(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075957
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】フィルムの検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240529BHJP
G01N 21/89 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G01N21/89 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187246
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】大瀬 雄基
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA41
2G051AB02
2G051AC01
2G051AC15
2G051BA01
2G051CA03
2G051CA07
2G051CB01
2G051CB02
2G051DA01
(57)【要約】
【課題】 長尺帯状のフィルムの撓みや振動を抑制し、前記フィルムに生じた欠陥を検査する。
【解決手段】 長尺帯状のフィルム1の欠陥を検査する検査方法であって、長手方向に搬送される前記フィルム1の搬送を停止する搬送停止工程、前記フィルム1の幅方向第1側部のうち長手方向に間隔をあけた2つの端部と前記フィルム1の幅方向第2側部のうち長手方向に間隔をあけた2つの端部とが互いに前記フィルム1の長手方向及び幅方向に離れるように、前記4つの端部を引張ることにより、前記フィルム1を緊張させる緊張工程、緊張させた前記フィルム1の緊張領域の欠陥を検査する検査工程、検査後の前記フィルム1を長手方向に所定長さ搬送する搬送工程、を有し、前記搬送停止工程、前記緊張工程、前記検査工程及び搬送工程をリピート単位として繰り返す。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状のフィルムの欠陥を検査する検査方法であって、
長手方向に搬送される前記フィルムの搬送を停止する搬送停止工程、
前記フィルムの幅方向第1側部のうち長手方向に間隔をあけた2つの端部と前記フィルムの幅方向第2側部のうち長手方向に間隔をあけた2つの端部とが互いに前記フィルムの長手方向及び幅方向に離れるように、前記4つの端部を引張ることにより、前記フィルムを緊張させる緊張工程、
緊張させた前記フィルムの緊張領域の欠陥を検査する検査工程、
検査後の前記フィルムを長手方向に所定長さ搬送する搬送工程、を有し、
前記搬送停止工程、前記緊張工程、前記検査工程及び搬送工程をリピート単位として繰り返す、フィルムの検査方法。
【請求項2】
前記搬送工程の後に、前記フィルムを所定速度で連続的に巻き取る巻取り工程を有する、請求項1に記載のフィルムの検査方法。
【請求項3】
前記検査工程が、前記緊張領域の平面度を測定する第1工程と、前記緊張領域の欠陥を光学的に検査する第2工程と、を有し、
前記第1工程を行なった後に前記第2工程を行なう、請求項1または2に記載のフィルムの検査方法。
【請求項4】
前記第2工程が、前記フィルムの緊張領域を照明する光源と、照明された前記フィルムの緊張領域を撮像する撮像装置と、を用いて行なわれ、
前記撮像装置による撮像が、前記フィルムの緊張領域の厚み方向における焦点位置を変えて複数回行なわれる、請求項3に記載のフィルムの検査方法。
【請求項5】
前記撮像装置の撮像回数が、前記撮像装置の被写界深度と、前記フィルムの緊張領域の厚みと、前記緊張領域の平面度との関係から決定される、請求項4に記載のフィルムの検査方法。
【請求項6】
前記撮像回数が、(前記フィルムの厚み+前記緊張領域の平面度)/前記撮像装置の被写界深度、から求められる数値以上の整数である、請求項5に記載のフィルムの検査方法。
【請求項7】
前記緊張工程において、前記緊張領域の幅方向における張力値が80N/m以上200N/m以下、前記緊張領域の長手方向における張力値が320N/m以上800N/m以下、及び、前記緊張領域の平面度が100μm以下となるように、前記フィルムを引張る、請求項1または2に記載のフィルムの検査方法。
【請求項8】
前記搬送工程において、前記検査した領域の長さ分だけ前記フィルムを搬送する、請求項1または2に記載のフィルムの検査方法。
【請求項9】
前記緊張工程において、前記4つの端部をそれぞれ掴む緊張用チャック部が設けられ、前記4つの端部を掴んだ各緊張用チャック部が前記フィルムの長手方向及び幅方向に互いに離れるように移動させることによって、前記フィルムを緊張させ、
前記搬送工程において、前記フィルムの幅方向第1側部のうち1つの端部と前記フィルムの幅方向第2側部のうち1つの端部とをそれぞれ掴む搬送用チャック部が設けられ、前記2つの端部を掴んだ各搬送用チャック部を前記フィルムの長手方向に同期して移動させることによって、前記フィルムを長手方向に搬送し、
前記搬送用チャック部が前記端部を掴むまで、前記緊張用チャック部が前記フィルムの緊張状態を保持する、請求項1または2に記載のフィルムの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの欠陥を調べるフィルムの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なフィルムが広く使用されているが、その製造過程において、フィルムに生じた傷や気泡などの欠陥が検査されている。検査方法としては、例えば、フィルムに光を照射してフィルムを撮像する光学的検査方法が用いられている。このような光学的検査方法を用いて、長尺帯状のフィルムを搬送過程で、前記フィルムの厚み方向全体に亘って当該フィルムの欠陥の有無を検査することが行なわれる。
例えば、特許文献1には、ローラに巻きかけて搬送される連続したフィルムに幅方向の張力を付加する張力付加機構と、前記幅方向への張力付加によって伸展したフィルムに生じるツレシワの有無を検知する検出部と、前記検出部よりもフィルムの搬送方向下流側に設けられ且つ前記フィルムの欠陥を検知する測定部と、前記張力付加機構、検出部及び測定部を制御する制御手段と、を有し、前記検出部によりツレシワが無いと検知された前記フィルムの欠陥を前記測定部によって検知することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法のようにフィルムの幅方向に張力を付加するだけでは、フィルムの面方向全体における撓みを十分に伸展させることができないおそれがある。撓みの生じたフィルムに対しては、正確な検査を行えず、その改善が求められる。
また、特許文献1の方法では、長尺帯状のフィルムを連続的に搬送しながら幅方向に張力を付加しているため、測定部にて欠陥の有無を検知する際に前記フィルムが振動するおそれがある。振動するフィルムに対しては、正確な検査を行なうことができない。さらに、前記張力付加機構は、連続的に搬送されているフィルムに対して幅方向に張力を付加するため、フィルムの搬送速度に合わせて張力付加機構を移動させる必要があり、その制御が難しい。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、長尺帯状のフィルムの撓みや振動を抑制し、前記フィルムに生じた欠陥を検査できるフィルムの検査方法を提供することである。
本発明の第2の目的は、長尺帯状のフィルムの厚み方向全体に亘って欠陥の有無を比較的短時間で検査できるフィルムの検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るフィルムの検査方法は、長尺帯状のフィルムの欠陥を検査する検査方法であって、長手方向に搬送される前記フィルムの搬送を停止する搬送停止工程、前記フィルムの幅方向第1側部のうち長手方向に間隔をあけた2つの端部と前記フィルムの幅方向第2側部のうち長手方向に間隔をあけた2つの端部とが互いに前記フィルムの長手方向及び幅方向に離れるように、前記4つの端部を引張ることにより、前記フィルムを緊張させる緊張工程、緊張させた前記フィルムの緊張領域の欠陥を検査する検査工程、検査後の前記フィルムを長手方向に所定長さ搬送する搬送工程、を有し、前記搬送停止工程、前記緊張工程、前記検査工程及び搬送工程をリピート単位として繰り返す。
【0007】
本発明の第2の態様に係るフィルムの検査方法は、前記第1の態様に係る検査方法において、前記搬送工程の後に、前記フィルムを所定速度で連続的に巻き取る巻取り工程を有する。
本発明の第3の態様に係るフィルムの検査方法は、前記第1又は第2の態様に係る検査方法において、前記検査工程が、前記緊張領域の平面度を測定する第1工程と、前記緊張領域の欠陥を光学的に検査する第2工程と、を有し、前記第1工程を行なった後に前記第2工程を行なう。
本発明の第4の態様に係るフィルムの検査方法は、前記第3の態様に係る検査方法において、前記第2工程が、前記フィルムの緊張領域を照明する光源と、照明された前記フィルムの緊張領域を撮像する撮像装置と、を用いて行なわれ、前記撮像装置による撮像が、前記フィルムの緊張領域の厚み方向における焦点位置を変えて複数回行なわれる。
本発明の第5の態様に係るフィルムの検査方法は、前記第4の態様に係る検査方法において、前記撮像装置の撮像回数が、前記撮像装置の被写界深度と、前記フィルムの緊張領域の厚みと、前記緊張領域の平面度との関係から決定される。
本発明の第6の態様に係るフィルムの検査方法は、前記第5の態様に係る検査方法において、前記撮像回数が、(前記フィルムの厚み+前記緊張領域の平面度)/前記撮像装置の被写界深度、から求められる数値以上の整数である。
【0008】
本発明の第7の態様に係るフィルムの検査方法は、前記第1乃至第6のいずれかの態様に係る検査方法において、前記緊張工程において、前記緊張領域の幅方向における張力値が80N/m以上200N/m以下、前記緊張領域の長手方向における張力値が320N/m以上800N/m以下、及び、前記緊張領域の平面度が100μm以下となるように、前記フィルムを引張る。
本発明の第8の態様に係るフィルムの検査方法は、前記第1乃至第7のいずれかの態様に係る検査方法において、前記搬送工程において、前記検査した領域の長さ分だけ前記フィルムを搬送する。
本発明の第9の態様に係るフィルムの検査方法は、前記第1乃至第8のいずれかの態様に係る検査方法において、前記緊張工程において、前記4つの端部をそれぞれ掴む緊張用チャック部が設けられ、前記4つの端部を掴んだ各緊張用チャック部が前記フィルムの長手方向及び幅方向に互いに離れるように移動させることによって、前記フィルムを緊張させ、前記搬送工程において、前記フィルムの幅方向第1側部のうち1つの端部と前記フィルムの幅方向第2側部のうち1つの端部とをそれぞれ掴む搬送用チャック部が設けられ、前記2つの端部を掴んだ各搬送用チャック部を前記フィルムの長手方向に同期して移動させることによって、前記フィルムを長手方向に搬送し、前記搬送用チャック部が前記端部を掴むまで、前記緊張用チャック部が前記フィルムの緊張状態を保持する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の検査方法によれば、検査するフィルムの平面性を高めることができ、また、検査する領域の振動も防止できるので、フィルムに生じている欠陥を良好に検査できる。
本発明の好ましい検査方法によれば、対象フィルムの厚み方向全体の欠陥を検査でき、さらに、その検査時間を短縮化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の検査対象のフィルムの一部省略平面図。
【
図2】検査対象のフィルムの1つの層構成例を示す参考側面図。
【
図3】検査対象のフィルムの他の層構成例を示す参考側面図。
【
図4】検査対象のフィルムの他の層構成例を示す参考側面図。
【
図8】搬送用チャック部及び緊張用チャック部とフィルムの関係を表した参考斜視図。
【
図9】フィルムの端部を掴んだ緊張用チャック部が移動する方向を表した参考平面図。
【
図10】(a)は、平面度測定部(2次元レーザー距離計)の緊張領域の測定方法を示す参考斜視図、(b)は、透過検査機の緊張領域の検査方法を示す参考斜視図、(c)は、反射透過検査機の緊張領域の検査方法を示す参考斜視図。
【
図11】搬送停止工程及び搬送工程を行なっている際の検査システムの参考側面図。
【
図12】撮像回数を決める際の対象フィルムの厚みと平面度と被写界深度との関係を説明するための参考図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、下限値以上、上限値以下などの数値範囲が、別個に複数記載されている場合、任意の下限値又は任意の上限値を選択し、「任意の下限値以上」又は「任意の上限値以下」の数値範囲を設定できるものとする。本明細書において「略」は、本発明の属する技術分野において許容される範囲を意味する。本明細書において、用語の頭に、「第1」、「第2」を付す場合があるが、この第1などは、用語を区別するためだけに付加されたものであり、その順序や優劣などの特別な意味を持たない。
【0012】
[検査対象のフィルム]
検査対象のフィルム1は、
図1に示すように、長尺帯状である。以下、検査対象となるフィルムを「対象フィルム」という。前記長尺帯状は、長手方向の長さが幅方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。対象フィルム1の幅方向長さは、特に限定されず、例えば、20mm以上である。対象フィルム1の長手方向長さは、特に限定されず、例えば、3m以上である。
対象フィルム1の厚みは、特に限定されず、例えば、50μm以上200μm以下である。
【0013】
対象フィルム1は、1層からなる単層フィルムでもよく、複数の層が積層された複層フィルムであってもよい。前記複層フィルムの層数は、2以上であり、その上限は特にないが、一般的には10以下である。
図2乃至
図4は、対象フィルム1の層構成の幾つかの例である。なお、
図2乃至
図4は、対象フィルム1を
図1の矢印方向から見た状態を模式的に表した参考側面図である。
図2に示す対象フィルム1は、例えば、3層の複層フィルムである。前記複層フィルムは、紙面上側から順に、第1層11と、第2層12と、第3層13と、を有する。
図3に示す対象フィルム1は、5層の複層フィルムである。前記複層フィルムは、紙面上側から順に、第4層14と、第5層15と、第6層16と、第7層17と、第8層18と、を有する。
図4に示す対象フィルム1は、単層フィルムである。前記単層フィルムは、第9層19を有する。
前記単層フィルム及び複層フィルムをそれぞれ構成する層は、特に限定されず、光学機能フィルムや表面保護フィルムなどの光学フィルム;はく離ライナーなどの光学フィルム以外のフィルム;粘着剤層;などが挙げられる。
【0014】
幾つかの例を挙げると、例えば、1つの例の対象フィルム1は、
図2に示す第1層11及び第3層13がそれぞれはく離ライナーで、第2層12が粘着剤層である。他の例の対象フィルム1は、
図2に示す第1層11が表面保護フィルムで、第2層12が粘着剤層で、第3層13が光学機能フィルムである。他の例の対象フィルム1は、
図2に示す第1層11が光学機能フィルムで、第2層12が粘着剤層で、第3層13が光学機能フィルムである。
また、他の例の対象フィルム1は、
図3に示す第4層14が表面保護フィルムで、第5層15が粘着剤層で、第6層16が光学機能フィルムで、第7層17が粘着剤層で、第8層18がはく離ライナーである。他の例の対象フィルム1は、
図3に示す第4層14が表面保護フィルムで、第5層15が粘着剤層で、第6層16が光学機能フィルムで、第7層17が粘着剤層で、第8層18が表面保護フィルムである。
また、他の例の対象フィルム1は、
図4に示す第9層が光学フィルムである。
【0015】
前記光学フィルムには、例えば、光学機能フィルム、表面保護フィルムなどが含まれる。前記光学機能フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、光反射フィルム、保護フィルムなどが挙げられる。前記偏光フィルムは、特定の1つの方向に振動する光(偏光)を透過し、それ以外の方向に振動する光を遮断する性質を有するフィルムである。位相差フィルムは、光学異方性を示すフィルムであり、代表的には、例えば、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂などの延伸フィルムなどが挙げられる。前記光学機能フィルムは、前記偏光フィルムや位相差フィルムなどから選ばれる1種のみから構成されていてもよく、或いは、前記偏光フィルムや位相差フィルムなどから選ばれる2種以上が無色透明な粘着剤又は接着剤を介して積層接着されているものでもよい。
【0016】
前記表面保護フィルムとしては、例えば略等方性の無色透明なフィルムなどが挙げられる。前記略等方性の無色透明なフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリエチレン、環状若しくはノルボルネン構造を有するポリオレフィンなどのオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ナイロン6などのアミド系樹脂;イミド系樹脂;スルホン系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ビニルブチラール系樹脂;アリレート系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;などを主たる樹脂成分とする樹脂フィルムを用いることができる。
【0017】
前記はく離ライナーは、粘着剤層の粘着力を隠蔽するためのフィルムである。はく離ライナーは、粘着剤層に対するはく離性を有し、通常、使用時に剥離される。はく離ライナーは、特に限定されないが、通常、光学機能フィルム以外のフィルムが用いられる。本発明において、欠陥を光学的検査によって調べることから、はく離ライナーとしては、無色透明な樹脂フィルムなどが用いられる。
【0018】
前記粘着剤層は、常温で粘着性を有し、その粘着性が長期間持続するものである。粘着剤層は、公知の粘着剤によって構成される。前記粘着剤は、無色透明であり、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。
【0019】
[フィルムの検査方法の概要]
本発明のフィルムの検査方法によれば、前記長尺帯状の対象フィルムの欠陥を良好に検査でき、欠陥の発見の確実性を高めることができる。
本発明の検査方法は、長手方向に搬送される対象フィルムの搬送を停止する工程(搬送停止工程)、前記対象フィルムの幅方向第1側部のうち長手方向に間隔をあけた2つの端部と前記対象フィルムの幅方向第2側部のうち長手方向に間隔を開けた2つの端部とが互いに前記対象フィルムの長手方向及び幅方向に離れるように、前記4つの端部を引張ることにより、前記対象フィルムを緊張させる工程(緊張工程)、緊張させた前記対象フィルム1の緊張領域の欠陥を検査する工程(検査工程)、検査後の前記対象フィルム1を長手方向に所定長さ搬送する工程(搬送工程)、を有し、前記搬送停止工程、前記緊張工程、前記検査工程及び搬送工程をリピート単位として繰り返す。
【0020】
[フィルムの検査システム]
図5乃至
図7は、本発明の検査方法を実施するための検査システム100の一例を示す。
検査システム100は、ロールに巻かれた対象フィルム1を巻き出し、巻き出した対象フィルム1をその長手方向に間欠的に搬送する前搬送部2と、前搬送部2によって搬送された対象フィルム1の端部を引張り、前記対象フィルム1の所定領域を緊張させる張力付与部3と、前記緊張させた領域(緊張領域)の平面度を測定する平面度測定部4と、前記緊張領域のうち所定の領域の欠陥を検査する検査部5と、検査済みの対象フィルム1を連続的に搬送し、ロール状に巻き取る後搬送部6と、を有する。
【0021】
ここで、本明細書において、検査方法及び検査システム100の説明上、対象フィルム1の長手方向を「搬送方向」といい、対象フィルム1が送られる側を「搬送方向下流側」又は「下流側」といい、その反対側を「搬送方向上流側」又は「上流側」といい、対象フィルム1の幅方向一方側を「幅方向第1側」といい、対象フィルム1の幅方向反対側を「幅方向第2側」という。同様に説明上、対象フィルム1の厚み方向を「上下方向」といい、対象フィルム1の一方面側を「上側」といい、対象フィルム1の反対側を「下側」という。なお、図示例では、対象フィルム1を水平に搬送する途中で停止させて検査部5にて検査しており、紙面上側が対象フィルム1の一方面側となっているが、対象フィルム1を斜めに又は鉛直に搬送する途中で停止させて検査部5にて検査してもよい(図示せず)。前記斜めに又は鉛直にした場合でも、上下方向はフィルムの厚み方向であり、紙面の上下と位置関係が適合しないが、判りやすい用語で説明するという観点から、上下方向はフィルムの厚み方向を意味していることに留意されたい。
【0022】
<前搬送部>
前搬送部2は、ロール状に巻かれた対象フィルム1を巻出し部21から巻き出し、対象フィルム1を所定長さ分だけ搬送方向下流側に搬送した後、その搬送を停止し、この搬送と停止を交互に繰り返す。前搬送部2は、対象フィルム1を支持するガイドロール22と、対象フィルム1を下流側へ送る送り手段と、を有する。前記送り手段は、特に限定されず、例えば、搬送方向に移動可能なチャック部23(チャックはクランプとも呼ばれる)が用いられる。以下、対象フィルム1を搬送方向下流側に送るチャック部を「搬送用チャック部」という。
【0023】
図8は、
図5などに示す検査システム100から、対象フィルム1を掴むチャック部を取り出して図示した参考斜視図である。
図5乃至
図8を参照して、搬送用チャック部23は、対象フィルム1の幅方向両端部をそれぞれ掴むことができる。また、搬送用チャック部23は、その掴みを解除することができる(掴みを解除してフィルムの端部を開放することができる)。
1つの搬送用チャック部23は、対象フィルム1の幅方向第1側部のうち1つの端部に配置され、もう1つの搬送用チャック部23は、対象フィルム1の幅方向第2側部のうち1箇所の端部に配置されている。
ここで、「対象フィルム1の第1側部」は、幅方向第1側におけるフィルム側部であって長手方向に延在する側部をいい、「対象フィルム1の第2側部」は、幅方向第2側におけるフィルム側部であって長手方向に延在する側部をいう。このようなフィルム側部は、フィルムの耳部とも呼ばれる。また、前記幅方向第1側部のうち1つの端部は、第1側部の中の任意の1箇所の部分をいい、前記幅方向第2側部のうち1つの端部は、第2側部の中の任意の1箇所の部分をいう。
【0024】
搬送用チャック部23にて対象フィルム1を搬送する際に対象フィルム1の歪みを防止する観点から、2つの搬送用チャック部23は、好ましくは、対象フィルム1の幅方向で向かい合って配置されている。
図示例では、搬送用チャック部23は、張力付与部3を基準にして、それよりも下流側に設けられている。ただし、搬送用チャック部23は、張力付与部3よりも上流側に設けられていてもよく、その位置は特に限定されない。
搬送用チャック部23は、
図8に示すように、押圧部231と受け部232とを有し、押圧部231と受け部232の間で対象フィルム1の端部を掴んで保持できる。また、押圧部231と受け部232を離すことにより、対象フィルム1の端部の掴みを解除でき、掴みの解除により、対象フィルム1はフリーな状態となる。
【0025】
搬送用チャック部23は、対象フィルム1の搬送方向下流側及び上流側に同期して移動可能とされている。搬送用チャック部23は、例えば、レール台24に沿って対象フィルム1の搬送方向に沿って移動できるようになっている。各搬送用チャック部23は、対象フィルム1の両端部を掴んだ後、同時に且つ同速度で所定長さ下流側に移動して停止し、前記端部の掴みを解除した後、上流側に移動して元の位置に戻るようになっている。前記端部を掴んだ搬送用チャック部23が下流側に移動することにより、対象フィルム1が所定長さ分(後述する検査した領域の長さ分)だけ下流側に搬送される。
【0026】
なお、前搬送部2の送り手段として、搬送用チャック部23を例示したが、これに限定されず、例えば、ニップロールやサクションロールなどの送りロールを用いてもよい。
一般に、長尺帯状の対象フィルム1から各種製品を製造する際には、対象フィルム1の幅方向両側部を除いた領域を製品に加工することが多い。この場合、対象フィルム1の幅方向両側部は製品化されずに廃棄される。上記のように、対象フィルム1の幅方向両端部を掴む搬送用チャック部23を用いれば、製品化される領域を傷付けるおそれが無いので好ましい。
前記廃棄される対象フィルム1の幅方向両側部(第1側部及び第2側部)の幅W1は、対象フィルム1の種類や幅方向長さなどに応じて異なるため一般化できないが、一例を挙げると、それぞれ独立して、例えば、5mm以上10mm以下である(符号W1は
図6参照)。
また、前記搬送用チャック部23が対象フィルム1の端部を掴む幅は、前記対象フィルム1の第1側部(又は第2側部)の幅W1以下であり、例えば、2mm以上10mm以下である。
【0027】
<張力付与部>
張力付与部3は、前記対象フィルム1の所定領域を、その長手方向(長手方向は搬送方向と等しい)及び幅方向に引張り、前記所定領域を緊張させる。張力付与部3によって張力が付与されることにより、前記所定領域の撓みが可及的に抑制され、所定領域の平坦性が確保できる。
図5乃至
図8を参照して、張力付与部3は、対象フィルム1の4つの端部をそれぞれ独立して掴むチャック部31と、前記チャック部を移動させる移動手段(図示せず)と、有する。以下、対象フィルム1に張力を付与するためのチャック部を「緊張用チャック部」という。
前記移動手段は、緊張用チャック部31を対象フィルム1の長手方向及び幅方向に移動させることができるものであれば特に限定されず、各種シリンダなどのアクチュエーターなどが挙げられる。
【0028】
緊張用チャック部31は、対象フィルム1の幅方向第1側部のうち長手方向に間隔をあけた2つの端部にそれぞれ配置され、さらに、前記対象フィルム1の幅方向第2側部のうち長手方向に間隔をあけた2つの端部にもそれぞれ配置されている。前記幅方向第1側部のうち2つの端部は、第1側部の中の任意の1箇所の部分とその部分から長手方向に所定間隔を開けて離れたもう1箇所の部分とをいう。前記幅方向第1側部のうち2つの端部は、第1側部の中の任意の1箇所の部分とその部分から長手方向に所定間隔を開けて離れたもう1箇所の部分とをいう。
従って、互いに独立した4つの緊張用チャック部31が設けられている。以下、4つの緊張用チャック部を区別する必要がある場合、「第1緊張用チャック部」、「第2緊張用チャック部」、「第3緊張用チャック部」及び「第4緊張用チャック部」という。
緊張用チャック部31にて対象フィルム1を引張った際に対象フィルム1の歪みを防止する観点から、第1緊張用チャック部31aと第2緊張用チャック部31bは、好ましくは、対象フィルム1の幅方向で向かい合って配置されている。同様に、第3緊張用チャック部31cと第4緊張用チャック部31dは、好ましくは、対象フィルム1の幅方向で向かい合って配置されている。
【0029】
緊張用チャック部31は、上記搬送用チャック部23と同様に、対象フィルム1の幅方向端部を掴むことができる。また、緊張用チャック部31は、その掴みを解除することができる(掴みを解除してフィルムの端部を開放することができる)。
緊張用チャック部31が対象フィルム1の端部を掴む幅は、特に限定されないが、搬送用チャック部23と同様に、前記対象フィルム1の第1側部(又は第2側部)の幅W1以下であり、例えば、2mm以上20mm以下である。
【0030】
緊張用チャック部31は、
図8に示すように、押圧部311と受け部312とを有し、押圧部311と受け部312の間で対象フィルム1の端部を掴んで保持できる。また、押圧部311と受け部312を離すことにより、対象フィルム1の端部の掴みを解除でき、掴みの解除により、対象フィルム1はフリーな状態となる。
【0031】
前記4つの端部を掴んだ緊張用チャック部31は、前記4つの端部が互いに対象フィルム1の長手方向及び幅方向に離れるように、前記対象フィルム1の4つの端部をそれぞれ独立して引張る。
前記4つの端部をそれぞれ独立して引張る方式としては、例えば、次のような方式が挙げられる。
図9は、緊張用チャック部31が対象フィルム1の端部を掴んだ後に移動する方向(引張る方向)を表した参考平面図である。
図9において、緊張用チャック部31が移動する方向(端部を引張る方向)を白抜き矢印で示している。対象フィルム1の歪みを防止する観点から、各緊張用チャック部31は、同時に張力を付与する(同時に動いて引張る)ことが好ましい。
【0032】
図9(a)を参照して、端部を掴んだ第1緊張用チャック部31aが、上流側に且つ幅方向第1側に移動し、端部を掴んだ第2緊張用チャック部31bが、上流側に且つ幅方向第2側に移動し、端部を掴んだ第3緊張用チャック部31cが、下流側に且つ幅方向第1側に移動し、端部を掴んだ第4緊張用チャック部31dが、下流側に且つ幅方向第2側に移動することにより、対象フィルム1のうち前記第1乃至第4緊張用チャック部31a乃至31dで囲われた領域を緊張させることができる。
同図(b)を参照して、端部を掴んだ第1乃至第4緊張用チャック部31a乃至31dが、長手方向ベクトルと幅方向ベクトルとの合成ベクトルである、外斜め方向にそれぞれ移動することにより、前記第1乃至第4緊張用チャック部31a乃至31dで囲われた領域を緊張させることができる。
同図(c)を参照して、端部を掴んだ第1緊張用チャック部31aは動かず、端部を掴んだ第2緊張用チャック部31bが、幅方向第2側に移動し、端部を掴んだ第3緊張用チャック部31cが、下流側に移動し、端部を掴んだ第4緊張用チャック部31dが、下流側に且つ幅方向第2側に移動することにより、前記第1乃至第4緊張用チャック部31a乃至31dで囲われた領域を緊張させることができる。緊張された領域を「緊張領域」という。
前記緊張領域は、第1乃至第4緊張用チャック部31a乃至31dで掴まれた4つの端部で囲われた領域となる。
図9(a)において、緊張領域を判りやすく表すため、緊張領域に便宜上網掛けを付加している。かかる緊張領域は、平面性に優れている。
【0033】
<平面度測定部>
平面度測定部4は、前記緊張領域の平面度を測定する。平面度は、フィルム表面の最も高い部分と最も低い部分の長さ差をいう。以下、最も高い部分を「最高部」といい、最も低い部分を「最低部」という。
前述のように長手方向及び幅方向に張力を付与して緊張された緊張領域は、特許文献1のように幅方向だけに張力を付与する場合に比して、平面性に優れている。もっとも、平面性に優れた前記緊張領域であっても、微視的には軽微な撓みが生じている可能性がある。平面度測定部4は、緊張領域の表面形状(表面の厚み方向における形状)を測定する。緊張領域の表面形状から最高部と最低部を抽出することにより、平面度(平面度=最高部-最低部)を算出できる。
【0034】
平面度測定部4は、例えば、レーザー距離計41を有する。前記レーザー距離計41としては、例えば、光切断法を利用し、幅方向の表面形状を測定する2次元レーザー距離計41を用いることができる。このような2次元レーザー距離計としては、例えば、株式会社キーエンス製の商品名「マルチカラーレーザー同軸変位計」などを用いることができる。
図10(a)は、平面度測定部4として2次元レーザー距離計41を用いた場合の表面形状の測定方法を示す参考斜視図である。平面度測定部4は、搬送方向に移動可能である。平面度測定部4は、必要に応じて、上下方向に移動できるようになっていてもよく、さらに、幅方向に移動できるようになっていてもよい。例えば、前記2次元レーザー距離計41を用いた場合、幅方向の表面形状を測定できるので、前記2次元レーザー距離計41を対象フィルム1の搬送方向に移動させることにより、緊張領域の略全体の表面形状を測定できる。
【0035】
図5乃至
図7を参照して、検査システム100には、平面度測定部4を移動させる移動手段が設けられている。平面度測定部4の移動手段は、例えば、レール台42と、レール台42上を搬送方向(必要に応じてさらに幅方向)に移動可能に設けられた支柱であって昇降機構431を有する支柱43と、前記支柱43に取り付けられたアーム44と、前記アーム44に取り付けられた支持板45と、を有する。平面度測定部4(例えば2次元レーザー距離計41)は、前記支持板45に取り付けられている。支柱43がレール台42上を搬送方向に移動することにより、平面度測定部4(レーザー距離計41)も搬送方向に移動する。支柱43が昇降機構431によって上下方向に移動することにより、平面度測定部4も上下方向に移動する。
【0036】
<検査部>
検査部5は、対象フィルム1の欠陥を光学的に検査する。
検査部5の処理方式としては、透過検査、反射検査、クロスニコル透過検査、斜め透過検査などが挙げられる。本発明では、少なくとも1の光学的な処理方式によって、対象フィルム1の欠陥を検査する。
図示例では、検査部5は、透過検査を行う透過検査機51と、反射検査を行う反射検査機52と、を含んでいる。
前記透過検査は、光源からの光を対象フィルムに対して垂直に照射し、対象フィルム1を透過した光をカメラなどの撮像装置に受光させることによって、対象フィルムに存在する欠陥を影として検出する。前記反射検査は、光源からの光を対象フィルムに対して照射し、反射した光をカメラなどの撮像装置に受光させることによって、対象フィルムに存在する欠陥を検出する。
【0037】
透過検査機51は、例えば、ラインセンサーカメラなどの撮像装置511と、緊張領域を照明する光源512と、を有する。
図10(b)は、ラインセンサーカメラを用いた場合の欠陥の透過検査方法を示す参考斜視図である。光源512からの光は、対象フィルム1を透過してラインセンサーカメラ511に受光される。透過検査機51(ラインセンサーカメラ511及び光源512)は、搬送方向に移動可能であり、さらに、上下方向に移動可能である。必要に応じて、前記透過検査機51は、幅方向に移動できるようになっていてもよい。例えば、前記ラインセンサーカメラ511を用いた場合、対象フィルム1の幅方向の撮像画像を取得できる。前記撮像画像の分解能は、例えば、20μm/画素以下、好ましくは10μm/画素以下、より好ましくは5μm/画素以下、さらに好ましくは3μm/画素以下に設定される。前記透過検査機51を搬送方向に移動させることにより、前記幅方向の撮像画像が搬送方向において逐次取得されるので、緊張領域の略全体を検査できる。また、前記透過検査機51を上下方向に移動させることにより、緊張領域の厚み方向において異なる位置に生じた欠陥を検査できる。
なお、撮像装置511の被写界深度は、撮像装置511の素子数や視野等によって決まる。撮像画像の分解能は、視野/素子数で決定されるため、撮像装置511の被写界深度は、撮像画像の分解能によってその値が変動する。
透過検査機51は、従来公知であり、市販のものを用いればよい。
【0038】
反射検査機52は、例えば、ラインセンサーカメラなどの撮像装置521と、緊張領域を照明する光源522と、ハーフミラー523と、を有する。
図10(c)は、ラインセンサーカメラを用いた場合の欠陥の反射透過検査方法を示す参考斜視図である。光源522からの光は、ハーフミラー523から対象フィルム1に進み、当該対象フィルム1を反射し且つハーフミラー523を透過してラインセンサーカメラ521に受光される。反射検査機52(ラインセンサーカメラ521、光源522及びハーフミラー523)は、搬送方向に移動可能であり、さらに、上下方向に移動可能である。必要に応じて、前記反射検査機52は、幅方向に移動できるようになっていてもよい。例えば、前記ラインセンサーカメラ521を用いた場合、対象フィルム1の幅方向の撮像画像を取得できる。前記撮像画像の分解能は、例えば、20μm/画素以下、好ましくは10μm/画素以下、より好ましくは5μm/画素以下、さらに好ましくは3μm/画素以下に設定される。前記反射検査機52を搬送方向に移動させることにより、前記幅方向の撮像画像が搬送方向において逐次取得されるので、緊張領域の略全体を検査できる。また、前記反射検査機52を上下方向に移動させることにより、緊張領域の厚み方向において異なる位置に生じた欠陥を検査できる。
なお、撮像装置521の被写界深度は、撮像装置521の素子数や視野等によって決まる。撮像画像の分解能は、視野/素子数で決定されるため、撮像装置521の被写界深度は、撮像画像の分解能によってその値が変動する。
反射検査機52は、従来公知であり、市販のものを用いればよい。
【0039】
図5乃至
図7を参照して、透過検査機51及び反射検査機52は、平面度測定部4が取り付けられた上記移動手段の支持板45に取り付けられている(ただし、透過検査機51の光源512は、支柱43に取り付けられている)。従って、透過検査機51及び反射検査機52は、それぞれが搬送方向及び上下方向に移動することができる。
なお、平面度測定部4、透過検査機51及び反射検査機52は、それぞれ独立した移動手段に取り付けられていてもよい(図示せず)。
【0040】
<後搬送部>
後搬送部6は、前搬送部2によって間欠的に搬送される検査済みの対象フィルム1を連続的に搬送し、巻き取る。
後搬送部6は、前搬送部2から間欠的に搬送される対象フィルム1を滞留させ、対象フィルム1を連続的な搬送を可能とするアキューム機構61と、対象フィルム1をガイドするガイドロール62と、対象フィルム1を巻き取る巻取り部63と、を有する。
図示例では、前記アキューム機構61として、上下動するアキュームロールが用いられている。アキュームロールは、後搬送部6にて搬送される対象フィルム1の張力を調整するダンサーロールとしても機能している。アキューム機構61は、前搬送部2の搬送用チャック部23と巻取り部63の間に設けられている。
前搬送部2によって対象フィルム1が下流側に搬送されると、アキュームロールが徐々に下がる(アキューム機構61が巻取り部63にて巻き取りきれない対象フィルム1の長さ分を滞留させる)。一方、前搬送部2が対象フィルム1の搬送を停止すると、アキュームロールが徐々に上がる(アキューム機構61に滞留されていた対象フィルム1が、何ら支障なく巻取り部63に連続的に巻き取られる)。
【0041】
<その他>
検査システム100は、図示例に限られず、適宜変更できる。
例えば、検査システム100は、巻出し部21から検査するまでの間に、対象フィルム1に任意の処理を行う処理部を有していてもよい。また、検査システム100は、検査した後、巻取り部63に巻き取られるまでの間に、対象フィルム1に他の任意の処理を行う処理部を有していてもよい。前記任意の処理部の処理としては、(a)対象フィルム1に任意のフィルムを積層する、(b)対象フィルム1から任意のフィルムを引き剥がす、(c)対象フィルム1に任意の層を形成するなどが挙げられる。
【0042】
[検査方法]
以下、本発明の検査方法を説明する。本発明の検査方法は、上記検査システム100を用いて実施されるが、このシステムを用いる場合に限定されるわけではない。
図11を参照して、本発明の検査方法は、対象フィルム1を静止させた状態で、その所定領域を面方向に緊張させて平面度を測定し、その対象フィルム1の厚みと平面度と撮像装置の被写界深度から撮像装置の撮像回数を決定し、検査を行う。検査後の対象フィルム1を下流側に搬送し、再び対象フィルム1を静止させて前記検査を行う。そして、この対象フィルム1の停止と、停止時に対象フィルム1の緊張、平面度の測定及び欠陥検査と、対象フィルム1の搬送と、を順に繰り返していく。この繰り返しを行っている間、検査済みの対象フィルム1は、連続的に巻取り部63に巻き取られる。
【0043】
<搬送停止工程>
搬送停止工程は、長手方向に搬送される対象フィルム1の搬送を停止する工程である。前搬送部2によって、巻出し部21から巻き出された対象フィルム1を所定長さ分だけ搬送方向下流側に搬送した後、その搬送を停止する。例えば、搬送用チャック部23によって対象フィルム1の幅方向両端部を掴み、各搬送用チャック部23を同期して移動させる。前記各搬送用チャック部23を同期して所定速度で所定長さ分だけ下流側に移動させて対象フィルム1を搬送した後、その搬送を停止する。前搬送部2の1回当たりの搬送長さ(前記所定長さ)は、検査した領域の長さ分である。また、前搬送部2の対象フィルム1の搬送速度は、後搬送部6における対象フィルム1の搬送速度よりも速い。
図11の二点鎖線に示すように、前搬送部2によって対象フィルム1が所定長さ分だけ下流側に搬送されると、アキュームロール61が下がる。後搬送部6によって対象フィルム1が連続的に巻き取られていることから、前搬送部2による搬送が停止すると、同図の一点鎖線に示すように、アキュームロール61が上昇する。
なお、前搬送部2が緊張用チャック部31である場合、緊張用チャック部31は、停止した後、対象フィルム1の端部の掴みを解除し、上流側に移動して元の位置に戻る。
【0044】
<緊張工程>
緊張工程は、停止された前記対象フィルム1の幅方向第1側部のうち長手方向に間隔をあけた2つの端部と前記フィルムの幅方向第2側部のうち長手方向に間隔をあけた2つの端部とが互いに前記フィルムの長手方向及び幅方向に離れるように、前記4つの端部を引張ることにより、対象フィルム1を緊張させる工程である。
搬送の停止に従い静止した対象フィルム1の4つの端部を、張力付与部3によって引張り、所定領域を緊張させる。例えば、緊張用チャック部31によって対象フィルム1の4つの端部を掴み、互いに長手方向及び幅方向に離れるように緊張用チャック部31を移動させる。これにより、対象フィルム1の所定領域(4つの端部で囲われた領域である緊張領域)を緊張させることができる。
前記緊張領域の張力値は、適宜設定されるが、余りに低いと緊張領域の平面性が不十分となるおそれがあり、余りに高いと対象フィルム1にダメージを与えるおそれがある。かかる観点から、前記緊張領域の幅方向における張力値は、例えば、80N/m以上200N/m以下であり、好ましくは120N/m以上160N/m以下であり、前記緊張領域の長手方向(搬送方向)における張力値は、例えば、320N/m以上800N/m以下であり、好ましくは480N/m以上640N/m以下である。前記張力値は、張力付与部3による引張り力などを設定することによって調整できる。
【0045】
<検査工程>
検査工程は、緊張させた前記対象フィルム1の緊張領域の欠陥を検査する工程である。
検査工程は、光学的な検査を行うだけでもよいが、検査する前に緊張領域の平面度を測定することが好ましい。すなわち、好ましい検査工程は、前記緊張領域の平面度を測定する第1工程と、前記緊張領域の欠陥を光学的に検査する第2工程と、を有する。前記第2工程は、前記第1工程を行なった後に行なわれる。
平面度の測定及び光学的な検査は、緊張領域の全体に亘って行ってもよく、或いは、緊張領域の中の一部の領域に行ってもよい。上述のように、一般に、対象フィルム1の幅方向両側部は製品化されずに廃棄されることが多いので、緊張領域のうち、幅方向両側部を除いた領域を、検査する領域としてもよい。以下、緊張領域の全体を検査工程の対象する場合又は一部を検査工程の対象する場合のいずれの場合であっても、単に「緊張領域」という。
【0046】
平面度測定部4によって、緊張領域の平面度を測定する。上述のように、平面度は、最高部と最低部の長さ差をいい、上記レーザー距離計41を搬送方向に移動させることにより測定できる。平面度の測定は、1回行えば十分であるが、必要に応じて、同じ緊張領域を2回以上行ってもよい。
平面度の数値が余りに高いと、後述する撮像回数が相対的に多くなるため、平面度はできるだけ小さいことが好ましい。かかる観点から、平面度の数値は、例えば、100μm以下であり、好ましくは、50μm以下である。平面度の下限は、理論上零である。
前記平面度は、対象フィルム1に対する張力の付与の程度、対象フィルム1の種類などに応じて適宜設定できる。
【0047】
平面度を測定した後、光学的な検査を行う。光学的な検査としては、透過検査、反射検査、クロスニコル透過検査、斜め透過検査などが挙げられ、少なくとも1つの処理方式で行われる。本発明では、少なくとも1の光学的な処理方式によって、対象フィルム1の欠陥を検査する。
例えば、上記透過検査機51を作動させて、撮像装置511及び光源512を搬送方向に移動させることにより、幅方向の撮像画像を搬送方向において逐次取得する。これにより、緊張領域全体の欠陥を検査できる。次に、上記反射検査機52を作動させて、撮像装置521、光源522及びハーフミラー523を搬送方向に移動させることにより、幅方向の撮像画像を搬送方向において逐次取得する。これにより、緊張領域全体の欠陥を検査できる。透過検査及び反射検査は、同時に行なってもよいが、透過検査機51の光源512の光と反射検査機52の光源522の光が干渉するおそれがあるので、同時に行なわないことが好ましい。光が干渉しない方式としては、例えば、透過検査機51を移動させて検査した後、反射検査機52を移動させて検査する方式、又は、透過検査を行なった後すぐに反射検査を行い且つ透過検査機51と反射検査機52を同時に移動させ、これを繰り返していく方式などが挙げられる。
【0048】
また、光学的な検査は、撮像装置511,521による撮像が対象フィルム1の緊張領域の厚み方向における焦点位置を変えて複数回行なわれることが好ましい。一般に、撮像装置で取得する撮像画像の分解能を小さくすると、被写界深度が小さくなる。上述のように、撮像画像の分解能を20μm/画素以下のように小さく設定した場合、被写界深度は非常に小さくなるため、被写界深度は、対象フィルム1の厚みよりも小さくなる場合が多い。このような場合、焦点位置を変えて複数回撮像することにより、緊張領域の厚み方向の異なる位置に存在する欠陥を検査できる。前記撮像装置511,521の撮像回数は、対象フィルム1(緊張領域)の厚みと緊張領域の平面度と撮像装置511,521の被写界深度から決定することが好ましい。
具体的には、緊張領域には張力が付与されているが、緊張領域の厚みは、対象フィルム1の厚みと実質的に同じである。緊張領域の平面度は、前記第1工程にて予め測定されている。そして、前記撮像回数は、次の式から求められる。
式:撮像回数=A/B。
Aは、対象フィルム(緊張領域)の厚み+緊張領域の平面度を表し、Bは、撮像装置の被写界深度を表す。
ただし、撮像回数は、整数であるため、前記式:A/Bから求められる数値が小数を含む場合、その小数点以下を切り上げた整数以上を撮像回数とする。つまり、撮像回数は、(対象フィルムの厚み+緊張領域の平面度)/撮像装置の被写界深度から求められる数値以上の整数である。対象フィルムの厚み方向における撮像回数を可及的に少なくする点で、前記撮像回数は、前記式から求められる数値以上の整数のうち、最小の整数である。
【0049】
図12(a)は、撮像装置の焦点位置及び被写界深度の参考図であり、同図(b)は、対象フィルム1の厚みと平面度と被写界深度との関係から、撮像回数を決定する理由を説明するための参考図である。
同図(a)の符号X1は、撮像装置のレンズを、符号X2は、撮像装置の焦点位置を、符号X3は、被写界深度X5の上端(撮像装置に近い側の被写界深度の端)を、符号X4は、被写界深度X5の下端(撮像装置から遠い側の被写界深度の端)を示す。
同図(b)の符号Y1は、対象フィルム1(緊張領域)の厚みを、符号Y2は、平面度を、符号Y3は、緊張領域の最高部を、符号Y4は、緊張領域の最低部を、符号X5-1は、1回目の検査の被写界深度を、符号X5-2乃至X5-4は、2回目乃至4回目の検査の被写界深度を示す。
例えば、対象フィルム1の厚みY1が200μmで、平面度Y2が20μmで、被写界深度X5が60μmであった場合、式:(200+20)/60=3.66…である。これから撮像回数は4回以上の整数と決定され、好ましくは、最小限の整数である4回と決定される。
【0050】
そして、撮像装置と被写界深度X5-1の上端X3との距離と、撮像装置と最高部Y3との距離と、が等しくなるように、撮像装置の緊張領域に対する高さ位置を設定し、1回目の光学的検査を行なう。或いは、
図12(b)に示すように、撮像装置と被写界深度X5-1の上端X3との距離が、撮像装置と最高部Y3との距離よりも少し短くなるように、撮像装置の緊張領域に対する高さ位置を設定し、1回目の光学的検査を行なう。
上述の例では、透過検査機51の撮像装置511の緊張領域に対する高さ位置及び反射検査機52の撮像装置521の緊張領域に対する高さ位置を設定し、それぞれの検査機51,52を搬送方向に移動させて緊張領域の欠陥を検査する。
【0051】
次に、撮像装置の緊張領域に対する距離を1つの被写界深度X5-2分だけ下側にずらし(1つの被写界深度X5-2分だけ、撮像装置を緊張領域に移動させ)、2回目の光学的検査を行なう。事後、同様に、撮像装置の緊張領域に対する距離を1つの被写界深度X5-3分だけ下側にずらし、3回目の光学的検査を行ない、さらに、4回目の光学的検査を行なう。なお、2回目以降(前記例では2回目乃至4回目)の光学的検査を行なうにあたって、前回の被写界深度X5-1の下端側と今回の被写界深度X5-2の上端側が少しオーバーラップするようにして、撮像装置を下側にずらしてもよい。
【0052】
このように対象フィルム1の厚みと平面度と被写界深度とから、撮像回数を決定することにより、緊張領域の厚み方向全体に亘って欠陥を検査できる。さらに、撮像回数を、前記式:A÷Bから求められる数値以上の整数とすることにより、撮像回数を可及的に少なくしつつ、緊張領域の厚み方向全体の欠陥を検査できる。
【0053】
<搬送工程>
搬送工程は、前記検査後の対象フィルム1を長手方向に所定長さ搬送する工程である。
前記欠陥の検査を行なった後、緊張領域の緊張を解除する。張力付与部3の緊張用チャック部31の掴みを解除する。また、前搬送部2の搬送用チャック部23にて対象フィルム1の幅方向両端部を掴む。緊張用チャック部31の掴みの解除と搬送用チャック部23の掴みとは、同時に行なってもよく、或いは、何れか一方を他方よりも早く行なってもよい。好ましくは、搬送用チャック部23が対象フィルム1の幅方向両端部を掴んだ後に、緊張用チャック部31の掴みを解除することが好ましい。このように緊張用チャック部31が対象フィルム1の端部を掴んでおくことにより、搬送用チャック部23が対象フィルム1の端部を掴むまで緊張領域の緊張状態を保持することができる。
搬送用チャック部23を搬送方向下流側に所定長さ分だけ移動することにより、検査後の対象フィルム1を所定長さ分だけ後搬送部6へと送ることができる。前記検査後の対象フィルム1の搬送長さ(所定長さ)は、検査した領域の長さ(対象フィルム1の長手方向における検査した領域の長さ)である。検査した領域の長さ分だけ搬送し、後述する繰り返し工程を行なうことより、対象フィルム1の長手方向において未検査領域が生じることを防止できる。
【0054】
<繰り返し工程>
上記搬送停止工程、前記緊張工程、前記検査工程及び搬送工程を1つのリピート単位として繰り返すことにより、長尺帯状の対象フィルム1を、その長手方向全体に亘って欠陥を検査できる。
【0055】
<巻取り工程>
巻取り工程は、検査された対象フィルム1を連続的に巻き取っていく工程である。
前記繰り返し工程により、前搬送部2から対象フィルム1が間欠的に後搬送部6に搬送される。後搬送部6は、前搬送部2から送られる対象フィルム1を巻取り部63に連続的に巻き取っている。後搬送部6の対象フィルム1の搬送速度(巻取り部63による巻取り速度)は、前記前搬送部2(搬送工程)の対象フィルム1の搬送速度よりも遅く設定される。
前搬送部2の間欠的な搬送と後搬送部6の連続的な搬送とによって生じる対象フィルム1の過不足分は、アキューム機構61によって調整される。
【0056】
本発明の検査方法は、対象フィルム1の4つの端部が互いに長手方向及び幅方向に離れるように引張り、対象フィルム1を面方向に緊張させ且つ静止させた状態で光学的検査を行なう。このため、対象フィルム1の緊張領域(検査する領域)の平面性が高まり、また、前記緊張領域が振動することも防止でき、対象フィルム1の欠陥を検出し易くなる。
さらに、対象フィルム1(緊張領域)の厚みと緊張領域の平面度と撮像装置の被写界深度から、対象フィルム1の厚み方向における撮像回数を決定するので、対象フィルム1の厚み方向全体の欠陥を検出できる。また、厚み方向全体の欠陥を検査するに際して、最低限の撮像回数にてその検査を行なうこともでき、検査時間の短縮化を図ることもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 対象フィルム
100 検査システム
2 前搬送部
21 巻出し部
23 搬送用チャック部
3 張力付与部
31,31a,31b,31c,31d 緊張用チャック部
4 平面度測定部
5 検査部
51 透過検査機
52 反射検査機
511,521 撮像装置
512,522 光源
6 後搬送部