(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075948
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】アンプ
(51)【国際特許分類】
H04R 3/12 20060101AFI20240529BHJP
H04R 29/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H04R3/12 A
H04R29/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187235
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】越智 敏行
(72)【発明者】
【氏名】志田 光男
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA12
(57)【要約】
【課題】特性の異なる複数の出力手段の電気楽器の演奏中の切り替えを最小限の構成で実現できるアンプを提供すること。
【解決手段】アンプ1において、処理部11に記憶されている定格インピーダンスのうち、出力先スイッチSdの接続先のスピーカSp1,Sp2に対応する定格インピーダンスが取得され、取得した定格インピーダンスに対応する抵抗器R3a~R3eにDF選択スイッチSbを接続させる。よって、アンプ1の出力インピーダンス特性を、楽音信号を出力するスピーカSp1,Sp2に適合させることができるので、スピーカSp1,Sp2毎にアンプ1を設けることなく、スピーカSp1,Sp2の特性に適合した楽音信号をスピーカSp1,Sp2に出力できる。これにより、楽音信号を出力するスピーカSp1,Sp2の切り替えを1つのアンプ1という最小限の構成で実現できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気楽器から入力された楽音信号を増幅する増幅手段を備えるアンプであって、
そのアンプには複数のスピーカが接続され、
複数の前記スピーカのうち、前記増幅手段で増幅された楽音信号を出力するスピーカを選択する選択手段と、
複数の前記スピーカ毎に、そのスピーカの特性に応じて前記アンプの出力インピーダンス特性または入力インピーダンス特性を調整するための値である特性調整値が記憶される記憶手段と、
その記憶手段に記憶される特性調整値から前記選択手段で選択されたスピーカに対応する特性調整値を取得する取得手段と、
その取得手段で取得された特性調整値に基づいて、前記出力インピーダンス特性または前記入力インピーダンス特性を調整する特性調整手段とを備えていることを特徴とするアンプ。
【請求項2】
所定の検査信号を前記増幅手段を介して前記選択手段で選択されたスピーカに出力する検査信号出力手段と、
その検査信号出力手段により前記スピーカに出力された結果の検査信号を観測する観測手段と、
その観測手段で観測された検査信号に基づいて前記スピーカの特性を解析する解析手段と、
その解析手段で解析されたスピーカの特性に応じた特性調整値を、前記スピーカに対応付けて前記記憶手段に記憶する調整値記憶手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載のアンプ。
【請求項3】
前記特性調整値は、前記スピーカの定格インピーダンスに応じて、前記増幅手段から出力された楽音信号の当該増幅手段への負帰還率を変更するための値であり、
前記特性調整手段は、前記取得手段で取得された特性調整値に基づいて、前記増幅手段への負帰還率を変更することで、前記出力インピーダンス特性を調整するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンプ。
【請求項4】
前記特性調整値は、前記増幅手段から出力された楽音信号が所定のダンピングファクタとなるように、前記スピーカの定格インピーダンスに応じて、前記増幅手段から出力された楽音信号の当該増幅手段への負帰還率を変更するための値であることを特徴とする請求項3記載のアンプ。
【請求項5】
前記特性調整値は、前記入力インピーダンス特性が前記選択手段で選択されたスピーカの定格インピーダンスに近似するように、前記増幅手段に入力される楽音信号の特性を調整するための値であり、
前記特性調整手段は、前記取得手段で取得された特性調整値に基づいて、前記増幅手段に入力される楽音信号の特性を調整することで、前記入力インピーダンス特性を調整するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンプ。
【請求項6】
前記特性調整手段は、前記取得手段で取得された特性調整値に基づいて、真空管アンプを介して電気楽器から入力された楽音信号の特性を調整するダミーロードで構成されることを特徴とする請求項5記載のアンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、出力するエレキギター等の電気楽器から入力したオーディオ信号AINを増幅し、スピーカSPで出力する電力増幅器1が開示されている。電力増幅器1には、スピーカSPの抵抗値などの特性に応じたパラメータが設定されており、かかるパラメータを用いることで、オーディオ信号AINに基づく音をスピーカSPから適正な音量および音質で出力できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特性の異なる複数のスピーカSPを用意し、バッキングやソロ等の電気楽器の演奏に応じて、演奏に適した特性のスピーカSPに演奏中に切り替えたい場合がある。ここで電力増幅器1には、スピーカSPが1つしか接続できないため、例えば、スピーカSP毎にスピーカSPに合致したパラメータが設定された電力増幅器1を用意し、電気楽器の接続先を出力したいスピーカSPが接続された電力増幅器1に切り替える必要がある。この場合、スピーカSP及び電力増幅器1の組み合わせを切り替えるスピーカSPの数だけ用意し設置しなければならないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、特性の異なる複数の出力手段の電気楽器の演奏中の切り替えを最小限の構成で実現できるアンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のアンプは、電気楽器から入力された楽音信号を増幅する増幅手段を備えるものであり、そのアンプには複数のスピーカが接続され、複数の前記スピーカのうち、前記増幅手段で増幅された楽音信号を出力するスピーカを選択する選択手段と、複数の前記スピーカ毎に、そのスピーカの特性に応じて前記アンプの出力インピーダンス特性または入力インピーダンス特性を調整するための値である特性調整値が記憶される記憶手段と、その記憶手段に記憶される特性調整値から前記選択手段で選択されたスピーカに対応する特性調整値を取得する取得手段と、その取得手段で取得された特性調整値に基づいて、前記出力インピーダンス特性または前記入力インピーダンス特性を調整する特性調整手段とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態であるアンプの概要を表す図である。
【
図2】アンプにおいて定格インピーダンスを解析する場合の回路構成を表す図である。
【
図4】(a)は、処理部の電気的構成を示すブロック図であり、(b)は、スピーカデータを模式的に示した図であり、(c)は、特性調整値データを模式的に示した図である。
【
図5】(a)は、メイン処理のフローチャートであり、(b)は、特性測定処理のフローチャートである。
【
図6】(a)は、定格インピーダンス判別処理のフローチャートであり、(b)は、設定反映処理のフローチャートである。
【
図7】第2実施形態におけるアンプの概要を表す図である。
【
図8】(a)は、第2実施形態における定格インピーダンス、高域特性および低域特性の解析に用いられるバンドパスフィルタを表す図であり、(b)は、第2実施形態における各バンドパスフィルタで取得された出力レベルを表す図である。
【
図9】(a)は、第2実施形態における処理部の電気的構成を示すブロック図であり、(b)は、第2実施形態におけるスピーカデータを模式的に示した図であり、(c)は、第2実施形態における特性調整値データを模式的に示した図である。
【
図10】第2実施形態における特性測定処理のフローチャートである。
【
図11】第2実施形態における周波数特性測定処理のフローチャートである。
【
図12】(a)は、第2実施形態における周波数特性測定処理のフローチャートであり、(b)は、第2実施形態における設定反映処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態であるアンプ1の概要を表す図である。アンプ1は、エレキギターやエレキベース(図示せず)等の電気楽器から入力された楽音信号を増幅し、第1スピーカSp1又は第2スピーカSp2に出力する処理装置である。アンプ1には、電気楽器から楽音信号を入力する第1ジャックJc1と、特性調整部2と、出力部3と、制御部4とが設けられる。
【0009】
特性調整部2は、第1ジャックJc1から入力された楽音信号を増幅すると共にその特性を変化させるものであり、レベル調整部Lvと、オペアンプApと、ダンピングファクタDfとで構成される。レベル調整部Lvは、後述のダンピングファクタDfの抵抗器R3a~R3eの切替に応じて、第1ジャックJc1から入力された楽音信号のレベルを調整するものである。本実施形態においてレベル調整部Lvは、抵抗分圧によるアッテネータで実現されるが、他の装置により実現しても良い。
【0010】
オペアンプApは、レベル調整部Lvから入力された楽音信号を増幅するものである。オペアンプApには、非反転入力端(図中「+」)と反転入力端(図中「-」)とが設けられる。オペアンプApの非反転入力端にはレベル調整部Lvが接続され、反転入力端には後述するダンピングファクタDfが接続される。これにより、オペアンプApに入力されたレベル調整部Lvからの楽音信号が、レベル調整部Lvから入力された楽音信号の電圧と、負帰還されたダンピングファクタDfから入力された電圧との差に応じて増幅され、オペアンプApから出力される。なお、入力された楽音信号を増幅するものはオペアンプApに限られず、他の増幅器や増幅装置を用いても良い。
【0011】
ダンピングファクタDfは、オペアンプApから出力される楽音信号がスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスに適合するように、反転入力端に入力される楽音信号の電圧を制御するためのものである。このダンピングファクタDfによりアンプ1の出力インピーダンス特性が調整される。ダンピングファクタDfには、オペアンプApの出力側に接続される抵抗器R2と、スピーカSp1,Sp2に接続される後述のジャックJc2,Jc3に接続される抵抗器R3a~R3eとが設けられる。
【0012】
抵抗器R3a~R3eの抵抗値には、それぞれジャックJc2,Jc3に接続されるスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスに応じたものが設定される。具体的に、抵抗器R3a~R3eの抵抗値は、スピーカSp1,Sp2の定格インピーダンス毎に、スピーカSp1,Sp2から出力した楽音信号のダンピングファクタが所定の値(例えば「1」)となるために、オペアンプApの反転入力端へ楽音信号を負帰還させる負帰還率に応じて設定される。
【0013】
抵抗器R3a~R3eには、DF選択スイッチSbが設けられる。DF選択スイッチSbは、後述する制御部4からの指示に応じて、抵抗器R3a~R3eのうち、抵抗器R2及びオペアンプApの反転入力端に接続される1の抵抗器を選択するスイッチである。抵抗器R2と、抵抗器R3a~R3eのうちDF選択スイッチSbで選択された1つの抵抗器とを並列接続したものとが、上記したオペアンプApの反転入力端が接続される。即ちDF選択スイッチSbの選択により、オペアンプApの反転入力端への楽音信号の負帰還率が変更される。
【0014】
出力部3は、オペアンプApからの楽音信号を出力するものであり、楽音信号が出力される第2ジャックJc2及び第3ジャックJc3と、出力先スイッチSdとが設けられる。第2ジャックJc2にはスピーカSp1が接続され、第3ジャックJc3にはスピーカSp2が接続される。スピーカSp1,Sp2は、それぞれオペアンプApからの楽音信号を楽音として出力(放音)する出力装置である。本実施形態では、スピーカSp1とスピーカSp2とは、それぞれ異なる定格インピーダンスを有しているものとするが、スピーカSp1,Sp2は同一の定格インピーダンスを有していても良い。
【0015】
出力先スイッチSdは、後述する制御部4からの指示に応じて、ジャックJc2,Jc3のうち、オペアンプApからの楽音信号の出力先を選択するスイッチである。出力先スイッチSdにより選択されたジャックJc2,Jc3にオペアンプApからの楽音信号が出力されることで、ジャックJc2,Jc3に接続されたスピーカSp1,Sp2から楽音信号に対応する楽音が出力されると共に、オペアンプApとスピーカSp1,Sp2とを介して出力された楽音信号が上記のダンピングファクタDfの抵抗器R3a~R3eに出力される。
【0016】
制御部4は、上記したDF選択スイッチSbや出力先スイッチSdへの切り替え指示や、スピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスを解析して記憶するものである。制御部4には、ADC(Analog Digital Converter)10と、処理部11と、発振器12と、DAC(Digital Analog Converter)13とが設けられる。
【0017】
ADC10は、上記したジャックJc2,Jc3に接続され、ADC10とジャックJc2,Jc3との間に抵抗器R4が接続される。これによって、ADC10では、抵抗器R4に付加される楽音信号の電圧を観測可能に構成される。またジャックJc2,Jc3及び抵抗器R4とダンピングファクタDfの抵抗器R3a~R3eとの間には、定電圧駆動スイッチScが設けられる。
【0018】
定電圧駆動スイッチScは、制御部4からの指示に応じて、ジャックJc2,Jc3又はグランド(接地)のうち、抵抗器R3a~R3eに接続されるものを選択するスイッチである。定電圧駆動スイッチScによって抵抗器R3a~R3eがジャックJc2,Jc3に接続された場合は、抵抗器R3a~R3e及び抵抗器R2による電圧がオペアンプApの反転入力端に負帰還されることで、オペアンプApから出力される楽音信号の増幅が制御される。
【0019】
一方で、定電圧駆動スイッチScによって抵抗器R3a~R3eがグランドに接続された場合は、抵抗器R3a~R3e及び抵抗器R2にかかる電圧が0Vとなることで反転入力端への負帰還が行われない。これによって、アンプ1は、オペアンプApからの出力電圧が一定(例えば5V)の「定電圧駆動」となる。詳細は
図2で説明するが、定電圧駆動におけるオペアンプApからの出力電圧と、ADC10で観測される抵抗器R4にかかる電圧とから、スピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスが解析される。
【0020】
以下、処理部11において、このようなスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスを解析する動作モードのことを「スピーカ特性測定モード」という。処理部11は、スピーカ特性測定モードによってADC10から取得した検査信号の電圧に基づいてスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスを解析し、解析された定格インピーダンスに基づいてDF選択スイッチSb等への切替指示を送信する。
【0021】
発振器12は、処理部11からの指示に応じて所定の検査信号をDAC13に出力するものである。検査信号は、スピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスの解析に用いられる楽音信号であり、本実施形態において検査信号は、周波数が300Hzの正弦波とされる。
【0022】
スピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスの解析においては、第1ジャックJc1に入力される電気楽器からの楽音信号ではなく、発振器12から出力される検査信号が用いられる。これは、スピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスが、スピーカSp1,Sp2が300Hzの音を出力した場合に観測されるためである。かかる検査信号を定格インピーダンスの解析に用いることで、定格インピーダンスを正確に観測できる。
【0023】
なお、検査信号の周波数は300Hzに限られず、スピーカSp1,Sp2の特性に応じて300Hz以上でも、300Hz以下でも良い。また、検査信号の波形も正弦波に限られず、矩形波や三角波、チャープ波等の他の波形でも良い。
【0024】
本実施形態では、ADC10と、処理部11と、発振器12と、DAC13とのそれぞれの機能が、1つのMPU(Micro Processing Unit)やSoC(System-on-a-chip)で実現されるが、制御部4の構成はこれに限られない。例えば、ADC10等をそれぞれ別の装置で構成しても良いし、例えばADC10、処理部11及びDAC13をMPUやSoCで実現し、発振器12を別の装置で実現する等、ADC10等のうちの一部の機能をMPUやSoCで実現しても良い。
【0025】
第1ジャックJc1と特性調整部2との間には、入力元スイッチSaが設けられる。入力元スイッチSaは、制御部4(処理部11)からの指示に応じて、特性調整部2への入力を第1ジャックJc1からの楽音信号またはDAC13からの検査信号のいずれかに選択するスイッチである。
【0026】
スピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスを解析する際、処理部11は、まず、出力先スイッチSdを定格インピーダンスを解析するスピーカSp1,Sp2に対応するジャックJc2,Jc3に接続させる、入力元スイッチSaをDAC13に接続させる。そして、定電圧駆動スイッチScをグランドに接続させ、アンプ1を定電圧駆動に切り替える。
【0027】
このようにスイッチSa,Sc,Sdを接続させた上で、発振器12から検査信号をDAC13を介して特性調整部2に出力させ、特性調整部2及びスピーカSp1,Sp2を介した結果の電圧がADC10で観測され、観測された電圧に基づいて定格インピーダンスが解析される。ここで
図2を参照して、定格インピーダンスの解析を説明する。
【0028】
図2は、アンプ1において定格インピーダンスを解析する場合の回路構成を表す図である。上記した通り、定格インピーダンスを解析する場合は、アンプ1は定電圧駆動となり、スピーカSp1,Sp2と抵抗器R4との全体に付加される電圧は一定の電圧Vinとなる。抵抗器R4の抵抗値をr4とし、ADC10で観測される抵抗器R4にかかる電圧をVoutとすると、スピーカSp1,Sp2を抵抗器Rspとした場合の抵抗値rspは、以下の数式1により算出される。
【0029】
【0030】
発振器12及びDAC13から検査信号を出力した際に、ADC10で観測される電圧Voutに基づき上記の数式1で算出される抵抗値rspが、スピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスとされ処理部11に記憶される。
【0031】
このような定格インピーダンスの解析と処理部11への記憶とを、スピーカSp1とスピーカSp2との両方に対して行う。定格インピーダンスの解析と処理部11への記憶とが完了した後に、入力元スイッチSaを第1ジャックJc1に接続させ、定電圧駆動スイッチScをジャックJc2,Jc3に接続させる。これによって、第1ジャックJc1から入力された楽音信号が特性調整部2に入力され、ジャックJc2,Jc3から出力されると共に、オペアンプApから出力された楽音信号と、ジャックJc2,Jc3及びスピーカSp1,Sp2から出力された楽音信号とがダンピングファクタDfによりオペアンプApに負帰還される。
【0032】
この際、処理部11は、記憶される定格インピーダンスから、出力先スイッチSdに接続されたジャックJc2,Jc3に対応するスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスを取得し、DF選択スイッチSbを取得した定格インピーダンスに対応する抵抗器R3a~R3eに接続させる。これによって、入力された楽音信号が、出力に用いられるスピーカSp1,Sp2に応じて選択された抵抗器R3a~R3eによるダンピングファクタDfで調整される。即ちアンプ1の出力インピーダンス特性を、楽音信号を出力するスピーカSp1,Sp2に適合させることができるので、スピーカSp1,Sp2から適切なダンピングファクタを有する音質の良い楽音を出力できる。
【0033】
その後、出力先スイッチSdを接続されているジャックJc2,Jc3から別のジャックJc2,Jc3に接続を切り替えた場合、処理部11はそのジャックJc2,Jc3に対応するスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスを取得し、DF選択スイッチSbを取得した定格インピーダンスに対応する抵抗器R3a~R3eに接続させる。これにより、切り替えた後のスピーカSp1,Sp2からも適切なダンピングファクタを有する音質の良い楽音を出力できる。
【0034】
このように、処理部11に記憶されている定格インピーダンスのうち、出力先スイッチSdの接続先のスピーカSp1,Sp2に対応する定格インピーダンスが取得され、取得した定格インピーダンスに対応する抵抗器R3a~R3eにDF選択スイッチSbを接続させる。よって、アンプ1の出力インピーダンス特性を、楽音信号を出力するスピーカSp1,Sp2に適合させることができるので、スピーカSp1,Sp2毎にアンプ1を設けることなく、スピーカSp1,Sp2の特性に適合した楽音信号をスピーカSp1,Sp2に出力できる。これにより、楽音信号を出力するスピーカSp1,Sp2の切り替えを1つのアンプ1という最小限の構成で実現できる。
【0035】
更にアンプ1を定電圧駆動にし、発振器12から出力される検査信号に基づき、スピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスが解析され処理部11に記憶される。これにより、電気楽器を演奏する演奏者等が定格インピーダンスを処理部11に手入力することなく、スピーカSp1,Sp2に応じた定格インピーダンスを自動的に処理部11を記憶させることができる。これにより、演奏者等のアンプ1の設定に関する手間を省略でき、アンプ1の使い勝手を向上できる。
【0036】
次に
図3を参照して、アンプ1の機能を説明する。
図3は、アンプ1の機能ブロック図である。
図3に示すように、アンプ1には、複数のスピーカSpが接続され、増幅手段200と、選択手段201と、記憶手段202と、取得手段203と、特性調整手段204とを有する。
【0037】
増幅手段200は、電気楽器から楽音信号を入力する手段であり、上記したオペアンプApで実現される。選択手段201は、複数のスピーカSpのうち、増幅手段200で増幅された楽音信号を出力するスピーカSpを選択する手段であり、上記の出力先スイッチSdで実現される。記憶手段202は、複数のスピーカSp毎に、そのスピーカSpの特性に応じてアンプ1の出力インピーダンス特性または入力インピーダンス特性を調整するための値である特性調整値が記憶される手段であり、
図4(c)で後述の特性調整値データ21cで実現される。
【0038】
取得手段203は、記憶手段202に記憶される特性調整値から選択手段201で選択されたスピーカSpに対応する特性調整値を取得する手段であり、
図4で後述の処理部11のCPU20で実現される。特性調整手段204は、取得手段203で取得された特性調整値に基づいて、出力インピーダンス特性または入力インピーダンス特性を調整する手段であり、上記のダンピングファクタDfで実現される。
【0039】
アンプ1においては、電気楽器から入力された楽音信号が増幅手段200により増幅され、選択手段201で選択されたスピーカSpから出力される。この際、記憶手段202に記憶された特性調整値のうち、選択手段201で選択されたスピーカSpに対応する特性調整値が取得手段203で取得され、取得された特性調整値を用いてアンプ1の出力インピーダンス特性または入力インピーダンス特性が調整される。これにより、スピーカSp毎にアンプ1を設けることなく、スピーカSpの特性に適合した楽音信号を出力できるので、楽音信号を出力するスピーカSpの切り替えを1つのアンプ1という最小限の構成で実現できる。
【0040】
次に、
図4を参照して、処理部11の電気的構成を説明する。
図4(a)は、処理部11の電気的構成を示すブロック図である。処理部11は、CPU20と、フラッシュROM21と、RAM22とを有し、それぞれバスライン23を介して入出力ポート24に接続される。入出力ポート24には、上記した入力元スイッチSa、DF選択スイッチSb、定電圧駆動スイッチSc、出力先スイッチSd、レベル調整部Lv、ADC10及び発振器12が接続される。
【0041】
CPU20は、バスライン23により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM21は書き換え可能な不揮発性のメモリであり、制御プログラム21aと、スピーカデータ21bと、特性調整値データ21cとを有している。CPU20によって制御プログラム21aが実行されると、
図5(a)のメイン処理が実行される。
図4(b),(c)を参照してスピーカデータ21b及び特性調整値データ21cを説明する。
【0042】
図4(b)は、スピーカデータ21bを模式的に示した図であり、
図4(c)は、特性調整値データ21cを模式的に示した図である。
図4(b)に示す通り、スピーカデータ21bには、第1スピーカSp1及び第2スピーカSp2毎に、解析された定格インピーダンスが記憶される。また
図4(c)に示す通り、特性調整値データ21cには、定格インピーダンス毎に、適合するDF選択スイッチSbの接続先(即ち抵抗器R3a~R3e)と、レベル調整部Lvにおける第1ジャックJc1から入力された楽音信号のレベルの調整度合い(小・中・大)とが記憶される。特性調整値データ21cに記憶される、スピーカSp1,Sp2に応じたDF選択スイッチSbの接続先および楽音信号のレベルの調整度合いが「特性調整値」とされる。
【0043】
スピーカデータ21bから楽音信号の出力先とされるスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスが取得され、更に取得された定格インピーダンスに対応するDF選択スイッチSbの接続先およびレベル調整部Lvにおけるレベルの調整度合いが、特性調整値データ21cが取得される。取得されたDF選択スイッチSbの接続先とレベル調整部Lvにおけるレベルの調整度合いとが特性調整部2に適用される。
【0044】
図4(a)に戻る。RAM22は、CPU20が制御プログラム21a等のプログラム実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するメモリである。
【0045】
次に
図5,6を参照して処理部11のCPU20で実行される処理を説明する。
図5(a)は、メイン処理のフローチャートである。メイン処理は、処理部11の電源投入時に実行される処理である。
【0046】
メイン処理はまず、処理部11の動作モードが上記したスピーカ特性測定モードかを確認する(S1)。本実施形態において処理部11に対する動作モードの切り替えは、アンプ1に設けられた設定ボタン等の操作子(図示せず)によって行われる。S1の処理において、動作モードがスピーカ特性測定モードである場合(S1:Yes)、カウンタ変数nに1を設定する(S2)。
【0047】
カウンタ変数nは、定格インピーダンスを解析するスピーカSp1,Sp2を表す変数であり、カウンタ変数nが「1」の場合は、定格インピーダンスを解析する対象が第1スピーカSp1であることを表し、カウンタ変数nが「2」の場合は、定格インピーダンスを解析する対象が第2スピーカSp2であることを表す。
【0048】
S2の処理の後、カウンタ変数nの値を確認する(S3)。S3の処理においてカウンタ変数nの値が1の場合は(S3:「1」)、出力先スイッチSdを第2ジャックJc2に接続させる(S4)。一方で、S3の処理においてカウンタ変数nの値が2の場合は(S3:「2」)、出力先スイッチSdを第3ジャックJc3に接続させる(S5)。S4,S5の後、特性測定処理(S6)を実行する。ここで
図5(b)を参照して、特性測定処理を説明する。
【0049】
図5(b)は、特性測定処理のフローチャートである。特性測定処理はまず、入力元スイッチSaをDACに接続させ、定電圧駆動スイッチScをグランドに接続させる(S20)。これにより、アンプ1は定電圧駆動となる。
【0050】
S20の処理の後、発振器12から検査信号の出力を開始する(S21)。S21の処理の後、ADC10からの電圧Voutの波高値を取得する(S22)。S22の処理の後、取得した電圧Voutの波高値がV_MIN以上かを確認する(S23)。本実施形態では、V_MINは「4V」が例示されるが、これ以外の電圧でも良い。
【0051】
S23の処理において、電圧Voutの波高値が最小値V_MIN以上の場合は(S23:Yes)、電圧Voutの波高値から上記の数式1により抵抗値rspを算出する(S24)。S24の処理の後、定格インピーダンス判別処理(S25)を実行する。ここで
図6(a)を参照して、定格インピーダンス判別処理を説明する。
【0052】
図6(a)は、定格インピーダンス判別処理のフローチャートである。定格インピーダンス判別処理はまず、
図5(b)のS24で算出された抵抗値rspがZ16_MINより大きいかを確認する(S30)。本実施形態では、Z16_MINは「16Ω」が例示されるが、これ以外の抵抗値でも良い。
【0053】
S30の処理において、抵抗値rspがZ16_MIN以下の場合は(S30:No)、抵抗値rspがZ8_MINより大きいかを確認する(S31)。本実施形態では、Z8_MINは「8Ω」が例示されるが、上記のZ16_MINより小さければこれ以外の抵抗値でも良い。
【0054】
S31の処理において、抵抗値rspがZ8_MIN以下の場合は(S31:No)、定格インピーダンスとして「4Ω」を設定する(S32)。一方で、S31の処理において、抵抗値rspがZ8_MINより大きい場合は(S31:Yes)、定格インピーダンスとして「8Ω」を設定する(S33)。また、S30の処理において、抵抗値rspがZ16_MINより大きい場合は(S30:Yes)、定格インピーダンスとして「16Ω」を設定する(S34)。
【0055】
S32~S34の処理の後、これらの処理で設定された定格インピーダンスをスピーカデータ21bの第nスピーカの定格インピーダンスに保存する(S35)。なお、S35の処理における「第nスピーカ」は、第1スピーカSp1又は第2スピーカSp2のいずれかを表し、「n」が「1」の場合(即ちカウンタ変数nが1の場合)は第1スピーカSp1を表し、「n」が「2」の場合は第2スピーカSp2を表すものとする。S35の処理の後、定格インピーダンス判別処理を終了する。
【0056】
図5(b)に戻る。S23の処理において、電圧Voutの波高値がV_MINより小さい場合は(S23:No)、S24,S25の処理をスキップする。S23,S25の処理の後、発振器12からの検査信号の出力を停止し(S26)、特性測定処理を終了する。
【0057】
図5(a)に戻る。S6の特性測定処理の後、カウンタ変数nに1を加算し(S7)、その結果が2より大きいかを確認する(S8)。S8の処理において、カウンタ変数nが2以下の場合は(S8:No)、第2スピーカSp2の定格インピーダンスの解析が完了していないので、S3以下の処理を繰り返す。S1の処理において、動作モードがスピーカ特性測定モードではない場合は(S1:No)、S2~S8の処理をスキップする。
【0058】
S1,S8の処理の後、設定反映処理(S9)を実行する。ここで
図6(b)を参照して、設定反映処理を説明する。
【0059】
図6(b)は、設定反映処理のフローチャートである。設定反映処理はまず、第1スピーカSp1と第2スピーカSp2とのうち、楽音信号を出力する出力先として用いるものを取得する(S40)。具体的に、S40の処理において出力先は、設定ボタン(図示しない)等の操作子やアンプ1と無線接続された携帯端末(図示しない)から取得される。
【0060】
S40の処理の後、取得された出力先の定格インピーダンスをスピーカデータ21bから取得する(S41)。S41の処理の後、取得された定格インピーダンスに該当するDF選択スイッチSbの接続先と、レベル調整部Lvのレベルの調整度合いとを特性調整値データ21cから取得する(S42)。S42の処理の後、DF選択スイッチSbをS41の処理で取得された接続先に接続させ、レベル調整部LvをS41の処理で取得された調整度合いに設定させる(S43)。
【0061】
S43の処理の後、定電圧駆動スイッチScをジャックJc2,Jc3に接続させ(S44)、出力先スイッチSdをS40の処理で取得された出力先に接続させる(S45)。S45の処理の後、入力元スイッチSaを第1ジャックJc1に接続させ(S46)、設定反映処理を終了する。
【0062】
かかる設定反映処理により、出力先とされたスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスがスピーカデータ21bから取得され、取得された定格インピーダンスに応じた抵抗器R3a~R3eにDF選択スイッチSbが接続され、当該定格インピーダンスに応じたレベルの調整度合いにレベル調整部Lvが設定される。これによって、特性調整部2からスピーカSp1,Sp2に適合した楽音信号がスピーカSp1,Sp2に出力される。
【0063】
図5(a)に戻る。S9の設定反映処理の後、アンプ1のその他の処理を実行し(S10)、S1以下の処理を繰り返す。
【0064】
次に、
図7~
図12を参照して、第2実施形態を説明する。上記した第1実施形態では、楽音信号を出力するスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスに応じて、出力インピーダンス特性を変化させるダンピングファクタDfを有するアンプ1を説明した。これに対し第2実施形態では、楽音信号を出力するスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスに応じて入力インピーダンス特性を変化させるダミーロードDLを有するアンプ100を説明する。上記した第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0065】
図7は、第2実施形態におけるアンプ100の概要を表す図である。アンプ100の第1ジャックJcには、真空管アンプTpが接続される。真空管アンプTpには、エレキギター等の電気楽器(図示せず)が接続され、電気楽器から入力された楽音信号が真空管アンプTpによって増幅され第1ジャックJcに入力される。
【0066】
アンプ100における特性調整部20には、第1実施形態で上記したダンピングファクタDfの代わりにダミーロードDLが設けられる。ダンピングファクタDfの省略に伴い、DF選択スイッチSb及び定電圧駆動スイッチScも特性調整部20から省略される。
【0067】
ダミーロードDLは、第1ジャックJcから入力された楽音信号がスピーカSp1,Sp2の特性となるように変化させるものである。アンプ100では、第1ジャックJcから入力された楽音信号が後述のライン出力Jc4から出力されるが、その際にダミーロードDLを介することで、楽音信号がスピーカSp1,Sp2から出力されたように模擬される。かかるダミーロードDLにより、アンプ100の入力インピーダンス特性が模擬(または出力)するスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスに近似するように、入力された楽音信号が調整される。
【0068】
ダミーロードDLから出力された楽音信号がオペアンプApに入力され、入力された楽音信号がオペアンプApで増幅され、増幅された楽音信号が出力部3に出力される。また、アンプ100における入力元スイッチSaは、ダミーロードDLとオペアンプApとの間に設けられ、制御部40(処理部110)からの指示に応じて、オペアンプApへの入力がダミーロードDLの楽音信号またはDAC13からの検査信号のいずれかに選択される。
【0069】
アンプ100の処理部110におけるADC10には、ダミーロードDLからの楽音信号が入力可能に構成される。また、そのADC10とDAC13との間には、SPSIM15が設けられる。SPSIM15は、ADC10から入力された楽音信号を、スピーカSp1,Sp2の周波数特性と同等の周波数特性に変化させるものである。
【0070】
第2実施形態では、処理部110の機能がMPUやSoCで実現され、発振器12とSPSIM15とのそれぞれの機能をDSP(Digital Signal Processor)で実現される。また、ADC10とDAC13との機能をMPUやSoC、DSPとは別の装置でそれぞれ実現される。なお、制御部40の構成はこれに限られず、第1実施形態の制御部4と同様に、制御部40の全ての機能をMPUやSoCで実現しても良いし、ADC10等のうちの一部の機能をMPUやSoCで実現しても良い。
【0071】
処理部110から、スピーカSp1,Sp2の特性に応じた設定値がSPSIM15に入力され、その設定値に基づく周波数特性がADC10から入力された楽音信号に適用され、DAC13に出力される。そのDAC13には、SPSIM15からの楽音信号をヘッドホンやイヤホン等にライン出力するライン出力Jc4が接続される。
【0072】
第2実施形態のアンプ100も、第1実施形態のアンプ1と同様に、ジャックJc2,Jc3に接続されたスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスが解析される。第2実施形態のアンプ100では、定格インピーダンスに加え、
図8で後述のスピーカSp1,Sp2の高域特性および低域特性も解析される。
【0073】
スピーカSp1,Sp2の高域特性および低域特性の解析の際、入力元スイッチSaは第1実施形態と同様にDAC13に接続され、発振器12からDAC13を介して出力された検査信号がオペアンプApを介して出力部3に出力される。その際にジャックJc2,Jc3から出力された検査信号によって抵抗器R4にかかる電圧VoutがADC10で観測され、観測された電圧Voutに基づいて定格インピーダンス、高域特性および低域特性が解析される。
【0074】
次に
図8を参照して、スピーカSp1,Sp2の高域特性および低域特性の解析手法を説明する。
図8(a)は、高域特性および低域特性の解析に用いられるバンドパスフィルタを表す図である。処理部110は、複数のバンドパスフィルタを有する。発振器12から検査信号としてホワイトノイズを特性調整部20に出力した場合に、ADC10で観測された検査信号に複数のバンドパスフィルタを適用することで検出された出力レベルに応じて高域特性および低域特性が解析される。発振器12は、第1実施形態で出力した正弦波に加え、ホワイトノイズも出力可能に構成される。
【0075】
複数のバンドパスフィルタとして、
図8(a)に示す通り、中心周波数が40Hzの1番目(m=0)のバンドパスフィルタと、中心周波数が50Hzの2番目(m=1)のバンドパスフィルタと、中心周波数が63Hzの3番目(m=2)のバンドパスフィルタと、・・・、中心周波数が1kHzの15番目(m=14)のバンドパスフィルタとが設けられる。そして、ADC10で観測された楽音信号にこれらバンドパスフィルタが適用される。これによって、楽音信号の40Hzから1kHzまでが15個の周波数帯域に分割され、それぞれの周波数帯域の出力レベルが取得される。
【0076】
図8(b)は、各バンドパスフィルタで取得された出力レベルを表す図である。高域特性および低域特性の解析に際し、f0、f1及びf2の3つの出力レベルが取得される。出力レベルf0には、バンドパスフィルタで取得された出力レベルのうち、極小値となる出力レベルが設定される。
図8(b)においては、6番目(m=5)の中心周波数が200Hzのバンドパスフィルタが適用されることで観測された出力レベルが出力レベルf0に設定される。
【0077】
出力レベルf1は、バンドパスフィルタで取得された出力レベルのうち、極大値となる出力レベルが設定される。
図8(b)においては、10番目(m=9)のバンドパスフィルタが適用されることで観測された出力レベルが出力レベルf1に設定される。そして出力レベルf2は、最も中心周波数が高いバンドパスフィルタ(即ち15番目(m=14)のバンドパスフィルタ)が適用されることで観測された出力レベルが設定される。
【0078】
このように、検査信号が広範囲の周波数帯域で同一の出力レベルを有するホワイトノイズとされ、その検査信号を特性調整部20及びスピーカSp1,Sp2を介した結果の出力レベルf0~f2が、複数のバンドパスフィルタで検出される。これにより、出力レベルf0~f2の検出を一度で行うことができるので、例えば、検査信号を正弦波とし、その正弦波の周波数を段階的に切り替えて各周波数帯域の出力レベルを繰り返し検出する場合と比較して、出力レベルf0~f2の検出を効率良く行うことができる。
【0079】
設定された出力レベルf0~f2から、スピーカSp1,Sp2の高域特性および低域特性が算出される。具体的に、本実施形態では、出力レベルf2を出力レベルf1で除算した値が高域特性を表す値とされる。また、出力レベルf1を出力レベルf0で除算した値が低域特性を表す値とされる。
【0080】
算出された高域特性および低域特性に基づく値が、第1実施形態と同様に取得された定格インピーダンスと共に処理部110に記憶される。入力元スイッチSaがダミーロードDLに接続され、ライン出力Jc4による楽音信号の出力をする際に、模擬するスピーカSp1,Sp2に応じた定格インピーダンス、高域特性および低域特性が取得される。取得された定格インピーダンス、高域特性および低域特性に適合するダミーロードDL及びSPSIM15の設定値が、ダミーロードDL及びSPSIM15に反映される。
【0081】
次に
図9を参照して、第2実施形態の処理部110の電気的構成を説明する。
図9(a)は、第2実施形態における処理部110の電気的構成を示すブロック図である。処理部110の入出力ポート25には、上記したSPSIM15が接続される。
【0082】
図9(b)は、第2実施形態におけるスピーカデータ21bを模式的に示した図である。
図9(b)に示す通り、第2実施形態におけるスピーカデータ21bには、第1スピーカSp1及び第2スピーカSp2毎に、解析された定格インピーダンスに加え、高域特性および低域特性に基づく値がそれぞれ記憶される。高域特性に基づく値として、出力レベルf2を出力レベルf1で除算した値の小さい順にH1,H2,H3が設定され、低域特性に基づく値として、出力レベルf1を出力レベルf0で除算した値の小さい順にL1,L2,L3が設定される。以下、「高域特性に基づく値」、「低域特性に基づく値」のことを、「高域特性」や「低域特性」という。
【0083】
図9(c)は、特性調整値データ21cを模式的に示した図である。
図9(c)に示す通り、特性調整値データ21cには、定格インピーダンス、高域特性および低域特性の組み合わせ毎に、対応するダミーロードDLの設定値およびSPSIM15の設定値が記憶される。スピーカデータ21bに記憶されるダミーロードDLの設定値としては、高域特性が大きい程ダミーロードDLの高域特性が大きくなるような設定値が設定され、低域特性が大きい程ダミーロードDLの低域特性が大きくなるような設定値が設定される。
【0084】
特性調整値データ21cに記憶される、定格インピーダンス、高域特性および低域特性の組み合わせに応じたダミーロードDLの設定値およびSPSIM15の設定値が「特性調整値」とされる。
【0085】
次に、
図10~12を参照して処理部110のCPU20で実行される処理を説明する。
図10は、第2実施形態における特性測定処理のフローチャートである。第2実施形態における特性測定処理は、まず、特性測定処理はまず、入力元スイッチSaをDACに接続させる(S60)。S60の処理の後、上記のS21の処理により発振器12から検査信号の出力を開始する。
【0086】
S21の処理の後、定格インピーダンスの解析のため、発振器12から出力される検査信号を周波数が300Hzの正弦波に変更する(S61)。S61の処理の後、上記のS22の処理によりADC10からの電圧Voutの波高値を取得する。S22の処理の後、発振器12から出力される検査信号をホワイトノイズに変更する(S62)。S62の処理の後、周波数特性測定処理(S63)を実行する。ここで
図11を参照して、周波数特性測定処理を説明する。
【0087】
図11は、周波数特性測定処理のフローチャートである。出力レベルf0、f1、f2、A0、A1、A2にそれぞれ0を設定し、バンドパスフィルタを表すカウンタ変数mに14を設定する(S70)。このうち出力レベルf0~f2は、
図8(b)で上記した出力レベルに対応するものとする。また、カウンタ変数mは、
図8(a)で上記したバンドパスフィルタの「m番目」と対応するものとする。
【0088】
S70の処理の後、出力レベルA0に、ADC10で取得された楽音信号にm番目のバンドパスフィルタを適用した結果の出力レベルを設定する(S71)。S71の処理の後、出力レベルA0がL_MIN以上かを確認する(S72)。本実施形態では、L_MINは「-10dB」が例示されるが、これ以外の値でも良い。
【0089】
S72の処理において、出力レベルA0がL_MIN以上の場合は(S72:Yes)、出力レベルf2に出力レベルA0、即ちADC10で取得された楽音信号に
図8(a)の15番目(m=14)のバンドパスフィルタを適用した結果の出力レベルを設定する(S73)。
【0090】
S73の処理の後、出力レベルA2に出力レベルA1を設定し、出力レベルA1に出力レベルA0を設定する(S74)。S74の処理の後、カウンタ変数mから1を減算する(S75)。S75の処理の後、カウンタ変数mが0以上かを確認する(S76)。S76の処理において、カウンタ変数mが0以上の場合は(S76:Yes)、出力レベルA0に、ADC10で取得された楽音信号にm番目のバンドパスフィルタを適用した結果の出力レベルを設定する(S77)。
【0091】
S77の処理の後、出力レベルf1が0かどうか、即ち出力レベルf1に値が設定されているかを確認する(S78)。S78の処理において、出力レベルf1に値が設定されていない場合は(S78:Yes)、出力レベルA1が出力レベルA0より大きく、かつ、出力レベルA1が出力レベルA2より大きいか、即ち出力レベルA1が極大値かどうかを確認する(S79)。
【0092】
S79の処理において、出力レベルA1が極大値の場合は(S79:Yes)、出力レベルf1に出力レベルA1を設定する(S80)。一方で、S79の処理において、出力レベルA1が極大値ではない場合は(S79:No)、S80の処理をスキップする。
【0093】
S78の処理において、出力レベルf1に値が設定されている場合は(S78:No)、出力レベルA1が出力レベルA0より小さく、かつ、出力レベルA1が出力レベルA2より小さいか、即ち出力レベルA1が極小値かどうかを確認する(S81)。S81の処理において、出力レベルA1が極小値の場合は(S81:Yes)、出力レベルf0に出力レベルA1を設定する(S82)。
【0094】
S79の処理において、出力レベルA1が極大値ではない場合(S79:No)、出力レベルA1が極小値ではない場合(S81:No)、又は、S80の処理の後、S74以下の処理を繰り返す。S72の処理において、出力レベルA0がL_MINより小さい場合(S72:No)、S76の処理において、カウンタ変数mが0より小さい場合(S76:No)、又は、S82の処理の後、周波数特性測定処理を終了する。
【0095】
図10に戻る。S63の周波数特性測定処理の後、出力レベルf0~f2の全てに値が設定されたかを確認する(S64)。S64の処理において、出力レベルf0~f2の全てに値が設定された場合は(S64:Yes)、上記したS24の処理により、S22の処理で取得された電圧Voutの波高値から抵抗値rspを算出する。S24の処理の後、上記したS25の定格インピーダンス判別処理を実行する。S25の定格インピーダンス判別処理の後、高域・低域特性判別処理(S65)を実行する。ここで
図12(a)を参照して、高域・低域特性判別処理を説明する。
【0096】
図12(a)は、高域・低域特性判別処理のフローチャートである。高域・低域特性判別処理はまず、rに出力レベルf2を出力レベルf1で除算した値、即ち
図8(b)で上記した高域特性を表す値を設定する(S90)。S90の処理の後、rが所定の閾値H3_MINより小さいかを確認する(S91)。
【0097】
S91の処理において、rが閾値H3_MIN以上の場合は(S91:No)、高域特性としてH3を設定する(S92)。
図9(c)で上記した通り、本実施形態では高域特性として、出力レベルf2を出力レベルf1で除算した値(即ちrの値)の小さい順にH1,H2,H3が設定される。
【0098】
一方で、rが閾値H3_MINより小さい場合は(S91:Yes)、rが所定の閾値H2_MINより小さいかを確認する(S93)。ここで閾値H2_MINには、上記の閾値H3_MINより小さい値が設定される。S93の処理において、rが閾値H2_MIN以上の場合は(S93:No)、高域特性としてH2を設定する(S94)。S93の処理において、rが閾値H2_MINより小さい場合は(S93:Yes)、高域特性としてH1を設定する(S95)。
【0099】
S92,S94,S95の処理の後、rに出力レベルf1を出力レベルf0で除算した値、即ち
図8(b)で上記した低域特性を表す値を設定する(S96)。S96の処理の後、rが所定の閾値L3_MINより小さいかを確認する(S97)。
【0100】
S97の処理において、rが閾値L3_MIN以上の場合は(S97:No)、低域特性としてL3を設定する(S98)。
図9(c)で上記した通り、本実施形態では低域特性として、出力レベルf1を出力レベルf0で除算した値(即ちrの値)の小さい順に、L1,L2,L3が設定される。
【0101】
一方で、rが閾値L3_MINより小さい場合は(S97:Yes)、rが所定の閾値L2_MINより小さいかを確認する(S99)。ここで閾値L2_MINには、上記の閾値L3_MINより小さい値が設定される。S93の処理において、rが閾値L2_MIN以上の場合は(S99:No)、低域特性としてL2を設定する(S100)。S99の処理において、rが閾値L2_MINより小さい場合は(S99:Yes)、低域特性としてL1を設定する(S101)。
【0102】
S98,S100,S101の処理の後、S92,S94,S95の処理で設定された高域特性およびS98,S100,S101の処理で設定された低域特性を、スピーカデータ21bの第nスピーカの高域特性および低域特性に保存する(S102)。S102の処理の後、高域・低域特性判別処理を終了する。
【0103】
図10に戻る。S64の処理において、出力レベルf0~f2のいずれかに値が設定されていない場合は(S64:No)、S24,S25,S65の処理をスキップする。S64,S65の処理の後、S26の処理により発振器12からの検査信号の出力を停止し、特性測定処理を終了する。
【0104】
次に
図12(b)を参照して、第2実施形態における設定反映処理を説明する。
図12(b)は、設定反映処理のフローチャートである。第2実施形態における設定反映処理は、上記したS40の処理により出力先を取得した後、取得された出力先の定格インピーダンス、高域特性および低域特性をスピーカデータ21bから取得する(S110)。
【0105】
S110の処理の後、取得された定格インピーダンス、高域特性および低域特性に該当するダミーロードDL及びSPSIM15の設定値を特性調整値データ21cから取得する(S111)。S111の処理の後、ダミーロードDL及びSPSIM15にS41の処理で取得された設定値をそれぞれ適用させる(S112)。S112の処理の後、上記したS45の処理により出力先スイッチSdをS40の処理で取得された出力先に接続させ、入力元スイッチSaをダミーロードDLに接続させる(S113)。S113の処理の後、設定反映処理を終了する。
【0106】
以上説明した通り、第2実施形態のダミーロードDLを設けたアンプ100においても、処理部110に記憶されている定格インピーダンス、高域特性および低域特性のうち、出力先スイッチSdの接続先のスピーカSp1,Sp2に対応する定格インピーダンス、高域特性および低域特性が取得され、取得された定格インピーダンス、高域特性および低域特性に対応するダミーロードDL及びSPSIM15の設定値がダミーロードDL及びSPSIM15に適用される。これにより、アンプ100の入力インピーダンス特性が模擬するスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスに近似するように、入力された楽音信号が調整される。
【0107】
よってライン出力Jc4に楽音信号を出力する際に、模擬するスピーカSp1,Sp2毎にアンプ100を設けることなく、スピーカSp1,Sp2の特性に適合した楽音信号をライン出力Jc4に出力できる。これにより、模擬するスピーカSp1,Sp2の切り替えを1つのアンプ100という最小限の構成で実現できる。
【0108】
更に第1実施形態のアンプ1と同様に、発振器12から出力される検査信号に基づき、スピーカSp1,Sp2の定格インピーダンス、高域特性および低域特性が解析され処理部110に記憶される。これにより、電気楽器を演奏する演奏者等がスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンス、高域特性および低域特性を処理部110に手入力する必要がないので、演奏者等のアンプ100の設定に関する手間を省略でき、アンプ100の使い勝手を向上できる。
【0109】
以上、上記実施形態に基づき説明したが、種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0110】
上記実施形態では、出力部3にジャックJc2,Jc3を設け、スピーカを2つ接続するように構成したが、これに限られない。3つ以上のスピーカを接続するようにしても良い。この場合、スピーカデータ21bには、出力部3に接続可能なスピーカ分の定格インピーダンス等を記憶できるようにすれば良い。
【0111】
また、出力部3に1つのスピーカのみを接続するようにしても良い。かかる場合も、解析された当該スピーカの定格インピーダンス等をスピーカデータ21bに記憶し、スピーカデータ21bに記憶された定格インピーダンス等に応じて、ダンピングファクタDfやダミーロードDLを設定すれば良い。これにより、1つのスピーカのみが接続される場合であっても、演奏者等が定格インピーダンス等を処理部11,110に手入力することなく、接続されたスピーカの定格インピーダンス等に適合した楽音信号をアンプ1,100から出力できる。
【0112】
上記実施形態では、検査信号を発振器12から出力した。しかし、これに限られず、検査信号を処理部11,110から出力しても良い。この場合、検査信号を処理部11,110のCPU20で生成して出力しても良いし、予め検査信号の音声データをフラッシュROM21等に記憶し、記憶された検査信号の音声データを再生して出力しても良い。
【0113】
上記実施形態では、定格インピーダンスの解析において、検査信号として発振器12から正弦波を出力したが、これに限られない。例えば、第2実施形態の高域特性および低域特性の解析のように、検査信号をホワイトノイズとしても良い。この場合、処理部11,110では、中心周波数300Hzのバンドパスフィルタを用いてADC10で検出した楽音信号の出力レベルを取得し、取得した出力レベルに基づく電圧を電圧Voutの波高値として用いれば良い。
【0114】
第1実施形態では、出力インピーダンス特性を調整するものとしてダンピングファクタDfを例示したが、これに限られず、ダンピングファクタDf以外の出力インピーダンス特性を調整する装置を用いても良い。また、第2実施形態では、入力インピーダンス特性を調整するものとしてダミーロードDLを例示したが、これに限られず、ダミーロードDL以外の入力インピーダンス特性を調整する装置を用いても良い。
【0115】
第1実施形態では、ダンピングファクタDfを抵抗器R3a~R3eの複数の抵抗器で実現したが、これに限られず、例えば、抵抗器R3a~R3eの代わりに、上記した抵抗器R3a~R3eと同様の抵抗値が設定可能な、可変抵抗器で構成しても良い。
【0116】
また、ダンピングファクタDfを1つの抵抗器R3a~R3e(以下、抵抗器R3a~R3eのような複数の抵抗器によるものを「抵抗器群」という)で構成したが、これに限られず、ダンピングファクタDfを複数の抵抗器群で構成しても良い。
【0117】
この場合、例えば、高域特性(
図8(b)の出力レベルf2を検出する周波数帯域)に寄与する抵抗器群と、低域特性(
図8(b)の出力レベルf1を検出する周波数帯域)に寄与する抵抗器群との2つの抵抗器群を設けるようにしても良い。更に、第2実施形態と同様に、スピーカSp1,Sp2の解析において定格インピーダンスに加えて高域特性および低域特性も解析し、定格インピーダンス、高域特性および低域特性に応じて、高域特性および低域特性のそれぞれの抵抗器群で用いられる抵抗器を選択しても良い。
【0118】
第1実施形態では、特性調整部2にレベル調整部Lvを設けたが、これに限られず、特性調整部2からレベル調整部Lvを省略しても良い。また特性調整部2に第2実施形態のSPSIM15を設け、オペアンプApから出力される楽音信号をSPSIM15によりスピーカSp1,Sp2の周波数特性と同等の周波数特性にしても良い。この場合、SPSIM15に設定される周波数特性の設定値は、出力に用いられるスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンスに応じた設定値にすれば良い。
【0119】
第2実施形態では、特性調整部20にSPSIM15を設ける構成としたが、これに限られず、特性調整部20からSPSIM15を省略しても良い。
【0120】
第2実施形態では、15個のバンドパスフィルタにより各周波数帯域の出力レベルを検出した。しかし、バンドパスフィルタの数は15個に限られず、15個以下でも15個以上でも良い。更に複数のバンドパスフィルタによって、
図8(a)のように周波数帯域を分割するものに限られない。例えば、出力レベルf0~f2が観測され得る周波数帯域の付近に多くのバンドパスフィルタを設定し、それ以外の周波数帯域のバンドパスフィルタを少なく設定しても良い。これにより、出力レベルf0~f2をより精度良く観測することができると共に、バンドパスフィルタの数の増大を抑制できる。また、楽音信号の40Hz~1kHzまでの周波数帯域をオクターブに応じた周波数帯域毎に分割しても良い。
【0121】
更に、各周波数帯域の出力レベルはバンドパスフィルタによって検出されるものに限られず、ハイパスフィルタやローパスフィルタ等の他のフィルタによって取得しても良い。
【0122】
第2実施形態では、特性調整値データ21cにスピーカSp1,Sp2の定格インピーダンス、高域特性および低域特性に応じたダミーロードDL等の設定値を記憶し、解析された定格インピーダンス、高域特性および低域特性に該当するダミーロードDL等の設定値を特性調整値データ21cから取得したが、これに限られない。例えば、特性調整値データ21cから定格インピーダンスを省略し、高域特性および低域特性に応じたダミーロードDL等の設定値を記憶し、解析された高域特性および低域特性に該当するダミーロードDL等の設定値を特性調整値データ21cから取得しても良い。
【0123】
同様に、特性調整値データ21cから高域特性(または低域特性)を省略し、定格インピーダンス及び低域特性(または高域特性)に応じたダミーロードDL等の設定値を記憶し、解析された定格インピーダンス及び低域特性(または高域特性)に該当するダミーロードDL等の設定値を特性調整値データ21cから取得しても良い。
【0124】
また、特性調整値データ21cに、定格インピーダンス、高域特性および低域特性以外のスピーカSp1,Sp2に関する他の特性を設定し、定格インピーダンス、高域特性、低域特性および他の特性に応じたダミーロードDL等の設定値を記憶し、解析された定格インピーダンス、高域特性、低域特性および他の特性に該当するダミーロードDL等の設定値を特性調整値データ21cから取得しても良い。
【0125】
上記実施形態では、アンプ1,100はエレキギターやエレキベースから入力された楽音信号を増幅するものとしたが、これに限られない。アンプ1,100をその他の楽器用のアンプや、オーディオアンプ、ヘッドフォンアンプ等の他のアンプで構成しても良い。
【0126】
上記実施形態では、アンプ1,100とスピーカSp1,Sp2とをそれぞれ別の装置としたが、これに限られない。例えば、アンプ1,100にスピーカSp1,Sp2が内蔵されても良いし、スピーカSp1,Sp2にアンプ1,100が内蔵されても良い。
【0127】
上記実施形態では、制御プログラム21aを処理部11,110のフラッシュROM21に記憶し、処理部11,110上で動作する構成とした。しかし、これに限られるものではなく、PC(パーソナル・コンピュータ)や携帯電話、スマートフォンやタブレット端末等で制御プログラム21aを動作させる構成としても良い。この場合、PC等にスイッチSa~Sdや特性調整部2,20、更には出力部3を接続すれば良い。
【0128】
上記実施形態に挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【符号の説明】
【0129】
1,100 アンプ
10 ADC(観測手段)
12 発振器(検査信号出力手段)
2,20 特性調整部(特性調整手段の一部)
21c 特性調整値データ(記憶手段)
Ap オペアンプ(増幅手段)
DL ダミーロード(特性調整手段の一部)
Df ダンピングファクタ(特性調整手段の一部)
Jc1 第1ジャック(入力手段)
Jc4 ライン出力(ライン出力手段)
Sd 出力先スイッチ(選択手段)
R3a~R3e 抵抗器(ダンピングファクタの一部、特性調整手段の一部)
S30~S34,S91~S98 解析手段
S35,S102 調整値記憶手段
S42,S111 設定手段
Sp1,Sp2 スピーカ