(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075923
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】コンロバーナの混合管構成部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
F24C 3/08 20060101AFI20240529BHJP
F23D 14/62 20060101ALI20240529BHJP
F24C 3/02 20210101ALI20240529BHJP
【FI】
F24C3/08 Q
F23D14/62
F24C3/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187191
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】堀江 勇気
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017CA10
3K017CB08
3K017CB11
3K017CE03
(57)【要約】
【課題】金属板に加工を施してコンロバーナの混合管構成部材を製造する場合に、所定の膨出部の上壁部に隆起部が形成されないようにしつつ、干渉回避などに役立つ切欠き状壁部を適切に形成可能なコンロバーナの混合管構成部材の製造方法を提供する。
【解決手段】原材料としての金属板3Aに深絞り加工を施し、所定の膨出部4を形成する膨出部形成工程と、膨出部4の周壁部40の上部の周方向の一部を、周壁部40の他の部分よりも水平に近い傾斜角で傾斜した側面視切欠き状の切欠き状壁部45とする切欠き状壁部形成工程と、を有している、コンロバーナの混合管構成部材MUの製造方法であって、前記膨出部形成工程の実行時において、パンチ7として、切欠き状壁部45に対応する切欠き部70が形成されているものを使用し、ダイ8として、パンチ7の切欠き部70に対応せず、筒状に形成されているものを用いる工程を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチおよびダイを使用して、原材料としての金属板に深絞り加工を施し、前記金属板の板状領域から上向きに起立した筒状の周壁部およびこの周壁部の上部に繋がった上壁部を有する膨出部を形成する膨出部形成工程と、
前記周壁部の上部の周方向の一部を、側面視切欠き状の切欠き状壁部とする切欠き状壁部形成工程と、
を有している、コンロバーナの混合管構成部材の製造方法であって、
前記膨出部形成工程の実行時において、前記パンチとして、前記切欠き状壁部に対応する切欠き部が形成されているものを使用し、前記ダイとして、前記パンチの前記切欠き部に対応せず、筒状に形成されているものを用いる工程を含むことを特徴とする、コンロバーナの混合管構成部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンロバーナの混合管構成部材の製造方法であって、
前記膨出部形成工程における前記深絞り加工は、複数回実行し、その実行の都度、前記膨出部のサイズを最終目標のサイズに近づけるように変化させていき、
少なくとも最終回の深絞り加工時においては、前記パンチとして、前記切欠き部が形成されているパンチを用いる、コンロバーナの混合管構成部材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンロバーナの混合管構成部材の製造方法であって、
前記切欠き状壁部形成工程は、前記膨出部形成工程の後に実行され、前記パンチとして、前記切欠き部が形成されているパンチを用いるとともに、前記ダイとして、前記パンチの前記切欠き部に対応する突出部が形成されているものを用いる、コンロバーナの混合管構成部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のコンロバーナの混合管構成部材の製造方法であって、
前記膨出部形成工程の後において、前記上壁部に、下向きに突出した筒状のバーリング部が周縁部に位置するバーリング孔部を形成するバーリング孔部形成工程を、さらに有しているとともに、
前記バーリング孔部形成工程の前に実行される工程として、
前記膨出部の前記上壁部の中央寄り領域に、下側凸状かつ上側凹状の段押し部を形成する段押し工程と、
前記段押し部に、前記段押し部および前記バーリング孔部よりも小径の下孔を設ける下孔加工工程と、
さらに有しており、
前記バーリング孔部形成工程においては、前記段押し部に前記バーリング孔部を設け、かつ前記段押し部の一部を前記バーリング部として形成する、コンロバーナの混合管構成部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンロバーナの混合管構成部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンロバーナは、たとえば特許文献1~3などに記載されているように、一般的には、混合管を備えた構成とされている。混合管は、バーナキャップに設けられている複数の炎孔に、燃料ガスと空気との混合気を導くための部材であり、この混合管の上側にバーナキャップが載せられるのが通例である。
このようなコンロバーナの混合管は、たとえばアルミダイキャストなどとされるが、これではその製造コストが高価となる。
混合管の製造コストを低減するための手段としては、たとえば金属板にプレス加工を施すことにより、混合管の構成部材を形成する手段が考えられる。
【0003】
しかしながら、前記手段を採用した場合には、次に述べるように改善すべき課題がある。
【0004】
すなわち、混合管の構成部材を、金属板を用いて構成する場合において、この金属板の一部を上向き起立状の膨出部として形成し、かつこの膨出部の上壁部上に、バーナキャップを載せることが考えられる。この場合、バーナキャップに接近させるようにして、点火プラグを膨出部の横に配置させることとなるが、点火プラグをたとえば斜めに傾斜させ、バーナキャップの炎孔に接近させようとすると、膨出部の周壁部の上部と点火プラグとが干渉する虞がある。この虞を解消する手段として、膨出部の周壁部の上部に、側面視切欠き状の壁部(切欠き状壁部)を形成することが考えられる。
ただし、このような切欠き状壁部を設けると、膨出部の上壁部に隆起部が形成される虞がある(
図11を参照して後述する対比例1も参照)。これでは、膨出部の上壁部上にバーナキャップを載せる際に、前記隆起部が支障となり、バーナキャップを水平姿勢に設定することが困難となる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-21147号公報
【特許文献2】特許第3739915号公報
【特許文献3】特開2019-27669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、金属板に加工を施してコンロバーナの混合管構成部材を製造する場合において、所定の膨出部の上壁部に隆起部が形成されないようにしつつ、干渉回避などに役立つ切欠き状壁部を膨出部の周壁部に適切に形成することが可能なコンロバーナの混合管構成部材の製造方法を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供されるコンロバーナの混合管構成部材の製造方法は、パンチおよびダイを使用して、原材料としての金属板に深絞り加工を施し、前記金属板の板状領域から上
向きに起立した筒状の周壁部およびこの周壁部の上部に繋がった上壁部を有する膨出部を形成する膨出部形成工程と、前記周壁部の上部の周方向の一部を、側面視切欠き状の切欠き状壁部とする切欠き状壁部形成工程と、を有している、コンロバーナの混合管構成部材の製造方法であって、前記膨出部形成工程の実行時において、前記パンチとして、前記切欠き状壁部に対応する切欠き部が形成されているものを使用し、前記ダイとして、前記パンチの前記切欠き部に対応せず、筒状に形成されているものを用いる工程を含むことを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、膨出部の周壁部の上部に、側面視切欠き状の切欠き状壁部が形成された混合管構成部材を製造することが可能である。したがって、たとえば前記膨出部の上側にバーナキャップを載せるとともに、膨出部の横に点火プラグを接近させて配置し、前記切欠き状壁部を点火プラグとの干渉回避用(または接近回避用)の部位とすることができる。
また、このような効果に加え、次のような効果がさらに得られる。
すなわち、膨出部形成工程の実行時には、パンチとして、切欠き状壁部に対応する切欠き部を有し、かつダイとして、切欠き部に対応しない筒状のものを用いるため、切欠き状壁部の形成箇所に、大きな負荷・応力がなるべく生じないようにしつつ、その箇所を部分的に窪んだ部分とすることができる。本発明によれば、膨出部の周壁部を外部から押圧することによって切欠き状壁部を形成する必要はなく、膨出部の上壁部には、切欠き状壁部の形成に伴う隆起部が形成されないようにすることが可能である。これは、膨出部の上壁部上に、たとえばバーナキャップを水平姿勢で載せるのに好ましい。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記膨出部形成工程における前記深絞り加工は、複数回実行し、その実行の都度、前記膨出部のサイズを最終目標のサイズに近づけるように変化させていき、少なくとも最終回の深絞り加工時においては、前記パンチとして、前記切欠き部が形成されているパンチを用いる。
【0011】
このような構成によれば、膨出部の各部に大きな応力が生じることをできる限り回避しつつ、膨出部全体を所望の最終目標サイズに仕上げることが可能である。また、最終回の深絞り加工を終えた段階において、膨出部には、パンチの切欠き部に対応した領域を適切に形成することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記切欠き状壁部形成工程は、前記膨出部形成工程の後に実行され、前記パンチとして、前記切欠き部が形成されているパンチを用いるとともに、前記ダイとして、前記パンチの前記切欠き部に対応する突出部が形成されているものを用いる。
【0013】
このような構成によれば、膨出部に設けられる切欠き状壁部を、所望の最終目標サイズに適切に仕上げることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、膨出部形成工程の後において、前記上壁部に、下向きに突出した筒状のバーリング部が周縁部に位置するバーリング孔部を形成するバーリング孔部形成工程を、さらに有しているとともに、前記バーリング孔部形成工程の前に実行される工程として、前記膨出部の前記上壁部の中央寄り領域に、下側凸状かつ上側凹状の段押し部を形成する段押し工程と、前記段押し部に、前記段押し部および前記バーリング孔部よりも小径の下孔を設ける下孔加工工程と、さらに有しており、前記バーリング孔部形成工程においては、前記段押し部に前記バーリング孔部を設け、かつ前記段押し部の一部を前記バーリング部として形成する。
【0015】
このような構成によれば、製造された混合管構成部材の膨出部の上壁部の上に、たとえ
ばバーナキャップを載せた場合に、前記バーリング孔部をバーナキャップに設けられている筒体部、あるいは温度センサなどが挿通される孔部として適切に用いることが可能である。
一方、前記バーリング孔部のバーリング部は、膨出部の上壁部に形成した段押し部の一部を利用して形成したものであるため、バーリング部の薄肉化を抑制し、割れなどを生じ難いものとすることができる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は、コンロバーナの一例を示す要部概略断面図であって、本図に示すコンロバーナの上下一対の混合管構成部材のうち、上側の混合管構成部材は、本発明に係る製造方法の製造対象の一例に相当し、(b)は、(a)のIb-Ib断面図である。
【
図2】
図1に示すコンロバーナの上下一対の混合管構成部材の概略斜視図である。
【
図3】(a)は、
図1および
図2に示した上側の混合管構成部材の断面図であり、(b)は、(a)のIIIb-IIIb断面図である。
【
図4】(a)は、
図1および
図2に示した下側の混合管構成部材の断面図であり、(b)は、(a)の平面図であり、(c)は、(a)のIVc-IVc断面図である。
【
図5】本発明の製造方法により混合管構成部材を製造する場合の第1工程の例を示し、(a)は斜視図であり、(b)は、その断面図である。
【
図6】本発明の製造方法により混合管構成部材を製造する場合の第2工程の例を示し、(a)は斜視図であり、(b)は、その断面図であり、(c)は、パンチおよびダイを用いた深絞り状態の例を示す要部断面図であり、(d)は、(c)の一部拡大断面図である。
【
図7】本発明の製造方法により混合管構成部材を製造する場合の第3工程の例を示し、(a)は斜視図であり、(b)は、その断面図であり、(c)は、パンチおよびダイを用いた深絞り状態の例を示す要部断面図であり、(d)は、(c)に示したパンチおよびダイの開状態の要部断面図である。
【
図8】本発明の製造方法により混合管構成部材を製造する場合の第4工程の例を示し、(a)は斜視図であり、(b)は、その断面図である。
【
図9】本発明の製造方法により混合管構成部材を製造する場合の第5工程の例を示し、(a)は斜視図であり、(b)は、その断面図である。
【
図10】本発明の製造方法により混合管構成部材を製造する場合の第6工程の例を示す断面図である。
【
図11】(a),(b)は、本発明との対比例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
まず、理解の容易のため、
図1に示すコンロバーナBの構成を説明する。本実施形態においては、コンロバーナBの後述する上側の混合管構成部材MUが、製造対象である。
【0020】
コンロバーナBは、混合管M、バーナキャップ50、温度センサ53、点火プラグ51、およびガスノズル52を備えている。混合管Mは、上側および下側の一対の混合管構成部材MU,MLが組み合わされることにより構成されており、混合気流路6を形成している。ガスノズル52からは混合気流路6の管状流路部6a内に向けて給気口60付近から燃料ガスが噴出される。すると、これに伴って混合気流路6内には、給気口60から1次空気が流入し、この1次空気と前記燃料ガスとの混合気が、混合気流路6内を進行し、最終的にはバーナキャップ50のヘッド部50aに設けられた複数の炎孔50bに導かれる
。これら複数の炎孔50bから外部に流出する混合気中の燃料ガスは、点火プラグ51により点火され、燃焼する。
【0021】
上側の混合管構成部材MUは、たとえばステンレス鋼板などの金属板にプレス加工を施すことにより形成されたものである。この混合管構成部材MUは、
図2および
図3によく表われているように、膨出部4および上向き凸状部30を備えている。膨出部4は、板状領域3から上向きに起立した筒状の周壁部40、およびこの周壁部40の上部に繋がった上壁部41を備えており、かつその上壁部41にバーリング孔部43が設けられている。上向き凸状部30は、管状流路部6aの上側壁部を構成し、かつ下面側に凹溝部30aを形成する断面略半円状である。
【0022】
膨出部4は、バーナキャップ50の支持台として機能する。バーリング孔部43(および後述のバーリング孔部23も)は、バーナキャップ50の筒体部50cおよび温度センサ53の挿通ガイド孔部として利用される。バーリング孔部43のバーリング部44とバーナキャップ50の筒体部50cとの相互間には、隙間があり、混合気流路6の後述するチャンバ61の第2領域61bに供給された混合気は、その隙間を通過することによりバーナキャップ50の炎孔50bに導かれる。バーリング孔部43の一部には、切欠き部49が形成されているが、これはバーナキャップ50の位置決めなどに利用される。
【0023】
さらに、膨出部4の周壁部40の上部には、側面視切欠き状の切欠き状壁部45が形成されている。この切欠き状壁部45は、周壁部40の上部の周方向の一部が、側面視において切欠かれたように部分的に窪んだ形態の部分である。この切欠き状壁部45の外面部は、平面状、曲面状のいずれでもよい。
図1に示すように、この切欠き状壁部45は、点火プラグ51と膨出部4との干渉を回避するための部位(または接近状態を回避するための部位)として役立つ。
【0024】
一方の下側の混合管構成部材MLは、上側の混合管構成部材MUと同様に、ステンレス鋼板などの金属板にプレス加工を施すことにより形成されたものである。この混合管構成部材MLは、
図2および
図4によく表われているように、膨出部2および下向き凸状部10を備えている。膨出部2は、板状領域1から上向きに起立した筒状の周壁部20およびこの周壁部20の上部に繋がった上壁部21を備えており、かつその上壁部21にバーリング孔部23が設けられている。下向き凸状部10は、管状流路部6aの下側壁部を構成し、かつ上面側に凹溝部10aを形成する断面略半円状である。
【0025】
膨出部2は、
図1に示すように、上側の混合管構成部材MUの膨出部4の下部に嵌入されることにより、これら2つの膨出部2,4の相互間に、混合気流路6のチャンバ61を形成する部位である。なお、チャンバ61は、2つの膨出部2,4の周壁部20,40に挟まれている第1領域61aに加え、2つの膨出部2,4の上壁部21,41に挟まれている第2領域61bを含む。膨出部2の周壁部20には、上下高さ方向に傾斜して延びた一対の段部22(
図2,
図4を参照)が形成されている。2つの周壁部20,40の相互間のうち、一対の段部22よりも管状流路部6a寄りの部位には、チャンバ61の第1領域61aが形成され、この第1領域61aを介してチャンバ61の第2領域61bと管状流路部6aとは連通する。
【0026】
膨出部2は、周壁部20の上部に繋がった上壁部21を備えているが、この上壁部21には、バーリング孔部23が設けられている。このバーリング孔部23は、その周縁部から円筒状のバーリング部24が下向きに突出した部位である。このバーリング孔部23には、
図1に示すように、バーナキャップ50の筒体部50cが嵌入される。この嵌入部分には混合気が下方に漏出しないようにするための気密シール性が求められるため、好ましくは、その上下幅Laは、比較的長い寸法とされる。
【0027】
図5~
図10は、前記した上側の混合管構成部材MUの製造方法の一例として、第1~第6工程をそれぞれ示している。本実施形態においては、それらの工程が順次実行される。
ここで、
第1,第2工程は、本発明でいう「膨出部形成工程」の具体例に相当する。
第3工程は、本発明でいう「切欠き状壁部形成工程」および「段押し工程」の具体例に相当する。
第4工程は、「段押し工程」の具体例に相当する。
第5工程は、「下孔加工工程」の具体例に相当する。
第6工程は、「バーリング孔部形成工程」の具体例に相当する。
【0028】
上側の混合管構成部材MUを製造するには、
図5の第1工程がまず実行される。
この第1工程においては、平板状の金属板3Aに深絞り加工を施し、途中段階の膨出部4Aを形成する。この途中段階の膨出部4Aは、最終仕上げ状態の膨出部4(
図1~
図3に示した最終仕上げ状態の膨出部4)の元となる膨出部であり、板状領域3から上向きに起立した周壁部40および上壁部41を有している。
ただし、この途中段階の膨出部4Aは、最終仕上げ状態の膨出部4よりも高さが低く、かつ直径はやや大きめである。最終仕上げ状態の膨出部4は、たとえば下側の混合管構成部材MLの膨出部2と比較しても高さが高く(
図1を参照)、一度の深絞り加工では形成が難しい。このようなことを考慮し、途中段階の膨出部4Aを先ず形成している。第1工程の深絞り加工において使用するパンチおよびダイは、一般の深絞り加工に用いられるものと同様であり、その図示説明は省略する。
なお、この第1工程は、次の第2工程を実施する前段階の工程として、複数回繰り返して実行し、その繰り返しの都度、膨出部4Aを第2工程の実行に適する形状およびサイズに順次近づけるように変化させるようにしてもよい。
【0029】
図6の第2工程においては、第1工程によって形成された膨出部4Aにさらに深絞り加工を施し、膨出部4’を形成する。この膨出部4’は、膨出部4Aよりも高さが高く、かつ周壁部40の上部には、初期切欠き状壁部45aが形成された構成である。初期切欠き状壁部45aは、切欠き状壁部45の初期形態部位(原型となる部位)である。
【0030】
図6(c),(d)に示すように、この第2工程における深絞り加工用のパンチ7としては、その外周面の先端部寄りの部位に、切欠き部70が形成されたものが用いられる。この切欠き部70は、膨出部4’の周壁部40のうち、切欠き状壁部45の形成対象部位を積極的に押圧しないようにするための部位である。ダイ8については、パンチ7の切欠き部70に対応した箇所に、部分的な凸部が設けられた構成とはされておらず、一般の深絞り用のもの(筒状のもの)と同様な構成である。図中、符号79aは、ワーク押さえ部材を示す(
図7(c)の符号79bも同様)。
一般の深絞り加工によれば、膨出部4’の周壁部40の一部は、たとえば
図6(d)の仮想線で示す形態に形成される。これに対し、本実施形態の第2工程によれば、切欠き部70に対応した部分は、前記仮想線で示す形態よりも内側に位置する形態となり、初期切欠き状壁部45aが形成される。
【0031】
図7の第3工程においては、第2工程によって形成された膨出部4’にさらに深絞り加工を施し、周壁部40および切欠き状壁部45が最終仕上げされた膨出部4を形成する。また、膨出部4の上壁部41には、段押し部41bを形成するとともに、板状領域3には、上向き凸状部30の一部30’も形成する。段押し部41bは、膨出部4の上壁部41の中央寄り領域に設けられた下側凸状かつ上側凹状の部位である。
【0032】
図7(c),(d)に示すように、この第3工程における深絞り加工用のパンチ7Aおよびダイ8Aとしては、切欠き部70および突出部80を備えたものが用いられる。パンチ7Aの切欠き部70は、膨出部4の周壁部40のうち、切欠き状壁部45の形成対象部位(既に、初期切欠き状壁部45aが形成されている部位)を積極的に押圧するための部位である。ただし、このパンチ7Aの切欠き部70としては、
図6に示したパンチ7の切欠き部70と同一の形状、サイズとすることが可能であり、本実施形態では、そのような構成とされている。
ダイ8Aの突出部80は、パンチ7Aの切欠き部70との相互間において周壁部40の一部を挟むことが可能に突出した部位である。
前記したパンチ7Aおよびダイ8Aを利用した深絞り加工によれば、膨出部4の周壁部40に、最終仕上げ状態の切欠き状壁部45を形成することができる。
なお、パンチ7Aおよびダイ8Aには、段押し部41bを形成するための凹部78および凸状部88の組み合わせ、ならびに上向き凸状部30の一部30’を形成するための凸部77および凹部87の組み合わせも設けられている。
【0033】
図8の第4工程においては、膨出部4の上壁部41の段押し部41b、および上向き凸状部30のそれぞれを、最終目標とする形状およびサイズに成形する仕上げ加工を施す。段押し部41bは、既述したとおり、膨出部4の上壁部41の中央寄り領域に設けられており、下側凸状かつ上側凹状である。
【0034】
図9の第5工程においては、段押し部41bに、バーリング孔部43の下孔43aを形成する。この下孔43aは、段押し部41bおよびバーリング孔部43よりも小径である。なお、この第5工程においては、切欠き部49の形成を容易にするためのスリット49aも形成する。
【0035】
図10の第6工程においては、膨出部4の上壁部41の段押し部41bに、下孔43aよりもやや大径のバーリング孔部43を形成する。その際、段押し部41bのうち、下孔43aの外周に存在していた残余部分を下向きに押圧し、バーリング部44として形成する。この第6工程においては、上壁部41のスリット49aが形成されていた箇所を、切欠き部49とする加工も行なう。
【0036】
前記した一連の工程により、
図2,
図3などに示した上側の混合管構成部材MUを適切に製造することが可能である。
前記した製造工程によれば、膨出部4の上壁部41上に、隆起部が形成されないようにすることができる。
【0037】
図11は、本実施形態との対比例1を示す。この対比例1においては、膨出部4を形成した後に、この膨出部4の上部を外部から押圧することにより、切欠き状壁部45eを形成している。このような手段によれば、切欠き状壁部45eの一部が、膨出部4の上壁部41上に、適当な寸法Lbだけ隆起した形態となり、上壁部41上にバーナキャップ50を適切に載せることが困難となる。これに対し、本実施形態によれば、そのような虞を回避することが可能である。
【0038】
また、本実施形態によれば、
図7に示した第3工程において、パンチ7Aの切欠き部70と、ダイ8Aの突出部80とを利用し、切欠き状壁部45を挟圧して形成しており、この切欠き状壁部45を最終的には所望の形状・サイズに正確に仕上げている。ただし、その前段階の第2工程においては、初期切欠き状壁部45aの形成に際して、パンチ7とダイ8との両者によって切欠き状壁部45の形成対象領域を強く挟圧しないようにしている。したがって、切欠き状壁部45の形成対象領域に過大な応力を生じさせないようにすることも可能である。
【0039】
さらに、バーリング孔部43を形成するための手法としては、膨出部4の上壁部41に段押し部41bを形成した上で、この段押し部41bの一部をバーリング部44として形成している。このため、バーリング部44の薄肉化を抑制し、バーリング部44に割れなどを生じ難くする効果が得られる。
【0040】
本発明の内容は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るコンロバーナの混合管構成部材の製造方法の各工程の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に変更自在である。
【0041】
上述の実施形態においては、前記第2工程、第3工程の計2工程を経て、膨出部の周壁部に側面視切欠き状の切欠き状壁部を形成したが、本発明はこれに限定されない。1工程のみ、あるいは3以上の工程を経て切欠き状壁部を形成してもよい。
膨出部や切欠き状壁部など、製造対象となる混合管構成部材の各部の具体的な形状・サイズも限定されない。
【符号の説明】
【0042】
B コンロバーナ
M 混合管
MU 混合管構成部材(上側の混合管構成部材)
3 板状領域
3A 金属板
4 膨出部
40 周壁部
41 上壁部
41b 段押し部
43 バーリング孔部
43a 下孔(バーリング孔部の)
44 バーリング部
45 切欠き状壁部
45a 初期切欠き状壁部
7,7A パンチ
70 切欠き部(パンチの)
8,8A ダイ