(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075824
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】水中の金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 3/44 20060101AFI20240529BHJP
C02F 1/62 20230101ALI20240529BHJP
C08F 220/34 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C22B3/44
C02F1/62 Z
C08F220/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187006
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 愛子
(72)【発明者】
【氏名】大木 孝恵
【テーマコード(参考)】
4D038
4J100
4K001
【Fターム(参考)】
4D038AA08
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4K001DB16
(57)【要約】
【課題】
廃水や廃液等の水中の金属の回収方法に関し、詳しくは比較的安価で簡易な操作で効率的に金属を回収する方法を提供すること。
【解決手段】
三級アミノ基及び/又は二級アミノ基含有カチオン性単量体50~99質量%、疎水性単量体1~50質量%を含有する単量体混合物を重合して得られる高分子を水に添加しアルカリ処理することで、簡易で効率的に金属を回収することが可能となる。水にアルカリ剤を添加してpH7~14にアルカリ処理することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含有している水に、下記一般式(1)で表わされる三級アミノ基及び/又は二級アミノ基含有カチオン性単量体50~99質量%、疎水性単量体1~50質量%を含有する単量体混合物を重合して得られる高分子を添加後、アルカリ処理することを特徴とする水中の金属の回収方法。
一般式(1)
R
1は水素又はメチル基、R
2、R
3は水素、炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、4~20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基を表わす、X
1
-は陰イオンをそれぞれ表わす。
又は、AとR
2またはAとR
3が炭素数1~4で連結した環状アミン。
【請求項2】
前記水にアルカリ剤を添加してpH7~14にアルカリ処理することを特徴とする請求項1に記載の水中の金属の回収方法。
【請求項3】
前記高分子のアミノ基が、水中に添加時に中和されていることを特徴とする請求項1に記載の水中の金属の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の金属の回収方法に関する。詳しくは、高分子を用いて水中の金属を共沈させて回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水中のレアメタル等の金属の湿式回収方法は還元剤の添加やキレート樹脂の使用等が一般的である。
例えば、特許文献1では、白金族元素とセレンおよびテルルを含有する液に還元剤を添加してセレン滓を沈澱させ白金族元素とセレンを回収する方法が開示されている。しかしながら、還元剤添加では形成フロックが小さく含有濃度が数ppm以下の回収は困難である。
特許文献2では、ビニルアミン単位を含む架橋樹脂を用いて、金シアノ錯体を含む溶液から金を回収する金の回収方法が開示されている。しかし、この様なキレート樹脂は設備投資にコストが掛かり、採算が取り難いという側面がある。
そこで、比較的安価で効率的な金属回収が要望され、例えば、特許文献3では、特定のカチオン性の高分子化合物を酸性条件下で貴金属を含有する液中に添加して、貴金属の凝集体を形成させ、これを分離回収する貴金属の回収方法が開示されている。高分子を使用することで液中の貴金属を選択的に回収できている。しかし、近年では金属資源の需要が高まっており、特に希少金属や貴金属は各種分野において必須材料として用いられているが、埋蔵量が少なく、供給量が制限されている。又、重金属の回収方法として一般的にアルカリ沈殿法等が用いられるが、形成フロックが脆く沈殿し難いため数ppm以下の回収、並びに処理水からの除去は困難である。そのため、より簡易な操作で効率的に水中から金属を回収する方法が要望されている。
【0003】
【特許文献1】特開2015-193888号公報
【特許文献2】国際公開2019/131946号公報
【特許文献3】特開2012-097349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、廃水や廃液等の水中の金属回収方法に関し、詳しくは比較的安価で簡易な操作で効率的に金属を回収する方法に関することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明者は鋭意検討を重ねた結果、特定の高分子を水中に添加後、アルカリ処理することで、フロックが形成され捕集対象の金属をフロックと共に共沈させることで、前記課題を解決できることを見出し本発明に至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明における特定の高分子を水中に添加し、水をアルカリ処理する簡易な操作で効率的に金属を回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における高分子は、下記一般式(1)で表わされる三級アミノ基及び/又は二級アミノ基含有カチオン性単量体50~99質量%、疎水性単量体1~50質量%を構成単位とする。
一般式(1)
R
1は水素又はメチル基、R
2、R
3は水素、炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、4~20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基を表わす、X
1
-は陰イオンをそれぞれ表わす。
又は、AとR
2またはAとR
3が炭素数1~4で連結した環状アミン。
【0008】
一般式(1)で表わされる三級アミノ基含有カチオン性単量体の例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの塩等が挙げられる。
又、二級アミノ基含有カチオン性単量体の例としては、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、i-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピぺリジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
【0009】
疎水性単量体としては、スチレン類、炭素数が4以上のアルキル基を有する単量体、不飽和ニトリル、その他、20℃の水への溶解度が2質量%以下である単量体等が挙げられる。
スチレン類としては、スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
炭素数が4以上のアルキル基を有する単量体の例としては、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アルキル(メタ)アクリレート類、ベンジル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類、n-ブチル(メタ)アクリルアミド、n-オクチルアクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。不飽和ニトリルとして、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。その他、20℃の水への溶解度が2質量%以下である単量体として、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド 等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
【0010】
又、本発明における高分子の効果を阻害しない範囲でアニオン性単量体及び/又は非イオン性単量体を含有しても良い。アニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸あるいはそのナトリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、マレイン酸あるいはそのアルカリ金属塩、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミドアルカンスルホン酸あるいはそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。これらを二種以上、組み合わせても差し支えない。
非イオン性単量体として、(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。これらを二種以上、組み合わせても差し支えない。アニオン性単量体及び/又は非イオン性単量体を高分子の構成単位として含む場合は10質量%以下が好ましい。
【0011】
重合に際しては、界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、分子内に親水性基と疎水性基を有する物質であり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物等のアニオン性界面活性剤、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤が使用可能である。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
界面活性剤の添加率は全単量体に対して0.01質量%~5質量%であり、好ましくは0.05質量%~3質量%、更に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0012】
本発明における高分子の製品形態は特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。例えば、水溶液重合、油中水型エマルジョン重合、水中油型エマルジョン重合、塩水中分散重合等によって重合した後、水溶液、塩水中分散液、油中水型エマルジョンあるいは粉末等、任意の製品形態にすることができる。
【0013】
本発明における高分子のアミノ基が水中に添加時に中和されていると金属の吸着効率が高まるため好ましい。高分子の製造時にアミノ基を酸で中和して製造することができる。又、高分子を水に添加時に水中の酸で中和されても良い。酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸、クエン酸等の有機酸が挙げられる。硫酸あるいは塩酸が好ましい。
【0014】
本発明における高分子を製造する際の重合時あるいは重合後、構造変性剤として架橋性単量体を使用しても良い。使用する場合は、架橋性単量体を単量体総量に対し、0.050質量%内で存在させる。単量体組成や重合条件により異なるが、0.050質量%を超えると架橋が進行しすぎて水不溶性となるため本発明の用途としては好ましくはない。架橋性単量体の例としては、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、N-ビニル(メタ)アクリルアミド、N-メチルアリルアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アクロレイン、グリオキザール、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられ、この中でN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0015】
本発明においては連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸及びそのエステル類、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、アリルアミン、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。又、メタクリルスルホン酸ナトリウム、メタクリルスルホン酸カリウム、メタクリルスルホン酸アンモニウム等のメタクリルスルホン酸塩等の単量体が挙げられる。
【0016】
重合開始剤としては、例えば、2、2’-アゾビス[2-(5-メチル-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2、2’-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩等のアゾ系の重合開始剤が挙げられる。又、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等も挙げられる。これらは単独でも使用できるが、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等の還元剤と組合せてレドックス系重合開始剤としても使用できる。重合開始剤の添加率は全単量体に対し0.01~2質量%、好ましくは0.1~1質量%である。
【0017】
重合反応は、使用する重合開始剤にもよるが、通常温度30~100℃、時間は0.5時間~20時間で行う。重合濃度としては、単量体濃度として5~60質量%であるが、好ましくは10~50質量%である。
【0018】
本発明における高分子の微粒子の粒径は、動的光散乱測定による粒子径が20~15000nmであることが好ましい。動的光散乱測定は大塚電子製ELS-Z(ゼータ電位・粒径測定システム)を使用し以下の様に行なう。高分子濃度0.01質量%水溶液を調整し、光路長10mmプラスチックデポジットセル(材質:メタクリレート)に入れ、測定条件は、温度25℃、溶媒:純水、屈折率1.3316により測定し、Cumulant法にて解析し求める。尚、同じ測定原理のものであれば同様な粒子径測定装置が適宜に使用できる。
【0019】
本発明における高分子は、塩水溶液粘度を分子量の指標とすることができる。塩水溶液粘度は、高分子濃度が0.5質量%になるように完全溶解したときの25℃において回転粘度計にて測定した4質量%食塩水溶液粘度(SLV)である。塩水溶液粘度が1~10mPa・sが好ましい範囲である。B型粘度計としては東京計器製B8M等を使用し、1号ローター、60rpmで測定した値である。
【0020】
本発明が対象とする水は、金属加工工場、メッキ工場、化学工場、機械工場、電気・電子工場、自動車工場等からの各種産業廃水や洗浄廃水、下水や家庭等からの生活廃水、地下水等、金属を含有している各種水に適用できる。
【0021】
対象とする金属としては貴金属あるいは重金属が好ましい。貴金属として、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、プラチナ等が挙げられ、重金属として、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ等が挙げられ、これら二種以上含有していても良い。
水中の金属濃度としては、0.1~200ppmの範囲が好ましい。
【0022】
本発明における高分子を、金属を含有している水に添加後、アルカリ処理する。アルカリ処理にはアルカリ剤を使用する。アルカリ剤は、消石灰(水酸化カルシウム)、水酸化ナトリウム、炭酸ソーダ、炭酸カリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらの中から二種以上を組み合わせて使用することができる。アルカリ処理によりpH7以上に調整することが好ましい。より大きな効果を発揮するにはpH8以上が好ましい。pH14を超えてもそれ以上の大きな処理効果は得られ難く、pH13以下が好ましい。アルカリ剤は、高分子と同時に添加することもできる。
【0023】
本発明における高分子は三級アミノ基もしくは二級アミノ基に由来する親水性部、ベンジル基、直鎖アルキル基あるいはニトリル基に由来する疎水性部を有することが特徴である。親水部はアミノ基とアンモニウムイオン基の平衡状態にあり、アミノ基は水素結合、アンモニウムイオン基は陽イオン化による水和が起こり、水に溶解する。これらのうち、アンモニウムイオン基の方が水への溶解性が大きい。
アンモニウムイオン基が支配的となる酸性~中性域では、ポリマーは水に溶解/分散しやすい。溶液pHをアルカリ域へと変動させると、アミノ基へと平衡が移り、親水性が少しずつ低下する。疎水部由来の疎水性が親水性より有利になると、高分子全体の親水性が大幅に失われ、ポリマー沈殿が生じる。
金属が、塩酸やクエン酸のような配位能を有する対陰イオンと共に水溶液中に溶解する場合、陰イオンが金属に配位し錯体を形成する。配位子の数は、金属の価数以上になることが多く、錯体は陰イオン化する場合が多い。この時、高分子は陽イオン状態であるため、陰イオン化した金属錯体と静電的に相互作用する。
溶液のpHがアルカリ域になると、親水部の平衡が徐々にアミノ基側に移行する。アミノ基は金属へ配位結合を形成し、金属を捕捉する。
又、pHがアルカリ域にて発生する金属水酸化物は、溶解度積が小さく不溶化し沈殿する。本発明における高分子は、発生する金属水酸化物のゼータ電位の中和、続くフロック形成により、金属を回収することができると考えられる。
特に本発明においては水溶液中の希薄な金属を回収することができる。従来技術ではスラリー状の金属もしくは金属スラリーが存在する廃水に有効とするものが多く、それ以外の希薄な廃水には不向きであった。本発明ではポリマー自体を沈殿させることが従来技術とは相違し、金属を効率的に回収することが可能となる。
【0024】
本発明における高分子は、製品のままの状態で添加しても良いし、任意の濃度に水で溶解、希釈して対象水に添加しても良い。溶解する場合は、一般的に溶解濃度0.05~1.0質量%を適用する。又、水液量に対する添加率は、対象水の性状や対象金属の濃度にもよるが0.5~50000ppm、好ましくは1~10000ppmである。
【0025】
本発明における高分子を水中に添加、アルカリ処理後、高分子凝集剤を添加し処理効果を促進することができる。金属を回収することにより処理水の金属含有量が低減、処理水中の金属を除去することができる。高分子凝集剤として一般的なアクリルアミド系高分子凝集剤やアミジン系高分子凝集剤、ビニルアミン系高分子凝集剤等が使用できる。これらの中でもアクリルアミド系高分子凝集剤が好ましく、アニオン性ポリアクリルアミドが特に好ましい。
【0026】
本発明の方法により形成フロックとして共沈した金属を水中から効率的に分離するための方法としては、濾過、デカンテーション、遠心分離、不織布等に吸着させる方法等が挙げられるが、取り扱いの簡便さから濾過又はデカンテーションが好ましい。又、分離したものを焼却処理や酸処理等の任意の処理により金属を回収することができる。
【実施例0027】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0028】
(高分子試料1の製造)
攪拌機、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mLセパラブルフラスコにジメチルアミノエチルメタクリレート(DMMと略記)34.3g、ドデシル硫酸ナトリウム0.1g、75質量%硫酸14.3g、純水196.3g、スチレン(STと略記)5gを加え、全量が250gになるように単量体溶液を調製した。この時の単量体組成は、DMM(硫酸塩)/ST=90/10(質量%)、単量体濃度は20質量%である。得られたエマルジョン単量体溶液の温度を48~50℃に保ち、窒素置換を30分行なった後、アゾ系重合開始剤2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(富士フィルム和光純薬製VA-044)0.2g(対単量体0.4質量%)を加え、重合反応を開始させた。50℃で5時間重合させ反応を完結させ水溶性微粒子が得られた。これを高分子試料1とし、その組成、物性を表1に示す。
【0029】
(高分子試料2の製造)
攪拌機、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mLセパラブルフラスコにジメチルアミノエチルメタクリレート(DMMと略記)36.5g、ドデシル硫酸ナトリウム0.1g、36質量%塩酸23.5g、純水184.9g、スチレン(STと略記)5gを加え、全量が250gになるように単量体溶液を調製した。この時の単量体組成は、DMM(塩酸塩)/ST=90/10(質量%)、単量体濃度は20質量%である。得られたエマルジョン単量体溶液の温度を48~50℃に保ち、窒素置換を30分行なった後、アゾ系重合開始剤2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(富士フィルム和光純薬製VA-044)0.2g(対単量体0.4質量%)を加え、重合反応を開始させた。50℃で5時間重合させ反応を完結させ水溶性微粒子が得られた。これを高分子試料2とし、その組成、物性を表1に示す。
【0030】
(高分子試料3の製造)
攪拌機、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mLセパラブルフラスコにジメチルアミノエチルメタクリレート(DMMと略記)20.3g、ドデシル硫酸ナトリウム0.1g、クエン酸24.8g、純水199.9g、スチレン(STと略記)5gを加え、全量が250gになるように単量体溶液を調製した。この時の単量体組成は、DMM(クエン酸塩)/ST=90/10(質量%)、単量体濃度は20質量%である。得られたエマルジョン単量体溶液の温度を48~50℃に保ち、窒素置換を30分行なった後、アゾ系重合開始剤2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(富士フィルム和光純薬VA-044)0.2g(対単量体0.4質量%)を加え、重合反応を開始させた。50℃で5時間重合させ反応を完結させ水溶性微粒子が得られた。これを高分子試料3とし、その組成、物性を表1に示す。
【0031】
(高分子試料4~17の製造)
疎水性単量体の種類・量、カチオン性単量体の種類・量、中和塩の種類、架橋性単量体、連鎖移動剤の有無を変更して高分子試料1と同様な重合操作をそれぞれ行い、反応を完結させ試料4~14の水溶性微粒子、試料15~17の水溶性高分子が得られた。これらの組成、物性を表1に示す。
【0032】
(本発明の範囲外の高分子試料A~Gの製造)
疎水性単量体の種類・量、カチオン性単量体の種類・量、中和塩の種類を変更して高分子試料1と同様な重合操作をそれぞれ行い、反応を完結させ試料A~Cの水溶性微粒子、試料D~Fの水溶性高分子が得られた。又、市販品高分子試料Gを準備した。これらの組成、物性を表2に示す。
【0033】
(表1)
疎水性単量体;ST:スチレン、BM:ブチルメタクリレート、2HA:2-エチルへキシルアクリレート、DM:ドデシルメタクリレート、AN:アクリロニトリル
カチオン性単量体;DMM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
DEM:ジエチルアミノエチルメタクリレート
DMAPAA:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
TBEA:tert-ブチルアミノエチルメタクリレート
架橋性単量体;メチレンビスアクリルアミド、添加率:質量%対単量体
連鎖移動剤;SPS:次亜リン酸ナトリウム、IPA:イソプロピルアルコール、添加率:質量%対単量体
(連鎖移動剤としてIPAを用いた場合は、重合操作後、濃縮操作を行い蒸発させ高分子試料を得た。)
塩水溶液粘度;4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度(mPa・s)。
【0034】
(表2)
疎水性単量体;ST:スチレン、
カチオン性単量体;AMC:アミノエチルメタクリレート、
DMC:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、
DMM:ジメチルアミノエチルメタクリレート、
DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、
DADMAC:ジアリルジメチルアンモニウム塩化物、
DCDA/FA:ジシアンジアミド・ホルムアルデヒド縮合物
塩水溶液粘度;4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度(mPa・s)。
【0035】
(実施例1)金の回収試験
金ICP-MS標準液(1000μg/mL in 10質量%HCl)を使用して、金濃度10ppmの水溶液を調製した。水酸化ナトリウムを用いてpH2に調整した金水溶液150gに高分子試料1を3.75g(対液5000ppm)加えて、400rpmで20分間攪拌した。0.1N水酸化ナトリウムを滴下してpH11に調整し、ポリマー沈殿が生じた。生じた金含有ポリマー沈殿を40メッシュで濾過を行い、濾液をICP発光分析で定量し金の回収率を算出した。この結果を実施例1-1として表3に示す。
又、金濃度とpH、高分子試料と添加率を変更し実施例1-1と同様な試験を実施した(実施例1-2~22)。これらの結果を表3に示す。
【0036】
(比較例1)金の回収試験
金濃度とpH、高分子試料、調整pHを変更し実施例1と同様な試験を実施した。これらの結果を表4に示す。
【0037】
【0038】
【0039】
(実施例2)パラジウムの回収試験
パラジウムICP-MS標準液(100μg/mL in 10質量%HCl)を使用して、パラジウム濃度10ppmの水溶液を調製した。水酸化ナトリウムを用いてpHを1に調整したパラジウム水溶液150gに高分子試料1を3.75g(対液5000ppm)加えて、400rpmで20分間攪拌した。0.1N水酸化ナトリウムを滴下してpH11に調整し、ポリマー沈殿が生じた。生じたパラジウム含有ポリマー沈殿を40メッシュで濾過を行い、濾液をICP発光分析で定量しパラジウムの回収率を算出した。この結果を実施例2-1として表5に示す。
又、パラジウム水溶液pH、高分子試料、調整pHを変更し実施例2-1と同様な試験を実施した(実施例2-2、3)。これらの結果を表5に示す。
【0040】
(比較例2)パラジウムの回収試験
パラジウム水溶液pH、高分子試料、調整pHを変更し実施例2と同様な試験を実施した。これらの結果を表5に示す。
【0041】
【0042】
(実施例3)ルテニウムの回収試験
ルテニウムICP-MS標準液(1000μg/mL in 10質量%HCl)を使用して、ルテニウム濃度10ppmの水溶液を調製した。水酸化ナトリウムを用いてpH2に調整したルテニウム水溶液150gに高分子試料1を3.75g(対液5000ppm)加えて、400rpmで20分間攪拌した。0.1N水酸化ナトリウムを滴下してpH11に調整し、ポリマー沈殿が生じた。生じたルテニウム含有ポリマー沈殿を40メッシュで濾過を行い、濾液をICP発光分析で定量しルテニウムの回収率を算出した。この結果を実施例3-1として表6に示す。
又、高分子試料を変更し実施例3-1と同様な試験を実施した(実施例3-2)。これらの結果を表6に示す。
【0043】
(比較例3)ルテニウムの回収試験
高分子試料、調整pHを変更し実施例3と同様な試験を実施した。これらの結果を表6に示す。
【0044】
【0045】
(実施例4)ニッケルの回収試験
硝酸ニッケルを使用して、ニッケル濃度6ppmの水溶液を調製した。水酸化ナトリウムと塩酸を用いてpH3に調整したニッケル水溶液150gに高分子試料1を3.75g(対液5000ppm)加えて、400rpmで20分間攪拌した。
0.1N水酸化ナトリウムを滴下してpHを11に調整し、ポリマー沈殿物が生じた。生じたニッケル含有ポリマー沈殿を40メッシュで濾過を行い、濾液を原子吸光分析で定量しニッケルの回収率を算出した。この結果を実施例4-1として表7に示す。
又、高分子試料と添加率、調整pHを変更し実施例4-1と同様な試験を実施した(実施例4-2~22)。これらの結果を表7に示す。
【0046】
(比較例4)ニッケルの回収試験
高分子試料、調整pHを変更し実施例4と同様な試験を実施した。これらの結果を表8に示す。
【0047】
【0048】
【0049】
(実施例5)亜鉛の回収試験
塩化亜鉛を使用して亜鉛濃度100ppmの水溶液を調製した。水酸化ナトリウムと塩酸を用いてpH7に調整した亜鉛水溶液150gに高分子試料1を3.75g(対液5000ppm)加えて、400rpmで20分間攪拌した。0.1N水酸化ナトリウムを滴下してpH9に調整し、ポリマー沈殿物が生じた。生じた亜鉛含有ポリマー沈殿を40メッシュで濾過を行い、濾液を原子吸光分析で定量し亜鉛の回収率を算出した。この結果を実施例5-1として表9に示す。
又、高分子試料、調整pHを変更し実施例5-1と同様な試験を実施した(実施例5-2、3)。これらの結果を表9に示す。
【0050】
(比較例5)亜鉛の回収試験
高分子試料を添加せずに調整pHを変更し実施例5と同様な試験を実施した。これらの結果を表9に示す。
【0051】
【0052】
(実施例6)鉄(II)の回収試験
硝酸鉄(II)を使用して、鉄濃度10ppmの水溶液を調製した。水酸化ナトリウムと塩酸を用いてpH3に調整した鉄水溶液150gに高分子試料1を3.75g(対液5000ppm)加えて、400rpmで20分間攪拌した。0.1N水酸化ナトリウムを滴下してpH10に調整し、ポリマー沈殿物が生じた。生じた鉄含有ポリマー沈殿を40メッシュで濾過を行い、濾液を原子吸光分析で定量し鉄(II)の回収率を算出した。この結果を実施例6-1として表10に示す。
又、高分子試料を変更し実施例6-1と同様な試験を実施した(実施例6-2)。この結果を表10に示す。
【0053】
(比較例6)鉄(II)の回収試験
高分子試料を変更し実施例6と同様な試験を実施した。これらの結果を表10に示す。
【0054】
【0055】
(実施例7)銅の回収試験
硫酸銅を使用して、銅濃度100ppmの水溶液を調製した。水酸化ナトリウムと塩酸を用いてpH5に調整した銅水溶液150gに高分子試料1を3.75g(対液5000ppm)加えて、400rpmで20分間攪拌した。0.1N水酸化ナトリウムを滴下してpH9に調整し、ポリマー沈殿物が生じた。生じた銅含有ポリマー沈殿を40メッシュで濾過を行い、濾液を原子吸光分析で定量し銅の回収率を算出した。この結果を実施例7-1として表11に示す。
又、高分子試料を変更し実施例7-1と同様な試験を実施した(実施例7-2、3)。これらの結果を表11に示す。
【0056】
(比較例7)銅の回収試験
高分子試料を変更し実施例7と同様な試験を実施した。これらの結果を表11に示す。
【0057】
【0058】
(実施例8)銅の回収試験
硫酸銅を使用して、銅濃度100ppmの水溶液を調製した。水酸化ナトリウムと塩酸を用いてpH5に調整した銅水溶液150gに高分子試料1を0.038g(対液50ppm)加えて、400rpmで20分間攪拌した。0.1N水酸化ナトリウムを滴下してpH9に調整し、ポリマー沈殿物が生じた。0.1質量%に溶解した高分子凝集剤アニオン性ポリアクリルアミド(A-PAM、アクリルアミド/アクリル酸=80/20モル%、粉末品)を0.3g(対液2ppm)添加して、400rpmで10分間攪拌した。生じた銅含有ポリマー沈殿物を40メッシュで濾過を行い、濾液を原子吸光分析で定量し銅の回収率を算出した。この結果を実施例8-1として表12に示す。
又、高分子試料の添加率を変更し実施例8-1と同様な試験を実施した(実施例8-2、3)。これらの結果を表12に示す。
【0059】
(比較例8)銅の回収試験
高分子試料を変更し実施例8と同様な試験を実施した。これらの結果を表12に示す。
【0060】
【0061】
本発明における高分子を、金属を含有している水に添加し、アルカリ処理する実施例においては金属の高い回収率を示し、簡易で効率的に金属を回収することが確認できた。