(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075926
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】シートパッドの成形型
(51)【国際特許分類】
A47C 27/14 20060101AFI20240529BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A47C27/14 A
A47C27/14 C
A47C7/74 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187198
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 悟
【テーマコード(参考)】
3B084
3B096
【Fターム(参考)】
3B084JG02
3B084JG04
3B096AC12
3B096AD06
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】シートパッドの通風性やダクトの成形型への組付性及び離型性を損なうことなく、成形漏れを適切に防止できる成形型を提供すること。
【解決手段】シートパッドの成形型4は、パッド本体と一体成形されるダクト材40が重ね合わせ状にセットされる成形面72を備えた上型70と、上型70に型締めされてダクト材40との間でキャビティCを形成する下型80と、成形面72から突出してダクト材40に形成された通風孔41に通されてパッド本体に通風孔を形成する孔形成突起71とを有する。孔形成突起71が、その通風孔41に通される挿通領域において、突出の基端から先端に向かって外径が先細りとなる先細り部を有する。先細り部が、基端において貫通孔の孔内周面と当接する当接部位と、基端から外れた先端までの領域において孔内周面との間に孔径方向の隙間を形成する非当接部位と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートパッドの成形型であって、
パッド本体と一体成形される裏面材が重ね合わせ状にセットされるセット側成形面を備えたセット型と、
該セット型に型締めされて前記裏面材との間で前記パッド本体を発泡成形するためのキャビティを形成する相手型と、
前記セット側成形面から突出して前記裏面材に形成された貫通孔に通されて前記パッド本体に通風孔を形成する孔形成突起と、を有し、
前記孔形成突起が、その前記貫通孔に通される挿通領域において、突出の基端から先端に向かって外径が先細りとなる先細り部を有し、
前記先細り部が、前記基端において前記貫通孔の孔内周面と当接する当接部位と、前記基端から外れた前記先端までの領域において前記孔内周面との間に孔径方向の隙間を形成する非当接部位と、を有するシートパッドの成形型。
【請求項2】
請求項1に記載のシートパッドの成形型であって、
前記相手型は、その相手側成形面から突出して型締めにより前記裏面材に突き当てられて前記裏面材を前記セット側成形面に対して押し付ける押さえ部を有するシートパッドの成形型。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシートパッドの成形型であって、
前記非当接部位は、前記孔内周面が前記孔形成突起の前記基端から前記先端に向かって孔径が末広がりとなる末広がり部を有することで、前記孔内周面との間に隙間を形成するシートパッドの成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッドの成形型に関する。詳しくは、パッド裏面に裏面材を一体成形しパッド本体に通風孔を形成するシートパッドの成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パッド内部に通風路を形成するようにパッドと一体成形される筒状のダクトを備えた通風機能付きのシートパッドが開示されている。ダクトは、外層を成す不織布と内層を成す発泡体とが互いに重ねられた二層構造とされる。またダクトは、ダクトはパッド表面に向かって開口する通風孔を有する。ダクトは、その通風孔に成形型の突起部が差し込まれた状態でパッドと一体成形される。その際、内層の発泡体が通風孔と突起部との間に弾性的に押し当てられて隙詰めすることで、通風路への成形漏れが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記シートパッドのダクトは、内側に発泡体を設けることから通風路の内径を十分に確保しにくくなり通風性が悪化する懸念がある。また、発泡体が成形型の突起部に強く押し当てられることで、ダクトの成形型への組付性や成形後の離型性が悪化する懸念がある。そこで、シートパッドの通風性やダクトの成形型への組付性及び離型性を損なうことなく、成形漏れを適切に防止できる成形型を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のシートパッドの成形型は次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明のシートパッドの成形型は、パッド本体と一体成形される裏面材が重ね合わせ状にセットされるセット側成形面を備えたセット型と、セット型に型締めされて裏面材との間でパッド本体を発泡成形するためのキャビティを形成する相手型と、セット側成形面から突出して裏面材に形成された貫通孔に通されてパッド本体に通風孔を形成する孔形成突起と、を有する。孔形成突起が、その貫通孔に通される挿通領域において、突出の基端から先端に向かって外径が先細りとなる先細り部を有する。先細り部が、基端において貫通孔の孔内周面と当接する当接部位と、基端から外れた先端までの領域において孔内周面との間に孔径方向の隙間を形成する非当接部位と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、孔形成突起が当接部位と非当接部位とを有することで、孔形成突起と裏面材の貫通孔の孔内周面とが完全に離間しないようにしつつ、孔形成突起と孔内周面との間に隙間を形成することができる。これにより、パッド本体の発泡成形時に発泡原料が孔内周面に含浸しやすくすることができる。そして含浸した発泡原料が硬化することで、挿通領域における当接部位から先端までの領域に硬化した壁を形成する。このため、孔形成突起の当接部位から基端側に向かう成形漏れを防止できる。また、孔形成突起が先細り部を有することで、裏面材のセット型に対する組み付け性や成形後の離型性を高めることができる。
【0008】
また、本発明のシートパッドの成形型は、更に次のように構成されていても良い。相手型は、その相手側成形面から突出して型締めにより裏面材に突き当てられて裏面材をセット側成形面に対して押し付ける押さえ部を有する。これにより、押さえ部が裏面材をセット側成形面に対して適切に面を合わせるように位置決めできる。このため、裏面材の貫通孔の孔内周面を孔形成突起に対して適切に位置合わせして、孔形成突起の当接部位と非当接部位とを適切に設けることができる。
【0009】
また、本発明のシートパッドの成形型は、更に次のように構成されていても良い。非当接部位は、孔内周面が孔形成突起の基端から先端に向かって孔径が末広がりとなる末広がり部を有することで、孔内周面との間に隙間を形成する。これにより、孔形成突起と裏面材の貫通孔の孔内周面との間に発泡原料が入り込んで硬化するための隙間を形成しやすくなる。また、末広がり部により孔内周面の面積を広くとることができて、発泡原料が孔内周面に対してより含浸しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係るシートパッドの成形型の模式図である。
【
図4】流路蓋を外した状態の下方から見た斜視図である。
【
図6】シートパッドを上方から見た分解斜視図である。
【
図12】ダクト材と裏面材とを上型にセットした状態を示す模式図である。
【
図13】
図9のXIII-XIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1-15を用いて説明する。以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0012】
<第1の実施形態>
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートパッドの成形型について説明する。シートパッドは、自動車用シートのシートクッション1のクッション材を成すクッションパッド2として構成される。成形型は、クッションパッド2のパッド本体10を発泡成形するための成形型4として構成される。成形型4は、
図1に示すように、上型70と下型80とを有する。また成形型4は、上型70及び下型80の型締めにより形成されるキャビティCを有する。
【0013】
キャビティCは、クッションパッド2の外周面を成す。このため、キャビティCにポリウレタン等の発泡原料を流し込んで発泡成形することで、クッションパッド2が成形される。また、
図1に示すように、上型70には、後述するダクト材40と裏面材50とが予めセットされた状態で発泡成形が行われる。これにより、ダクト材40と裏面材50とがパッド本体10と一体成形されるようになっている。
【0014】
<シートクッション1>
シートクッション1は、
図2-3に示すように、上記クッションパッド2と、クッションパッド2の下面を覆うように組み付けられる流路蓋3と、を有する。流路蓋3には、シート空調を行うための不図示のファンが接続される。
【0015】
クッションパッド2は、
図2-4に示すように、着座者の臀部を弾性的に支持するパッド本体10と、パッド本体10のパッド裏面12に沿って延びる凹状の通風路20と、を有する。パッド本体10は、ポリウレタン発泡成形体から成る。通風路20は、シート下方に向かって開口しており、その開口を流路蓋3によって閉じられる構成とされる。またクッションパッド2は、通風路20の所々の箇所からパッド表面11までパッド本体10を貫通する複数の通風孔30を有する。
【0016】
クッションパッド2は、通風路20と通風孔30とにより、ファンの空調が効率良く機能するようになっている。具体的には、ファンがシートクッション1の下方に向かって風を送り出すことで、各通風孔30にパッド表面11側から空気が吸い込まれる。各通風孔30に吸い込まれた風は、通風路20を通って流路蓋3の接続口3aへ流されて、ファンによりシートクッション1の下方に排気される。これにより、パッド本体10に籠る熱を風の流れと共に効率よく外部に逃がしてシートクッション1の快適性を向上させることができる。本実施形態に係るファンは、上述の通りパッド表面11側からパッド裏面12側に向かう風の流れを生じさせる構成としたが、例えばパッド裏面12側から空気を吸い込むことで着座者に向かって直接風を送り出す構成としてもよい。
【0017】
また、クッションパッド2は、
図4-6に示すように、通風路20の内周壁を成すダクト材40と、パッド裏面12に沿って設けられる面状の裏面材50と、を有する。ダクト材40と裏面材50とは、パッド本体10の発泡成形時に一体的に成形される。ダクト材40はプレスフェルトから成り、予め所定の形状にプレス成形されることでパッド本体10よりも硬くなるように構成されている。このため、硬質なダクト材40がパッド本体10と一体成形されることで、クッションパッド2の通風路20周辺の強度を高めることができる。したがって、クッションパッド2に乗員の着座による上方からの荷重が掛けられても、ダクト材40によって通風路20が押し潰されないように形状を保持することができる。これにより、通風路20を通る風の流れが阻害されにくくなり空調性能の悪化を防止することができる。
【0018】
<成形型4>
以下、上述した成形型4及びクッションパッド2の各構成について詳しく説明する。成形型4の上型70は、
図1及び
図12に示すように、成形面72と、成形面72から突出する孔形成突起71と、を有する。成形面72には、パッド本体10の成形前にダクト材40と裏面材50とがそれぞれ重ね合わせ状にセットされる。孔形成突起71は、ダクト材40のセットによりダクト材40を貫通する通風孔41に通されるようになっている。ここで、上型70が本発明の「セット型」に相当する。また、成形面72が本発明の「セット側成形面」に相当する。また、ダクト材40が本発明の「裏面材」に相当する。また、通風孔41が本発明の「貫通孔」に相当する。
【0019】
上型70の孔形成突起71は、突出の基端から先端に向かって先細りとなるように断面台形状に突出した形状とされる。このため、孔形成突起71は、
図15に示すように、通風孔41に通される挿通領域において外径が次第に小さくなる先細り部71aを有する。先細り部71aにより、ダクト材40を成形面72にセットする際に孔形成突起71を通風孔41に通しやすくできて、ダクト材40の上型70に対する組付性を高めることができる。孔形成突起71を、ダクト材40の通風孔41に対して通しやすくすることができる。また、発泡成形後において孔形成突起71に対する離型性を高めることができる。
【0020】
先細り部71aは、
図15に示すように、ダクト材40の通風孔41の孔内周面41aと当接する当接部位71bを有する。具体的には、先細り部71aの基端部分が当接部位71bとされる。また、先細り部71aは、孔内周面41aと当接しない非当接部位71cを有する。具体的には、先細り部71aのうち当接部位71bから外れて先端に向かって突出した領域が非当接部位71cとされる。先細り部71aにより、非当接部位71cと通風孔41の孔内周面41aとの間には、基端から先端に向かって次第に大きくなる隙間S1が形成される。
【0021】
下型80は、成形面83と、成形面83から突出する孔形成突起81と、を有する。孔形成突起81は、
図1に示すように、型締めにより上型70の孔形成突起71と互いの先端部を突き合わされるようになっている。これにより、孔形成突起71と孔形成突起81とは、キャビティC内部に跨って延びる構成とされる。このため、孔形成突起71と孔形成突起81とは、パッド本体10の成形時にパッド本体10を貫通する上述の通風孔30を形成する。また、下型80は、孔形成突起81とは別に成形面83から突出する押さえ部82を有する。押さえ部82は、型締めにより上型70にセットされたダクト材40に下方から突き当たるようになっている。これにより、押さえ部82は、ダクト材40が上型70の成形面72に対して適切に面を合わせるように位置決めすることができる。ここで、下型80が本発明の「相手型」に相当する。また、成形面83が本発明の「相手側成形面」に相当する。
【0022】
<パッド本体10>
クッションパッド2のパッド本体10は、
図7に示すように、パッド表面11に前後又は左右方向に延びる凹状の吊り込み溝13を有する。吊り込み溝13は、その内部にクッションカバー(不図示)を吊り込むためのものである。吊り込み溝13には、例えばホグリング等のフック部材を係止するためのワイヤ(不図示)が設けられる。クッションカバーを吊り込み溝13に吊り込んだ状態で上記フック部材によりワイヤに固定することで、クッションカバーをパッド表面11に密着させた状態に張設することができる。
【0023】
また、パッド本体10は、
図7及び
図10に示すように、吊り込み溝13の底部の一部分からパッド本体10を貫通する開口孔14を有する。開口孔14のパッド裏面12側の開口端は、ダクト材40によって塞がれており、通風路20と連通しない構成とされる。開口孔14は、例えばクッションパッド2のパッド表面11を昇温するヒータ線(不図示)を引き込んで余長を持たせるためのものである。具体的には、吊り込み溝13を横断するヒータ線の横断部を開口孔14内に引き込んで配設することができる。ヒータ線に余長を持たせることでヒータ線を突っ張らせることなく配設できる。このため、着座荷重によりパッド表面11が変形してもヒータ線に掛かる負荷を低減させることができる。また、ヒータ線を開口孔14まで引き込むことで、吊り込み溝13に設けられる上述のワイヤやフック部材と干渉しにくい位置に配設することができる。
【0024】
また、開口孔14は、
図1に示すように、上述した下型80の押さえ部82がキャビティC内部に跨って延びることで、パッド本体10の発泡成形により形成される。このため、上述した押さえ部82によるダクト材40の上型70に対する位置決めを行いつつ、合理的に開口孔14を形成することができる。
【0025】
<ダクト材40>
ダクト材40は、
図9及び
図4-6に示すように、後部中央が角状に切り欠かれた略矩形状部材である。ダクト材40は、凹形状の底面43と、底面43の周囲から立壁状に立ち上がる側面44と、底面43の所々から段差状に盛り上がった複数の土手部45と、を有する。各土手部45と後部の上記切欠とにより、通風路20は中央部から五方向に分岐して延び出るように形成される。
【0026】
ダクト材40は、底面43を貫通する複数の通風孔41を有する。各通風孔41は、クッションパッド2の各通風孔30とそれぞれ連通するように各通風孔30と面内方向の位置が重なるように設けられる。各通風孔41は、成形されたダクト材40をトムソン加工により打ち抜くことで形成される。各通風孔41は、
図1及び
図15に示すように、上型70の孔形成突起71に差し込まれた際に、その孔内周面41aが孔形成突起71の基端から先端に向かって次第に孔径が大きくなるように末広がり状に形成される(末広がり部41b)。末広がり部41bにより、
図15に示すように、上述した上型70の孔形成突起71と孔内周面41aとの間の隙間S1がより適切に形成されるようになっている。
【0027】
ダクト材40は、側面44の立ち上がった端部から面内方向の外側に向かってフランジ状に張り出す延長部42を有する。延長部42はダクト材40の周縁部を成し、通風路20から外れてパッド裏面12に沿って延び出る。
【0028】
<裏面材50>
裏面材50は、面状の不織布から成り、
図9に示すように、通風路20の凹部領域を除いてパッド裏面12に被せられる。裏面材50は、
図5に示すように、その前部中央に通風路20の外周形状に沿って開口した開口部51を有する。裏面材50は開口部51を有することで、裏面材50が通風路20に跨って被せられる構成と比べて、裏面材50の厚み分だけ通風路20を大きく形成することができる。また、裏面材50を通風路20の凹形状に重ねるような複雑な構成にすることなく、パッド裏面12に簡便に設けることができる。
【0029】
裏面材50は、
図10-11に示すように、パッド本体10のパッド裏面12とダクト材40の延長部42との間に挟み込まれる重なり部52を有する。具体的には、裏面材50は、その開口部51の内周縁がダクト材40の延長部42の裏面(
図11における上面)に重ねられた状態でパッド本体10と一体成形されることで、重なり部52として構成される。上記構成により、重なり部52が延長部42の表面(
図11における下面)に重ねられて一体成形される構成と比べて、可撓性を備えた重なり部52の端部を延長部42とパッド裏面12との間に挟み込んで適切に固定することができる。
【0030】
また、延長部42と重なり部52とが互いに面直方向に重ねられることで、ダクト材40と裏面材50との間の隙間を小さくすることができる。したがって、パッド本体10の発泡成形時においてダクト材40と裏面材50との間からのウレタン漏れを生じにくくすることができる。このため、ウレタン漏れによるパッド裏面12の見栄えの悪化を防止できる。
【0031】
<流路蓋3>
流路蓋3はプレスフェルトから成り、
図4-6に示すように、ダクト材40の形状に沿うように後部中央が角状に切り欠かれた略矩形状部材とされる。流路蓋3は、
図8に示すように、発泡成形されたパッド裏面12に下方から組み付けられる。具体的には、流路蓋3は、
図9に示すように、その内面(
図9における上面)の周縁部がホットメルト等の接着剤60によりダクト材40及び裏面材50に貼りつけられることで、パッド裏面12に組み付けられる。流路蓋3は、ダクト材40よりも一回り大きくなるように形成される。このため流路蓋3は、
図6に示すように、パッド裏面12に組み付けられることで、ダクト材40を下方から覆い隠す。
【0032】
流路蓋3は、
図5-6に示すように、その中央部にファン(不図示)が接続される接続口3aと、上記内面の所々に形成された複数の位置決め突起3bと、を有する。流路蓋3は、パッド裏面12に組み付けられることで通風路20の内周面の一部を形成する。接続口3aは流路蓋3を貫通するように開口させ、通風路20とファン(不図示)とを連通させる。各位置決め突起3bは、各土手部45の側面44にそれぞれ突き当てられるようになっている。各位置決め突起3bにより、流路蓋3のパッド裏面12に対する前後左右の位置決めを容易に行うことができる。
【0033】
<シートクッション1の製造方法>
以下、シートクッション1を製造する手順について説明する。初めに、ダクト材40と流路蓋3とは、予めプレス等により所定の形状に成形された状態とされる。先ず、
図12に示すように、ダクト材40を上型70の形状に合わせてセットする。具体的には、ダクト材40の底面43と側面44とが上型70の成形面72に重ねられる。また、ダクト材40の通風孔41に上型70の孔形成突起71が差し込まれる。
【0034】
次に、裏面材50を上型70にセットする。裏面材50は、重なり部52を除いて上型70の成形面72に重ねられてセットされ、重なり部52がダクト材40の延長部42の裏面(
図12における下面)に重ねられるようにセットされる。ダクト材40と裏面材50とは、例えば上型70に真空引きされることにより重力作用で下方に落下しないように固定される。
【0035】
次に、
図1に示すように、上型70と下型80とを型締めする。これにより、クッションパッド2を成形するキャビティCが形成される。また、下型80の孔形成突起81が、上型70の孔形成突起71に突き合わせられる。そして、キャビティC内に液状のポリウレタンを投入し、パッド本体10を発泡成形する。下型80の成形面83によりパッド本体10のパッド表面11が形成される。突き合わされた孔形成突起71と孔形成突起81とにより、パッド本体10を貫通する通風孔30が形成される。また、上型70の孔形成突起71により、通風孔30とダクト材40の通風孔41とが連通するように形成される。また、下型80の押さえ部82により、パッド本体10の開口孔14が形成される。
【0036】
図13に示すように、ダクト材40と裏面材50とがパッド本体10と一体成形される。これにより、裏面材50は、その内部に液状のポリウレタンが含浸し、パッド本体10と一体となるように硬化する。ダクト材40は、液状のポリウレタンがダクト材40との接触面に含浸し、パッド本体10に対して接着される。また、
図15に示すように、孔形成突起71と通風孔41との間の隙間S1に液状のポリウレタンが入り込む。通風孔41の孔内周面41aがトムソン加工による表面の粗い切断面になっていることで、ポリウレタンが孔内周面41aからダクト材40の内部に含浸しやすくなっている。含浸したポリウレタンが硬化することで、孔内周面41aがパッド本体10と一体となるように硬化する。硬化した孔内周面41aと当接部位71bとにより、上型70の成形面72とダクト材40の底面43との間にポリウレタンが漏れることを防止できる。
【0037】
図1に示すように、上型70の成形面72により、ダクト材40の延長部42と裏面材50とは面一状に設けられる。また、
図14に示すように、ダクト材40の延長部42と裏面材50の重なり部52とが面直方向に重ねられることで、パッド本体10の成形時にダクト材40と裏面材50との間からのウレタン漏れを防ぐことができる。一体成形後、裏面材50の重なり部52からパッド裏面12に沿って延び出る部分は、緩やかな傾斜をもってシート下方に向かって延び出る傾斜部53とされる。これにより、傾斜部53と延長部42の端部との間にはシート下方に向かって開口する空間S2が形成される。
【0038】
図11に示すように、上記空間S2には上述の接着剤60が塗布される。そして、流路蓋3の内面(
図10における上面)の周縁部が接着剤60に当てられることで、流路蓋3がダクト材40及び裏面材50に接着される。傾斜部53と延長部42との間の空間S2に接着剤60が塗布されることで、接着剤60の厚みによって流路蓋3を浮かせることなくダクト材40の延長部42及び裏面材50に対して適切に面を合わせた状態で流路蓋3を接着することができる。また、接着剤60の外部への液だれを抑制し、流路蓋3から接着剤60がはみ出した際の補修等の手間を削減できる。そして
図10に示すように、流路蓋3が接着されることで通風路20の開口が閉じられてファン(不図示)と流路接続される。
【0039】
以上をまとめると、第1の実施形態に係るシートパッドの成形型は、次のような構成とされている。以下において、括弧書きで示す符号は上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0040】
すなわち、シートパッド(2)の成形型(4)は、パッド本体(10)と一体成形される裏面材(40)が重ね合わせ状にセットされるセット側成形面(72)を備えたセット型(70)と、セット型(70)に型締めされて裏面材(40)との間でパッド本体(10)を発泡成形するためのキャビティ(C)を形成する相手型(80)と、セット側成形面(72)から突出して裏面材(40)に形成された貫通孔(41)に通されてパッド本体(10)に通風孔(30)を形成する孔形成突起(71)と、を有する。孔形成突起(71)が、その貫通孔(41)に通される挿通領域において、突出の基端から先端に向かって外径が先細りとなる先細り部(71a)を有する。先細り部(71a)が、基端において貫通孔(41)の孔内周面(41a)と当接する当接部位(71b)と、基端から外れた先端までの領域において孔内周面(41a)との間に孔径方向の隙間(S1)を形成する非当接部位(71c)と、を有する。
【0041】
このような構成となっていることにより、孔形成突起(71)が当接部位(71b)と非当接部位(71c)とを有することで、孔形成突起(71)と裏面材(40)の貫通孔(41)の孔内周面(41a)とが完全に離間しないようにしつつ、孔形成突起(71)と孔内周面(41a)との間に隙間(S1)を形成することができる。これにより、パッド本体(10)の発泡成形時に発泡原料が孔内周面(41a)に含浸しやすくすることができる。そして含浸した発泡原料が硬化することで、挿通領域における当接部位(71b)から先端までの領域に硬化した壁を形成する。このため、孔形成突起(71)の当接部位(71b)から基端側に向かう成形漏れを防止できる。また、孔形成突起(71)が先細り部(71a)を有することで、裏面材(40)のセット型(70)に対する組み付け性や成形後の離型性を高めることができる。
【0042】
また、相手型(80)は、その相手側成形面(83)から突出して型締めにより裏面材(40)に突き当てられて裏面材(40)をセット側成形面(72)に対して押し付ける押さえ部(82)を有する。このような構成となっていることにより、押さえ部(82)が裏面材(40)をセット側成形面(72)に対して適切に面を合わせるように位置決めできる。このため、裏面材(40)の貫通孔(41)の孔内周面(41a)を孔形成突起(71)に対して適切に位置合わせして、孔形成突起(71)の当接部位(71b)と非当接部位(71c)とを適切に設けることができる。
【0043】
また、非当接部位(71c)は、孔内周面(41a)が孔形成突起(71)の基端から先端に向かって孔径が末広がりとなる末広がり部(41b)を有することで、孔内周面(41a)との間に隙間(S1)を形成する。このような構成となっていることにより、孔形成突起(71)と裏面材(40)の貫通孔(41)の孔内周面(41a)との間に発泡原料が入り込んで硬化するための隙間(S1)を形成しやすくなる。また、末広がり部(41b)により孔内周面(41a)の面積を広くとることができて、発泡原料が孔内周面(41a)に対してより含浸しやすくすることができる。
【0044】
<その他の実施形態>
以上、本発明を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態の他に各種の形態で実施することができるものである。
【0045】
1.成形型は、シートクッションのクッションパッドを形成するためのものの他、シートバックのバックパッドを形成するためのものであっても良い。成形型は、一対の型が型締めによりキャビティを形成する構成であれば、それぞれの配置関係は上下ではなく任意の構成としても良い。上記実施形態では上型をセット型とし下型を相手型としたが、下型をダクト材がセットされるセット型として構成しても良い。
【0046】
2.シートパッドは、自動車のシートの他に、鉄道等の自動車以外の車両、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシート、もしくは映画館等の公共施設や家庭などで使用される乗物用以外のシートにも広く適用することができるものである。
【0047】
3.孔形成突起は、上記実施形態では突出方向の全域に亘って先細り部を成すように台形状に突出する構成としたが、貫通孔との挿通領域においてのみ先細り部を有して挿通領域以外の領域では寸胴状に突出する構成であっても良い。
【0048】
4.ダクト材は、予め成形されたプレスフェルトの他、予め成形されていない面状の不織布であってもよい。ダクト材は、不織布の他、樹脂から成るものであっても良い。ダクト材の通風孔は、末広がり部を有しない構成であっても良い。末広がり部は、孔内周面の軸方向全域ではなく軸方向の一部に設けられる構成であっても良い。
【0049】
5.通風路は、上記実施形態で示した形状の他、パッド裏面に沿って延びる凹形状であれば任意の形状であって良い。
【0050】
6.裏面材は、通風路の側面に面直方向に重ねられるように延びる構成であってもよい。上記裏面材の構成において、重なり部は通風路の側面領域においてダクト材と面直方向に重ねられる構成であってもよい。またこの構成において、ダクト材は延長部を有していてもよいし、有していなくてもよい。重なり部は、パッド裏面との間でダクト材を挟み込むようにダクト材と重なる構成であってもよい。
【0051】
7.流路蓋は、クッションパッドに対して接着剤の他、任意の係止構造によって組み付けられる構成であってもよい。また流路蓋は、パッド本体と一体成形される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 シートクッション
2 クッションパッド(シートパッド)
3 流路蓋
3a 接続口
3b 位置決め突起
4 成形型
10 パッド本体
11 パッド表面
12 パッド裏面
13 吊り込み溝
14 開口孔
20 通風路
30 通風孔
40 ダクト材(裏面材)
41 通風孔(貫通孔)
41a 孔内周面
41b 末広がり部
42 延長部
43 底面
44 側面
45 土手部
50 裏面材
51 開口部
52 重なり部
53 傾斜部
60 接着剤
70 上型(セット型)
71 孔形成突起
71a 先細り部
71b 当接部位
71c 非当接部位
72 成形面(セット側成形面)
80 下型(相手型)
81 孔形成突起
82 押さえ部
83 成形面(相手側成形面)
C キャビティ
S1 隙間
S2 空間