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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075976
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240529BHJP
   A61M 1/34 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A61M1/16 117
A61M1/34 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187276
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金川 隆生
(72)【発明者】
【氏名】村上 正樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 将太
(72)【発明者】
【氏名】篠川 光正
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077EE02
4C077EE03
4C077EE04
4C077HH02
4C077HH06
4C077HH15
4C077HH16
4C077JJ02
4C077JJ05
4C077JJ16
4C077JJ17
4C077JJ28
(57)【要約】
【課題】排液が血液に戻されることおよび血液浄化器の半透膜の寿命が短くなることを抑制しつつ除水速度を目標値に近づける。
【解決手段】制御部は、設定時間内において秤によって測定された重量変化から実測される積算除水量が、設定値より多いとき、補液の送出流量が高くなるように補液ポンプを駆動制御することにより積算除水量を少なくして上記設定値に近づけ、逆に、上記設定値より少ないとき、補液の送出流量が低くなるように補液ポンプを駆動制御することにより積算除水量を多くして上記設定値に近づける。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化器と、
前記血液浄化器に接続され、前記血液浄化器に血液を流入させるための動脈側血液回路と、
前記血液浄化器に接続され、前記血液浄化器から血液を流出させるための静脈側血液回路と、
前記動脈側血液回路または前記静脈側血液回路に接続され、補液を供給する補液管路と、
前記血液浄化器に透析液を供給する透析液管路と、
前記血液浄化器から排出された排液を流す排液管路と、
前記動脈側血液回路に設けられ、血液を送り出す血液ポンプと、
前記補液管路に設けられ、前記補液を送り出す補液ポンプと、
前記透析液管路に設けられ、前記透析液を送り出す透析液ポンプと、
前記排液管路に設けられ、前記排液を送り出す排液ポンプと、
前記補液管路に接続され、前記補液を一時的に貯液し、貯液した前記補液を送出可能な第1計量バッグと、
前記排液管路に接続され、前記排液を一時的に貯液し、貯液した前記排液を送出可能な第2計量バッグと、
前記第1計量バッグおよび前記第2計量バッグの全体の重量変化を測定可能な秤と、
前記血液ポンプ、前記補液ポンプ、前記透析液ポンプおよび前記排液ポンプの各々を駆動制御する制御部とを備え、
前記制御部は、設定時間内において前記秤によって測定された重量変化から実測される積算除水量が、設定値より多いとき、前記補液の送出流量が高くなるように前記補液ポンプを駆動制御することにより前記積算除水量を少なくして前記設定値に近づけ、逆に、前記設定値より少ないとき、前記補液の送出流量が低くなるように前記補液ポンプを駆動制御することにより前記積算除水量を多くして前記設定値に近づける、血液浄化装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記積算除水量を前記設定値に近づける際、前記血液ポンプ、前記透析液ポンプおよび前記排液ポンプの駆動状態は一定に維持させる、請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記積算除水量を前記設定値に近づけた後、前記補液の送出流量を元に戻すように前記補液ポンプを駆動制御しつつ、前記排液ポンプによる前記排液の送出流量を変更することにより前記積算除水量を前記設定値にさらに近づける、請求項1に記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析装置の構成を開示した先行技術文献として、特開2001-540号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された血液透析装置は、血液計測手段と、実働部と、制御部とを備える。血液計測手段は、血液パラメータを計測する。実働部は、血液処理を行なう。制御部は、所定の血液処理条件で血液処理を行なうように実働部を制御する。制御部は、血液計測手段から取り込んだ血液指標値が、予め設定された血液指標値範囲内で推移するか監視する。血液透析装置は、血液指標値が血液指標値範囲を逸脱した場合は、予め設定された除水速度変化率で実働部の除水速度を変更できる除水速度制御機構を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された血液透析装置においては、排液ポンプの送出流量を変更することにより除水速度を調整している。除水速度が目標値より高いときに、排液ポンプの送出流量を低くして除水速度を調整した場合、血液浄化器において逆濾過が起き、排液が血液に戻される可能性がある。除水速度が目標値より低いときに、排液ポンプの送出流量を高くして除水速度を調整した場合、血液浄化器内で陰圧が生じ、半透膜に応力が作用して、半透膜の寿命が短くなる可能性がある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、排液が血液に戻されることおよび血液浄化器の半透膜の寿命が短くなることを抑制しつつ除水速度を目標値に近づけることができる、血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく血液浄化装置は、血液浄化器と、動脈側血液回路と、静脈側血液回路と、補液管路と、透析液管路と、排液管路と、血液ポンプと、補液ポンプと、透析液ポンプと、排液ポンプと、第1計量バッグと、第2計量バッグと、秤と、制御部とを備える。動脈側血液回路は、血液浄化器に接続され、血液浄化器に血液を流入させるために設けられている。静脈側血液回路は、血液浄化器に接続され、血液浄化器から血液を流出させるために設けられている。補液管路は、動脈側血液回路または静脈側血液回路に接続され、補液を供給する。透析液管路は、血液浄化器に透析液を供給する。排液管路は、血液浄化器から排出された排液を流す。血液ポンプは、動脈側血液回路に設けられ、血液を送り出す。補液ポンプは、補液管路に設けられ、補液を送り出す。透析液ポンプは、透析液管路に設けられ、透析液を送り出す。排液ポンプは、排液管路に設けられ、排液を送り出す。第1計量バッグは、補液管路に接続され、補液を一時的に貯液し、貯液した補液を送出可能である。第2計量バッグは、排液管路に接続され、排液を一時的に貯液し、貯液した排液を送出可能である。秤は、第1計量バッグおよび第2計量バッグの全体の重量変化を測定可能である。制御部は、血液ポンプ、補液ポンプ、透析液ポンプおよび排液ポンプの各々を駆動制御する。制御部は、設定時間内において秤によって測定された重量変化から実測される積算除水量が、設定値より多いとき、補液の送出流量が高くなるように補液ポンプを駆動制御することにより上記積算除水量を少なくして上記設定値に近づけ、逆に、上記設定値より少ないとき、補液の送出流量が低くなるように補液ポンプを駆動制御することにより上記積算除水量を多くして上記設定値に近づける。
【0007】
本発明の一形態においては、制御部は、上記積算除水量を上記設定値に近づける際、血液ポンプ、透析液ポンプおよび排液ポンプの駆動状態は一定に維持させる。
【0008】
本発明の一形態においては、制御部は、上記積算除水量を上記設定値に近づけた後、補液の送出流量を元に戻すように補液ポンプを駆動制御しつつ、排液ポンプによる排液の送出流量を変更することにより上記積算除水量を上記設定値にさらに近づける。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排液が血液に戻されることおよび血液浄化器の半透膜の寿命が短くなることを抑制しつつ除水速度を目標値に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
図2】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置における制御部と各構成との電気的接続関係を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置において、治療中に制御部が除水速度を目標値に維持する動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0012】
以下の実施形態の説明においては、血液浄化装置として、持続緩徐式血液浄化療法(Continuous Renal Replacement Therapy:CRRT)に用いられる血液浄化装置について説明する。ただし、血液浄化装置は、持続的血液濾過透析法(continuous hemodiafiltration:CHDF)、持続的血液ろ過法(continuous hemofiltration:CHF)、持続的血液透析法(continuous hemodialysis:CHD)、および、持続緩徐式限外濾過(Slow Continuous UltraFiltration:SCUF)のいずれかに用いられる血液浄化装置であってもよい。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置100は、血液浄化器120と、動脈側血液回路110と、静脈側血液回路116と、補液管路131と、透析液管路141と、排液管路151と、血液ポンプ111と、補液ポンプ161と、透析液ポンプ160と、排液ポンプ162と、秤180と、第1計量バッグ140と、第2計量バッグ150と、制御部とを備える。
【0014】
血液浄化装置100は、動脈側エアートラップチャンバ112と、動脈側開閉弁110vと、静脈側エアートラップチャンバ114と、静脈側開閉弁116vと、プライミング液管路191と、動脈側圧力測定装置113と、静脈側圧力測定装置115と、第1供給源130と、プライミング液供給源190と、第1接続管路132と、第2接続管路152と、動脈側給排気管路117と、静脈側給排気管路118と、第1バルブ141vと、第2バルブ131vと、第3バルブ151vと、第4バルブ152vと、第5バルブ191vと、第6バルブ117vと、第7バルブ118vと、動脈側保護フィルタ117fと、静脈側保護フィルタ118fと、第1ヒータ170と、第2ヒータ171とをさらに備える。
【0015】
血液浄化器120は、たとえば中空糸膜からなる半透膜を内部に含んでいる。血液浄化器120は、血液入口121および血液出口122を有している。血液入口121には、動脈側血液回路110が接続されている。血液出口122には、静脈側血液回路116が接続されている。
【0016】
動脈側血液回路110には、血液を送り出す血液ポンプ111が設けられている。動脈側血液回路110において、血液ポンプ111と血液浄化器120との間に、動脈側エアートラップチャンバ112が設けられている。動脈側エアートラップチャンバ112には、動脈側エアートラップチャンバ112内の圧力を測定する動脈側圧力測定装置113が設けられている。動脈側エアートラップチャンバ112と動脈側圧力測定装置113との間に、動脈側保護フィルタ117fが設けられている。動脈側血液回路110には、動脈側血液回路110を開閉する動脈側開閉弁110vが設けられている。
【0017】
患者の動脈から採取された血液は、動脈側血液回路110を流れて動脈側エアートラップチャンバ112を通過する際に圧力を測定された後、血液入口121から血液浄化器120内に流入する。動脈側エアートラップチャンバ112は、動脈側血液回路110内の血液に空気が混入することを防止するために設けられている。
【0018】
静脈側血液回路116には、静脈側エアートラップチャンバ114が設けられている。静脈側エアートラップチャンバ114には、静脈側エアートラップチャンバ114内の圧力を測定する静脈側圧力測定装置115が設けられている。静脈側エアートラップチャンバ114と静脈側圧力測定装置115との間に、静脈側保護フィルタ118fが設けられている。静脈側血液回路116には、静脈側血液回路116を開閉する静脈側開閉弁116vが設けられている。
【0019】
血液浄化器120によって浄化された血液は、静脈側血液回路116を流れて静脈側エアートラップチャンバ114を通過する際に圧力を測定された後、患者の静脈に返される。静脈側エアートラップチャンバ114は、静脈側血液回路116内の血液に空気が混入することを防止するために設けられている。
【0020】
血液浄化器120は、透析液入口124および排液出口123をさらに有している。透析液入口124には、透析液管路141が接続されている。排液出口123には、排液管路151が接続されている。
【0021】
透析液管路141の上流端は、補液および透析液である、第1液10を供給する第1供給源130と接続されている。透析液管路141は、補液管路131の上流端と接続されている。透析液管路141には、透析液を送り出す透析液ポンプ160が接続されている。透析液ポンプ160は、ペリスタルティック式ポンプであるが、ローラ式ポンプであってもよい。透析液管路141を流れた透析液は、血液浄化器120内に供給される。透析液管路141において補液管路131との接続位置より上流側に、透析液管路141を開閉する第1バルブ141vが設けられている。透析液管路141において透析液ポンプ160より下流側に、透析液を加熱する第1ヒータ170が設けられている。なお、第1ヒータ170は設けられていなくてもよい。
【0022】
補液管路131には、補液を送り出す補液ポンプ161が接続されている。補液ポンプ161は、ペリスタルティック式ポンプであるが、ローラ式ポンプであってもよい。補液管路131には、第1液10が流れる第1接続管路132が接続されている。補液管路131において第1接続管路132との接続位置より上流側に、補液管路131を開閉する第2バルブ131vが設けられている。補液管路131において補液ポンプ161より下流側に、補液を加熱する第2ヒータ171が設けられている。なお、第2ヒータ171は設けられていなくてもよい。
【0023】
本実施形態においては、補液管路131は、静脈側血液回路116に接続されている。具体的には、補液管路131は、静脈側エアートラップチャンバ114に接続されている。補液管路131を流れた補液は、静脈側エアートラップチャンバ114内に供給される。すなわち、補液管路131は、静脈側血液回路116に補液を供給する。血液浄化装置100は、いわゆる後希釈法を採用している。なお、補液管路131が動脈側エアートラップチャンバ112に接続され、補液管路131が動脈側血液回路110に補液を供給する前希釈法が採用されていてもよい。
【0024】
第1接続管路132は、第1液10を一時的に貯液し、貯液した第1液10を送出可能な第1計量バッグ140と接続されている。
【0025】
排液管路151の下流端から、血液浄化器120から排出された排液が排出される。排液管路151には、排液管路151を流れる排液を送り出す排液ポンプ162が接続されている。排液ポンプ162は、ペリスタルティック式ポンプであるが、ローラ式ポンプであってもよい。排液管路151には、排液が流れる第2接続管路152が接続されている。排液管路151には、排液管路151を開閉する第3バルブ151vが設けられている。
【0026】
第2接続管路152は、排液を一時的に貯液し、貯液した排液を送出可能な第2計量バッグ150と接続されている。第2接続管路152には、第2接続管路152を開閉する第4バルブ152vが設けられている。
【0027】
第1計量バッグ140および第2計量バッグ150は、収容部181に収容されている。収容部181は、秤180の測定部に接続されている。本実施形態においては、秤180はロードセルである。ただし、秤180は、ロードセルに限られず、ばねばかりなどであってもよい。秤180は、第1計量バッグ140および第2計量バッグ150の全体の重量変化を測定する。第4バルブ152vが第2接続管路152を閉じた状態において、秤180は、第1計量バッグ140の重量変化を測定可能である。
【0028】
プライミング液管路191は、動脈側血液回路110における動脈側開閉弁110vと血液ポンプ111との間に接続され、プライミング液20を供給する。プライミング液管路191には、プライミング液管路191を開閉する第5バルブ191vが設けられている。プライミング液20は、生理食塩液などである。
【0029】
動脈側給排気管路117は、動脈側圧力測定装置113と動脈側保護フィルタ117fとの間に接続されている。動脈側給排気管路117には、動脈側給排気管路117を開閉する第6バルブ117vが設けられている。動脈側給排気管路117は、動脈側エアートラップチャンバ112内の空気を排気可能、および、動脈側エアートラップチャンバ112内に空気を給気可能に構成されている。
【0030】
静脈側給排気管路118は、静脈側圧力測定装置115と静脈側保護フィルタ118fとの間に接続されている。静脈側給排気管路118には、静脈側給排気管路118を開閉する第7バルブ118vが設けられている。静脈側給排気管路118は、静脈側エアートラップチャンバ114内の空気を排気可能、および、静脈側エアートラップチャンバ114内に空気を給気可能に構成されている。
【0031】
動脈側保護フィルタ117fおよび静脈側保護フィルタ118fの各々は、血液回路外への血液流出を防止する機能、および、圧力測定装置からの感染を防止する機能を有している。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置における制御部と各構成との電気的接続関係を示すブロック図である。図2に示すように、血液浄化装置100が備える制御部1は、血液ポンプ111、動脈側開閉弁110v、静脈側開閉弁116v、第1バルブ141v、第2バルブ131v、第3バルブ151v、第4バルブ152v、第5バルブ191v、第6バルブ117v、第7バルブ118v、動脈側圧力測定装置113、静脈側圧力測定装置115、透析液ポンプ160、補液ポンプ161、排液ポンプ162および秤180の各々と電気的に接続されている。
【0033】
制御部1には、設定時間内において秤180によって測定された第1計量バッグ140および第2計量バッグ150の全体の重量変化から実測された積算除水量が入力される。また、制御部1には、積算除水量の設定値が入力される。
【0034】
制御部1は、血液ポンプ111、動脈側開閉弁110v、静脈側開閉弁116v、第1バルブ141v、第2バルブ131v、第3バルブ151v、第4バルブ152v、第5バルブ191v、第6バルブ117v、第7バルブ118v、透析液ポンプ160、補液ポンプ161および排液ポンプ162の各々の動作を制御する。
【0035】
以下、本実施形態に係る血液浄化装置100において、治療中に制御部1が除水速度を目標値に維持する動作について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置において、治療中に制御部が除水速度を目標値に維持する動作を示すフローチャートである。
【0036】
治療を開始する際、まず、透析液供給速度、補液供給速度、血液浄化器120における濾過速度および除水速度の目標値が設定される。除水速度の目標値と設定時間との積から積算除水量の設定値が決まる。次に、設定された、透析液供給速度、補液供給速度、濾過速度および除水速度の各々の目標値を満たすように、透析液ポンプ160の送液流量、補液ポンプ161の送液流量および排液ポンプ162の送液流量の各々が設定される。
【0037】
次に、第4バルブ152vを閉じた状態にし、第1バルブ141v、第2バルブ131vおよび第3バルブ151vを開いた状態で、血液ポンプ111、透析液ポンプ160、補液ポンプ161および排液ポンプ162を稼働させる。これにより、第1供給源130から供給された第1液10が、補液管路131から静脈側ドリップチャンバ114内に補液として供給されるとともに、第1接続管路132にも第1液10が流入する。補液は、第2ヒータ171によって所定の温度に加熱された状態になっている。
【0038】
第1接続管路132に流入した第1液10の一部は、第1供給源130と第1計量バッグ140との配置の高低差による圧力によって、第1計量バッグ140内に流入して貯液される。透析液管路141を通流した第1液10は、血液浄化器120内に透析液として供給される。透析液は、第1ヒータ170によって所定の温度に加熱された状態になっている。血液浄化器120から排出された排液は、排液管路151を流れて外部に排出される。
【0039】
次に、図3に示すように、設定時間内において秤180によって測定された収容部181の重量変化から積算除水量を実測する(工程S1)。具体的には、第1バルブ141vおよび第3バルブ151vを閉じて、第2バルブ131vおよび第4バルブ152vを開いた状態とする。この状態で、血液ポンプ111、透析液ポンプ160、補液ポンプ161および排液ポンプ162を引き続き稼働させることにより、排液管路151の下流端からの排液の排出が停止し、第2接続管路152に排液が流入する。第2接続管路152に流入した排液は、第2計量バッグ150内に貯液される。このときの設定時間内における収容部181の重量変化を秤180によって測定することにより、治療中に積算除水量が実測される。実測された積算除水量は、制御部1に入力される。
【0040】
制御部1は、実測された積算除水量が、設定値か判断する(工程S2)。制御部1は、実測された積算除水量が設定値である場合は、補液ポンプ161による補液の送出流量を維持する(工程S3)。
【0041】
制御部1は、実測された積算除水量が設定値でない場合は、補液ポンプ161による補液の送出流量を変更する(工程S4)。具体的には、制御部1は、実測された積算除水量が設定値より多いとき、補液の送出流量が高くなるように補液ポンプ161を駆動制御することにより積算除水量を少なくして設定値に近づける。逆に、実測された積算除水量が設定値より少ないとき、制御部1は、補液の送出流量が低くなるように補液ポンプ161を駆動制御することにより積算除水量を多くして設定値に近づける。このとき、血液ポンプ111、透析液ポンプ160および排液ポンプ162の駆動状態は一定に維持されている。
【0042】
積算除水量が設定値に近づけられた後、第1バルブ141vを閉じて、第2バルブ131v、第3バルブ151vおよび第4バルブ152vを開いた状態にする。血液ポンプ111、透析液ポンプ160、補液ポンプ161および排液ポンプ162が引き続き稼働することにより、第2計量バッグ150に貯液されていた排液は排液管路151の下流端から外部に排出される。第2計量バッグ150内の排液が全て排出された後、第4バルブ152vを閉じて、第1バルブ141v、第2バルブ131vおよび第3バルブ151vを開いた状態にする。これにより、治療開始時の状態に戻る。治療中に上記の工程を繰り返し行なうことにより、除水速度を目標値に維持することができる。
【0043】
本実施形態に係る血液浄化装置100において、上記のように、補液ポンプ161による補液の送出流量を変更することによって除水速度を目標値に近づけているため、血液浄化器120において逆濾過が起きることおよび血液浄化器120内が陰圧になることを抑制することができる。ひいては、排液が血液に戻されることおよび血液浄化器120の半透膜の寿命が短くなることを抑制しつつ除水速度を目標値に近づけることができる。
【0044】
なお、治療中に補液を供給しない持続緩徐式限外濾過(SCUF)を行なう場合においても、実測された積算除水量が設定値より多いとき、補液ポンプ161を稼働させることにより積算除水量を少なくして設定値に近づけることができる。
【0045】
また、制御部1は、積算除水量を設定値に近づけた後、補液の送出流量を元に戻すように補液ポンプ161を駆動制御しつつ、排液ポンプ162による排液の送出流量を変更することにより積算除水量を設定値にさらに近づけてもよい。これにより、血液浄化器120において逆濾過が起きることおよび血液浄化器120内が陰圧になることを抑制しつつ、補液ポンプ161の送出流量の調整から排液ポンプ162の送出流量の調整に切り替えた状態で除水速度を目標値に維持することができる。
【0046】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
1 制御部、10 第1液、20 プライミング液、100 血液浄化装置、110 動脈側血液回路、110v 動脈側開閉弁、111 血液ポンプ、112 動脈側エアートラップチャンバ、113 動脈側圧力測定装置、114 静脈側エアートラップチャンバ、115 静脈側圧力測定装置、116 静脈側血液回路、116v 静脈側開閉弁、117 動脈側給排気管路、117f 動脈側保護フィルタ、117v 第6バルブ、118 静脈側給排気管路、118f 静脈側保護フィルタ、118v 第7バルブ、120 血液浄化器、121 血液入口、122 血液出口、123 排液出口、124 透析液入口、130 第1供給源、131 補液管路、131v 第2バルブ、132 第1接続管路、140 第1計量バッグ、141 透析液管路、141v 第1バルブ、150 第2計量バッグ、151 排液管路、151v 第3バルブ、152 第2接続管路、152v 第4バルブ、160 透析液ポンプ、161 補液ポンプ、162 排液ポンプ、170 第1ヒータ、171 第2ヒータ、180 秤、181 収容部、190 プライミング液供給源、191 プライミング液管路、191v 第5バルブ。
図1
図2
図3