(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075936
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】射出成形機の建て起こし方法、射出成形機の横倒し方法、および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/03 20060101AFI20240529BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B29C45/03
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187217
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】澤谷 篤
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM15
4F206JA07
4F206JL08
4F206JQ06
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】射出成形機の姿勢の変更時に使用するクレーンの本数を低減することができる、技術を提供する。
【解決手段】射出成形機の建て起こし方法は、第1点を中心に回転自在に射出成形機を吊り下げる吊り具を準備する工程と、前記射出成形機の重心と前記第1点とを結ぶ直線の片側に配置される第2点を中心に回転自在に前記射出成形機を下方から支える第1支持具を準備する工程と、前記吊り具を上昇させることで、前記直線の反対側に配置される第3点を中心に前記射出成形機を回転させる工程と、前記射出成形機の重心が回転中心である前記第3点の上を乗り越える前に、前記第1支持具で前記射出成形機を下方から支える工程と、前記第1支持具で前記射出成形機を下方から支えながら前記吊り具を上昇させることで、前記第2点を中心に前記射出成形機を回転させる工程と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向から見たときに第1点を中心に回転自在に射出成形機を吊り下げる吊り具を準備する工程と、
前記所定方向から見たときに前記射出成形機の重心と前記第1点とを結ぶ直線の片側に配置される第2点を中心に回転自在に前記射出成形機を下方から支える第1支持具を準備する工程と、
前記吊り具を上昇させることで、前記所定方向から見たときに前記直線の反対側に配置される第3点を中心に前記射出成形機を回転させる工程と、
前記所定方向から見たときに前記射出成形機の重心が回転中心である前記第3点の上を乗り越える前に、前記第1支持具で前記射出成形機を下方から支える工程と、
前記第1支持具で前記射出成形機を下方から支えながら前記吊り具を上昇させることで、前記所定方向から見たときに前記第2点を中心に前記射出成形機を回転させる工程と、
を有する、射出成形機の建て起こし方法。
【請求項2】
前記所定方向から見たときに前記射出成形機の前記第3点を中心に回転自在に前記射出成形機を下方から支える第2支持具を準備する工程と、
前記第3点を中心に前記射出成形機を回転させる工程において、前記第2支持具で前記射出成形機を下方から支える、請求項1に記載の射出成形機の建て起こし方法。
【請求項3】
前記第2支持具は、前記第1支持具よりも短い、請求項2に記載の射出成形機の建て起こし方法。
【請求項4】
前記所定方向から見たときに前記直線が鉛直になった状態で、前記吊り具によって前記射出成形機を宙吊りにする工程を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載に射出成形機の建て起こし方法。
【請求項5】
所定方向から見たときに第1点を中心に回転自在に射出成形機を吊り下げる吊り具を準備する工程と、
前記所定方向から見たときに前記射出成形機の重心と前記第1点とを結ぶ直線の片側に配置される第2点を中心に回転自在に前記射出成形機を下方から支える第1支持具を準備する工程と、
前記第1支持具で前記射出成形機を下方から支えながら前記吊り具を下降させることで、前記所定方向から見たときに前記第2点を中心に前記射出成形機を回転させる工程と、
前記所定方向から見たときに前記射出成形機の重心が前記直線の反対側に配置される第3点の上を乗り越えた後に、前記吊り具を下降させることで、前記所定方向から見たときに前記第3点を中心に前記射出成形機を回転させる工程と、
を有する、射出成形機の横倒し方法。
【請求項6】
前記所定方向から見たときに前記射出成形機の前記第3点を中心に回転自在に前記射出成形機を下方から支える第2支持具を準備する工程と、
前記第3点を中心に前記射出成形機を回転させる工程において、前記第2支持具で前記射出成形機を下方から支える、請求項5に記載の射出成形機の横倒し方法。
【請求項7】
前記第2支持具は、前記第1支持具よりも短い、請求項6に記載の射出成形機の横倒し方法。
【請求項8】
所定方向から見たときに第1点を中心に回転自在に射出成形機を吊り下げる吊り具と、
前記所定方向から見たときに前記射出成形機の重心と前記第1点とを結ぶ直線の片側に配置される第2点を中心に回転自在に前記射出成形機を下方から支える第1支持具と、
を備え、
前記吊り具を上昇させることで、前記所定方向から見たときに前記直線の反対側に配置される第3点を中心に前記射出成形機が回転させられ、
前記所定方向から見たときに前記射出成形機の重心が回転中心である前記第3点の上を乗り越える前に、前記第1支持具が前記射出成形機を下方から支え、
前記第1支持具で前記射出成形機を下方から支えながら前記吊り具を上昇させることで、前記所定方向から見たときに前記第2点を中心に前記射出成形機が回転させられる、射出成形機。
【請求項9】
所定方向から見たときに第1点を中心に回転自在に射出成形機を吊り下げる吊り具が取付けられる第1取付部と、
前記所定方向から見たときに前記射出成形機の重心と前記第1点とを結ぶ直線の片側に配置される第2点を中心に回転自在に前記射出成形機を下方から支える第1支持具が取付けられる第2取付部と、
を備え、
前記吊り具を上昇させることで、前記所定方向から見たときに前記直線の反対側に配置される第3点を中心に前記射出成形機が回転させられ、
前記所定方向から見たときに前記射出成形機の重心が回転中心である前記第3点の上を乗り越える前に、前記第1支持具が前記射出成形機を下方から支え、
前記第1支持具で前記射出成形機を下方から支えながら前記吊り具を上昇させることで、前記所定方向から見たときに前記第2点を中心に前記射出成形機が回転させられる、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の建て起こし方法、射出成形機の横倒し方法、および射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、運搬時の高さ制限を解決すべく、型締装置と射出装置を分割して別々に運搬することがある。この場合、運搬後に、型締装置と射出装置を組み立てたり、配線または配管をつなぎ直したりする作業が必要になる。この作業は、煩雑である。また、この作業において誤りがあると、射出成形機の品質が低下してしまう。
【0003】
そこで、射出成形機は、クレーンなどを用いて姿勢を変更することがある。射出成形機は、横倒しされた状態で運搬され、運搬後に建て起こしされる(例えば特許文献1参照)。この場合、運搬後に型締装置と射出装置を組み立てたり、配線または配管をつなぎ直したりする作業が不要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、射出成形機の重心を挟んで両側にクレーンが配置され、クレーンの本数が多かった。
【0006】
本発明の一態様は、射出成形機の姿勢変更に使用するクレーンの本数を低減することができる、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る射出成形機の建て起こし方法は、所定方向から見たときに第1点を中心に回転自在に射出成形機を吊り下げる吊り具を準備する工程と、前記所定方向から見たときに前記射出成形機の重心と前記第1点とを結ぶ直線の片側に配置される第2点を中心に回転自在に前記射出成形機を下方から支える第1支持具を準備する工程と、前記吊り具を上昇させることで、前記所定方向から見たときに前記直線の反対側に配置される第3点を中心に前記射出成形機を回転させる工程と、前記所定方向から見たときに前記射出成形機の重心が回転中心である前記第3点の上を乗り越える前に、前記第1支持具で前記射出成形機を下方から支える工程と、前記第1支持具で前記射出成形機を下方から支えながら前記吊り具を上昇させることで、前記所定方向から見たときに前記第2点を中心に前記射出成形機を回転させる工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、射出成形機の姿勢を変更する途中で第1支持具を用いて射出成形機の回転中心の位置を切り替える。射出成形機の重心を射出成形機の回転中心の片側に配置でき、その片側にのみ吊り具を配置すればよいので、クレーンの本数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
【
図3】
図3は、射出成形機の建て起こし方法の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に続いて射出成形機の建て起こし方法の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4(B)の射出成形機をX軸方向から見た図である。
【
図6】
図6は、第1支持具を使用しない建て起こし方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0011】
(射出成形機)
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が竪型である場合、Z軸方向が型開閉方向である。
【0012】
図1~
図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を昇降させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910は、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。型締装置フレーム910の内部空間に、制御装置700が配置される。射出装置フレーム920は、型締装置フレーム910から上方に延びる2本の支柱と、2本の支柱を連結する複数本の梁とを有する。2本の支柱は、Y軸方向に間隔をおいて配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0013】
(型締装置)
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、上金型810と下金型820とを含む。型締装置100は、上金型810が取付けられる上プラテン110と、下金型820が取付けられる回転テーブル121と、回転テーブル121が回転自在に載置される下プラテン120と、下プラテン120に対し上プラテン110を昇降させる移動機構102と、を有する。
【0014】
上プラテン110は、下プラテン120の上方において昇降させられる。上プラテン110における下プラテン120との対向面(下面)に上金型810が取付けられる。下プラテン120は、型締装置フレーム910に対し固定される。下プラテン120における上プラテン110との対向面(上面)には、回転テーブル121が回転自在に載置される。回転テーブル121の上面には、複数の下金型820が取付けられる。
【0015】
回転テーブル121が所定の角度(例えば180°)回転することで、下金型820が成形位置とエジェクタ位置との間で移動する。成形位置は、型締及び射出が行われる位置である。エジェクタ位置は、成形品の突き出しが行われる位置である。エジェクタ位置は、下金型820にインサート材をセットする段取り位置を兼ねてよい。
【0016】
尚、下金型820の個数は、2つには限定されず、3つ以上でもよい。n個の下金型820は、回転テーブル121の回転によってn個の位置に順番に移動する。また、回転テーブル121が無く、下金型820が下プラテン120に直接に取付けられてもよい。この場合、下金型820の個数は1つでもよい。
【0017】
移動機構102は、下プラテン120に対し上プラテン110を昇降させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、下プラテン120の下方に配置されるトグルサポート130と、トグルサポート130と上プラテン110を連結するタイバー140と、下プラテン120とトグルサポート130の間に配置されるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、トグルサポート130と上プラテン110の間隔Lを調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0018】
トグルサポート130は、下プラテン120の下方において昇降させられる。トグルサポート130は上プラテン110と連結されており、上プラテン110はトグルサポート130と共に昇降させられる。
【0019】
タイバー140は、上プラテン110とトグルサポート130とをZ軸方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば3本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、Z軸方向に沿って配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0020】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0021】
トグル機構150は、下プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、下プラテン120に対しトグルサポート130を昇降させることで上プラテン110を昇降させる。トグル機構150は、トグルサポート130に対して相対的に昇降するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の昇降によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は下プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を相対的に昇降させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130と共に上プラテン110が昇降する。
【0022】
尚、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0023】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を相対的に昇降させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130と共に上プラテン110を昇降させる。型締モータ160は、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されるが、運動変換機構170に直結されてもよい。
【0024】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0025】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、型開工程および型回転工程などを行う。型回転工程は、例えば、型開工程の完了後、次の型閉工程の開始前に行われる。
【0026】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してトグルサポート130に対してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで相対的に上昇させることにより、上プラテン110を下降させ、上金型810を下金型820にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0027】
尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、上プラテン110の位置を検出する上プラテン位置検出器、および上プラテン110の移動速度を検出する上プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0028】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してトグルサポート130に対してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに相対的に上昇させることで、上プラテン110をさらに下降させ、型締力を生じさせる。
【0029】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、上金型810と下金型820との間にキャビティ空間801(
図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0030】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0031】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してトグルサポート130に対してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで相対的に下降させることにより、上プラテン110を上昇させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0032】
型開工程では、型締モータ160を駆動してトグルサポート130に対してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで相対的に下降させることにより、上プラテン110を上昇させ、上金型810を下金型820から離間させる。
【0033】
型開工程の完了後、次の型閉工程の開始前に、型回転工程が行われる。型回転工程では、回転テーブル121を回転し、複数の下金型820の各々を成形位置とエジェクタ位置に順番に配置する。
【0034】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、下側から上方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0035】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、上側から下方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0036】
尚、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、上プラテン110の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッド151の位置(例えば型締位置)や上プラテン110の位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0037】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して上プラテン110に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0038】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば上金型810が下金型820にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、上プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0039】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、上プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の下端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ相対的に昇降不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0040】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0041】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0042】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、上プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。尚、複数の型厚調整機構が組み合わせて用いられてもよい。
【0043】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0044】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0045】
尚、本実施形態では下プラテン120が固定プラテンであり上プラテン110が可動プラテンであるが、下プラテン120が可動プラテンであり上プラテン110が固定プラテンであってもよい。この場合、トグル機構150は、トグルサポート130に対し下プラテン120を昇降させる。
【0046】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。
【0047】
また、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が鉛直方向である竪型であるが、型開閉方向が水平方向である横型でもよい。
【0048】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出す。例えば、エジェクタ装置200は、エジェクタ位置において下金型820から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を昇降させる駆動機構220とを有する。
【0049】
エジェクタロッド210は、下プラテン120の貫通穴に昇降自在に配置される。エジェクタロッド210の上端部は、回転テーブル121の貫通穴を通過し、下金型820のエジェクタプレート826と接触する。
【0050】
エジェクタロッド210は、回転テーブル121の回転時に、回転テーブル121と干渉しないように、回転テーブル121の下方で待機する。エジェクタロッド210は、回転テーブル121の貫通穴から退避できるように、エジェクタプレート826とは連結されない。
【0051】
尚、下金型820が回転テーブル121を介さずに下プラテン120に取付けられる場合、エジェクタロッド210と回転テーブル121とが干渉する虞がないので、エジェクタロッド210とエジェクタプレート826とは連結されてもよい。
【0052】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0053】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで上昇させることにより、エジェクタプレート826を上昇させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で下降させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで下降させる。
【0054】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0055】
(射出装置)
射出装置300はスライドベース302に固定され、スライドベース302は射出装置フレーム920に設けられるガイド301に沿って昇降する。ガイド301は、2本の支柱のそれぞれに固定される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の下端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に昇降自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を昇降させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0056】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の上部に形成される。シリンダ310の上部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも下方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの第1加熱器313と第1温度検出器314とが設けられる。
【0057】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばZ軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに第1加熱器313と第1温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、第1温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が第1加熱器313を制御する。
【0058】
ノズル320は、シリンダ310の下端部に設けられ、金型装置800(詳細には上金型810)に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、第2加熱器323と第2温度検出器324とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が第2加熱器323を制御する。
【0059】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ昇降自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が下方に送られる。成形材料は、下方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の下方に送られシリンダ310の下部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が上昇させられる。その後、スクリュ330を下降させると、スクリュ330下方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0060】
スクリュ330の下部には、スクリュ330を下方に押すときにスクリュ330の下方から上方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が昇降自在に取付けられる。
【0061】
逆流防止リング331は、スクリュ330を下降させるときに、スクリュ330下方の成形材料の圧力によって上方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に上昇する。これにより、スクリュ330下方に蓄積された成形材料が上方に逆流するのを防止する。
【0062】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って下方に送られる成形材料の圧力によって下方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に下降する。これにより、スクリュ330の下方に成形材料が送られる。
【0063】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0064】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で昇降させる駆動源を有していてもよい。
【0065】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧モータなどでもよい。
【0066】
射出モータ350は、スクリュ330を昇降させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を昇降させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0067】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0068】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0069】
尚、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0070】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0071】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を下方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の下方に送られシリンダ310の下部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が上昇させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0072】
計量工程では、スクリュ330から下方の成形材料に適切な圧力を加えるべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで上昇し、スクリュ330の下方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0073】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、下側から上方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0074】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で下降させ、スクリュ330の下方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0075】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、上側から下方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0076】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で下降される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で下降される。
【0077】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速下降または微速上昇が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0078】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を下方に押し、スクリュ330の下端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0079】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0080】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ昇降不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ昇降自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが昇降自在に配置される。
【0081】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であるが、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0082】
(移動装置)
移動装置400は、上プラテン110に対し射出装置300を昇降させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、射出装置移動モータ410、射出装置移動モータ410の回転運動を射出装置300の直線運動(昇降運動)に変換する運動変換機構420などを含む。運動変換機構420は、ねじ軸421と、ねじ軸421に螺合するねじナット422とを含む。ねじ軸421と、ねじナット422との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0083】
例えば、射出装置移動モータ410はスライドベース302に取付けられ、ねじ軸421はスライドベース302に対し回転自在に支持され、ねじナット422は上プラテン110に対し固定される。射出装置移動モータ410を駆動してねじ軸421を回転させると、ねじ軸421が昇降し、上プラテン110に対し射出装置300が昇降する。
【0084】
尚、本実施形態の射出装置移動モータ410は、スライドベース302に取付けられるが、上プラテン110に取付けられてもよい。この場合、ねじ軸421は上プラテン110に対し回転自在に支持され、ねじナット422はスライドベース302に対し固定されてよい。射出装置移動モータ410を駆動してねじ軸421を回転させると、ねじナット422が昇降し、上プラテン110に対し射出装置300が昇降する。
【0085】
尚、本実施形態では移動装置400は射出装置移動モータ410と運動変換機構420とを含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、射出装置移動モータ410と運動変換機構420との代わりに、油圧シリンダが用いられてもよい。
【0086】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、メモリなどの記憶部と、入力インターフェースと、出力インターフェースとを有する。制御装置700は、記憶部に記憶されたプログラムを演算部に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェースで外部からの信号を受信し、出力インターフェースで外部に信号を送信する。
【0087】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、型回転工程および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0088】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、型回転工程および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0089】
尚、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型閉工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0090】
尚、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、型回転工程および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0091】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで上昇させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の下方に蓄積された成形材料の圧力を低減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な上昇を防止できる。
【0092】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで上昇させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の下方に蓄積された成形材料の圧力を
低減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0093】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0094】
尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
【0095】
(射出成形機の建て起こし)
射出成形機10は、型締装置100と射出装置300を組み立てた状態で運搬される。この場合、射出成形機10は、運搬時の高さ制限を解決すべく、
図3(A)に示すように横倒しされた状態でトラックまたは船などで運搬される。運搬時に、射出装置300のガイド301はX軸方向に沿って水平に配置され、射出装置300はガイド301の上で安定に固定されている。射出成形機10は、例えばパレットまたはスキッドなどの台座20の上に載置された状態で、トラックまたは船などで運搬される。
【0096】
射出成形機10は、運搬後に、
図3(A)、
図3(B)、
図4(A)及び
図4(B)に示すように建て起こしされる。本実施形態によれば、型締装置100と射出装置300を組み立てた状態で運搬するので、型締装置100と射出装置300を分割して別々に運搬する場合とは異なり、運搬後に型締装置100と射出装置300を組み立てたり、配線または配管をつなぎ直したりする作業が不要になる。
【0097】
以下、
図3~
図5を参照して、射出成形機10の建て起こし方法の一例について説明する。
図3(A)に示すように、建て起こし方法は、結合具30、吊り具40、第1支持具50、および第2支持具60を準備する工程を有する。なお、後述するように第2支持具60は無くてもよい。以下、結合具30、吊り具40、第1支持具50、および第2支持具60について説明する。
【0098】
結合具30は、吊り具40と射出成形機10を結合する。
図5に示すように、結合具30は、例えばY軸方向に間隔をおいて設けられる不図示の一対のシャックルを含む。X軸方向から見たときに、一対のシャックルは、射出成形機10の重心P0と第1点P1とを結ぶ直線L0を中心に線対称に設けられる。なお、シャックルの数は1つでもよく、X軸方向から見たときに直線L0と重なるようにワイヤー41が設けられてもよい。結合具30は、射出成形機10の第1取付部11にボルトなどで取外し可能に連結される。第1取付部11は、射出装置フレーム920に設けられる。
【0099】
吊り具40は、例えば一対のワイヤー41を含む。一対のワイヤー41は、一対のシャックルとクレーン90のフック91に掛けられる。なお、上記の通りシャックルの数は1つでもよく、その場合、ワイヤー41の数は1つでもよい。
図3(A)に示すように、Y軸方向から見たときに、吊り具40は、第1点P1を中心に回転自在に射出成形機10を吊り下げる。第1点P1は、吊り具40の下端である。
【0100】
第1支持具50は、
図3(A)に示すように建て起こしの開始時には射出成形機10を下方から支えず、
図3(B)に示すように建て起こしの途中から射出成形機10を下方から支える。なお、建て起こしの開始時から建て起こしの途中までは、第2支持具60が射出成形機10を下方から支える。
【0101】
Y軸方向から見たときに、第1支持具50は、第2点P2を中心に回転自在に射出成形機10を下方から支える。第2点P2は、直線L0の片側(例えば建て起こしの開始時には
図3(A)に示すように上側)に配置される。第2点P2は、第1支持具50の上端である。
【0102】
第1支持具50は、Y軸方向に沿って配置される第1回転軸51と、第1回転軸51と直交する第1支柱52と、第1支柱52の下端に設けられる第1フランジ53と、を有する。第1回転軸51と、第1支柱52と、第1フランジ53とは、一体化されている。第1支柱52は、第1回転軸51の軸方向両端に設けられる。
図5に示すようにX軸方向から見たときに、一対の第1支柱52は、直線L0を中心に線対称に設けられ、互いに平行に設けられる。第1フランジ53は、各第1支柱52の下端に設けられる。
【0103】
第1支持具50は、第1回転軸51を回転自在に支持する軸受54を有する。軸受54は、射出成形機10の第2取付部12にボルトなどで取外し可能に連結される。第2取付部12は、型締装置フレーム910に設けられる。なお、軸受54は、第1支持具50の一部ではなく、第2取付部12の一部であってもよい。
【0104】
一対の第1支柱52は、一本の第1回転軸51を介して一体化されているが、一体化されていなくてもよく、第1支柱52ごとに第1回転軸51が設けられてもよい。また、第1支柱52の本数は2本には限定されず、例えば、第1回転軸51の軸方向両端だけではなく軸方向中央にも第1支柱52が設けられてもよい。
【0105】
第2支持具60は、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、建て起こしの開始時から建て起こしの途中まで、第1支持具50よりも先に、射出成形機10を下方から支える。
図4(A)に示すように第1支持具50が射出成形機10を下方から支えるようになると、第2支持具60は射出成形機10を下方から支えなくなる。
【0106】
Y軸方向から見たときに、第2支持具60は、第3点P3を中心に回転自在に射出成形機10を下方から支える。第3点P3は、直線L0を基準として第2点P2とは反対側(例えば建て起こしの開始時には
図3(A)に示すように下側)に配置される。第3点P3は、第2支持具60の上端である。
【0107】
第2支持具60は、Y軸方向に沿って配置される第2回転軸61と、第2回転軸61と直交する第2支柱62と、第2支柱62の下端に設けられる第2フランジ63と、を有する。第2回転軸61と、第2支柱62と、第2フランジ63とは、一体化されている。第2支柱62は、第2回転軸61の軸方向両端に設けられる。
図5に示すようにX軸方向から見たときに、一対の第2支柱62は、直線L0を中心に線対称に設けられ、互いに平行に設けられる。第2フランジ63は、各第2支柱62の下端に設けられる。
【0108】
第2支持具60は、第2回転軸61を回転自在に支持する軸受64を有する。軸受64は、射出成形機10の第3取付部13にボルトなどで取外し可能に連結される。第3取付部13は、型締装置フレーム910に設けられる。なお、軸受64は、第2支持具60の一部ではなく、第3取付部13の一部であってもよい。
【0109】
一対の第2支柱62は、一本の第2回転軸61を介して一体化されているが、一体化されていなくてもよく、第2支柱62ごとに第2回転軸61が設けられてもよい。また、第2支柱62の本数は2本には限定されず、例えば、第2回転軸61の軸方向両端だけではなく軸方向中央にも第2支柱62が設けられてもよい。
【0110】
第2支持具60は、第1支持具50よりも先に、射出成形機10を下方から支えるべく、第1支持具50よりも短くなっている。具体的には、第2支柱62が第1支柱52よりも短くなっている。射出成形機10が横倒しされた状態で、第2支持具60は接地されており、第2フランジ63が接地されている。
【0111】
先ず、
図3(A)に示すように、建て起こし方法は、結合具30、吊り具40、第1支持具50、および第2支持具60を準備する工程を有する。吊り具40が結合具30を介して射出成形機10の第1取付部11に取付けられ、第1支持具50が射出成形機10の第2取付部12に取付けられ、第2支持具60が射出成形機10の第3取付部13に取付けられる。建て起こし開始時には、直線L0はX軸方向に沿って水平に配置される。
【0112】
次に、
図3(B)に示すように、建て起こし方法は、クレーン90で吊り具40を上昇させることで、Y軸方向から見たときに第3点P3を中心に射出成形機10を回転させる工程を有する。この工程において、第2支持具60を使用することが好ましく、第2支持具60で射出成形機10を下方から支えることが好ましい。
【0113】
第2支持具60は、第2フランジ63が接地され、第2支柱62が鉛直に立てられた状態で、射出成形機10を下方から回転自在に支持する。これにより、射出成形機10の角を浮かせることができ、射出成形機10の角が潰れることを抑制できる。なお、射出成形機10の角が十分に頑丈であれば、その角が第3点P3であってもよく、第2支持具60は無くてもよい。
【0114】
また、
図3(B)に示すように、建て起こし方法は、Y軸方向から見たときに射出成形機10の重心P0が回転中心である第3点P3の上を乗り越える前に、第1支持具50で射出成形機10を下方から支える工程を有する。第1支持具50は、第1フランジ53が接地され、第1支柱52が鉛直に立てられた状態で、射出成形機10を下方から回転自在に支持する。
【0115】
次に、
図4(A)に示すように、建て起こし方法は、第1支持具50で射出成形機10を下方から支えながらクレーン90で吊り具40を上昇させることで、Y軸方向から見たときに第2点P2を中心に射出成形機10を回転させる工程を有する。この工程の途中で、射出成形機10の重心P0が第3点P3の上を乗り越える。この工程は、
図4(B)に示すようにY軸方向から見たときに直線L0が鉛直に立つまで行われる。
【0116】
次に、図示しないが、Y軸方向から見たときに直線L0が鉛直になった状態で、クレーン90が吊り具40を更に上昇させ、吊り具40によって射出成形機10を宙吊りにする。その後、第1支持具50および第2支持具60が射出成形機10から取外される。次いで、クレーン90は、吊り具40を下降させることで、射出成形機10を横引きローラの上に載せる。その後、射出成形機10は、横引きローラの上に載せたまま、据え付け位置まで移動させる。据え付け位置は、射出成形機10を据え付ける位置である。
【0117】
なお、横引きローラは無くてもよく、クレーン90が射出成形機10を据え付け位置まで移動させてもよい。
【0118】
ここで、
図6を参照して、第1支持具50を使用しない場合の問題点を説明する。この場合、
図6(A)と
図6(B)から明らかなように、Y軸方向から見たときに射出成形機10の重心P0が射出成形機10の回転中心(第3点P3)の上を乗り越えることで、射出成形機10の回転モーメントが逆向きになり、射出成形機10が急激に起き上がる恐れがある。この問題を解消するには、
図6において回転中心(第3点P3)の右側だけではなく左側にも吊り具40を配置する必要があり、クレーン90の本数が多くなる。
【0119】
本実施形態によれば、
図3~
図4に示すように、所定方向(射出成形機10の回転中心線に沿う方向、本実施形態ではY軸方向)から見たときに、射出成形機10の建て起こしの途中で第1支持具50を用いて射出成形機10の回転中心の位置を第3点P3から第2点P2に切り替える。常に射出成形機10の重心P0を射出成形機10の回転中心の片側(
図3及び
図4において右側)に配置でき、その片側にのみ吊り具40を配置すればよいので、クレーン90の本数を低減できる。
【0120】
本実施形態によれば、クレーン90の本数を1本に低減することも可能である。但し、クレーン90の本数は、複数本であってもよい。例えば、一対のワイヤー41が別々のクレーン90のフック91に掛けられてもよい。いずれにしろ、常に射出成形機10の重心P0を射出成形機10の回転中心の片側(
図3及び
図4において右側)に配置でき、その片側にのみ吊り具40を配置すればよいので、クレーン90の本数を低減できる。
【0121】
(射出成形機の横倒し)
次に、
図3~
図5を再度参照して、射出成形機10の横倒し方法の一例について説明する。射出成形機10の横倒しは、射出成形機10の建て起こしとは逆の手順で行われる。射出成形機10の横倒しは、例えば、射出成形機10の製造後に、運搬時の高さ制限を解決すべく行われる。
【0122】
先ず、図示しないが、結合具30が射出成形機10に取付けられ、結合具30が吊り具40と射出成形機10を結合する。Y軸方向から見ると、射出成形機10の重心P0と第1点P1とを結ぶ直線L0は、Z軸方向に沿って鉛直に立てられている。
【0123】
次に、Y軸方向から見たときに直線L0が鉛直になった状態で、クレーン90が吊り具40を上昇させ、吊り具40によって射出成形機10を宙吊りにする。その後、第1支持具50および第2支持具60が射出成形機10に取付けられる。第1支柱52と第2支柱62は、自重で鉛直に立てられている。第1支柱52は、第2支柱62よりも長く、第2支柱62よりも下方に突出している。
【0124】
次に、Y軸方向から見たときに直線L0が鉛直になった状態で、クレーン90が吊り具40を下降させる。その結果、
図4(B)に示すように、第1支持具50が、第2支持具60よりも先に接地する。第1支持具50は、第1フランジ53が接地され、第1支柱52が鉛直に立てられた状態で、射出成形機10を下方から回転自在に支持する。
【0125】
次に、
図4(A)に示すように、横倒し方法は、第1支持具50で射出成形機10を下方から支えながらクレーン90で吊り具40を下降させることで、Y軸方向から見たときに第2点P2を中心に射出成形機10を回転させる工程を有する。この工程は、
図3(B)に示すように、Y軸方向から見たときに射出成形機10の重心P0が第3点P3の上を乗り越え、その後に第2支持具60が接地するまで行われる。
【0126】
第2支持具60は、第2フランジ63が接地され、第2支柱62が鉛直に立てられた状態で、射出成形機10を下方から回転自在に支持する。これにより、射出成形機10の角を浮かせることができ、射出成形機10の角が潰れることを抑制できる。なお、射出成形機10の角が十分に頑丈であれば、その角が第3点P3であってもよく、第2支持具60は無くてもよい。
【0127】
次に、
図3(A)に示すように、横倒し方法は、クレーン90で吊り具40を下降させることで、Y軸方向から見たときに第3点P3を中心に射出成形機10を回転させる工程を有する。この工程は、
図3(A)に示すように、Y軸方向から見たときに、直線L0がX軸方向に沿って水平に配置されるまで行われる。
【0128】
このようにして、射出成形機10は、台座20の上に載置される。射出装置300のガイド301はX軸方向に沿って水平に配置され、射出装置300がガイド301の上で安定に固定される。射出成形機10は、台座20の上に載置された状態で、トラックまたは船などで運搬される。
【0129】
本実施形態によれば、
図3~
図4に示すように、所定方向(射出成形機10の回転中心線に沿う方向、本実施形態ではY軸方向)から見たときに、射出成形機10の横倒しの途中で第1支持具50を用いて射出成形機10の回転中心の位置を第2点P2から第3点P3に切り替える。常に射出成形機10の重心P0を射出成形機10の回転中心の片側(
図3及び
図4において右側)に配置でき、その片側にのみ吊り具40を配置すればよいので、クレーン90の本数を低減できる。
【0130】
(射出成形機)
次に、
図3~
図5を再度参照して、射出成形機10の一例について説明する。射出成形機10は、吊り具40が取付けられる第1取付部11と、第1支持具50が取付けられる第2取付部12と、を備える。射出成形機10は、第2支持具60が取付けられる第3取付部13をさらに備えてもよい。第2支持具60が無い場合、第3取付部13は無くてもよい。
【0131】
吊り具40は、例えば結合具30を介して第1取付部11に取付けられる。第1取付部11は、例えば、第1取付部11に結合具30を締結するボルトがねじ込まれるボルト穴を有する。なお、吊り具40は、射出成形機10の一部であってもよく、取外さなくてもよい。
【0132】
第2取付部12は、例えば、第2取付部12に第1支持具50を締結するボルトがねじ込まれるボルト穴を有する。同様に、第3取付部13は、第3取付部13に第2支持具60を締結するボルトがねじ込まれるボルト穴を有する。なお、第1支持具50および第2支持具60は、射出成形機10の一部であってもよく、取外さなくてもよい。
【0133】
以上、本発明に係る射出成形機の建て起こし方法、射出成形機の横倒し方法、および射出成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0134】
10 射出成形機
40 吊り具
50 第1支持具
60 第2支持具
P0 重心
P1 第1点
P2 第2点
P3 第3点