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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075883
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】対象物移動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20240529BHJP
   E05F 15/689 20150101ALI20240529BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
E05F11/48 C
E05F15/689
B60J1/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187124
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】住吉 祐司
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA13
2E052EC01
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF03
3D127DF09
3D127DF26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】移動体の姿勢を安定させることが可能な対象物移動装置を提供する。
【解決手段】対象物移動装置は、第1キャリアプレート10と、上昇用ケーブル52と、中間ケーブル56とを備える。第1キャリアプレート10は、第1ケーブル溝111と第2ケーブル溝113と、当接部材122とを有する。第1ケーブル溝111は、上昇用ケーブル52を湾曲させて係合する湾曲部111Aを有する。湾曲部111Aの凸となる側は開口されている。第2ケーブル溝113は、中間ケーブル56を湾曲させて係合する湾曲部113Aを有する。湾曲部113Aの凸となる側は開口されている。当接部材122は、第1ケーブル溝111に係合する上昇用ケーブル52と、第2ケーブル溝113に係合する中間ケーブル56とに当接する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動対象物が取り付けられる移動体と、
前記移動体を、第1の方向に移動させることが可能な第1ケーブルと、
前記移動体を、前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させることが可能な第2ケーブルと、
を備え、
前記移動体は、
前記第1ケーブルを前記第1の方向に対して湾曲させて係合する第1湾曲部を有し、該第1湾曲部の凸となる側が開口する第1ケーブル溝と、
前記第1ケーブル溝と並列して設けられ、前記第2ケーブルを前記第2の方向に対して湾曲させて係合する第2湾曲部を有し、該第2湾曲部の凸となる側が開口する第2ケーブル溝と、
前記第1の方向及び前記第2の方向に沿って設けられ、前記第1ケーブル溝に係合する前記第1ケーブルと、前記第2ケーブル溝に係合する前記第2ケーブルとに当接可能な当接部材と、
を含む、
対象物移動装置。
【請求項2】
前記第1ケーブル溝及び前記第2ケーブル溝は、それぞれ、前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルが円弧状に係合するように湾曲しており、
前記当接部材は、前記第1ケーブルと前記第1ケーブル溝とが接し、前記第2ケーブルと前記第2ケーブル溝とが接する部位において、前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルに当接可能である、
請求項1に記載の対象物移動装置。
【請求項3】
前記当接部材は、
前記第1ケーブル溝に係合する前記第1ケーブルと、前記第2ケーブル溝に係合する前記第2ケーブルとの両方に当接可能な当接面を有し、
前記当接面が前記第1の方向及び前記第2の方向に沿うように設けられる
請求項1又は2に記載の対象物移動装置。
【請求項4】
前記当接部材は、
少なくとも前記第1ケーブル溝に係合する前記第1ケーブルに当接可能な第1当接部材と、
少なくとも前記第2ケーブル溝に係合する前記第2ケーブルに当接可能な第2当接部材と、
を含み、
前記第1の方向及び前記第2の方向に沿うように、前記第1当接部材と前記第2当接部材とが上下に設けられている、
請求項1又は2に記載の対象物移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、対象物移動装置の例として、キャリアプレート等の移動体を移動させることにより、キャリアプレートに取り付けられる窓ガラスを移動させるレールレス型のウインドレギュレータが開示されている。
【0003】
この種のウインドレギュレータは、上昇用のケーブル及び下降用のケーブルが接続されたキャリアプレートを備えている。モータが一の方向に回転すると、上昇用のケーブルによりキャリアプレートが上昇する。一方、モータが他の方向に回転すると、下降用のケーブルによりキャリアプレートが下降する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-053205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レールレス型のウインドレギュレータでは、キャリアプレートの昇降方向への移動を案内するガイドレールが存在せず、移動体の姿勢が安定しないおそれがある。
【0006】
本発明は、移動体の姿勢を安定させることが可能な対象物移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る対象物移動装置は、移動対象物が取り付けられる移動体と、前記移動体を、第1の方向に移動させることが可能な第1ケーブルと、前記移動体を、前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させることが可能な第2ケーブルと、を備え、前記移動体は、前記第1ケーブルを前記第1の方向に対して湾曲させて係合する第1湾曲部を有し、該第1湾曲部の凸となる側が開口する第1ケーブル溝と、前記第1ケーブル溝と並列して設けられ、前記第2ケーブルを前記第2の方向に対して湾曲させて係合する第2湾曲部を有し、該第2湾曲部の凸となる側が開口する第2ケーブル溝と、前記第1の方向及び前記第2の方向に沿って設けられ、前記第1ケーブル溝に係合する前記第1ケーブルと、前記第2ケーブル溝に係合する前記第2ケーブルとに当接可能な当接部材と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、移動体の姿勢を安定させることが可能な対象物移動装置を提供することすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る対象物移動装置の構成例を示す図である。
図2】本実施形態の第1キャリアプレートの斜視図の一例である。
図3】本実施形態の第1キャリアプレートの背面図の一例である。
図4】本実施形態において、第1キャリアプレート、上昇用ケーブル、中間ケーブル、及び当接部材の配置関係の一例を示しており、背面方向から見た場合の模式図である。
図5】第1キャリアプレート、上昇用ケーブル、中間ケーブル、及び当接部材の配置関係の第1変形例を示しており、背面方向から見た場合の模式図である。
図6】第1キャリアプレート、上昇用ケーブル、中間ケーブル、及び当接部材の配置関係の第2変形例を示しており、背面方向から見た場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一例である実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る対象物移動装置100の構成例を示す図である。この明細書において、図1に示される対象物移動装置100を、正面から見ているものとして定義する。後述の図2図6についても、正面の定義は同じである。なお、図1は、対象物移動装置100が車両のドアのインナーパネルに取り付けられたときの形態を示している。
【0011】
図1に示される対象物移動装置100は、例えば、車両のドアのインナーパネルに取り付けられ、車両の窓ガラスの昇降を行うレールレス型のウインドレギュレータ等に適用される。本実施形態では、移動対象物は、例えば車両の窓ガラスである。
【0012】
対象物移動装置100は、移動対象物が取り付けられる2つの移動体(第1キャリアプレート10、第2キャリアプレート12)と、2つのケーブルガイド(第1ケーブルガイド20、第2ケーブルガイド22)と、2つのプーリ部(第1プーリ部30、第2プーリ部32)と、駆動部40と、ケーブル50とを備える。
【0013】
2つの移動体は、例えば第1キャリアプレート10及び第2キャリアプレート12である。これらのキャリアプレート10,12には、移動対象物として、例えば車両の窓ガラス(不図示)が取り付けられる。対象物移動装置100の適用例がウインドレギュレータの場合、2つのキャリアプレート10,12の移動方向は、移動対象物である自動車の窓ガラスの昇降方向(上昇方向、下降方向)である。図1において、紙面上方向が上昇方向であり、紙面下方向が下降方向である。対象物移動装置100が車両のインナーパネルに取り付けられた状態において、2つのキャリアプレート10,12が上昇すると移動対象物が上昇し、2つのキャリアプレート10,12が下降すると移動対象物が下降する。キャリアプレート10,12の詳細については後述する。
【0014】
なお、上記の「上昇方向」は本発明の「第1の方向」に相当し、上記の「下降方向」は本発明の「第2の方向」に相当する。
【0015】
ケーブルガイド20,22は、ケーブル50の移動方向を転換する方向転換部材の一例である。ケーブルガイド20,22は、例えば、ケーブル50を掛け渡して移動方向を転換する半円形状の部材を有し、プーリ部30,32から一定距離を隔ててプーリ部30,32よりも下方に配置されている。
【0016】
プーリ部30,32は、プーリの回転軸を支持する部材である。プーリは、ケーブル50の移動方向を転換するものである。プーリ部30,32もまた、ケーブル50の移動方向を転換する方向転換部材の一例である。
【0017】
駆動部40は、ケーブル50の巻き取りと繰り出しとを行うことによって、2つのキャリアプレート10,12を昇降方向に移動させるものである。駆動部40は、例えば、ケーブル50が巻かれるドラム(不図示)と、モータ46と、モータの回転をドラムに伝達する動力伝達部(不図示)とを備える。動力伝達部は、例えばウォームギアである。
【0018】
ケーブル50は、駆動部40の駆動力をキャリアプレート10,12に伝達し、キャリアプレート10,12を昇降方向に移動させるものである。ケーブル50は、例えば、金属素線、樹脂繊維素線などを撚り合わせた可撓性を有するワイヤである。
【0019】
ケーブル50は、2つのキャリアプレート10,12を上昇させる上昇用ケーブル52と、2つのキャリアプレート10,12を下降させる下降用ケーブル54と、上昇用ケーブル52と下降用ケーブル54との間に設けられる中間ケーブル56とを備える。
【0020】
より詳しくは、上昇用ケーブル52は、第1キャリアプレート10を上昇させるとともに、中間ケーブル56を介して第2キャリアプレート12を上昇させる。すなわち、第2キャリアプレート12については、中間ケーブル56も上昇用のケーブルとして機能する。下降用ケーブル54は、第2キャリアプレート12を下降させるとともに、中間ケーブル56を介して第1キャリアプレート10を下降させる。すなわち、第1キャリアプレート10については、中間ケーブル56も下降用のケーブルとして機能する。
【0021】
上昇用ケーブル52は、第1キャリアプレート10とドラム(不図示)との間に敷設されている。上昇用ケーブル52は、一方の端部が第1キャリアプレート10に接続され、他方の端部がドラムに接続されている。第1キャリアプレート10と駆動部40との間には、第1プーリ部30が配置されている。
【0022】
下降用ケーブル54は、第2キャリアプレート12とドラム(不図示)との間に敷設されている。下降用ケーブル54は、一方の端部が第2キャリアプレート12に接続され、他方の端部がドラムに接続されている。第2キャリアプレート12と駆動部40との間には、第2ケーブルガイド22が配置されている。
【0023】
中間ケーブル56は、第1キャリアプレート10と第2キャリアプレート12との間に敷設されている。中間ケーブル56は、一方の端部が第1キャリアプレート10に接続され、他方の端部が第2キャリアプレート12に接続されている。第1キャリアプレート10と第2キャリアプレート12との間には、第1ケーブルガイド20及び第2プーリ部32が配置されている。
【0024】
上昇用ケーブル52が敷設される区間のうち、ドラム(不図示)と第1プーリ部30との間は、上昇用ケーブル52を保護するためのアウターケーシング58に覆われている。下降用ケーブル54が敷設される区間のうち、ドラムと第2ケーブルガイド22との間は、下降用ケーブル54を保護するためのアウターケーシング58に覆われている。中間ケーブル56が敷設される区間のうち、第1ケーブルガイド20と第2プーリ部32との間は、中間ケーブル56を保護するためのアウターケーシング58に覆われている。
【0025】
次に、図1を参照して、対象物移動装置100の動作説明を行う。
【0026】
例えば、モータ46が順方向に回転すると、モータ46の回転運動が動力伝達部(不図示)を介してドラム(不図示)に伝達されることにより、ドラムが順方向に回転する。この場合、上昇用ケーブル52がドラムに巻き取られ、下降用ケーブル54がドラムから繰り出される。上昇用ケーブル52がドラムに巻き取られ、下降用ケーブル54がドラムから繰り出されると、上昇用ケーブル52によって第1キャリアプレート10が上昇し、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56によって第2キャリアプレート12が上昇する。
【0027】
一方、モータ46が逆方向に回転すると、モータ46の回転運動が動力伝達部(不図示)を介してドラム(不図示)に伝達されることにより、ドラムが逆方向に回転する。この場合、下降用ケーブル54がドラムに巻き取られ、上昇用ケーブル52がドラムから繰り出される。下降用ケーブル54がドラムに巻き取られ、上昇用ケーブル52がドラムから繰り出されると、下降用ケーブル54によって第2キャリアプレート12が下降し、下降用ケーブル54及び中間ケーブル56によって第1キャリアプレート10が下降する。
【0028】
次に、キャリアプレート10,12の詳細な構造について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、第1キャリアプレート10の斜視図の一例である。図3は、第1キャリアプレート10の背面図の一例である。ただし、図2及び図3には、便宜上、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56も図示されている。
【0029】
本実施形態において、第1キャリアプレート10と第2キャリアプレート12とは、若干の形状は異なるものの機能が共通するため、第1キャリアプレート10を例に挙げて説明し、第2キャリアプレート12については説明を省略する。ただし、第1キャリアプレート10は、上昇用のケーブルとして機能する上昇用ケーブル52の一方側の端部のエンド部材116、及び、中間ケーブル56の一方側の端部のエンド部材118が接続されている。これに対し、第2キャリアプレート12は、中間ケーブル56の他方側の端部のエンド部材、及び、下降用のケーブルとして機能する下降用ケーブル54の一方側の端部のエンド部材が接続されている点で、第1キャリアプレート10と異なる。
【0030】
第1キャリアプレート10は、例えば樹脂製であり、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56を支持する本体部110と、後述の当接部材122を支持する当接部材支持部120と、延設部130とを、少なくとも有する。
【0031】
本体部110は、上昇用ケーブル52の一方側の端部のエンド部材116が接続される第1接続部115と、中間ケーブル56の一方側の端部のエンド部材118が接続される第2接続部117とを有する。また、本体部110は、第1ケーブル溝111(図2参照)と、第2ケーブル溝113(図2参照)とを有する。
【0032】
第1ケーブル溝111(図2参照)は、上昇用ケーブル52が係合する溝である。第2ケーブル溝113(図2を参照)は、中間ケーブル56が係合する溝である。図2に示されるように、第1ケーブル溝111と第2ケーブル溝113とは、正面から見て前後方向に並列している。第1ケーブル溝111及び第2ケーブル溝113の詳細については後述する。
【0033】
当接部材支持部120は、本体部110と一体的に構成されており、当接部材122を支持している。当接部材122は、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56と当接可能な部材であるが、詳細については後述する。
【0034】
延設部130は、本体部110と一体的に構成されており、第1キャリアプレート10の上昇方向に対して交差する方向(図3の紙面左側方向)に延設している。この延設部130には第1接続部115が形成されており、この第1接続部115には弾性部材132が設けられている。第1接続部115に弾性部材132を設けることにより、第1キャリアプレート10を上昇させる力が上昇用ケーブル52に対して作用したときに、第1キャリアプレート10に対して発生しうる衝撃を緩和することができる。本実施形態において、エンド部材116は例えば樹脂製の円筒状の部材であり、弾性部材132は円筒状のエンド部材116に外挿される例えばコイルバネである。
【0035】
次に、図4を参照して、第1ケーブル溝111、第2ケーブル溝113、及び当接部材122の詳細を説明する。図4は、第1キャリアプレート10、上昇用ケーブル52、中間ケーブル56、及び当接部材122の配置関係の一例を示しており、背面方向から見た場合の模式図である。
【0036】
第1ケーブル溝111(図2参照)は、第1キャリアプレート10の上昇方向(図4の紙面上方向)に対して円弧状に湾曲する湾曲部111Aを有する。上昇用ケーブル52は、湾曲部111Aにおいて円弧状となるように、第1ケーブル溝111に係合している。詳述すると、上昇用ケーブル52は、湾曲部111Aにおいて、第1キャリアプレート10の上昇方向(図4の紙面上方向)から、この上昇方向に対して交差する方向(図4の紙面左側方向)に方向が変えられ、一方側の端部が第1接続部115に接続される。このように、第1ケーブル溝111が湾曲部111Aを有することにより、小型化することができる。なお、第1ケーブル溝111は、湾曲部111Aの凸となる側、すなわち溝の底部と反対側(上昇用ケーブル52の脱落方向)、より詳しくは円弧状の径方向の外側が開口している。また、第1ケーブル溝111は、湾曲部111Aの他に直線状の部位も有するが、これは必須ではない。上記の「湾曲部111A」は、本発明の「第1湾曲部」に相当する。
【0037】
第2ケーブル溝113(図2を参照)は、第1キャリアプレート10の下降方向(図4の紙面下方向)に対して円弧状に湾曲する湾曲部113Aを有する。中間ケーブル56は、湾曲部113Aにおいて円弧状となるように、第2ケーブル溝113に係合している。中間ケーブル56は、湾曲部113Aにおいて、第1キャリアプレート10の下降方向(図2及び図3の紙面下方向)から、この下降方向に対して交差する方向(図3の紙面左側方向)に方向が変えられ、一方側の端部が第2接続部117に接続される。このように、第2ケーブル溝113が湾曲部113Aを有することにより、小型化することができる。なお、第2ケーブル溝113は、湾曲部113Aの凸となる側、すなわち溝の底部と反対側(中間ケーブル56の脱落方向)、より詳しくは円弧状の径方向の外側が開口している。また、第2ケーブル溝113は、湾曲部113Aの他に直線状の部位も有するが、これは必須ではない。上記の「湾曲部113A」は、本発明の「第2湾曲部」に相当する。
【0038】
当接部材122は、平面部122Aを有する部材であり、この平面部122Aが第1キャリアプレート10(図1~3を参照)の昇降方向(図4の紙面上下方向)に沿うように設けられている。
【0039】
本実施形態において、第1ケーブル溝111は、例えば、図4に示されるBの位置とGの位置との間に形成され、湾曲部111Aは、Bの位置とFの位置との間に形成されている。第2ケーブル溝113は、例えば、図4に示されるEの位置とAの位置との間に形成されている。すなわち、図4に示されるBの位置とEの位置との間は、第1ケーブル溝111及び第2ケーブル溝113の両方が並列するように形成されている。
【0040】
上昇用ケーブル52は、図4に示されるCの位置とGの位置との間において、第1ケーブル溝111と係合している。中間ケーブル56は、図4に示されるDの位置とAの位置との間において、第2ケーブル溝113と係合している。すなわち、Cの位置とDの位置との間は、上昇用ケーブル52が第1ケーブル溝111に係合しているとともに、中間ケーブル56が第2ケーブル溝113に係合している。
【0041】
当接部材122は、一つの当接部材122で、図4に示されるCの位置とDの位置との間において、平面部122Aが上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56の両方に当接可能となるように設けられている。本実施形態において、より詳しくは、一つの当接部材122は、上昇用ケーブル52と接触するとともに、中間ケーブル56と接触するように設けられている。
【0042】
ところで、本実施形態の対象物移動装置100はレールレス型であり、第1キャリアプレート10の姿勢が安定しないおそれがある。また、第1ケーブル溝111が湾曲部111Aを有し、第2ケーブル溝113が湾曲部113Aを有するため、第1キャリアプレート10に対して作用する回転モーメント(図4の紙面において反時計回りに作用する回転モーメント)によって、第1キャリアプレート10が傾きやすい。また、本実施形態の第1キャリアプレート10は比較的コンパクトに構成されていることもあって、第1キャリアプレート10の傾きを抑制する構造に変更することも難しい。
【0043】
この点、本実施形態では、平面部122Aが第1キャリアプレート10の昇降方向に沿って設けられた当接部材122を、第1ケーブル溝111に係合する上昇用ケーブル52と、第2ケーブル溝113に係合する中間ケーブル56とに当接させている。このようにすることで、レールレス型の対象物移動装置100において、第1キャリアプレート10の姿勢、ひいては第1キャリアプレート10に取り付けられた移動対象物(例えば車両の窓ガラス)の姿勢を、安定させることが可能となる。また、第1キャリアプレート10が、凸となる側に開口された湾曲部111A,113Aを有する傾きやすい構造であったとしても、第1キャリアプレート10の傾きを抑制し、ケーブル(上昇用ケーブル52、中間ケーブル56)の脱落を抑制できる。
【0044】
なお、本実施形態において、当接部材122は板状部材であるが、これに限定されず、少なくとも、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56と当接できる面を有していればよい。よって、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56と当接する面についても、平面である必要はなく、例えばケーブル(上昇用ケーブル52、中間ケーブル56)の形状に沿った面であってもよい。
【0045】
また、当接部材122は、Cの位置とDの位置との間の全部を含むように上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56と当接してもよいし、Cの位置とDの位置との間の一部において上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56と当接してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、Cの位置とDの位置との間において、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56の両方に、一つの当接部材122を当接させている。すなわち、一つの当接部材122は、第1キャリアプレート10の昇降方向における同じ部位において、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56の両方に当接している。そのため、部品点数を削減し、シンプルな構成で、第1キャリアプレート10の傾きを抑制し、第1キャリアプレート10の姿勢の安定化を図ることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、上昇用ケーブル52と中間ケーブル56との両方に当接する当接部材122の平面部122Aが、第1キャリアプレート10の昇降方向に沿っている。そのため、第1キャリアプレート10は昇降方向に沿って支持され、第1キャリアプレート10が昇降方向に対して傾くことを抑制することが可能となる。
【0048】
また、当接部材122は、平面部122Aが常に上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56の両方と当接していることは必須でない。例えば、当接部材122は、平面部122Aが常には上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56に当接しておらず、第1キャリアプレート10の姿勢が傾いたときに当接するようにしてもよい。また、窓ガラスが第1キャリアプレート10に取り付けられる前に当接し、窓ガラスが第1キャリアプレート10に取り付けられた後には、当接が解除されるようにしてもよい。
【0049】
なお、当接部材122を、第1キャリアプレート10及び第2キャリアプレート12の両方に設けると、第1キャリアプレート10及び第2キャリアプレート12の両方が傾き難くなるため好ましい。ただし、これに限られず、第1キャリアプレート10及び第2キャリアプレート12のうちいずれか一方に対して当接部材122を設けるようにしてもよい。また、本体部110のうち当接部材122と対向する部分に当接部材122側へ延出する延出部を設け、当接部122と延出部とを常に接触させるようにしてもよい。これにより、車両の振動等により当接部材と110とが接触し異音を発生することを防止することができる。
【0050】
(変形例)
以上、本発明の一例として上述の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の当接部材122を、図5または図6に示される変形例の当接部材124に変更することができる。
【0051】
(第1変形例)
図5は、第1キャリアプレート10、上昇用ケーブル52、中間ケーブル56、及び当接部材124の配置関係の第1変形例を示しており、背面方向から見た場合の模式図である。なお、図5において、図4と共通する構成については、図4と同じ符号を付すとともに説明を省略する。
【0052】
第1変形例の当接部材124は、第1当接部材126及び第2当接部材128を含む。第1当接部材126と第2当接部材128とは別体であるが、いずれも当接部材支持部120(図2図3を参照)に支持されている。
【0053】
第1当接部材126は、平面部126Aを有しており、この平面部126Aが第1キャリアプレート10の昇降方向(図5の紙面上下方向)に沿うように設けられている。第1当接部材126は、図5に示されるCの位置において、平面部126Aが上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56の両方に当接するように設けられている。
【0054】
第2当接部材128は、平面部128Aを有しており、この平面部128Aが第1キャリアプレート10の昇降方向(図5の紙面上下方向)に沿うように、より詳しくは平面部126Aと平面部128Aとが同一平面となるように、上下に設けられている。第2当接部材128は、図5に示されるDの位置において、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56の両方に当接するように設けられている。
【0055】
このように、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56の両方に対して、それぞれ、第1ケーブル溝111及び第2ケーブル溝113に向けて2点で当接することにより、第1キャリアプレート10の傾きを抑制し、第1キャリアプレート10の姿勢の安定化を図ることが可能となる。
【0056】
なお、第1当接部材126及び第2当接部材128は、それぞれ、Cの位置及びDの位置において上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56の両方に当接するように設けられているが、当接部位はCの位置及びDの位置に限定されない。例えば、Cの位置とDの位置との間の任意の2点において、第1当接部材126及び第2当接部材128を、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56に当接させるようにしてもよい。
【0057】
また、Cの位置及びDの位置の2点において上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56に当接しているが、当接部位は2点に限定されない。例えば、Cの位置とDの位置との間において上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56に当接する当接部材をさらに設けてもよい。すなわち、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56の両方に対して2点で当接することに限定されず、3点以上で当接するようにしてもよい。
【0058】
(第2変形例)
図6は、第1キャリアプレート10、上昇用ケーブル52、中間ケーブル56、及び当接部材124の配置関係の第2変形例を示しており、背面方向から見た場合の模式図である。第2変形例は、当接部材124の配置位置が、第1変形例と異なる。なお、図6では、配置位置が異なる当接部材124も含めて全ての部材に対して、図5と共通する符号を付している。第2変形例では、第1変形例と配置位置が異なる当接部材124についてのみ説明し、その他の部材についての説明は省略する。
【0059】
第2変形例の当接部材124は、第1変形例の当接部材124と同様に、当接部材支持部120(図2図3を参照)に支持される第1当接部材126及び第2当接部材128を含む。第1当接部材126と第2当接部材128とは別体である。
【0060】
第1当接部材126は、第1変形例と同様に、平面部126Aが第1キャリアプレート10の昇降方向(図6の紙面上下方向)に沿うように設けられている。ただし、第1当接部材126は、図6に示されるCの位置よりも上方の位置に設けられている。よって、第1当接部材126の平面部126Aは、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56のうち、上昇用ケーブル52にのみ当接し、中間ケーブル56には当接していない。
【0061】
第2当接部材128は、第1変形例と同様に、平面部128Aが第1キャリアプレート10の昇降方向(図6の紙面上下方向)に沿うように、上下に設けられている。ただし、第2当接部材128は、図6に示されるDの位置よりも下方の位置に設けられている。よって、第2当接部材128の平面部128Aは、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56のうち、中間ケーブル56にのみ当接し、上昇用ケーブル52には当接していない。この第2変形例では、平面部126Aと平面部128Aとが同一平面となることは必須でない。
【0062】
このように、上昇用ケーブル52に対して第1当接部材126を当接させ、中間ケーブル56に対して第2当接部材128を当接させた場合であっても、第1キャリアプレート10の傾きを抑制し、第1キャリアプレート10の姿勢の安定化を図ることが可能となる。
【0063】
なお、Cの位置よりも上方の位置に設けられる第1当接部材126及びDの位置よりも下方の位置に設けられる第2当接部材128に加えて、Cの位置とDの位置との間に、上昇用ケーブル52及び中間ケーブル56の両方に当接する当接部材を設けるようにしてもよい。
【0064】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態及び変形例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。なお、上述の実施形態及び変形例の形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0065】
(1)移動対象物が取り付けられる移動体と、
前記移動体を、第1の方向に移動させることが可能な第1ケーブルと、
前記移動体を、前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させることが可能な第2ケーブルと、
を備え、
前記移動体は、
前記第1ケーブルを前記第1の方向に対して湾曲させて係合する第1湾曲部を有し、該第1湾曲部の凸となる側が開口する第1ケーブル溝と、
前記第1ケーブル溝と並列して設けられ、前記第2ケーブルを前記第2の方向に対して湾曲させて係合する第2湾曲部を有し、該第2湾曲部の凸となる側が開口する第2ケーブル溝と、
前記第1の方向及び前記第2の方向に沿って設けられ、前記第1ケーブル溝に係合する前記第1ケーブルと、前記第2ケーブル溝に係合する前記第2ケーブルとに当接する当接部材と、
を含む、
対象物移動装置。
【0066】
(2)前記第1ケーブル溝及び前記第2ケーブル溝は、それぞれ、前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルが円弧状に係合するように湾曲しており、
前記当接部材は、前記第1ケーブルと前記第1ケーブル溝とが接し、前記第2ケーブルと前記第2ケーブル溝とが接する部位において、前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルに当接可能である、
(1)に記載の対象物移動装置。
【0067】
(3)前記当接部材は、
前記第1ケーブル溝に係合する前記第1ケーブルと、前記第2ケーブル溝に係合する前記第2ケーブルとの両方に当接する当接面を有し、
前記当接面が前記第1の方向及び前記第2の方向に沿うように設けられる
(1)または(2)に記載の対象物移動装置。
【0068】
(4)前記当接部材は、
少なくとも前記第1ケーブル溝に係合する前記第1ケーブルに当接する第1当接部材と、
少なくとも前記第2ケーブル溝に係合する前記第2ケーブルに当接する第2当接部材と、
を含み、
前記第1の方向及び前記第2の方向に沿うように、前記第1当接部材と前記第2当接部材とが並べて設けられている、
(1)または(2)に記載の対象物移動装置。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本実施の形態では、対象物移動装置100が採用される適用例として、車両のドアのインナーパネルに取り付けられ、車両の窓ガラスの昇降を行うレールレス型のウインドレギュレータを例示したが、ウインドレギュレータに限定されず、様々な装置に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 第1キャリアプレート
12 第2キャリアプレート
52 上昇用ケーブル
54 下降用ケーブル
56 中間ケーブル
100 対象物移動装置
111 第1ケーブル溝
111A 湾曲部
113 第2ケーブル溝
113A 湾曲部
122 当接部材
122A 平面部
124 当接部材(変形例)
126 第1当接部材(変形例)
126A 平面部(変形例)
128 第2当接部材(変形例)
128A 平面部(変形例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6