(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075942
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】循環水の回路構造
(51)【国際特許分類】
F01P 3/20 20060101AFI20240529BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20240529BHJP
F01P 7/02 20060101ALI20240529BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20240529BHJP
F01P 11/00 20060101ALI20240529BHJP
F01P 5/04 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
F01P3/20 B
B60K11/02
F01P3/20 H
F01P7/02 K
F01P7/16 504
F01P11/00 Z
F01P5/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187227
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 隆
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AB01
(57)【要約】
【課題】循環水の回路構造においては、注水の効率を向上させ、また、冷却水回路内の圧力を逃せるようにする。
【解決手段】所定部品を冷却するための冷却水回路と、加熱ヒータが配設されたヒータ回路と、前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを直結させた状態と、前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを分断させた状態と、を切り替える4方向バルブと、空気溜まり部を有し前記冷却水回路又は前記ヒータ回路に配設されたリザーブタンクと、を備え、前記冷却水回路及び前記ヒータ回路は、圧力逃し経路と前記リザーブタンクとを介して互いに連通しており、前記圧力逃し経路は、前記リザーブタンクの空気溜まり部に接続された、循環水の回路構造。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定部品を冷却するための冷却水回路と、
加熱ヒータが配設されたヒータ回路と、
前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを直結させた状態と、前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを分断させた状態と、を切り替える4方向バルブと、
空気溜まり部を有し前記冷却水回路又は前記ヒータ回路に配設されたリザーブタンクと、を備え、
前記冷却水回路及び前記ヒータ回路は、圧力逃し経路と前記リザーブタンクとを介して互いに連通しており、
前記圧力逃し経路は、前記リザーブタンクの空気溜まり部に接続された、循環水の回路構造。
【請求項2】
前記圧力逃し経路は、前記4方向バルブにより前記冷却水回路と前記ヒータ回路とが直結したときに前記所定部品よりも下流側かつ前記4方向バルブの上流側となるように配設され、
前記リザーブタンクは、前記4方向バルブにより前記冷却水回路と前記ヒータ回路とが直結したときに前記4方向バルブの下流側となるように配設され、
前記加熱ヒータは、前記4方向バルブにより前記冷却水回路と前記ヒータ回路とが直結したときに前記所定部品の上流側となるように配設された、請求項1に記載の循環水の回路構造。
【請求項3】
前記圧力逃し経路は、前記冷却水回路及び前記ヒータ回路よりも小径に形成された、請求項1又は2に記載の循環水の回路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、循環水の回路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、BEV(Battery Electric Vehicle)等の電動車両に搭載される循環水の回路構造は、通常時において、水をヒータによって加熱して循環させて車両内の暖房とするヒータ回路と、車両のバッテリ等を冷却するための冷却水回路と、ヒータ回路と冷却水回路とを接続しヒータ回路と冷却水回路とを分断させた状態とする4方向バルブと、リザーブタンクと、を備えているタイプがある。このような循環水の回路構造は、車両環境が低温時の場合には、バッテリ加温のため、ヒータ回路と冷却水回路とを4方向バルブで直結した状態に切り替える。
なお、HEV(Hybrid Electric Vehicle)では、例えば、水をエンジンで加熱して車両内で循環させる。また、BEVにおいて、車両のバッテリ等を、回路を流れる水ではなく冷媒で冷却するタイプもある。例えば、特許文献1に開示されている温度調整システムの発明では、独立した冷却経路を、4方向バルブで独立した状態と連通した状態とに切り換え可能としている。また、例えば、特許文献2又は特許文献3に開示されている発明においては、回路内の水の流れを3方向バルブで制御するとともに、独立した冷却経路をリザーブタンクを介して連通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-218135号公報
【特許文献2】特開2017-106432号公報
【特許文献3】特開平10-266856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路構造に注水する時、リザーブタンクの上側の注水口から水を入れるため、水が回路構造内に最初に入るリザーブタンクの出口側のポートは、リザーブタンク下部に設定し、流水方向に水が入る。回路構造内を流れる水は、回路構造内のエアとともに、リザーブタンクの上部に設定された入口側のポートに戻る。よって、注水時に、該入口側のポートには水が入らず、入口側のポートに戻ってくる水によりエアが回路構造内から抜かれる。しかし、注水性確保のため、水の入口側はリザーブタンクの上部に設定し、最初に水が入る出口側はリザーブタンクの下部に設定しなければならず、搭載制約となる。
【0005】
また、ヒータ回路と冷却水回路とが分断している場合、例えばリザーブタンクが配設されていない冷却水回路内の圧力が増加し、例えばバッテリの内圧強度に影響を与え、故障原因となる。またバッテリ以外の機器も許容内圧に保つ必要があるし、圧力の増加は回路に用いるホースの水漏れ要因ともなる。よって、電動車両等に搭載される循環水の回路構造においては、注水の効率を向上させ、また、回路内の圧力増減を吸収可能にするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本実施形態の循環水の回路構造は、所定部品を冷却するための冷却水回路と、加熱ヒータが配設されたヒータ回路と、前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを直結させた状態と、前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを分断させた状態と、を切り替える4方向バルブと、空気溜まり部を有し前記冷却水回路又は前記ヒータ回路に配設されたリザーブタンクと、を備え、前記冷却水回路及び前記ヒータ回路は、圧力逃し経路と前記リザーブタンクとを介して互いに連通しており、前記圧力逃し経路は、前記リザーブタンクの空気溜まり部に接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態の循環水の回路構造によれば、注水時に、冷却水回路内及びヒータ回路内から、エアを適切に圧力逃し経路を介してリザーブタンクで抜くことができ、注水効率を向上させる。また、ヒータ回路と冷却水回路とが分断している状態において、発生する圧力増減を、圧力逃し経路を介してリザーブタンクで吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、電動車両に搭載される本実施形態の循環水の回路構造、インバータ冷却回路、及びヒートポンプシステムを説明する説明図である。
【
図2】
図2は、ヒータ回路と冷却水回路との電動車両内における高低差、及び循環水の回路構造に対する注水を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、ヒータ回路と冷却水回路とが分断した状態における、ヒータ回路内の加熱された水の流れと、冷却水回路内の冷却された水の流れとを説明する説明図である。
【
図4】
図4は、ヒータ回路と冷却水回路とが直結した状態における、循環水の回路構造内の水の流れを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本実施形態の循環水の回路構造1の実施形態を説明する。実施形態の循環水の回路構造1は、例えば、BEV等の電動車両9に搭載される。循環水の回路構造1は、例えば、冷却水回路3と、ヒータ回路4とを備えている。冷却水回路3は、バッテリ回路とも称される。
【0010】
冷却水回路3は、冷却配管36でつながれた循環路であり、例えば、電動のウォータポンプ30(以下、ポンプ30とする)と、冷却水回路3を流れる水の温度を測定する水温センサ31と、バッテリ32と、電子ユニット33と、チラー35と、4方向バルブ34とが、上記の順で配設されている。なお、本実施形態において、冷却水回路3が冷却する対象である所定部品はバッテリ32となっているが、前記所定部品はバッテリ32に限定されない。また、冷却水回路3に配設される構成は、上記各構成に限定されない。
【0011】
バッテリ32は、組電池及びその他の電子デバイス等から構成されている。電子ユニット33は、バッテリ32の充放電電流を検知する電流センサ、並びに充電、電力変換、及び電力分配の機能を集約したユニットである。ポンプ30は、4方向バルブ34とバッテリ32との間の冷却配管36に配設される。ポンプ30は、チラー35で冷却された冷却水をバッテリ32に供給するように冷却水を循環させる駆動源である。
【0012】
4方向バルブ34は、チラー35とポンプ30との間の冷却配管36に配設される。4方向バルブ34は、例えば、ケーシング340内にディスクバルブ345を備えている。ディスクバルブ345は、パルスモータ等によって、ケーシング340内で回転可能である。パルスモータに供給する駆動パルス数によって、原点位置からのディスクバルブ345の回転角度が認識可能となる。4方向バルブ34のケーシング340には、第一ポート341、第二ポート342、第三ポート343、及び第四ポート344が形成されており、第一ポート341及び第二ポート342が冷却配管36にそれぞれ連通している。また、第三ポート343及び第四ポート344が、ヒータ回路4のヒータ配管48にそれぞれ連通している。
【0013】
4方向バルブ34は、
図1に示す状態においては、横向きで示すディスクバルブ345(以下、分断モードのディスクバルブ345とする)によって、第一ポート341と第二ポート342とを連通させ、第三ポート343と第四ポート344とを連通させ、冷却水回路3とヒータ回路4とを分断する。すなわち、4方向バルブ34は、分断モードのディスクバルブ345によって、冷却水回路3とヒータ回路4とを互いに独立した状態とする。4方向バルブ34のディスクバルブ345が、横向きで示す状態から回転して
図2の縦向きで示す状態になると、第一ポート341と第三ポート343とが連通し、第二ポート342と第四ポート344とが連通した状態となり、冷却水回路3とヒータ回路4とが直結した状態となる。
図2に示す縦向きで示すディスクバルブ345を、以下、直結モードのディスクバルブ345とする。
【0014】
ヒータ回路4は、ヒータ配管48でつながれた循環路であり、例えば、電動のウォータポンプ40(以下、ポンプ40とする)と、放熱器として機能する水冷コンデンサ41と、高電圧式の水を加熱する加熱ヒータ42(以下、ヒータ42とする)と、水温センサ43と、加熱された水で空気を加熱し車両内暖房とする熱交換器であるヒータコア44と、水温センサ45と、4方向バルブ34と、リザーブタンク46とが、上記の順で配設されている。なお、ヒータ回路4に配設される構成は、上記各構成に限定されない。
【0015】
ポンプ40は、リザーブタンク46と水冷コンデンサ41との間のヒータ配管48に備えられ、ヒータ42で加熱された水をヒータコア44に供給するように加熱された水を循環させる駆動源である。水冷コンデンサ41は、ヒータ回路4内を流れる水の温度を下げる場合に作動する。ヒータコア44の前後に配設された水温センサ43と水温センサ45とは、ヒータコア44に供給される水の温度又はヒータコア44を通過した水の温度を測定する。
【0016】
図2は、循環水の回路構造1のヒータ回路4を構成する上述の各構成要素、及び冷却水回路3を構成する上述の各構成要素の、電動車両9内における高低差を具体的に示す説明図である。本明細書において、便宜上、
図2に示す+Z方向と-Z方向とを含むZ軸方向を電動車両9の高さ方向として、+Z方向をおおよそ電動車両9の上方向として、+Z方向に向かうにつれて高さが高くなるとする。また、-Z方向をおおよそ電動車両9の下方向として、-Z方向に向かうにつれて高さが低くなるとする。冷却水回路3はヒータ回路4よりも電動車両9内において相対的により低い位置に配設されている。
【0017】
図2に示すように、ヒータ回路4に配設されるリザーブタンク46は、例えば、ヒータ回路4及び冷却水回路3の中でも最も電動車両9内における上方側に配設されている。即ち、リザーブタンク46は、ヒータ回路4の中でも相対的に高い位置に位置する水冷コンデンサ41、ヒータコア44、及びヒータ42、並びに冷却水回路3のチラー35、及び電子ユニット33よりも、電動車両9における高い位置に配設されている。
【0018】
リザーブタンク46は、例えば、密閉型リザーブタンクである。リザーブタンク46は、例えば、硬質樹脂材等で構成され、水入口461と、タンク内部460から水をヒータ配管48に流出させる水出口462と、タンク内部460に対する回路構造1外部からの水の注水時に使用され加圧キャップ等を備える注水口463と、を備えている。なお、
図2のように、循環水の回路構造1に注水を行う場合には、水入口461は、注水された水をヒータ回路4内に流出させる。
【0019】
本実施形態において、例えば水入口461と水出口462は、リザーブタンク46の底部464に形成されている。水入口461は、ヒータ配管48を介して4方向バルブ34の第三ポート343に連通している。また、水出口462は、ヒータ配管48を介してポンプ40に連通している。また、注水口463は、例えば、リザーブタンク46の最上部となる天壁466に形成されている。
【0020】
リザーブタンク46には、許容最大水位467が設定されている。タンク内部460において許容最大水位467よりも上方の空間は、ヒータ回路4と冷却水回路3との増加した圧力を逃すための空気溜まり部468となる。例えば、ヒータ回路4と冷却水回路3とが独立している場合に、冷却水回路3内の増加した圧力を、圧力逃し経路50により空気溜まり部468に逃すことができる。許容最大水位467は、例えば、リザーブタンク46の側壁465に予め設定された許容最大水位467を示す図示しない印等によって定められる。なお、許容最大水位467は、側壁465に予め設定された図示しない印によって定められる形態に限定されず、リザーブタンク46の内部の体積などによって定められてもよい。水入口461と水出口462は、共に底部464に形成されている構成に限定されず、リザーブタンク46の例えば側壁465の少なくとも許容最大水位467よりも低い位置に形成されていてもよい。
【0021】
冷却水回路3及びヒータ回路4は、
図2に示す圧力逃し経路50とリザーブタンク46とを介して互いに連通している。圧力逃し経路50の一端501は、リザーブタンク46の空気溜まり部468に接続されている。圧力逃し経路50は、金属配管又はゴムホースで構成されており、圧力逃し経路50の一端501は、圧力逃し経路50の他端502よりも、電動車両9の高さ方向においてより高い位置にある。圧力逃し経路50は、注水時における回路構造1内に存在するエアのエア抜き経路としても機能する。
【0022】
例えば、リザーブタンク46の側壁465の許容最大水位467よりも高い箇所に、接続口469が形成されている。圧力逃し経路50の一端501は接続口469を介して空気溜まり部468に連通している。
【0023】
圧力逃し経路50の他端502は、冷却水回路3において冷却水回路3内に存在するエア(空気)が注水時において抜けやすい電動車両9の高さ方向における高めの箇所と接続される。具体的には、
図2に示すように、ヒータ回路4は相対的に冷却水回路3よりも電動車両9内において高さ方向における上側に位置しているが、冷却水回路3のチラー35は、ヒータ回路4の水冷コンデンサ41やヒータコア44等と同様に電動車両9内において高さ方向における上側に位置している。そして、チラー35と4方向バルブ34の第一ポート341とを接続する冷却配管36は、例えば、電動車両9内における高い位置に配置された高位置配管361と、高位置配管361に接続され降下するように延び高さ方向において低い位置に配設され4方向バルブ34につながる低位置配管362とを備えている。そして、圧力逃し経路50の他端502は、高位置配管361に接続されている。
【0024】
本実施形態において、例えば、圧力逃し経路50の管径は、冷却水回路3の冷却配管36の管径、及びヒータ回路4のヒータ配管48の管径よりも小径に形成されている。
【0025】
図1に示すように、電動車両9は、循環水の回路構造1の他に、例えば、インバータ冷却回路2と、ヒートポンプシステム7と、を備えている。冷却水回路3、ヒータ回路4、及びヒートポンプシステム7よりも例えば電動車両9のより外部側に配設されたインバータ冷却回路2は、配管25でつながれた循環路である。インバータ冷却回路2は、インバータ冷却回路2を流れる水の熱を外気との熱交換を通じて放熱するラジエータ20と、ラジエータ20に接続されたリザーブタンク21と、が配設されている。また、インバータ冷却回路2は、例えば、ポンプ22と、ポンプ22が回ることで冷却水が送られるインバータ24と、インバータ冷却回路2を流れる水の温度を測定する水温センサ23と、が配設されている。インバータ24は、例えば、図示しない走行用モータと直流電流を交流に変換し、走行用モータに供給する。
【0026】
例えばカーエアコン用のヒートポンプシステム7は、配管70でつながれた循環路である。ヒートポンプシステム7は、大気と冷媒との熱交換を行う空冷コンデンサ71と、ヒートポンプシステム7内を流れる冷媒を圧縮して循環させる駆動源である電動コンプレッサ72と、エバポレータ73と、アキュームレータ(圧力タンク)74と、チラー75と、水冷コンデンサ76と、配管70の各所に配設された電気式膨張弁772と、電磁弁773と、が配設されている。
【0027】
例えば、従来の循環水の回路構造には、ヒータ回路と冷却水回路とにそれぞれリザーブタンクを1つずつ配設したタイプがある。このリザーブタンクを2つ備える循環水の回路構造では、ヒータ回路と冷却水回路とが分断した状態において、各回路ごとに各リザーブタンクによって圧力逃しができる。しかし、リザーブタンクが2つ必要なためコストが増える。また、空の回路構造に注水を行う際に、注水性を確保するため、それぞれのリザーブタンクにおける出入口の搭載制約が厳しい。また、リザーブタンクが2つあるため、それぞれのリザーブタンクで許容最大水位の液面管理を行うことが難しい。
【0028】
例えば、従来の循環水の回路構造には、3方向バルブによりヒータ回路と冷却水回路とを接続するタイプがある。この場合、3方向バルブの開閉に関わらず、ヒータ回路と冷却水回路とは1方向分はつながっており、ヒータ回路のみにリザーブタンクを1つ配設していても、この1つのリザーブタンクのみでヒータ回路と冷却水回路との圧力逃しができる。しかし、3WAYジョイントや水ホースのような配管のコストが増える。また、空の回路構造に注水を行う際に、注水性を確保するため、それぞれのリザーブタンクにおける出入口の搭載制約が厳しい。さらに、注水時に回路内に存在しているエアの逃げ道がなくなり、注水回数が増え、注水時間がかかる。
【0029】
例えば、従来の循環水の回路構造には、4方向バルブでヒータ回路と冷却水回路とを接続し、かつヒータ回路のヒータ配管と冷却水回路の冷却水配管とを直接、圧力逃し経路で接続するタイプがある。この場合、4方向バルブの開閉に関わらず、ヒータ回路と冷却水回路とは1方向分はつながっており、ヒータ回路のみにリザーブタンクを1つ配設していても、この1つのリザーブタンクのみでヒータ回路と冷却水回路との圧力逃しができる。しかし、空の回路構造に注水を行う際に、注水性を確保するため、リザーブタンクにおける出入口の搭載制約が厳しい。さらに、注水時に回路内で1方通行で注水を行うため、注水時間がかかる。
【0030】
上記のような従来の循環水の回路構造に存在していた課題を解決できる本実施形態の循環水の回路構造1に対して、注水を行い、回路構造1を使用可能にする場合について説明する。注水をする場合には、
図2に示すように、ヒータ回路4と冷却水回路3とが4方向バルブ34により直結した状態に設定される。そして、リザーブタンク46の注水口463の加圧キャップが外されて、作業者が注水口463からリザーブタンク46内に水を注ぎこんでいく。
【0031】
リザーブタンク46に水が注水されるのと並行して、リザーブタンク46の底部464に形成された水出口462から、水がヒータ回路4のポンプ40、水冷コンデンサ41、ヒータ42、ヒータコア44、4方向バルブ34の第四ポート344、第二ポート342、冷却水回路3の冷却配管36、ポンプ30、バッテリ32、電子ユニット33、チラー35の順で流れていく。また、このように流れる水と共に、上記流路に存在していたヒータ回路4及び冷却水回路3内のエアもチラー35まで流れていく。さらに、チラー35から高位置配管361に流れた水とエアとから、高位置配管361に接続された圧力逃し経路50を介してリザーブタンク46の空気溜まり部468にエアが移動するため、エア抜きされる。
【0032】
注水時においては、リザーブタンク46の底部464に形成された水入口461からも、水が4方向バルブ34の第三ポート343、第一ポート341、冷却水回路3の低位置配管362の順で流れていく。そしてこのように流れる水と共に、上記流路に存在していたヒータ回路4及び冷却水回路3内のエアも低位置配管362まで流れていく。さらに、低位置配管362の水は、高位置配管361で水出口462側から流れてきた水と合流する。また、低位置配管362から高位置配管361に流れた水とエアとから、高位置配管361に接続された圧力逃し経路50を介してリザーブタンク46の空気溜まり部468にエアが移動するため、エア抜きされる。したがって、注水時に、ヒータ回路4内に存在していたエア及び冷却水回路3に存在していたエアが、適切に抜かれていく。
【0033】
このように、注水時に、エアを適切に冷却水回路3内及びヒータ回路4内から圧力逃し経路50を介してリザーブタンク46で抜くことができるため、注水回数及び注水時間を少なくし注水の効率を向上させる。なお、本実施形態のように、リザーブタンク46の底部464に水入口461と水出口462とを形成することで、1回の注水での回路構造1内への注水率を高くすることができる。これにより、従来の循環水の回路構造と異なり、本実施形態の循環水の回路構造1は、注水完了までの注水とエア抜きの作業をより少ない回数で済ませることができ、注水時間を短縮できる。
【0034】
また、従来の循環水の回路構造では、入口位置が高過ぎる場合、回路構造を流れて戻ってきた水がリザーブタンク内の液面に落ち、リザーブタンク内の水中にエアを巻き込む。回路構造内にエアが混入した場合、水の比熱とエアの比熱とが異なるため、冷却性能と温調性能が低下する。一方、リザーブタンクの入口位置が低過ぎる場合、注水時にリザーブタンク入口から水が逆流し、流水方向とは反対方向にも水が回路構造内に入り、エア抜き経路を塞ぎ、回路構造内のどこからもエアが抜けなくなる。よって、注水をしてからポンプを回しエア抜き作業を何度も繰り返す必要があり、注水とエア抜き作業とを実施する回数が増える。このように、従来の循環水の回路構造は搭載制約があったが、本実施形態のように、例えば水入口461と水出口462は、共にタンク内部460の底部464に形成されているため、従来の循環水の回路構造よりも、水出入口の搭載制約を緩和できる。
【0035】
次に、注水が完了したヒータ回路4と冷却水回路3の通常時における水の流れについて説明する。
図3に示すように、通常時において、4方向バルブ34はディスクバルブ345を分断モードとし、ヒータ回路4と冷却水回路3とを分断した状態に設定する。
【0036】
ヒータ回路4のポンプ40が作動することで、水が、水冷コンデンサ41、ヒータ42、ヒータコア44、4方向バルブ34の第四ポート344、4方向バルブ34の第三ポート343、リザーブタンク46の順で流れて、ヒータ回路4を加熱された水が循環する。そして、ヒータコア44による電動車両9内の暖房が機能する。
【0037】
また、冷却水回路3のポンプ30が作動することで、水が、バッテリ32、電子ユニット33、チラー35、4方向バルブ34の第一ポート341、4方向バルブ34の第二ポート342の順で流れて、冷却水回路3を冷却された水が循環し、バッテリ32が冷却される。ここで、本実施形態においては、圧力逃し経路50の管径は、冷却水回路3の冷却配管36の管径よりも小径に形成されている。また、圧力逃し経路50は、一本路となっている。そのため、冷却水回路3内の圧力が許容された範囲となっている状態においては、冷却水回路3を循環する冷却された水が、圧力逃し経路50を通りヒータ回路4内に流れ込むことを抑制できる。即ち、細い圧力逃し経路50には、予め水が充満しているので、圧力逃し経路50の水が、ヒータ回路4と、回路内圧力が許容される範囲内となっている冷却水回路3との熱交換を遮断する壁のような役割を果たす。よって、ヒータ回路4及び冷却水回路3の作動効率を高く保つことが可能となる。
【0038】
例えば、水が循環する冷却水回路3と水が循環するヒータ回路4とを分断した状態が所定時間続くことで、リザーブタンク46が配設されていない冷却水回路3内の圧力が増加する。冷却水回路3内の圧力が許容される範囲を超えそうな状態まで上昇すると、冷却水回路3内を循環する水が圧力逃し経路50にも流れてヒータ回路4のリザーブタンク46内に入るため、リザーブタンク46によって冷却水回路3の圧力増加が吸収される。即ち、冷却水回路3内の圧力が許容された範囲に収まるように圧力逃しが行われる。したがって、冷却水回路3に配設されたバッテリ32の電子デバイスの流路内圧増加を緩和でき、バッテリ32の信頼性を向上させることができる。また、ヒータ回路4と冷却水回路3との内圧変動が少なくなるため、4方向バルブ34はシール緊迫力を落としてもシールを押し付けるスプリングがシール性を担保でき、互いに独立した状態のヒータ回路4及び冷却水回路3の作動効率を高く保てる。即ち、4方向バルブ34が内圧変動によりシールできなくなり、混流させたくない場合にヒータ回路4と冷却水回路3の温度差のある水が混ざってしまうといった事態が生じることを防ぐ。また、4方向バルブ34のディスクバルブ345を切り替える動力を増加させる必要がないため、電費が良化する。このように、従来の循環水の回路構造と異なり、本実施形態の循環水の回路構造1は、リザーブタンク46が一つだけであっても、冷却水回路3内の圧力を逃すことができる。
【0039】
次に、車両環境が低温時となっている場合等において、4方向バルブ34は、冷却水回路3のバッテリ32を加温するために、ディスクバルブ345を直結モードとする。これにより、
図4に示すように冷却水回路3とヒータ回路4とが直結する。
【0040】
水がヒータ回路4のポンプ40、水冷コンデンサ41、ヒータ42、ヒータコア44、4方向バルブ34の第四ポート344、4方向バルブ34の第二ポート342、冷却水回路3の冷却配管36、ポンプ30、バッテリ32、電子ユニット33、チラー35、4方向バルブ34の第一ポート341、第三ポート343、ヒータ回路4のリザーブタンク46の順で循環する。したがって、バッテリ32は、ヒータ回路4内で加熱された水によって温められる。なお、チラー35は、バッテリ32を加温するために、
図4に示す状態においては作動していない。
【0041】
例えば、本実施形態においては、
図4に示すように、バッテリ32を加温させるために4方向バルブ34により冷却水回路3とヒータ回路4とを直結したときに、圧力逃し経路50は、所定部品であるバッテリ32よりも下流側かつ4方向バルブ34の上流側となるように配設され、リザーブタンク46は4方向バルブ34の下流側となるように配設され、加熱ヒータ42はバッテリ32の上流側となるように配設されている。よって、ヒータ回路4を流れる加熱された水を圧力逃し経路50の分岐よりも前にバッテリ32に流入させている。したがって、バッテリ32の暖気促進をより図ることができる。また、上記加熱された水の循環において、チラー35を通過した水の一部は、高位置配管361に接続された圧力逃し経路50からリザーブタンク46に流れ、リザーブタンク46内において4方向バルブ34を通過してきた水と合流する。したがって、4方向バルブ34を通過する水を、圧力逃し経路50が循環流路として機能している分だけ減らすことができ、4方向バルブ34の通水抵抗を軽減することができる。
【0042】
さらに、本実施形態において、圧力逃し経路50は、バッテリ32からチラー35までを接続する冷却配管36ではなく、チラー35よりも下流側の高位置配管361に接続されて高位置配管361から分岐している。したがって、冷却水回路3とヒータ回路4とが直結している状態(バッテリ32を温めている状態)において、チラー35は作動していないが、仮に電子ユニット33からチラー35までを接続する冷却配管36から圧力逃し経路50がリザーブタンク46に向かって分岐する構成となっている場合や、仮にバッテリ32から電子ユニット33までを接続する冷却配管36から圧力逃し経路50がリザーブタンク46に向かって分岐する構成となっている場合等よりも、チラー35や電子ユニット33により多くの水が流れる。即ち、仮に電子ユニット33からチラー35までを接続する冷却配管36から圧力逃し経路50がリザーブタンク46に向かって分岐する構成となっている場合には、圧力逃し経路50に流れる水があることから、電子ユニット33に流れる水(バッテリ32により熱を奪われた水)が相対的に減り、直結状態においても作動している電子ユニット33に対する冷却が十分に発揮できない場合がある。これに対して、
図4に示すように、圧力逃し経路50が、チラー35よりも下流側の高位置配管361に接続されて高位置配管361から分岐しているため、電子ユニット33に流れる水が減ることが無くなる。よって、冷却水回路3とヒータ回路4とが直結した状態においても作動している電子ユニット33に対する冷却が、十分に担保される。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1:循環水の回路構造
2:インバータ冷却回路
3:冷却水回路 30:ウォータポンプ 32:バッテリ 33:電子ユニット
34:4方向バルブ 35:チラー 36:冷却配管 361:高位置配管
4:ヒータ回路 40:ウォータポンプ 41:水冷コンデンサ 42:加熱ヒータ
44:ヒータコア 46:リザーブタンク 461:水入口 462:水出口
468:空気溜まり部 48:ヒータ配管
50:圧力逃し経路
7:ヒートポンプシステム
9:電動車両