(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075917
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】回転電機の固定子及び回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20240529BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20240529BHJP
H02K 15/12 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H02K3/34 D
H02K15/04 E
H02K15/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187182
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】生沼 千広
(72)【発明者】
【氏名】小西 裕希
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 明
(72)【発明者】
【氏名】中野 健太郎
【テーマコード(参考)】
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604DB02
5H604PB04
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP14
5H615RR07
5H615SS33
5H615TT31
(57)【要約】
【課題】コイルエンドの塗装工程の作業効率を向上させ、固定子の寸法精度を安定化させる。
【解決手段】本発明は、複数のスロット112を備えた固定子コア111と、複数のスロット112に挿入され、端部114dが固定子コア111から軸方向外側に突出して他の端部114dと接合する接合部(第2コイルエンド114b)を備えた複数の固定子コイル114と、前記接合部を被覆する粉体樹脂210(第1樹脂)と、固定子コイル114をスロット112内に固定する絶縁ワニス220(第2樹脂)と、を備える。
粉体樹脂210(第1樹脂)は、前記接合部を覆う第1被覆部210aと、第1被覆部210aの一部を覆う第2被覆部210bを備える。第1被覆部210aと第2被覆部210bとの境界部は、絶縁ワニス220(第2樹脂)を受ける段差形状とした。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを備えた固定子コアと、前記複数のスロットに挿入され、端部が前記固定子コアから軸方向外側に突出して他の前記端部と接合する接合部を備えた複数の固定子コイルと、前記接合部を被覆する第1樹脂と、前記固定子コイルを前記スロット内に固定する第2樹脂と、を備える回転電機の固定子であって、
前記第1樹脂は、前記接合部を覆う第1被覆部と、前記第1被覆部の一部を覆う第2被覆部を備え、
前記第1被覆部と前記第2被覆部との境界部は、前記第2樹脂を受ける段差形状としたことを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2被覆部における前記第2樹脂の付着率は、前記境界部における前記第2樹脂の付着率よりも低いことを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1樹脂は粉体樹脂であり、前記第2樹脂は液状樹脂であることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1被覆部と前記第2被覆部は粉体塗装で形成し、前記第1被覆部を形成後、前記第2被覆部を形成することを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1被覆部及び前記第2被覆部は、前記接合部を粉体樹脂が蓄積された粉体樹脂層に浸漬して形成し、
前記第2被覆部を形成する前記接合部の浸漬深さは、前記第1被覆部を形成する前記接合部の浸漬深さよりも浅くしたことを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項6】
請求項5において、
前記接合部を前記粉体樹脂層に浸漬して前記第2被覆部を形成後、前記接合部を前記粉体樹脂層から引上げ、前記固定子を上下反転させて前記第2被覆部を形成する粉体樹脂を乾燥させて硬化することを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項7】
固定子と、前記固定子の内周側に配置された回転子とを備える回転電機であって、
前記固定子は、請求項1乃至6の何れか1項であることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の固定子及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の固定子に関する技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。
【0003】
特許文献1では、固定子コアに形成された複数のスロットのそれぞれにU字状のセグメント導体を挿入し、セグメント導体の端末部同士を接続して固定子巻線を構成している。セグメント導体をU字状に曲げた部分を第1コイルエンド群とし、端末部同士を接続した部分を第2コイルエンド群としている。セグメント導体の端末部の表面には、樹脂を塗布して硬化させた絶縁被膜を形成している。
【0004】
絶縁被膜は、粉体樹脂又は粘性の高い樹脂によって形成されて端末部の先端部表面を覆う第1絶縁被膜と、この第1絶縁被膜の樹脂よりも粘性の低い樹脂によって形成されて第1絶縁被膜の表面を覆う第2絶縁被膜とから構成している。
【0005】
セグメント導体の端末部を第1絶縁被膜と第2絶縁被膜で覆った後、固定子を傾斜した状態で回転させ、第1コイルエンド群の上方から第2絶縁被膜と同じ材料の絶縁樹脂を滴下させ、この絶縁樹脂を第1コイルエンド群から第2コイルエンド群まで浸透させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術においては、第1コイルエンド群を構成するセグメント導体の端末部を材料の異なる2つの樹脂で覆うようにしているので、樹脂を付着させる槽を複数用意し、それぞれの槽で樹脂を付着させなければならず、作業効率の低下を招くといった課題があった。
【0008】
また、特許文献1に記載の技術においては、第1コイルエンド群の上方から第2絶縁被膜と同じ材料の絶縁樹脂を滴下させているが、絶縁樹脂が第2コイルエンド群の外方にはみ出して硬化し氷柱状となり、固定子の寸法精度が不安定になるといった課題があった。
【0009】
本発明の目的は、コイルエンドの塗装工程の作業効率を向上させ、固定子の寸法精度を安定化させた回転電機の固定子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、複数のスロットを備えた固定子コアと、前記複数のスロットに挿入され、端部が前記固定子コアから軸方向外側に突出して他の前記端部と接合する接合部を備えた複数の固定子コイルと、前記接合部を被覆する第1樹脂と、前記固定子コイルを前記スロット内に固定する第2樹脂と、を備える回転電機の固定子であって、前記第1樹脂は、前記接合部を覆う第1被覆部と、前記第1被覆部の一部を覆う第2被覆部を備え、前記第1被覆部と前記第2被覆部との境界部は、前記第2樹脂を受ける段差形状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コイルエンドの塗装工程の作業効率を向上させ、固定子の寸法精度を安定化させた回転電機の固定子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る回転電機100を軸方向に沿って切断した断面図である
【
図2】
図1をII-II線で断面した断面図である。
【
図3】本発明の実施例に係る固定子110の斜視図である。
【
図4】固定子110の一部を切り取った概略図である。
【
図5】本発明の実施例に係る固定子の絶縁処理作業工程を示す概略図である。
【
図6】
図5の絶縁処理作業工程のフローチャートである。
【
図7】第1樹脂による第1被覆部210aを形成した状態を示す第2コイルエンド114bの概略断面図である。
【
図8】第1樹脂による第2被覆部210bを形成した状態を示す第2コイルエンド114bの概略断面図である。
【
図9】固定子110を上下反転させ第2被覆部210bが第2コイルエンド114bから第1コイルエンド側へ移動する状態を示す第2コイルエンド114bの概略断面図である。
【
図10】塗布した第2樹脂が第2コイルエンド114bの到達した状態を示す第2コイルエンド114bの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、同一の要素については、全ての図において、原則として同一の符号を付している。また、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。なお、以下に説明する構成はあくまで実施例に過ぎず、本発明に係る実施様態が、以下の具体的様態に限定されることを意図する趣旨ではない。
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る回転電機100を軸方向に沿って切断した断面図である。なお、
図1では、回転軸中心を境として一方側のみを断面としている。
図2は、
図1をII-II線で断面した断面図である。なお、
図2では、固定子110及び回転子120のみを示している。また、固定子コイル114を省略している。
【0015】
回転電機100は、固定子110と、固定子110の内周側に配置され、永久磁石を内蔵した回転子120を備えている。
【0016】
固定子110は、薄板状の複数の電磁鋼板を積層して形成された固定子コア111と、固定子コアに形成された複数のスロット112と、隣り合うスロット112の間のそれぞれに形成された複数のティース113と、複数のスロット112に挿入され、複数のティース113のそれぞれに巻装された固定子コイル114と、を備えている。固定子110は、固定子110の外周側を覆うハウジング130に固定されている。ハウジング130は軸方向両側が開放されている。
【0017】
回転子120は、薄板状の複数の電磁鋼板を積層して形成された回転子コア121と、回転子コア121の軸方向に向かって貫通された複数の磁石挿入孔122と、複数の磁石挿入孔122のそれぞれに挿入された複数の永久磁石123と、回転子コア121の軸方向両側端部に配置され、永久磁石123の抜け出しを防止する端板124a,124bと、回転子コア121の中央部に一体的に形成された回転シャフト125と、を備えている。磁石挿入孔122は回転子コア121の周方向に沿って等間隔に複数配置されている。永久磁石123は、直方体形状をしており、磁石挿入孔122に挿入された後、磁石挿入孔122に接着剤を流し込むことにより、磁石挿入孔122内で固定される。磁石挿入孔122の円周方向の幅は、永久磁石123の円周方向の幅よりも大きく形成されており、永久磁石123の両側には磁気的空隙126が形成されている。この磁気的空隙126は接着剤を埋め込んでも良いし、樹脂で永久磁石123と一体に固めても良い。
【0018】
永久磁石123の磁化方向は径方向を向いており、界磁極ごとに磁化方向の向きが反転している。すなわち、ある磁極を形成するための永久磁石123の固定子110側の面がN極、回転シャフト125側の面がS極であったならば、隣の磁極を形成する永久磁石123の固定子110側の面はS極、回転シャフト125側の面はN極となっている。本実施例では、8個の永久磁石123が円周方向に等間隔で磁極毎に交互に磁化方向が変わるように磁化されて配置されており、回転子120は8極を形成している。
【0019】
ハウジング130の軸方向両側の開放部は、エンドブラケット131a,131bによって閉塞され、固定子110及び回転子120の軸方向両側がこのエンドブラケット131a,131bによって覆われている。エンドブラケット131aの中央部は貫通しており、この貫通した部分から回転シャフト125が突出している。
【0020】
エンドブラケット131a,131bには、それぞれ軸受132a,132bが備えられており、この軸受132a,132bで回転シャフト125を軸支することにより、回転子120が固定子110の内周側で回転可能に保持される。なお、固定子110と回転子120との間には隙間150が形成されている。
【0021】
本実施例の回転電機100は、三相電機モータであり、例えば自動車などの車両に搭載される。固定子コイル114に三相交流電流が供給されると回転子120が回転する電動機として作動する。またエンジンによって回転電機100が駆動されると、三相交流を発電する発電機として作動する。
【0022】
回転シャフト125には、回転子120の極の位置や回転速度を検出するレゾルバ160が設けられている。
【0023】
固定子110の構成ついてさらに説明する。
図3は、本発明の実施例に係る固定子110の斜視図である。
図4は、固定子110の一部を切り取った概略図である。
図3及び
図4では、矢印で示す方向を上・下と称する。
【0024】
固定子コイル114は平角線をU字状に曲げて構成され、スロット112内に挿入される。
【0025】
固定子コイル114には平角線が用いられ、固定子コイル114は分布巻の方式で巻かれている。分布巻とは、複数のスロット112を跨いで離間したスロット112に固定子コイル114が収納される巻線方式である。断面が矩形状の平角線を、予めフォーム成型などを用いてU字形状に成型し、その固定子コイル114を絶縁紙115が設けられたスロット112に沿って挿入する。そして、固定子コイル114のU字形状の直線部を、複数のスロット112を跨ぐ離間した2つのスロット112に挿入する。
【0026】
その後、固定子コア111の軸方向下側(軸方向外側)から突出した直線部114cを捻り成形し、その端部114dを同様に捻り成形した他の固定子コイル114の端部114dと溶接等により接合し、第2コイルエンド114b(接合部)を形成する。また、固定子コア111の軸方向上側から突出したU字部は第1コイルエンド114aを形成する。このように複数の固定子コイル114を固定子コア111のスロット112に挿入し、それらを接続することで1つの相巻線が形成される。
【0027】
固定子コイル114では、絶縁処理のため表面が薄い絶縁樹脂層で覆われ、絶縁処理が施されている。ただし、固定子コイル114の端部114dは、他の固定子コイル114の端部114dと溶接するため、絶縁樹脂層が剥ぎ取られている。絶縁樹脂層が剥ぎ取られた部分は、固定子コイル114の端部114d同士を溶接して第2コイルエンド114b(接合部)を形成した後、絶縁処理のための粉体塗装が施される。さらに、固定子110では、第2コイルエンド114bへ粉体塗装を施した後、固定子コア111のスロット112に絶縁樹脂を浸透させる。以下、これらの工程について
図5から
図10を用いて説明する。
【0028】
図5は、本発明の実施例に係る固定子の絶縁処理作業工程を示す概略図である。
図6は、
図5の絶縁処理作業工程のフローチャートである。
図7は、第1樹脂による第1被覆部210aを形成した状態を示す第2コイルエンド114bの概略断面図である。
図8は、第1樹脂による第2被覆部210bを形成した状態を示す第2コイルエンド114bの概略断面図である。
図9は、固定子110を上下反転させ第2被覆部210bが第2コイルエンド114bから第1コイルエンド側へ移動する状態を示す第2コイルエンド114bの概略断面図である。
図10は、塗布した第2樹脂が第2コイルエンド114bの到達した状態を示す第2コイルエンド114bの概略断面図である。
【0029】
第1被覆部210a及び第2被覆部210bは粉体塗装で形成する。粉体塗装とは、細かく粉砕して粉状にした塗料(粉体塗料)を、塗装対象物に直接付着させ、高温で溶かしてから、乾燥させて固めることで塗膜を形成するものである。
【0030】
本実施例では、以下のように粉体塗装を用いて第1被覆部210aを形成後、第1被覆部210aを覆うように粉体塗装を用いて第2被覆部210bを形成する。
【0031】
図5に示すように粉体樹脂層200には、エポキシ樹脂などを主成分とした粉末状の熱硬化性樹脂(粉体樹脂210)が蓄積されている。
【0032】
第2コイルエンド114b(接合部)を加熱手段で加熱した後、第2コイルエンド114b(接合部)を粉体樹脂層200に浸漬し、粉体樹脂210(第1樹脂)を付着させ第1被覆部210aを形成する(
図5a)(
図6のステップS301:第1樹脂による第1被覆部形成工程)。粉体樹脂層200に蓄積された粉体樹脂210は、加熱された第2コイルエンド114bの熱によって溶かされ、
図7に示すように第2コイルエンド114bを覆うように付着し、第1被覆部210aを形成する。
【0033】
次に、第2コイルエンド114bを粉体樹脂層200から引き上げ、載置台300に載置後、第1被覆部210aを形成する粉体樹脂210を乾燥させて硬化させる(
図5b)(
図6のステップS302:第1被覆部210aの乾燥硬化工程)。
【0034】
次に、第2コイルエンド114b(接合部)を加熱し、第1被覆部形成工程の浸漬深さよりも浅い浸漬深さにて第2コイルエンド114bを粉体樹脂層200に浸漬し、粉体樹脂210(第1樹脂)を付着させ第2被覆部210bを形成する(
図5c)(
図6のステップS303:第1樹脂による第2被覆部形成工程)。粉体樹脂層200に蓄積された粉体樹脂210は、加熱された第2コイルエンド114bの熱によって溶かされ、
図8に示すように第1被覆部210aの一部を覆うように付着し、第2被覆部210bを形成する。なお、第2被覆部形成工程では、第1被覆部形成工程と同じ粉体樹脂層200を用い、同じ粉体樹脂210で被覆部を形成している。また、第2被覆部210bの厚さは第1被覆部210aの厚さよりも厚くしている。
【0035】
次に、第2コイルエンド114bを粉体樹脂層200から引き上げ、固定子110を上下反転、すなわち第2コイルエンド114bが上側に位置させる(
図6のステップS304:固定子上下反転工程)。
【0036】
次に、固定子110を上下反転させた状態で載置台300に載置後、第2被覆部210bを形成する粉体樹脂210を乾燥させて硬化させる(
図5d)(
図6のステップS305:第2被覆部210bの乾燥硬化工程)。
図9に示すように、固定子110を上下反転させると、矢印で示すように第2被覆部210bが第2コイルエンド114b側から第1コイルエンド側へ移動し、第2被覆部210bが乾燥硬化することにより、第2被覆部210bの先端部210b1が第1被覆部210aの先端部210a1よりも第2コイルエンド114b側の位置で止まる。そして、第1被覆部210aと第2被覆部210b(第2被覆部210bの先端部210b1)との境界部は段差形状となり、段差部211が形成される。この段差部211は、後述するように絶縁ワニス220(第2樹脂)を受ける機能を有する。
【0037】
次に、固定子110の上下反転状態を元に戻し、固定子110を回転治具310に装着する。固定子110を回転治具310に装着後、固定子110を傾斜させた状態で回転させ、固定子コイル114の第1コイルエンド114aの上部から絶縁ワニス220(第2樹脂)を塗布する(
図5e)(
図6のステップS306:第2樹脂塗布工程)。絶縁ワニス220(第2樹脂)は、樹脂を溶剤で溶かした液状樹脂であり、ノズル320から滴下して固定子コイル114に塗布する。
【0038】
次に、固定子110を載置台300に載置後、絶縁ワニス220(第2樹脂)を乾燥させて硬化させ、固定子コア111のスロット112内に固定子コイル114を固定する(
図5f)(
図6のステップS307:第2樹脂による固定子コイル固定工程)。
【0039】
回転電機100では、上述したように固定子コア111のスロット112内に固定子コイル114を固定するため、固定子コイル114の第1コイルエンド114aの上部から絶縁ワニス220(第2樹脂)を塗布している。
【0040】
第1コイルエンド114aの上部から塗布した絶縁ワニス220は、固定子コア111のスロット112と、固定子コイル114との間に流れ、乾燥硬化することにより、固定子コイル114を固定子コア111のスロット112内に固定する。絶縁ワニス220の一部は、固定子コア111のスロット112を通り抜け、第2コイルエンド114b側に流れる。さらに第2コイルエンド114bに達すると、絶縁ワニス220が第2コイルエンド114bの外方にはみ出して硬化し氷柱状となり、固定子の寸法精度が不安定になるといった課題があった。
【0041】
そこで本実施例では、第1被覆部210aと第2被覆部210bとの境界部を、絶縁ワニス220(第2樹脂)を受ける段差形状とした段差部211を設けている。
【0042】
図10に示すように、固定子コア111のスロット112を通り抜けた一部の絶縁ワニス220aは、第1被覆部210aの表面を流れ、第2被覆部210bに達する。第1被覆部210aと第2被覆部210bとの境界部は段差形状をなしているので、固定子コア111のスロット112を通り抜けた一部の絶縁ワニス220aは、段差部211で堰き止められる。これにより、絶縁ワニス220aが第2コイルエンド114bの外方にはみ出して硬化し氷柱状となることを抑制できる。
【0043】
固定子コア111のスロット112を通り抜ける絶縁ワニス220は一部であるので、例えば、
図10の左側では絶縁ワニス220aが段差部211で堰き止められているが、
図10の右側では絶縁ワニス220aが段差部211に達していない。このため、第2被覆部210bにおける絶縁ワニス220a(第2樹脂)の付着率は、境界部(段差部211)における絶縁ワニス220a(第2樹脂)の付着率よりも低くなっている。
【0044】
本実施例によれば、第1被覆部210aと第2被覆部210bとの境界部は段差形状をなしているので、固定子コア111のスロット112を通り抜けた一部の絶縁ワニス220aを段差部211で堰き止め、絶縁ワニス220aが第2コイルエンド114bの外方にはみ出して硬化し氷柱状となることを抑制できる。このため、本実施例では固定子の寸法精度を安定化させることができる。また、第1被覆部210aと第2被覆部210bは、同じ粉体樹脂層200に蓄積された粉体樹脂210(第1樹脂)で形成しるようにしているので、コイルエンドの塗装工程の作業効率を向上させることができる。
【0045】
さらに、本実施例では、第1被覆部210aを第2被覆部210bで覆うようにしているので、第1被覆部210aで発生したピンホールを第2被覆部210bで塞ぐことができる。
【0046】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成を置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
100…回転電機、110…固定子、111…固定子コア、112…スロット、113…ティース、114…固定子コイル、114a…第1コイルエンド、114b…第2コイルエンド(接合部)、114c…直線部、114d…端部、115…絶縁紙、120…回転子、121…回転子コア、122…磁石挿入孔、123…永久磁石、124a,124b…端板、125…回転シャフト、130…ハウジング、131a,131b…エンドブラケット、132a,132b…軸受、150…隙間、160…レゾルバ、200…粉体樹脂層、210…粉体樹脂(第1樹脂)、210a…第1被覆部、210a1…先端部、210b…第2被覆部、210b1…先端部、211…段差部、220,220a…絶縁ワニス(第2樹脂)、300…載置台、310…回転治具、320…ノズル