(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075840
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】液体貯留容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20240529BHJP
A01N 1/02 20060101ALI20240529BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20240529BHJP
B65D 30/22 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A61J1/05 350
A01N1/02
A61J1/10 333C
B65D30/22 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187031
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】笠松 寛央
(72)【発明者】
【氏名】吉本 周平
(72)【発明者】
【氏名】石川 潤
(72)【発明者】
【氏名】虎井 真司
(72)【発明者】
【氏名】大原 正行
【テーマコード(参考)】
3E064
4C047
4H011
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA21
3E064BC18
3E064FA04
3E064HL03
3E064HR01
3E064HS00
3E064HT07
4C047AA11
4C047CC01
4C047CC04
4C047DD11
4C047DD23
4C047DD24
4C047DD28
4H011CA01
4H011CB05
4H011CC01
(57)【要約】
【課題】還流式の臓器灌流装置において、還流された灌流液に対して正確な計測を行うことができる技術を提供する。
【解決手段】液体貯留容器1は、シートを袋状に形成した筐体80と、筐体80に取り付けられ、配管を接続可能な送液ポート21,22および回収ポート23を有する。筐体80内の空間は、一端が回収ポート23と連通する流入流路71と、送液ポート21,22と連通する液体貯留部72とを含む。流入流路71の他端は、直接または間接的に流出用液体貯留部72と連通する。これにより、流入流路71内を、回収ポート23から流入した灌流液のみで満たすことができる。流入流路71にセンサを取り付けることで、液体貯留容器1内の灌流液と回収した灌流液とが混合する前に、回収ポート23から流入した灌流液に対する計測を行うことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器に供給するための液体を貯留する液体貯留容器であって、
シートを袋状に形成した筐体と、
前記筐体に取り付けられ、配管を接続可能な送液ポートと、
前記筐体に取り付けられ、配管を接続可能な回収ポートと、
を有し、
前記筐体内の空間は、
一端が前記回収ポートと連通し、前記回収ポートから延びる流入流路と、
前記送液ポートと連通する流出用液体貯留部と、
を含み、
前記流入流路の他端は、直接または間接的に前記流出用液体貯留部と連通する、液体貯留容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体貯留容器であって、
前記送液ポートおよび前記回収ポートはそれぞれ、前記筐体の下部に取り付けられ、
前記流入流路は、下端が前記回収ポートと連通し、上端において直接または間接的に前記流出用液体貯留部と連通する、液体貯留容器。
【請求項3】
請求項2に記載の液体貯留容器であって、
前記筐体は、上部に、
前記筐体を吊り下げるための吊り下げ孔
を有する、液体貯留容器。
【請求項4】
請求項2に記載の液体貯留容器であって、
前記筐体は、
上下方向に延び、前記筐体の下部の空間を、前記流入流路と前記流出用液体貯留部とに分ける遮蔽部
を有し、
前記流入流路と前記流出用液体貯留部とは、前記遮蔽部の上方の空間を介して連通する、液体貯留容器。
【請求項5】
請求項4に記載の液体貯留容器であって、
前記遮蔽部の一部が、前記回収ポートの上方の延長線上に配置される、液体貯留容器。
【請求項6】
請求項4に記載の液体貯留容器であって、
前記遮蔽部は、前記流入流路と前記流出用液体貯留部とを水平方向に連通する通液孔を有する、液体貯留容器。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の液体貯留容器であって、
前記筐体は、
外部から前記流入流路内へセンサを取り付け可能なセンサ取り付けポート
を有する、液体貯留容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摘出された臓器に対して灌流処理を行う際に、灌流液を貯留するための液体貯留容器に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓移植等の移植手術では、ドナーから臓器を摘出した後、当該臓器をレシピエントへ移植するまでの間、一時的に臓器を保存する。摘出された臓器を移植可能な状態で保存するため、種々の保存方法や灌流方法が開発されている。摘出した臓器を保存するためには、例えば、保存している臓器内の老廃物の除去を目的として、臓器内血管網に灌流液を灌流させる灌流保存法が知られている。
【0003】
臓器を体外で保存する従来の装置については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、輸液バッグ(液体貯留容器)に貯留された灌流液を、灌流チューブ(配管)を介して臓器に供給するとともに、臓器から排出された灌流液を輸液バッグに還流させる構成が開示されている。このように、臓器の灌流処理を長時間行う場合には、臓器に対して配管を接続して、臓器内に灌流液を供給し、臓器から排出された灌流液を還流させて、再び臓器へ供給する場合がある。
【0006】
このような灌流装置において、臓器から排出された灌流液では、臓器の代謝によって、臓器へ供給された灌流液に比べて、溶存酸素が減少するとともに溶存二酸化炭素が増加する。また、臓器から排出された灌流液では、臓器の代謝に必要な成分が減少している。
【0007】
このため、臓器から排出され、回収された灌流液は、酸素等の臓器にて消費された成分を補充してから灌流液貯留部へと還流される。このとき、これらの成分が適切に添加されているかを計測し、その計測結果に応じて添加量を制御することがある。
【0008】
このような場合に、灌流液の輸送経路上にセンサを配置しようとすると、配管内の圧力損失やせん断応力が増加するという問題が生じる。このため、配管内ではなく、灌流液貯留部にセンサを取り付けることが好ましい。しかしながら、灌流液貯留部にセンサを取り付けると、灌流液貯留部内に残存する灌流液と、回収後に成分添加が行われた灌流液とが混ざってしまうため、回収後に成分添加が行われた灌流液の正確な計測結果を得ることが困難となる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、還流式の臓器灌流装置において、還流された灌流液に対して正確な計測を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、臓器に供給するための液体を貯留する液体貯留容器であって、シートを袋状に形成した筐体と、前記筐体に取り付けられ、配管を接続可能な送液ポートと、前記筐体に取り付けられ、配管を接続可能な回収ポートと、を有し、前記筐体内の空間は、一端が前記回収ポートと連通し、前記回収ポートから延びる流入流路と、前記送液ポートと連通する流出用液体貯留部と、を含み、前記流入流路の他端は、直接または間接的に前記流出用液体貯留部と連通する。
【0011】
本願の第2発明は、第1発明の液体貯留容器であって、前記送液ポートおよび前記回収ポートはそれぞれ、前記筐体の下部に取り付けられ、前記流入流路は、下端が前記回収ポートと連通し、上端において直接または間接的に前記流出用液体貯留部と連通する。
【0012】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の液体貯留容器であって、前記筐体は、上部に、前記筐体を吊り下げるための吊り下げ孔を有する。
【0013】
本願の第4発明は、第2発明の液体貯留容器であって、前記筐体は、上下方向に延び、前記筐体の下部の空間を、前記流入流路と前記流出用液体貯留部とに分ける遮蔽部を有し、前記流入流路と前記流出用液体貯留部とは、前記遮蔽部の上方の空間を介して連通する。
【0014】
本願の第5発明は、第4発明の液体貯留容器であって、前記遮蔽部の一部が、前記回収ポートの上方の延長線上に配置される。
【0015】
本願の第6発明は、第4発明の液体貯留容器であって、前記遮蔽部は、前記流入流路と前記流出用液体貯留部とを水平方向に連通する通液孔を有する。
【0016】
本願の第7発明は、第1発明ないし第6発明のいずれかの液体貯留容器であって、前記筐体は、外部から前記流入流路内へセンサを取り付け可能なセンサ取り付けポートを有する。
【発明の効果】
【0017】
本願の第1発明から第7発明によれば、流入流路内を、回収ポートから流入した灌流液のみで満たすことができる。これにより、流入流路にセンサを取り付けることにより、液体貯留容器内の灌流液と回収した灌流液とが混合する前に、回収ポートから流入した灌流液に対する計測を行うことができる。
【0018】
本願の第4発明によれば、遮蔽部によって筐体内の空間を分けることにより、筐体の外形を変えること無く流入流路を形成できる。特に、ソフトバッグにおいては、シールによって遮蔽部を形成できる。
【0019】
本願の第5発明によれば、回収ポートから勢いよく灌流液が流入した場合に、液面を超えて灌流液が吹き上げることを抑制できる。これにより、灌流液の泡立ちによる溶血を抑制できる。
【0020】
本願の第6発明によれば、流入流路と流出用液体貯留部との圧力差が大きくなると、通液孔を介して流入流路から流出用液体貯留部へと灌流液が流れる。このため、回収ポートからの灌流液流入量が大きい場合にも、筐体内の左右の液面高さが平坦化して、筐体が傾きにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る灌流装置の構成を示した概略図である。
【
図2】第1実施形態に係る液体貯留容器の平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る液体貯留容器における灌流液の流れを示した図である。
【
図4】第1変形例に係る液体貯留容器の平面図である。
【
図5】第2変形例に係る液体貯留容器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本願において「臓器」は、ヒトの臓器であってもよいし、非ヒト動物の臓器であってもよい。したがって、「ドナー」および「レシピエント」は、ヒトであってもよいし、非ヒト動物であってもよい。また、非ヒト動物は、マウスおよびラットを含む齧歯類、ブタ、ヤギおよびヒツジを含む有蹄類、チンパンジーを含む非ヒト霊長類、その他の非ヒトほ乳動物であってもよいし、ほ乳動物以外の動物であってもよい。
【0023】
<1.第1実施形態>
<1-1.灌流装置の構成>
本発明の第1実施形態に係る液体貯留容器20を接続する灌流装置1について、
図1を参照しつつ説明する。
図1は、臓器に対して灌流処理を行う灌流装置1の構成を示した概略図である。
【0024】
この灌流装置1は、ドナーから摘出した肝臓等の臓器を、レシピエントへ移植するまでの間、体外で一時的に保存するための装置である。灌流装置1は、当該臓器に灌流液を供給して灌流を行う。なお、灌流装置1の対象臓器は肝臓に限られず、腎臓、心臓、あるいは、複数の臓器であってもよい。以下では、灌流装置1において肝臓9の灌流処理を行う場合について説明する。
【0025】
灌流装置1によって灌流処理が行われる際に、肝臓9はリアクタ90内に収容される。リアクタ90は、内部に臓器保存液と、灌流装置1に接続された肝臓9とを収容する。リアクタ90には、例えば、カップ状(有底筒状)の容器が用いられる。
【0026】
図1に示すように、灌流装置1は、リザーバ20、第1灌流液供給部30、第2灌流液供給部40、灌流液回収部50、計測部60および制御部10を有する。
【0027】
リザーバ20は、灌流液を貯留する液体貯留部である。本実施形態のリザーバ20は、点滴バッグのようなフレキシブルな容器によって形成されるソフトバッグである。リザーバ20は、第1送液ポート21と、第2送液ポート22と、回収ポート23とを有する。第1送液ポート21、第2送液ポート22および回収ポート23は、外部の配管と接続するための部位である。
【0028】
リザーバ20に貯留される灌流液には、例えば、ETK液が用いられる。灌流液には、UW液等のその他の種類の灌流液が用いられてもよい。また、リザーバ20に貯留される灌流液には、赤血球や人工赤血球が添加されていてもよい。
【0029】
リザーバ20の周囲には、リザーバ20内に貯留される灌流液の温度を調整する温度調整機構が備えられていてもよい。なお、温度調整機構は、灌流液供給部30,40や、灌流液回収部50に備えられてもよい。
【0030】
第1灌流液供給部30は、リザーバ20からリアクタ90内に収容された肝臓9の肝動脈へと灌流液を供給する。第1灌流液供給部30は、第1供給配管31と、第1供給配管31に介挿される第1送液ポンプ32および第1エアチャンバ33と、第1開閉部34とを有する。
【0031】
第1供給配管31は、リザーバ20から肝臓9の肝動脈へと灌流液を供給するための配管である。第1供給配管31の一端は、リザーバ20の第1送液ポート21に接続される。第1供給配管31の他端は、血管に挿入・固定するための血管挿入部(例えばカテーテル)を有していてもよい。肝臓9の灌流処理を行う際には、第1供給配管31の他端が肝臓9の肝動脈内に挿入される。
【0032】
第1送液ポンプ32は、第1供給配管31内に、リザーバ20から肝臓9へと向かう液体の流れを生成する。第1エアチャンバ33は、内部に灌流液を一時的に貯留して、灌流液自体と、灌流液に含まれる気泡とを分離するための機構である。これにより、第1供給配管31内を流れる灌流液から気泡が除去される。第1開閉部34は、第1供給配管31の連通を開閉させるための機構である。第1開閉部34には、例えば、クランプが用いられる。
【0033】
第2灌流液供給部40は、リザーバ20からリアクタ90内に収容された肝臓9の門脈へと灌流液を供給する。第2灌流液供給部40は、第2供給配管41と、第2供給配管41に介挿される第2送液ポンプ42および第2エアチャンバ43と、第2開閉部44とを有する。
【0034】
第2供給配管41は、リザーバ20から肝臓9の門脈へと灌流液を供給するための配管である。第2供給配管41の一端は、リザーバ20の第2送液ポート22に接続される。第2供給配管41の他端には、血管に挿入・固定するための血管挿入部(例えばカテーテル)を有していてもよい。肝臓9の灌流処理を行う際には、第2供給配管41の他端が肝臓9の門脈内に挿入される。
【0035】
第2送液ポンプ42は、第2供給配管41内に、リザーバ20から肝臓9へと向かう液体の流れを生成する。第2エアチャンバ43は、内部に灌流液を一時的に貯留して、灌流液自体と、灌流液に含まれる気泡とを分離するための機構である。これにより、第2供給配管41内を流れる灌流液から気泡が除去される。第2開閉部44は、第2供給配管41の連通を開閉させるための機構である。第2開閉部44には、例えば、クランプが用いられる。
【0036】
なお、第1送液ポンプ32および第2送液ポンプ42は、省略してもよい。その場合、リザーバ20と肝臓9との水頭差に応じた重力により、リザーバ20から肝臓9へと灌流液が供給される。
【0037】
灌流液回収部50は、肝臓9から排出され、リアクタ90内に溜まった灌流液を回収し、リザーバ20へと還流する。灌流液回収部50は、回収配管51と、回収配管51に介挿される回収ポンプ52およびガス交換機構53と、代謝成分補充機構54と、第3開閉部55とを有する。
【0038】
回収配管51は、リアクタ90からリザーバ20へと灌流液を送液するための配管である。灌流処理中、回収配管51の一端は、リアクタ90の下部に溜まった灌流液内に配置される。回収配管51の他端は、リザーバ20の回収ポート23に接続される。
【0039】
回収ポンプ52は、回収配管51内に、リアクタ90からリザーバ20へと向かう灌流液の流れを発生させる。回収ポンプ52が駆動されると、リアクタ90内に溜まった灌流液がリザーバ20へと還流される。
【0040】
ガス交換機構53は、回収ポンプ52とリザーバ20との間において、回収配管51に介挿される。ガス交換機構53は、回収配管51内を流れる灌流液に酸素等の気体を添加するとともに、二酸化炭素等の気体を回収する。
【0041】
代謝成分補充機構54は、回収配管51内に、代謝成分を含む薬液を投与するための機構である。代謝成分補充機構54は、例えば、T字状やY字状の三方活栓を介して、回収配管51内に薬液を投与する。本実施形態の代謝成分補充機構54は、制御部10からの信号に従って、自動で薬液を計量して投与する。しかしながら、代謝成分補充機構54は、例えば、シリンジによって手動で薬液を投与するものであってもよい。
【0042】
第3開閉部55は、回収配管51の連通を開閉させるための機構である。第3開閉部55は、回収ポンプ52、ガス交換機構53および代謝成分補充機構54よりもリザーバ20側に配置される。第3開閉部55には、例えば、クランプが用いられる。
【0043】
計測部60は、リザーバ20内の灌流液の各種の値を計測する。計測部60は、pHセンサ61と、溶存酸素濃度計測センサ62とを有する。計測部60の計測位置の詳細については、後述する。
【0044】
制御部10は、灌流装置1内の各部を動作制御するための部位である。
図1中に概念的に示したように、制御部10は、例えば、CPU等の演算処理部11、RAM等のメモリ12、および、ハードディスクドライブ等の記憶部13を有するコンピュータにより構成される。
【0045】
灌流処理において、制御部10は、第1送液ポンプ32、第2送液ポンプ42、回収ポンプ52、ガス交換機構53、代謝成分補充機構54の動作を制御する。このとき、制御部10は、計測部60の計測結果に基づいて、ガス交換機構53および代謝成分補充機構54の動作を調整してもよい。
【0046】
灌流処理において、肝臓9に供給された灌流液は、肝臓9内を循環した後、肝上部下大静脈(SH-IVC)や肝下部下大静脈(IH-IVC)等の肝臓9から血液を排出するための血管からリアクタ90内へと流出し、リアクタ90内に溜まる。このとき、肝臓9内を循環した灌流液は、酸素や各種の代謝成分が消費されるとともに二酸化炭素を吸収している。リアクタ90内に溜まった灌流液は、回収配管51へと吸引され、代謝成分補充機構54およびガス交換機構53において、代謝成分および酸素が添加されるとともに、二酸化炭素の一部が回収された後、リザーバ20へと回収される。
【0047】
<1-2.リザーバについて>
続いて、本実施形態のリザーバ20の構成について、
図2を参照しつつ説明する。
図2は、本実施形態のリザーバ20の平面図である。
【0048】
このリザーバ20は、上述の通り、フレキシブルな容器によって形成されるソフトバッグである。具体的には、リザーバ20は、フレキシブルなシートを袋状に形成した筐体80を有する。本実施形態の筐体80は、樹脂製のシートを、加熱および加圧によって溶融接着させる、所謂ヒートシールによって袋状に形成されている。
図2中、シートがシールされた箇所を斜線で示している。
【0049】
本実施形態では、リザーバ20は、1枚のシートが下端部で折り返されて前後に2重に重ねられ、上部および側部がシールされている。これにより、リザーバ20内に閉空間が形成されている。なお、このリザーバ20は1枚のシートで形成されているが、前後2枚のシートで形成され、リザーバ20の4辺全てがシールされていてもよい。
【0050】
筐体80は、4辺のうち底部を除く上部および2つの側部の3辺がシールされている。また、筐体80は、3辺の他にシールされた部分として、遮蔽部81、第1底シール部82、第2底シール部83、および孔周辺シール部84を有する。
【0051】
遮蔽部81は、上下に延び、筐体80内の下部の空間を、水平方向に2つの領域に分ける。これにより、筐体80内の空間は、遮蔽部81の水平方向一方側の空間である流入流路71と、遮蔽部81の水平方向他方側の空間である流出用液体貯留部72と、遮蔽部81よりも上側の空間である中間貯留部73とに分けられる。
【0052】
本実施形態では、遮蔽部81によって筐体80内の空間を分けることにより、筐体80の外形を変えること無く、流入流路71を形成できる。特に、筐体80がソフトバッグである場合には、ヒートシールによって遮蔽部81を形成できるため、製造しやすい。
【0053】
遮蔽部81は、筐体80の底部から上方へ向かうにつれて水平方向一方側へと向かう。また、第1底シール部82は、筐体80の水平方向一方側の底部の角に配置された三角形状のシール部である。第1底シール部82の三角形状の外縁は、底部に沿う辺と、側部のシール部に沿う辺と、筐体80の底部から上方へ向かうにつれて水平方向一方側へと向かう斜辺とを有する。これにより、遮蔽部81と第1底シール部82との間において、流入流路71が、筐体80の底部から上方へ向かうにつれて水平方向一方側へと向かう。
【0054】
第2底シール部83は、筐体80の水平方向他方側の底部の角に配置された三角形状のシール部である。第2底シール部83の三角形状の外縁は、底部に沿う辺と、側部のシール部に沿う辺と、筐体80の底部から上方へ向かうにつれて水平方向他方側へと向かう斜辺とを有する。これにより、遮蔽部81と第2底シール部83との間において、流出用液体貯留部72は、上方から下方の底部へ向かうにつれて幅が窄まる漏斗状となっている。
【0055】
筐体80は、上部に、前後方向に貫通する吊り下げ孔24を有する。吊り下げ孔24は、リザーバ20をフックなどに吊り下げるための貫通孔である。孔周辺シール部84は、吊り下げ孔24の周囲を囲むように配置される。
【0056】
筐体80の下端部には、第1送液ポート21と、第2送液ポート22と、回収ポート23とが取り付けられている。第1送液ポート21、第2送液ポート22および回収ポート23はそれぞれ内部に流路を有し、当該流路の上端が筐体80の内部空間と連通する。これにより、第1送液ポート21に第1供給配管31の上流側の端部が接続されると、筐体80の内部空間と、第1供給配管31内の流路とが連通する。第2送液ポート22に第2供給配管41の上流側の端部が接続されると、筐体80の内部空間と、第2供給配管41内の流路とが連通する。また、回収ポート23に回収配管51の下流側の端部が接続されると、筐体80の内部空間と、回収配管51内の流路とが連通する。
【0057】
第1送液ポート21および第2送液ポート22はそれぞれ、遮蔽部81と第2底シール部83との間において、筐体80の下端部に取り付けられる。このため、第1送液ポート21および第2送液ポート22は、流出用液体貯留部72と連通する。
【0058】
回収ポート23は、遮蔽部81と第1底シール部82との間において、筐体80の下端部に取り付けられる。このため、回収ポート23は、流入流路71の下端と連通する。すなわち、流入流路71は、下端(一端)が回収ポート23と連通し、上端(他端)が中間貯留部73を介して間接的に流出用液体貯留部72と連通する。
【0059】
リザーバ20は、筐体80のうち、流入流路71に2つのセンサ取り付けポート25を有する。センサ取り付けポート25は、リザーバ20の外部から流入流路71内にセンサ等を挿入して取り付け可能な開口である。センサ取り付けポート25は、センサ等を挿入しない場合には密閉状態とできる。2つのセンサ取り付けポート25にはそれぞれ、計測部60のpHセンサ61と、溶存酸素濃度計測センサ62とを挿入する。
【0060】
図3は、リザーバ20における灌流液の流れを示した図である。
図3中には、灌流液の流れの例が、破線で示されている。灌流装置1による灌流処理の実行時には、リザーバ20内には、灌流液回収部50から回収ポート23を介して灌流液が筐体80内に流入するとともに、第1送液ポート21および第2送液ポート22を介して、第1灌流液供給部30および第2灌流液供給部40へと灌流液が流出する。
【0061】
図3に示すように、回収ポート23から筐体80内に流入した灌流液は、流入流路71の下端から上方へ向かい、遮蔽部81に沿って上方かつ水平方向一方側へと向かう。そして、当該灌流液は、流入流路71の上端からさらに上方へ向かい、中間貯留部73へと流入する。
【0062】
その後、中間貯留部73へと流入した灌流液は、中間貯留部73内で、中間貯留部73内にもともと貯留されていた灌流液と混合される。
【0063】
一方、第1送液ポート21および第2送液ポート22から流出用液体貯留部72内の灌流液が流出することにより、中間貯留部73から流出用液体貯留部72へと向かう灌流液の流れが生じる。
【0064】
このように、筐体80内の空間を、回収ポート23と連通する流入流路71と、送液ポート21,22と連通する流出用液体貯留部72とに分けることにより、流入流路71内を、回収ポート23から流入した灌流液のみで満たすことができる。このような流入流路71にセンサ61,62を取り付けることにより、リザーバ20内の灌流液と灌流液回収部50から流入した灌流液とが混合する前に、灌流液回収部50において成分が調整された灌流液に対する成分計測を行うことができる。
【0065】
流入流路を有さない従来のリザーバを用いる場合、灌流液回収部50において成分が調整された灌流液に対する成分計測を行うためには、回収配管51内にセンサを配置する必要があった。しかしながら、配管径が略一定の回収配管51内にセンサを配置すると、圧力損失やせん断応力が増加するという問題が生じる。特に、灌流液が赤血球や人口赤血球を含む場合には、溶血を引き起こす可能性もある。これに対し、このリザーバ20では、回収配管51よりも流路面積の大きな流入流路71内にセンサを配置することができるため、圧力損失や溶血といった問題が生じにくい。
【0066】
また、筐体80内に流入流路71を形成することにより、単に1つの空間内に灌流液を流入させる場合と比べて、筐体80内における灌流液の流れをコントロールできる。これにより、筐体80内において適切に灌流液が混合するように設計することができる。
【0067】
本実施形態のリザーバ20では、遮蔽部81の一部が、回収ポート23の上方の延長線上に配置される。これにより、回収ポート23から筐体80内に流入する灌流液の流量が大きい場合に、回収ポート23から流入した灌流液がそのまま液面よりも上方まで吹き上がるのが抑制される。
【0068】
灌流液が液面を超えて吹き上がると、灌流液が泡立ち、灌流液内に気泡が生じてしまう。また、灌流液が赤血球や人工赤血球を含む場合には、溶血する虞もある。本実施形態では、回収ポート23から流入した灌流液の流れが遮蔽部81に当たって吹き上げが抑制されるため、灌流液の泡立ちや溶血が抑制される。
【0069】
<2.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0070】
図4は、第1変形例に係るリザーバ20Aの平面図である。このリザーバ20Aは、筐体80A内の空間が、流入流路71Aと、流出用液体貯留部72Aとに分かれている。流入流路71Aは、流出用液体貯留部72Aの水平方向一方側の端部において、流出用液体貯留部72Aの下方へ延びる空間である。回収ポート23Aは、流入流路71Aの下端部に取り付けられる。すなわち、流入流路71Aの下端(一端)が回収ポート23Aと連通し、流入流路71Aの上端(他端)が流出用液体貯留部72Aと直接連通する。
【0071】
図4の例のリザーバ20Aのように、流入流路71Aと流出用液体貯留部72Aとを直接連通してもよい。このような構成であっても、流入流路71A内を、回収ポート23Aから流入した灌流液のみで満たすことができる。また、このリザーバ20Aでは、回収ポート23Aを送液ポート21A,22Aよりも下方に配置することにより、回収ポート23Aから灌流液の液面までの距離が、送液ポート21A,22Aから灌流液の液面までの距離よりも大きくなる。これにより、回収ポート23Aから流入した灌流液の吹き上げを抑制することができる。
【0072】
図5は、第2変形例に係るリザーバ20Bの平面図である。このリザーバ20Bは、遮蔽部81Bの形状を除いて、上記の実施形態のリザーバ20と同様である。
図5の例の遮蔽部81Bは、2箇所に、流入流路71Bと流出用液体貯留部72Bとを水平方向に連通する通液孔810Bを有する。
【0073】
通液孔を有していない上記の実施形態のリザーバ20では、回収ポート23からの灌流液の流入量が大きいと、流入流路71側(水平方向一方側)に荷重が偏り、リザーバ20が傾く場合がある。
図5の例のリザーバ20Bでは、回収ポート23Bからの灌流液が流入し、送液ポート21B,22Bから灌流液が流出すると、流入流路71B内の圧力が流出用液体貯留部72B内の圧力よりも大きくなる。回収ポート23からの灌流液の流入量が大きくなり、この圧力差が大きくなると、通液孔810Bを介して流入流路71Bから流出用液体貯留部72Bへと灌流液が流れるため、筐体80内の左右の液面高さが平坦化して、リザーバ20Bが傾きにくくなる。
【0074】
また、上記の実施形態および変形例では、リザーバが2つの供給ポートを有したが、本発明はこれに限られない。リザーバの有する供給ポートは1つであってもよい。
【0075】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 灌流装置
20,20A,20B リザーバ(液体貯留容器)
21,22,21A,22A,21B,22B 送液ポート
23,23A,23B 回収ポート
24 吊り下げ孔
25 センサ取り付けポート
61,62 センサ
71,71A,71B 流入流路
72,72A,72B 流出用液体貯留部
73 中間貯留部
80,80A 筐体
81,81B 遮蔽部
810B 通液孔