(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075944
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】測定器及び含水率測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 19/10 20060101AFI20240529BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G01N19/10 A
E04G23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187229
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】東 智明
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB01
2E176BB38
(57)【要約】
【課題】測定者の負担を軽減することができる測定器及び含水率測定方法を提供する。
【解決手段】セメントを含む測定対象(ALCパネル2)の含水率を測定可能な測定器1~1Bであって、水分を吸収すると共に、水分の吸収に伴い変色する変色材20と、前記変色材20が内部に設けられ、前記ALCパネル2に含まれる水分を前記変色材20に吸収させるように、前記ALCパネル2に取り付けられる容器10~10Bと、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを含む測定対象の含水率を測定可能な測定器であって、
水分を吸収すると共に、水分の吸収に伴い変色する変色材と、
前記変色材が内部に設けられ、前記測定対象に含まれる水分を前記変色材に吸収させるように、前記測定対象に取り付けられる容器と、
を具備する測定器。
【請求項2】
前記容器は、
透明な材料で形成されている、
請求項1に記載の測定器。
【請求項3】
前記容器は、
軸線方向一方部が開口し、軸線方向他方部が閉塞された筒形状に形成され、
前記軸線方向一方部の開口には、水分は通過可能に形成され、かつ前記変色材は通過不能に形成された水分通過部が設けられている、
請求項1に記載の測定器。
【請求項4】
前記容器は、
軸線方向一方部が開口し、軸線方向他方部が閉塞された筒形状に形成され、
前記容器の前記軸線方向他方部に設けられ、前記軸線方向他方部に対して拡径した拡径部を具備する、
請求項1に記載の測定器。
【請求項5】
前記容器は、
軸線方向一方部が開口し、軸線方向他方部が閉塞された筒形状に形成され、
前記軸線方向一方部において拡径し、前記測定対象に対して取り付けられる取付部を具備する、
請求項1に記載の測定器。
【請求項6】
前記容器は、
軸線方向両端部が閉塞された筒形状に形成され、
前記軸線方向に連続する複数の空間を形成するように、前記容器の内部を仕切る仕切板が設けられ、
前記容器の側面には、複数の前記空間と前記容器の外部とを連通する開口が形成され、
前記側面の開口には、水分は通過可能に形成され、かつ前記変色材は通過不能に形成された水分通過部が設けられている、
請求項1に記載の測定器。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の測定器を用いた含水率測定方法であって、
前記測定器を前記測定対象に取り付け、
所定の期間経過後における前記変色材の色の変化に基づいて、前記測定対象の含水率を測定する含水率測定方法。
【請求項8】
前記測定対象に、前記測定器を挿入可能な穴部を形成し、
前記穴部に前記測定器を挿入することで、前記測定器を前記測定対象に取り付ける、
請求項7に記載の含水率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントを含む測定対象の含水率を測定する測定器及び含水率測定方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントを含む測定対象の含水率を測定する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、コンクリート構造物の含水率を測定するコンクリート構造物の保全工法が開示されている。上記特許文献1に記載された発明では、高周波を用いた水分計を用いてコンクリート構造物の含水率を測定している。
【0004】
しかしながら、上述のような水分計を用いて測定を行う場合には、測定者は、測定箇所まで水分計を持ち歩く必要がある。このため、測定者の負担となることが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、測定者の負担を軽減することができる測定器及び含水率測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、セメントを含む測定対象の含水率を測定可能な測定器であって、水分を吸収すると共に、水分の吸収に伴い変色する変色材と、前記変色材が内部に設けられ、前記測定対象に含まれる水分を前記変色材に吸収させるように、前記測定対象に取り付けられる容器と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記容器は、透明な材料で形成されているものである。
【0010】
請求項3においては、前記容器は、軸線方向一方部が開口し、軸線方向他方部が閉塞された筒形状に形成され、前記軸線方向一方部の開口には、水分は通過可能に形成され、かつ前記変色材は通過不能に形成された水分通過部が設けられているものである。
【0011】
請求項4においては、前記容器は、軸線方向一方部が開口し、軸線方向他方部が閉塞された筒形状に形成され、前記容器の前記軸線方向他方部に設けられ、前記軸線方向他方部に対して拡径した拡径部を具備するものである。
【0012】
請求項5においては、前記容器は、軸線方向一方部が開口し、軸線方向他方部が閉塞された筒形状に形成され、前記軸線方向一方部において拡径し、前記測定対象に対して取り付けられる取付部を具備するものである。
【0013】
請求項6においては、前記容器は、軸線方向両端部が閉塞された筒形状に形成され、前記軸線方向に連続する複数の空間を形成するように、前記容器の内部を仕切る仕切板が設けられ、前記容器の側面には、複数の前記空間と前記容器の外部とを連通する開口が形成され、前記側面の開口には、水分は通過可能に形成され、かつ前記変色材は通過不能に形成された水分通過部が設けられているものである。
【0014】
請求項7においては、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の測定器を用いた含水率測定方法であって、前記測定器を前記測定対象に取り付け、所定の期間経過後における前記変色材の色の変化に基づいて、前記測定対象の含水率を測定するものである。
【0015】
請求項8においては、前記測定対象に、前記測定器を挿入可能な穴部を形成し、前記穴部に前記測定器を挿入することで、前記測定器を前記測定対象に取り付けるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、測定者の負担を軽減することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る測定器及び含水率測定方法を示した側面断面図。
【
図2】(a)第一実施形態に係る測定器を示した側面断面図。(b)測定器をALCパネルの穴部に挿入する様子を示した側面断面図。
【
図3】各測定場所におけるALCパネルの室内側からの距離と、含水率と、の関係を示すグラフ。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る測定器及び含水率測定方法を示した側面断面図。
【
図5】本発明の第三実施形態に係る測定器を示した側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向及び上下方向を定義して説明を行う。まず、本発明の第一実施形態に係る測定器1について説明する。
【0019】
本実施形態に係る測定器1は、セメントを含む測定対象の含水率を測定するものである。本実施形態では、一例として、測定器1を用いて施工中の建物のALCパネル2の含水率を測定する例を説明する。
【0020】
図1及び
図2(b)に示すALCパネル2は、ALC(軽量気泡コンクリート)により形成された板形状の構造体である。ALC(軽量気泡コンクリート)は、セメント等を主な原料とした無機系材料である。本実施形態では、ALCパネル2を建物の外壁に使用することを想定している。ALCパネル2の厚さ寸法tは、100mm程度である。ALCパネル2は、初期に比較的多くの水分を含んでおり、時間の経過に伴い乾燥することで内部の水分が徐々に放出され、含水率が低下する。
【0021】
設置後のALCパネル2の外側の面(図例では後面)には、透湿機能を有する仕上塗装が施される。また、ALCパネル2の室内側の面(前面)には、断熱処理(ウレタンの吹付、又はグラスウールやロックウールの設置等)が施され、その後に内装仕上が施される。
【0022】
ここで、ALCパネル2の乾燥が不十分な(内部の含水率が比較的高い)状態で、断熱処理や内装仕上の工程が行われた場合、上記工程の後にALCパネル2の室内側の面から水分が放出され、室内での結露やカビの発生の原因となる。なお、断熱処理として、ウレタンの吹付を採用した場合は、グラスウールやロックウールを採用した場合に比べて水分の放出を抑制可能である。しかしながら、この場合でもALCパネル2のうち、ウレタンの吹付が困難な箇所(例えば天井裏等)から水分が放出されるおそれがある。また、ウレタンの吹付を採用した場合は、施工のコストが比較的高くなる。
【0023】
このため、ALCパネル2が十分に乾燥してから、次の工程(断熱処理等)に進むことが望ましい。そこで、次の工程に進む前に、作業者(測定者)が水分計等の測定機器を用いてALCパネル2の含水率を測定し、ALCパネル2の乾燥が十分に進んでいることを確認することが考えられる。上記水分計としては、例えば高周波を用いて含水率の測定を行う機器がある。また、含水率の測定は、建物における複数の箇所で行われる。
【0024】
しかしながら、上述のような水分計を用いて含水率の測定を行う場合には、作業者は、複数の測定箇所へ水分計を持ち歩く必要がある。また、水分計を動作させるためのバッテリーの管理を行うことも要する。このため、計測の作業が作業者の負担となることが想定される。
【0025】
本実施形態に係る測定器1は、ALCパネル2の含水率の測定を行う際の作業者の負担を軽減することができる。以下では、
図1及び
図2を用いて、測定器1の構成について説明する。
【0026】
図1に示すように、測定器1は、ALCパネル2に対して取り付けられる。本実施形態では、測定対象となるALCパネル2の室内側の面に、穴部2aを形成している。穴部2aは、正面視略円形状に形成される。穴部2aの内径は、例えば10mm程度(ALCパネル2の品質に影響を与えない程度)に形成される。穴部2aは、ALCパネル2の厚さ寸法tの略半分(t/2)に達するまで、前後方向に延びるように形成される。穴部2aは、測定期間終了後、埋めてもよい。
【0027】
本実施形態では、測定器1は、穴部2aに挿入されることで、ALCパネル2に対して取り付けられる。測定器1は、容器10及び変色材20を具備する。
【0028】
図2に示す容器10は、後述する変色材20が内部に設けられると共に、穴部2aに挿入されるものである。容器10は、本体部11、網部12及びカバー部13を具備する。
【0029】
本体部11は、容器10の主たる構造体である。本体部11は、前後方向(壁厚さ方向)に軸線を向けた略円筒形状に形成される。より詳細には、本体部11は、後端部に開口部11aが形成されると共に、前端部が閉塞された有底円筒形状に形成される。
【0030】
本体部11は、穴部2aに応じた形状に形成される。具体的には、本体部11の外径と、ALCパネル2の穴部2aの内径と、は概ね同寸法に形成される。また、本体部11の前後寸法と、穴部2aの前後寸法(t/2)と、は概ね同寸法に形成される。本体部11は、例えばガラス等の透明な材料により形成される。なお、本体部11の材料としては、ガラスに限定されず、例えばアクリル等の樹脂系材料も採用可能である。
【0031】
網部12は、本体部11の開口部11aを覆うものである。網部12は、本体部11の後端部に取り付けられる。網部12は、ALCパネル2の水分は通過可能であり、後述する変色材20は通過不能なように形成される。
【0032】
カバー部13は、穴部2aを覆うものである。カバー部13は、本体部11の前端部において拡径する形状に形成される。具体的には、カバー部13は、本体部11の外径よりも大きい外径(例えば30mm程度)を有する略円盤形状に形成される。カバー部13は、本体部11の前端面に設けられる。カバー部13は、例えばゴム等の可撓性を有する材料で形成される。
【0033】
変色材20は、水分を吸収すると共に、水分の吸収に伴い変色するものである。本実施形態に係る変色材20は、乾燥剤として使用される粒状のシリカゲルを採用している。なお、図例では、変色材20を模式的に示している。上記シリカゲルには、例えば塩化コバルト等の添加剤が添加されている。上記シリカゲルを採用した変色材20は、水の吸着量が少ない(乾燥している)状態では青色になり、吸着量が多い状態では淡桃色等になる。このため、変色材20は、水分を吸収することで青色から淡桃色に変化する。また、変色材20は、乾燥した場合には、淡桃色から再び青色に戻る。なお、変色材20の色は、上述した色に限定されない。
【0034】
変色材20は、本体部11の内部に充填されると共に、網部12により開口部11aが覆われることで容器10に封入される。なお、変色材20の粒径は、網部12の網目よりも大きく形成される。また、変色材20の粒径を小さく(細かく)することで、変色材20の表面積を増加させ、吸着量を多くすることで測定感度を向上させることができる。
【0035】
以下では、
図1及び
図2を用いて、測定器1を用いたALCパネル2の含水率の測定方法について説明する。
【0036】
まず、作業者は、ALCパネル2の設置後、測定対象となるALCパネル2の室内側の面に、穴部2aを形成する。上記穴部2aの形成は、例えばドリル等を用いて行われる。
【0037】
次に、作業者は、
図2に示すように、穴部2aに測定器1を挿入する。本実施形態では、作業者は、まず容器10を穴部2aに挿入し、その後にALCパネル2の表面及び容器10の前端面を覆うように、カバー部13を取り付ける。カバー部13は、例えば接着剤やテープ等を用いて、ALCパネル2の表面や容器10の前端面に取付可能である。
図1に示すように、測定器1を穴部2aに挿入した状態では、本体部11の開口部11a(網部12)は、ALCパネル2の壁厚さ方向中心部に位置する。
【0038】
このように、本実施形態では、本体部11の開口部11a(網部12)を介して、ALCパネル2の壁厚さ方向中心部の水分を、変色材20に吸収させることができる。変色材20は、水分の吸収に伴い徐々に変色する。本実施形態において、変色材20は、開口部11aに近い方から徐々に変色する。
【0039】
次に、作業者は、測定器1をALCパネル2に取り付けてから所定期間が経過した後に、上記変色材20の変色の具合を確認する。上記確認を行う際に、作業者は、測定器1をALCパネル2から取り外し、容器10内の変色材20の変色の様子を目視により確認する。上記所定期間としては、数十分~数時間、又は数日等、任意の期間を採用可能である。なお、作業者は、変色材20の変色の様子を確認した後、次の工程に進める状態になるまで、もしくは次の工程を行うまで(施工する前まで)、測定器1を元の位置に戻して経過を見てもよい。
【0040】
作業者は、変色材20の変色の様子を確認することで、ALCパネル2の含水率(乾燥具合)を測定(推定)することができる。例えば、作業者は、所定期間経過後の変色材20のうち、変色したものの割合(全体の何%であるか)に基づいて、ALCパネル2の含水率を推定する。具体的には、作業者は、所定期間経過後の変色材20の変色の様子を目視により確認し、変色材20のうち変色したものが所定の割合(例えば全体の50%)以下であれば、ALCパネル2の含水率は所定の基準値(例えば25%)以下であると推定する。この際、開口部11aに近い方から変色材20の変色域の割合を見てもよい。また、この場合は、事前に試験等を行うことで、変色材20の変色の割合とALCパネル2の含水率との関係を示すデータを予め取得しておき、上記データを用いて、測定器1の測定対象のALCパネル2の含水率を測定することができる。
【0041】
また、ALCパネル2の含水率の測定(推定)の態様としては、上述した例に限定されない。例えば、変色材20のうち変色したものの割合が、所定の割合に達するまでの期間に基づいて、ALCパネル2の含水率を推定する態様も採用可能である。この場合、作業者は、変色材20のうち変色したものの割合が、所定の割合に達するまでの期間が、予め設定された期間(例えば1時間等)以上であれば、ALCパネル2の含水率は所定の基準値以下であると推定することができる。この場合は、事前に試験等を行うことで、変色材20の変色が所定の割合に達するまでの期間とALCパネル2の含水率との関係を示すデータを予め取得しておき、上記データを用いて、測定器1の測定対象のALCパネル2の含水率を測定することができる。
【0042】
作業者は、上記確認の結果、ALCパネル2の含水率が基準値(例えば25%)以下であるという推定結果が得られた場合、ALCパネル2の乾燥が十分に進んでいると判断する。この場合、作業者は、次の工程(断熱処理等)を進める。これにより、ALCパネル2に含まれる水分に起因する結露やカビの発生を抑制することができる。また、ALCパネル2の乾燥が十分に進んでいることが確認できた場合には、ALCパネル2に施す断熱処理を、ALCパネル2の水分の放出を抑制可能なウレタン吹付の工法に代えて、比較的コストが低いグラスウールやロックウールを用いた工法を採用することができる。
【0043】
一方、作業者は、上記確認の結果、ALCパネル2の乾燥が十分に進んでいないと判断した場合は、更なる期間の経過後に再度確認を行う。上記測定器1の確認は、一定の期間毎に定期的に行うようにしてもよい。
【0044】
上述したように、本実施形態によれば、ALCパネル2に測定器1を取り付けた後は、所定期間の経過後の目視による確認のみで、ALCパネル2の含水率を把握することができる。これにより、例えば水分計等の機器を持ち歩くものと比べて、作業者の負担を軽減することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る測定器1は、高周波を用いた水分計とは異なり、バッテリーの管理等が不要である。また、測定器1は、上記水分計とは異なり比較的安価に形成することができる。また、測定器1は、変色材20を乾燥させて色を戻すことで、繰り返し使用することができる。
【0046】
また、上記水分計を用いた測定を行う場合、ALCパネル2に対して水分計を押し当てるために、比較的大きい面積(例えば60mm×130mm)を確保する必要がある。一方、本実施形態に係る測定器1では、カバー部13の面積(例えばφ30mm程度の円形の面積)を確保すればよく、比較的小さい面積で含水率の測定を行うことができる。
【0047】
上述したように、測定器1によれば、簡易な手段でALCパネル2の含水率を測定することができる。本実施形態で説明した例のように、次の工程(断熱処理等)に進むか否かの判断を行うために、ALCパネル2の乾燥具合を把握する場合には、例えば水分計等の測定結果のような高精度の値は必要なく、おおまかな含水率が確認できればよい。本実施形態に係る測定器1は、このようなおおまかな含水率を確認するのに適している。
【0048】
また、本実施形態によれば、ALCパネル2の壁厚さ方向中心部の水分を変色材20に吸収させることで、ALCパネル2のうち、測定環境の温湿度の影響を比較的受け難い壁厚さ方向中心部の含水率を把握することができる。これにより、ALCパネル2の含水率を好適に推定することができる。
【0049】
すなわち、ALCパネル2の表面側は、測定環境の温度や湿度等の影響を受け易く、含水率の測定結果の値が安定しないことが想定される。例えば、ALCパネル2の表面側、裏面側の両面は、雨水等による水分を吸収することで含水率の値が中心部よりも大きくなる可能性がある。
図3に示すグラフは、ALCパネル2の室内側からの距離と、含水率と、の関係を示すものである。上記グラフでは、建物の複数の測定場所(場所A~E)の上記距離と含水率との関係を示している。なお、上記グラフは、高周波水分計で測定されたデータに基づいて作成している。
【0050】
図3に示すグラフに示すように、各測定場所(場所A~E)のいずれも、ALCパネル2の室内側からの距離が0mm又は100mmの位置、すなわち表面側(表層側)の含水率が高くなっている。また、各測定場所の含水率は、ALCパネル2の壁厚さ方向中心側に向かうに従い低くなると共に、中心付近(例えば室内側からの距離が40mm~60mmの位置)において、安定した(変化が少ない)値になっている。
【0051】
このように、本実施形態では、上述のように、ALCパネル2の壁厚さ方向中心部の水分を変色材20に吸収させることで、比較的安定した値を用いてALCパネル2の含水率を好適に推定することができる。
【0052】
また、本実施形態では、
図1に示すように、測定器1を穴部2aに挿入した状態では、カバー部13の後面は、ALCパネル2の前面と当接する。これにより、カバー部13は、本体部11の外周面と穴部2aの内周面との間の隙間を覆うことができる。この状態では、カバー部13により、本体部11の外周面と穴部2aの内周面との間の隙間が覆われ、上記隙間を介した水や湿気の浸入を抑制することができる。
【0053】
また、カバー部13としては、透明な材料を採用可能である。これによれば、測定器1を穴部2aに挿入した状態で、測定器1の内部の変色材20を視認することができる。
【0054】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0055】
以下では、
図4及び
図5を参照して、本発明の別実施形態(第二、第三実施形態)について説明する。なお、以下の別実施形態の説明では、各実施形態の相違点について説明し、共通する構成については、適宜説明を省略する。
【0056】
まず、
図4を用いて、第二実施形態に係る測定器1Aについて説明する。本実施形態に係る測定器1Aは、ALCパネル2の穴部2aに挿入されるのではなく、ALCパネル2の表面に取り付けられる。また、測定器1Aは、容器10Aの形状が第一実施形態に係る測定器1と異なる。
【0057】
容器10Aは、本体部11A、取付部14及び壁部15を具備する。
【0058】
本体部11Aは、第一実施形態に係る容器10の本体部11の外径(穴部2aの内径)よりも、外径が大きく形成されている。本体部11Aは、後端部において開口する開口部11aを有する。本体部11Aは、透明な材料で形成されている。
【0059】
取付部14は、ALCパネル2の表面に取り付けられる部分である。取付部14は、本体部11Aの後端部において拡径した形状に形成される。
【0060】
壁部15は、本体部11の内部において、変色材20が充填される空間を区画する部分である。壁部15は、本体部11の底面と対向するように形成される。本体部11の底面及び内周面と、壁部15と、により区画された空間に変色材20が充填される。
【0061】
また、壁部15には、前後方向に貫通する貫通孔15aが複数形成されている。貫通孔15aは、変色材20が充填される空間と、本体部11の内部のうち壁部15よりも後方側(上記空間の外側)と、を連通している。本実施形態では、貫通孔15aを介して、ALCパネル2の水分が変色材20に吸収される。貫通孔15aの内径は、変色材20の粒径よりも小さく形成される。なお、貫通孔15aの内径を変色材20の粒径よりも大きく形成してもよい。この場合は、貫通孔15aを覆うように、網部12を設ける構成を採用可能である。
【0062】
本実施形態では、
図4に示すように、測定器1Aは、表層シール30を介してALCパネル2の室内側の面に取り付けられる。表層シール30は、ALCパネル2の室内側の面のうち、穴部2aを除く部分を覆うものである。表層シール30には、穴部2aに対応する孔が形成されている。表層シール30は、ALCパネル2の室内側の面に貼り付けられる。
【0063】
測定器1Aは、取付部14が表層シール30の表面に貼り付けられることで、ALCパネル2に対して取り付けられる。測定器1Aの内部の変色材20は、穴部2aを介して放出された水分を吸収する。表層シール30を設けたことで、ALCパネル2の室内側の面のうち穴部2aを除く部分(表層側の部分)の水分が、測定器1Aの内部へ直接移動することを抑制することができる。
【0064】
本実施形態に係る測定器1Aにおいても、第一実施形態の測定器1と同様に、変色材20の色の変化に基づいてALCパネル2の含水率の把握を行うことができる。また、本実施形態では、ALCパネル2の外側の面にも、表層シール30の貼り付け(裏張り)を行っている。これにより、ALCパネル2の外側の面からの水分の放出を抑制することで、室内側への水分の放出を促すことができる。これにより、測定器1Aを用いたALCパネル2の含水率の把握を短時間で行うことができる。また、表層シール30の裏張りを行うことで、ALCパネル2の外側の面から水分が供給されることを抑制することができる。
【0065】
本実施形態では、測定器1AがALCパネル2の外部において露出しているため、測定器1Aを取り付けた状態で、測定器1Aの内部の変色材20の変色の様子を視認することができる。
【0066】
ここで、本実施形態においては、ALCパネル2の壁厚さ方向中心側だけでなく、比較的含水率が高いことが想定される表層側も、穴部2aを介して測定器1Aの内部と連通している。このため、第一実施形態に係る測定器1を用いた場合と比べて、測定環境の湿度等の影響を受け易く、含水率の測定結果の値が安定しないことが想定される(
図3を参照)。したがって、この場合は、事前に試験等を行うことで予め取得されたALCパネル2の室内側からの距離と含水率との関係を示すデータ(例えば
図3に示すグラフ等)に基づいて、測定環境の湿度等の影響が少なくなるように、測定器1Aによる測定結果を適宜補正する方法を採用可能である。
【0067】
なお、本実施形態では、ALCパネル2の穴部2aを介して含水率の測定を行う例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、ALCパネル2に穴部2aを形成しない態様を採用してもよい。この場合は、ALCパネル2の室内側の面に表層シール30を設けずに、ALCパネル2に対して測定器1Aを直接貼り付けるようにしてもよい。上記態様を採用した場合には、ALCパネル2の表面から放出される水分に基づいて、含水率の測定を行う。この場合も、上述したようにALCパネル2の室内側からの距離と含水率との関係を示すデータに基づいて、測定結果を適宜調整するようにしてもよい。
【0068】
次に、
図5を用いて、第三実施形態に係る測定器1Bについて説明する。本実施形態に係る測定器1Bは、容器10Bの先端部が開口していない点で、第一実施形態に係る測定器1と異なる。容器10Bは、本体部11B、仕切板16及び開口部17を具備する。
【0069】
本体部11Bは、軸線方向(前後方向)の両端部が閉塞した略円柱形状に形成されている。本体部11Bは、中空形状に形成されている。本体部11Bの内部の空間には、変色材20が充填される。本体部11Bは、透明な材料で形成されている。
【0070】
仕切板16は、本体部11Bの内部の空間を軸線方向に区画するものである。仕切板16は、軸線方向に沿って複数(図例では4つ)設けられる。仕切板16を設けたことで、本体部11Bの内部の空間は5つに区画される。
【0071】
開口部17は、本体部11Bの側面を貫通するように形成されたものである。開口部17は、仕切板16により区画された各空間に対応する位置に形成される。また、開口部17は、本体部11Bの周方向に沿って複数形成される。開口部17を介して、仕切板16により区画された各空間と、本体部11Bの外部と、が連通する。開口部17の内径は、変色材20の粒径よりも大きく形成されている。また、本体部11Bには、開口部17を覆うように網部12が設けられる。
【0072】
本実施形態に係る測定器1Bにおいても、第一実施形態の測定器1と同様に、変色材20の色の変化に基づいてALCパネル2の含水率の測定を行うことができる。また、本実施形態では、軸線方向(壁厚さ方向)に沿って連続する複数の空間のそれぞれに、変色材20が封入されている。これにより、ALCパネル2の室内側からの距離ごとの含水率の把握を行うことができる。
【0073】
以上、各実施形態に係る測定器1~1Bについて説明した。なお、上記説明で例示した具体的な数値は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0074】
以上の如く、本実施形態に係る測定器1~1Bは、
セメントを含む測定対象(ALCパネル2)の含水率を測定可能な測定器1~1Bであって、
水分を吸収すると共に、水分の吸収に伴い変色する変色材20と、
前記変色材20が内部に設けられ、前記ALCパネル2に含まれる水分を前記変色材20に吸収させるように、前記ALCパネル2に取り付けられる容器10~10Bと、
を具備するものである。
【0075】
このように構成することによって、測定者の負担を軽減することができる。すなわち、測定器1によれば、ALCパネル2に測定器1を取り付けた後は、所定期間の経過後に、変色材20の色の変化を確認することで、ALCパネル2の含水率を測定することができる。これにより、例えば水分計等の機器を持ち歩くものと比べて、作業者の負担を軽減することができる。
【0076】
また、前記容器10~10Bは、
透明な材料で形成されているものである。
【0077】
このように構成することによって、容器10~10Bの内部の変色材20の色の変化を容易に確認することができる。
【0078】
また、前記容器10は、
軸線方向一方部が開口し、軸線方向他方部が閉塞された筒形状に形成され、
前記軸線方向一方部の開口(開口部11a)には、水分は通過可能に形成され、かつ前記変色材20は通過不能に形成された水分通過部(網部12)が設けられているものである。
【0079】
このように構成することによって、ALCパネル2の含水率を好適に測定することができる。すなわち、ALCパネル2に穴部2aを形成し、穴部2aに容器10を挿入した場合に、容器10の先端の網部12を介して、ALCパネル2の内部の水分を変色材20に吸収させることができる。これにより、比較的含水率が安定しているALCパネル2の内部側の含水率を測定することができる。
【0080】
また、前記容器10は、
軸線方向一方部が開口し、軸線方向他方部が閉塞された筒形状に形成され、
前記容器10の前記軸線方向他方部に設けられ、前記軸線方向他方部に対して拡径した拡径部(カバー部13)を具備するものである。
【0081】
このように構成することにより、ALCパネル2の含水率を好適に測定することができる。すなわち、ALCパネル2の穴部2aに容器10を挿入した場合に、カバー部13により容器10の外周面と穴部2aの内周面との間の隙間を覆うことができ、隙間を介した水や湿気の浸入を抑制することができる。
【0082】
また、前記容器10Aは、
軸線方向一方部が開口し、軸線方向他方部が閉塞された筒形状に形成され、
前記軸線方向一方部において拡径し、前記ALCパネル2に対して取り付けられる取付部14を具備するものである。
【0083】
このように構成することにより、ALCパネル2に対して、容器10Aを容易に取り付けることができる。また、容器10AをALCパネル2の表面に取り付けた場合、容器10Aを取り付けた状態で、内部の変色材20の色の変化を容易に確認することができる。
【0084】
また、前記容器10Bは、
軸線方向両端部が閉塞された筒形状に形成され、
前記軸線方向に連続する複数の空間を形成するように、前記容器10Bの内部を仕切る仕切板16が設けられ、
前記容器10の側面には、複数の前記空間と前記容器10Bの外部とを連通する開口が形成され、
前記側面の開口(開口部17)には、水分は通過可能に形成され、かつ前記変色材20は通過不能に形成された水分通過部(網部12)が設けられているものである。
【0085】
このように構成することにより、ALCパネル2の含水率を好適に測定することができる。すなわち、ALCパネル2の穴部2aに容器10を挿入した場合、各空間に設けられた変色材20の色を確認することで、ALCパネル2の表面からの距離ごとの含水率の測定を行うことができる。
【0086】
また、本実施形態に係る含水率測定方法は、
本実施形態に係る測定器1~1Bを用いた含水率測定方法であって、
前記測定器1~1Bを前記ALCパネル2に取り付け、
所定の期間経過後における前記変色材20の色の変化に基づいて、前記ALCパネル2の含水率を測定するものである。
【0087】
このように構成することにより、測定者の負担を軽減することができる。
【0088】
また、本実施形態に係る含水率測定方法は、
前記ALCパネル2に、前記測定器1、1Bを挿入可能な穴部2aを形成し、
前記穴部2aに前記測定器1、1Bを挿入することで、前記測定器1、1Bを前記ALCパネル2に取り付けるものである。
【0089】
このように構成することにより、ALCパネル2の含水率を好適に測定することができる。すなわち、穴部2aに測定器1、1Bを挿入することで、比較的含水率が安定しているALCパネル2の内部側の含水率を測定することができる。
【0090】
なお、本実施形態に係るALCパネル2は、本発明に係る測定対象の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る網部12は、本発明に係る水分通過部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るカバー部13は、本発明に係る拡径部の実施の一形態である。
【0091】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0092】
例えば、上記各実施形態の構成を、適宜入れ替えたり、組み合わせたりする等の変更が可能である。具体的には、第三実施形態に係る測定器1Bに、測定器1と同様にカバー部13を設けるようにしてもよい。また、第一、第三実施形態に係る測定器1、1Bを用いる場合でも、第二実施形態のように、ALCパネル2に表層シール30を裏張りするようにしてもよい。
【0093】
また、第一、第三実施形態に係る測定器1、1Bの本体部11、11Bの前後寸法を、ALCパネル2の壁厚さ寸法の半分(t/2)とした例を示したが、このような態様に限定されない。例えば本体部11、11Bの前後寸法を、ALCパネル2の壁厚さ寸法の半分(t/2)より小さくしてもよく、上記前後寸法としては種々の値を採用可能である。
【0094】
また、上記各実施形態では、容器10~10Bに対して網部12を設けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば網部12に代えて、水分は通過可能であり、かつ変色材20は通過不能な孔を有する部材(例えば多孔板等)を設けるようにしてもよい。
【0095】
また、上記各実施形態では、建物の外壁に使用されるALCパネル2を測定対象としたが、このような態様に限定されない。例えば建物の内壁や床等に使用されるALCパネル2を測定対象としてもよい。
【0096】
また、上記各実施形態では、測定器1~1Bを用いて、施工後のALCパネル2の含水率を測定する例を示したが、このような態様に限定されない。例えば資材として保管されている状態等、施工前のALCパネル2の含水率を測定するようにしてもよい。ALCパネル2は、ALC製作工場や施工中の建物の現場など、比較的外部環境の影響を受けやすい場所において保管されることが多く、そのため含水率の測定、把握は重要である。測定器1~1Bを用いることで、保管されている状態のALCパネル2についても、好適に含水率を測定することができる。
【0097】
また、上記各実施形態では、測定器1~1Bを用いた含水率の測定対象を、ALCパネル2とした例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、測定対象を、施工現場で打設されたコンクリート(普通コンクリート)としてもよい。測定対象としては、セメントを含む種々の構造体を採用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 測定器
2 ALCパネル
10 容器
20 変色材