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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075879
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】端子台
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/48 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
H01R4/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187105
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000103493
【氏名又は名称】オータックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230100022
【弁護士】
【氏名又は名称】山田 勝重
(74)【代理人】
【識別番号】100084319
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 智重
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 圭介
(72)【発明者】
【氏名】堀 良太
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な操作で、端子台に対する電線の脱着作業を正確かつ確実に行うことができる端子台を提供する。
【解決手段】付勢手段は、ターミナルの底面部に保持される基部と、基部から延び、弾性変形可能な付勢部と、を備え、付勢部がプッシャの後方端部に接触することで、弾性に基づく弾性力によりプッシャを付勢しており、後方端部が付勢部に接触した状態で、付勢手段の付勢力に抗してプッシャを後方へ移動させると、付勢部は後方へ弾性変形し、後方端部が所定移動範囲の最後方位置である所定位置よりも後方にあるとき、後方端部が支持孔部による案内から解放されるとともに、付勢部が後方へ弾性変形することで、後方端部は上側へ回動可能とされ、所定位置より後方にある後方端部を上側へ回動させ、後方端部が前方壁部の受け部に係止させたとき、付勢部の先端部とターミナルの上側接触部との間に、電線の挿入経路が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、ターミナルと、プッシャと、付勢手段と、を備え、前記本体内へ挿入された電線が前記ターミナルに接触することによって導通可能となる端子台であって、
前記本体は、非導電性材料で構成され、前方壁部を含む複数の壁部で囲まれた内部空間を有し、
前記前方壁部は、前記電線が挿入される挿入孔部と、前記プッシャが挿入される支持孔部と、を備え、
前記挿入孔部と前記支持孔部はそれぞれ、前後方向に沿って貫通され、前記内部空間に至るように形成され、
前記支持孔部は、前記支持孔部内に配置された前記プッシャを所定移動範囲において前後方向に沿って移動可能に案内し、
前記ターミナルは導電性材料で構成され、前記複数の壁部のそれぞれに沿って前記内部空間に配置され、
前記プッシャは非導電性材料で構成され、前記支持孔部内に配置されたときに前後方向に沿って延伸する形状を有するとともに、その後方端部が、前記延伸の方向に直交する面を有する後端面を備え、
前記付勢手段は、弾性を有する材料で形成されるとともに、前記ターミナルの底面部に保持される基部と、前記基部から延び、弾性変形可能な付勢部と、を備え、前記付勢部が前記後方端部に接触することで、前記弾性に基づく弾性力により前記プッシャを付勢しており、
前記後方端部が前記付勢部に接触した状態で、前記付勢手段の付勢力に抗して前記プッシャを後方へ移動させると、前記付勢部は後方へ弾性変形し、
前記後方端部が前記所定移動範囲の最後方位置である所定位置よりも後方にあるとき、前記後方端部が前記支持孔部による案内から解放されるとともに、前記付勢部が後方へ弾性変形することで、前記後方端部は上側へ回動可能とされ、
前記所定位置より後方にある前記後方端部を上側へ回動させ、前記後方端部が前記前方壁部の前記受け部に係止させたとき、前記付勢部の先端部と前記ターミナルの上側接触部との間に、前記電線の挿入経路が形成されるとともに、前記後方端部が前記付勢部によって前方上向きに付勢されることで、前記係止が維持され、
前記後方端部が前記所定移動範囲にあるとき、前記付勢部は、前記プッシャを前側へ付勢するとともに、前記挿入経路上に配置された前記電線を、前記付勢手段の付勢力によって、前記付勢部の先端と前記上側接触部とで挟持して保持することで、前記電線と前記ターミナルとの導通可能状態を実現することを特徴とする端子台。
【請求項2】
前記付勢手段は板ばねであって、前記基部は前記ターミナルの前記底面部の表面形状に対応した形状を有し、前記付勢部は、前記基部側から順に、第1湾曲部、第2湾曲部、接続部、第3湾曲部、及び、延伸部を備え、前記後方端部の前記後端面は前記接続部又は前記第3湾曲部に接触する請求項1に記載の端子台。
【請求項3】
前記後方端部が前記所定位置より後方に至ったとき、前記接続部の表面と前記後端面とが互いに面接触した状態になる請求項2に記載の端子台。
【請求項4】
前記接続部の表面と前記後端面とが互いに面接触した状態から、前記後方端部を前記板ばねに接触させつつ回動させたとき、前記板ばねの姿勢が維持される請求項3に記載の端子台。
【請求項5】
前記プッシャは、前方部に幅方向外側へ突出した規制段部を備える請求項2に記載の端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の機器、例えばコントローラの入力と出力を互いに電線で接続するために用いる端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の端子台構造は、導電板と端子押さえ板とを備え、導電板は、端子台本体のベース部に固定される。端子押さえ板には端子ネジが挿通され、この端子ネジを、電線の端末に設けられた圧着端子の孔に挿通して導電板のネジ孔に嵌め合わせることで、圧着端子が導電板に接触して配置される。端子押さえ板は、端子ネジを係止して抜けを防止する手段を有するとともに、ベース部の下面に係止されることでベース部からの抜けを防止する手段を有している。これにより、構成部品を低減して小型化を図るとともに、端子ネジが端子台のネジ孔から外れた場合でも落下することを防止して圧着端子の取付の作業性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-351701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の端子台構造では、電線を導電板に電気的に接続させるためには、電線の端末に設けた圧着端子を所定の位置に配置した状態を維持しつつ、端子ネジを圧着端子の孔に挿通し、ドライバを用いて端子台のネジ孔に嵌め合わせる操作が必要となる。電線を端子台から外す場合においても、ドライバを用いて端子台のネジ孔から端子ネジを取り外す操作を要する。よって、端子台に対する電線の脱着のいずれにおいても、作業者が両手を使った煩雑な作業を行わなければならなかった。
【0005】
そこで本発明は、簡単な操作で、端子台に対する電線の脱着作業を正確かつ確実に行うことができる端子台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の端子台は、本体と、ターミナルと、プッシャと、付勢手段と、を備え、本体内へ挿入された電線がターミナルに接触することによって導通可能となる端子台であって、本体は、非導電性材料で構成され、前方壁部を含む複数の壁部で囲まれた内部空間を有し、前方壁部は、電線が挿入される挿入孔部と、プッシャが挿入される支持孔部と、を備え、挿入孔部と支持孔部はそれぞれ、前後方向に沿って貫通され、内部空間に至るように形成され、支持孔部は、支持孔部内に配置されたプッシャを所定移動範囲において前後方向に沿って移動可能に案内し、ターミナルは導電性材料で構成され、上記複数の壁部のそれぞれに沿って内部空間に配置され、プッシャは非導電性材料で構成され、支持孔部内に配置されたときに前後方向に沿って延伸する形状を有するとともに、その後方端部が、延伸の方向に直交する面を有する後端面を備え、付勢手段は、弾性を有する材料で形成されるとともに、ターミナルの底面部に保持される基部と、基部から延び、弾性変形可能な付勢部と、を備え、付勢部が後方端部に接触することで、弾性に基づく弾性力によりプッシャを付勢しており、後方端部が付勢部に接触した状態で、付勢手段の付勢力に抗してプッシャを後方へ移動させると、付勢部は後方へ弾性変形し、後方端部が所定移動範囲の最後方位置である所定位置よりも後方にあるとき、後方端部が支持孔部による案内から解放されるとともに、付勢部が後方へ弾性変形することで、後方端部は上側へ回動可能とされ、上記所定位置より後方にある後方端部を上側へ回動させ、後方端部が前方壁部の受け部に係止させたとき、付勢部の先端部とターミナルの上側接触部との間に、電線の挿入経路が形成されるとともに、後方端部が付勢部によって前方上向きに付勢されることで、係止が維持され、後方端部が所定移動範囲にあるとき、付勢部は、プッシャを前側へ付勢するとともに、挿入経路上に配置された電線を、付勢手段の付勢力によって、付勢部の先端と上側接触部とで挟持して保持することで、電線とターミナルとの導通可能状態を実現することを特徴としている。
【0007】
本発明の端子台において、付勢手段は板ばねであって、基部はターミナルの底面部の表面形状に対応した形状を有し、付勢部は、基部側から順に、第1湾曲部、第2湾曲部、接続部、第3湾曲部、及び、延伸部を備え、後方端部の後端面は接続部又は第3湾曲部に接触することが好ましい。
【0008】
本発明の端子台において、後方端部が上記所定位置より後方に至ったとき、接続部の表面と後端面とが互いに面接触した状態になることが好ましい。
【0009】
本発明の端子台において、接続部の表面と後端面とが互いに面接触した上記状態から、後方端部を板ばねに接触させつつ回動させたとき、板ばねの姿勢が維持されることが好ましい。
【0010】
本発明の端子台において、プッシャは、前方部に幅方向外側へ突出した規制段部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、プッシャの回動によって本体への電線の挿入経路を維持した状態を実現できるため、簡単な操作で、端子台に対する電線の脱着作業を正確かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明の実施形態に係る端子台の構成を示す左側面図、(b)は図1(a)の1B-1B’線における断面の一部拡大図である。
図2】本発明の実施形態に係る端子台の組み立て前の状態を示す分解斜視図である。
図3】(a)は本発明の実施形態に係る端子台の正面図、(b)は、図1の3B-3B’線における断面図である。
図4】(a)は本発明の実施形態における本体を前方右側から見た斜視図、(b)は本体を後方左側から見た斜視図である。
図5】(a)は本発明の実施形態における本体の正面図、(b)は図1の5B-5B’線の位置における本体の断面図である。
図6】(a)、(b)は本発明の実施形態におけるターミナルの構成を示す、互いに異なる方向から見た斜視図である。
図7】(a)は本発明の実施形態におけるプッシャの上面図、(b)はプッシャの左側面図、(c)、(d)は本発明の実施形態における板ばねの構成を示す、互いに異なる方向から見た斜視図である。
図8】(a)、(b)、(c)は本発明の実施形態に係る端子台の動作を示す左側面図である。
図9】(a)は、図8(c)に示す第3状態において本体内に電線を挿入した状態を示す左側面図、(b)は、(a)の状態から、プッシャの後方端部と前方壁部の受け部との係止を解除して反転回動させた状態を示す左側面図である。
図10】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、本発明の実施形態に係る端子台の前方部分を示す斜視図であって、図8(a)、(b)、(c)、及び、図9(a)、(b)の状態にそれぞれ対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る端子台について図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1(a)は本実施形態に係る端子台10の構成を示す左側面図、図1(b)は図1(a)の1B-1B’線における断面の一部拡大図である。図2は端子台10の組み立て前の状態を示す分解斜視図である。図3(a)は端子台10の正面図、図3(b)は、図1の3B-3B’線における断面図、図4(a)は本体20を前方右側から見た斜視図、図4(b)は本体20を後方左側から見た斜視図、図5(a)は本体20の正面図、図5(b)は図1の5B-5B’線の位置における本体20の断面図である。図6(a)、(b)はターミナル30の構成を示す、互いに異なる方向から見た斜視図である。図7(a)はプッシャ40の上面図、(b)はプッシャ40の左側面図、(c)、(d)は板ばね50の構成を示す、互いに異なる方向から見た斜視図である。図8は、端子台10の動作を示す左側面図であって、図8(a)はプッシャ40が初期位置にある第1状態を示す図、図8(b)は図8(a)に対してプッシャ40を後側へ移動させて、プッシャ40が所定位置よりも後方に至った第2状態を示す図、図8(c)は図8(b)の状態からプッシャ40を回動させ、プッシャ40の後方端部46の前側の係止端面46bを前方壁部21の受け部214に係止させた第3状態を示す図である。図9(a)は、図8(c)に示す第3状態において本体20内に電線60を挿入した状態を示す左側面図、図9(b)は、図9(a)の状態から、プッシャ40の後方端部46と前方壁部21の受け部214との係止を解除して反転回動させた第4状態を示す左側面図である。図10(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、端子台10の前方部分を示す斜視図であって、図8(a)、(b)、(c)、及び、図9(a)、(b)にそれぞれ対応する状態を示す図である。
【0014】
各図には、基準座標としてX-Y-Z座標が示されている。以下の説明において、Z1-Z2方向を上下方向、X1-X2方向を前後方向、Y1-Y2方向を左右方向と称する。X1-X2方向とY1-Y2方向は互いに垂直であり、これらを含むX-Y平面はZ1-Z2方向に垂直である。これらの方向は説明の便宜上特定したものであって、端子台10の姿勢はこれに限定されない。
【0015】
図1(a)と図2に示すように、端子台10は、本体20と、ターミナル30と、プッシャ40と、付勢手段としての板ばね50と、を備える。ターミナル30、プッシャ40、及び、板ばね50は、本体20の内部空間20aに配置される。ターミナル30の一対の端子部36、37は本体20の後方壁部22から外部へ延出し、プッシャ40の前方端部45は本体20の前方壁部21から外部へ延出している。
【0016】
端子台10においては、図9(a)、(b)に示すように、本体20に対し、前後方向(X1-X2方向)に沿って延びるように、内部空間20a内へ電線60が挿入され、ターミナル30の上側接触部31と板ばね50とによって上下から挟持された、電線60の芯線61がターミナル30に接触することによって互いに導通した状態となる。ここで、図9(a)、(b)に示す例では、電線60として、芯線61が被覆されてなる撚り線を示したが、電線60はこれに限定されず、単線、裸電線、棒端子等も用いることができる。
【0017】
<本体20>
本体20は、非導電性材料で構成され、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド(ナイロン)その他の高分子化合物の成形によって一体的に製造される。図2図4(a)、(b)、又は、図5(a)、(b)に示すように、本体20は、前側(X1側)を構成する前方壁部21、後側(X2側)を構成する後方壁部22、前方壁部21と後方壁部22にそれぞれ連なり右側(Y2側)を構成する側方壁部23、側方壁部23の上側(Z1側)に連なる上壁部24、及び、側方壁部23の下側(Z2側)に連なる底壁部25を備える。これらの壁部に囲まれて、左側(Y1側)が開放された内部空間20aが形成される。端子台10は、左右方向に複数が順に並ぶように配置され、左隣に位置する端子台10の側方壁部23によって、左側(Y2側)の開口部が覆われ、内部空間20aが閉じられる構成となる。
【0018】
なお、側方壁部の構成についてはこれに限定されず、例えば、側方壁部を左側に配置し、隣合う端子台の側方壁部によって右側の開口部を覆う構成や、左右両方に側方壁部を設ける構成も可能である。これにより内部空間20aが複数の壁部で囲まれて形成される。
【0019】
また、後方壁部22を設けない構成も可能である。この構成では、前方壁部21、側方壁部23、上壁部24、及び底壁部25という複数の壁部で囲まれた内部空間が形成される。また、右側の側方壁部23に加えて左側にも側方壁部を設け、左右の側方壁部、前方壁部21、上壁部24、及び底壁部25という複数の壁部で内部空間を形成する構成でもよい。これらの構成においては、後方壁部22がないことで、後方に開口部が形成され、この開口部から、ターミナル30と板ばね50を内部空間内へ導入することができるため、すでにプッシャ40が配置されている内部空間20aへの導入が容易になる。
【0020】
さらにまた、端子台10を左右方向に並べて配置する場合、各端子台10を個別に収容可能な複数のスペースを有する、絶縁性材料からなる収容ケースを用いることもできる。このような収容ケースを用いることで、複数の端子台の位置合わせを容易にして、全体を一体化することができる。
【0021】
<前方壁部21>
図4(a)、(b)に示すように、前方壁部21は、挿入孔部211と、挿入孔部211の下方に位置する支持孔部212と、支持孔部212の下方に位置するテスタ用孔部213を備え、これらの孔部211、212、213はそれぞれ前後方向に前方壁部21を貫通している。
【0022】
挿入孔部211は、電線60を外部から内部空間20aへ挿入するための孔であり、テスタ用孔部213は、外部から内部空間20a内へプローブ等の検査具を導入するための孔である。挿入孔部211は、中空筒状とされ、前方側は前後方向直交断面が円形であって、電線60の導入を容易にする直径を有し、後方側においては、電線60を安定して保持するために、上記円形よりも小さな矩形の断面形状とされている(図5(a)参照)。
【0023】
支持孔部212は、前方から挿入したプッシャ40を、下記所定移動範囲内で直進案内可能とするとともに、下記所定移動範囲の最後方位置である所定位置で回動可能に支持する。
【0024】
図4(a)、(b)又は図5(a)、(b)に示すように、支持孔部212は、左右方向(Y1-Y2方向)において互いに対向する位置に凹設された、一対の案内溝部212a、212bを備える。第1案内溝部212aと第2案内溝部212bは、それぞれ、前後方向(X1-X2方向)に沿って設けられ、前方壁部21を前後方向において貫通している。(図5(a)、(b)参照)。プッシャ40を支持孔部212に挿入するときには、プッシャ40の本体部41から左右方向にそれぞれ突出する、第1案内突起42と第2案内突起43が、第1案内溝部212aと第2案内溝部212b内に入った状態で進行するため、スムーズに挿入操作を行うことができる。
【0025】
図1(a)に示すように、支持孔部212の内側面のうち上面は第1案内面212cと、第1案内面212cの後側に連なる第2案内面212dとを備える。これらの案内面212c、212dは、それぞれ上下方向(Z1-Z2方向)に直交する面であり、第2案内面212dは、案内面212cの後側において上側へずれた段差状を形成している。第1案内面212cと第2案内面212dとの段差は、プッシャ40の本体部41の上面41aと後方端部46の上面46aとの段差に対応する。第2案内面212dは、後端面215に設けられた受け部214の底面も含む平面である。第2案内面212dの前後方向の長さは、プッシャ40の後方端部46よりも短い所定長さに設定されている。
【0026】
ここで、図4(b)に示すように、受け部214は、前方壁部21の後端面215上において支持孔部212の後方出口の上部に、内部空間20a側へ突出して設けられている。受け部214は左右方向に延びる長板状とされる。この受け部214は、プッシャ40が前記所定位置(角部214eに対応する位置)を過ぎて回動したときに、プッシャ40の後方端部46が係止する。受け部214は、前方壁部21に長板状の部材として固定して形成してもよいが、本体20の形成の際に一体的に製造することもできる。
【0027】
なお、受け部214は、後方端部46との係止が保持されやすくなる形状や材質で構成することができ、例えば、中央部を前側へ凹ませた形状とすることや、後方端部46が接触したときに前側へ凹むような弾性を有する材料を選択することができる。また、前方壁部21と同じ材料で形成し、後方端部46の係止が維持されやすいような凹部を備える構成でもよい。
【0028】
図1(a)に示すように、支持孔部212内に挿入されたプッシャ40は、本体部41と後方端部46とが、第1案内面212cと第2案内面212dとにそれぞれ接触することで、上下方向への変位を規制されつつ前後方向に案内される。そして、プッシャ40が後方へ移動し、後方端部46の全体が、第2案内面212dの最後方の角部214e、すなわち、受け部214の底面の最後方の角部、に対応する位置(所定位置)に至ると、図8(b)、(c)に示すように、後方端部46の上側を規制するものがなくなる。このため、後方端部46に当接する板ばね50の弾性力に基づく付勢力を受けつつ、一対の案内突起42、43と支持孔部212の内側面の下面212fとの接触部分を支点として、プッシャ40は上側へ回動可能となる。
【0029】
ここで、プッシャ40は、図8(a)に示すように、第2案内面212dの全面に後方端部46の上面46aが接触した位置から、後方へ移動して、後方端部46の上面46aが第2案内面212dの角部214eから離れる位置まで、支持孔部212によって前後方向に沿って移動案内され、この範囲を所定移動範囲とし、上面46aが角部214eから離れる、所定移動範囲の最後方の位置、すなわち角部214eに対応する位置、を所定位置としている。
【0030】
<後方壁部22>
図2図4(b)に示すように、後方壁部22は、その左端部において、右側(Y2側)へ凹設された一対の保持凹部221、222を備える。一対の保持凹部221、222は、ターミナル30の後端に設けた一対の端子部36、37に対応する位置に設けられている。本体20の内部空間20a内にターミナル30を配置したときに、一対の端子部36、37は、一対の保持凹部221、222内に配置されるとともに、後方外部へ延出し、外部の装置等に接続可能となる。
【0031】
<側方壁部23>
図1(a)と図2に示すように、側方壁部23は、内部空間20a内に配置したときのターミナル30の側面部32が接触配置される形状を備える。側方壁部23の前側の下部には内部空間20a内に突出する押さえ部23aが設けられている。押さえ部23aは、下向きに湾曲した形状を有し、板ばね50を内部空間20a内に配置したときに、基部51と第1湾曲部52で囲まれて近接する位置に配置される。図8(b)、(c)に示すように、プッシャ40が上記所定位置(角部214eに対応する位置)を越えて後方に位置するときに、第1湾曲部52の内面と接触することにより、プッシャ40に押された板ばね50が上方に変位するのを規制する。
【0032】
<上壁部24、底壁部25>
図1(a)に示すように、上壁部24、及び、底壁部25は、内部空間20a内に配置したときのターミナル30の上側接触部31及び底面部33がそれぞれ接触して配置される形状を備える。さらに、図1(a)と図2に示すように、上壁部24の上側の前方端部24aは、底壁部25側へ延びた形状を有する。この前方端部24aは、前方壁部21の後端面215に前面が当接するとともに、後面にはターミナル30の上側接触部31の前端面31aが当接し、内部空間20a内においてターミナル30の前側の位置を規定する。このように、上壁部24と底壁部25によって、内部空間20a内に配置されたターミナル30の上下方向の位置及び前側の位置が定められる。
【0033】
<ターミナル30>
ターミナル30は導電性材料で構成され、例えば、銅、アルミニウムその他の金属の成形、又は、上記金属製板材の折り曲げ加工によって製造され、各部が板状に形成される。
【0034】
図1(a)、図2、又は、図6(a)、(b)に示すように、ターミナル30は、内部空間20a内に配置したときに、本体20の上壁部24、側方壁部23、底壁部25、及び、後方壁部22にそれぞれ沿うように、上側接触部31、側面部32、底面部33、後面部34が形成されている。上側接触部31、底面部33、及び、後面部34は、側面部32の上端、下端、及び、後端から左側へそれぞれ屈曲させた形状を有する。
【0035】
上側接触部31は、ターミナル30が内部空間20a内に配置されたときに、前端面31aが上壁部24の上記前方端部24aに当接し、後端面31cが後方壁部22の前面223(図1(a)、図8(a)参照)に当接する。上側接触部31は、下側へ突出するように設けられた規制凸部31bを備える。規制凸部31bは、プッシャ40が初期位置(図8(a)に示す位置)にあるとき、板ばね50の延伸部55の先端部55aが後方側から当接可能な位置に設けられている(図8(a)参照)。
【0036】
図6(a)、(b)に示すように、側面部32は、規制片部35を備える。規制片部35は、内部空間20a内に、所定太さよりも太い電線60を挿入した場合において、板ばね50の延伸部55が下側へ湾曲することを規制する。規制片部35は、側面部32の略中央部分を切り欠いて内部空間20a側へ折り曲げて形成した舌片状部である。なお、図9(a)、(b)に示す電線60は、上記所定太さ以下の外径の電線である。
【0037】
底面部33の後部には、本体20の底壁部25の段部25aの形状に合わせて切り欠き部38が形成されている。この切り欠き部38を設けることにより、その端面、及び、底面部33が上記段部25aを含めた底壁部25の形状に沿うため、本体20に対するターミナル30の位置決めが確実となる。
【0038】
底面部33は、上側(Z1側)へ突出形成されたボス部33aを備える。ボス部33aは、板ばね50の基部51に設けた受容部51bに嵌入可能な形状、例えば、半球状、円柱状を有し、受容部51bに受容されることで、基部51の面内方向(X-Y面方向)の変位を規制する(図1(b)参照)。
【0039】
後面部34は、左側の端部から後側へ屈曲した形状を有する一対の端子部36、37を備える。これらの端子部36、37は、後方壁部22の一対の保持凹部221、222内にそれぞれ配置されるとともに、先端部が後方外側へそれぞれ延出する。
【0040】
ターミナル30は、上側接触部31が本体20の上壁部24に接触することで上方向において位置決めされ、上側接触部31の前端面31aが上壁部24の前方端部24aに当接することで前側が位置決めされる。さらに、後面部34、及び、上側接触部31の後端面31cが本体20の後方壁部22の前面223に当接することで後方向において位置決めされ、底面部33が底壁部25の段差形状に合わせた形状を有するため、下方向が位置決めされる。このような形状により、ターミナル30においては、図2に示すように左側から本体20の内部空間20a内へ挿入することで、容易かつ確実に所定の位置に配置することが可能となる。
【0041】
<プッシャ40>
プッシャ40は非導電性材料で構成され、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、POM(ポリアセタール)その他の高分子化合物の成形によって一体的に製造される。
【0042】
図7(a)、(b)に示すように、プッシャ40は、一定の幅を有して前後方向に延伸する本体部41と、本体部41の左右の両側面に外方へ突出するように設けられた、一対の案内突起42、43(第1案内突起42と第2案内突起43)と、本体部41の前部において左右方向に広がるとともに、下方にも突出する前方端部45と、本体部41の後部において上側へ突出するように形成された後方端部46と、を備える。
【0043】
前方端部45は、本体部41よりも左右方向、すなわち幅方向外側に広がる形状により、規制段部47、48が形成されている。後方端部46は、その前面として、本体20内で回動したときに前方壁部21の受け部214に当接して係止される係止端面46bを有する。
【0044】
本体部41及び後方端部46は、左右方向において一定の幅を有しており、この幅は、前方壁部21の支持孔部212の内面の幅に対応する。一対の案内突起42、43は、本体部41の左右の側面から左右方向の外側へそれぞれ突出しており、その突出形状は、支持孔部212の一対の案内溝部212a、212bの内面形状に対応しており、前側に行くほど下方に下がるようにそれぞれ延びている。前方端部45は、その左右方向における幅は、一対の案内突起42、43の幅と同一であるが、上下方向においては、規制段部47、48が一対の案内溝部212a、212bよりも長い範囲で形成されている。このため、プッシャ40を前側から支持孔部212へ挿入したときに、前方端部45を一対の案内溝部212a、212b内へ挿入させることができない(図10(c)、(d)参照)。
【0045】
プッシャ40をこのような形状としたことにより、図3(a)、(b)に示すように、前方壁部21を前後方向に沿って貫通するようにプッシャ40を支持孔部212内に配置したとき、一対の案内突起42、43は、一対の案内溝部212a、212b内において前後方向に移動可能に嵌合される。
【0046】
<板ばね50(付勢手段)>
付勢手段としての板ばね50は、所定の弾性力を有する板状材料で構成され、例えば、ステンレス鋼その他の合金、金属、樹脂で形成される。
図7(c)、(d)に示すように、板ばね50は、基部51と、基部51に連なる第1湾曲部52と、第1湾曲部52に連なる第2湾曲部53と、接続部56を介して第2湾曲部53に連なる第3湾曲部54と、第3湾曲部54から延びる延伸部55と、を備える。第1湾曲部52、第2湾曲部53、接続部56、第3湾曲部54、及び、延伸部55は、基部51がターミナル30に保持されているときに、板ばね50の弾性力に基づいて弾性変形可能な付勢部を構成する。
【0047】
ここで、第2湾曲部53、接続部56、及び、第3湾曲部54は、板ばね50を本体20の内部空間20a内に配置したときに、プッシャ40の後方端部46の後端面49に対応し、後方へ凹んだ凹部形状(前側が開いた凹部形状)を形成している(図1(a)、図8(a)参照)。この凹部は、プッシャ40を初期位置から後方へ移動させることにともなって、後方下側へ変位しつつ変形し、図8(b)に示すように、後方端部46が上記所定位置に至ったとき、及び、所定位置を超えたときに、プッシャ40の後端面49と接続部56が面接触するように弾性変形する。
【0048】
基部51は前後方向に沿って延び、第1湾曲部52は、基部51の前端部分を後方へ折り返すように湾曲させている。第2湾曲部53は、第1湾曲部52の後端部分を前方へ折り返すように湾曲させてなるものであり、接続部56は第2湾曲部53の前端部分から平坦に延びており、第3湾曲部54は、接続部56の先端部分から後方へ折り返すように湾曲している。延伸部55は、第3湾曲部54の後端部分から平坦に延びている。よって、板ばね50は、第1湾曲部52と第2湾曲部53は互いに逆方向に湾曲しており、第2湾曲部53と第3湾曲部54も互いに逆方向に湾曲した形状を有している。
【0049】
第1湾曲部52の湾曲形状は、板ばね50を内部空間20a内に配置したときに、側方壁部23の押さえ部23aの下面の湾曲形状に沿うような形状とされている。このため、図8(b)、(c)に示すように、プッシャ40によって板ばね50が後方に押された状態において、第1湾曲部52の内面が押さえ部23aの外面に接触することで、内部空間20a内で基部51が上側へ移動することが規制される。
【0050】
図7(c)、(d)に示すように、基部51には厚み方向に貫通する孔としての受容部51bが設けられている。この受容部51bは、後端面51aを底壁部25の段部25aに当接させるように基部51を配置し、基部51が底壁部25の表面形状(内面形状)に沿って配置されたときに、ボス部33aに対応する位置に形成され、ターミナル30に設けたボス部33aが嵌入可能な内径を有している。よって、ボス部33aを受容部51bに嵌入することによって、基部51がその面内方向(X-Y面方向)に変位することが規制される(図1(b)参照)。
【0051】
板ばね50が有する弾性力は、押さえ部23aとボス部33aによって基部51の変位が規制されているときに、基部51以外の付勢部が次のような変形を可能とする強さを有し、この弾性力によって付勢手段としての付勢力が生ずる。具体的には、まず、図8(a)と図10(a)に示すように、プッシャ40が初期位置にあり、接続部56と第3湾曲部54の境界近傍の表面にプッシャ40の後方端部46が部分的に接触し、第1湾曲部52の上部表面にプッシャ40の底面が接触している状態では、先端部55aがターミナル30の規制凸部31bに接触し、又は、規制凸部31bの近傍に位置する。
ここで、初期位置とは、第2案内面212dの全面に後方端部46の上面46aが接触した位置である。
【0052】
さらに、操作者がプッシャ40の前方端部45を操作することによりプッシャ40を後方向に直進移動させ、図8(b)と図10(b)に示すように、後方端部46の上面46aが、第2案内面212dから離れるとともに角部214eよりも後方に至った状態では、プッシャ40が上側へ、すなわち左側から見て時計回り方向に、回動可能な状態となる。この直進移動では、プッシャ40の底面が第1湾曲部52の上部表面に接触していることで、第1湾曲部52の弾性変形が抑制されるため、後方端部46の上角部のみが接続部56と第3湾曲部54の境界近傍に接触した状態からプッシャ40を移動することによって、第2湾曲部53、接続部56、第3湾曲部54、及び、延伸部55が後方下向きに湾曲変位し、最終的に、接続部56の表面がプッシャ40の後端面49に面接触する状態に至り、延伸部55は、その先端部55aが挿入経路L上から外れる位置で保持される。
【0053】
図8(b)と図10(b)に示す状態から、操作者がプッシャ40の前方端部45を下側へ変位させる操作を行うと、プッシャ40の後方端部46は、その後端面49を接続部56の表面上を摺動しつつ上側へ回動する。この回動では、一対の案内突起42、43のそれぞれの下側の表面と支持孔部212の内側面の下面212fとの接点を支点として、後方端部46が上側へ回動する。そして、後方端部46の係止端面46bが受け部214に係止すると、板ばね50の付勢力によってプッシャ40が前側へ付勢されるため、係止状態が維持される。このとき、図8(c)に示すように、後方端部46と接触する第3湾曲部54から後方端部46へ、前方上向きの付勢力が板ばね50によって与えられ、延伸部55は、その先端部55aが挿入経路L上から外れる位置で保持される。板ばね50が有する弾性力の強さは、以上の動きを実現するような大きさに設定されている。この弾性力は、板ばね50の材料や形状を変更することによって適宜設定することができる。
【0054】
板ばね50の形状としては、プッシャ40が初期位置(図8(a)、図10(a))にあるときには、先端部55aが挿入経路L上に位置し、プッシャ40を回動させて前方壁部21の受け部214と係止したときには、先端部55aが挿入経路Lよりも下側に位置し(図8(b))、さらに、電線60を内部空間20a内へ挿入した後は、先端部55aを当接させることによって電線60を上方へ付勢しターミナル30の上側接触部31に対する電気的な接触を確実にするように設計しており(図9(b))、これらの弾性変形を実現できれば本実施形態に例示した形状に限定されない。
【0055】
図8(a)に示すように、プッシャ40が初期位置にあるとき、延伸部55の先端部55aは、電線60の挿入経路L上に位置する。挿入経路Lは、本体20において、挿入孔部211を前後方向に仮想的に延伸した領域であり、挿入孔部211から電線60を導入すると、その電線60は挿入経路L上に配置される。
【0056】
<組み立て工程>
以上説明した各部材は、図2に示すように別個に製造される。
まず、プッシャ40を前方から前方壁部21の支持孔部212内へ導入する。プッシャ40は、その一対の案内突起42、43が前方壁部21の一対の案内溝部212a、212bにそれぞれ嵌合されることにより、上下方向及び左右方向において位置決めされる。また、前方端部45が本体部41に対して左右方向及び下方向に突出した形状を有するため、規制段部47と前方壁部21との接触により、プッシャ40の後方への移動、及び、プッシャ40を回動させたときの回動範囲が規制される。
【0057】
一方、板ばね50がターミナル30内に配置される。板ばね50は、受容部51bにボス部33aを嵌入することで、ターミナル30内で位置決めされ、互いに一体となる。一体とされたターミナル30と板ばね50は、すでにプッシャ40が配置された本体20の内部空間20a内に配置される。このとき、ターミナル30の上側接触部31、側面部32、底面部33、及び、後面部34が、本体20の上壁部24、側方壁部23、底壁部25、及び、後方壁部22にそれぞれ接触して位置決めされる。
【0058】
板ばね50は、プッシャ40の後方端部46に接触するように配置されるとともに、延伸部55の先端部55aがターミナル30の上側接触部31に係止され、又は、上側接触部31の後方近傍に配置される。
【0059】
<動作工程>
端子台10に対する電線60の導入に係る工程について、図8図10を参照しつつ説明する。端子台10においては、図8(a)、図10(a)に示す第1状態、図8(b)、図10(b)に示す第2状態、図8(c)、図9(a)、及び、図10(c)、(d)に示す第3状態、及び、図9(b)及び図10(e)に示す第4状態を有する。
【0060】
<第1状態>
図8(a)と図10(a)に示す第1状態においては、プッシャ40の前方端部45が最も前方に位置する初期位置にあり、プッシャ40の後方端部46の上面46aが、前方壁部21の第2案内面212dの全面に接触するとともに、後方端部46が板ばね50の接続部56の表面に接触し、板ばね50の前向きの付勢力を受けている。このとき延伸部55の先端部55aは、ターミナル30の規制凸部31bに係止し、又は、規制凸部31bの後方近傍に位置し、挿入経路L上又は挿入経路Lの近傍に位置している。初期位置では、プッシャ40の後方端部46の前面46bが前方壁部21の規制面21aに当接しており、プッシャ40の前方への移動が規制されている(図1参照)。
【0061】
板ばね50は、プッシャ40が初期位置にあるときに、接続部56が、プッシャ40の後端面49に対して所定の角度、図8(a)に示す例では約45度をなすような、形状及び弾性力を有する。このような角度を有していることによって、プッシャ40を後方へ移動させたときに、第3湾曲部54の弾性変形にともなって延伸部55が後方下側へ変位するとともに、接続部56がプッシャ40の後端面49に正対する姿勢に変化しやすくなる。
【0062】
<第2状態>
図8(b)と図10(b)に示すように、第2状態は、第1状態から、操作者がプッシャ40の前方端部45を後側へ押す操作によってプッシャ40を前後方向に沿って後側へ直進移動させることで、後方端部46によって押圧された板ばね50が後側へ湾曲変位し、第2湾曲部53はプッシャ40よりも下方に変位し、接続部56の表面がプッシャ40の後端面49に面接触するに至っている。このとき、プッシャ40の後方端部46は受け部214の角部214eよりも後側に位置し、延伸部55は挿入経路Lから外れている。ここで、接続部56が上記所定の角度を有する板ばね50の形状により、第2状態では板ばね50の姿勢が安定する。このため、後方端部46が所定位置よりも後方に位置すると、所定位置よりも前方に位置しているときよりも、プッシャ40の後方への移動に対する抵抗が大きくなる。よって、プッシャ40の操作者は、後方端部46が上記所定位置を越えたことを感知することができる。
【0063】
<第3状態>
第2状態において操作者がプッシャ40の前方端部45を下側へ押し下げる操作を行うと、プッシャ40の後方端部46側は、左側からみたときに時計回りに回動する。この回動は、プッシャ40の後方端部46が前方壁部21の受け部214に係止したところで停止する(図8(c)と図10(c))。この回動においては、接続部56が上記所定の角度を有する板ばね50の形状により、板ばね50の姿勢が維持されており、第2状態で挿入経路Lから外れた延伸部55は、第3状態においてもその位置を維持している。
【0064】
上記回動後において、前方端部45側では規制段部47が前方壁部21の前面に接触している。図8(c)に示すように、プッシャ40の後方端部46が前方壁部21の受け部214に係止することで、板ばね50の回動が停止し、先端部55aと上側接触部31との間に挿入経路Lが形成される。板ばね50の弾性力によって第3湾曲部54がプッシャ40の後方端部46を前側へ付勢するため、操作者がプッシャ40から手を離しても後方端部46と受け部214の係止状態が維持される。
【0065】
図9(a)と図10(d)に示すように、後方端部46と受け部214が係止された状態において、挿入孔部211から電線60が挿入される。このとき、板ばね50の付勢力によって、プッシャ40の後方端部46の前方壁部21の受け部214への係止が維持されるため、操作者がプッシャ40から手を離して、電線60の挿入動作を行うことが可能となる。
【0066】
<第4状態>
次に、図9(a)と図10(d)に示す状態から、操作者がプッシャ40の前方端部45を上側へ押し上げる操作を行って、板ばね50の弾性力に抗してプッシャ40を反時計回りに回動させると、プッシャ40の後方端部46は前方壁部21の受け部214から離間した第4状態となる。第4状態においては、後方端部46の上面46aが第2案内面212dに接触しており、この接触によってプッシャ40は直進移動可能な状態にある。プッシャ40は、板ばね50の弾性力によって前側へ移動するように付勢されているため、第1状態へ復帰可能となっている。第4状態においては、延伸部55の先端部55aが電線60に当接する位置まで変位するため、板ばね50の弾性力により、電線60は、上側接触部31と延伸部55の先端部55aとによって上下から挟持される(図9(b)と図10(e))。これにより、電線60とターミナル30との電気的な接触が確保され、電線60とターミナル30とが互いに導通可能状態となる。
【0067】
以上のように構成されたことから、上記実施形態の端子台10によれば、プッシャ40を所定位置を越えて後方へ直進移動させたところで、前方端部45を下方へ押し下げることで、プッシャ40が回動させ、前方壁部21に係止できるため、この状態で操作者がプッシャ40から手を離してもプッシャ40の姿勢が維持される。このとき、内部空間20a内には電線60の挿入経路Lが確保されるため、操作者はプッシャ40を押さえることなく、電線60の挿入操作を行うことができることから、容易かつ確実に端子台10内へ電線60を挿入・配置することができる。
【0068】
また、プッシャ40の回動のための前方端部45の押し下げ動作、及び、電線60の挿入操作は、それぞれ片手で行うことができる。このため、プッシャ40の押し下げ動作と電線60の挿入動作を、別々の手で連続的に行うこともできる。
【0069】
電線60を端子台10から外す際にも、前方端部45の操作によってプッシャ40を回動させ、前方壁部21の受け部214に係止端面46bを係止させることによって、操作者はプッシャ40から手を離すことができ、電線60を容易に端子台10から外すことができる。
【0070】
さらに、第2湾曲部53、接続部56、及び、第3湾曲部54の形状を、プッシャ40の後方端部46の後端面49の形状に対応した、又は、後端面49に対向した凹部形状としたことにより、プッシャ40の後方への移動にともなって、後端面49と接続部56が面接触する形状に変形させやすくなり、これにより、後方端部46を回動させやすくなっている。さらに、この回動可能な状態からプッシャ40を前方へ移動させたときに凹部形状に回復させやすくなっている。このため、プッシャ40の回動が容易になるとともに、受け部214への係止が維持しやすくなり、また、繰り返して回動と反転回動を行うことに対する耐久性を高めることができる。
【0071】
以下に変形例について説明する。
受容部51bはボス部33aを内部に受容して保持できれば、貫通孔でなく有底の凹部であってもよい。また、板ばね50の基部51の下面にボス部を設け、ターミナル30の底面部33にボス部を受容する受け部としての貫通孔又は凹部を設ける構成も可能である。
【0072】
電線60として、撚り線ではなく、一定の硬度を有した単線を用いた場合に、プッシャ40を操作することなく挿入孔部211から電線60を挿入し、電線60を後方向に沿って押し入れる力によって板ばね50が後側へ湾曲し、これによって電線60を挿入経路L上に配置できるように、板ばね50の弾性力を設定してもよい。
【0073】
上記実施形態において、前方壁部21に一対の案内溝部212a、212bを設け、プッシャ40に一対の案内突起42、43を設けていたが、プッシャ40を直進案内することができれば、これ以外の形態も可能であり、例えば、前方壁部21側に一対の案内突起を設け、プッシャ40側に、これに対応する一対の案内溝部を設けても良い。
【0074】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的又は本発明の思想の範囲内において改良又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 端子台
20 本体
20a 内部空間
21 前方壁部
21a 前方壁部の規制面
22 後方壁部
23 側方壁部
23a 押さえ部
24 上壁部
24a 前方端部
25 底壁部
25a 段部
30 ターミナル
31 上側接触部
31a 前端面
31b 規制凸部
31c 後端面
32 側面部
33 底面部
33a ボス部
34 後面部
35 規制片部
36、37 端子部
38 切り欠き部
40 プッシャ
41 本体部
41a 本体部の上面
42 第1案内突起
43 第2案内突起
45 前方端部
46 後方端部
46a 後方端部の上面
46b 係止端面
47、48 規制段部
49 プッシャの後端面
50 板ばね(付勢手段)
51 基部
51a 後端面
51b 受容部
52 第1湾曲部(付勢部)
53 第2湾曲部(付勢部)
54 第3湾曲部(付勢部)
55 延伸部(付勢部)
55a 延伸部の先端部
56 接続部(付勢部)
60 電線
61 芯線
211 挿入孔部
212 支持孔部
212a 第1案内溝部
212b 第2案内溝部
212c 第1案内面
212d 第2案内面
212f 支持孔部の下面
213 テスタ用孔部
214 受け部
214e 角部
215 前方壁部の後端面
221、222 保持凹部
223 後方壁部の前面
L 挿入経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10