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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075860
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/04 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
B60C15/04 E
B60C15/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187065
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢悟
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA39
3D131BC31
3D131DA01
3D131HA11
3D131HA14
3D131HA15
3D131HA28
3D131KA06
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】コアのワイヤー48がカーカスのコードと接触しにくい空気入りタイヤの提供。
【解決手段】タイヤは、巻回したワイヤー48を含むビードコアを有する。このワイヤー48は、ティップ部50と主部52とを有している。ティップ部50は、第一エンド56を含んでいる。ティップ部50は、円錐台形状を有している。ティップ部50は、境界54から第一エンド56に向かって徐々に細くなっている。主部52の太さは、一定である。ティップ部50は、概して、主部52よりも細い。第一エンド56は、ワイヤー48の巻回の開始点に位置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回したワイヤーを含むビードコアを有しており、
上記ワイヤーが、主部と、この主部よりも細いティップ部とを有しており、
上記ティップ部が、上記ワイヤーの巻回の開始点に位置する空気入りタイヤ。
【請求項2】
上記ティップ部が、上記主部との境界からそのエンドに向かって徐々に細くなる形状を有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
上記エンドの直径の、上記主部の直径に対する比が、0.5以下である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
上記ティップ部が円錐又は円錐台の形状を有する、請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
上記ティップ部の長さが1.0mm以上である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
上記主部の直径が0.5mm以上2.5mm以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、空気入りタイヤを開示する。詳細には、本明細書は、空気入りタイヤの、改良されたビードを開示する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、一対のビードと、これらのビードの間に架け渡されたカーカスとを有している。それぞれのビードは、コアを有している。このコアは、リング状である。このコアは、巻回したワイヤーを含んでいる。コアを有する重荷重用タイヤが、特開2021-41831公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-41831公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行中のタイヤには、大きな荷重がかかる。コアには、カーカスに近づく方向の荷重が、繰り返しかかる。この荷重によってコアのワイヤーがカーカスの方向へ移動し、カーカスコードと接触することがある。この接触により、ワイヤーとカーカスコードとが擦れ合い、カーカスコードが破断することもある。この破断は、CBU(Cord Broken Up)と称されている。CBUは、タイヤの耐久性を阻害する。
【0005】
本出願人の意図するところは、コアのワイヤーがカーカスコードと接触しにくい空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する空気入りタイヤは、巻回したワイヤーを含むビードコアを有する。このワイヤーは、主部と、この主部よりも細いティップ部とを有する。このティップ部は、ワイヤーの巻回の開始点に位置する。
【発明の効果】
【0007】
この空気入りタイヤでは、コアのワイヤーとカーカスコードとの接触が抑制されうる。このタイヤでは、CBUが生じにくい。このタイヤは、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図2図2は、図1のタイヤのコアのためのワイヤーが示された斜視図である。
図3図3は、図1のタイヤのコア及びカバーが示された拡大断面図である。
図4図4は、図3のコアの製造工程が正面図である。
図5図5は、図4の製造工程が示された左側面図である。
図6図6は、図3のコアの製造工程が正面図である。
図7図7は、図6の製造工程が示された左側面図である。
図8図8は、図3のコアの製造工程が正面図である。
図9図9は、図3のコアの製造工程が正面図である。
図10図10は、図9の製造工程が示された左側面図である。
図11図11は、図3のコアの製造工程が正面図である。
図12図12は、図11の製造工程が示された左側面図である。
図13図13は、図3のコアの製造工程が正面図である。
図14図14は、図13の製造工程が示された左側面図である。
図15図15は、図14のXV-XV線に沿った断面の一部が示された拡大図である。
図16図16は、図2のワイヤーの一部が示された拡大図である。
図17図17は、他の実施形態に係る空気入りタイヤのワイヤーの一部が示された斜視図である。
図18図18は、図17のワイヤーの一部が示された拡大図である。
図19図19は、さらに他の実施形態に係る空気入りタイヤのワイヤーの一部が示された斜視図である。
図20図20は、図19のワイヤーの一部が示された拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0010】
図1に、空気入りタイヤ2の断面の一部が示されている。この断面は、このタイヤ2の回転軸を含む平面に沿っている。図1において、矢印Raはこのタイヤ2の半径方向を表し、矢印Axはこのタイヤ2の軸方向を表す。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面CLを表わす。トレッドパターンを除けば、このタイヤ2の形状は、赤道面CLに対して鏡面対称である。この一点鎖線CLは、軸方向における、このタイヤ2の中心線でもある。
【0011】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、クリンチ8、一対のビード10、カーカス12、一対の補強層14、一対のストリップ16、ベルト18、インスレーション20及びインナーライナー22を有している。タイヤ2は、他の種々の部材を有しうる。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、大きな荷重に耐えうる。このタイヤ2は、典型的には、トラック又はバスに装着される。
【0012】
トレッド4は、路面と接地するトレッド面24を有している。トレッド4には、溝26が刻まれている。この溝26により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、ベース層28とキャップ層30とを有している。キャップ層30は、ベース層28の半径方向外側に位置している。キャップ層30は、ベース層28に積層されている。ベース層28は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。キャップ層30は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0013】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の一部は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス12の損傷を防止する。
【0014】
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ8は、軸方向において、ビード10及びカーカス12よりも外側に位置している。クリンチ8は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。タイヤ2がリムに装着されたとき、クリンチ8は、リムのフランジと当接する。
【0015】
それぞれのビード10は、サイドウォール6又はクリンチ8よりも軸方向内側に位置している。このビード10は、コア32、カバー34(図3参照)、第一エイペックス36及び第二エイペックス38を有している。コア32はリング状であり、巻回した非伸縮性のワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。カバー34は、後に詳説される。第一エイペックス36は、半径方向において、コア32よりも外側に位置している。第一エイペックス36は、半径方向外向きに先細りである。第一エイペックス36の材質は、高硬度な架橋ゴムである。第二エイペックス38は、半径方向において、第一エイペックス36よりも外側に位置している。第二エイペックス38は、半径方向外向きに先細りである。第二エイペックス38の材質は、高硬度な架橋ゴムである。第二エイペックス38の硬度は、第一エイペックス36の硬度よりも小さくてよい。
【0016】
カーカス12は、両側のビード10の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。カーカス12は、コア32を巻いている。図示されないが、カーカス12は、並列された多数のコードとトッピングゴムとを有している。それぞれのコードが赤道面CLに対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス12はラジアル構造を有する。コードの材質は、スチールである。コードが、有機繊維からなってもよい。カーカス12が、バイアス構造を有してもよい。
【0017】
それぞれの補強層14は、ビード10の近傍において、カーカス12に沿っている。図示されないが、補強層14は、並列された多数のコードとトッピングゴムとを有している。典型的なコードの材質は、スチールである。
【0018】
それぞれのストリップ16は、軸方向において、ビード10よりも外側に位置している。このストリップ16の材質は、高硬度な架橋ゴムである。
【0019】
ベルト18は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト18は、カーカス12と積層されている。ベルト18は、カーカス12を補強する。ベルト18は、第一プライ40、第二プライ42、第三プライ44及び第四プライ46を有している。このベルト18におけるプライの数は、4である。プライの数は3以下でもよく、5以上でもよい。
【0020】
図示されないが、ベルト18のそれぞれのプライは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面CLに対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。第二プライ42のコードの赤道面CLに対する傾斜方向は、第一プライ40のコードの赤道面CLに対する傾斜方向と同じである。第三ライのコードの赤道面CLに対する傾斜方向は、第二プライ42のコードの赤道面CLに対する傾斜方向とは逆である。第四プライ46のコードの赤道面CLに対する傾斜方向は、第三プライ44のコードの赤道面CLに対する傾斜方向と同じである。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。
【0021】
インナーライナー22は、インスレーション20を介してカーカス12に接合されている。インナーライナー22は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー22の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー22は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0022】
図2に、コア32の製作のためのワイヤー48が示されている。このワイヤー48は、ティップ部50と主部52とを有している。図2において符号54は、ティップ部50と主部52との境界を表す。ティップ部50は、第一エンド56を含んでいる。主部52は、第二エンド58を含んでいる。
【0023】
ワイヤー48の長さ方向に対して垂直な断面におけるティップ部50の形状は、円である。ワイヤー48の長さ方向に対して垂直な断面における主部52の形状も、円である。このティップ部50は、円錐台形状を有している。ティップ部50の太さは、境界54において、主部52の太さと同じである。ティップ部50は、境界54から第一エンド56に向かって徐々に細くなっている。主部52の太さは、一定である。ティップ部50は、概して、主部52よりも細い。
【0024】
ティップ部50が、円錐形状を有してもよい。円錐形状のティップ部50では、第一エンド56の太さは、実質的にゼロである。ティップ部50が、非円形である断面形状を有してもよい。
【0025】
図3に、コア32及びカバー34が示されている。コア32の断面形状は、概して六角形である。コア32が、他の断面形状を有してもよい。カバー34は、コア32を取り囲んでいる。
【0026】
前述の通りコア32は、巻回するワイヤー48を含んでいる。巻回により、1本のワイヤー48から、複数のラップが形成されている。本実施形態では、コア32は、第一ラップL1から第二十四ラップL24までの、24のラップを有している。巻回の進行により、第一ラップL1から第二十四ラップL24までが、順次形成される。コア32はさらに、マトリックスゴム60を含んでいる。それぞれのラップは、マトリックスゴム60に囲まれている。ラップと他のラップとの間には、マトリックスゴム60が介在している。ラップが、部分的に、マトリックスゴム60を介さずに他のラップと直接に接触してもよい。
【0027】
カバー34は、並列された多数のコード62と、トッピングゴム64とを有している。それぞれのコード62の材質は、有機繊維である。このカバー34は、コア32の形状を保持しうる。
【0028】
図4及び5に、巻回の開始直後のワイヤー48が示されている。図4は正面図であり、図5は左側面図である。ワイヤー48は、巻回に先立ち、その表面をカバリングゴムで被覆される。巻回により、このカバリングゴムは、前述のマトリックスゴム60になる。図4-14では、カバリングゴムの図示が省略されている。
【0029】
図4及び5において、二点鎖線Coはコア32の予定された輪郭を表し、符号Psは巻回の開始点を表す。開始点Psには、ティップ部50が位置している。より詳細には、開始点Psには、第一エンド56が位置している。ワイヤー48は、図4及び5において矢印A1で示された方向に、巻かれていく。図4及び5には、第一ラップL1が示されている。
【0030】
巻回の進行により、第二ラップL2が形成される。この第二ラップL2が、図6及び7に示されている。さらに巻回が進行し、図8に示されるように、第三ラップL3及び第四ラップL4が形成される。
【0031】
さらに巻回が進行し、第五ラップL5が形成される。図9及び10に示されるように、第五ラップL5は、第四ラップL4の上に形成される。第五ラップL5のカバリングゴムは、第四ラップL4のカバリングゴムと当接する。
【0032】
さらに巻回が進行し、図11及び12に示されるように、第六ラップL6から第九ラップL9が、順次形成される。第六ラップL6は、第三ラップL3及び第四ラップL4の上に位置している。第七ラップL7は、第二ラップL2及び第三ラップL3の上に位置している。第八ラップL8は、第一ラップL1及び第二ラップL2の上に位置している。第九ラップL9は、第一ラップL1の上に位置している。
【0033】
第八ラップL8又は第九ラップL9が巻かれるとき、ワイヤー48が第一ラップL1を押す。第八ラップL8及び第九ラップL9からの力の向きは、図12における左向きである。図12における、第一エンド56の上方は、空間である。第一エンド56は、ワイヤー48の中で、特異な箇所である。従来のワイヤーでは、第八ラップL8又は第九ラップL9に押されることで、第一エンドの近傍が、図12における左向きに移動することがある。本実施形態では、ティップ部50が細いので、このティップ部50に第八ラップL8又は第九ラップL9からかかる力は、小さい。従って、第一エンド56はほとんど移動しないか、移動する場合でもその距離はわずかである。図12では、第一エンド56の近傍(つまりティップ部50)がわずかに左に移動した状態が、示されている。
【0034】
さらに巻回が進行し、第十ラップL10から第二十四ラップL24(図3参照)が、順次形成される。この巻回により、コア32が完成する。巻回が完了した後のコア32の一部が、図13及び14に示されている。
【0035】
図15に、図14のXV-XV線に沿った断面の一部が、拡大されて示されている。図15にはさらに、カーカスコード66が示されている。前述の通り、カーカス12がコア32を巻いているので、カーカスコード66はコア32に近い。図15において符号68で示された仮想線は、従来のワイヤーの第一ラップL1の位置である。
【0036】
前述の通り、第八ラップL8又は第九ラップL9の押圧に起因するティップ部50の移動距離は、小さい。従って、ティップ部50はコア32の輪郭Coから離れている。図15において矢印Laは、ティップ部50とカーカスコード66との距離である。従来のワイヤー68のカーカスコード66までの距離Lbに比べ、距離Laは大きい。換言すれば、このタイヤ2では、第一エンド56の近傍が、カーカスコード66から十分に離れている。
【0037】
このコア32が他の部材とアッセンブリーされて、ローカバー(未加硫タイヤ)が得られる。このローカバーが、モールドに投入される。ローカバーの外面は、モールドのキャビティ面と当接する。ローカバーの内面は、ブラダー又は中子に当接する。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ2が得られる。このタイヤ2が、車両に装着される。
【0038】
車両の走行中、タイヤ2には大きな荷重がかかる。コア32には、カーカス12に近づく方向の荷重が、繰り返しかかる。ティップ部50は細いので、タイヤ2に荷重がかかっても、第一エンド56に応力が集中しにくい。従って、第一エンド56の近傍がカーカス12の方向へ移動することが、抑制される。第一エンド56の近傍がカーカス12の方向へ移動しても、第一エンド56の近傍は、カーカスコード66から十分に離れている。従って、この第一エンド56の、カーカスコード66との接触及び擦れは、生じにくい。このタイヤ2では、この擦れに起因するカーカスコード66が破断(CBU)が抑制される。このタイヤ2は、耐久性に優れる。
【0039】
図16に、ワイヤー48の一部が拡大されて示されている。図16において、矢印Deは第一エンド56の直径を表し、矢印Dmは主部52の直径を表す。直径Deの直径Dmに対する比(De/Dm)は、0.5以下が好ましい。比(De/Dm)が0.5以下であるタイヤ2では、CBUが生じにくい。この観点から、比(De/Dm)は0.3以下がより好ましく、0.2以下が特に好ましい。比(De/Dm)がゼロであってもよい。主部52の直径Dmは、0.5mm以上2.5mm以下が好ましい。
【0040】
図16において矢印Ltは、ティップ部50の長さを表す。長さLtが1.0mm以上であるタイヤ2では、CBUが生じにくい。この観点から、長さLtは1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上が特に好ましい。長さLtは、30.0mm以下が好ましい。
【0041】
タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITSAT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0042】
図17及び18に、他の実施形態に係る空気入りタイヤのワイヤー70が示されている。このワイヤー70がカバリングゴムと共に巻回して、コアが得られる。このタイヤの、コア以外の構造は、図1に示されたタイヤ2の構造と、同じである。
【0043】
このワイヤー70は、ティップ部72と主部74とを有している。図17において符号76は、ティップ部72と主部74との境界を表す。ティップ部72は、第一エンド78を含んでいる。図示されないが、主部74は第二エンドを含んでいる。
【0044】
ティップ部72は、円錐台部80とストレート部82とを有している。円錐台部80は、境界76からストレート部82に向かって徐々に細くなっている。ストレート部82の太さは、一定である。このティップ部72は、概して、主部74よりも細い。このティップ部72は、第一エンド78の移動を抑制する。このティップ部72はさらに、第一エンド78への応力集中を抑制する。このタイヤでは、CBUが抑制されうる。
【0045】
図18において、矢印Deは第一エンド78の直径を表し、矢印Dmは主部74の直径を表す。直径Deの直径Dmに対する比(De/Dm)は、0.5以下が好ましい。比(De/Dm)が0.5以下であるタイヤでは、CBUが生じにくい。この観点から、比(De/Dm)は0.3以下がより好ましく、0.2以下が特に好ましい。比(De/Dm)がゼロであってもよい。主部74の直径Dmは、0.5mm以上2.5mm以下が好ましい。
【0046】
図18において矢印Ltは、ティップ部72の長さを表す。長さLtが1.0mm以上であるタイヤでは、CBUが生じにくい。この観点から、長さLtは1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上が特に好ましい。長さLtは、30.0mm以下が好ましい。
【0047】
図19及び20に、さらに他の実施形態に係る空気入りタイヤのワイヤー84が示されている。このワイヤー84がカバリングゴムと共に巻回して、コアが得られる。このタイヤの、コア以外の構造は、図1に示されたタイヤ2の構造と、同じである。
【0048】
このワイヤー84は、ティップ部86と主部88とを有している。図19において符号90は、ティップ部86と主部88との境界を表す。ティップ部86は、第一エンド92を含んでいる。図示されないが、主部88は第二エンドを含んでいる。
【0049】
ティップ部86は、第一ストレート部94と第二ストレート部96とを有している。第一ストレート部94は、主部88よりも細い。第一ストレート部94の太さは、一定である。第二ストレート部96は、第一ストレート部94よりも細い。第二ストレート部96の太さは、一定である。このティップ部86は、概して、主部88よりも細い。このティップ部86は、第一エンド92の移動を抑制する。このティップ部86は、第一エンド92への応力集中を抑制する。このタイヤでは、CBUが抑制されうる。
【0050】
図20において、矢印Deは第一エンド92の直径を表し、矢印Dmは主部88の直径を表す。直径Deの直径Dmに対する比(De/Dm)は、0.5以下が好ましい。比(De/Dm)が0.5以下であるタイヤでは、CBUが生じにくい。この観点から、比(De/Dm)は0.3以下がより好ましく、0.2以下が特に好ましい。比(De/Dm)がゼロであってもよい。主部88の直径Dmは、0.5mm以上2.5mm以下が好ましい。
【0051】
図20において矢印Ltは、ティップ部86の長さを表す。長さLtが1.0mm以上であるタイヤでは、CBUが生じにくい。この観点から、長さLtは1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上が特に好ましい。長さLtは、30.0mm以下が好ましい。
【0052】
前述の通り、ティップ部86は、第一ストレート部94と第二ストレート部96とを有している。本実施形態では、ストレート部の数は2である。ストレート部の数は1でもよく、3以上でもよい。
【0053】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態を開示する。
【0054】
[項目1]
巻回したワイヤーを含むビードコアを有しており、
上記ワイヤーが、主部と、この主部よりも細いティップ部とを有しており、
上記ティップ部が、上記ワイヤーの巻回の開始点に位置する空気入りタイヤ。
【0055】
[項目2]
上記ティップ部が、上記主部との境界からそのエンドに向かって徐々に細くなる形状を有する、項目1に記載の空気入りタイヤ。
【0056】
[項目3]
上記エンドの直径の、上記主部の直径に対する比が、0.5以下である、項目2に記載の空気入りタイヤ。
【0057】
[項目4]
上記ティップ部が円錐又は円錐台の形状を有する、項目2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【0058】
[項目5]
上記ティップ部の長さが1.0mm以上である、項目1から4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0059】
[項目6]
上記主部の直径が0.5mm以上2.5mm以下である、項目1から5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明された空気入りタイヤは、種々の車両に装着されうる。
【符号の説明】
【0061】
2・・・空気入りタイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・クリンチ
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・補強層
16・・・ストリップ
18・・・ベルト
20・・・インスレーション
22・・・インナーライナー
32・・・コア
34・・・カバー
36・・・第一エイペックス
38・・・第二エイペックス
48・・・ワイヤー
50・・・ティップ部
52・・・主部
54・・・境界
56・・・第一エンド
58・・・第二エンド
60・・・マトリックスゴム
66・・・カーカスコード
70・・・ワイヤー
72・・・ティップ部
74・・・主部
76・・・境界
78・・・第一エンド
80・・・円錐台部
82・・・ストレート部
84・・・ワイヤー
86・・・ティップ部
88・・・主部
90・・・境界
92・・・第一エンド
94・・・第一ストレート部
96・・・第二ストレート部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20