IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポーラ化成工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-水中油型ピッカリングエマルション 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075905
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】水中油型ピッカリングエマルション
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240529BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240529BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240529BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240529BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20240529BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240529BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/81
A61K8/37
A61K8/89
A61K8/31
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187160
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中谷 明弘
(72)【発明者】
【氏名】七原 加奈
(72)【発明者】
【氏名】十塚 幼子
(72)【発明者】
【氏名】林 真理子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC011
4C083AC122
4C083AC342
4C083AC351
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC552
4C083AC852
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD162
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD351
4C083AD352
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、みずみずしい使用感を有する水中油型ピッカリングエマルションを提供することを課題とする。
【解決手段】水中油型ピッカリングエマルションであって、乳化剤として竹由来のセルロースナノファイバーと、増粘剤と、を含む、水中油型ピッカリングエマルション。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型ピッカリングエマルションであって、
乳化剤として竹由来のセルロースナノファイバーと、
増粘剤と、を含む、
水中油型ピッカリングエマルション。
【請求項2】
前記竹由来のセルロースナノファイバーが、化学修飾されていないセルロースナノファイバーである、請求項1に記載のピッカリングエマルション。
【請求項3】
前記増粘剤が、アクリル酸系増粘剤及び/又は増粘多糖類である、請求項1又は2に記載のピッカリングエマルション。
【請求項4】
前記増粘剤が、カルボマーである、請求項3に記載のピッカリングエマルション。
【請求項5】
前記増粘剤が、キサンタンガムである、請求項3に記載のピッカリングエマルション。
【請求項6】
油相に含まれる油性成分として、脂肪酸エステル、グリセリンエステル、シリコーン油、炭化水素油、液状の紫外線吸収剤からなる群から選択される1種又は2種以上を含む、請求項1又は2に記載のピッカリングエマルション。
【請求項7】
前記ピッカリングエマルション全量に対する前記油相の割合が、5~40質量%である、請求項6に記載のピッカリングエマルション。
【請求項8】
請求項1に記載のピッカリングエマルションを含む、日焼け止め化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化剤として特定のセルロースナノファイバーを使用した水中油型ピッカリングエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
両親媒性の固体粒子を界面に吸着させることで乳化した剤形は、ピッカリングエマルションとして従来知られており、化粧料においてもその活用が提案されている。
本出願人は、アクリル系ポリマーを含むことで、乳化界面に吸着する粉体の分散状態を改善する技術を提案している(特許文献1)。
また、本出願人は、親水性の皮膜形成ポリマーを含むことで、物理的な擦れに対する耐性を有するピッカリングエマルションである日焼け止め化粧料を提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-103271号公報
【特許文献2】特開2022-133061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本出願人が従来提案してきたピッカリングエマルションは、微粒子金属酸化物、特にシリカ微粒子を乳化粉体として用いたピッカリングエマルションである。シリカ微粒子は、乳化安定性が高く、使用できる油剤の種類も豊富であるが、シリカ微粒子を使用したピッカリングエマルションは、塗布時にきしみを感じ、使用感に改善の余地があった。
【0005】
したがって、本発明は、みずみずしい使用感を有する水中油型ピッカリングエマルションを提供することを課題とする。
【0006】
また、本発明の好ましい形態においては、優れた乳化安定性を有し、かつみずみずしい使用感を有する水中油型ピッカリングエマルションを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するための手段として、竹由来のセルロースナノファイバーに着目した。竹由来のセルロースナノファイバーは、乳化能を有することが知られており、さっぱりとしたみずみずしい使用感が期待される原料である。
しかし、竹由来のセルロースナノファイバーは、従来のシリカ微粒子と比べて使用感に優れるものの、乳化安定性に劣るものであった。
本発明者らは、鋭意研究の結果、竹由来のセルロースナノファイバーと、増粘剤とを組み合わせることで、乳化安定性に優れ、かつ使用感に優れた水中油型ピッカリングエマルションとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
前記課題を解決する本発明は、水中油型ピッカリングエマルションであって、乳化剤として竹由来のセルロースナノファイバーと、増粘剤と、を含む。
本発明の水中油型ピッカリングエマルションは、乳化安定性、及び使用感に優れる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記竹由来のセルロースナノファイバーが、化学修飾されていないセルロースナノファイバーである。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記増粘剤が、アクリル酸系増粘剤及び/又は増粘多糖類である。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記増粘剤が、キサンタンガムである。
【0012】
本発明の好ましい形態では、油相に含まれる油性成分として、脂肪酸エステル、グリセリンエステル、シリコーン油、炭化水素油、液状の紫外線吸収剤からなる群からなる選択される1種又は2種以上を含む。
【0013】
本発明の好ましい形態として、前記ピッカリングエマルション全量に対する前記油相の割合が、5~40質量%である。
【0014】
また、前記課題を解決する本発明は、前記ピッカリングエマルションを含む、日焼け止め化粧料である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水中油型ピッカリングエマルションは、乳化安定性に優れ、かつみずみずしい使用感を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】各油剤に対する竹由来のセルロースナノファイバーの乳化能を確認した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の日焼け止め化粧料は、竹由来のセルロースナノファイバー(以下、CNFという)と、増粘剤とを有する。
以下、各成分について詳細に説明を加える。
【0018】
(1)竹由来のCNF
本願発明における竹由来のCNFとしては、竹原料(竹パルプ)を化学的、又は機械的に処理して解繊したものを使用することができる。
化学的に処理して解繊する方法としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の導入、加水分解、酵素分解等が挙げられる。
機械的に処理して解繊する方法としては、水中対向衝突法、水圧貫通微細化法、ウォータージェット法、高圧ホモジナイザー処理法、マイクロフリュイダイザー法、ボールミル粉砕法、グラインダー法等の方法が挙げられる。
中でも、本発明の竹由来のCNFは、水中対向衝突法により製造されたCNFであることが好ましい。
【0019】
本発明の水中油型ピッカリングエマルションにおいて、竹由来のCNFは、乳化剤(乳化粉体)として機能する。すなわち、竹由来のCNFは、水相と油相の界面に吸着して、乳化界面を形成する。
【0020】
竹由来のCNFとしては、化学修飾されていないCNFであることが好ましい。
化学修飾されていない竹由来のCNFを含む水中油型ピッカリングエマルションは、化学修飾されたCNFを含む水中油型ピッカリングエマルションと比して、乳化安定性、使用感に優れる。また、化学修飾されていない竹由来のCNFを含む水中油型ピッカリングエマルションは、化学修飾されたCNFを含む水中油型ピッカリングエマルションと比して、肌に塗布した後、摩擦が起きた際の膜のヨレが生じにくい。
【0021】
竹由来のCNFとしては、水分散性を有するCNFが好ましい。
【0022】
竹由来のCNFとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、nanoforest-S(中越パルプ工業株式会社製)が挙げられる。
【0023】
水中型ピッカリングエマルション全量に対する、竹由来のCNFの含有量は、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%であり、さらに好ましくは0.1~2質量%であり、特に好ましくは0.1~1.5質量%であり、最も好ましくは0.1~1質量%である。
【0024】
(2)増粘剤
本発明の水中油型ピッカリングエマルションは、増粘剤を含む。
増粘剤としては、特に限定されず、キサンタンガム、ジェランガム、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム,サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、アクリル酸ナトリウムグラフトデンプン、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、ベントナイト、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
中でも、増粘剤としては、キサンタンガム、ジェランガム、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びメチルヒドロキシプロピルセルロース等の増粘多糖類、及び/又はポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、ポリアクリルアミド等のアクリル酸系増粘剤を含むことが好ましく、キサンタンガム及び/又はカルボマーを含むことがより好ましい。
【0025】
本発明のピッカリングエマルションにおいては、増粘剤として、増粘多糖類及びアクリル酸系増粘剤を含むことが好ましく、キサンタンガム及びカルボマーを含むことがより好ましい。
これらの増粘剤を含むことで、より乳化安定性、みずみずしい使用感に優れ、かつ塗布後の摩擦による膜のヨレが抑制される水中油型ピッカリングエマルションとなる。
【0026】
増粘剤としてキサンタンガム等の増粘多糖類を含む場合、水中油型ピッカリングエマルション全量に対する増粘多糖類の含有量は、好ましくは0.01~1質量%であり、より好ましくは0.05~0.5質量%であり、さらに好ましくは0.05~0.3質量%であり、特に好ましくは0.1~0.2質量%である。
【0027】
増粘剤として、カルボマー等のアクリル酸系増粘剤を含む場合、水中油型ピッカリングエマルション全量に対するアクリル酸系増粘剤の含有量は、好ましくは1~10質量%であり、より好ましくは2~9質量%であり、さらに好ましくは3~8質量%であり、特に好ましくは4~6質量%である。
【0028】
(3)水中油型ピッカリングエマルション
ピッカリングエマルションとは、粒子を用いて安定化された乳化組成物をいう。粒子が乳化安定性に寄与している乳化組成物でれば、他の界面活性剤を含んでいてもピッカリングエマルションというが、本発明の水中油型ピッカリングエマルションは、界面活性剤を実質的に含有しないことが好ましい。
界面活性剤の含有量は、ピッカリングエマルション全量に対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下であり、最も好ましくは界面活性剤を含有しない。
【0029】
本発明の水中油型ピッカリングエマルションにおける油相に含まれる油性成分は特に限定されず、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油、液状の紫外線吸収剤等を含むことができる。
本発明の水中油型ピッカリングエマルションは、脂肪酸エステル、グリセリンエステル、シリコーン油、炭化水素油、液状紫外線吸収剤からなる群から選択される1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0030】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、メドウフォーム油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
【0031】
固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0032】
ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロ
ウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0033】
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0034】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸等が挙げられる。
【0035】
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられる。
【0036】
エステル油としては、イソノナン酸イソノニル、リスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、及びリンゴ酸ジイソステアリル等の脂肪酸エステル、ステアリン酸スクロース、及びオレイン酸スクロース等のショ糖脂肪酸エステル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン等のグリセリンエステル(グリセリン脂肪酸エステル)等が例示できる。
【0037】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等の鎖状ポリシロキサンや、ペンタシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサンなどの環状ポリシロキサン等が挙げられる。
【0038】
液状の紫外線吸収剤としては、常温で液状の紫外線吸収剤を用いることができ、例えば、ポリシリコーン-15、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エトキシエチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル等のケイ皮酸誘導体、パラジメチルアミノ酸安息香酸アミル、パラジメチルアミノ酸安息香酸2-エチルヘキシル等の安息香酸誘導体、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸2-エチルヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ホモメンチル、オクトクリレン等のサリチル酸系誘導体等が挙げられる。
【0039】
本発明の水中油型ピッカリングエマルションは、油性成分として上述した紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤を含んでもよい。例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジエトキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾン-3)、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン;4-t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン;ウロカニン酸及びウロカニン酸エチル、2-(2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、フェニルベンズイミダソゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、ドロメトリゾールトリシロキサン、アントラニル酸メチル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ルチン及びその誘導体、オリザノール及びその誘導体等が例示できる。
【0040】
水中油型ピッカリングエマルション全量に対する、油相の含有量は、好ましくは5~40質量%であり、より好ましくは10~35質量%であり、さらに好ましくは15~35質量%であり、さらに好ましくは20~35質量%であり、特に好ましくは20~30質量%であり、最も好ましくは25~30質量%である。
【0041】
本発明の水中油型ピッカリングエマルションにおける水相に含まれる水性成分は、通常化粧料に用いられる成分を特に制限なく含むことができる。
例えば、水、及びポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等のポリオールが挙げられ、中でも、1,3-ブチレングリコールが好ましく挙げられる。
【0042】
水中油型ピッカリングエマルション全量に対する、油相の含有量は、好ましくは5~40質量%であり、より好ましくは10~35質量%であり、さらに好ましくは15~35質量%であり、さらに好ましくは20~35質量%であり、特に好ましくは20~30質量%であり、最も好ましくは25~30質量%である。
【0043】
また、本発明のピッカリングエマルションにおいては、上記成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。かかる任意成分としては、例えば、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB塩酸塩,ビタミンBトリパルミテート,ビタミンBジオクタノエート,ビタミンB又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類などが好ましく例示できる。
【0044】
本発明のピッカリングエマルションは、室温下、水相に乳化粉体を分散し、そこへ油相を投入し乳化することにより製造することができる。
【0045】
本発明のピッカリングエマルションは、皮膚外用剤に好適である。中でも、化粧料に用いることが好ましく、化粧下地、ファンデーション、日焼け止め化粧料等とすることが好ましい。
【実施例0046】
<試験例1>
竹由来のCNFの濃度が1%、0.5%、0.25%の水分散体を5つずつ調製した。また、竹由来の濃度が0.25%であり、キサンタンガムを含む水分散体を5つ調製した。各水分散体に、油性成分としてイソノナン酸イソノニル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ジメチコン、シクロペンタキロキサン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルを、油性成分の割合が30質量%となるよう添加して撹拌し、サンプルを調製した。
各サンプルの乳化の有無、及び乳化粒子径を光学顕微鏡により観察した。結果を図1に示す。
【0047】
図1より、ジメチコン、シクロペンタシロキサンは、竹由来のCNFのみでは、水中油型ピッカリングエマルションを形成することができないことがわかる。一方、CNFとキサンタンガムを併用することで、ジメチコン及びシクロペンタシロキサンを油性成分として、水中油型ピッカリングエマルションを形成できることがわかる。
また、イソノニン酸イソノニル、及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)を用いた場合にいは、CNF濃度が0.25%では、ピッカリングエマルションが形成されないが、キサンタンガムを併用することで、乳化粒子が形成されることが確認できる。
これらの結果から、竹由来のCNFとキサンタンガム等の増粘剤を併用させることで、竹由来のCNF単独の場合と比して、乳化安定性を改善できることが明らかとなった。
【0048】
<試験例2>
表1に示す配合(表中の数字は質量%)に従い、実施例1~5のピッカリングエマルション(水中油型)を含む日焼け止め乳化化粧料を調製した。また、竹由来のセルロースナノファイバーに代えて、シリカ微粒子を用いた比較例1のピッカリングエマルション(水中油型)を含む日焼け止め乳化化粧料、及び化学修飾が施された(リン酸エステル化)セルロースナノファイバーを用いた比較例2のピッカリングエマルション(水中油型)を含む日焼け止め乳化化粧料を調製した。
なお、A成分のセルロースナノファイバー(竹由来)は、セルロースナノファイバーが5%の水分散体であり、実施例1、2、4及び5のセルロースナノファイバーの含有量は1質量%であり、実施例3のセルロースナノファイバーの含有量は0.5質量%である。
また、B成分のセルロースナノファイバー(化学修飾)は2%水分散体であり、比較例2のセルロースナノファイバーの含有量は1質量%である。
【0049】
得られた各日焼け止め化粧料について、調製直後に光学顕微鏡を用いて乳化粒子径を測定した。その後、40℃で1か月間保存し、再度光学顕微鏡を用いて乳化粒子径を測定し、日焼け止め化粧料の乳化安定性を評価した。評価基準は以下の通りである。
【0050】
また、各日焼け止め化粧料について、化粧品の評価に精通した官能評価者が、使用時のみずみずしい感触を5点満点(1点~5点)で評価した。評価基準は以下の通りである。
【0051】
さらに、各日焼け止め化粧料を人工皮革に0.2g/cm塗布し、15分乾燥した後、塗布部分を摩擦して、凝集物が析出するかを評価した。評価基準は以下の通りである。
【0052】
<評価基準>
(乳化安定性)
◎:変化なし
〇:変化あり(変化率100%超120%以下;変化率は、調製直後の乳化粒子径(μm)を1ヶ月保存後の乳化粒子径で除して、100をかけた値(%))
△:変化あり(変化率120%超150%以下)
×:変化あり(変化率150%超)
(みずみずしい感触)
◎:5点
〇:4点
△:3点
×:2点以下
(膜のヨレ)
〇:摩擦しても凝集物が出ない
△:凝集物は目視できるが、触っても凝集物の感触はない
×:凝集物がでて、触ると凝集物の感触がわかる
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示す通り、実施例1~3の日焼け止め化粧料は、何れも高い乳化安定性を有し、使用時にみずみずしい感触を呈し、塗布後に摩擦を行っても、膜のヨレ(凝集)が生じない優れた性質を有するものであることがわかる。
増粘剤として増粘多糖類(キサンタンガム)を含まない実施例4は、実施例1~3と比して乳化安定性に劣るものの、塗布時にみずみずしい使用感を有し、塗布後に摩擦を行っても膜のヨレが生じない性質を有するものであった。
増粘剤としてアクリル酸系増粘剤を含まない実施例5は、実施例1~3と比して、塗布後の摩擦により凝集物が目視できるものであったが、使用時にみずみずしい使用感を有し、かつ優れた乳化安定性を有するものであった。
竹由来のセルロースナノファイバーに代えてシリカ微粒子を乳化用粉体として比較例1は、優れた乳化安定性を有するものの、塗布時に粉体特有のギシギシとした感触があった。
また、竹由来のセルロースナノファイバーに代えて、化学修飾されたセルロースナノファイバーを含む比較例2は、キサンタンガム及びカルボマーを含むものの、乳化安定性に優れているとはいえず、塗布時のみずみずしい感触に欠けており、摩擦により凝集が生じて目視できるものであった。
【0055】
以上の結果から、竹由来のセルロースナノファイバーを乳化剤として含む水中油型ピッカリングエマルションは、シリカ微粒子により乳化されたピッカリングエマルション、及び化学修飾されたセルロースナノファイバーにより乳化されたピッカリングエマルションと比して、みずみずしい感触を有する製剤となることがわかった。
また、増粘剤として、キサンタンガム等の増粘性多糖類と、カルボマー等のアクリル酸系増粘剤を何れも含むことで、優れた乳化安定性とみずみずしい感触を有し、かつ膜のヨレが抑制された水中油型ピッカリングエマルションとなることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、竹由来のCNFにより安定化されたピッカリングエマルションを含む様々な製剤に応用することができる。

図1