えば、ビックケミージャパン社製BYK4510等が挙げられる。極性基を有する酸性ポリエステルは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0030】
前記極性基を有する酸性ポリエステルは、前記トリシクロデカンジメタノール及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する脂環骨格単位、並びにポリブタジエン構成単位を含むシロキサン変性酸基含有ポリウレタン樹脂100質量部(固形分)に対して、密着性の観点から、極性基を有する酸性ポリエステル(固形分)で8質量部以下であることが好ましい。
【0031】
<有機溶剤>
本発明の防湿コート剤は、上記の各成分(材料)を溶解あるいは分散させる観点から、有機溶剤を含む。前記有機溶剤としては、例えば、ケトン系有機溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル系有機溶剤(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル等)、脂肪族炭化水素系有機溶剤(n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等)、芳香族炭化水素系有機溶剤(トルエン、キシレン等)、脂環族炭化水素系有機溶剤(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン等)、アルコール系有機溶剤(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等)、ジオール化合物とその誘導体(エチレングリコール、プロピレングリコール等)等が挙げられる。有機溶剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0032】
本発明の防湿コート剤は、アルミニウム及び銅等の金属に対する密着性の観点から、酸価が1~10mgKOH/g以上であることが好ましく、1~5mgKOH/g以上であることがより好ましい。酸価は、JIS K2501:2003に準拠して測定できる。
【0033】
<添加剤>
本発明の防湿コート剤には、上記の各成分のほか、目的に応じて公知の界面活性剤、消泡剤、難燃剤、蛍光増白剤等の添加剤を用いてもよい。
【0034】
<防湿コート剤の製造>
前記防湿コート剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記の成分を、ディスパー等で撹拌混合することにより製造できる。
【0035】
<防湿コート層>
本発明の防湿コート層は、前記防湿コート剤から形成される。前記防湿コート層は、通常、電子基板等の支持体に塗布した後、加熱硬化することで形成できる。塗布方法は、公知の方法が適用でき、例えば、ディップコート法、スプレーコート法等が挙げられる。加熱条件としては、例えば、80~120℃で、30~60分が例示できる。
【0036】
<電子基板>
本発明の電子基板は、前記防湿コート層を備える。前記電子基板としては、例えば、プリント配線基板等が挙げられる。
【実施例0037】
以下に本発明を実施例等によって説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
【0038】
<ポリウレタンの製造>
<実施例1:ポリウレタン樹脂(1)>
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、ジオール化合物として、ポリブタジエンジオール(商品名:G-1,000、日本曹達社製、分子量:1,400)40.0質量部、ダイマージオール(商品名:Radianol1990、OLEON社製)40.0質量部、トリシクロデカンジメタノール19.5質量部、ジメチロールブタン酸0.5質量部、有機溶媒として酢酸ブチル47.7質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら60℃に昇温した。次いで、内部を60℃に保ちながら、イソシアネート基含有オルガノポリシロキサン化合物として3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン5.47質量部(NCO/OH=0.054)を15分かけて滴下した。滴下終了後、85℃まで昇温させFT-IRスペクトル測定でイソシアネート基のピークが消失するまで1.5時間攪拌した。次いで、有機ジイソシアネートとして1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン;フォルティモ、三井化学製)37.6質量部(残存NCO/OH=1.0)15分かけて滴下した。滴下終了後、85℃まで昇温させFT-IRスペクトル測定でイソシアネート基のピークが消失するまで攪拌した後、酢酸ブチルを218質量部加え、ポリウレタン樹脂(1)を35質量%含有するポリウレタン樹脂(1)溶液を製造した。酸価は1.32であった。
【0039】
<比較例1:ポリウレタン樹脂(2)>
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、ジオール化合物として、ポリブタジエンジオール(商品名:G-1,000、日本曹達社製、分子量:1,400)40.0質量部、ダイマージオール(商品名:Radianol1990、OLEON社製)40.0質量部、シクロヘキサンジメタノール19.5質量部、ジメチロールブタン酸0.5質量部、有機溶媒として酢酸ブチル48.8質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら60℃に昇温した。次いで、内部を60℃に保ちながら、イソシアネート基含有オルガノポリシロキサン化合物として3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン6.47質量部(NCO/OH=0.054)を15分かけて滴下した。滴下終了後、85℃まで昇温させFT-IRスペクトル測定でイソシアネート基のピークが消失するまで1.5時間攪拌した。次いで、有機ジイソシアネートとしてトルエンジイソシアネート39.9質量部(残存NCO/OH=1.0)15分かけて滴下した。滴下終了後、85℃まで昇温させFT-IRスペクトル測定でイソシアネート基のピークが消失するまで攪拌した後、酢酸ブチルを222.5質量部加え、ポリウレタン樹脂(2)を35質量%含有するポリウレタン樹脂(2)溶液を製造した。酸価は1.30であった。
【0040】
<比較例2:ポリウレタン樹脂(3)>
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、ジオール化合物として、ポリブタジエンジオール(商品名:G-1,000、日本曹達社製、分子量:1,400)40.0質量部、ダイマージオール(商品名:Radianol1990、OLEON社製)40.0質量部、トリシクロデカンジメタノール19.5質量部、ジメチロールブタン酸0.5質量部、有機溶媒として酢酸ブチル46.5質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら60℃に昇温した。次いで、内部を60℃に保ちながら、イソシアネート基含有オルガノポリシロキサン化合物として3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン5.5質量部(NCO/OH=0.054)を15分かけて滴下した。滴下終了後、85℃まで昇温させFT-IRスペクトル測定でイソシアネート基のピークが消失するまで1.5時間攪拌した。次いで、有機ジイソシアネートとしてトルエンジイソシアネート33.9質量部(残存NCO/OH=1.0)15分かけて滴下した。滴下終了後、85℃まで昇温させFT-IRスペクトル測定でイソシアネート基のピークが消失するまで攪拌した後、酢酸ブチルを212.5質量部加え、ポリウレタン樹脂(3)を35質量%含有するポリウレタン樹脂(3)溶液を製造した。酸価は1.36であった。
【0041】
<比較例3:ポリウレタン樹脂(4)>
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、ジオール化合物として、ポリブタジエンジオール(商品名:G-1,000、日本曹達社製、分子量:1,400)40.0質量部、ダイマージオール(商品名:Radianol1990、OLEON社製)40.0質量部、シクロヘキサンジメタノール19.5質量部、ジメチロールブタン酸0.5質量部、有機溶媒として酢酸ブチル47.7質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら60℃に昇温した。次いで、内部を60℃に保ちながら、イソシアネート基含有オルガノポリシロキサン化合物として3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン6.43質量部(NCO/OH=0.054)を15分かけて滴下した。滴下終了後、85℃まで昇温させFT-IRスペクトル測定でイソシアネート基のピークが消失するまで1.5時間攪拌した。次いで、有機ジイソシアネートとして1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン;フォルティモ、三井化学製)44.2質量部(残存NCO/OH=1.0)15分かけて滴下した。滴下終了後、85℃まで昇温させたところ不溶物が析出しゲル化した。
【0042】
<比較例4:ポリウレタン樹脂(5)>
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、ジオール化合物として、ポリブタジエンジオール(商品名:G-1,000、日本曹達社製、分子量:1,400)40.0質量部、ダイマージオール(商品名:Radianol1990、OLEON社製)40.0質量部、トリシクロデカンジメタノール19.5質量部、ジメチロールブタン酸0.5質量部、有機溶媒として酢酸ブチル49.5質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら60℃に昇温した。次いで、内部を60℃に保ちながら、イソシアネート基含有オルガノポリシロキサン化合物として3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン5.46質量部(NCO/OH=0.054)を15分かけて滴下した。滴下終了後、85℃まで昇温させFT-IRスペクトル測定でイソシアネート基のピークが消失するまで1.5時間攪拌した。次いで、有機ジイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート42.98(残存NCO/OH=1.0)15分かけて滴下した。滴下終了後、85℃まで昇温させFT-IRスペクトル測定でイソシアネート基のピークが消失するまで攪拌した後、酢酸ブチルを226.3質量部加え、ポリウレタン樹脂(5)を35質量%含有するポリウレタン樹脂(5)溶液を製造した。酸価は1.27であった。
【0043】
得られた各実施例及び比較例のポリウレタン樹脂溶液(防湿コート剤)を用い、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
<防湿性の評価>
防湿性の評価は、防湿コート剤をメアバーにて、乾燥塗膜厚みが30μmとなるように、フタムラ製プレーンセロファン(20μm)に塗布後、25℃で15分予備乾燥させた後、120℃2時間加熱硬化させ、カップ法にて40℃90%R.H.24時間の条件で測定した。値はセロファンのバリア値(WVTR)を750g/25μmとして実測値から100μm当たりの換算値で評価した。50(g/m2・day)以下を合格基準とした。
[評価基準]
〇:50(g/m2・day)以下である。
×:50(g/m2・day)超である。
【0045】
<絶縁性の評価>
アルミ板片面塗工 100×100×t0.5mm 膜厚0.04~0.08mm
硬化条件:25℃で15分予備乾燥させた後、120℃×2時間加熱硬化
比誘電率、誘電正接 IEC 62631-2-1 準拠:周波数1MHz
絶縁破壊強さ IEC 60243-1準拠
[評価基準]
〇:比誘電率3.3以下で、誘電正接0.03以下で、絶縁破壊強さ50kV/mm以上である。
×:上記を満たさない。
【0046】
<アルミニウム、銅との密着性>
各金属版に約20μmの塗膜をメアバーで塗布し、25℃で15分予備乾燥させた後、120℃2時間加熱硬化させた後、JIS K5600-5-6に準拠してクロスカット法により評価した。
[評価基準]
〇:剥がれない。
△:20%以下の範囲が剥がれる。
×:20%超の範囲が剥がれる。
【0047】
<耐熱性>
PETフィルム上に約20μmの塗膜をメアバーで塗布したコート剤にPETフィルムをのせ、100℃に昇温後塗膜の剥離がないかを評価した。
[評価基準]
〇:剥離なし。
×:剥離あり。
【0048】
<貯蔵安定性>
防湿コート剤を製造後、室温にて1週間放置後、B型粘度計により粘度を測定した。
増粘率(%)=((1週間後の粘度-製造後の粘度)/製造後の粘度)×100[評価基準]
〇:増粘率が20%以下である。
△:増粘率が20%超である。
×:ゲル化する。
【0049】
<タック性>
防湿コート剤をメアバーにて、乾燥塗膜厚みが30μmとなるように、フタムラ製プレーンセロファン(20μm)に塗布後、25℃で15分乾燥させた後、指触で評価した。
〇:タックがない。
△:少しタックがある。
×:タックがある。
【0050】
<延伸性>
テフロン(登録商標)テープ上に固形分約20%に希釈した各ポリウレタン樹脂溶液を一定量流し込み常温にて約20時間乾燥させ膜厚を100μm程度に調製しダンベル状に打ち抜いた評価サンプルの引張破断伸度を、引張り試験機(島津オートグラフAGS-X)を用いて300mm/分の条件下で測定した。測定は、JIS K 7127-1999[プラスチック-引張特性の試験方法-第3部:フィルム及びシートの試験条件]に準拠した方法で行った。
[評価基準]
引張破断伸度(%)が400(%)以上を合格とした。
【0051】
<耐黄変性>
防湿コート剤をメアバーにて、乾燥塗膜厚みが30μmとなるように、フタムラ製プレーンセロファン(20μm)に塗布後、25℃で15分予備乾燥させた後、120℃2時間加熱硬化させ後、得られた塗膜の変色の有無を目視にて評価した。
〇:黄色の変色がない。
×:黄色の変色がある。
【0052】