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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075931
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】クランプ
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/10 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
F16B2/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187206
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】592123923
【氏名又は名称】株式会社タカミヤ
(71)【出願人】
【識別番号】512018140
【氏名又は名称】株式会社ミヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼宮 一雅
(72)【発明者】
【氏名】油原 大和
(72)【発明者】
【氏名】早川 翼
(72)【発明者】
【氏名】高橋 光守
【テーマコード(参考)】
3J022
【Fターム(参考)】
3J022DA01
3J022EA42
3J022EB14
3J022EC17
3J022ED22
3J022FA01
3J022GA12
3J022GB23
(57)【要約】
【課題】ボルトの軸部がU字状切欠部から外れ難くなるとともに、被挟着部材を強固に締め付けることが可能なクランプの提供。
【解決手段】第1ピン部材26により回動自在に連結された本体部材23(第1挟着部材)及び蓋部材24(第2挟着部材)と、本体部材に第2ピン部材37により回動自在に連結されたボルト螺入部材38とを備え、また、蓋部材の端部のU字状切欠部51に軸部42が挿入され、この軸部がボルト螺入部材に螺入されているとともに、頭部43が蓋部材のボルト螺入部材の側とは反対側の箇所に当接しているボルト41を備える。頭部でのボルトの回転操作により、本体部材と蓋部材とでパイプ部材22(被挟着部材)が挟着され、ボルトのボルト軸線Aに対して第2ピン部材が配置された位置が、パイプ部材の側へ偏芯している。頭部でのボルトの回転操作の開始から終了まで、ボルト螺入部材とパイプ部材との間にすき間S1が生じている。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに一方の端部が第1ピン部材により回動自在に連結された第1挟着部材及び第2挟着部材と、前記第1挟着部材の他方の端部に第2ピン部材により回動自在に連結されたボルト螺入部材と、前記第2挟着部材の他方の端部に、前記第1ピン部材の側が塞がれていて、前記第1ピン部材の側とは反対側が開口して形成されているU字状切欠部に軸部が挿入され、この軸部が前記ボルト螺入部材に螺入されているとともに、頭部が前記第2挟着部材の前記他方の端部における前記ボルト螺入部材の側とは反対側の箇所に当接しているボルトと、を含んで構成され、
前記頭部での前記ボルトの回転操作により、前記第1挟着部材と前記第2挟着部材とで被挟着部材が挟着されるクランプであって、
前記ボルト螺入部材に前記軸部が螺入されている前記ボルトのボルト軸線に対して前記第2ピン部材が配置されている位置が、前記被挟着部材の側へ偏芯しているクランプにおいて、
前記頭部での前記ボルトの回転操作の開始から終了まで、前記ボルト螺入部材と前記被挟着部材との間にすき間が生じていることを特徴とするクランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプにおいて、前記頭部での前記ボルトの回転操作の前記終了とは、前記頭部での前記ボルトの回転操作が不能になったときであることを特徴とするクランプ。
【請求項3】
請求項2に記載のクランプにおいて、前記頭部での前記ボルトの前記回転操作は、電動工具により行われ、
前記頭部での前記ボルトの回転操作が前記不能になったときとは、前記電動工具による回転操作が限界に達したときのことであることを特徴とするクランプ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のクランプにおいて、前記ボルトの前記軸部が前記U字状切欠部における前記第1ピン部材の側の端部に達しているときに、前記頭部での前記ボルトの回転操作が終了することを特徴とするクランプ。
【請求項5】
請求項1に記載のクランプにおいて、前記ボルト螺入部材における前記被挟着部材と対面する面は、前記第2ピン部材の側から前記ボルトの前記頭部の側へ延びるにしたがって前記被挟着部材から離れる方向に傾斜していることを特徴とするクランプ。
【請求項6】
請求項1に記載のクランプにおいて、前記ボルト螺入部材に、前記ボルトの前記軸部が螺入される雌ねじ孔が直接設けられていることを特徴とするクランプ。
【請求項7】
請求項1に記載のクランプにおいて、前記ボルト螺入部材は、前記ボルトの前記軸部が螺入される雌ねじ孔が設けられた雌ねじ部材と、この雌ねじ部材が固定され、前記第2ピン部材を中心に回動自在となっている回動部材とを含んで構成されていることを特徴とするクランプ。
【請求項8】
請求項1に記載のクランプにおいて、前記第1挟着部材の前記他方の端部と前記被挟着部材との間には、前記頭部での前記ボルトの回転操作の開始から終了まですき間が生じていることを特徴とするクランプ。
【請求項9】
請求項1に記載のクランプにおいて、前記第2ピン部材が配置される位置は、前記ボルト螺入部材の前記ボルトが螺入される雌ねじ孔から前記被挟着部材の側に外れた位置となっていることを特徴とするクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、仮設足場や支保工等の仮設構築物を構成するパイプ部材を挟着して固定されるクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクランプとしては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示されたクランプは、仮設足場で使用するパイプ部材に他のパイプ部材を任意の角度で交差させた状態で連結する自在クランプである。この従来のクランプを図14を用いて説明する。図14に示すクランプ1は、被挟着部材としてのパイプ部材2を挟着する一対のクランプ部3,4を有している。クランプ部3,4同士は、連結部材5によって互いに回動自在に連結されている。
【0003】
それぞれのクランプ部3,4は、互いに一方の端部が第1ピン部材6により回動自在に連結された第1挟着部材7と第2挟着部材8とを備えている。第1挟着部材7の他方の端部には、第2ピン部材9によりボルト螺入部材10が回動自在に連結されている。ボルト螺入部材10は、雌ねじ部材11を有している。雌ねじ部材11には、ボルト12の軸部12aが螺入されている。また、このボルト螺入部材10におけるパイプ部材2と対面する部分は、パイプ部材2の外周面の形状に倣う形状に形成されている。
【0004】
第2挟着部材8の他方の端部には、U字状切欠部13が形成されている。U字状切欠部13は、第1ピン部材6の側が塞がれていて、第1ピン部材6の側とは反対側が開口するU字状に形成されている。このU字状切欠部13には、上述したボルト12の軸部12aが挿入されている。
ボルト12は、その頭部12bが第2挟着部材8の他方の端部におけるボルト螺入部材10の側とは反対側の箇所に当接する状態でボルト螺入部材10に螺入されている。
第1挟着部材7とボルト螺入部材10とを連結する第2ピン部材9は、ボルト螺入部材10に軸部12aが螺入されているボルト12のボルト軸線に対してパイプ部材2の側へ偏芯して位置付けられている。
【0005】
このように構成された従来のクランプ1においては、頭部12bでのボルト12の回転操作により、第1挟着部材7と、第2挟着部材8と、ボルト螺入部材10とによって被挟着部材としてのパイプ部材2が挟着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭59-17305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示すクランプ1では、ボルト12をボルト螺入部材10に締め込むために頭部12bを回転操作している途中でボルト螺入部材10がパイプ部材2に当接すると、第2挟着部材8に対してボルト12の位置が決められることになり、ボルト12の軸部12aがU字状切欠部13の底部(第1ピン部材側の端部)に達していない状態でボルト12の締め込みが終了するおそれがある。このような場合は、ボルト12の軸部12aがU字状切欠部13の底部より開口側に位置しているから、軸部12aがU字状切欠部13の底部に位置している場合と較べると、U字状切欠部13から外れ易くなる。
【0008】
また、ボルト12の締め付けを行っている途中で、ボルト螺入部材10がパイプ部材2に当接してしまうと、この当接以後の第1挟着部材7は、ボルト螺入部材10とパイプ部材2との摩擦力により、第1ピン部材6を中心に回動できなくなり、又は殆ど回動できなくなる。このため、パイプ部材2を大きな力によって第1挟着部材7と第2挟着部材8とで締め付けることは難しくなる。
【0009】
本発明の目的は、ボルトの軸部がU字状切欠部から外れ難くなるとともに、被挟着部材を強固に締め付けることが可能なクランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために本発明に係るクランプは、互いに一方の端部が第1ピン部材により回動自在に連結された第1挟着部材及び第2挟着部材と、前記第1挟着部材の他方の端部に第2ピン部材により回動自在に連結されたボルト螺入部材と、前記第2挟着部材の他方の端部に、前記第1ピン部材の側が塞がれていて、前記第1ピン部材の側とは反対側が開口して形成されているU字状切欠部に軸部が挿入され、この軸部が前記ボルト螺入部材に螺入されているとともに、頭部が前記第2挟着部材の前記他方の端部における前記ボルト螺入部材の側とは反対側の箇所に当接しているボルトと、を含んで構成され、前記頭部での前記ボルトの回転操作により、前記第1挟着部材と前記第2挟着部材とで被挟着部材が挟着されるクランプであって、前記ボルト螺入部材に前記軸部が螺入されている前記ボルトのボルト軸線に対して前記第2ピン部材が配置されている位置が、前記被挟着部材の側へ偏芯しているクランプにおいて、前記頭部での前記ボルトの回転操作の開始から終了まで、前記ボルト螺入部材と前記被挟着部材との間にすき間が生じているものである。
【0011】
本発明は、前記クランプにおいて、前記頭部での前記ボルトの回転操作の前記終了とは、前記頭部での前記ボルトの回転操作が不能になったときであってもよい。
【0012】
本発明は、前記クランプにおいて、前記頭部での前記ボルトの前記回転操作は、電動工具により行われ、前記頭部での前記ボルトの回転操作が前記不能になったときとは、前記電動工具による回転操作が限界に達したときのことであってもよい。
【0013】
本発明は、前記クランプにおいて、前記ボルトの前記軸部が前記U字状切欠部における前記第1ピン部材の側の端部に達しているときに、前記頭部での前記ボルトの回転操作が終了するものであってもよい。
【0014】
本発明は、前記クランプにおいて、前記ボルト螺入部材における前記被挟着部材と対面する面は、前記第2ピン部材の側から前記ボルトの前記頭部の側へ延びるにしたがって前記被挟着部材から離れる方向に傾斜していてもよい。
【0015】
本発明は、前記クランプにおいて、前記ボルト螺入部材に、前記ボルトの前記軸部が螺入される雌ねじ孔が直接設けられていてもよい。
【0016】
本発明は、前記クランプにおいて、前記ボルト螺入部材は、前記ボルトの前記軸部が螺入される雌ねじ孔が設けられた雌ねじ部材と、この雌ねじ部材が固定され、前記第2ピン部材を中心に回動自在となっている回動部材とを含んで構成されていてもよい。
【0017】
本発明は、前記クランプにおいて、前記第1挟着部材の前記他方の端部と前記被挟着部材との間には、前記頭部での前記ボルトの回転操作の開始から終了まですき間が生じていてもよい。
【0018】
本発明は、前記クランプにおいて、前記第2ピン部材が配置される位置は、前記ボルト螺入部材の前記ボルトが螺入される雌ねじ孔から前記被挟着部材の側に外れた位置となっていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、ボルトの軸部をU字状切欠部に挿入した状態でボルトをボルト螺入部材にねじ込むことにより、ボルト螺入部材がボルトによって引かれ、ボルト螺入部材に第2ピン部材を中心とする回転モーメントが作用する。このようにボルト螺入部材に回転モーメントが作用することにより、ボルト螺入部材が第2ピン部材を中心にして被挟着部材に向けて回動する。ボルト螺入部材と被挟着部材との間には、頭部でのボルトの回転操作の開始から終了まで、すき間が形成されているから、ボルトの締め込みが終了するまでボルト螺入部材の回動動作が継続される。このとき、ボルトもボルト螺入部材と一体に回動(揺動)する。このため、このボルトの頭部は、ボルト螺入部材の揺動に伴ってU字状切欠部における第1ピンの側となる端部に向けて移動する。
このため、ボルトの軸部がU字状切欠部の中で第1ピンの側へ寄せられるから、U字状切欠部から外れ難くなる。
【0020】
また、ボルトを締め込む際にボルト螺入部材が被挟着部材に当接することがないから、第1ピン部材を中心に回動する第1挟着部材の揺動動作がボルト螺入部材によって妨げられることがない。このため、ボルトの締め込みが完了するまで第1挟着部材に第1ピン部材を中心とする回転モーメントが作用し続けるから、第1挟着部材と第2挟着部材とによって強固に被挟着部材を締め付けることができる。
したがって、本発明によれば、ボルトの軸部がU字状切欠部から外れ難くなるとともに、被挟着部材を強固に締め付けることが可能なクランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、パイプ部材を挟着した単クランプの正面図である。
図2図2は、パイプ部材を挟着した単クランプの断面図である。
図3図3は、単クランプの斜視図である。
図4図4は、ボルトを外して蓋部材を開いた状態を示す単クランプの斜視図である。
図5図5は、図1におけるV-V線断面図である。
図6図6は、図1におけるVI-VI線断面図である。
図7図7は、蓋部材の一部を破断して示す単クランプの正面図である。
図8図8は、外径が小さいパイプ部材を挟着した単クランプの正面図である。
図9図9は、ボルト螺入部材の変形例を示す単クランプの断面図である。
図10図10は、ボルト螺入部材の別の変形例を示す斜視図である。
図11図11は、パイプ部材を挟着した直交クランプの正面図である。
図12図12は、パイプ部材を挟着した自在クランプの正面図である。
図13図13は、壁に取付けた状態の壁つなぎの正面図である。
図14図14は、従来のクランプの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るクランプの一実施の形態を図1図10を参照して詳細に説明する。
図1に示すクランプ21は、いわゆる単クランプと呼称されるもので、被挟着部材としてのパイプ部材22を挟着する第1挟着部材としての本体部材23と、第2挟着部材としての蓋部材24とを備えている。このクランプ21は、本体部材23に取付けられた機能部品25をパイプ部材22に固定するために使用される。機能部品25は、詳細には図示してはいないが、例えば、ワイヤを取り付けるフックや、仮設足場で使用する部品を取付けるためのブラケットなどである。
【0023】
本体部材23と蓋部材24は、それぞれ金属製の板材にプレス加工を施して所定の形状に形成されており、互いに一方の端部23a,24aが第1ピン部材26により回動自在に連結されている。本体部材23は、図5に示すように、第1ピン部材26の軸線方向に延びる横壁31と、この横壁31の両端部を折り曲げて形成された一対の縦壁32,32とをそれぞれ有している。蓋部材24は、第1ピン部材26の軸線方向に延びる横壁33と、この横壁33の両端部を折り曲げて形成された一対の縦壁34とをそれぞれ有している。
【0024】
第1ピン部材26は、本体部材23の一対の縦壁32にそれぞれ形成された第1の貫通孔35と、蓋部材24の一対の縦壁34にそれぞれ形成された第2の貫通孔36とに回転自在に通されている。本体部材23と蓋部材24は、それぞれ縦壁32,34がパイプ部材22の外周面に接触する状態でパイプ部材22を挟着する構成が採られている。
図2に示すように、本体部材23の他方の端部23bは、一対の縦壁32によって形成されている。この他方の端部23bには、第2ピン部材37によりボルト螺入部材38が回動自在に連結されている。第2ピン部材37は、図6に示すように、本体部材23の他方の端部23b(縦壁32)に形成された第3の貫通孔39に回転自在に通されている。
【0025】
ボルト螺入部材38は、このクランプ1の本体部材23と蓋部材24とをパイプ部材22に挟着させるためのボルト41が螺入される部材である。ボルト41は、図4に示すように、雄ねじ41aが形成された軸部42と、軸部42の一端部に設けられた頭部43とによって構成されている。頭部43は、軸部42の軸線方向から見て6角形の角柱状に形成された工具係合部43aと、軸部42との境界部分に設けられた円板状のワッシャ部43bとによって形成されている。
【0026】
この実施の形態によるボルト螺入部材38は、図4に示すように、本体部材23の一対の縦壁32同士の間に挿入された連結部38aと、ボルト41の軸部42が螺入される雌ねじ孔44を有する雌ねじ部38bとによって構成されている。ボルト41の軸部42は、雌ねじ孔44に蓋部材24の側から螺入される。この実施の形態によるボルト螺入部材38は、鍛造あるいは鋳造あるいは焼結金属によって製造されている。このため、連結部38aと雌ねじ部38bとは、同一の金属材料によって一体に形成されている。
【0027】
連結部38aには、図2および図6に示すように、第2ピン部材37が回転自在に通される第4の貫通孔45が形成されている。第4の貫通孔45の位置、言い換えれば第4の貫通孔45に通された第2ピン部材37が配置されている位置は、雌ねじ孔44からパイプ部材22の側に外れた位置となっている。
図4に示すように、第2ピン部材37の軸線方向における連結部38aの中央部には、雌ねじ部38bに連なるように補強リブ46が設けられている。補強リブ46のパイプ部材22と対面する側面46a、すなわち、ボルト螺入部材38におけるパイプ部材22と対面する側面は、図1および図2に示すように、第2ピン部材37の側からボルト41の頭部43の側へ延びるにしたがってパイプ部材22から離れる方向に傾斜している。
【0028】
図4に示すように、蓋部材24の他方の端部24bには、U字状切欠部51が形成されている。U字状切欠部51は、蓋部材24の他方の端部24bに、第1ピン部材26の側が塞がれ、かつ第1ピン部材26とは反対側が開口して形成されたものとなっているとともに、ボルト41の軸部42を挿入可能な開口幅で蓋部材24の長手方向に所定の長さで延びている。この所定の長さは、ボルト41の頭部43の外径より長い。
蓋部材24の他方の端部24bにおけるU字状切欠部51が形成されている部分であって、ボルト螺入部材38の側とは反対側には、ボルト41の頭部43のワッシャ部43bが当接するための平坦なボルト当接面52が形成されている。
【0029】
このように構成されたクランプ21をパイプ部材22に挟着させるためには、先ず、図4に示すようにボルト41がボルト螺入部材38から外れて蓋部材24が開いている状態で、パイプ部材22を本体部材23と蓋部材24との間に挿入する。次に、蓋部材24をパイプ部材22に被せるように重ね、図7に示すように、U字状切欠部51にボルト41の軸部42を挿入してボルト41をボルト螺入部材38にねじ込む。
【0030】
図7は、ボルト41の頭部43が蓋部材24に当たるまでボルト41をボルト螺入部材38にねじ込むことによるボルト41の締め込み開始時の状態を示している。このとき、すなわち頭部43でのボルト41の回転操作の開始時には、ボルト螺入部材38とパイプ部材22との間にすき間S1が生じている。
この状態でボルト41の頭部43においてこのボルト41を回転操作すると、ボルト41の軸部42が螺入しているボルト螺入部材38には頭部43の側への引き寄せ力Fが作用する。ボルト41を回転操作するにあたっては、頭部43に工具53を係合させ、工具53を回して行う。工具53は、手動式のラチェットレンチや、電動レンチ(電動工具)を用いることができる。
【0031】
ボルト螺入部材38を本体部材23に連結する第2ピン部材37が配置されている位置は、ボルト螺入部材38に軸部42が螺入されているボルト41のボルト軸線Aに対してパイプ部材22の側へ距離Lだけ偏芯(オフセット)している。このため、ボルト螺入部材38には、引き寄せ力Fにより、第2ピン部材37を中心するパイプ部材22の側への回転モーメントM1が作用する。このようにボルト螺入部材38に回転モーメントM1が作用することにより、ボルト螺入部材38は、第2ピン部材37を中心にパイプ部材22の側へ回動する。
【0032】
これにより、ボルト螺入部材38に軸部42が螺入されているボルト41もボルト螺入部材38と一体に第2ピン部材37を中心にパイプ部材22の側へ回動(揺動)する。この結果、ボルト41の軸部42は、図7中に二点鎖線で示すように、U字状切欠部51の内部を第1ピン部材26の側へ移動する。ボルト41を継続してボルト螺入部材38にねじ込むことにより、ボルト41の軸部42がパイプ部材22に更に近づくことになり、軸部42をU字状切欠部51における第1ピン部材26の側の端部51aまで到達させることも可能になる。
【0033】
ボルト41のねじ込み、すなわち工具53によるボルト41の回転操作は、頭部43でのボルト41の回転操作が不能になったときに終了する。回転操作が不能になったときとは、工具53(例えば、手動式のラチェットレンチ)を物理的に回すことができなくなったとき、あるいは、電動工具による回転操作が、この電動工具に設定されている締め付けトルク値の限界に達したときのことである。
ボルト41の回転操作が終了した状態においては、図2に示すように、ボルト41の軸部42を、U字状切欠部51における第1ピン部材26の側となっている閉じられた側の端部51aに到達させることができる。
【0034】
ボルト41の回転操作が不能になったときにボルト41に加えられる締め付けトルクは、予め定められた適正値の下限と上限との間に入っていることが望ましい。この実施の形態によるクランプ21においては、ボルト41の締め付けトルクが適正値の下限と上限との間にある状態で、軸部42がU字状切欠部51における第1ピン部材26の側の端部51aあるいは端部51aの近傍に位置するように構成されている。
【0035】
図1および図2に示すように、ボルト41の回転操作の終了時においても、ボルト螺入部材38とパイプ部材22との間にすき間S1が生じている。すなわち、このクランプ21においては、頭部43でのボルト41の回転操作の開始から終了まで、ボルト螺入部材38とパイプ部材22との間にすき間S1が生じている。なお、ボルト41を回転操作している途中において、ボルト螺入部材38がパイプ部材22に当接してしまうと、この当接以後のボルト螺入部材38は、第2ピン部材37を中心にパイプ部材22の側へ回動しなくなるため、それ以上にボルト41の軸部42を、U字状切欠部51の中で第1ピン部材26の側へ移動させることはできなくなる。
【0036】
しかし、この実施の形態のクランプ21では、ボルト41の回転操作の開始から終了までボルト螺入部材38とパイプ部材22との間にすき間S1が生じており、ボルト螺入部材38の回動がパイプ部材22によって規制されることがないから、ボルト41の軸部42をねじ込みが終了するまでU字状切欠部51の中を第1ピン部材26の側へ移動させることが可能になる。
【0037】
このように、この実施の形態によるクランプにおいては、ボルト41を締め込むことによりボルト41の軸部42がU字状切欠の中で第1ピンの側へ寄せられるから、ボルト41の軸部42がU字状切欠部51における第1ピン部材26の側とは反対側の端部の方向へ移動してしまうこと、すなわち、ボルト41の軸部42がU字状切欠部51から抜け出ることを防止できることになる。
【0038】
また、図7に示すように、ボルト螺入部材38に引き寄せ力Fが作用する状態においては、本体部材23には、ボルト螺入部材38を介して、本体部材23が第1ピン部材26を中心として蓋部材24に対して閉じる方向への回転モーメントM2が作用する。この回転モーメントM2により、本体部材23は、第1ピン部材26を中心に蓋部材24に対して閉じる方向へ回動し、本体部材23は、蓋部材24と共にパイプ部材22を挟着して締め付けることになる。
【0039】
この締め付けを行っている途中で、ボルト螺入部材38がパイプ部材22に当接してしまうと、この当接以後の本体部材23は、ボルト螺入部材38とパイプ部材22との摩擦力により、第1ピン部材26を中心に回動できなくなり、又は殆ど回動できなくなる。このため、パイプ部材22を大きな力によって本体部材23と蓋部材24とで締め付けることは難しくなる。しかし、この実施の形態によるクランプ21においては、ボルト螺入部材38とパイプ部材22との間にすき間S1があり、このすき間S1が、上記の締め付けを行っている途中のときにも確保されているから、ボルト螺入部材38は第1ピン部材26を中心に蓋部材24に対して閉じる方向へ回動し続けることができる。このため、ボルト41の頭部43を最後まで回転操作することで、パイプ部材22を大きな力によって本体部材23と蓋部材24とで締め付けることが可能になる。
【0040】
したがって、この実施の形態によれば、ボルト41の軸部42がU字状切欠部51から外れ難くなるとともに、パイプ部材22を強固に締め付けることが可能なクランプを提供することができる。
【0041】
この実施の形態によるクランプ21において、頭部43でのボルト41の回転操作の終了とは、前述したように、頭部43でのボルト41の回転操作が不能になったときである。このため、ボルト41の軸部42をU字状切欠部51の中で第1ピン部材26側の端部に最大限に近づけることが可能になるから、ボルト41の軸部42をU字状切欠部51からより一層外れ難くすることができるとともに、本体部材23と蓋部材24とによってパイプ部材22をより一層強固に締め付けることができる。
【0042】
また、この実施の形態おいて、電動レンチ(電動工具)を使用する場合に頭部43でのボルト41の回転操作が不能になったときとは、前述したように、電動レンチによる回転操作が、この電動工具に設定されている締め付けトルク値の限界に達したときのことである。このため、ボルト41の締め付けトルクがクランプ21毎にばらつくことを防ぐことができ、ボルト41の締め付けトルクの管理が容易になる。
【0043】
この実施の形態によるクランプ21においては、ボルト41の軸部42がU字状切欠部51における第1ピン部材26の側の端部51aに達しているときに、頭部43でのボルト41の回転操作が終了する。U字状切欠部51における第1ピン部材26の側の端部51aは、この端部51aがU字状切欠部51の閉じられた端部であるため、U字状切欠部51における最も強度が大きな箇所である。このため、パイプ部材22を本体部材23と蓋部材24とで大きな力によって締め付けるために、ボルト41の頭部43を、最も強度が大きな箇所において回転させることによって、パイプ部材22の締め付け状態を強いものにすることができる。
【0044】
この実施の形態によるクランプ21においては、ボルト螺入部材38におけるパイプ部材22と対面する面(補強リブ46の側面46a)は、第2ピン部材37の側からボルト41の頭部43の側へ延びるにしたがってパイプ部材22から離れる方向に傾斜している。このため、ボルト螺入部材38が第2ピン部材37を中心にパイプ部材22の側へ回動する際に、ボルト螺入部材38がパイプ部材22に当接することを一層確実に防止することができる。
【0045】
この実施の形態によるボルト螺入部材38には、ボルト41の軸部42が螺入される雌ねじ孔44が直接設けられている。このため、ボルト螺入部材38を板材を曲げて形成する場合と較べて、ボルト螺入部材38を鍛造や鋳造、あるいは焼結金属によって強固に形成することができる。
【0046】
この実施の形態によるクランプ21において、第2ピン部材37が配置される位置は、ボルト軸線Aに対して、ボルト螺入部材38のボルト41の軸部42が螺入される雌ねじ孔44からパイプ部材22の側に外れた位置となっている。このため、ボルト軸線Aに対する第2ピン部材37の偏芯距離Lを大きくとることが可能になり、ボルト螺入部材38に大きな回転モーメントM1を作用させることが可能になる。この結果、ボルト41の軸部42をより一層確実にU字状切欠部51の第1ピン部材26の側の端部51aに近づけることが可能になる。
【0047】
(パイプ部材の変形例)
パイプ部材は、図1および図2に示したパイプ部材22より小径のものを使用することができる。小径のパイプ部材を挟着したクランプ21を図8に示す。図8は、ボルトの回転操作が終了した状態を示している。図8に示すクランプ21は、図1図7によって示したものと同一のもので、小径のパイプ部材61を挟着している。
小径のパイプ部材61を本体部材23と蓋部材24とによって挟着することにより、本体部材23の他方の端部23bと小径のパイプ部材61との間には、頭部43でのボルト41の回転操作の開始から終了まですき間S2が生じる。
【0048】
このため、ボルト41の回転操作が終了するまで本体部材23に第1ピン部材26を中心とする回転モーメントM2が作用し続け、本体部材23が第1ピン部材26を中心に蓋部材24に対して閉じる方向へ回動して蓋部材24と協働して小径のパイプ部材22を挟着して締め付けることになる。したがって、この実施の形態によるクランプ21は、小径のパイプ部材61であっても強固に挟着することが可能なものである。
【0049】
(ボルト螺入部材の変形例)
ボルト螺入部材は図9および図10に示すように構成することができる。図9および図10において、図1図7によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図9に示すボルト螺入部材62は、ボルト41の軸部42が螺入される雌ねじ孔63が設けられた雌ねじ部材64と、この雌ねじ部材64が固定され、第2ピン部材37を中心に回動自在となっている回動部材65とを含んで構成されている。
【0050】
図9に示す回動部材65は、前述した実施の形態で示したボルト螺入部材38の雌ねじ部38bとは、雌ねじ孔44の代わりに第5の貫通孔67が形成されていることにおいてのみ異なっている。第5の貫通孔67は、ブロック状に形成された回動部材65を貫通している。この第5の貫通孔67における蓋部材24の側の一端部67aの孔径は、雌ねじ部材64が抜けることを防ぐために、他の部分より小さい。雌ねじ部材64は、雌ねじ孔63が形成された円筒状の既製品を使用することができ、この雌ねじ部材64は、第5の貫通孔67の他端部から第5の貫通孔67内に圧入されて回動部材65に固定されている。
【0051】
図10に示すボルト螺入部材71は、ボルト41の軸部42が螺入される雌ねじ孔72が設けられた、雌ねじ部材としてのナット73と、このナット73が固定され、第2ピン部材37を中心に回動自在となっている回動部材74とを含んで構成されている。
図10に示す回動部材74は、金属製の板材に折り曲げ加工を施して所定の形状に形成されており、第2ピン部材37の軸線方向に並ぶ一対の縦壁74a,74aと、これらの縦壁74a,74aの一端部同士を接続する横壁74bとを有している。一対の縦壁74a,74aどうしの間隔は、これらの縦壁74a同士の間にナット73が回転できないように係合してナット73を包持可能な間隔である。横壁74bには、ボルト41の軸部42を挿入可能な第6の貫通孔75が形成されている。
ナット73は、雌ねじ孔72の軸線方向の一端が回動部材74の横壁74bに当接した状態で縦壁74aあるいは横壁74bに溶接されている。なお、図示してはいないが、縦壁74aにナット73の脱落を防ぐ突起を形成することにより、溶接をすることなくナット73を回動部材74に保持させることができる。
【0052】
図9および図10に示すようにボルト螺入部材62,71を構成したとしても、ボルト41の軸部42を雌ねじ孔63,72にねじ込むことによりU字状切欠部51の端部51aに寄せることができ、ボルト41の軸部42がU字状切欠部51から外れ難くなるとともに、パイプ部材22を強固に締め付けることが可能になる。
また、図9および図10に示す構成を採ることにより、図1図7に示す実施の形態を採る場合と較べると、ブロック状のボルト螺入部材に雌ねじ孔の加工を行う必要がないから、ボルト螺入部材62,71を容易に製造することができる。
【0053】
(クランプの他の実施の形態)
本発明によるクランプ21は、図11図13に示すように構成することができる。図11図13において、図1図7によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図11には直交クランプ81が図示され、図12には自在クランプ82が図示されている。また、図13には壁つなぎ83が図示されている。
【0054】
図11に示す直交クランプ81と、図12に示す自在クランプ82は、それぞれ図1図7に示したクランプ(単クランプ)21を2個使用して構成されている。図11に示す直交クランプ81は、2個のクランプ21をパイプ部材22の軸線が直交する姿勢として本体部材23同士を重ね合わせて結合したものである。本体部材23同士の結合は、例えば、リベット(図示せず)によって行うことができる。
【0055】
図12に示す自在クランプ82は、2個のクランプ21の各々の本体部材23同士を連結部材84によって連結して構成されている。連結部材84は、本体部材23同士を回動自在に連結している。このため、一方のクランプ21に挟着されたパイプ部材22と他方のクランプ21に挟着されたパイプ部材22とがなす角度を、任意の角度とすることができる。
【0056】
図13に示す壁つなぎ83は、建築物の壁85にパイプ部材22を固定するためのものである。この壁つなぎ83は、壁85に埋設されたアンカー86に螺着される雄ねじ部材87を有する支柱部材88と、この支柱部材88に移動可能に嵌合したスライド部材89と、スライド部材89の先端部に溶接されたクランプ21などによって構成されている。
このように本発明に係るクランプ21を用いて構成された直交クランプ81、自在クランプ82、壁つなぎ83は、従来のものと較べてボルト41が外れ難くなるとともに、パイプ部材22を強固に締め付けてパイプ部材22を確実に挟着するものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、仮設足場や支保工等の仮設構築物のパイプ部材を挟着して固定されるクランプに利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…クランプ、22…被挟着部材であるパイプ部材、23…第1挟着部材である本体部材、24…第2挟着部材である蓋部材、23a,24a…一方の端部、23b,24b…他方の端部、26…第1ピン部材、37…第2ピン部材、38…ボルト螺入部材、41…ボルト、42…軸部、43…頭部、44,63,72…雌ねじ孔、46a…被挟着部材と対面する面である側面、51…U字状切欠部、53…工具、64…雌ねじ部材、65,74…回動部材、73…雌ねじ部材であるナット、A…ボルト軸線、S1,S2…すき間。
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